資料1

資料1

特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する 調査研究委員会(第12回)議事要旨(案)

日時
平成19年9月27日(木)
14:00〜15:30
場所
パレスビル3−E会議室
出席者
(委員)
藤本座長,三輪副座長,猪熊,梶谷,河上,川野邊,肥塚,佐古,笹山,白石,杉山,関口,巽,田辺,百橋,増田,松田,三浦,毛利,渡邉の各委員
(オブザーバー)
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所,独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所,奈良県教育委員会,明日香村,国土交通省ほか
(文化庁)
髙塩文化庁次長,大西文化財部長,亀井文化財鑑査官,内藤記念物課長,山﨑美術学芸課長,その他担当官

議事

1.開会・文化庁次長挨拶 
  • 座長として藤本強委員,副座長として三輪嘉六委員とする事務局案に対して了承された。髙塩文化庁次長より挨拶が行われた。
2.出席者紹介・配付資料の確認
  • 配付資料の確認と出席者の紹介を行った。
3.キトラ古墳の保存対策について
  • 事務局より,資料に基づき説明が行われた。
4.キトラ古墳内の生物環境等について

三浦委員よりキトラ古墳の温湿度等の推移,キトラ古墳の石室における微生物等生物調査について報告が行われ,杉山委員から微生物等生物調査について補足の報告が行われ,以下のような意見交換が行われた。

  • キトラ古墳と高松塚古墳のカビは,概ね同じカビなのか。
  • キトラ古墳と高松塚古墳に共通して発生するカビもあれば,キトラ古墳や高松塚古墳にだけ発生しているカビもあるため,同じであるといえるしそうでないともいえる。キトラ古墳も高松塚古墳の壁画面も黒染みの原因カビの暗色系アクレモニウムが増えている。
  • そのような違いは環境が異なり出てくるのか。
  • そうである。
  • 壁画のある部分のみ処置をしていると思われるが,壁画のない漆喰のある部分のカビはどのように処置しているのか。
  • 壁画のない部分を含めて石室全体の処置を行っている。石室全体の状況としては,種類が増加し,バイオフィルムになっている。
  • 天井天文図の剥ぎ取りまでは,今までのような処置を行っていくのだろうが,全ての壁画・漆喰が剥がされた後の石室の生物環境・対策はどうなるのか。今後の方針はこれから検討することとなると思われるが,密閉した後にカビだらけにならないか。検討する事が必要ではないか。
  • ケーソンに関する抵抗性については,どのように考えているのか。濃度を濃くしてもカビがそれに対する抵抗性をもっていくので,効果がなくなっていくのではないか。新しい薬剤を新たに使用するのか。
  • ケーソンについては,使用を決定した委員会でも何度も使用できるものではな いと説明している。ケーソンが効かなくなり,ケーソン以外の薬剤の使用を検討 する必要がでてくることもありうるし,全ての漆喰の剥ぎ取りを行うことを前提に剥ぎ取り作業を進める ことが必要だと考えれる。
5.キトラ古墳石室内の状況について
6.キトラ古墳壁画の保存措置の実施状況及び今後のキトラ古墳壁画の保存措置について 

川野邊委員より,キトラ古墳石室内の状況,保存措置の実施状況及び今後の壁画の保存措置について下記のような説明が行われた。

  • 東壁の状況は安定している。
  • 西壁の南側で泥が被っている箇所には十二支像の 「申」がある可能性がある。北側が生物被害が多い。
  • 南壁の泥が被っている箇所には,「巳」がある可能性がある。泥の部分は安定しているので,緊急に措置する必要はないと考える。
  • 北壁は,剥ぎ取り作業の当初に比べて,かなり劣化している状態である。特に西壁と接している部分は早めに処置を行いたい。
  • 天井は,落下する危険性が高い等の漆喰がもろくなっている箇所やシミにより汚れが出ている箇所があり,天文図は健全な部分はほとんど残っていない。
  • 天井の剥ぎ取りについては,漆喰が劣化して落下する危険性が高い天文図の北側については,ヘラ等で今年度中に剥ぎ取りを行う必要があると考える。南側に ついては,ダイヤモンドワイヤー・ソーやバンドソーの技術開発をまって,剥ぎ取りを行いたい。
  • 天井の天文図等の劣化している箇所は,細粉化しているため,細かい範囲で剥ぎ取りを行っていきたい。細かく剥ぎ取る際も,剥ぎ取った箇所が後に分かるよ うにし,写真を貼り付けたトレイなどに仮接着をするように対処している。
  • ダイヤモンドワイヤー・ソーは,平面な箇所しか剥ぎ取りができないため,ワイヤーソーだけではなく,バンドソーを用いて剥ぎ取りを行う等の検討を行って いる。現場で使用するにも,キトラ古墳の天井と同じ形をしたもので試す必要もあり,時間が掛かる。

川野邊委員の説明に対して,下記のような意見交換が行われた。

  • かなり危険な状況であることが分かった。
  • 細かく剥ぎ取った箇所については,現場で写真を貼ったトレイ等に置いて保存するのか。
  • そうである。
  • 漆喰を剥ぎ取った後の石の面はどのようになっているのか。
  • きちんと調べていない。
  • 石の面についても写真を撮るなど記録を取って欲しい。
  • シミの部分は漆喰が劣化しているのか。
  • シミのみがあり,漆喰が劣化しているわけではない。シミが出て,そこからシミが広がっている感じに見える。
  • 漆喰が顆粒状になってきているのは高松塚古墳と同じではないのか。
  • 似たような状況になりつつあると考えられる。
  • 側壁の剥ぎ取りは行っているのか。
  • 天井天文図がかなり緊急性が高いため,天井にかかりきりとなっている。現実的には困難であるが,側壁についも剥ぎ取っていきたいと考えている。

最後に,藤本座長より,以下のように総括され,委員会で了承された。

  • 今後とも天井の危険が高い箇所については,緊急対応としてヘラ等で剥ぎ取りを行う。ダイヤモンドワイヤー・ソーやバンドソーなどを用いた天井等の本格的 な剥ぎ取りについては,東京文化財研究所において剥ぎ取り手法について技術的検討を行っていただき,ワーキンググループで現実可能性,技術的検討を行って いただき,改めて委員会を開催して審議することとなった。
7.キトラ古墳壁画の公開について

事務局より,資料に基づき説明が行われ,以下のような意見交換が行われた。

  • 今年度の特別公開は,新聞社が力を入れており,文化庁の事業ではなく,新聞社の事業のようにも見える。
  • 具体的にどのようなあり方になるか,検討して参りたい。
  • 特別公開だけでなく,「月刊文化財」等への掲載等の一般公開についてもこの委員会に報告して欲しい。
  • 様々な報告した内容に加えて,次回の委員会で報告したい。
  • 公開については,文化庁だけで決めるのではなく,地元の考えも反映して欲しい。
8.その他(予算要求・文化庁組織改編)ついて

事務局より,資料に基づき説明が行われ,以下のような意見交換が行われた。

  • 文化財部組織改編については,高松塚古墳,キトラ古墳だけでなく,今後新たに壁画古墳があった場合の対応をお願いしたい。
  • 壁画古墳室は,高松塚古墳・キトラ古墳だけではなく,今後壁画古墳が発見された場合に対処するような趣旨でも設けられている。
    文化財保護調整室では,文化財部の各課間のはざかいにあるようなものについて調整し,対応して参りたい。
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