田中委員 |
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C案については,現状で石室のレプリカを見せる意義はなく,保存施設も見学のために作った施設でもないため,取り得ない。A案及びB案については,本整備まで10年以上あることを考慮すると,できる限り本来の形状の姿が望ましく,B案の方が適当ではないかという点,また,B案のデメリットである保存施設を撤去するために墳丘の断面を2回露出するという点については,墳丘の断面は版築状でかなり安定しているため,心配するほどではない。B案が望ましい。
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岡村委員 |
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古墳が墓として,また,遺跡としてこれまでなかなか理解されなかった。B案に賛成し,遺跡としての本来の姿を見せることが必要。
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河上委員 |
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仮整備の位置づけを明確にすることが必要。C案のように石室レプリカを設置するとそのまま放置されるおそれがあり,元に戻すのであれば,不必要なものを入れることはない。古墳そのものを本来の形で見せることにより保存施設を撤去する整備を考えるべき。
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肥塚委員 |
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仮整備は本整備を見据えた形で考えるべきではないか。石室のレプリカを入れることはイミテーションであっても社会教育的な観点が非常に大きな意味を持つと思う。そこに壁画あったという感動を国民に知ってもらう意味において,C案もいいのではないか。
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百橋委員 |
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新たにD案として,高松塚古墳が発掘される前の状況を再現することが考えられる。石室のレプリカに部分的に壁画を書き入れ,10年間埋め戻す。そして,壁画の中のカビの発生状況の記録などを今後の参考とできないか,つまり,発掘前の状況を再現することで他の古墳の保存に必要なデータを入手することができるのではないか。
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藤本座長 |
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壁画を描いた石室のレプリカを戻して密閉するということか。
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百橋委員 |
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現在,実験で使用している石室レプリカの凝灰岩に漆喰の状態を再現し,絵を書き入れて埋め戻しておく。保存施設も撤去して10年間置いておく。今後のデータをとるためにどうだろうか。
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田中委員 |
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発掘前の古墳の状態を再現することはできない。また,公開については,本整備の段階でどのように見せるのかという問題であり,仮整備段階での公開は本来的な問題ではない。
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肥塚委員 |
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仮整備で公開できないということは,本整備でも無理と受け取っていいのか。出来れば,石室のレプリカを入れて実験データをとったり,出来る限り色々な人に見てほしい。場合によっては,元に戻すのに10年ではなく20年かかるかもしれない。
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田中委員 |
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本整備で公開できないとは言っていない。本整備に向けた調査の段階で公開の仕方を検討した方がよいと言っている。不安定な状況下で公開するようなことはなく,仮整備の段階ではそこまで見せる必要はない。
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岡村委員 |
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解体後の石材の状況を調査して,どうしたら元に戻せるかを検討した上で,本整備の段階に入る方がよい。まずはできることから始めること。
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肥塚委員 |
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本整備のイメージはどのようなものか。
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田中委員 |
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これから様々な調査によって条件を整え,墳丘の復元を工夫すれば安定した状況を作り出すことも可能である。
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肥塚委員 |
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1300年近く,重い石が古墳の中にあった。一旦重量物を挙げると,そこの土の状態は非常に変化することとなるため,本整備の段階でかなり大規模な工事を行う必要になると思う。従って,仮整備の段階から検証するために,同じ重量の石を置いた方がいいと思う。
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河上委員 |
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石室を元に戻すことはおそらく不可能であろう。戻せるといった状況になったら戻したらよく,基本的には戻せないんだという意識が適当ではないかと思う。C案に賛成である。
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三浦委員 |
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C案で保存施設の中を公開することになると,人の出入りでカビの問題がかなり出ることが予想される。維持管理の点で難しい。B案の方が適当ではないか。
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小林委員 |
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底石も含めて解体するのか。
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岩本課長 |
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底石も含めて解体する計画となっている。
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小林委員 |
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そうすると,底石を取り除いた墳丘の状態は相当脆弱になることが予想される。墳丘の全体のバランスを保つためには,何らかの施設を中に含ませる必要があるのではないか。仮整備に関しては,墳丘の下部構造を正確に把握した上で検討することが重要。
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河上委員 |
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石室が8度傾いているとの説明があったが,築造時からのことか。それともその後に沈んでいったものか。
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内田作業部会委員 |
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測量の調査にあたったが,調査の中で墳丘に地震のものと思われる断層なども見つかっており,そういった影響を受けて南西方向に石室が傾いて水平がとれなくなってしまった状態とみている。 |
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岡村委員 |
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天井も同様の方向にずれていることが判明している。
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松村作業部会委員 |
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底石にもかなりのひびが入っており,全体的に大規模地震の被害であると考えられる。 |
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岡村委員 |
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石室を戻すとなれば色々と補強して行うことになるが,十全なかたちで戻せるか,かえって心配である。
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肥塚委員 |
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石室を戻すとは,今の複雑な傾斜をつけたままということか。
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岡村委員 |
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割れているものを繋いだりして,石室を元通り墳丘に戻すということ。
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肥塚委員 |
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凝灰岩はかなり弱くなっているので,相当慎重に行わないと難しい。本整備も抜本的な新しいアイディアを入れた形態でなければ可能とは言えない。
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藤本座長 |
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B案が大勢を占めているが,事務局側として,方向性について何かあるか。
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山﨑課長 |
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仮整備については,来年度の概算要求に反映するので,検討会で一定の方向性を結論付けてもらいたい。また,本件は,地元の意向を踏まえながら考えていく必要もあり,明日香村の関村長からも発言をいただければと思っている。
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関村長 |
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高松塚古墳はお墓なので,B案の形で原状を回復するのがよりよい方策と考えている。仮整備の間,石室を戻す方法など,様々な調査をし,まずは,B案の方向が適当ではないか。
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藤本座長 |
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様々な意見が出たが,本日の結論としてB案を仮整備案をすることでよろしいか。この案では,発掘区は埋め戻す,現保存施設は撤去する,墳丘,周溝は復元することとなり,具体案については,実施前に検討会に作業部会及び事務局で整理したものを報告していただきたい。
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