資料1

資料1

国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会(第8回)議事要旨

1.日時   平成19年3月22日(木)14:00~17:00

2.場所   奈良文化財研究所平城宮跡資料館講堂

3.出席者  
(委員) 藤本座長,三輪副座長,有賀,石崎,岡村,梶谷,河上,川野邊,肥塚,杉山,白石,関口,高瀬,高鳥,百橋,福田,鉾井,増田,松田,三浦,三村の各委員
(文化庁) 土屋文化財部長,亀井文化財鑑査官,山﨑美術学芸課長,岩本記念物課長,ほか関係官
(作業部会委員) 高妻委員,松村委員

4.概要
(1) 文化庁挨拶
  土屋文化財部長から挨拶を行った。

(2)

石室解体に向けた進捗状況について

墳丘部の発掘調査に実施状況(松村作業部会委員)(資料3)
石室内の状況(事務局)(資料4)
石室への環境対応(石崎委員)(資料5)
カビ等の微生物の発生状況(三浦委員,杉山委員)(資料6)
石室解体準備と石室調査の実施状況(肥塚委員)(資料7-1)
石材の搬送(高妻作業部会委員)(資料7-2)
壁画の養生作業の実施状況(川野邊委員)(資料8)
石室解体作業と発掘調査及び養生との関係について(事務局)(資料9)
  上記8項目について,それぞれの担当者から説明が行われた。
事務局から,資料10,11に基づき,石室解体作業に当たっての対応,リスクの想定等について説明,文化庁が最終的に全責任を負うものであり,文化庁にバックアップ体制を構築して万全の体制で臨んでいく旨の報告があった。その後,以下の質疑応答が行われた。
松田委員: 松村作業部会委員に発掘調査で判明した地震痕跡について,もう少し詳しく教えていただきたい。

松村作業部会委員: 地震の専門家によれば,南海地震による被害と推測される。石室に沿った亀裂,そこから放射状にはしる亀裂,さらに同心円状にはしる亀裂がある。それらの亀裂には全て植物の根が入りこんでいる。
石室上部には白色版築層の断層があり,かなりやわらかい土が浸透している。そこに虫も入り込み,カビの生育も確認できる。これらのカビが石室の表面を汚し,また,取合部側から亀裂のやわらかい土に沿ってカビが侵入したのであろう。

松田委員: 取合部から入ったカビが,発見当初からあった石室の亀裂等から入り込んで,石室の中に被害をもたらしたと考えられるが,発掘調査の過程の中で,この点についてどのように考えているか。

松村作業部会委員: 取合部から石室の側面に回って,若しくは上面に回って漆喰の亀裂からカビが中に入るという可能性は非常に大きいと思う。現に墓道部分の西側を検出し,版築層を確認すると,全てカビが取合部から入っており,壁画面も汚している。先ほどの杉山委員からの分析にもあるように,石室内特有のカビとまた種類が違う。漆喰に特有のカビ,石材を好むカビ,土を好むカビと様々な種類があって,取合部からのカビが直接壁画を汚損したか否かは更に慎重な分析が必要。

松田委員: 現地視察のときに説明があったが,取合部から土を一枚剥がすと石室の外側の面にべったりとカビがついているという。文化庁に確認だが,平成13年の取合部天井の崩落止め工事において,そもそも崩落を認識したのはいつか。

山﨑美術学芸課長: 点検作業日誌上,取合部の石の崩落の記録があるのは,平成2年である。

河上委員: 石材を構成する凝灰岩は,水分を多く含む石で,水分がなくなると強度が強くなる。水分があると砂なので弱い。石材を取り出すには,乾燥させた方が強度が強く,質量が軽いので,一番安全と思われる。但し,漆喰層は乾燥させると悪くなるため,その辺りの石の表面の乾燥度あるいは強度をどの程度調査しているのか。

肥塚委員: 確かに表面の状態は乾燥していおり,大体10数%程度。内部はまだ測定できないが,今後きちんと測定し,治具で把持できるか否か検討は必要。現時点では,現状の検討している治具で石材の強度から見て大丈夫と判断している。

質疑応答後,解体作業の説明,石室解体作業実施要領及び石室解体作業によって想定される事態分析例とその対応について,検討会として了承した。
最終的な責任は文化庁にあり,検討会としても石室解体作業に向けて全面的な協力を行うことも併せて了承された。

(3) 仮整備の実施作業計画案について
  高瀬委員から高松塚古墳仮整備基本計画について説明が行われた後,以下の質疑応答が行われた。

三輪副座長: 「墓道の南の四角い石」というか,個人的には「墓碑銘」と思うが,この四角い石が前室の下に埋まっている状態は仮整備の段階でどのようにするつもりか。取り外して資料館等で展示ができる形をとるのか。

小野主任調査官: 墓道に残っている石については,仮整備でもあるので,そのまま残すことを考えている。

三輪副座長: この四角い石はおそらく何度も移動しているものなので,原位置を調査し,整備での取扱を検討していただきたい。

小野主任調査官: 先生の御意見を参考にしながら,整備を最終的に決めたい。

関明日香村村長: 古墳の保存管理,壁画の修理も含め,順調に進捗することを期待している。10年間の修理についての方向性,10年後の保存の方向性が見えにくいが,長期的な課題であると認識。様々な意見を参考にする委員会を組織していただきたい。

松田委員: 壁画の劣化原因の調査を本検討会で行うのか。調査の結果後のビジョンについて聞きたい。

山﨑美術学芸課長: 本検討会の検討事項としてお願いしたい。また,壁画の修理については,仮設修理施設において1枚1枚の石材,全部で16枚を搬入し,表面の汚れ等の除去,剥落防止のための措置等を行う。

松田委員: 小坂前文科大臣のときに,壁画の損傷事故の問題を契機にカビ問題に関する研究会を立ち上げたと思うが,文化庁は文科省とタイアップして行うのか。

山﨑美術学芸課長: 3月中にカビ等の研究会の報告書が出ると聞いている。文化財関係のカビ対策ということで,高松塚古墳に特化した話ではないが,そこで得られた知見等は参考にしていきたい。

松田委員: 壁画の劣化原因の調査を行い,今後如何に現地で古墳壁画を保存するかという方向に進んでいかなければならない。

関明日香村村長: 現地保存は保存の手法の中の一つ。昔決めたことが全て正しいというわけではないと思う。

質疑応答後,仮整備の基本計画について検討会として了承した。また,事務局において文化財保護法に基づく特別史跡の現状変更の手続きを行う旨を確認し,第8回検討会は終了した。

以上
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