国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会(第1回)議事要旨(案)

1.日時
平成16年6月4日(金)10:30~13:00
2.場所
東海大学校友会館「阿蘇」の間
3.出席者
(委員)
青木、有賀、石崎、岡、加藤、金子、鈴木、田辺、百橋、増田、町田、三浦、三輪、渡辺の各委員

(文化庁)
素川文化庁次長、木曽文化財部長、湯山文化財鑑査官、吉田伝統文化課長、下坂美術学芸課長、永山記念物課長、島田美術学芸課課長補佐、林主任文化財調査官ほか関係官
4.概要
(1)
文化庁次長あいさつ
素川文化庁次長よりあいさつが行われた。
(2)
委員及び文化庁出席者紹介
委員及び文化庁出席者の紹介が行われた。
(3)
国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策に関する調査研究について
事務局から、本検討会の設置の趣旨について説明が行われた。
(4)
座長の選出について
座長に渡辺委員が選任され、また、副座長として三輪委員が指名された。
(5)
議事の取扱いについて
会議の公開等について説明が行われ、了承された。
(6)
高松塚古墳壁画の現状及び課題について
事務局から資料に基づき説明があった後、以下のような意見交換が行われた。
(以下委員:○、△:事務局)

○:
石槨内のカビは、土壌から出てきているのか。また、絵の上にカビが出にくいのは顔料が関係しているのか。
△:
カビについては、詳しいことはわからい。東大の杉山先生からは、虫が石槨内を歩き回ってカビをまいている可能性も指摘されている。顔料中の鉛分との関係が指摘はされているが、3週間に一回の点検を怠ると、絵の上に発生する懸念がある。
○:
取り合い部にカビが生じやすとのことだが、コンクリートだからか。
△:
生じやすいということはできる。
○:
石槨内で発見された虫は、死んでいるのか。
△:
生きている場合もある。最近では、5月19日の点検の際に発見したハサミムシは、生きていた。
○:
壁画の剥落の危険がある部位の診断はどのように行うのか。
△:
剥落止めの専門家が、肉眼観察や、そっと針でつついて状況を観察することになる。
○:
保存施設については、設備の更新だけではなく、保存施設そのものも考え直すということか。
△:
単なるリニューアルで済むのかどうか検討会で御議論いただきたい。
○:
保存施設の改善を行う場合、石槨内の環境全体の変化についても考えなくてはならない。
○:
保存施設については、石槨内の環境だけを捉えて考えるのではなく、墳丘全体で環境を捉えていく必要がある。
○:
壁面の水分含水率が上昇しているところは、シートの隙間から雨が入ってきているのか。また、シートが緊急対策で非常に有効であったとのことだが、今後墳丘の上層部を覆うことなどを考えているのか。
○:
壁面の水分含水率が上昇しているところは、シートの隙間から雨が入ってきているのか。また、シートが緊急対策で非常に有効であったとのことだが、今後墳丘の上層部を覆うことなどを考えているのか。
○:
壁面の含水率の上昇率については、シートの隙間から入ってきているというよりは、雨等で墳丘周囲の含水率が上がってきて上昇してきたという感じがするが、測定結果からは判断できない。
△:
墳丘部の上層部をどうするかについては、壁面の保存の在り方や環境維持の在り方の中で、総合的に御検討いただきたい。
○:
シートをかける前は、壁面の含水率が高いところでカビの発生が見られた。シートをかけた後は、壁面の含水率は平均化してきている。これは好ましい傾向なのか。
○:
壁面の含水率が安定してきていることはカビに対してかなり効果があるが、カビは100%の湿度環境だけではなく、少し乾いたところでも発生するので、今後十分検討していかなくてはならない。
○:
壁画保存がはじまった頃、壁面の定点を拭き取って、菌の培養などを行った場合、石槨内の環境把握を行っていたが、現在、定点観測的なことを行っても石槨内の環境の把握は難しいのか。
○:
以前は石槨内が安定しており、それなりの意味はあったが、現在は、定点観測だけでは石槨内の環境を把握することは難しい。
○:
壁自体に対するカビ発生メカニズムの研究はどうなっているのか。
○:
剥落片を観察しても、漆喰表面に表れていないが、内部には菌糸が入っている。カビについては、きめ細かい調査や研究が必要ではないか。漆喰にカビを発生させる実験については、漆喰のアルカリ性が強いため、培養するためのサンプルを作るのが難しいのが現状。
○:
相対湿度や温度を管理することによって、カビの発生は防げるのか。
○:
カビの専門家によると、湿度を65%程度に落とすことが可能であれば、カビの発生を抑えることはできるとのことである。
○:
恒久的な保存を考えるとなれば、湿度を下げることを考えなければならないが、湿度を下げた環境をどのように作っていくのか。また湿った状態にある壁画をどのように護るのかを考えて行かなくてはならない。
○:
恒久対策を考えるのも重要だが、恒久対策ができるまでのカビ対策も重要である。カビ除去の際、壁面表面からどの程度まで殺菌されているかなどの確認はできないのか。
○:
例えば、パラホルム燻蒸では、ガス密度がたりない部分の菌を完全に殺すことは厳しいと思う。アルコール消毒については、かなり滅菌されていると思う。
○:
カビの問題と壁面の剥落については、因果関係があるのか。
○:
カビの問題と壁面の剥落の因果関係は、わからない。

(7) 国宝高松塚古墳壁画恒久保存に関する調査研究の検討事項について
 事務局から資料に基づき説明後、以下のような意見交換が行われた。検討事項は了承された。

○:
20年前の石槨内の温度は16度であったものが、現在は18度ということだが、温度を下げれば、カビの発生は抑えることができるのか。
△:
その辺りの議論については、緊急保存対策検討会でも意見が出されており、一度墳丘をしっかり調査して、土で墳丘をしっかりと覆うことで温度が下げられるのではないかという意見もあった。この辺りは、検討会でご検討いただきたい。
○:
カビの発生については、湿度を下げることは、かなり効果があるが、温度を下げてもカビの発生を止める効果はあまり期待できない。
○:
発掘調査を行う際に、覆屋のようなものを作ることは考えているのか。また、墳丘の竹の根をどこまで除去するのかということも考えなくてはならない。
△:
その辺りについては、作業部会で検討を行い報告したい。
○:
キトラの発掘もあるが、発掘計画はどうなるのか。
△:
記念物課と調整して進めていくことになるが、今年の秋以降になると考えている。
○:
壁面の劣化状態の精密検査を始めているということであったが、作業部会で是非詳しい調査を行ってほしい。
○:
現在、高松塚の壁面の剥落止めは、緊急度の高いところ優先するということで、壁面全体の20%程度しか剥落どめが終わっていない。今後、剥落止めが終わっているところの壁面の状態や剥落止めを行っていないところで壁面が弱っているところがあるのかどうかの調査は必要である。

(8)
その他(ラスコー洞窟視察報告)
事務局から資料に基づき報告が行われた。

以 上

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