資料2

資料2

国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会作業部会(第10回)議事要旨

1.日時   平成19年3月13日(火)14:00~17:00

2.場所   奈良文化財研究所平城宮跡資料館講堂

3.出席者  
(委員) 石崎座長,内田,梶谷,川野邊,木川,岸本,高妻,肥塚,佐野,成瀬,松田,松村の各委員
(文化庁) 山﨑美術学芸課長,岩本記念物課長,ほか関係官

4.概要

  1. (1)文化庁挨拶

    山﨑美術学芸課長から挨拶を行った。

  2. (2)石室解体に向けた進捗状況について
    1. 墳丘部の発掘調査に実施状況(松村委員)(資料2)
    2. 石室内の状況(事務局)(資料3)
    3. 石室への環境対応(石崎座長)(資料4)
    4. カビ等の微生物の発生状況(佐野委員)(資料5)
    5. 石室解体準備と石室調査の実施状況(肥塚委員)(資料6−1)
    6. 石材の搬送(高妻委員)(資料6−2)
    7. 高松塚古墳壁画の養生の実施状況及び計画(川野邊委員)(資料7)
    8. 今後の石室解体のスケジュール(石崎座長)(資料8)

上記8項目について,各委員から資料に基づき説明が行われ た。その後,以下の質疑応答が行われた。

梶谷委員: 取り上げから修理施設への搬入までの短時間に温湿度環境が10℃・90%から20℃・60%に変化するが漆喰に大きな影響はないのか。

石崎座長: 例えば,環境が15℃・60%であれば,漆喰面での結露は回避できる。ただし,石の中の水分量が非常に多いので,徐々に石や漆喰から周りに水が移動していく形になると思われる。その点については,修理施設の修理担当者が目に見えるので対処できると思われる。

川野邊委員: 漆喰面への影響で問題なのは結露である。温湿度の点で結露が生じないということであれば,問題はない。

佐野委員: 搬送の天候時,特に風については備えた方がよい。また,降水量の観点から,どの程度雨量が予想されれば搬送を一時中断するなどある程度の目安を作った方がよい。

岩本記念物課長: 壁画の養生によってすぐに壁面は乾かないということか。

川野邊委員: 半日ぐらいでは全く乾かない。

岩本記念物課長: 修理施設の湿度は60%であるが,壁面自体は養生されているため,状況に応じて乾かしていくということか。

川野邊委員: 石材は,十分な水分量を有しているため,そのまま乾かしていく。

岩本記念物課長: 石材の取り出し時において,AゾーンからBゾーンに石材を運び込んだ際,仮にBゾーンで何か作業を中断せざるを得ない状態が生じた場合,Bゾーンでどの程度石を置いておくことが可能なのか。

石崎座長: Bゾーンは温湿度を制御した形態にはなっていないため,結露を考慮すれば,長くて1日程度ではないかと思われる。

佐野委員: 微生物の発生という観点からは,Bゾーンの環境条件,取り出した石材の温度条件,外部の環境を踏まえると1日以内には搬送するのが適当ではないかと思われる。

岩本記念物課長: 結露は生じたらだめということか。

佐野委員: 結露が生じても1日以内に修理施設に搬入できれば回復可能ということである。

肥塚委員: 凝灰岩は吸水が非常に高いので,簡単には結露は生じない。

石崎座長: 石材はそうかもしれないが,漆喰の表面はあり得るのではないか。特に雨が降っているときなどは結露が生じる可能性があると思われる。

肥塚委員: Bゾーンでは石材を回転させる(漆喰面を上向き)作業を行う。非常に神経の張り詰めた作業になると思うので,Bゾーンに2・3日も石材を置くことは無理な話であり,連続して作業を進めることができるよう計画を立てる。

岩本記念物課長: 万が一,何らかの事由でBゾーンで石材を止めておく必要がある場合,現場で起こりうる状況を判断する体制になっているのかどうか。

佐野委員: 石材周辺だけをシートで覆うなどの方法で,その空間だけ湿度を調整するなどの手法は幾らでもあるので,環境的にある程度結露を防止することは現場で対応できる。但し,防犯上の問題があるので,監視は行うとしても,なるべく早く修理施設まで搬入した方がよい。

岸本委員: 「天井石4」が北に大きく張り出しているということだが,発掘時にその下の部分の土を取り除くことで天井石が傾く危険はないのか。

松村委員: 「天井石4」の下の間には2センチメートル近い空隙があるため,下の部分の土を取り除くことはなく,周囲を切れば取り上げることはできると考える。

岸本委員: 再度意見表明するが,床石は取り外すことはないと考える。保存修理が必要なのは壁画の部分であり,床石を残せないのか。基本方針では元に戻すとあるが,具体的に元に戻すことが可能となった時点で床石を取り外せばよいのではないか。

肥塚委員: 床石も石室の一部であり,修理が必要な状態である。また,床石を改めて取り出すというのは非現実的である。取り出せる時に取り出さなければもっと状態は悪くなると思われる。

山﨑美術学芸課長: 本件については,基本方針として既に決定していることであるので,今回は解体に向けた審議として議事の進行をお願いしたい。

成瀬委員: 天井石と天井石の間にある漆喰は除去してしまうのか,取り外して元に戻すのか。

岩本記念物課長: 調査,記録しつつ,除去する予定である。

その後,事務局から,石室解体作業に当たってリスク回避の準備,情報公開等について説明を行った。また,今後の体制については,現場責任者の一義的な判断が重要であり,その上で文化庁が最終的に全責任を負うものである。文化庁にもバックアップ体制を構築し,直近の検討会にリスク対応について整理したものを出す旨の報告があった。その後,以下の質疑応答が行われた。

肥塚委員: 作業には様々なリスクが生じることは当然であって,事前にこんなリスクがあるから行ってはいけないなど,制限をされることで新たなリスクが生じることもあり得る。現場としては,現場の判断をある程度拡大し,まかせてもらうことを検討してほしい。

山﨑美術学芸課長: 個々のケースについては,ケースバイケースで判断するしかないと思う。事前に予見できる危険がどの程度なのか,予見可能であるならきちんと回避措置がとられているのかといった点が抽象的ではあるが判断のポイントになる。

山﨑美術学芸課長: 松村委員からの報告で,新たな3つ目の亀裂が見つかったとあるが,それによって当初予定していた作業に影響があるのかどうか。

松村委員: この亀裂による発掘計画の変更はない。しかし,石室が全体的に南西方向に7センチメートル程度傾いていることが判明し,石室全体を露出したときに自立しないリスクが高いことから,解体作業に合わせて適宜段階的に発掘を進めることが適当ではないかと思っている。解体作業班や養生班と協議し,より安全性を担保するという意味では,段階的に側石を露出させながら記録をとり,石材を取り出し,次の石材を取り出すといったような方法としたい。

肥塚委員: 予め危険が予見されるのであれば,現時点で計画を変更することは必要なことであると考える。

川野邊委員: 養生の最中に発掘が行われることになるとすれば,発生するホコリにどう対処するかを検討したい。

山﨑美術学芸課長: 段階的に発掘をしながら解体を進めるといった場合に,例えば支保工で支えるとか,ベルトで固定させるといった方法を併用させることもあるのか。

肥塚委員: 当然そういう方法をとる。何らかの形で補強することは必要である。

松村委員: 人身上の安全面から,下段調査区壁面の土止め支保工を行う。また石室自体の支保工も現在検討中である。

肥塚委員: 当然そういう方法をとる。何らかの形で補強することは必要である。

松村委員: 人身上の安全面から,下段調査区壁面の土止め支保工を行う。また石室自体の支保工も現在検討中である。

議論した内容は事務局で取りまとめを行い,検討会に報告することとなった。

  1. (3)仮整備の実施作業計画案について

    内田委員から高松塚古墳仮整備基本計画について説明が行われた後,以下の質疑応答が行われた。

岸本委員: 南側の調査を行い,本来の墳丘がどこまでだったのかを確認する必要がある。

内田委員: 調査は南東部,南西部についてもトレンチを入れる予定となっている。調査の中でその辺りのデータを踏まえ仮整備に反映したい。

  1. 本作業部会で検討した内容を踏まえ,3月22日に行われる検討会に報告することを確認し,第10回作業部会は終了した。

以上

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