キトラ古墳の温湿度環境について

  1. 観測場所

    キトラ古墳の墳丘上に観測ステーションを設置し、平成15年11月末よりデータを収集している。測定項目は石室内の温度、相対湿度、炭酸ガス濃度、小前室内の温度、相対湿度、炭酸ガス濃度、地中温度、墳丘の異なった場所や深さの地中温度、土壌水分量などで、この他、風向、風速、雨量、日照量なども墳丘上で測定している(図1)。測定したデータは1時間ごとに文化財研究所(東京、奈良)に転送され、常時監視している。

  2. 測定結果

    石室内の気温は6月に16℃前後であったのが、気温の上昇とともに上がり、9月初めには20℃程度になった。8月から壁画の取り外し作業が始まり、石室内での作業による温度上昇を防ぐために、小前室の空調温度の設定を石室内温度より低めに設定した。この効果は見られたが(図2)、小前室の空気が石室内に入って暖められて100%より乾いた空気になり、おそらくそのために壁画漆喰が乾き気味になったと考えられた。ただし石室内の湿度は、この間もほぼ常時100%を保っていた(図3)。
    乾燥の進行を改善するために次の対策をとった。

    ア)送風ダクトの途中に調湿ボードを用いた加湿装置を取り付けた(8月30日、写真)。

    イ)空調設定温度を16度から18度に高めた(9月3日16:30)。

    この結果、小前室の湿度が上がり(図3)、加湿装置の効果もあって状況は改善された。

    この他、石室周辺の土壌水分量については大きな変化は見られていない。雨水の浸入を防ぐためのシートを墳丘上面から8月20日に除去したが、その後、土壌水分量の上昇などは見られず、土壌水分量は6月以来、現在までゆるやかに低下している。また石室近くの土壌水分量に変化が見られないので、外部からの水の浸入による石室への影響は今のところ見られない(図4)。

写真1
キトラ古墳の温湿度環境
写真2
キトラ古墳の温湿度環境
写真3
キトラ古墳の温湿度環境
写真4
キトラ古墳の温湿度環境
写真5
キトラ古墳の温湿度環境

プリントアウト・コピー・無料配布OKマーク,障害者のための非営利目的利用OKマーク,学校教育のための非営利目的利用OKマーク

このマークは本資料のうち、上記文書に付けられたものです。
上記写真等資料に付けられたものではありません。

ページの先頭に移動