1.現況 |
(1) |
石室内の環境について |
|
平成15年に仮設保護覆屋を設置し,石室内の環境制御と,週2回の定期点検を行ってきた。 |
|
[1] |
毎回,カビらしきもの発見され,その都度,除去。
白いものがほとんどであるが,黒いものなど色つきのものも確認。 |
[2] |
平成17年9月に石室全体にゲル状の物質を確認。
(除去しても繰り返し発生するので,壁画に配慮し,除去を行っていない。) |
[3] |
平成17年10月に朱雀の尾に穴が発生。 |
[4] |
天井の漆喰の浸食が進行。 |
[5] |
虫については,点検のたびに発見。 |
|
(2) |
壁画の剥ぎ取りについて |
|
[1] |
平成16年7月 「青龍」,8月 「白虎」(胴体)剥ぎ取り。 |
[2] |
平成16年9月 調査研究委員会で,全面剥ぎ取りの方針決定。
|
[3] |
平成17年5月 「白虎」(前足)剥ぎ取り |
[4] |
平成17年6月 漆喰剥ぎ取りの際に「十二支像(午)」確認。 |
[5] |
平成17年11月 「玄武」,「十二支像(子,丑,亥)」剥ぎ取り。 |
[6] |
平成18年12月 「十二支像(寅)」剥ぎ取り。 |
[7] |
平成19年2月 「朱雀」剥ぎ取り。 |
* |
[6][7]は,東京文化財研究所において開発したダイヤモンドワイヤー・ソーを用いた剥ぎ取り |
|
(3) |
剥ぎ取った壁画の公開 |
|
平成18年5月に,飛鳥資料館にて,「白虎」を公開(6万人の入場者)。 |
|
平成19年5月には,飛鳥資料館において,「玄武」を公開予定。
|
2.今後の課題 |
(1) |
天井の天文図等 |
|
→ |
委員会やワーキング・グループでの議論を行いながら,文化財研究所において,技術的検討を行うことが,考えられる。 |
|
|
<剥ぎ取りの必要性の確認> |
[1] |
天井の漆喰の浸食の進行 → 天文図等が一部失われる可能性 |
[2] |
繰り返し発生するカビによる被害の心配 |
[3] |
ゲルの発生
|
<剥ぎ取り方法の検討> |
[1] |
どのような剥ぎ取り方法が技術的に考えられるか? |
|
・ |
ダイヤモンドワイヤー・ソーの応用は技術的に可能か? |
・ |
天文図等を分割して剥ぎ取るのならば,技術的に可能か? |
(考慮すべき点) |
* |
表打ちの困難さ |
* |
上を向いての剥ぎ取り作業 |
* |
天井がすべてフラットではなく,側壁に向けて,周辺部が屈曲している。 |
|
[2] |
どのような剥ぎ取り方法ならば,天文図等の剥ぎ取りとして許容できるか? |
|
・ |
天文図等をブロックごとに分割して剥ぎ取ることは,許容できるか? |
・ |
星や朱線などを個々に剥ぎ取り,全体として再構築することは許容できるか? |
|
<剥ぎ取り完了までに必要な漆喰浸食等の進行食い止め策の検討> |
|
(2) |
泥に隠れている可能性のある十二支像 |
|
→ |
「午」のように,土に転写されて発見される可能性はあるが,現在の状態ですぐに劣化する心配はないので,天井の天文図等の処置の後,剥ぎ取りを模索することが考えられる。 |
|
(3) |
残された余白部分の剥ぎ取り |
|
→ |
天井の天文図等の処置と平行して,逐次,実施することが考えられる。 |
|
(4) |
剥ぎ取りが完了した壁画の公開 |
|
→ |
当面,年1回程度,状態のよい壁画を選び,飛鳥資料館で公開。 |
|