資料 5-2
過去の高松塚古墳壁画の生物対策について その2
(平成13年〜平成19年3月)
※『高松塚古墳取合部天井の崩落止め工事及び石室西壁の損傷事故に関する調査報告書』(平成18年6月19日)より抜粋,一部要約
昭和59年 | 10月 | 取合部天井の崩落写真を確認 |
平成 2年 | 12月 | 点検日誌で初めて崩落事実を確認 |
平成 3年 | 12月 | 取合部の崩落度合いを確認 「長年にわたる取合部天井の土の崩落,水の侵入を抑えるため,取合部天井の土の崩落は,昭和59年に撮影された写真記録を皮切りに,平成2年以降は定期点検時(年1回程度)において頻繁にチェックされ,点検担当者から度々,工事の必要性が指摘されていた。(各年の点検日誌等により)」 ※平成元年以降,東京文化財研究所の担当者が作成した保存修理マニュアルが存在し機能していたが,全ての関係者間に共有されているものではなかった。(防護服の着用等) |
平成13年 | 2月13日 | 取合部天井の崩落止め工事(〜3月3日) |
2月28日 | 取合部でカビを確認 「平成13年春に取合部天井の崩落止め工事を実施したが,この時からカビが取合部及び石槨内に発生し,絵画にも及んだ。(国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会(第3回))」 |
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3月25日 | 定期点検(〜28日) 取合部に大量のカビを確認 「取合部から検出された主要なカビは,Penicillium sp.Aspergillus sp.,Fusarium sp.などで,石室内で例年検出されるものとほぼ同様のものが多かったが,ここ数年,石室内では検出されていない Cladosporium sp.やそのほかの不明種などもみられた。」 消毒用エタノール,パラホルムアルデヒド(PFA)燻蒸, 微生物調査を実施 |
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平成13年 | 4月〜8月 | 取合部点検 コートサイド159-エタノール製剤 |
9月26日 | 石室内点検(〜29日) 石室内にカビを確認 コートサイド159で殺菌,コートサイド123をアクリル樹脂(パラロイドB72)に練り込んで塗布(防カビ処置) |
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12月18日 | 石室内点検(〜21日) 石室内に大量のカビを確認 |
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平成14年以降 | 点検回数を増やす(月1回程度) | |
平成14年 | 10月 | 石室内に大量の黒いシミを確認 |
平成15年 | 11月 | 平成13年の工事箇所である擬土部分の除去を行い,土壌表面にポリシロキサン樹脂を塗布。この工事(処置)により取合部 のカビの発生は少なくなった。 |
平成16年度 | エタノール,PFA燻蒸を行うが,抜本的な対策にはならず,ゲル状の物質等が認められるようになった。 | |
平成16年 | 10月 | 発掘調査開始に伴い,墳丘上に覆屋を設置。墳丘への直射日光,雨水の影響を抑える効果もあった(墳丘上の覆屋は,その後1回の更新を経て,平成20年6月まで設置された)。 |
平成17年 | 6月27日 | 石室解体修理方針の決定 |
9月 | 石室解体修理方針に則り,その準備として墳丘の上下に冷却管を設置したが,カビやゲル状物質は完全には止まらなかった。 エタノールを資化するカビが存在する可能性が示唆されたことから,これ以降,イソプロパノールもあわせて使用された。 |
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平成18年以降 | 石室解体修理方針に則り,その準備として従来以上に石室内に頻繁に出入りすることとなったため,作業上の安全性からPFA燻蒸の実施は行わなかった。 |
(平成19年4月〜8月 石室解体作業)