資料1

資料1

特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会
(第10回) 議事要旨(案)

  日時 平成18年11月15日(水)14:00〜16:00
  場所 如水会館 オリオンルーム


出席者

 

(委員)

  藤本座長,有賀,猪熊,梶谷,河上,川野邊,佐古,笹山,白石,杉山,関口,巽,田辺,増田,三浦,毛利,渡邉の各委員

(オブザーバー)

  独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所,独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所,奈良県教育委員会,明日香村ほか

(文化庁)

  加茂川文化庁次長,土屋文化財部長,亀井文化財鑑査官,岩本記念物課長,山﨑美術学芸課長,その他担当官

議事

1.開会・文化庁次長挨拶

 
 加茂川文化庁次長より挨拶が行われた。

2.出席者紹介・配付資料の確認

 
 配付資料の確認と出席者の紹介を行った。

3.キトラ古墳内の生物環境等について

   杉山委員より,資料に基づき説明が行われ,以下のような意見交換が行われた。

 
 微生物相が多様になっているとのことだが,何時の時点から多様化しているのか。
 今までの総合的なまとめとしてである。また,新顔の微生物も出ている。
 特に多い微生物はあるか。
 以前から常在微生物として検出されているが,Penicillium.spが一番多い検出の種に該当する。
 また,Acremonium spp.が比較的多い。
 新顔のカビはダニ等によって,外から持ち込まれたものか。
 現時点では,確定できないが,ダニによって,もたらされることも予測される。

4.キトラ古墳壁画の保存措置の実施状況について

   巽ワーキンググループ座長から,ワーキンググループの検討結果について,資料に基づき報告があり,川野邊委員より,ビデオ及び資料に基づき,キトラ古墳壁画剥ぎ取り方法について説明があり,以下のような意見交換が行われた。

 
 朱雀は,全面で取り出すことが可能と言うことか。
 今の実験段階では,可能である。
 東壁に近い部分や天井付近は,従来のヘラでの剥ぎ取りで,朱雀の周りや朱雀をダイヤモンドワイヤー・ソーで剥ぎ取るということか。
 失敗する可能性が,一番可能性が高いのはどのようのことか。
 石の面が水平でない場合は,ダイヤモンドワイヤーが上を通る可能性があることが一番危険性が高い。表打ちを薄くして,ダイヤモンドワイヤーの動きが見えるようにして,その危険性に備えたい。
 漆喰面が見えるということは,透かしてと言ったら変だが。
 透かして見えないはずだが,ワイヤーがどこをどこを通っているのか,見えるようにすると言うことである。
 朱雀の右側は盗掘孔があるので,ダイヤモンドワイヤー・ソーのサポートを創る必要があるのではないか。
 ダイヤモンドワイヤー・ソーは中空でも切れるようになっている。
 剥ぎ取りに関する手順として,十二支像の寅の周りの余白を剥ぎ取り,ワーキンググループにおいて検証をしていただき,了承をいただければ,寅の剥ぎ取りを行う。朱雀の剥ぎ取りも,事前にヘラにより,余白の剥ぎ取りを行って,委員会を開いてから,朱雀の剥ぎ取りを行うという段取りでよろしいか。
 時間的な問題もあるので,朱雀の剥ぎ取りに問題があるという場合でなければ,ワーキンググループと相談して進めることでいいのではないか。
 天井の剥ぎ取りについては,どのような剥ぎ取り方法を考えているのか。
 生物環境が悪化しているため,側面を剥ぎ取りをできる限り剥ぎ取りたい。に鹿部や北壁についても,カビの原因となるため,極力剥ぎ取りたい。
 また,天井については,天井は平面ではないため,同じダイヤモンドワイヤー・ソーでは,難しいが,ワイヤーで剥ぎ取れる部分はある。漆喰がないところは,許していただければ,手で朱線と金箔は剥がしたい。ただし,天井にふれられないと見通しも立たないため,余白の部分については,余白の剥ぎ取りなどさわることができるようにして欲しい。
 ダイヤモンドワイヤーが途中でなくなった場合は,どうするのか。朱雀の場合は,途中で止まった場合は,重量があるが対応はどうするのか。
 表打ちを3層にするので,強度は大丈夫だと思われる。T字型で壁画や表打ちを支えることで対応する。
 時間はどの程度掛かるのか。
 実験では,朱雀より一回り大きい大きさで,30分程度である。
 朱雀の剥ぎ取りは,顔の方から行くのか。
 尻尾からである。
 最後に顔だと,最後に微妙なところがくるが,問題はないのか。
 最初に顔の方からだと漆喰が薄いため,危険性が高いと判断している。
 側面については,ダイヤモンドワイヤー・ソーによる剥ぎ取りを進め,石室の外で修復・保存ということ,また,特に問題がない場合は,ワーキンググループと現場で進めること,天井については,余白部分については,実験的に進めることの了承したい。

5.今後の剥ぎ取りまでの手順について

   事務局より,資料に基づき説明が行われ,以下のような意見交換が行われた。

 
 何時までに何をやるというような予定はあるのか。
 現場的には,明日から剥ぎ取りを行い,許可をいただいた箇所については,概ね2日に1回ずつ剥ぎ取りができる。
 現時点で,十分日程は詰められないが,年内に寅,2月に朱雀と考えている。
 剥ぎ取りのスケジュールについては,現場を優先で考えでよろしいか。

6.その他

 
 カビが退色に重大な影響を与えるのか。
 カビそのものが原因なのかを検証する実験は行っていない。微生物だけが原因というのはどうかと思われる。
 カビで絵が退色しているのは,キトラ古墳ではなく,高松塚古墳の方である。高松塚古墳・キトラ古墳は,遺体が腐敗した時,盗掘にあい,小動物が入ったときの2回,カビが生えており,3回目が,高松塚古墳の場合は30年前である。最後に高松塚古墳・キトラ古墳は,数年前にカビが生えている。
 高松塚古墳の退色については,一般にカビが原因と言われているが,カビの処置をした際のアセトンとシンナーが一番の原因ではないかと考えている。
 当時は,アセトンとシンナーは使用せずに,トリクロロエチレンを使用している。アセトンとシンナーは,高湿度では白濁がでてしまうため,イタリアの高湿度の環境下でも十分働いているトリクロロエチレンを溶剤として使用している。また,彩色の箇所にこのような処置はせず,他の溶剤もを使用するにしても,それが原因とは思えない。一番の原因は,キトラ古墳の天井がなくなっているように,微生物が一番の影響だと思われる。
 退色の原因がカビかそれ以外の原因なのかは,今後も検証して参りたい。
 剥ぎ取った壁画はどのようなじょうたいなのか。玄武は今どのような状態なのか。
 玄武は,ほぼできあがりの状態である。来月中には,お見せできるような状態になると思われる。他の無地部分や十二支像については,難易度の低いものから処理を進めている。
 高松塚古墳やキトラ古墳について,もっと分かりやすい情報提供をしていただきたい。情報公開を行っているが,きちんと情報が伝わっていないため,批判的な意見がでてくるのではないか。
 ホームページや広報誌については,いろいろと工夫をして情報を正しく提供できるように,努力して参りたい。
 古墳は,お墓であるため,キトラ古墳をどのように修復するのか,議論していただきたい。早ければ早いほど,地域の住民は納得すると思われる。
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