文化政策部会におけるこれまでの主な意見

1.地域文化の基本理念

(1)地域文化の振興の必要性

  • 文化とは、地域で生まれ、育まれ、継承されていくものである。
  • 地域文化には郷土の愛着や誇りを培いコミュニティを形成する役割がある。
  • 地方自治体には文化は余分なものとの認識がまだあるが、文化は「心の飯」であり、文化を大切にせよと強く主張すべきである。

(2)地域文化の捉え方

  • 地域文化を、地域で継承されてきたアマチュアの活動に基づく伝統的な文化とプロフェッショナルの活動に基づいた新しく創造していく文化の二つの側面から見ていくべきではないか。
  • 地域文化の振興には、平均的水準の文化を全国に広めるという「文化格差の是正」と地域の独自の文化を高める「文化の自律性の確保」という二つの側面を考慮すべきではないか。
  • 地域の文化は、それぞれの地域によって異なるものであり、地域文化の振興には模範解答はあり得ない。
  • 文化の多様性を保証することが大切で、行政が地域の文化を規定することはできない。
  • 地域文化の振興には、地域の住民が参加する意識を持ってもらうことが大切である。例えば、個人の善意(お金)が文化に向けられるシステムを作ることはできないか。

2.地域文化の振興の課題

(1)文化活動の場

  • 地域住民を主体とした創造活動の展開に対する支援と活動の場の確保が重要である。
  • 地域の文化団体にも活動の拠点となる施設が必要である。
  • 公立文化会館等の建設だけではなく、事業を支える施設や組織、情報提供などのソフト整備も重要である。
  • 住民に必要とされる文化施設になるためには、利用者に目を向けるよう職員の意識改革が不可欠である。
  • 公立文化会館の運営に関する評価システムが確立していない。文化面や地域振興への貢献度などを評価する基準が必要ではないか。
  • 公立文化施設に指定管理者制度が導入される場合、NPOの関わり方や位置付けについてよく検討すべきではないか。

(2)人材の育成

  • アートマネジメントを修めた人が、自発的に芸術文化の創造に参加していける仕組み(芸術サポートセンター)が求められるのではないか。
  • 文化と行政システムの両方に精通した専門家が地域にも必要である。
  • 学芸員の資質として、地域の人材を発掘してコーディネートしていく能力を身に付けさせるべきである。
  • 博物館運営に地域住民を巻き込む一つの方法として、住民を博物館の人的資源(地域学芸員)として活用することに関して、そのシステムやルールの明確化が必要である。

(3)NPO等の課題

  • NPOの事業に関して、現場を含めて評価できるシステムを確立し、正しいお金の使い方をすることが必要である。
  • 各地のNPOは孤立しがちで孤軍奮闘しているので、共通の目標を持ち意見交換して共通の問題を認識していくことが重要である。
  • NPOでは運営財源や人材で困る事が多い。

(4)文化活動への子どもの参加

  • 地域文化の振興には子どもの参加が不可欠である。文化の振興を子どもを通して行うことで、それぞれの地域文化が継承され発展していくのではないか。

(5)その他

  • 文化芸術に触れる機会のコストについてきちんと考える必要があるのではないか。
  • 市町村合併により地域の文化施策が大きな影響を受けている。
  • 教員にも文化芸術への理解を深めてもらう必要がある。

3.地域文化の振興のための具体的施策

(1)文化活動への支援

  • 鑑賞型文化活動に関しては、地域のネットワークを活用して、いろいろな分野の優れた芸術文化を巡回公演できる仕組みを推進してはどうか。
  • 広域的に多様な文化が展開すべきであるが、活動分野の調整をはじめ文化団体等の相互の話し合いが自発的にできるような仕組みを作り、活動内容の重複を避ける工夫が必要ではないか。
  • 全国的に活躍するアドバイザーとの継続的な関係を維持したり、全国的な文化団体からの長期的な指導をうけるなど、全国を視野にいれた交流と情報交換が役立つ。
  • 地元住民だけで文化活動を行うとマンネリ化しがちなので、地域外の人にも見てもらい外部からの刺激を受けた方がよい。
  • 地域の住民が行政、学校、企業をつないでいくNPOを育てていくことが大切ではないか。

(2)基盤の整備

  • 文化施設とそれ以外の施設の連携により、文化活動を支援する仕組みが考えられないか。
  • 市町村レベルを超えた広い「地域」における文化活動の在り方(例:関西元気文化圏)の検討してはどうか。
  • 資金だけでなく、国や自治体が持つ遊休施設や人材を提供することも有効である。

(3)文化を大切にする気運作り

  • 伝統文化の維持に貢献した企業を表彰して、国のお墨付きを与えれば、社員が文化活動に参加しやすくなるのではないか。
  • 地域文化の振興には、優れたプロデューサーを発掘して支援していくことが大切であり、国はそうした人物を広く紹介するために顕彰してはどうか。
  • 伝統文化では後継者問題が深刻であり、コミュニティだけでは維持できないので、伝統文化をいろんな人に理解してもらい、地域外からも支援してくれる応援団を作ることが大切である。
  • 天然記念物の保存を通じて、歴史と自然の風土を活かした自然環境の郷土学習や環境教育が確立しつつあり、まちづくり、住民との合意形成、人づくりへと発展している。

(4)文化活動への子どもの参加

  • 地域にある文化施設をどのように子どもに活用してもらうかを考えるべきではないか。
  • コミュニティでは伝統芸能等の文化活動は、学区や世代を越えた交流になるので、コミュニティの一体感を醸成する。その点で、子どもの文化活動への参加や伝統芸能の伝承は重要である。スポーツ少年団とおなじような文化少年団を結成してはどうか。

4.地域文化の担い手の育成

  • 社会教育や生涯学習に携わる人には、まちのコーディネーターとしての役割が求められるが、文化芸術への理解も必要であり、地域の文化活動を支援してもらうべきではないか。
  • 文化に関わる自治体職員がある程度継続して担当できるシステムを構築できないか。
  • 財団法人には公務員と嘱託の専任職員が混在しているが、公務員は定期的に異動してしまう。専門性を持った職員を長期的に育成していかねばならない。
  • 地域にある大学との連携を深め、地域文化の人材育成やコーディネートに積極的に関わってもらうべきではないか。
  • 文化ボランティアは本来無償の善意によるものではあるが、その支援方策について何らかの工夫はできないか。

5.地域文化の発信

(1)地域文化の振興方策に関する事例紹介

  • 文化を核にして、地域で生きる住民が元気になっていく事例を発掘して、全国に紹介していくべき。
  • 地域文化を発信していくには、同様の文化活動をしている他の機関との連携とネットワークが重要である。

(2)国際交流

  • 地方自治体でも国際交流は活発であり、文化の発信として国際交流は活用すべきである。
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