高松塚古墳取合部天井の崩落止め工事及び石室西壁の損傷事故に関する調査委員会(第1回)議事要旨

1.日時 平成18年4月25日(火)19:00〜21:00
2.場所 東京會舘ゴールドルーム
3.議題

(委員)
石澤委員長、永井委員長代理、河上委員、川村委員、高鳥委員

(事務局)
加茂川次長、岩橋部長、亀井鑑査官、岩本記念物課長、山﨑美術学芸課長、建石技官、その他の担当官

4.概要

(1)文化庁次長あいさつ

加茂川文化庁次長よりあいさつが行われた。

(2)委員長選出

委員の中から互選により、石澤委員が委員長に選出された。

(3)委員長代理選出

石澤委員長において、永井委員を委員長代理に指名した。

(4)議事の取り扱いについて

事務局より、調査委員会の議事の公開について説明が行われ、了承された。

(5)国宝高松塚古墳壁画をめぐる経緯と現状について

事務局より、プロジェクターを用いて、国宝高松塚古墳壁画をめぐる経緯と現状について説明が行われ、以下のような意見交換が行われた。

(河上): 点検作業以外において、石室に入ったケースはあると思う。例えば、写真集を刊行するに当たって、大量の写真を撮影するといったことがある。石室内温度の上昇等、何らかの影響があったのではないか。
(山﨑課長): 写真撮影を含め、石室内に入る場合には、人の出入りにより大きな温度変化が生じないよう、石室内温度のモニタリング等をしながら対処している。
(河上): 写真集の撮影時には、何時、誰が、頻度はどのくらい石室に入ったのか。
(建石): 現在、その情報はない。写真集の撮影は平成14年秋頃から平成15年にかけて行われた経緯がある。現状を説明すれば、先月に奈良文化財研究所の協力を得て壁画を含めた石室内の撮影を行った。その際には、石室内温度が1℃以内の変化で収まるよう対処している。(温度が上がらないよう照明にはLEDを用いた。)
(山﨑課長): 石室内に入ったときは日誌を付けている。必要があればお示ししたい。
(建石): 写真集の撮影時の石室入室状況は改めて確認したい。

(6)高松塚古墳取合部天井の崩落止め工事について

事務局より、プロジェクターを用いて、高松塚古墳取合部天井の崩落止め工事について説明が行われ、以下のような意見交換が行われた。

(川村): 取合部も含め、きちんとしたマニュアルを作成していなかったのか。取合部と石室は完全に引き離された状況であって、密閉された空間と認識してよいのか。
(山﨑課長): 石室内の作業と異なり、取合部での工事は頻繁に行うものではないので、マニュアルを作成しなかったのではないかと考えられるが、今後本調査委員会で明らかにしたい。石室の盗掘孔には「フタ」が付いており、すき間はコーティングされ、この工事の際も密閉されていたと認識している。
(永井): 崩落止め工事を行った業者は文化財を扱うプロだったのか。または、文化庁の担当者が立ち会っていたのか。
(山﨑課長): 立ち会っている。業者については調査の過程で今後明らかにしたい。
(高鳥): 微生物の専門家としては、「石室(空間)」と「その外部環境」を考慮して、マニュアルを作成するのが常識である。取合部においても防護服を着用するなど、きれいな環境で行うべきではなかったのか。
(河上): マニュアルは、石室内部での点検を含めたものか(点検すべき観点等。)。燻蒸をするといったことも含めているのか。
(山﨑課長): そうである。
(河上): マニュアルの中身を確認したいので、次回、資料を提出願いたい。また、取合部でカビが発見されたとき、直ちに石室内を開封すべきではなかったのか。石室は凝灰岩で出来ており、いわば、スケスケの状態である。当然、内部を点検すべきと考えるところ。疑問に思う。
(建石): 石室の密閉性については、恒久保存対策検討会において、カビ対策で石室内を窒素で密閉する方策が検討された際、石室内にはかなりのすき間があると認められ、空気が漏れることが立証されている。

(7)石室西壁の損傷事故について

事務局より、プロジェクターを用いて、石室西壁の損傷事故について説明が行われ、以下のような意見交換が行われた。

(河上): 損傷事故が起きたことは問題とは思っていない。また、剥がれかけているのを剥落止め措置をしたのも問題ではない。発見当初から、この部分については、行ってきたことと認識している。壁面について人工的な形で措置(土を塗付)することが問題である。いわば、捏造とも言われかねない。土を付けたのは、上の部分(男子群像の胸部)と下の部分(男子群像の下方部分)の両方なのか。
(山﨑課長): 両方である。
(河上): 補彩をするといった、新たに手を加えることが問題である。
(山﨑課長): もともと土で汚れていた部分であり、土を殺菌した上で水で溶いて補彩したもの。理由については調査委員会で明らかにしたい。
(川村): 作業日誌の位置づけを確認したい。チェック体制は働いていたのか。
(山﨑課長): 作業日誌は「記録」として東京文化財研究所が記載したもの。また、研究所等の日誌は文化庁においてチェックしていないと思われる。
(石澤): もう一度見直すといった作業が必要ではなかったのか。
(高鳥): 日誌のチェック体制については、詳細に調査しないといけない。
(永井): 一般論であるが、説明責任とは、「結果責任を伴う説明責任という意味」である。その視点で今後聞いていきたい。

(8)調査委員会における調査事項の検討及び進め方について

事務局により、調査委員会における調査事項の検討及び進め方について説明が行われ、以下のような意見交換が行われた。

(川村): 事実関係を整理することが肝要。組織として情報を判断する仕組みが重要。
(永井): 事案の経緯を掴みながら対応していきたい。
(河上): 調査結果は、次に反映できるようにしなければ意味がない。単に過去をほじくり返すのは意味はない。文化庁が謝るだけの話である。事実を記録して整理し、明らかにすることに意味がある。
(高鳥): 本日、壁面の白くなった部分の状況について説明があった。調査事項の「3.その他」案件であるが、報道されてからではなく、文化庁において前もって、情報を提供していただきたい。
(石澤): 新たな事実があれば文化庁から申告されたい。それは、「3.その他」でやりたい。将来につなげる建設的な委員会としたい。

(9)報告書の提出とヒアリング対象者について

関係者からの報告書の提出とヒアリングを依頼する関係者の選定については、委員長に一任された。

(10)ヒアリングの非公開について

関係者からのヒアリングについては、事実関係を正確に把握するために関係者本人が話をしやすい環境をつくり、円滑に進行出来るよう必要な部分について、調査委員会において非公開とすることが適当と決定された。

(11)閉会

次回の日程は調整することとし、第1回の委員会は終了した。

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