特別史跡キトラ古墳の保存・活用等に関する調査研究委員会ワーキンググループ(第16回)の議事要旨(案)

資料1

日時:
平成19年2月7日(水) 14:58〜15:54
場所:
奈良簡易保険保養センター会議室
出席者
  (委員)
    巽座長、今津、梶谷、川野邊、肥塚、佐野、古田、松村の各委員
  (オブザーバー)
    (独)文化財研究所東京文化財研究所企画情報部長、奈良文化財研究所企画調整部長、国土交通省国営飛鳥公園事務所、奈良県教育委員会、明日香村ほか
  (文化庁)
    岩本記念物課長、山?美術学芸課長、その他担当官

議事
1.開会
 
 岩本記念物課長より挨拶が行われた。

2.配付資料の確認等
 
 配付資料の確認を行った。

3.キトラ古墳壁画の保存措置について
   12月13日(水)に剥ぎ取りを行った東壁の十二支像の「寅」を会議前に、委員に見てもらうとともに、川野邊委員よりキトラ古墳の剥ぎ取り壁画の保存措置とそのリスク分析について報告が行われ、以下のような意見交換が行われた。

 
 無理をして細かく割れるより、延期するか大きく分割することも許容範囲である。
 朱雀の剥ぎ取りの際に、どの辺が特にリスクがあるのか。
 漆喰層の厚さが正確には分からないため、漆喰層がかなり薄いことや石面が平らでない場合は危険度が高いこと。
 朱雀の頭より2・3cm右側の絵のないところがやわらかく、ワイヤーがどのような動きがするか分からないこと。
 朱雀の左側、尾の先のほうが難しいのか。
 ヘラで取ると硬いので難しいが、ダイヤモンドワイヤー・ソーでは容易である。
 今回の剥ぎ取る箇所はどの程度の大きさか。
 横の幅が約40cm、高さが約22cmである。
 剥ぎ取り作業はどのぐらいの時間がかかるのか。
 30分から1時間を考えている。これ以上時間が掛かると別の方法を考える。
 朱雀を剥ぎ取る前の養生はどうするのか。
 今までの剥ぎ取りでも使用している表面に複数のうすい透明のプラスチックの板を張り付けて、下の状況が分かるようにしていく。
 南壁が他の壁に比べて凸凹しているとのことだが、ダイヤモンドワイヤーが剥ぎ取りの最中に上滑りして表面に出る可能性はあるのか。そのための対応策は。
 よく見て、作業するしかない。ダイヤモンドワイヤーの動きは分かるため、表に出る直前で止められると思われる。
 レールを設けた理由を詳しくお願いしたい。
 作業時間が寅より3倍時間が掛かると予想され、途中で作業を中断できるようにすること。固定することで、作業員は機械を前に進めることに専念し、ダイヤモンドワイヤーがどのように動いているのかを見ることに専念できること。剥ぎ取り後に裏面が平らになり、作業が楽になることからレールを設けた。
 ダイヤモンドワイヤーが途中で止まったり、なくなった場合に、剥ぎ取った漆喰の重みで壁画のある部分に力が掛かり、割れるようなことはないのか。力を分散するようにしているのか。
 ダイヤモンドワイヤー・ソーで剥ぎ取った場合、一度漆喰は石面にくっつく。そのため、後に石と外すことから、力は分散している。
 資料にあるダイヤモンドワイヤー・ソーが熱を持つという事態はあるのか。
 ダイヤモンドワイヤー・ソーで作業した当初は、切れなくて、モーターが熱を持つことがあったが、改良したため、現在では可能性はほとんどない。予備を含め6つのモーターを用意しているため、万一の際は、交換できる。
 ダイヤモンドワイヤーの剥ぎ取りで朱雀が一番長いのか。
 同じくらいの長さは剥ぎ取ったが、剥ぎ取り面積としては一番大きい。
 極端の話として、朱雀を必ず1枚で剥ぎ取るべきとなった場合、一番リスクが少ない方法は、石ごと切ることだと考えられる。ダイヤモンドワイヤーで石ごと切ることができるのか。リスクの話として、分割して剥ぎ取ることもよしとするのか。どうしても1枚で剥ぎ取るとして石ごと切る事が可能性としてあるのか。
 実験では石ごと切ったこともあるため、凝灰岩ごと切る方が楽である。現状では南壁が立ったままでは難しいため、どうしても切れない場合は、別の剥ぎ取り方法を検討することもある。
 1枚で剥ぎ取ることが理想であり、それを目指すが、分割して剥ぎ取ることもおこりうる。避けられない状況というのであれば、分割もありえる。
 レールの固定はどのように行うのか。
 南壁は最後に押しつけているので、東壁と南壁の隙間に水平のレールを入れて隙間の中で止める。朱雀右側の進入孔と呼んでいる部分はステンレスでできているため、これとボルト等で締めて固定する。
 分割して剥ぎ取ることもやむを得ないという文化庁の意見は、剥ぎ取りの作業員もやりやすいと思う。レールを取り付けたことは、リスク管理の上で非常に役に立っていると考えられる。後から復元が不可能なという状態は回避できるのではないかと考えられる。
 今までレールを付けて剥ぎ取りは行ったのか。
 同じ方法ではないが、以前のワーキンググループで示したとおりレールを使ったことはある。
 今回の作業は、3人で行うのか。
 今までどおり、3人で行う。
 剥ぎ取り後の運送や今までと異なる裏打ちを行うなど、リスク対応は行っているのか。
 朱雀は、キトラの剥ぎ取り用に開発した専用の裏打ちとトレイを用意している。剥ぎ取った後は、ベテランの作業員が行うため、問題はない。朱雀は、裏打ちして表を確認したら、当日に奈良文化財研究所に運ぶ予定である。
 生物環境で何か変化等はあるのか。
 相変わらず、カビは発生している。同じ種類(4種類)のカビがほぼ同じ箇所に出ている状況である。全面的にカビを押さえる処置はしていないため、今後も漆喰の剥ぎ取りを全面に行って欲しい。
 石室の正確な実測図がないため、高松塚でも行っている3D測量を剥ぎ取りのスケジュールに支障がない時期に行って欲しい。高松塚と同じようなデータを取得して欲しい。
 天井の剥ぎ取りに細かいデータが欲しいため、朱雀の剥ぎ取り後、直ぐにでも3D測量を行って欲しい。
 ダイヤモンドワイヤー・ソーで剥ぎ取った後は石の面が出てたり、白くなっているが、剥ぎ取った後はこのままの状態なのか。
 考古学的に問題がなければ、表面処理もできる。東壁や西壁は表面を平らにしている痕跡があるが、南壁はそのような処置をしていないので、それを分かりやすくするために、表面を処理することはできる。
 今後、処置の方法については、議論していきたい。
 全体的なロードマップを作成して欲しい。朱雀の剥ぎ取り後は、天井の剥ぎ取りに移るのか。保存処置していない剥ぎ取った漆喰の処理を行うのか。
 委員会を速やかに開催して、検討してまいりたい。
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