今後の作業手順について

  1. 石室内壁画の保存処置の作業手順

    石室内にある壁画の取り外し作業は、画像が残存している部分から優先的に行い、画像が残存してない部分については、壁面の状況を見ながら、取り外しが最適な部分について順次行っていく。

    なお、必要な強化措置等についても並行して行う。
    各々の壁面における具体的な作業手順は以下のとおりである。

    • 東面

      十二支像の虎のみが残存している。白虎の前足と同様の強化処置を行い、取り外す。具体的には、1週間程度おきにMC(メチルセルロース)の溶液を含浸して、十分に強化された後、漆喰層と石面の界面ではなく、漆喰層の内部で取り外しを行う。余白部分および確認されていない十二支像の辰については、剥離が進行しているので、剥離の進行を注意深く観察しながら、最適な時期に取り外しを行う。

    • 西面

      確認されている画像は残存していない。余白部分および確認されていない十二支像の申に関しては、剥離状況に応じた強化を行い、適切な時期に取り外しを行う。

    • 南面

      左上隅より剥離が進行している。注意深く剥離の進行を観察し、最適な時期にHPC付きレーヨン紙による表打ちを行い、取り外す。

    • 北面

      全面的に劣化が進行しているので、HPCおよびMCを用いて十分な強化処置を行う。その後、強化の度合いに応じて取り外しを進める。

    • 天井

      全面的に危機的状況であるので、他の作業に平行して最低でも週1回以上の観察と可能な部分からHPCおよびMCによる強化処置を行いながら、壁面全体の安定化をはかるとともに、可能な範囲で取り外しを行っていく。

  2. 取り外し壁画の保存処置の作業手順

    取り外された壁面は、その状態によって、様々な制約はあるが、保存・展示を行うためには次のような標準的な工程を行うこととなる。なお、作業中に、必要な調査分析等を行う。

    1. (1)表面のHPCの除去

      実態顕微鏡下で筆とエタノールを用いて除去する。

    2. (2)クリーニング

      実態顕微鏡下で、ピンセット、メス、針などを用いて汚れを除去する。ただし、木の根や泥など壁面に負担になる汚れなどを除去するのみにするのか、積極的に当時の漆喰面まで確認しようとするのかで作業量は大きく変化する。

    3. (3)絵画面の強化

      保存・展示環境に応じて適当な樹脂の含浸などを行う。ただし、保管・展示環境によって、必要とされる強度が大きく変化し、それに伴う作業量も大きく変化する。

    4. (4)画面の調整

      全体の画面のバランスをとるために、ピンセット・針などで各漆喰片がもっとも安定する位置にセットする。

    5. (5)表打ち

      裏面の調整強化を行うために適当な材料によって表打ちを行い、壁面を裏返しして作業が可能な状態にする。

    6. (6)裏打ちの除去

      保管のために行っていた仮裏打ちをエタノールを用いて除去する。

    7. (7)裏面の強化

      保存・展示環境に応じた裏打ちを行う。

    8. (8)画面の調整

      実態顕微鏡下で展示に適するように画面の調整・強化などをピンセット・針などで行う。

    9. (9)裏面の補強

      保存・展示環境に応じた材料で行う必要がある。保管・展示環境によって、必要とされる強度が大きく変化し、それに伴う作業量も大きく変化する。

    10. (10)表打ちの除去

      裏面処理のための表打ちを除去する。

    11. (11)補填・補彩など

      ピンセット・針・筆などを用いて、絵画としての安定性を増すため、最終的な調整を行う。また、欠失部を補填して安定化をはかり、鑑賞を容易とするため最低限の補彩も行うことがある。

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