資料4-2

資料 4-2

過去の高松塚古墳壁画の生物対策について その1

(昭和47年〜平成13年)

昭和47年〜51年 発見〜応急処置
 「カビは壁画発見直後から発生が見られたため,昭和47年4月に微生物調査を実施し,調査時に微生物数が増加すること,黒色や緑色を呈する菌が多いこと等が確認された。対策としてパラホルムアルデヒドをシャーレに入れて石槨内に布置し,効果があった。」
(国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会 第3回 参考資料1 より)

昭和47年4月6日・17日 高松塚古墳恒久保存対策調査会現地調査

『高松塚古墳応急保存対策調査会中間報告』(昭和47年7月29日)

調査の結果
D 石室内外の環境
(ⅲ) 微生物 空中と壁面において,微生物の採取調査を実施した。
空中菌の採取は,落下法によった。その結果,石室内調査によって室内の菌数が増加していることがわかった。壁面菌については,肉眼的にはその発生は認められなかった。しかし,採取培養の結果では東西両壁と床面各1か所から,菌が検出された。細菌対策としては,石室内作業終了時に,各約1g,計4gのパラフォルムアルデヒドを布置した。この薬効は,空中菌を殺滅する程度の少量であり,彩画への影響の無いことを期した。
学術調査と保護対策
B 学術調査の時期・方法など
(ⅲ)  学術調査期間中の保存科学的調査
a.埋め戻し土中のポリプロピレン布の検討
b.石室内の応急保存処置の結果の調査
c.4月閉鎖後の壁面の保存状況の調査
d.調査期間中の外気及び石室内の温湿度の測定と空中菌の採取
e.調査期間中の石室内の炭酸ガスと酸素の測定
f.その他保存上必要な調査

昭和47年9月25日〜10月12日 高松塚古墳総合学術調査会調査

10月10日 J.フォション(パスツール研究所地中微生物・生物科学部長)調査
11月29日 高松塚古墳応急保存対策調査会 『高松塚古墳応急保存対策調査会報告』

 前回の石室閉鎖時に,石室床上に布置した計4gのパラフォルムアルデヒドは,完全に気化し,石室内に残留していなかった。開口時の測定結果もあわせると,その量はやや僅少にすぎたのではないかと判断されたので,今回の閉鎖時には,1包1gを各2包4個所,計8g布置した。

昭和51〜52年 第1次修理

 壁画面の定点の拭き取りによる微生物相の調査を行った。目視によるカビの大きな発生は認められていない。

昭和53〜56年 第2次修理〜第3次修理第1回

 「昭和53年頃から石槨内に布置したパラホルムアルデヒドが結露水によって溶け,気化しない状況となった。これに呼応するかのようにカビの発生量が増加傾向を示し,
 昭和55年暮れから同56年にかけて大量に白色及び灰白色のカビが石槨内に発生し,絵画にも及ぶ状況となった。特に,
 昭和55年には,樹脂溶液を注入した箇所,剥落止めに用いたうす紙にもカビが発生した。」

(国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会 第3回 参考資料1 より)

これに対しては,
「これらのカビに対する処置としては,ホルマリン1:エタノール9の溶液で減菌したが, この処置部分に,白色粒上のカビが発生した(昭和56年2月)ので,トリクロルエチレン で除去した。なお,TBZ(防カビ剤)による防黴を実施したが,効果がなかった。
 昭和56年6月には高湿度の環境下でパラホルムアルデヒドで燻蒸する方法を開発した。」

(国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会 第3回 参考資料1 より)

*この間,修理仕様(剥落止めの方針・方法等)のように委員会で決定され記録された「仕様書」等の存在は確認できていない。現場におけるカビ等への処置法としては,空筆による物理的な除去,ホルマリン・エタノール溶液,トリクレンを用いた殺菌が行われた旨の作業メモがある。

「高松塚古墳壁画の修理器具と使用材料」(『国宝高松塚古墳壁画−保存と修理−』)

ホルマリン 殺菌用。消毒用アルコールとの混合溶液として用いる。
消毒用アルコール ホルマリンに混合させて用いるほか,手・器具及び準備室の消毒殺菌にも用いる。
パラフォルムアルデヒド 殺菌用。第1次・第2次修理ではシャーレや布袋に入れて,石室内に設置した。第3次修理からは燻蒸殺菌用として用いる。

昭和57〜平成13年 第3次修理〜定期点検

 昭和57年以降カビの発生は漸減し,昭和60年から平成13年まではほとんど抑制された状態となった。(国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会 第3回 参考資料1 より)
 この期間,定期点検時の観測定点の拭き取り,培養調査及び点検最終日にパラフォルムアルデヒド燻蒸を実施した。

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