「特別史跡高松塚古墳」発掘調査計画(案)

平成16年8月10日
  1. 1.発掘調査の目的
    「国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策」の一環として、以下の諸点を解明すべく古墳の発掘調査を実施し、得られた調査成果を、壁画の恒久保存に生かすことを調査の目的とする。
○解明すべき課題
(1) 墳丘の現況(木根や版築の損傷状況、墳丘の変形状況)が壁画保存にどう影響を及ぼしているか、それらの相関関係を追求する。
(2) 築造当初の古墳の規模、形態、構造(周濠の有無など)を明らかにし、 古墳の埋没状況が壁画保存に与える影響を究明する。
(3) 丘陵を開削してどのように古墳が構築されているのか、古墳全体の築造 方法を解明し、築造時の排水処理計画を明らかにする。
  1. 2.発掘調査対象地
    フェンスに囲まれた史跡指定地の内の410㎡(フェンス内676㎡の内、壁画保存に影響のない保存施設建設時の盛土部分と墳丘南側急斜面地を除く範囲)と、北・西側に隣接する未指定地300㎡の計710㎡を対象に、面的な発掘調査を実施する。
  1. 3.発掘調査期間
    発掘調査に必要な諸手続や覆屋の建設を平成16年9月中に行い、本格的な発掘調査を10月に開始し、年度内(平成17年3月中)に完了する。
  1. 4.発掘調査体制
    発掘調査は、文化庁の委託を受けた(独)文化財研究所奈良文化財研究所(飛鳥藤原宮跡発掘調査部)が、奈良県教育委員会(橿原考古学研究所)、明日香村教育委員会の協力のもとに実施する。

5.発掘作業工程

(1)発掘調査着手前の作業
  1. (1)西側斜面を中心に残る竹の伐採・搬出。
  2. (2)あわせて廃土置き場となる西側隣接地の草刈り等、調査環境の整備。
  3. (3)測量基準点の設置
(2)覆屋の建設と調査準備
  1. (1) 防水・断熱シート除去後の調査となるため、石室に急激な温湿度変化の影響を与えぬよう、仮設の覆屋を設置して発掘調査を行う。
    覆屋の規模は、石室を中心に土嚢とシートを敷設した範囲、東西最大26m、南北最大16.5mを覆う範囲(面積約380㎡)とし、壁は一部ネット張り、屋根は採光のため透明波板張りとする。
  2. (2) 覆屋完成後、昨年9月に敷設した仮保護施設(土嚢、排気管、シート・ネット類)を撤去。
  3. (3) 調査用プレハブの建設。
  4. (4) 設置してある電気探査用配線は撤去し、発掘終了後に復旧する。
    含水率計、温度計などは残して発掘期間中もモニタリングを実施する。
(3)発掘調査

第1工程 墳丘調査 (10月~)

  1. (1) 調査区の設定 、土層観察用ベルトと小地区の設定。
  2. (2) 竹根とネズミモチの木の根の除去。
    1. 除去した根は、表層の腐植土とともに場外搬出して廃棄処分する。
    2. 整備に伴う盛土部分も抜根し、腐植土の除去を行う。
  3. (3) 竹根の除去と一部並行しながら墳丘版築土の検出を行う。
    1. 廃土はベルトコンベアーで西側の廃土置き場へ搬出。
    2. 作業時以外には、墳丘をビニールシートで被覆して保護する。
  4. (4) 版築土の損傷状況等の精査。あわせて盗掘坑や昭和47年の調査区の埋め戻し状況を確認する。
  5. (5) 現地での作業部会の開催(墳丘の損傷状況や修復方法等の検討)。
  6. (6) 写真撮影と精密な墳丘測量図の作成。
  7. (7) 墳丘部調査後には墳丘の保護措置を図る(ビニールシート等で一時被覆)。

第2工程:墳丘裾回りの調査 (12月~)

  1. (8) 墳丘裾回りの竹の抜根作業。
    1. 除去した根は、表層の腐植土とともに場外に搬出して廃棄処分とする。(この作業は効率上、墳丘部の抜根と一連で行う)。
  2. (9) 東部→北部→西部の順で、墳裾からフェンス際まで、墳丘裾回りの調査を行う。
    1. 昭和47年度トレンチ(2本)の再掘と土層図の再検討。
    2. 昭和47年度トレンチを利用して、墳丘裾回りの埋没状況を確認し、上から順次面的に掘り下げる。
    3. 旧蜜柑畑の造成面と範囲、その埋め立て土の確認と、埋め立て土の掘り上げ。
  3. (10) 東北部の含水率が高い原因の究明。
  4. (11) 周濠など、築造時の排水施設の確認。
  5. (12) 現地での作業部会の開催(高含水率部分の原因の確認と処置等の検討)。
  6. (13) 作業部会の検討結果に沿った調査の遂行と処置の実施。
  7. (14) 現地説明会の開催と調査成果の公表。
  8. (15) 写真撮影、精密な測量図の作成。

第3工程:指定地内の埋め戻し、復旧作業

  1. (16) 廃土置き場が狭小なため、一端、指定地内を埋め戻し、復旧作業を行う。
    1. 墳丘部と墳丘裾回りでは、埋め戻し・復旧方法が異なる。
      墳丘部………
      再度土嚢と排気管を設置し、断熱・防水シートとネットで被覆。
      墳丘裾回り……
      埋め戻し方法を検討の上、掘り上げた土を中心に埋め戻しを行う。埋め戻し後に、排気管を設置し、上面を耐熱・防水シート、ネットで被覆して発掘前の姿に復旧する。
  2. (17) 覆屋の解体。
第4工程:
フェンス外の西・北側隣接地(墳丘外縁部)の調査 (3月)
古墳の築造方法と外周施設の解明に向け、フェンス外を、北側の遊歩道際から西側隣接地にかけて面的に調査する。昭和47年の調査で確認された円形台状の基底部(墳丘の土台部分)が、丘陵を開削してどのように構築されているのか、古墳全体の築造方法を解明し、築造時の排水処理計画を明らかにする。
  1. (18) 表土剥ぎ。
  2. (19) 遺構検出作業。
  3. (20) 写真撮影と平面実測・測量図の作成。
  4. (21) 埋め戻し作業……遺構面に砂を巻き、掘り上げた土を直接埋め戻す。
  5. (22) 調査終了に伴う撤収作業。


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