第16回文化審議会文化政策部会議事録

1. 日時

平成17年6月1日(水)  14:00~16:07

2. 場所

東京會舘本館11階 ゴールドルーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 伊藤委員 河井委員 佐野委員 嶋田委員 関委員 田村委員 永井委員 根木委員 松岡委員 真室委員 横川委員 
米屋委員 渡邊委員

(事務局)

加茂川文化庁次長 辰野審議官 寺脇文化部長 岩橋文化財部長 吉田政策課長 他

4.議題

  1. (1)文化芸術の振興に関する基本的な方針」の評価と今後の課題について(総論)
  2. (2)その他

5.議事

○青木部会長 それでは,ただいまから文化審議会文化政策部会(第16回)を開催させていただきます。本日はご多忙のところ,ご出席いただきましてまことにありがとうございます。
 最初に,委員のご紹介をさせていただきます。前回,ご欠席されましたお二人の委員が本日は出席されておりますので,ご紹介いたします。
 まず,関哲夫委員でございます。

○関委員 新日本製鐵の関でございます。よろしくお願いいたします。

○青木部会長 よろしくお願いいたします。
 それから,真室佳武委員でございます。

○真室委員 東京都美術館長の真室と申します。よろしくお願いいたします。

○青木部会長 よろしくお願いいたします。
 それでは,議事に入ります。
 まず,配付資料の確認に関しまして,事務局からご説明をお願いいたします。

○吉田政策課長 議事日程の配付資料のところへ一覧にしてございますが,資料の1が文化審議会文化政策部会(第15回),前回の議事録(案)でございます。
 それから,資料の2が文化政策部会の今後の審議の進め方についての案でございます。
 それから,資料の3が「文化芸術の振興に関する基本的な方針」と「文化芸術振興基本法」の対照表でございます。
 それから資料の4は,文化芸術の振興における国の役割等ということで,1枚のポンチ絵でございます。
 それから資料の5は,関連いたしました文化をめぐる諸状況についての関連データ集でございます。
 それから資料の6が,文化芸術の振興に当たって留意すべき事項ということでございます。
 以上でございます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 申し遅れましたが,伊藤委員は30分ほど遅れてご出席なさるということでございます。
 それでは,先に進めます。
 資料1の前回,第15回の議事録(案)に関しまして,委員の皆様にご確認をいただきまして,ご意見がございましたら本日から1週間後の6月8日(水)までに事務局までご連絡をお願いいたします。
 それでは,本日の議論に入ります前に,今後の審議の進め方についてお諮り申したいと思います。
 前回,事務局よりご説明がありましたが,本日はこの基本方針の中でも総論部分に当たります,「第1,文化芸術の振興の基本的方向」について皆様のご議論をお願いいたしたいと思います。「第2,文化芸術の振興に関する基本的施策」に関しましては,次回7月より4回にわたりまして,各委員よりそれぞれのお立場からご意見を伺いたいと思っております。具体的には,配付資料2にありますように毎回大まかなテーマを設定いたしまして,4名から6名ぐらいの委員の皆様からそれぞれ15分程度のご意見をいただき,それらを踏まえて議論を深めてまいりたいと思っております。各回の開催日につきましても,意見をご発表なさる先生方のご都合も伺いつつ,今後調整をしたいと思っております。
 次回以降の審議の進め方に関しまして,このような進め方でいかがでしょうか。何かご質問,ご意見があればお願いいたします。これは資料2の進め方でありますが,これは事務局と私とでまとめたものでございますけれども,新しい文化政策部会といたしましては4月28日が第1回目,それから今日が第2回目,6月1日でございます。それ以降,第3回7月上旬,第4回9月,10月,11月と第6回までここに案をつくりました。それぞれのご専門の,あるいはご関心のあるところから「文化芸術活動の支援のあり方」の(1),(2)として,7月9月の第3回第4回目の部会でお願いし,また10月の第5回で「文化芸術分野における人材育成」について,それから「文化の国際交流等」について11月の第6回でご意見を伺うように考えておりますが,いかがでございましょうか。こういう進め方でよろしゅうございましょうか。

・・・・・・異議なし・・・・・・の声

 どうもありがとうございました。それでは,このように進めさせていただきます。
 なお,ご意見の発表のときには,レジュメなどを作成するかどうか,またお配りくださるかどうかは,各委員のご判断にお任せいたしますが,資料や統計などの必要なデータがございましたら事前に事務局にご相談ください。いろいろと手助けをしてくださるそうでございます。また,事務局にももちろんご協力をいただくようにお願い申し上げたいと思います。
 それでは,初めに基本方針の全体像を把握するために,「文化芸術基本法」と「基本的な方針」の関係及び「基本的な方針」の内容に関しまして,事務局よりご説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○吉田政策課長 資料の3をご覧いただきたいと存じます。
 これは,お手元に配付してございます冊子の「基本的な方針」を,少し簡略化いたしましてこのような表にまとめたものでございます。左側の方が,平成14年12月につくられました「基本的な方針」のポイントでございます。右側のものが,「文化芸術振興基本法」の中で左側の方に対応する条文をつけております。
 まず,「基本的な方針」の欄をごらんいただきますと,まえがきがございまして,これをおおむね5年間を見通して文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図るための方針であるとするということでございます。諸情勢の変化や施策の効果に関する評価を踏まえて柔軟かつ適切に見直すということが掲げてございます。
 それから第1,これが本日ご議論をいただきたい部分でございますが,一種の総論部分でございます。文化芸術の振興の基本的な方向というタイトルでございまして,まず1が「文化芸術の振興の必要性」ということでございます。ここについてはもう改めて詳しくご説明はいたしませんけれども,人間が人間らしく生きるための糧であるとか,そういった意義がここに書かれておるわけでございます。
 それから,2のところでございますが,「文化芸術の振興における国の役割等」というところでございまして,まず国の役割としては文化芸術の主体である国民の自発的な活動を刺激し伸長させるとともに,国民すべてが文化芸術を享受し得るための諸条件を整えることが基本であると。その前提のもとに「文化芸術の頂点の伸長」,「文化芸術の裾野の拡大」,そして「文化遺産の保存と活用」,「文化芸術の国際交流」,「文化基盤の整備」という5本の柱を立てておるわけでございます。
 その際,重視すべき方向としまして,「文化芸術に関する教育」,そして「国語」の問題,「文化遺産」の問題,「文化発信」,「文化芸術に関する財政措置及び税制措置」の問題を特に取り上げております。
 (3)では,「地方公共団体及び民間の役割」ということでございまして,地方公共団体は自主的かつ主体的にそれぞれの地域の特性に応じて多様で特色ある文化芸術を振興し,地域住民の文化芸術活動を推進する役割を担うとあります。また,民間の方でございますが,個人や民間企業・団体等の文化芸術活動への支援は,自由で選択的な配慮が働き,文化の多様性に資するものであり,支援を助長,誘導するための条件整備等を図り,その拡大が望まれるというふうに記述してございます。右側の方で,地方公共団体の施策という関係では,第35条が関連する条文として出てくるわけでございます。
 2枚目をお開きいただきますと,「文化芸術の振興に当たっての基本理念」というところで,文化芸術活動を行う者の自主性の尊重ですとか,あるいは創造性の尊重ですとか,そういった8つの理念をここに明記をしております。これは,基本法の方でごらんいただきますと,第2条にこの基本理念というのが8項に分けて書いてございますけれども,ほぼこれをそのまま持ってきているということでございます。
 それから,4の「文化芸術の振興に当たって留意すべき事項」でございます。これは,各施策の枠を越えまして,横断的に留意すべきものということで記述してございます。
 まず1番目には,芸術家等の地位向上のための条件整備,それから2つ目には,国民の意見等の把握,反映のための体制の整備というものを挙げてございます。これに対応いたしまして,基本法の方にも右側の方にございますような条文がございます。  それから,めくっていただきますと,3番目としまして,支援及び評価の充実,4番目には関係機関の連携・協力ということが掲げてございます。基本法の方では,32条に関係機関等の連携等というような規定があるわけでございます。
 その下の第2,「文化芸術の振興に関する基本的施策」でございます。これが各論的なものですが,第1の「文化芸術の振興の基本的方向」を踏まえて,国は以下の施策を講ずるという形になっております。
 まず,大きな1番として,「各分野の文化芸術の振興」ということで,まず芸術の振興,その関連では「文化芸術創造プラン」の問題ですとか,あるいは「芸術文化振興基金」による助成の問題ですとか,そういったことが書かれておるわけでございます。そのような形で,以下メディア芸術の振興,そして3番目が伝統芸能,4番目が芸能の振興という形で続いてまいります。
 右側の方をごらんいただきますと,基本法の方にもそれぞれこれに対応するといいましょうか,こちらの方に基本方針が対応しておるわけですが,8条から11条にかけてそれぞれあるわけでございます。
 めくっていただきますと,5番目ということで生活文化,国民娯楽・出版物等の普及というものがございます。これも基本法の方では12条に規定がございます。
 それから,大きな2番としましては,「文化財等の保存・活用」というのが挙がってございます。これも基本法では13条の方に挙がってございます。
 その次の3番目は,「地域の文化芸能の振興」,そして4番目が「国際交流等の推進」,5番目が「芸術家等の養成・確保等」という形でございます。これもそれぞれこれに対応する規定が基本法の方に存在しているということでございます。
 それから,5ページ目をめくっていただきますと,6番目として「国語の正しい理解」,そして「日本語教育の普及・充実」の問題が7番目,8番目には「著作権等の保護・利用」の問題,それから9番目では,「国民の文化芸術活動の充実」というところで,まず国民の鑑賞等の機会の充実,高齢者,障害者等の文化芸術活動の充実,青少年の文化芸術活動の充実,それから学校教育における文化芸術活動の充実といった項目が取り上げられてございます。これもそれぞれ右側の方にございますような基本法の規定と対応しているわけでございます。
 それから,6ページをごらんいただきますと,10番目に「文化施設の充実等」というものが出てまいります。この関連では,まず劇場,音楽堂等の充実というところから始まりまして,美術館,博物館,図書館等の充実,地域の文化芸術活動の場の充実,公共の建物等の建築に当たっての配慮ということが出てまいります。
 さらに11番,これは最後のところでございますが,「その他の基盤の整備等」ということで,情報通信技術の活用の推進,地方公共団体・民間の団体等への情報提供等,そして民間の支援活動の活性化等について。めくっていただきますと関係機関等の連携等,そして顕彰の問題,そして最後に政策形成への民意の反映ということがございます。それもそれぞれ右側にございますような基本法の条文を踏まえた形になっているということでございます。このように,全体を見ていただくという意味合いでこの資料を作成いたしました。
 以上でございます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 ただいまのご説明にございましたように,この第1の部分は「1.文化芸術の振興の必要性」,「2.芸術の振興における国の役割等」,「3.文化芸術の振興に当たっての基本理念」,「4.文化芸術の振興に当たって留意すべき事項」から構成されております。
 その中で,1の文化芸術の振興の必要性における,先ほどご説明がございました(1)から(5)の柱立ては,平成14年4月の文化審議会答申,「文化を大切にする社会の構築について~一人一人が心豊かに生きる社会を目指して」において指摘されたものが活用されておりまして,その内容に関しましては,文化芸術振興の普遍性に基づいたものであり,今日においておおむね是認される内容ではないかと思われます。
 さらに,3の文化芸術の振興に当たっての基本理念に関しましては,基本法第2条に掲げられました8つの理念に則り,その内容を膨らませたものであり,細かな文言に関しましては修正の余地もあろうかとは思われますが,おおむね的確な表現ではないかと考えられます。ここの部分でも,もちろんご意見があれば伺ってまいりますが。
 したがいまして,本日は第1の部分の中でも,2の「文化芸術の振興における国の役割等」,及び4の「文化芸術の振興に当たって留意すべき事項」,この2つの課題に関しまして本日の部会の前半と後半に分けてご議論をいただいたらどうかと考えますが,いかがでございましょうか。

・・・・・・異議なし・・・・・・の声

 どうもありがとうございました。前回お配りいたしましたこの「文化芸術の振興に関する基本的な方針」平成14年12月10日閣議決定の,1ページ目,2ページ目に「1.文化芸術の振興の基本的方向」のうちの,「1.文化芸術の振興の必要性」についてわかりやすく書いてあります。ですから,これをご参照いただいてご議論もいただきたいと思いますが,ちなみに今日「1」と「3」を議論の中心から外すと申し上げましたが,その「1」の文化芸術の振興の必要性についてはどういうことが書いてあるのか。これについて的確だと申し上げましたのは,1の(1)は人間が人間らしく生きるための糧というようなこと,(2)が共に生きる社会の基盤の形成,(3)質の高い経済活動の実現,(4)人類の真の発展への貢献,(5)世界平和の礎というようなことでありまして,これはだれも反対はできないだろうということです。このように思いましたので,この部分は特に全面的な議論等はしないということでご了承いただいたわけであります。
 それからもう一つは,「3」の文化芸能の振興に当たっての基本理念でございますが,これも非常に的確で一般的な表現でございます。「文化芸術活動を行う者の自主性の尊重」とか,「文化芸術活動を行う者の創造性の尊重及び地位の向上」とか,「文化芸術を鑑賞,参加,創造することができる環境の整備」,あるいは「我が国及び世界の文化芸術の発展」,あるいは「多様な文化芸術の保護及び発展」,「各地域の特色ある文化芸術の発展」,「我が国の文化芸術の世界への発信」,それから最後は「国民の意見の反映」といったことが述べられておりまして,これに対しては,特に詳しくここで議論をする必要はないかと思います。もちろん,お気づきの点はぜひご指摘いただきたいと思います。
 それでは,今申し上げたことに従いまして,これから議論をしてまいりたいと思います。今の説明でご異議がないようでございましたらば,早速,皆様からご意見を伺いたいと思います。「2」の文化芸術の振興における国の役割等に関しましてのご議論からお願いいたします。
 では,その点でまず事務局からの資料のご説明をお願いいたします。

○吉田政策課長 資料の4と5を用いましてご説明をさせていただきます。
 資料の4は,先ほどお開きいただきましたこの「基本方針」の冊子の中では,3ページから6ページにかけて記述をしてございますものを,こういうコンセプト図風に整理したものでございます。
 右肩の方に,「国」という枠がございます。ここでの基本的な考え方としては,国は文化芸術活動の主体である国民の自発的な活動を刺激・伸長すること。そして,国民すべてが文化芸術を享受し得るための諸条件を整備するということを基本にいたしまして,5つの役割ということで「文化芸術の頂点の伸長」,それから「文化芸術の裾野の拡大」,「文化遺産の保存と活用」,「文化芸術の国際交流」,「文化基盤の整備」といったことが国の役割として挙げられております。
 その国の役割を果たす際に,重視すべき方向ということで,下に少し吹き出しふうに書いてございますが,1番目の「文化芸術に関する教育」というところでは,文化芸術に触れ親しむことができる教育環境づくり。家庭・学校・地域の連携,学校教育における文化芸術に関する教育の充実という項目。
 それから,2番目の「国語」につきましては,生涯を通じて国語力を身につけていく環境の整備。
 3番目の「文化遺産」につきましては,文化遺産を現代に生かす保存と適切な活用,また文化遺産の修復及び保存伝承のための基盤の充実等というのが重視すべき方向として掲げられてございます。
 また,4番目の「文化発信」につきましては,伝統文化から現代文化まで総合的かつ積極的に発信を行うべきであるということ。
 それから,5番目には「文化芸術に関する財政措置及び税制措置」ということで,適切な評価,支援の重点化。効率化を図りつつ必要な財政措置を講ずるということ。また,税制上の措置による民間支援の促進を行うということが重視すべき項目として挙げられておるわけでございます。
 その重視すべき方向の左側の方に目を転じていただきますと,今度は「地方公共団体」が出てまいります。役割でございますが,国との連携を図りつつ,自主的かつ主体的に地域の特性に応じて多様で特色のある文化芸術を振興し,地域の文化芸術活動を推進するという役割のもとに,ここに「文化芸術振興のための基本的な方針」とありますが,これはそれぞれの地域でも文化振興条例ですとか,あるいは文化振興プランですとか,そういったプランをおつくりいただくことがあるわけですが,そういった基本的な方針に基づいた施策の推進を図ってはどうかと。それから,広域的な視点から各団体が連携をした取り組みを推進するということが地方公共団体には求められているのではないかということです。こういった地方公共団体の取り組みに対しまして国としてこれを促進するという形で,そこに国の役割もまた期待されているということでございます。
 それから,左上の方に目を転じていただきますと,「民間」というものが出てまいります。ここは,個人や企業,団体による支援ということを対象にしておるわけですが,そのことによって文化芸術を大切にし,育てる意識の拡大に寄与するであるとか,あるいは自由で選択的な配慮が働き,文化の多様性に貢献するであるとかということで,民間による支援の重要性ということについてここでは明記をしております。そういった民間の取り組みの重要性というものにかんがみ,国からは必要な援助を行うべきであるということで矢印が伸びているということでございます。
 また,地方公共団体と民間との間では,この連携・協力ということでございまして,この三者が相互に結び合うことによって真ん中の丸にありますような新たな文化芸術の創造,そして我が国の顔として世界に親しまれる文化芸術ということから,最終的には世界の文化の発展に貢献するということを期待しているということでございます。
 そこで今,「国」,「地方公共団体」,「民間」というのが出てまいりましたので,それに関連をいたしまして幾つかのデータを私どもの方で用意しましたので,資料5をご覧いただきたいと思います。
 1ページをお開きいただきますと,これはこれまでもよくいろいろな場面で使われることがありますが,欧米諸国との文化関係予算の対比です。文化行政は,それぞれの国によって相当異なりますし,制度ですとか予算の組み立て方ですとか,そういったものも異なっておりますので,一概に比較するというのはなかなか難しい側面もございますが,あえてここで比較をしてみました。
 国家予算に占める割合ということでは,よく言われますけれども,ヨーロッパ諸国においてはフランスの1%というのをトップにいたしまして,日本よりも相当大きな文化予算を措置しているという姿が出てまいります。これは,2004年のものでございます。アメリカは,また民間といいましょうか,それが主でございますので,こういった姿になっているということで,こういう構造は基本的にはここのところ変化がないと見てとれます。
 その次のページをお開きいただきたいと思いますが,従来,欧米と比べることが主でございましたけれども,少しアジアですとか,あるいはオーストラリアですとか,そういったところにも目を向けてみてはどうだろうかということでございまして,これは民間のシンクタンクで調査されたものをここに参考という形でお示しさせていただいております。
 韓国につきましては,これは円換算をしておりますけれども,2005年度に1,274億円という予算措置を講じております。この韓国については,注にございますが,文化観光部の予算から観光部門と,それから体育青少年関係の予算を引きまして,それに文化財の関係の文化財庁の予算額を加えたものの合計がこの1,274億円という形になっております。全体が韓国の国家予算は,大体13兆円ぐらいでございますから,0.95%というような形になってくるわけでございます。
 次に中国でございます。中国の場合は国家予算の全体像を把握するのはなかなか難しゅうございまして,このUFJ総研の調べではこういう情報が出ているということですので,これはあくまで本当に参考として見ていただければと思います。
 オーストラリアにつきましては,そこにございますように,額といたしまして1,072億円ということで0.77%ということでございます。これも連邦政府関係の予算でございますので,いわゆる州政府については含まれておりませんので,ご注意いただきたいと存じます。そういう具合に,ここでは国際的に我が国の文化予算の規模がどの程度なのかということを見ていただいたわけでございます。
 3ページについては,もう何度かご覧いただいたことがあるかと思いますが,文化庁予算の推移を示したものでございます。平成13年度に900億を超えまして,その後伸びが続き15年度に1,000億の大台を超えて今現在1,016億という形になっております。
 4ページをお開きいただきたいと思います。
 今度は,地方公共団体の文化関係経費の推移をグラフにしたものでございます。平成5年がピークでございまして,このときには都道府県と市町村とを合わせまして9,550億円余の予算がございました。それから,少しその上がり下がりはございましたが,全体としては減少傾向にございまして,平成14年におきましては5,021億円といった姿になってきているわけでございます。
 この傾向につきまして,5ページでもう少し詳しくご覧いただきたいと存じます。これは,地方公共団体におきます芸術文化経費,すなわち文化関係経費の中から文化財関係の経費を除いたものでございます。それを費目別に,また都道府県と市町村別に整理してグラフ化しているものでございます。
 これでごらんいただきますと,一番上の方に位置しております文化施設建設費というのが市町村,あるいは都道府県においてぐっと減少してきているという姿が見てとれようかと思います。文化施設経費,これは文化施設の運営に要する経費の部分ですが,これはここ何年間かは横ばい傾向であるということでございます。
 それから,芸術文化事業費の方でございますが,これはその地域のさまざまな文化芸術活動に対する支援ですとか,そういったソフト事業の関係の予算でございますが,これは表の方をごらんいただきますとわかりやすいかと思いますが,最近,若干増加傾向というのが見てとれるかなという感じでございます。
 以上のような,予算面での地方公共団体の状況が見てとれるわけでございます。
 6ページの方をごらんいただきますと,文化会館の数がどういうふうに推移してきているかというものを示したものでございます。
 平成2年度に公立が934,私立が76でございまして,合計1,010館があったわけでございます。平成14年度は,公立が1,677,私立が155ということになりまして,トータルで1,832館というふうな形になっております。そういう意味では12年間に約1.8倍程度に増えてきているというのが見てとれるわけでございます。
 下の方には,それらの文化会館における職員数の推移がございます。これは,平成2年度から11年度にかけましては増加傾向にございましたが,ここ数年間は横ばいという姿になっております。平成10年度は,全体で約1万8,000人でございます。
 7ページの方をお開きいただきますと,それぞれの地域における文化振興についての基本的な方針と申しましょうか,それを定めたものでございますが,ここでは特に議会での議論なども踏まえまして制定されました「文化振興条例」につきまして,各県の,あるいは各市の取り組み状況を整理したものでございます。都道府県の方につきましては,そこに表があるとおりでございますが,ここも鳥取県の平成15年度の制定という以降,近年は相当活発な取り組みが見てとれるのではなかろうかと思います。政令指定都市では,大阪市が16年度に制定いたしました。
 また,市町村の方に目を向けていただきますと,真ん中あたりからでございますが,北海道苫小牧市の平成13年度制定以降,こういった条例制定についての地方公共団体の取り組みが見てとれるわけでございます。
 それから,その次のページは税制でございます。予算と表裏の関係があるわけでございますが,これを国税,地方税につきまして,それぞれ芸術の普及向上に関する業務を行う法人,あるいは文化財の保存活用に関する法人などに対しまして,所得税法,あるいは法人税法,さらには相続税法などにおいて,非課税措置等あるいは減免措置等の措置がとられているという姿を整理したものでございます。
 9ページの方には,地方税ということで,固定資産税ですとか土地保有税ですとか都市計画税についての事項が記されてございます。そのページの2の文化関係の融資制度ということにつきましては,これは日本政策投資銀行によります長期融資ということで,知的財産を活用した長期融資の問題,それから文化関連施設の整備の関係の制度が設けられているという姿をご紹介したものでございます。  それから,10ページの方をごらんいただきますと,今度は民間ということでございますが,これは企業メセナ協議会が毎年実施しておりますメセナ活動実体調査からとったものでございます。これは,2004年の同協議会のレポートからデータをいただいたものでございまして,そこに上がってまいります活動費などの金額につきましては,2003年のデータであるとご理解いただければと思います。
 まず,図1の「メセナ活動の目的」というところでございますが,これは意識調査の部分でございますが,社会貢献の一環としてというのが88.3%という姿になっております。以下,地域社会の芸術文化振興のため,あるいは芸術文化全般の振興のため,長期的に見て自社イメージの向上につながるためというあたりが大きな割合として出てきております。
 また,図2は,「メセナ活動で重視した点」でございますが,芸術文化の啓発・普及,そして地域文化の振興というのが同率でございますが57.2%という形で挙がってきております。
 それから,11ページの方をご覧いただきますと,このメセナ協議会のアンケート調査にご協力いただいた企業351社のご回答をもとにして,「1社当たりの平均メセナ活動費総額の推移」を追ったものでございます。平成3年のときに,1社当たり平均1億4,000万円というのが一時期下がってまいりますけれども,この11年度以降の赤いものと青いものとございますが,赤い方は5年連続でこの回答をされている企業102社の平均でございます。それに対しまして,青い方はそれ以外ということでございますが,平成15年度におきましては,この5年連続で回答していただいた企業の場合には,1社平均1億円を若干上回る程度の金額になっているということでございます。
 それから,図の4は「メセナ活動費総額合計の推移」ということでございます。これも上の方と似た動きを示しておりますが,一時期下がっておりましたものの,ここ数年間は上昇傾向に転じつつあるのかなというような感じもいたします。平成15年度におきましては,総額224億円余の額なっているということでございます。
 それから,12ページをお開きいただきますと,これは「メセナ活動の1プログラム当たりの事業費の分布」ということでございます。これは,高額なものでは1億円以上もあるわけですが,最も多いところは,このグラフの中では100万円から500万円未満というところになっておりますが,全体で見てみますとやはり100万円というあたりに一番固まりが出てくるということでございます。
 それから,図の6は「メセナ活動の予算化」です。あらかじめ,予算の中にこういったメセナ活動を組み込んでいる企業の割合でございますが,これもここ数年間で年度当初からこういったものを予算の中に組み込んでいるという企業が増えております。15年度では全体の4分の3が予算化をしておるという姿でございます。
 それから,13ページをお開きいただきますと,「メセナ活動において支障となる事柄」ということでございますが,1つは予算額が少ない。それからスタッフの数が少ないですとか,あるいは専門知識を持ったスタッフが不足しているですとか,目先のメリットが見込めないですとか,そういったことが支障の例として挙がってまいります。
 図の8は「メセナ活動を行わなかった理由」ということでございますが,まずは資金に余裕がない,それからスタッフに余裕がないというようなことが出てきておるわけでございます。
 それから,14ページでございますが,図の9では「メセナ活動を通じて企業が得たこと」についての意見でございますが,まず地域との関係がより深まったというものが58.9%,また企業イメージやブランド価値が向上したというのが55%というような形になっております。
 そして,図の10でございますが,この「芸術文化のためにどこが支援すべきか」ということで,だれがこの担い手として考えられるのかということでございますが,メセナ実施企業とメセナを実施していない企業とで比べてみますと,地方自治体がその役割が大きいというところではあまり大きな違いはないのでございますけれども,企業の役割を重視しているところが,これは当然かもしれませんが,メセナ実施企業の場合には60%に達しているのに対しまして,そうでないところは33%という形になっているということでございます。
 以下,市民一人一人がというところとか,あるいは政府とか,公益法人とかというところが出てまいります。また,その下にNPO等の民間組織というのがございまして,ここもメセナ実施企業の場合には32.8%が芸術文化のためにNPOの役割を重視している姿が見てとれようかなというふうに思います。
 そのNPOとの関連では,15ページをお開きいただきますと,これは学術,文化,芸術,またはスポーツの振興に関するNPO法人を全体のNPO法人全体と対比した表でございます。平成12年度から17年にわたりましての法人数の推移を追ったものでございます。平成12年に全体が1,724でございましたが,これが平成17年には2万1,286という形で急激に増加しているわけでございます。その中の第4号法人,これが学術,文化,芸術,スポーツの振興に関する法人でございますが,これが平成12年の433から平成17年は6,717という形になっておるわけでございます。ただ,これは学術,文化,芸術,またはスポーツということでございますので,文化芸術以外の分野も含んだ姿でございますのでご注意いただきたいと存じます。
 それで,この内閣府のデータからはわからないので,ご参考になろうかと思いましてページの一番下に載せましたのが,アートNPOリンクから情報提供をいただいた全国のアートNPOの法人数についてのデータでございます。平成15年7月末現在で535でございましたが,その約1年後の平成16年9月には1,122ということで約2倍ぐらいになってきているという姿が見てとれるかと思います。
 少し長くなりましたが,私どもからの説明は以上です。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは,この問題の2の「文化芸術の振興における国の役割等」に関しましてのご議論をお願いしたいと思いますが,ただいまのご説明へのご質問を含めご意見をお願いいたします。
 特に,次期基本方針に国の方針を記載するに当たりまして,新たに盛り込むべき事項や現行の記述で見直すべき事項等につきましてご意見をいただきますと幸いでございます。では,河井委員からよろしくお願いします。

○河井委員 河井でございます。よろしくお願いします。
 この基本方針の3ページでございますが,国の役割等の重視すべき方向のひとつとして教育の問題があります。これは前回,山西委員にも少し内容的なことを確認して教えていただいたことですが,学校教育における指導要領の中に部活動の部分があるのですが,運動部については学校教育の一環であるという明記がありますが,文化部については何の記述もないということのようです。
スポーツについては,それを受けて校外の,いわゆるゲストティーチャーのような指導者を招聘する手続等も明確になっているようですが,文化部についてはそういう根拠がない。何を根拠に部活動をやって,外部の講師を入れているのかについて,そのような実情があるようです。ここに,学校教育現場での重要性を強調されているわけですが,その辺の実態をもう少し,捉えて学校教育現場での指導がもう少し強調されてもいいのかなという印象は持っております。
 それから,これは文化の発信に関わることでしょうか。私どもは,地方自治体において文化振興をやっておりますが,鑑賞型よりは体験型,そして発表型へという形でシフトしているわけです。そういうもののいわゆるひのき舞台といいますか,国民文化祭なり高校総合文化祭というものがあります。これは国が実施していると思いますし,参加する方もそういう気持ちでいるわけですが,スポーツの国体,あるいは高校生の総合体育大会等に比べると参加者数,それから受け入れ態勢等にかなりの差があると思います。もう少し国民文化祭,あるいは高校生の総合文化祭等,国家レベルでの発表の場をアピールできないのかなというような思いを持っております。
 以上でございます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 教育現場での文化部の位置づけについては,きちんと決めておかないとならないと。わかりました。
 では,佐野委員,お願いいたします。

○佐野委員 私は,文化施設のことで1つお聞きしたいのですが,先ほどの説明の資料の5の3に関係して,先回も国の施策と地方の実態が合わないという指摘がありましたが,文化会館というのはこの美術館とか博物館も含むのかどうなのかという問題もあるかと思いますが博物館の問題で言います。国の方の施策がたしか2002年に,博物館法の規定が変わりまして,登録博物館の学芸員の数が従来は非常に厳密というか,登録博物館になるための大きなポイントだったところが,いわゆる「望ましい」というふうに緩やかになった。それが逆手にとられて,非常に職員が減っていくと。今,地方ではまず文化のところから予算が削減されていくということで。しかし,今のご説明では横ばいであるというのですね,職員数の推移が。何か私の聞いている話と少し違うのではないかと思いまして。横ばいどころか,かなり減じているという印象を持っているわけです。そういったことで逆に国の例えば博物館法というような大きな親法が緩むというか,逆方向に行っているのではないかというようなことで,それはどうなっているのかということを思いました。
 ですから,この基本の説明について,そのようなことをひとつお聞きしたいと思いました。

○青木部会長 どうもありがとうございました。

○吉田政策課長 今の資料の関係でございますが。

○青木部会長 どうぞ。

○吉田政策課長 資料5の3の文化会館数の推移のところでございますが,これは3年に一度の調査でございまして,最近のデータとしては平成14年度のものでございますので,そういう意味ではここ15年,16年という姿はここに出てきていないということがまず1つございます。
 それともう1つは,この文化会館の中には美術館,博物館が含まれておりませんので,今でもいわゆる文化ホール的なもの,座席が300以上あるところをとらえたということでございます。美術館,博物館の方の実態につきましては,また別途機会を改めましてデータも提供させていただきたいと思います。

○青木部会長 よろしいでしょうか。
 では,嶋田委員,お願いいたします。

○嶋田委員 私も今回,基本方針をじっくり読ませていただいて,文化と一口に言いましても非常に広範囲で,どの視点からご意見申し上げていいかなと思いました。少し気づいたことを2点ほど申し上げます。2番の国の役割等の(2)の重視すべき方向の中の5番の「文化芸術に関する財政措置及び税制措置」のところですが,実際にはこの基本的な方針の冊子の5ページのところに,アメリカ合衆国の方式とフランスの方式2つあって,我が国は国及び民間が振興を展開というふうにされていますが,日本国としてはどういう方向性を目指すべきかというようなところの考え方は少し入れていった方がいいのかなと思います。
 私ども企業の中の人間からしますと,文化というのは公益なんだから企業より国がやるべきなのではないかという意見が圧倒的に多いのですね。そういう考え方もあるかもしれないが,日本はこう行くのだというような,少し日本は中庸をいくというのも1つの考え方なんですけれども,なぜ中庸なのかというようなところももうちょっと解説していただけると,日本らしさというか,日本の考え方が明確になってくるかなというのを1つ思いました。
 それから,改めて読んでみますと,芸術の教育をかなり学校現場の中とか教育の中で重視していくのだという方針を出しています。しかし,実際に例えば芸術NPOの方々などが学校に行って芸術家を派遣して授業のコマを持たせていただく場合も,ほとんどの地方自治体の方は交通費すらお出しになれないのかならないのか。少し出すところが出てきたと聞いて,地方自治体の中にもこういった文化芸術にかかわる基本的な考え方を制定しているところが出てきたという現実を知って,そういうものがあるから多分そういうお金も少し出せるのかなと思います。国と地方自治体の文化に関わる方々のそれぞれのスタンスとか,それに基づく互いの交流とかがあまり感じられないときがあります。ここも地方自治体は,自主的にやってくださいね,やるのだよということだけではなくて,国との関わりをどうしていくかというところをもう少し明確に記載されるといいのかなと思います。
 先週,公立美術館115館の館長さんたちの会議があって,花王もそこに支援しているものですからお話を伺ったのですが,国とはものすごく距離があるようなお話が多かったです。やはりそこは,交流ですとか,指導と言ってはいけないのでしょうが,もう少し国の関与,関わりが欲しいということを感じました。
 以上です。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 では,関委員,お願いします。

○関委員 今,嶋田さんがちょっとおっしゃったのですが,私は文化芸術というのは,これは基本的には個々人の創意と自立というか,あるいは自発的にクリエイトしていくものだと思います。したがって,それをどのようにエンカレッジしていくかというのは非常に大事なことだと思います。文化とか芸術というのは国家レベルでの一種の公共財でありまして,そういう意味では担い手があくまでも個人であるにしても,あるいは地方公共団体であるにしても,そのことと公共財としての文化芸術というものをどういうふうに発展させて維持させていくかということとは必ずしも一致しないというか,任せておけばいいということにはならないと思います。そういう意味では,国の役割というのは非常に大きいと思っております。大きな国の政策を出して,ある程度の思い切った施策を打っていくということが必要なのではないでしょうか。そしてそれは,個人や地方公共団体がやる施策と努力というものとは矛盾しないのではないかと思います。
 そのときに大切なのは,どういう視点で国の大きな政策の柱を立てていくのかということです。私はやはり国際競争力というか,これからの世の中はまさにグローバルな時代でありまして,グローバルな社会の中で我々日本人がどのようにアイデンティティーを確保していくのか。あるいは,我々が発信する文化というものが,国際的に見て本当に競争力があるのかという議論をきっちり見きわめることが大変大事なのではないかと思っております。その意味では,そういう国際的な視点というのは必ずしも基本方針に十分書き込めていないのではないのかなという印象を個人的には持っております。
 したがって,一体国際競争力があるのかどうなのかという検証をぜひ行っていただきたいと思います。これは,いろいろなアイテムがあると思いますが,優れているものもあれば後れているものもあると。後れているものの中でも捨てていいものと,やはりキャッチアップしていかなければいけないものとあるだろうと思いますが,その辺の考え方と仕分けをきちんとした上で,それを推進していく上で国の役割は一体何かと,あるいは地方公共団体の役割はどうなんだと,あるいは個人は,あるいは企業はどうなんだという議論をしなければいけないのではないかと私は思います。
 やや話が抽象的なので,今日は個別の議論には入る必要はないと僕は思っておりますが,例えばここにも後の方でまちづくりのような議論もありますね。例えば都市空間だとか自然の景観だとかいうのも大変大事な公共財としての文化だと私は思いますが,外国から帰ってくると本当に情けない思いがします。ルクセンブルクなどは町自体が世界遺産でありますが,そこまではいかなくてもそういった都市空間や自然空間というものをどういうふうにつくっていくのかという問題。富士山一つとってみても,これはやや個別の例ですけれども,看板やのぼりやごみだらけだというようなことであります。これは国際競争力を検証するための1つの例を言っているわけで,その際何が後れていて何が優れているかというのを一つ一つ検証する必要があるということです。また美術館にしても日本には多くの美術館はありますが,競争力のある美術館はほとんどないに等しい。これは集約をするとか,個人が持っている美術資産には相当なものがあるということを聞いていますが,現状ではそういうものを発掘することもなかなかできない。やはり,国立の立派な美術館のようなものがある,あるいは何も国一本でなくても広域的にまとめて幾つか競争力のある美術館をつくるという考え方もあると思いますが,そういった国際的な場で通用するものをつくるために一体何をしなければいけないかということを一遍ブレイクダウンして検討したらどうかというのが私の提案です。

○青木部会長 どうもありがとうございました。今の点も非常に重要だと思いますが,それではまた後で。
 では,田村委員,お願いいたします。

○田村委員 国の役割ということですが,まず私はこの基本方針をもって国が国民に提案することの役割をもう少し問うべきでないかなと思っています。実は,私もいつもこういうのをつくっておりまして,今回これを拝見していまして,非常によいことずくめでございまして,ただよいことが時代に的確なこととは言い切れませんね。読んでいまして,国民の側から見ると非常に毒のない,非常にさわやかなレポートだと思います。
 なぜ毒がないか。それは,やはり社会の構造をしっかり文化行政がとらえる努力がなかったからではないかと思うのです。例えば,私どもの地域の問題を扱っておりますと,例えば,単純に言いますと新しい公共論のような問題があります。この中では,文化という問題も一体公共のどこに属するのだろうというような形で,公共とそれから民間のスタンスを図ったりしていますね。結局,これが行政が担うというときに非常に大きな問題になってくるのですが,社会がどんどん動いていって,文化の価値というのは政治や経済とは独立した価値系だとは思うのですが,やはり非常に関連はあるわけです。ところが,そういうものとの緊張感が割合に見えないでいいことずくめが並んでいる。ですからこれでいきますと,これから変えていくといっても,文節化したディテールはいろいろ現実を受けて変わっていくのだけれども,先ほど関委員がおっしゃったように,トータルのところが見えないままにいってしまうなという感じです。それが第1点。
 それで,実はこの基本的な方針というのは,本当は計画なのか,それとも単なるよいことを並べたポリシーのメニューなのか,そのあたりが少しはっきりしないですね。実は,先ほどの資料でも例えばどんどん財政的には減っているという話がありました。だけれども,逆にいろいろな活動は増えているかもしれない。また,その文化ホールは増えているということがありますね。そういうふうに考えますと,やはり単なる方針ではなくて,これはやはりマネジメントを含んだ1つの計画であるべきではないかという感じがいたします。
 そういう意味で言いますと,これだけのお話を読ませていただいても,この基本的な方針の期間,つまり文化芸術振興基本法ができてから,これだけの間,日本の文化は一体どちらに向かって行っているのか全然わからない。その観点からすれば基本的な方針に記されているようなことについても,やはりすべての領域がすべて対等に何かのニーズがあるということではなくて,やはりどこに弱点があるのかというようなことをもう少し考えていくべきだろうと。そういう意味では,選択と集中という言葉がありますけれども,やはりマネジメントを含んだ計画として文化行政というのが成り立ち得るのかどうかということを,ここは問うべきだと思います。
 その意味では,国の役割という前に,この基本的な方針が文化芸術振興基本法の7条に基づいた国民に問うべき計画としてどうなのか。そういう意味でいえば,前回もパブリックコメントがありましたが,今回はもう少し違った角度から文化の状況のようなものを見ていくことが必要かなという感じがしています。
 ちょっと悪口を言うのは申しわけないのですが,やはり国民にとってポリティクスな,もう少し議論を引き起こすような方針でなければいけないのではないでしょうか。それから我々は前回もお話したように,少なくとも経済や社会では失われた10年とか15年というような形で非常に苦労してきた。その中で,やはり文化というのは非常に大きな救いであったわけですから,ここに1つの緊張感を持って考えていただく。
 ですから,大きく言いますと,私はやはり日本というのはいろいろな政治や経済の問題がありますが,文化立国で行くということがはっきりとうち出される。そして,そのために一体どこを強化していくのかということが,きちんと出されたメッセージが欲しいという感じがしています。そういう意味でのメッセージ性というのが,現状では足りないのではないでしょうか。
 それからもう一つ,計画であれば,私も厚生省の例の「健康日本21」に携わりましたが,やはり指標化できるかどうかというような話も大切だと思います。文化を指標化するというのは非常に難しいのですが,先ほどお話ししたように,弱点を見出してそれをきちんとマネジメントの言葉としてあらわしていくならば,私は指標化してもいい部分もあると思います。そういうような形で我々の社会の文化というものを測りながら,計画をマネージングしていくような意図がないと,ずっと同じレーンで進んでいくという感じがあって,前に行ったのか後ろに行ったのかわからない。そして,万年国際的に後れているとか,そういうようなある種被害者意識のようなもので進んでいくような気がしていますので,そこのあたりを計画論として考えていただく。今,計画論というのは,非常に大切な時期に来ているというような気がしています。
 少し長くなりました。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは,永井委員,お願いします。

○永井委員 今,田村委員がおっしゃったことに少し私なりに関連づけて言いますと,やはり確かにこの基本的な方針というのはすばらしい言葉が並んでいて,私もこれ自体には文句をつけられない。でも,確かにすばらしいけれどインパクトがないと言いますか少し遠い感じといったものがある。それは,インパクトがないだけではなくて,今日本で現実に起こっている状況の中にこれがどう位置するのかが見えない。それに対する考え方を文化政策委員会で話し合うことはできないのかということを思います。
 というのは,この前少し松岡委員も触れられたことですが,私は今の都立学校における国旗・国歌に対して,教職員が起立して斉唱して歌わなければ処分を受ける。生徒が歌わなければ,それは指導力不足として教職員が処分を受ける。こういうことは,私には強制に思えます。こういうことが,例えば文化は人間が人間らしく生きるための糧であるという言葉がこの基本的な方針にうたわれていて,今ご説明いただいた文化芸術の振興における国の役割等というところでも,国の重視すべき方向は文化芸術に触れ親しむことができる教育環境づくりであると書かれていることとの関わりは,どうなるのかということが気になります。  私は,学校教育,特に公立学校において生徒がどういう教育を受けるかということは,国の文化政策と非常にかかわりの深いものであると思います。ここのところで例えば自分の思想良心に背くことでも,職務命令とあれば従わなければならないというようなことが当然化されていきますと,精神的な萎縮が起こってくると思います。これは,当然その思想良心の自由の萎縮だけではなくて,必ず表現の自由の萎縮につながってくる問題だと私は考えています。  ついこの間,都教委が今年の入学式での処分者を発表しました。その中の1人は,休日に前任校に卒業式に招かれてあいさつに行って,それでいろいろな強制がある中であっても自分で判断し行動できる力を磨いていってくださいと。この祝辞の中でたったこれだけ言った。そうしたらこれは,都の教育委員の聞き取り調査の対象となりまして,今は相当大変な思いをしていらっしゃる。
 例えば,国旗・国歌自体に賛成する,反対するという意見は多様にありますし,処分を受けている人には国旗・国歌にというよりは,強制そのものに反対して起立をしないという人もいるわけです。ですから,単に政治的なイデオロギーの問題というよりは,やはり日本国憲法に保障された思想良心の自由の問題を,文化の問題あるいは表現の自由の問題としてどうとらえるかということは,文化審議会にとっても重要なことではないかと思います。私はこの問題に対して全く知らん顔して豊かな文化,人間の個性の尊重ということをうたい続けることに少々むなしさを感じております。

○青木部会長 どうもありがとうございました。 
 それでは,根木委員にお願いします。

○根木委員 基本的な考え方,それから国の役割,重視すべき方向という,現在のこの文言自体を特にこれ以上どうするかという必要性はあまりないようには思いますが,そのことは別といたしまして,先ほど関委員,田村委員がおっしゃいましたように,例えば我が国の文化力の中で強い面,弱い面といったような点に関して少しメリハリをつけた上で,国際競争力をどのように維持し,あるいは増強していくか。そういった視点をある程度持つべきではなかろうかという感じもいたしております。そういった意味から申しますと,重視すべき方向の中にそれらのもろもろのことを集約,凝縮をし,あるいは創造性といったようなことも新しい観点としてもう一度考慮の上でつけ加えたらどうであろうかと思っております。
 創造性の発揮ということがとりもなおさず回り回っては国のいろいろな形での文化力,ひいては経済力にも反映してくるというふうなことにもなってまいりましょうし,同時に文化遺産の側面と並んで一国のアイデンティティーのもとにもなる,そういった面もあろうかと思います。その辺をこの際,もう一度重視すべき方向の中で少し考慮したらどうかと考えているところでございます。
 以上です。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは,松岡委員にお願いします。

○松岡委員 まず,なぜ,何を見直すべきかということを考える必要があると思います。平成14年に出た基本方針とか基本法に5年たったら見直すと書いてあるから見直すというだけではしようがないわけで,この基本方針が出た影響があるのかないのか。あるとすればどうなっているのか。全然影響がないなら,あるように持っていかなければならないのか。そういうことをまず考えなければいけないのではないかと思います。
 そういう意味で,今,永井委員のおっしゃった現状を知るという,それをこの基本的な方針と基本法との関連においてきちんと見る。だからこそ,ここは見直していかなければならないということをはっきりさせないと,ただ少しこの文章がどうだとか何とか,そういう小さなことで終わってしまうのではないかという気がします。
 それから,今西欧,それからアジアの国々の国家予算における文化の予算の占める割合について大変興味深く拝見しました。これに関して思うことは,こういう言い方では基本方針の中には盛り込めないとは思いますが,国であれ地方自治体であれ企業であれ,文化の振興のためにとるべき姿勢は共通で,お金は出すが口は出さないということが大事だということです。先ほど嶋田委員がおっしゃったように,日本の国として文化立国でいくならば,そのあたりのところもしっかりやっていこうということを示す。つまりこの資料4の図表というのは大変私はおもしろいというか,よくあらわしていると思いますが,この真ん中の新しい文化芸術の創造から世界文化の発展に貢献というところが一番大事なのです。真ん中が空洞になってしまっては何の意味もないわけですから,そこが活性化するためにはどうしたらいいか。そして,それは予算上でもどういうふうに持っていったらいいかということをきちんと押さえる方向にいくべきだというふうに思います。
 つい最近なのですが,世界の経済格差や環境問題を論じるときに,今何か合い言葉になっているような言葉があるらしく,それはシンク・グローバリー,アクト・ローカリーということで,これは文化の問題としても有効だというふうに思います。日本の文化を世界の文脈の中で考えるということもそうですし,日本全体の文化の中で各地方の伝統や文化,前回は地名のことなど申し上げましたが,そういうことを考えていく上でも有効なのではないかと思っています。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 では,真室委員にお願いいたします。

○真室委員 私は,東京都美術館にいるわけですが,美術展,公募展とか,あるいは新聞社等との共催展を開いて,おかげさまで年間約250万から300万人の入場者がございます。ただ,内容によると思いますが,お客様の年齢構成で言いますと高齢者が多い。若い小学生,中学生が非常に少ないというような現状がございます。
 この4ページのところに,学校等との教育等との連携といいますか,文化芸術に親しむ機会をそういう子どもたちに与えようということが書かれていますが,現状は,これは全国的に統計があるのかどうかはわかりませんが,恐らくどの都道府県のそういった文化機関,美術館,博物館も一生懸命それをやっているんですけれども,なかなか効果が上がっていないというような状況があるかと思います。
 ですから,先ほどどなたかおっしゃられましたが,こういう基本方針あるいは施策はどういうふうに成果を上げたのか,この5年間で結果がどうなのかというある程度の検証が必要ではないかと思います。それに対して,今後あとどう考えていったらいいかということが必要ではないかと感じております。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは,横川委員にお願いいたします。

○横川委員 僕が関する映画分野関連においては,非常に明確なモットーをおつくりになったと思います。それは,「文化は力」だということで,特に映画祭とかシンポジウムとかいろいろなことで文化庁が関わったり公的なところが関わったりするときに,これを大きく掲げているのですね。僕は,1つの指針としてこれは大変結構なモットーだと思います。
 ただ,僕がここで1つお話させていただきたいのは,確かに文化芸術という点からすれば,先ほど来言われていますように,それは人間が人間らしく生きるための糧だと。これは,非常に大切なことです。つまり,芸術とか文化ということになりますと,学校教育の中であまり具体的になっていないところを,生徒自身にこれが芸術だよと提示をしていくこと。例えば美術作品,あるいは博物館とか美術館に生徒をどれだけ連れていく先生方がいらっしゃるかどうかというのは,まず1つ非常に気にかかります。
 それと,先ほどスポーツのことが出ましたけれども,スポーツというのは非常に具体的で,それはさまざまなメディアが随分と取り上げるわけです。だから,子どもたちもそちらの方に目が行ってしまう。でも,例えば国の支援,あるいは地方の支援によって文化的な観点からすれば,例えば児童展だとか音楽会だとか演劇祭だとか,それから映像祭みたいなことが中学校,高等学校なんかでも行われているのですね。そういうものが,どういうふうにフィードバックされて我々の方に伝わっているかというと,そのフィードバックの仕方がなかなか目に見えない。新聞紙上でただ発表されるだけだというようなことになりがちです。
これに関わってもう少し言えば,さまざまな地方においては,美術館にしても,あるいは文化施設にしても随分と建物として作られています。もちろんそれは当初,こういう事業をするからそのためにこういう建物を建てるとかということが示されていますが,1年経ち2年経ち,やがて数年の後には,その事業が具体性をもって遂行されることなく結局空洞化してしまうというようなことがあるのですね。そういったところをもっと学校の先生方が生徒たちと時間のあるとき,あるいは親も当然ですが,そういった施設をもっと活用してクラスの中に話し合いというのか,ディスカッションする場を設けていくといいと僕は思います。親も教員もそういったところに目を向けていただきたいと思います。いわゆる国語,算数,理科,社会みたいなところだけで教育していくのではなく,前も話しましたが僕は人間を育むというときには,育むものは何から来るかというと文化だとか芸術だとか,そういうものから育まれるのではないかと思っておりまして,そういうところを少し示唆してやったり,話し合ったりしていくことで教育していく。そうすることで,もう少し日本がいかに文化立国としてやっていこうかというようなことが見えてくるのではないかと思います。その意味で少しフィードバックの部分が足りないのではないかと思っております。
 また次回,機会がございますので,そのときにいろいろまたお話しさせていただきたいと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 では,米屋委員にお願いいたします。

○米屋委員 私は,主に国の役割についてのこの5点について述べたいのですが,文化芸術の頂点の伸長と裾野の拡大という言葉は,基本法ができる以前からも文化庁の施策を説明するときにしばしば使われてきた言葉だと思います。
 これが国の役割として間違いだとは思いません。そして,このように頂点の伸長と裾野の拡大いうのは本来ワンセットの言葉であると私は思っておりますが,ややもすると頂点の伸長というのは専門的な芸術家の活動であって裾野というのはアマチュアの活動だというように,短絡的に切り分けられる傾向があったのではないのかということを感じています。
 これは,文化政策でいうと,諸外国なんかでもエクセレンスの追求と卓越性という言葉で言われたりしていますが,優れたものであればそれは普及させなければというのがワンセットだと思いますので,頂点の伸長と裾野の拡大という考え方,その言葉遣いは具体的に本当に何を意味しているのかということが伝わりにくい掲げ方になっているのではないかなということに常々懸念を感じています。裾野の拡大というのは,何もアマチュア,あるいは参加型の体験をすればいいのだというようなことでは決してないと思います。むしろ,もう一つここの中で大事な概念としては,国としては国全体として文化の多様性の確保ということに言及すべきなのではないかなと思っています。
 それから,文化遺産の保存と活用ということはいいと思いますが,文化遺産と限定せずとも,文化芸術の継承と発展というようなことがここにもう少し掲げられてもよかったのかなということ。
 それから,文化基盤の整備,これはとても重要なことだと思うのですが,これは今後各論の中でお話しすべきことなのかもしれませんが,やはり基盤って何だろうということが漠として伝わっていないのではないだろうかと。この辺は,前にご発言なさっているいろいろいろな委員の方の議論がここにも関わってくるかなと思いますし,前回,根木委員がご指摘されていましたが,人材,人づくりというようなことがもう少し強調されてもよかったのかなということがありますので,ここで国の役割として特出しすべきなのか,各論の中でもう少し発展させるべきなのかという問題はあるかと思いますが,その基盤とは何かということをもう少し議論すべきだと思っております。
 重視すべき方向に関しては,また各論との関係でいろいろ発言させていただけたらと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 では,渡邊委員,お願いします。

○渡邊委員 この文化芸術の振興に関する基本的な方針というものの原案が作成されたとき,私もその委員会の末席におりましたので,今,各委員が仰っている意見が痛く感じられることが多いということがあります。
 この方針がまとめられたときにも,前の文化審議会でやはり文言についてあまりにも総花的で心地よすぎるのではないかというような意見が相次ぎまして,大分紛糾いたしました。そういうことがございました。それで,そのとき私が,今はもうぎりぎりの場面なので,もうこれはこれで今触っても答申に間に合わないという,しかも文書作成ということを当局側に任せるという1つの慣例でやっているとどうしてもこうなると。だから,この上にもう一つ文章をつけたらどうでしょうかという提案をいたしまして,それで岡田さん,詩人の方が詩をつくって,それをこの方針の案に1枚載せまして,それで答申したという経緯がございます。それがかえって,新聞社などのいわゆる情報メディアには大変斬新に見えたようで,さすがは文化審であるというような評価をいただきました。
 ただ,問題はその上紙がなくなって,今これだけになってくると結局また問題が繰り返されるという結果になってしまうわけです。先ほどからご指摘がありますように,今いろいろな施策が行われている。国の施策というのは比較的見やすい状態ですが,地方というのはやはりこの狭い日本国の中でも実際にどのように行われて,どのような実態があるのかということについては,我々には具体的につかむ力がない。
 したがって,先ほど問題にありましたように,このきれいな文言の下にある,そこにある問題というのは一体何だったのかというところがやはり掘り起こされないと,新しい文言はできてこないだろうと思うわけです。これがつくられたときには,いろいろな関係諸団体からのヒアリングが繰り返し,繰り返し行われました。そういう実態がございます。その資料は,私もなかなか自分では手に入らないということで長くとっておいた記憶がございますが,結局,1つの文章を作成されるとそういうふうに上積みになってしまって,一番の問題点の部分といいましょうか,そういうところがなくなってしまうわけです。だから,もう一遍その点は再発掘しないといけないのかなということを実感いたしました。それは,私も長く行政にかかわってきていましたので,やはり行政側というものの限界というのがございますので,その限界を破るのは結局,委員それぞれの方々の意見によらざるを得ません。そうしますと,我々だけで果たしてそれが力及ぶのかどうかという心配もないではないのですが,やはり問題点は一体どこにあるのかということをもう一遍再発掘する必要があるのではないかということでございます。
 以上でございます。

○青木部会長 どうもありがとうございます。
 それでは,伊藤委員,お願いします。

○伊藤委員 私が最後になりまして言いたいことはたくさんあったのですが,皆さん方が大分触れていらっしゃるので,一応,皆さん方が述べたことと若干重複することも含めて3点ばかり意見を述べさせていただきたいと思っています。
 第1点は,田村委員が指摘した問題です。きれいごとの話は言っていてもしようがないのですが,まずこの基本方針とは一体何かということについて明確にしていく必要があるのではないかと思っています。特に,5年をめどに基本方針をつくるということは,逆に言えばその間にある程度達成可能な計画でなければならないのではないかと思っています。達成可能であるということは,とりもなおさず何らかの形で指標化されていたり,あるいはその評価が可能である,検証が可能であるものでなければいけないと思っています。
 そういった面で現在の方針を見ますと,ちょっとこれは正直いうと非常に長期的な話ばかり書いてあって,検証も非常に難しい内容が多いのではないか。検証していけば,どうしても精神論になってしまうというような感じがしています。そういう意味で,まず基本方針というものをどのような形でつくるのかということを,まずこの委員会の中においてもお互いに意思一致をしていく必要があるのではないかということが第1点です。
 それから第2番目に,これで言いますと文化振興の必要性だとか基本理念等々に関わってくる問題だと思います。具体的な内容の指摘は米屋委員が述べられたので省きますが,基本的にまず振興基本法ができたり基本方針がつくられていく背景について。1つには95年に総務庁の行政監察局が出したレポートがあったと思いますが,その中に国が文化支援を行っていく,振興を行っていく根拠は一体何かということがすごく問われているわけです。これは,ある面で非常に難しい問題で,どの国も明確にその根拠を説明しているとは思えませんが,しかし何らかの形でそこをクリアしていかないと,これから先,文化政策ということはあり得ないのではないかと思っています。
 そういった視点の中で,先ほど松岡委員が述べられたことと若干違う言い方をあえてさせていただきたいと思います。確かに金は出すけど口は出さないということは,基本的には素晴らしいことだと思います。しかし,私は政策という観点で考えた場合には,口を出すという部分をやはりきちんと正面から考えていく必要があると思っています。口を出すということは,かつてのように横暴な権力者が口を出すというと,これはとんでもないことであります。ですが,今日の民主的な社会においては政府もあるいはさまざまな組織というものも,何らかの意味で社会のニーズというものをそれなりに把握し,それをきちんと多くの人たちに説明して納得のいく形の中で口を出すということがあるべきだと思っています。そういう意味での口を出すということについて考えていくのが政策ではないかと思っています。そして,それが同時に文化政策の根拠になっていくのではないかと考えています。
 そういう意味で,こういった問題を扱うときに,今回,例えば短期的な問題,この問題だけを取り出していきますと非常に大きな問題になってきますが,しかし5年ぐらいの根拠の中で幾つか考えていきますと,これは各論の方のテーマになってまいりますが,現在抱えている芸術文化の振興,あるいは文化の普及,さまざまな文化や芸術を取り巻く課題の中で具体的なものを取り上げ,それに向けての具体的計画を考え,またそれを推進するに当たっての仕組みづくりを考えていく必要があるのではないかと思っています。
 それで,3点目として少々提案したいと思っていることがあります。実はこの基本方針を読みますと非常に素晴らしいことが書かれているわけですが,書かれていないことも幾つかあります。私としては,ここに書かれてあることをいろいろ議論しても,そんなに間違ったことを書いているわけではなく意味がないので,ここに書かれていないことをもっと洗い出したらいいのではないかと思っているわけです。
その1点が多分各論とも関わってくると思いますが,私自身は文化政策を考えるときに非常に無視できない大きな視点として,近代の市民社会がつくり上げてきた文化的な制度の問題,よくインスティチューションといった片仮名を使って説明したりしますが,制度の問題があると思っており,そこを洗い出していくことが重要ではないかということです。
 制度とは何かと言うと,文化とか芸術の成果というものを社会がきちんとそれを享受し,共有し,継承していくための仕組みです。そういうものとして美術館,博物館というものも市民革命の中に,それまで王侯貴族のコレクションを国民に公開するという形でつくられてきたわけですし,劇場といったものも,演劇だとかさまざまにそれ以前からあった舞台芸術上の成果を多くの人たちが都市生活の中で享受し,感動を分かち合う仕組みとしてつくられてきました。オーケストラもそうです。あるいはプロの芸術家,そういったものの担い手を育成するための専門教育だとか,さまざまなものが制度としてつくられてきているわけです。それだけに,そういった制度というものをきちんと再構築していく。あるいは制度というものは100年,200年すればある程度古くなってくるものもあって,制度疲労を起こすものもありますから,そういったものに対しては点検をし,新たな社会的ニーズに対して生まれてきている制度の芽というものをピックアップしていく必要があるのではないかと思っています。
 そういう意味では,先ほど資料の中でアートNPOについては最後に少し触れられているだけなのですが,例えばアートNPO等々が果たしていく役割というのは,従来,近代社会でつくられてきた制度では賄い切れない新しい社会的ニーズを発掘しているところにある。それがアートNPOの役割ではないかと思うわけですが,こういった視点に立てば,アートNPOがどういった形で今後発展するような基盤整備をしていくのか。このような形で,政策の幾つかのポイントが生まれてくるのではないかと思っています。
 今日は,一応総論なのであくまで考え方という形で,以上で終わらせていただきたいと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございました。さまざまな貴重なご意見をいただきまして,本当にありがとうございます。
 いつでしたか文化庁長官もおっしゃったと思うのですが,日本の今後の国際交流の中でアジアから修学旅行で日本に来るような生徒があるといいなということがありました。そのときに例えば日本で見学したいところはどこにあるかということです。関先生がおっしゃったように,ないですよね。中国だと紫禁城だとか故宮博物館だとかがあって,それに行かないと世界でいろいろと考える場合には差し支えるので行ってみましたと言うと,これは意味があります。日本で,実際に修学旅行で見てみたら,これは世界のどこへ行っても行ってきたぞと言えるものがあるかどうかです。これは,やはり大きな問題だと思いますね。
 それからもう一つ,予算のところでご説明がありましたが,文化予算についてはフランスとかイギリス,ドイツと比べるというのは従来より行っています。しかしここに来て,今や韓国が日本を抜いたり,それから中国もいろいろなお金を文化に出していることは事実でありまして,その関係では日本がかなり経済大国としてODAにたくさん使っているにしては,明らかにバランスを欠いていることは事実ですね。
 それからもう一つは,国の関心においては,例えば企業メセナは先ほどの表で出てきましたように,地域交流というか,企業の地域貢献を第一に優先するというのが非常に強いわけですね。工場が出ているところとか本社があるとか,そういうところで地元に貢献するというのはトヨタとかいろいろなところがやっています。アメリカでもそういうことをやはりやっていますが,そうすると国全体の文化力を高めるような施策というのは,あるいはコントリビューションといのうはやはり国がかなりきちんとやらないとだめではないかと思います。というようなことを実際に考えましたが,本当はもっといろいろ出たご意見がたくさんありますが,それについて各委員からお互いに議論のやりとりをすべきなのですが,いつも時間がない。それで,ともかくしっかりと今日はご意見を承りましたので,それについてはまた各論でそれぞれ反映させながら議論を重ねてまいりたいと思います。
 もう一つ今日は課題がございまして,後半部分として先ほど申し上げましたように,文化芸術の振興に当たって留意すべき事項ということについて,皆様のご意見をお諮りしたいと思います。
 それで,まずそれは何かということで,資料のご説明を事務局からお願いいたします。

○吉田政策課長 資料の6をごらんいただきたいと存じます。こちらの基本方針の冊子の方で,8ページから9ページにかけて記述をしてありますものを整理したものでございます。4つの事項がその留意すべき事項としてまとめられております。
 まず第1点目に,「芸術家等の地位向上のための条件整備」ということでございまして,これを少し砕いていきますと,芸術家等やあるいは文化芸術団体等との連携ですとか,あるいは創造活動のための諸条件の整備ですとか,あるいは芸術家等に対する積極的な顕彰というようなことが上げられているわけでございます。
 これに関連いたしまして,文化庁の方で取り組んでおります事項の例としまして右側の方に枠で囲んでございますが,芸術選奨を初めとするさまざまな顕彰制度が,特に顕彰ということで行われおります。
 また,2点目は,「国民の意見等の把握・反映のための体制整備」ということでございます。文化芸術振興のための基本的政策の形成,各施設等の企画,実施評価等に際し,芸術家等や学識経験者,国民の意見を把握・反映される体制を整備するということが記述されてございます。この関連では,文化芸術懇談会を全国各地で行っております。また,文化審議会の各分科会,あるいはこの部会の答申などをいただくような際には,事前にパブリックコメントというような形で広く国民の意見を聞くということも行っております。また,昨年から始めましたけれども,芸術系大学長等と文化庁長官との懇談会というようなことで,大学の関係者との意見交換も最近熱心にやっているところでございます。
 また,3番目でございますが,「支援及び評価の充実」ということでございますが,文化芸術活動に対する支援は,公正性・透明性を確保し,適切な審査方法と評価に従い実施し,結果を公開をするということですとか,あるいは評価方法につき定量的評価と定性的評価による適切な評価の確立。また,支援の仕組み,方法等のあり方,多様な手法の活用。公的支援を受ける芸術家等や文化芸術団体も活動成果等の国民への還元,情報公開,鑑賞者の拡大,効果的運営に努力というようなことが書いてございます。
 この関連では,評価というものが今行政を行う上では欠かせない事柄でございまして,文部科学省の政策評価というものも行われています。最初の文化芸術活動に対する支援ということでは,右側の方ではこの部会の報告で16年の2月に,「今後の舞台芸術創造活動の支援方策について」ということで提言をいただいておりまして,アーツプランなどでの支援につきまして事前と事後の評価というのをきちんとするというようなことを今年度から組み込んでいくというようなことにしております。
 また,留意すべき事項の4点目は,「関係機関等の連携・協力」でございます。関係府省間の密接な連携・協力体制の整備ですとか,あるいは関係機関・地方公共団体・関係団体との連携ということでございます。これは,国際文化交流ですとか,あるいは知的財産の関係ですとかということにつきまして,各省庁の連絡会といったものもございます。そのための政府の本部といったものもございます。
 それから,地域との連携という意味では,「関西文化元気圏」の推進ですとか,あるいは「丸の内元気文化プロジェクト」というようなことで,文化庁のそういった地域との連携を強めるような施策も行っているというようなことでございます。
 以上でございます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは,今ご説明がありました部分につきまして,留意すべき事柄に関しましてご議論をお願いしたいと思います。この基本方針に既に記載されている4つの項目につきましては,細かな文言などについて修正の余地はもちろんあると思いますが,いいことがたくさん書いてありまして,引き続き今後も留意していくべき事項としてはおおむね異論がないものであるかと思われます。
 したがいまして,本日は特に新たに追加すべき留意事項は何か,あるいはそういうものがあるかどうかということを中心にご議論をいただければと思います。時間も迫ってまいりましたが,やはりまた順番に1分か2分ぐらいでご意見をいただければと思います。
 では,伊藤委員からお願いいたします。

○伊藤委員 先ほど述べたことと関連してしまいますので簡単に,追加といいますか,それぞれについて4つの留意事項についてもう少し強調したい点だけを触れたいと思います。第1点の芸術家等の地位の向上に関して言いますと,私はやはりプロとしての芸術家が成り立っていくような基盤というもの,つまり職業化をきちんと保障するような仕組みというものがもう少し考慮されていいのではないかなという気がしています。これは,人材育成のときにもう一度詳しく述べたいと思います。
 それから2番目に,重要なのはやはり国民の意見等の把握等のところですが,パブリックコメント,さまざまな形で政策について声を聞いていくということは大きな前進だと思っておりますが,文化に関していきますと,民間の中にさまざまな形で文化の振興を担ってきたグループなり組織があって,そういった組織なり専門家の声というものをもう少し尊重すべきではないだろうか。そういったものが,例えば政策形成において一定の役割を果たすような仕組みというものがもっと検討されていいのではないのかという気がしております。
 あと,3番目は飛ばしまして4番目に関してですが,関係機関等との連絡,連携等々ですが,これも一応政府と文化関係,あるいはそういったところの関係が結構強い記述ですが,先ほどのことと重なってきますが,地域の中でさまざまな意味での文化支援のための一種の中間支援組織といいますか,インターメディアリー的なものが各所に見ることができます。これはアートNPOとも関係してくるわけですが,こういった動きというものをもう少し重視して,そういう文化関係者同士の連携のようなものを支えていくような方向というものをぜひお願いしたいと思っております。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは,河井委員,お願いします。

○河井委員 この部分が全体的な方針の中で,どういう地位を占めるのかということはございますが,1点だけ申し上げさせていただきます。今,伊藤委員がおっしゃったことに一部関係するわけですが,国内的にも国際的にももう少し文化交流といいますか,そういう機会をつくる必要があるのではないかというふうに思っております。
 先ほど申し上げた国家レベルの文化イベントもそうですが,例えば日立では地方オペラ団体のフォーラムを企画して毎年実施しておりますが,そういう文化団体同士の交流のようなものも促進するということが必要なのではないかなと思います。
 その点だけ申し上げます。

○青木部会長 どうもありがとうございます。
 では,佐野委員,お願いいたします。

○佐野委員 資料の4の1つは,これは文字量の関係だと思うのですが,国と地方公共団体,民間,考え方としてはこの大きさを同じにしてもらいたいということです。つまり,関係の平等ということ。それから矢印が国から,今回の場合国の役割ですから出ていますけれども,これを相互方向にするという基本的な考え方。その一つ一つのことは言いませんけれども,そういう基本的な形をとっていただきたいということ。
 それから,これは先ほどからいろいろ出ている大きな問題になりますが,この基本法というものの性格と,先ほど小さく言うと例えば博物館法みたいな個別法との整合性というか,その辺にところのいわゆるきちっとした整合性を図ってもらいたいということです。
 それから,これは4に関係すると思うのですが,県,市町村の関係ということで,それぞれ文化条例ができている,そのサンプルを1回いただきたいということ。それぞれの県,市,町あたりのですね。これは要望ですが,さし当たりそのことだけです。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 嶋田委員,お願いします。

○嶋田委員 資料6では,文化庁の主な取り組みについて,ここ何年かかけて社会に対して積極的に見える形でなさってきた活動がここに書いてあるので,留意すべき事項という文言について,その考え方をやや理解しづらく思っております。もしかしたらこれは何年間かで達成すべき活動の方向性なのかなという気がいたしましたので,私の認識が間違っているのかもしれませんが,そういう面から申し上げます。先ほど来,何のための基本的な方針かという議論が少しあったかと思うのですが,その中で5年ごとに見直すのだったら通常の企業のように中期計画5年の中でどこまで何を達成するかというのを約束で出していく項目として,これが存在するのかなと思いました。
 と申しますのは,最後の関係機関との連携のところで,例えば「関西文化元気圏」とか「丸の内元気文化プロジェクト」の推進をされているのですが,これは実際に本当に一商社として見てもかなりおもしろいことが始まっていて,ビジネスマン等々もかなり参画しつつあるということにおいては,かなりアクティブな行動になってきていると思うからです。ですので,留意すべき事項という文言,項目の立て方自体が適当かどうかということを少しご検討いただければという,その範囲です。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 関委員,お願いします。

○関委員 これも留意すべき事項ということになるのかどうかわかりませんが,関係機関との連携とか国民の意見とか芸術家というようなことが書かれていますので,それとの関連があるのかないのかもよくわかりませんが,書かれていないことを少し議論したらどうかという伊藤委員のお話もありました。私の問題意識の1つは,これは大変難しいことだとは思うのですが,文化政策とマスメディアとの関係ということです。今のマスメディアについて文化という側面からする評価というのには実にさまざまな意見があると思いますが,悪貨は良貨を駆逐するというか,ひどい状況にだんだんなりつつあるのではないかという危機意識を私は持っております。だからと言って,規制を強化すべきだとかということには全くならないとは思います。マスメディア,これは非常に難しくて私もよくわからないのですが,ただこの関連機関との連携・協力というようなことがあるわけですから,少し褒めることも含めて上の欄には奨励賞とか大臣表彰とかもありますし,文化の問題はマスメディアの活動を除いて考えられないと思いますので,その辺の留意すべき事項の関わりがどうであろうかという,そういう問題意識です。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 田村委員,お願いします。

○田村委員 先ほどと重なるのですが,ずっとやはり考えてきたのは,文化の世界というのは例えば福祉であるとか医療であるとか,そのほかの行政領域に比べてやはり非常にアンビバレンツなところが多い領域だと思うことです。例えば,エクセレントの価値観とそれから非常に対照的な価値観とかあります。このときに,いわゆる防災で最近言われているトリアージっていうのですか,同じような問題があったときにどれを一番優先していくかというような話が本当につくのかどうかというのは,これは文化,行政とか自治体レベルでもいろいろな考え方を行っているときにいつも悩むことなんですね。これは悩むというのは,そういう選択ができないということではなくて,その奥に我々は一体何を持っているのかということが一番自分として苦しいところなのです。
 ですから,そういうアンビバレンツみたいな世界を通じて,それが本当にマネジメントできるような世界なのかどうか。そういう意味では,文化の実体と文化行政とは私は違う概念であって,文化行政というものをしっかりとやはり1つの行政の概念としてきちんと押さえることが大切だなというのが,今検討を進めるときの問題です。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 永井委員,お願いします。

○永井委員 この留意すべき事項についてですが,今回は書いていないことといいますか,文化交流ということで現状についてのお話をひとつしたいと思います。今後,海外との交流というのは欠かせないことだと思いますが,ついこの間上海でアジア女性演劇会議というのがあって私も行ってきました。その際のことなのですが,行く前に,これは中国側の問題ですが,何度連絡してもどこで会議があるのか,会議に通訳がつくのか自体もわからなくて,国際交流基金等にいろいろ電話しましても,やはりそれはもうご自分で何とかなさってくださいという形になってしまうわけです。何年も前から開催がわかっていて,きちんとした報告書でも出していればそれは対応できた問題なのかもしれませんが,外国と日本とは違いますので,急に決まり,急に行くことになりましたということも生じますね。そうしたときに,どこにどういう通訳がいるとか,こういう人に連絡すればいいよというようなことを誰に聞いたらいいのかもわからないという。私はこういうことは当然皆さんがよくご存じで,すぐにアドバイスをいただけることかと思っていたら,突然,迷子のようになった経験をしたというわけです。その中で,日本人の通訳があまりいないとうこともわかりましたが,今後はいろいろな個人の方が交流していく意味においても,今回経験したような現状を改善することは,とても重要なことだと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 では,根木委員,お願いします。

○根木委員 先ほどの重視すべき事項というのは,これは多分国の役割を踏まえた上での方向性であろうと思いますし,それから今議論になっております留意すべき事項というのは,基本理念とそれから次の基本的施策を結ぶ連結間という位置づけではなかろうかと思います。
 プラスアルファで何かをということですけれども,先ほど創造性ということを重視すべき方向の中で考慮したらどうかということを申し上げましたけれども,それと関連いたしまして,留意すべき事項の中ではむしろ創造性と深くかかわってくるであろうと思います知的財産権の問題ですね。これもその留意事項の中に加えてはどうだろうかという感じがしております。
 それからいま一つは,文化多様性ということですが,これは重視すべき方向なのか留意事項なのかよくわかりませんが,今後のこともありますので,どこかの時点で触れておいてしかるべきではなかろうか。そんな感じがしております。

○青木部会長 とうもありがとうございました。
 松岡委員,お願いします。

○松岡委員 日本には検閲はないことになっていますが,やはり自主検閲みたいなものが何かあるような気がします。それで,全体にも関わることなのですが,やはり文化振興,これはさきほど永井委員がおっしゃったことと少し関わりますが,やはり自由な表現は確保されているのだということを,その具体的な事項がどうということはあるかもしれないけれども,基本的なこととして音楽でも演劇でも文学でも,表現といったときに,その表現する際の自由は保障されているのだというようなことは,どこかに入れておかないといけないのではないかと思います。
 何か,この基本的な方針をずっと読んでいますと,日本というのはやはりとても戦後平和にやってきた国なのだということが逆説的に出ているような気がします。これを,私自身もどういう文言でということは今すぐには出てこないのですが,芸術,文化の振興の一番の核ではないかというふうに思いますので,どこかにと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございます。
 それでは,真室委員,お願いいたします。

○真室委員 先ほどもありました資料4の国の役割の矢印なのですが,恐らくこれで例えば国の民間に対する必要な援助ということで,そういう役割があるということでいいと思うのですが,例えば美術館の展覧会,国の美術館,博物館における展覧会を見ていますと,実際には相互に連携,協力して展覧会等が実施されているのですね。役割は,あくまでも民間に対する援助であろうかと思うのですが,この留意すべき事項では4の関係機関等の連絡・協力という,例えばここにマスメディア等との連携・協力ということが入ってくると思うのですが,その辺の考え方をもっと柔軟にして,留意すべき事項として考えた方がいいのかなという感じがいたします。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 横川委員,お願いいたします。

○横川委員 これは,国民性の問題かもしれませんが,例えばイギリスとかフランスは長い歴史の中で文化,芸術をとても大切にするわけです。ですから,日本の場合もしていないとは言えませんが,やはり土台として芸術文化に対する歴史的な背景といいますか,あるいは国民性といいますか,そういったこと非常に弱いのではないかと思います。
 先ほど,ご説明をいただいたこの資料,文化をめぐる諸条件についての関連データ集というので,例えばそこの資料の5の6でございますが,芸術文化のためにどこが支援すべきかということで,メセナ実施企業とそれからメセナ未実施企業というところで,芸術文化を支援する必要はないということでは全くゼロなんですね。ということは,もう少し芸術文化というものはどういうものであるのかということをやはり何らかの形で大きく伝えていくことが必要ではないかと。これだけいろいろな支援をしていただいているわけですけれども,末端の方にまでそれが行き届いていないのではないかと思うのです。言葉としては飛び交っているわけですけれども,実体としてはなかなか出てこない。
 それともう一つは,先ほど根木先生もおっしゃっていましたが,情操教育だとか創造教育だとかいうことが一時期騒がれました。これはとても大切なことですが,それがまたどこかに飛んでいってしまっているのですね。もう今ほとんど聞きません,創造教育とか芸術教育とか。こういうものもやはりどこかで提示していかなければならないと,僕は思います。つまり小・中・高の底辺ですね。こういったところが,そういう意識を持たせていくということがとても大切ではないかなというふうに思っております。

○青木部会長 どうもありがとうございます。
 では,米屋委員,お願いします。

○米屋委員 私は,留意すべき事項というのは,当面の課題というふうに読みかえて読んできておりまして,この中で(1)と(3)に関しては,日ごろ芸術団体ですとか芸術家の方と接する機会が多く,調査研究も行わせていただいておりますので,私としてはより深く関わっている問題です。(1)と(3)に関しては少しずつですが制度と現状との間のギャップや何かが把握され始めたということで動き出してはいると思います。でも,課題の解決というところにはまだ至っていないのかなという段階だとは思います。けれども,(1)の点で言っておきますと,やはり芸術家,実演家,スタッフという方々がどういう契約状況に置かれているのかということの把握がまだ十分進んでいないということを1つ言及しておきたいと思います。
 (3)に関しては,非常に難しい問題ですが,評価というのは政策目標がはっきりしていないとやはり行いにくいことだと思います。先ほど田村委員などからもご指摘がありましたが,計画あるいは政策目標というようなところとの関連になってくるので,これも現状の支援制度がどういうふうに実態と合うところがあるのかないのかというようなところの洗い出しがまだ不十分ではないかなというふうに思っております。
 それから,(4)に関しては,これは非常に大きな問題ですが,2つ指摘しておきたいことがあります。1つは先ほど伊藤委員がおっしゃったようにアートNPOと,最近増え続けている新しい組織ということがあるかと思います。その新しいところに目を向けるのと同時に,芸術団体はやむを得ず営利団体の形をとってやってきたところとか,今,公益法人制度改革が進んでおります公益法人として活動してきているところとかに目を向けてみると,新しいアートNPOとは見た目が違うかもしれませんけれど,内容的には同じ課題を抱えているのだというところに思い至ります。こういったところの制度をどういうふうにしていくのかというのは,近々の大きな課題ではないかなということです。
そしてこれは,先ほど申し上げればよかったのかもしれませんが,これまで地方公共団体と一口で今まで言われてきているのですが,私の実感としては基礎自治体である市町村レベルと都道府県レベル,あるいはもっと広域というところでは地域性ということももちろん出てきますが,いずれにしても,そのレベルごとに文化行政の中で担うべき役割については,比重がいろいろと違うのではないかということを思っています。そして,そういった各論はあまり議論されてきていないという認識があります。ですから,関係機関との連携といったときにひとくくりに自治体とするのではなく,その辺の違いというものをとらえていかなければならないのではないかと考えております。
 そうしますと,資料6の右側に文化庁の主な取り組みが書かれていますが,文化庁だけが何か一生懸命頑張る,あるいは国だけが頑張るというのでなくて,左側のこういった課題に対して国がどうしているのか,民間の組織がどう対応できているのか,実態はどうなっているのかというマップがつくられていって,初めてこの留意すべき事項というのを今後どうしていくべきかという議論ができるのではないかなと感じております。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 渡邊委員,お願いします。

○渡邊委員 ただいまの米屋委員の意見に大いに賛成です。ここに書いてある文化庁の留意すべき事項,それと文化庁の取り組みとの関係というのは,文化庁が直接的にかかわり得る範囲というようなものだろうと思います。ですから,どうしても本来その先にある地方の問題というのは大きいということです。関西文化元気圏とか丸の内元気文化プロジェクトというのも,果たしてこれは地方の問題かどうかというより,関西文化圏より大きな地域の問題として掘り起こしを図ったのですね。これについては,私も大いに関心があって,例えば芸術文化振興基金の事業運営に関わっておりますので,会議があったときにどのような案件が出ているか,全体として地方別にそれを分類したときにどのような結果が出てくるのかということに留意しています。
 例えば,関西文化圏というものも文化庁長官以下,一生懸命やっていただいたわけですが,その結果何が出てきたかというと,これはなかなかこの4~5年だけでは見えにくいと。単に件数だけトータルして累計を追うと,全体として落ちてきてしまうというようなこともあり,評価というのはなかなか難しいものだなと思いました。
 ただ,これから我々にとって現時点で文化財の問題もそうなのですが,将来に向かって継承,発展をしていくという観点から立つと,やはり地方の問題とそれからNPOの問題は欠かすことができないと思います。特に,中央政府というと,NPOと直接に関わりはなかなか持ちにくい状況です。行政的関係としても,単位としてなかなか認めにくいということになります。ですから,どうしてもその間に地方公共団体が入らないと十分な有機性というものは出てこないだろうと思います。まして,NPOはそういう行政的なところを飛び越えて活動していきますので,これから文化活動全般に行き渡っていくというのが,これからの社会ではないかと私は考えております。
 そういうわけで,当面は現実に文化庁が行っているというのは,継続性の上からいうと,やはりこの問題はこういうふうに書かざるを得ないだろうと思うのですが,新しい問題の掘り起こしをどうしましょうかといったときに,新しい視点というのはもう一遍考えていった方がいいというふうに思います。
 以上でございます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。大変,貴重なご意見をいただきました。
 例えば,マスコミとの関係はやはり非常に大事ですね。文化に関しては,マスコミがしっかりとその重要性を認識して書いていただかないと,なかなかその認識,社会的な認識も政治的あるいは経済的認識も得られないというのは事実でありまして,これはやはりこれまであまりそういう情宣活動をやっていなかったのはきちんととやるべきだと思います。
 それから言論,表現の自由というのは,現代日本の持っている最大のパワーの1つなんですね。つまり,日本を外れますと,恐らくアジア諸国,東京から向こうのずっとオーストリアのウィーンまでは言論,表現の自由というものがほとんどありません。今,文化行政に関しては,特にアジアとの文化力の競争が非常に激しくなってきまして,5年前には恐らくほとんど考えられなかったようなアジア統計も出ているわけですね。韓国はものすごい攻勢をかけて,中国もこれからますます文化で,中国脅威論が今アジアでありますから,文化でやろうということがあります。日本はこれまで欧米を見ていればよかったのですが,アジア諸国の中で日本の大きな位置というのは文化力,あるいは自由な国ということですね。東大で優秀な博士論文を書いた中国人の留学生が,日本で出版されて大きな賞をとっているようなものがあるのですが,その著者に北京大学に行って聞きますと,中国では全然出版の許可も得られない。20年前ですよ。というような話を聞いて,その点では大変日本は本来ポテンシャルとしてものすごい魅力を持っているので,そういうことは日本国内でもいろいろな議論がありますが,アジアの中で見た場合には大変大きな特徴だと思います。そういうのもやはりこの文化力の1つの基礎にあるのではないかとかいろいろと考えさせられました。
 文化予算から切っていくというのは,これはどうもやはり先進国のやることではないですよね,どう考えても。やはり先ほどの近代市民社会というのは,文化をちゃんと保護する。ともかくアーティストの地位が日本では低過ぎます。やはり,もっとアーティストに対しては尊敬を,アメリカだってあれだけ資本主義競争が激しくてもアーティストに対してしっかりと保護しますから。それから,アメリカの予算は,連邦予算は少ないのですが,税制そのほかがあります。アメリカの資本主義の非常にいいところはフィランソロピーがものすごく発達していて,ジョージ・ソロスみたいなファンドマネーでもうけてもフィランソロピーをしなかったら社会的に葬られるんです。ですから,ものすごい寄附をする。ビル・ゲイツもものすごい寄附します。税制の問題がそこに絡んできますから一概には言えませんが,あれを含めますとアメリカの文化予算は恐らくトップになると思います。そんなことも,お話を伺って思いました。
 本日は,この第1の文化芸術の振興の基本的方向という点で,特に4つの項目の中で2の文化芸術の振興における国の役割そのほか,それから4の文化芸術の振興に当たって留意すべき事項についてご議論をいただきました。まだまだいろいろなご意見がおありでしょうが,時間もまいりましたので今日はこれで終わりにしたいと思います。何か最後にご意見ございますか。全体につきまして一言言いたいというようなご意見がございましたら,ぜひお願いいたします。
 まだ,これからこの部会は何回も開催しますので,お忙しいところまたご出席をお願いすると思いますが,今日の議論についてはこれで終わりにしたいと思います。
 それでは,事務局より次回の日程,そのほかについてご説明をお願いします。

○吉田政策課長 次回からそれぞれ各論ということで,資料2にありますような役割分担でご意見をいただくということになります。次回は,発表される先生方の日程を優先させていただきまして日程調整をさせていただきますと,7月6日の(水)の13:00から15:00までという形でございます。場所は,この同じ東京會舘ということで予定をしております。
 それと,もう一つご理解願いたいことがございます。今,政府では夏の間の軽装,ノーネクタイ,ノー上着ということについて励行しようということでございまして,それぞれの役所を挙げて取り組んでおります。したがって,今日は私どもこういう格好で出席させていただきましたが,次回以降はノーネクタイ,ノー上着ということで出席いただく者もあるかと思います。これは,強制するものではございませんので,個々人の判断があるわけですが,そこのところをご理解賜りたいと思います。そういう意味で,委員の皆様もどうぞ軽装で結構でございますので,そこはご自身のご判断でご出席いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは,これで閉会とさせていただきます。本当に,今日はお忙しいところありがとうございました。

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