資料 1

資料 1

高松塚古墳壁画劣化原因調査検討会(第1回)議事要旨

1.日時 平成20年7月4日(金)14:00〜16:00
2.場所 文部科学省東館 5F3会議室
3.出席者

(検討会委員)
永井座長,北田副座長,青柳,佐古,佐野,杉山,高鳥,成瀬の各委員,藤本古墳画保存活用検討会座長,三輪古墳壁画保存活用検討会副座長

(東京文化財研究所)
石崎保存修復科学センター長,川野邊保存修復科学センター副センター長,三浦名誉研究員

(奈良文化財研究所)
肥塚埋蔵文化財センター長,松村都城発掘調査部長

(文化庁)
高塩文化庁次長,苅谷文化財鑑査官,山?古墳壁画室長,内藤記念物課長,建石古墳壁画対策調査官 ほか関係官

4.概要
(1)文化庁あいさつ
高塩文化庁次長からあいさつを行った。
(2)委員及び事務局出席者紹介
委員及び事務局出席者の紹介を行った。
(3)議事

(1)座長及び副座長の選出

委員の互選により,永井委員が座長に選出され,永井座長から北田委員が副座長に指名された。

(2)議事の取扱いについて

高松塚古墳壁画劣化原因調査検討会の議事の取扱いについて事務局から説明が行われ,原案どおり,原則,議事を公開する旨が了承された。

(3)高松塚古墳壁画の保存対策について

事務局より,高松塚古墳壁画保存管理の経緯と現状について説明が行われ,以下の質疑応答が行われた。

杉山委員: 平成14年に石室内でカビの大発生があったとあり,これは「黒いカビが中心」とあるが,実際に黒いカビが分離されたのか。
山﨑室長: 分離はされていない。表現を「黒い汚れ」又は「黒いしみ」と訂正する。

(4)高松塚古墳壁画の劣化原因調査について

事務局より,これまで「国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会」で議論した「壁画の劣化原因に係る検討事項(議論のたたき台)」について説明が行われ,以下の質疑応答が行われた。

杉山委員: 生物被害(資料7)の中に「カビ育成」とあり,対象とする生物がかなり限定されているが,バクテリアや酵母など広く「微生物成長」という言葉に置き換えた方がよいのではないか。また,ダニやトビムシなどの微小動物も石室内の劣化に深く関与していると思われるので,その辺りも含めて様々な角度から総合的に調査しなければならない。
成瀬委員: 色料,漆喰,石材についての調査は今後どういう方法で行っていくのか。
建石調査官: これまで発見時に行ったもの,これは橿原考古学研究所の報告書で報告されている。また,平成16年に出版した「国宝高松塚古墳壁画」には,石室内の限られた分析条件での分析結果を載せたものもある。改めてこの検討会で現時点で判明している内容について報告する。
成瀬委員: 説明資料の中に修理施設で実際に調査されている画像があったが,あれは拡大鏡での調査という理解でよいか。
建石調査官: よい。ごく最近の調査でデジタル顕微鏡で拡大画像を見ているところである。
成瀬委員: 劣化原因を究明するためにも,修理にとっても,材質をしっかりと確定することは大切である。
永井座長: 「平成21年度に調査結果を取りまとめて公表」とあるが,科学的・学術的な調査分析ということからも多少の時間的なずれが生じることもあり得ると思われる。
佐古委員: 保存管理体制の問題もしっかりと取り上げた方がよい。古墳又は壁画の状態が随分と違うので簡単に比較することは難しいが,虎塚古墳の保存管理について話を聞いたら高松塚古墳とは全く違う。虎塚古墳の場合,年に2回公開しているが,公開することで「見られる」という緊張感が壁画を随分守った面もあるのではないかと思う。高松塚古墳はこれまで非公開で人目にさらされない中で保存管理が行われたきたことが何か劣化に関係する部分もあったのではないか。
山﨑室長: 保存管理体制も当然検討の対象になる。

(5)高松塚古墳壁画劣化原因調査検討会の今後の進め方について

事務局より,高松塚古墳壁画劣化原因調査検討会の今後の進め方について説明が行われ,以下の質疑応答が行われた。

佐野委員: 検討会の場で初めて資料を出されるとなかなか十分に理解することができない部分もあるので,今後は事前に検討できるような検討資料を準備していただきたい。
山﨑室長: 出来るだけ前もってデータ等あるいは資料を各委員に送付できるようにしていきたい。
青柳委員: 高松塚古墳壁画に関わる様々な要因をコンピュータでシミュレーションして劣化した原因を追求することが必要ではないか。何かトータルな立体的な検討が必要ではないかと思われる。
永井座長: 文化庁,東京文化財研究所,奈良文化財研究所ではこのことを検討することについて何か意見はあるか。
石崎センター長: 高松塚古墳周辺の温湿度については気象シミュレーションを行っている。昭和47年時の石室発見時からの温湿度変化の解析はする予定である。ただ,その中にはかなり推定しなくてはならないところがあり,結果については推定ということになるが,そういう形で進めたい。石室内の漆喰や石材についてはほぼ湿度が100%という状態なのでシミュレーションをするのは非常に難しい。正確に行うにもデータが限られているため,本質的な部分の解析は困難である。
青柳委員: 調査結果は他の文化財保存に汎用できるようなレベルまで行うことがこの検討会の一番の意義であろう。漆喰面と微生物,水分の移動など,それぞれの臨海面がどのように変化しているのかを検討すべきである。
杉山委員: 微生物の観点からいえば,漆喰そのものの基質の内容がわかれば様々なシミュレーションができる。しかし,非破壊の調査しかできないため,基礎データがなく,的確な確度,精度の高いものが出てこない。
青柳委員: 気候の変動によって,土中から石室,石室から漆喰へと熱は伝導する。漆喰に伝わったときの熱と石室内の空気の熱は違う。その違いが漆喰に付着する微生物に何らかの影響を与え,そういったことは,様々な要因を立体的に考えていかないと本当の劣化原因は出てこないのではないか。
石崎センター長: 漆喰や石材における水の流れをシミュレーションすることは理論上あり得るが,石室内の湿度は大体100%なので,実質的には難しい。
三浦名誉研究員: 石室解体前の状態からは様々な測定すべきデータが抜け落ちている。この検討会では,今後こういった類似の古墳を保存する場合にはどういったものをきちんと測定しておくべきかというった提言をするのが一番適当ではないかと思われる。
青柳委員: イタリアの礼拝堂では,観光客の息などで絵画が汚れているという話もある。例えばシミュレーションの中で,高松塚の狭い石室の中で人間が作業をしていたが,その場合,吐く息でどの程度の微生物に影響が生じるのかということも必要ではないか。
永井座長: 現在どういうことが可能なのか,どういうことができないのかといった基礎的なデータを事務局で収集してほしい。
肥塚センター長: この検討会で「劣化」の定義を位置付けることが必要。物理的・科学的にこういった状況が劣化であって,こういうところを調査してほしいというのであればやりやすい。
建石調査官: 過去の国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会で議論いただいた資料が膨大にある。それを各項目ごとに分け,各委員に整理したものを送付し,次回の検討会で主要な部分の内容を説明することとしたい。
山﨑室長: 次回は現地視察を行い,会議は奈良で行う予定である。また,過去に紹介した資料を整理したものを説明し,壁画の顔料や描線の劣化について,材料等の調査を今後どうしていくのかを文化財研究所と協力して事務局として説明する。

次回の検討会は現地視察を行うことを確認し,第1回検討会は終了した。

以上

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