資料 6

資料 6

壁画管理時の現場における事実関係等の記録

壁画管理時の変化が生じた諸要因

  • (1) 旧保存施設による制御の改善
  • (2) 取合部天井の崩落
  • (3) 白虎の薄れ
  • (4) パラロイドB72とカビの関係等

(1) 旧保存施設による制御の改善

「実際に運転を始めてみると,夏期には特に石室内に立ち入って作業をする場合など,外界からの熱の流入と作業者の体からの発熱で,準備室・前室の室温が26〜28℃にまで上昇することがあり,水系の冷却能力を強化する必要が生じた。
 このため,昭和51年8月に予備機として併置してあったもう1台の装置も同時に運転するよう改良して,水系の冷却能力を1000Kcal/hにまで高めた。この改良の結果,夏期における準備室・前室の平均気温を3℃程まで下げることができ,外界の影響や作業による温度上昇を小さくすることができた。」

「実際に運転を開始してみると(中略)石室の地下に位置する機械室の室温が,機器から発生する熱で夏期,40℃近くにまで上昇し,水系・空気調節系の冷却能力が落ちる恐れが出てきた。この点を改良するために,機械室内に水冷式の冷房装置を設置した。」

「昭和58年の年変化を例に取れば,石室内温度(床面)が16.1±1.7℃に対して,取り合い部土中温度が16.1±2.4℃である。この値は心配するほど大きなものではなく,すぐに対策を講じなければならない緊急の問題ではないが,制御の基準としている取り合い部土中の方が,制御対象の石室内より外界の影響を強く受けているわけであるから,今後機会を見て,取り合い部土中のもっと深い位置に温度センサーを埋め直すような改善をする必要があろうと考えている。

(『国宝高松塚古墳壁画−保存と修理−』文化庁編(昭和62年3月)

三浦定俊「高松塚古墳石室内温湿度と壁画保存の問題」P169・170より)

「(昭和51年)7月28日から31日まで試験的に行われた修理作業は,前室に氷柱を立ててしのぐありさまだった。

(『高松塚古墳は守れるか』毛利和雄著(平成19年3月)P67より)

(2) 取合部天井の崩落

昭和59年 10月 取合部崩落写真
平成2年 12月 点検日誌で初めて崩落事実を確認
3年 12月 取合部の崩落度合いを確認
9年 3月 崩落が小康状態
11年 3月 美術工芸課長から記念物課に工事を依頼するよう指示
11年 4月 現地で初めて取合部工事の調査
  5月 文化庁内で協議
12年 3月 定期点検・美術工芸課長が初めて取合部を視察
  6月 現地で調査(2回目)
13年 2月 工事(2月14日〜3月3日)
13年 3月 取合部に大量のカビ発生を確認

(3) 白虎の薄れ

昭和55年 12月 「白虎黒色部,筆にて拭い」(19日)
56年 1月 「黒いカビ汚れと一緒になって線描きが不明」(13日)
「白虎付近の黒い汚れは益々ひどくなっているように思える。

(当時の担当者の日誌や復命書(1月8日〜21日まで)より抜粋)
62年 3月 文化庁編『国宝高松塚古墳壁画−保存と修理−』発行
平成16年 6月 文化庁監修『国宝高松塚古墳壁画』発行
壁画の劣化報道(20日〜)

(4) パラロイドB72とカビの関係等
昭和51年 8月 壁画修理開始
55年 2月 前回(同年1月)にB72を注入した部分にカビ
  12月 前回(同年11月)にB72を注入した部分にカビ
56年 2月 4日前にカビ払拭した箇所にカビ
(パラロイドB72の)「塗布処置をした部分に対して,又もや,白いカビ状のものが生成し,それは側壁の主要部分や天井まで及んだ。TBZ溶液をテストした部分にも効果は見られず,今後の大きな問題となっている。」
(当時の担当者の日誌や復命書(2月7日〜20日まで)より抜粋)
57年 10月 「漆喰層のパラロイドB72の注入による固定・強化が順調に進んできたところで,昨年より壁面上のカビが新しい難問になりつつある。〜(中略)〜
 有効な防カビ剤として知られるTBZを含んだ紙を壁面上に貼り付け,カビの生育を見たが,この1年間で殆ど例外なく黒カビの発生が見られ,一部の紙には黄色のカビの発生も見られるなど,石室内の異常性を物語っていた。」
(当日の担当者の日誌や復命書(10月4日〜9日まで)より抜粋)

以上

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