資料5

資料5

キトラ古墳の温湿度環境について

1.環境測定の方法

 キトラ古墳では,墳丘上に観測ステーションを2003年11月末に設置し,石室内部,石室周辺,墳丘周辺の環境を監視している。測定項目は石室内の温度,相対湿度,炭酸ガス濃度,小前室の温度,相対湿度,炭酸ガス濃度,墳丘の異なった場所や深さにおける地中温度,土壌水分量などである。また,この他に屋外の温度,相対湿度,風向,風速,雨量,日照量などの測定も行っている。測定器の種類,数量,設置場所は図1の通りである。

各種センサー設置場所
図1 各種センサー設置場所

仮設キトラ古墳保護施設 2階部分間取り
図2 仮設キトラ古墳保護施設 2階部分間取り

2.測定結果

 図3〜5は,それぞれ温度,相対湿度,土壌水分量の月平均を示したグラフである。エラーバーは各月の標準偏差である。図6は降雨量である。
2-1.温度
 図3の通り,地温は,外気温に対して約2ヶ月遅れで追随している。
 小前室温度T301については,平成16年度は9月まで石室内温度が地温とほぼ等しくなるように空調系温度を設定していたが,カビの繁殖が著しくなったことから,9月末から石室内温度より小前室温度を低く設定して石室内温度を低めに制御した。1月には空調系の連続運転を中止した。平成17年度についても同様である。
 空調系の連続運転は,周辺地域への落雷による停電等の一時的な中断を除き,平成18年1月まで行い,3月以降には空調系を再稼働し,現在も連続運転している。平成18年度については冬季の外気温が例年になく高く,石室内での微生物繁殖状況に与える影響については注意深く監視している。
 平成19年度に入り,夏季の外気温も例年よりいくらか高い状況にあり,9月の外気温の下降も例年より遅く,石室内温度上昇に与える影響を監視している。

温度のグラフ
図3 温度
T101:外気温 T203:地温 T301:小前室温度 T401:石室温度

2-2.湿度
 相対湿度(図4)については,石室内は95%以上,小前室は90%以上という高湿度に保たれているため,高分子膜で構成されている湿度センサーにカビが生えてしまうなどの原因で,測定結果が大変不安定な時期があった(H401センサー,2005年8月〜11月)。センサー種類を変え,現在は,いずれの場所も,ほぼ90%RHを下回らない状況で管理されていることが確認できている。

相対湿度のグラフ
図4 相対湿度

2-3.土壌水分量と降雨量
 平成16年度8月までは墳丘周辺の水分量が減少する傾向にあったが,雨水の侵入を防ぐためのシートを墳丘上面から8月20日に除去した影響が現れたためか,図5に示されている通り,10月から土壌水分量が上昇している。平成17年前半に再びシートを被せたため,10月くらいまでにかけて再び土壌水分量は減少した。平成18年には墳丘北側の土壌水分量が増加している。4〜8月の降雨量については,総量としては平成16年とほぼ同じであるが,集中的に同時期に降雨のあった平成16年と異なり,平成18年は持続的に降雨があり,その差が出ていると考えられる。防水シートについては経年劣化もあり,状況を監視しつつ適宜張り増しなどおこなっている。
 平成19年度は1時間雨量が40mmを越すような降雨が数回あり,上半期の積算雨量は平成16年度と同程度である。石室背面に近い位置の土壌水分量W203は平成18年度来やや高い数値で維持されており監視を続けている。

土壌水分量のグラフ
図5 土壌水分量

雨量のグラフ
図6 雨量
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