第21回 文化審議会文化政策部会議事録

1. 日時

平成17年11月30日(水) 14:00~16:00

2. 場所

東京會舘本館 11階 ゴールドルーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 岡田委員 河井委員 嶋田委員 関委員 田村委員 富澤委員 根木委員 松岡委員 真室委員 山西委員 横川委員 
吉本委員 米屋委員 渡邊委員 米屋委員 渡邊委員

(事務局)

河合文化庁長官 加茂川文化庁次長 辰野文化庁審議官 寺脇文化部長 岩橋文化財部長 関政策課長 他

(欠席委員)

伊藤委員 上原委員 熊倉委員 佐野委員 永井委員

4.議題

  1. (1)「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の評価と今後の課題について
    (審議のまとめ骨子案)について
  2. (2)その他

5.議事

○青木部会長 これから文化審議会文化政策部会、第21回を開催いたします。まず事務局から配付資料のご確認をお願いします。

○関政策課長 <配付資料の説明>

○青木部会長 資料1の前回の第20回議事録案に関しては委員の皆さまにご確認いただき、ご意見がありましたら1週間後の12月7日(水)までに事務局までご連絡をお願いします。
 本日、まずお諮りするのは今後の日程についてです。資料2をごらんください。
 本部会でとりまとめる審議のまとめに関しては、2月上旬に予定されている総会への提出を考えていますが、日程の関係上12月中にこの部会を開催することが難しいので、報告案の作成に当っては文化政策部会の委員の中から数名を選出して、報告案作成チームを結成し、案文の作成を行いたいと思います。この件については前回お諮りしてご了承を得ています。報告案の作成は部会長として、私が最終的にとりまとめを行いたいと思っていますが、ほかに報告案作成チームの委員としてご協力をお願いしたい方を、ここで私からご指名したいと思いますが、よろしいでしょうか。

(全員から異議なし)

○青木部会長 それでは、ご意見がないようですので、お願いをしたい委員は、田村委員、根木委員、吉本委員、米屋委員です。この4人の方にご協力をお願いして、案を作成してそれを皆さまにお諮りします。4人の方には12月にまたお集まりいただきますので、よろしくお願いします。報告案の作成チームについては以上です。
 次に、資料3、4、5に関して、文化庁よりご説明をいただきます。特に資料5は、これまでの部会で審議いただいた事項をまとめた「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の評価と課題についての骨子案です。これについては前半として第1の「文化芸術の振興の基本的方向」についてのご説明のあと、委員の皆さまからご意見をいただきます。また後半は「文化芸術の振興に関する基本的な施策」に関してご意見をいただきたいと思います。

○関政策課長 <資料3,4,5の説明>

○青木部会長 それでは最初に資料3と4、続いて5に関して、ご議論をいただきます。

○河井委員 文化庁の取り組みの中で国民文化祭という大きな事業があります。先般の福井の国民文化祭に地元の少年団も参加しましたので、視察してきました。やはり地方で文化活動をやっている者、アマチュアにとっては晴れの舞台ではないかと思います。そういう観点から、参加状況を見ると、もう少し全国的な規模でプロもアマも集える大会にならないかという希望があります。国民文化祭もことしで20年ということですが、10年後、30回あたりを目指してそういう取り組みをしていただき、そういう大会になればいいと思っております。文化立国ということで、世界から人を呼ぶイベントになる要素をもったものではないかと思います。

○寺脇文化部長 国民文化祭は各開催県がそれぞれ工夫を凝らして毎年行っています。そのためにおっしゃるような全国的に集まるという要素と、その土地、土地のローカルな特色を出していくという要素との両方があります。例えば全国的規模でできるだけ大勢の参加をしてもらうという観点からは、東京や大阪等で行うのが一番いいわけでしょうが、一方で各都道府県、特に地方の県を回っていくという要素もある。そういう意味では今おっしゃったような事柄をもう少しトータルに1年規模で考えていって、国民文化祭だけではなしに芸術祭も今は裾野を随分広げていて、プロでなくては参加できないというようにはしておりませんし、新しい部門のメディア芸術祭では学生や若者も参加する形で実施していますので、むしろ課題は国民文化祭、芸術祭、メディア芸術祭の連携です。ほかにも文化庁、あるいは民間で行われている芸術祭典のネットワーク化をきちんと進めていくということもカバーできるのではないかと思いますので、今のご指摘の点は、ぜひ考えさせていただきたいと思います。

○岡田委員 前回の会議の一番最後に関委員が中身の議論をしたいとおっしゃったときに、ここは枠組みの議論をする場ではないかという意見もありました。それで、いろいろ考えましたが、私は関委員のおっしゃることが大変必要なことだと思いました。前回、基本的な方針をつくったときもそうでしたが、総花的に書かなくてはいけないものかという議論がたくさんありました。そのときには、もう少し読んで楽しいものにしたらどうかという意見もありました。今回も、あれも書かねばならない、これも書かなければならないということもあるでしょうが、やはり中身がどうなりたいのか、こうあるべきだということからもう一歩踏み込んで、どうなったらうれしいのか、楽しいのかということを議論しておかなければならないと思います。

○吉本委員 意見というよりむしろ質問ですが、資料の4で基本方針の策定前と現在を比較したときに予算が減っているもの等がありますが、これは何か明確な方針のもとにそれが行われているのかどうかということ。それとこの表で言う現在は平成17年度のことですが、既に18年度の予算要求が出ていますので、来年度の施策の体系でさらに今年度から変化するものが既に方針としてあれば、それについてご紹介いただければと思います。

○関政策課長 資料の4は予算を中心に書いていまして、たしかに事項によっては14年と17年を比較すると減少しているものもあるという状況です。ただ、トータルとしては最近の文化庁の予算はずっと伸びてきていて、平成15年に1,000億を突破して、平成17年度の予算額は1,016億ということです。例えばその中で先ほど映画については日本映画映像振興プランというパッケージにしたということを申し上げましたが、そういった予算の組み方を変えることによって事項としての額が増えたり減ったりしているものもあるわけです。
 それから来年度、18年度の予算については、概算要求のベースで申し上げれば1,016億円と今の予算を4.4%伸ばすという要求をしているところです。

○渡邊委員 今予算のことが出たのでおたずねしておきたいのですが、今国の政策から地方公共団体に財源まで移そうということで動いています。そのときに文化庁予算はかなり影響を受けるのでしょうか。例えば学校教育で云々といったときにも文化庁は直接事業化するという観点もあるだろうし、逆に地方に渡して、それは地方でやってくださいというように、文化庁が指導方針だけ出していくというような行き方をとるのかどうか。そういう実行上の問題と予算のあり方はどういう見通しになるのですか。

○関政策課長 地方分権あるいは三位一体等々の補助金の改革の動きがありますが、文化庁の今の予算は地方から見てもその論議の対象にはなっていません。

○加茂川文化庁次長 三位一体の改革とか構造改革といった形で国から地方へ補助金、負担金を見直して税源移譲をするという議論でいうと、関課長が申したように文化庁の事業予算でその対象になっているものは、今はないです。この議論の過程で去年あたり文化庁の補助事業の中で一部市長会等が対象にすべきではないかと、議論の俎上にのぼりかけたことはありましたが、結局、国がきちんとその事業を執行してほしい、国の予算として予算措置してほしいということになって、負担金、補助金で税源移譲の対象とすべき削減対象のリストからははずれましたので、直接影響は受けないということは言えると思います。
 ただ、全体に今の18年度の概算要求のことも吉本委員からその状況がわかれば説明をとありましたので付言しますと、全体としてはやはり小さな政府の議論があって、地方でできるものは地方にまかせる。国が予算措置をして、例えば呼び水的な事業を実施するという、従前の行政手法が取りづらくなっている状況にあることは否めないと思います。地方で責任をもって事業を執行すべきものはできるだけ地方にまかせて、国としてはそれを最小限の支援体制で財務省の予算査定や、国の予算のあり方の議論をしていく。その大きな流れにあるということも一つ付言しておかなければならないと思います。

○渡邊委員 その関連で言いますと、このところ地方文化の振興が一つのうたい文句になっていますが、その文化のあり方がこれから問題になってくると思います。河井委員が言われた国民文化祭等は、ひとつの地域だけでは見られないもの経験できないものをその地域に持って行くことで、相互に自らの地域を客体化し比較しながら新しい進展を得るという効果があるものです。これは、本来は地域を越えて国の役割であろうと思いますが、こうしたものを国の文化施策として直接行うのか、あるいは地方の時代だとして、地方に移管するのかということです。

○関委員 私は「地域における文化芸術の振興」はきわめて大事ですし、日本全体の地域の文化が豊かになって、ひいては日本文化全体が豊かになるということが基本だと認識しています。それで、次の資料5に関わることですが、その5で鑑賞等の機会の充実ということに関して、それぞれ居住する地域にかかわらず等しく文化芸術にアクセスできる環境を整備すべきだという議論がある。それに対して、一つの拠点主義のような考え方もあります。つまり、文化をあるまとまりで蓄積し、集積し、ストックとして大きくしていくという考え方にたてば、文化施設や文化ストックを各地域それぞれに分散するということとは、違うということです。
 これはハードの施設のことだけを言っていると考えるべきではないのかもしれませんが、そういう拠点主義的な考え方と広く地域に文化施設を多くつくっていくという考え方との間に、予算の使い方とか国の地域への関わり方の問題があると思います。
 そのどちらかが間違っているということではないと思いますが、国と地域の分担についての考え方の仕分けを整理する必要があると思います。

○富澤委員 地域での文化活動を国も大いに支援していくということは非常に大事なことです。それは河合長官が従来から言われていることで、私もまったく賛成です。同時に文化庁の予算が1,000億の大台にのって、今後も増えていくということは、日本の21世紀を考える意味で大いに歓迎すべきことです。
 同時に、例えばこの6ページに国際交流等の推進というのがあって、これは外務省を中心に関係省庁が集まって行っているのでしょうが、国際文化交流について日本の文化発信、文化の輸出はとても貧弱です。例えばパリに磯村さんがやっている施設がありますが、やはりそれはパリだから置いてあるので、ほかの国へ行くとそういう施設はほとんどない。ただこういうものをこれからは振興していこうということだろうと思いますが、それも広く見れば日本の文化を振興する、国民の側から見れば日本の文化をもっと広める、高める予算だろうと思います。ところがそれは文化庁の予算には入っていない、外交予算なのでしょう。そういうものを含めると日本の文化予算は幾らになるのかということは、私どもには全貌がわからない。しかし、これからは文化庁の予算だけではなくて、そういう事柄も含めて、トータルに考えることが必要だと思います。
 それを日本としてももっと増やして、文化を21世紀に向かって日本の大きな武器というか、国の理念にしていくということが大事ではないか。これまで20世紀の日本が公共事業等でむだなことをしてきたのを見直そうという空気が非常に強い。そうすると生産性を高めるということが一番大事なわけです。その生産性を高めるために文化は一つの柱になると思いますし、それが観光と結びつけば、日本の大きな産業の推進にもなるわけです。そのようにトータルに文化を考える必要があるのではないか。
 ですから、文化庁は文化庁の予算だけを議論しているのではなく、日本全体で文化予算がどれくらいあって、それをどうしていったらいいのか、そういう視点をぜひ盛り込んでいただきたいと思います。

○根木委員 先ほど関委員がおっしゃったことに関してですが、文化庁は従来から文化の頂点の伸長と裾野の拡大ということを常に言ってきた。頂点の伸長というのは世界に通用するような芸術文化、要は文化の上部構造、これをいかにして引っ張り上げるか。これに国家としては鋭意尽力するという側面があるのだろうと思います。対外的に我が国の文化的なアイデンティティをどうするかということにもつながってくることであると思います。
 また、裾野の拡大ということですが、これに関して国と地方との役割分担が生じてくるのではないかと思います。その裾野の拡大にはおそらく2つの意味があると思います。1つは文化格差の是正ということ。もう1つはそれをベースにしながら、それぞれの地方が独自の文化をいかにつくっていくかということ。それで、前者の方、格差の是正ということ、これは国がある程度コミットすべき事柄である。一方、後者の地方独自の文化の形成といいますか、創造はまさに地方が独自の方法ですることではなかろうか。したがって、国としてどこまで手を伸ばすかというと、やはり格差是正という側面までが大体範囲ではなかろうかと思います。
 それからまた、全国的に見て3,000市町村に全部目配りをするということではなくて、やはり国土の文化芸術のバランスといいますか、配置のバランスから考えますと、どこかに拠点形成ということも必要なのではなかろうか。現在、文化庁で芸術拠点形成事業が行われていますが、少なくともブロックごとくらいには国土全般のバランスを見た上で何らかの手を打つというのも、これも国としての役割ではなかろうか。そんな考え方で現在の文化行政が進んでいると理解しています。

○青木部会長 この基本的な方針は非常に重要だと思います。前にできたときと、現時点における基本方針、来年度の改定ということですが、その重要性自体非常に変わってきていると思います。文化振興の問題、芸術振興の問題は日本国家全体にとって、より重要になってきている。というのも韓国や中国が追いかけてきていて、それを凌駕するような近隣諸国との競合関係がこれから出てきますから、国内問題を決めるときには国際的な視野で決めなければいけないような状況になっていると思います。
 今これから大きな問題になってくるのは「文化権」という考えです。「権」というのは「権利」ですが、これからいろいろな形でNGO、NPO等の活動の中などでも全国的にも出てくる問題だと思います。それと同時に先ほど関委員がおっしゃったような拠点主義についても、考える必要がある。現状として果たして文化都市東京などと言えるのかどうか。一極集中などといっても何に集中したかわからないという側面もある。本気になって拠点にしてお金をかけても、例えば北京、パリ、ロンドン、ベルリンに追いつくのにまだ30年くらいかかるのではないか。そのように日本全体で考えるべき問題と、今の「文化権」という文化の上でのアクセスとか権利とかについて、個人から市民から地方から全部保護・尊重するという問題の、2つがあると思います。

○岡田委員 中身について論じようとすれば、やはりさきほど根木委員がおっしゃったように、頂点と裾野ということになってきて、非常に芸術性が高いものに関しては、もう論じる必要はない。その点、裾野について論じることが一番国民の気持ちに近づくことだと思います。裾野というと地域における文化活動ということになるのですが、地域の文化を「ケの文化」と「ハレの文化」に分けて、日常に根ざした生きがいにつながる文化である「ケの文化」に、我々が高い関心をもって論ずることが大事です。そのことで、文化心というか、そういうものを育てていくための、根っこになっていくものができるのではないかと思います。

○吉本委員 今、根木委員と岡田委員のご発言で頂点と裾野という表現がありました。僕はそれに少し違和感を感じています。そういうピラミッド型の構造でものごとをとらえていくよりも、あくまで基本はフラットであって、頂点というのは実はいろいろなところに偏在しているというようなとらえ方の方が適切ではないかと思います。文化に限らずいろいろな分野のことを見ても、社会全体がそういう構造になってきていると思います。さきほど根木委員から格差是正というご発言もありましたが、格差というとそこに優劣というかある種の価値判断のようなものが介在してくると思いますので、むしろ格差是正というより地域地域の差異を認め合うというような、何かさらに大きな考え方が特にこれからの文化芸術振興については必要だろうと思います。
 また、頂点と裾野というと、何か頂点は国が行って、裾野は地方が行えばいいというような暗黙の構図も連想されます。そういう点についても、ぜひ議論したいと思います。

○岡田委員 今、私の意見があまり正確に伝わっていなかったと思います。イメージとしては頂点というのは世界に通用するバレエダンサーとか世界に出て稼げるピアニストとかいうイメージです。ピラミッド構造ということではなくて、それはそれで浮遊しているイメージです。それで裾野は裾野で本当に地域社会に根ざした「ケの文化」と、お祭りだとかの地方にもある「ハレの文化」がある。その日常に根ざしたものを考えることからはじめないと、議論も空回りするのではないかという懸念を感じているというわけです。

○青木部会長 それで先ほどおっしゃった内容について、日本も枠組みだけでなく中身について議論することにつながっていくという理解になる。

○横川委員 今のお話に関してですが、日本にはご存じのように北から南まで、非常に古い地域の伝統があります。これだけオープンな世の中になりましたが、まだ閉鎖的というか、かつての藩のイメージがあるのかもしれませんが、伝統的な地域の文化をそれぞれが伝承的に持っている。その意味では日本という国には、地域によるものの見方というべきものがある。そして、それを実際に自治体が継承したりサポートしたりしているのが現状です。だから国で一極集中的にという形ではなく、そういった違いを踏まえて伸ばしていくこと。自治体を中心にして国としても、長期的な視点でそういうものを何とかうまく継承して育てていくように支援することが大切だと思います。

○関委員 非常に重要な議論が出ていると思います。根木委員のおっしゃったのが従来からの考え方だったと思います。それはそれで正しいし、そのように行われてきた経緯がある。しかし今は、格差をつくるということだと思います。格差を是正ではなく、いかに格差をつくるかということではないか。地方にすぐれた伝統文化があれば、それを突出させていって、どこへ出していいようなすばらしいものをつくっていく。地域地域の伝統文化で、すぐれたものがあればそれを全部伸ばしていく。つまり一種の拠点主義で、すぐれたものを徹底的に伸ばしていく、一級のものにしていくということ。それは一人や二人のすぐれた芸術家をつくるという意味ではなく、もう少しストックとしての、つまり蓄積としてのクラスターをどんどん育てていくということ。そして国は格差を是正することはやめて、そういうところに支援をしていく。中身を評価した上ですぐれたものをどんどん育てていく。それが岡田委員の言われた中身の議論に結局はなっていく。せっかく基本方針を改定するのだから、みんなに少しずつ支援していく考え方は、この際やめるべきだと思います。

○河井委員 地方の文化活動の議論、非常に興味深く話を聞かせていただきました。内容的には先ほど吉本委員、横川委員がおっしゃるとおりだと思います。これから地方の文化については裾野ということではなくて、地方の文化の層の厚さと多用性の保障ということが大事だというような表現を採用していただければありがたい。
 それから地方の文化活動は、今まちづくりとか経済的な波及効果もねらって行っているのが現実です。ですから都市間の競争があって、格差が当然出てきていいと思います。ただ、根木委員のおっしゃるナショナルミニマム的な格差是正はやはり必要だと思います。
 実は、以前に地方の文化活動の経済的な波及効果を調査しようと思ったのですが、これは我々の能力をオーバーした作業でした。そこで、例えば芸団協さんで、そういう調査をしていただけると地方での文化活動の振興に対し、経済界もより後押しのできる体制ができるのではないかと思いますので、ぜひお願いしたいところです。

○米屋委員 まず今の件からお答えすると、どちらかといいますと芸団協よりは文化経済のご専門の経済学者のいらっしゃる大学にご依頼なさった方が適切かと思います。それはさておき、今までのご発言は、すべて的を得たご意見だと思っています。一昨年、それから昨年もこのような議論が少し出ていたかと思いますが、そのときに言われていたことが、地方イコールアマチュア、地方イコール伝統芸能、地方イコール鑑賞という発想がそもそもおかしいのではないかということです。地方でもプロフェッショナルな人が活躍する拠点があっていい。現在でも、地方でプロを目指す方はどうしても東京にこなければ生活が成り立たない構造になっているので、そういう意味ではやはり格差があると思います。
 それで、横川委員がおっしゃったように地域の人々の中に伝統芸能が多様にあるということについて。日本ほどアマチュアが豊かに活動している国はないのではないかと私は誇っているのですが、自分の本業のかたわらに文化的な活動に触れるという、これだけのモチベーションをもった国民は、本当に他にいないと思います。しかし、その部分とそれを専門とする人ということの議論が、今地方といったときにごちゃごちゃにされているのが問題だと思います。
 裾野という言い方は今もあったようにあまり適切ではないかもしれませんが、その裾野という言葉がもし必要だとしたら、文化を味わう心というところでは格差があってはならないのだということになるかと思います。これは何もオペラハウスを47都道府県全部に配置するということではなく、味わえる心を養う拠点であったり、支える仕組みであったり、そういうものに格差があってはならないということかと思います。その辺の専門性と国民一人一人の心豊かさという部分をうまく分けながら議論をする必要があると思っています。

○根木委員 関委員のおっしゃったことに対するお答えですが、私も平均的云々ということを申しましたが、基本的には地方の文化というのは文化多様性であってしかるべきであるし、最終的には格差があってしかるべきだということは基本的に考えています。ただ地方に行くと、やはり平均的かつ普遍的な文化に浸りたいという、一面のニーズもあるわけです。先ほど河井委員がおっしゃったようなナショナルミニマムとしての文化が広く行き渡るという意味で、私はいつも「文化のきんてん均霑」という言葉を使っています。最低限度の必要な文化が全国津々浦々に行き渡って、それをベースにしながら新しい文化をそれぞれの地域あるいは地区がつくり上げていくという基本的な構造があってしかるべきではなかろうかと思います。その上で初めていい意味での文化格差も出てくるでしょうし、文化多様性も確保できるということになろうかと思います。そこをやはりきちんと構造的に分析した上でどうするかということを、考える必要があるのではなかろうか。
 それからいまひとつ、頂点ということを申しましたが、たしかにトップレベルのものは国家としてこれを高める必要性があると思います。実際、プロからアマチュアの活動まで極めて連続しています。中間レベル以上を対象にすべきなのかアマチュア文化活動まで目配りすべきなのか、その際、国と地方がどの程度役割分担をすべきなのか、そこがあまり整理されていない。もっともプロとアマとの区別自体もはっきりしていないというところもあるものですから、やはり国としてどの範囲までできるのか、地方にどの程度まかせるべきなのか、そこをある程度線引きをするという必要性もあるのではなかろうかと思います。

○嶋田委員 やはり国がすることとして考えると、公平性がどうしても前面に出てこざるを得ない。一方、企業とか企業が持っている財団の場合はもっと自由に考えられる。もっとも、今まで企業が持っている財団も割合総花的に目配りしてきたのですが、ここ数年、我々財団も持っている企業同士の話し合いの中では、もっと自分たちが発展させたい部分での特徴を出していこうという傾向も出てきています。それでも、国の場合は、もちろん国全体で文化をどう見せるかという戦略がまずひとつ必要ですが、民意を考えると、日本国全体に対して根木委員の言われたような考え方も必要かと思いました。
 ただ、もし企業がこうした基本方針を立てて、向こう5年間、10年間の戦略をつくるとしたら、内容の総花性ということはさておき、例えば5年、10年の間に全体をどう動かしていくのかという話があって、それでここ何年間かはここの部分が弱いからここに注力するとか、そういう意味での戦略性の重点化と分散とが、もう少し考えられてもいいと思います。すべてに気配りをしているがゆえに、実は何を言っているのかよくわからないということが、民間一般の見方としては感じられなくもない。
 以前に、私ども財団の集まりに文化部長さんが見えたとき、映画というのは日本人の暮らしを海外に知らしめるために重要で、日本理解にとても役に立つものであるというお話をいただきました。そして、映画のさまざまな戦略に注力していくという説明を受けて、スッと頭の中に入ってきて、文化庁はそういう政策で行くのだと理解できた。少なくともここ数年はそうするのだというと、そういう情報が求めなくてもどんどん入ってきて、そういう方向で動いているなというのがよくわかる。そのわかりやすさというのがすごく重要だと思います。ここではさまざまに文化にかかわっていらっしゃる方が多いだけに、どうしても均一になるのでしょうが、そういうわかりやすさを知ることによって、検証もできます。それで、やはり文化は必要なものなのだということで、一般国民の理解を得やすくなるので、そういう方法を骨子の中に入れていただくことが必要ではないかと思っています。

○田村委員 私は、それぞれの文化芸術に特定の専門分野を持っているわけではなく、非常にディレッタント的なエンジョイナーであるわけです。そのときに一番感じているのは格差とかそういう問題ではなくて、文化というのはこちらがどうアクセスして選ぶものかという感じしかないものですから、今の日本の社会はそのあたりが非常に豊かだと思っています。逆に供給する側から見たらいろいろな問題があるのでしょうが、アクセスする側から見たらどこへアクセスしてもいいわけだし、どこをエンジョイしてもかまわないような状況があると思うので、文化庁が基本的な方針を出すという場合に、受給どちらの側から見るかというと、多くの国民は多分エンジョイしている方から見ているので、そこに届くメッセージがないと、政策的な提案にならないのではないかという感じがしています。
 その観点からすると、前回の方針から見ても、たしかにあらゆる分野が全部網羅されている。なるほど立派だという感じはするのですが、何か届かないところがあって、それは岡田委員とか嶋田委員がおっしゃるとおりです。
 それでずっと私が考えていることは、そもそもこの方針を考えるときに文化の世界というのを政策化するとか計画化する論理というものが実際にはないのではないか、議論されていないのではないかということです。文化の現状が問題なのではなくて、文化を政策化するときの論理というものを我々が共有していないのが問題だという感じがあるのです。それを共有することによってこの方針に対する国民のスタンスあるいは地域のスタンス、企業のスタンス、全部変わるわけです。そこのところをもっとしっかり議論していかなければならないという感じがしていたので、これを最初にお話ししました。
 そこのところをさかのぼって考えてみますと、文化の基本法として文化芸術振興基本法があります。その法律の中には、強い基準があったり、規制があったり、禁止項目があるというのではなく、文化芸術の振興はいいことだから進めていこうということになっている。そういう法律がもとになっている政策提案は非常に計画化しにくいし、政策選択しにくいものです。だからこそ、はっきりした論理を持つべきだと考えるわけです。例えば今回の話にしても5年間の変化があったときに、5年間の変化をどう映し出すかということはほとんどないわけです。それから文化のジャンル分けにしてもこれでいいのかという議論がなければ、やはり計画とか政策にならない。そのあたりをしっかり議論していく会を設けていただきたいという気がしています。
 突き詰めて言うと、例えば指定管理者制度の問題にしても、この部会の中でコンセプトとか考え方がしっかりあるわけではなくて、非常に外在的に受けとめているだけです。ですからもっと政策とか論理というものを文化の問題だけではなくて、文化政策とは何かということまで、この際考えていくべきではないかと思います。そういう意味ではメッセージ性が強過ぎても問題があると思いますし、文化政策という言い方も私としては少し気になるところがありますが、その文化を政策化するときの論理というのは一体何だろうか、我々はそれをどう共有しているのかということを考えていただきたいと思っています。

○松岡委員 過去5年間を振り返ってこれから先どういう方針でいくかということが、まずベースにあるわけです。文化に関して何が起こったかということですと、一つには指定管理者制度ですし、地域の文化の振興という面で言えば平成の大合併です。これは下手をすると本当に文化を台なしにしかねない制度だと思います。
 資料の5にもありますが、11ページに第2の10として「文化施設の充実等」があって、ここには指定管理者制度に対して、文化の側でどのように対応していったらいいかということで、黒ポツの5つ目の最後のところに文化的側面に配慮しなければならないとあります。では、文化的側面とは何なのかということになると思います。それは、それに携わる人間あるいはその施設に携わる人間が長いことかけて試行錯誤を経て獲得し、蓄積してきた経験や技術やノウハウだと思います。そしてそれは、時に経済効率とか市場原理とかいうものに反するかもしれないような、芸術文化の一種の根幹だと思います。それを継承、継続することが文化的側面であると言っていいのではないかと思います。
 そもそも、この指定管理者制度は、ハードとソフトをつなぐものだと思います。ソフトというのは文字通り形として残らないものですから、今申し上げたように人から人へ、人の中に財産として残っているものを次にあるいは隣の人につなげていく、継承していく、手渡していくものだと思います。決してその制度がその連携を壊してはならないと思うのです。
 具体的には、これからの5年間でこの制度が今申し上げたように文化の根幹を長期的な展望に立って支えていくべきであるのに、指定された年限で儲からないから降りたというようなところも出てくるかもしれない。あるいは評価する側で何か見当違いな評価をして、その根幹を損ねてしまうような場合もあるかもしれない。劇場ですと芸術監督、館長、そして運営する指定管理者の関係がソフトとハードの連携として大事になってくるので、そのあたりの考え方をしっかり押さえていくような視点を持つことが大切になる。こうしたことからも総じて指定管理者制度の運用のまずさで流されていったり、平成の大合併で地域に残っていた文化の根の部分まで、掘り起こされてしまうようなことがあってはならない。そうした意味でも、これからの5年間にこうした制度や状況に対して、どう対応していくかということをはっきり基本方針の見直しとして出さなくてはならないと思います。

○岡田委員 資料5の8ページに外来語の言い換えがありまして、これを推進してきているにもかかわらず、この骨子案に多くの外来語が出てきます。例えばアイデンティティは、独自性とか、リーダーシップは指導的役割とか日本語に簡単に置き換えられるものもかなりカタカナで書いてあるので、おまとめになるときには、ぜひ留意していただきたいと思います。

○青木部会長 それは難しいところです。国立国語研究所から「外来語」言い換え提案が出ていますが、なかなか守られない。しかし日本語というのは、外来語を日本語に置き換えず、その中にとり込んできても、日本語自体は揺るがないという面は立派だとも思いますが、守るようにします。

○真室委員 私も基本方針のなかで使われている言葉とその中身の問題です。例えば、この基本方針の2ページで、「文化の中核をなす芸術」というような言い方がいきなり出てくる。ここでの芸術というのは文化芸術というくくりで広く一般にイメージされるような芸術ではなく、文化芸術振興基本法の第3章による規定されている、文学・音楽・美術云々とあるものによって構成されているものを指しているということが、基本法を見てやっとわかるということがあります。基本方針だけ読むと、芸術と、メディア芸術と、どこが違うのか疑問があったりします。
 それで今回の資料4に「芸術の振興」と1ページ目にありますが、ここで予算がついているのは大体5つの分野で、ここに文学とか美術というのがない。特にこの文学に対する支援はほとんど出てこない。もう1つ、東京都美術館で言えば年間250近い美術の団体が展覧会を開いています。そういう団体は、恐らく国の支援を受けていないと思います。このように同じ芸術でも分野によって支援の仕方が違う。これは国民からすれば、なぜかと疑問をもつと思います。
 それで特に文学が出てこないのはどういうことか。一方では芸術院会員とか芸術選奨等では文学の顕彰もしているわけですから。それからもう1つ、美術の中では文化財としての建造物は出てくるのですが、現代建築がどういう扱いになっているか。これは文化庁の方にお聞きしたいと思いました。

○吉本委員 先程の松岡委員のご発言に、僕も大いに賛同します。今の国の政策は、行財政改革によって、民に任せられるものは民へという小さな政府を指向しています。そのためここ数年で、効率化、市場化ということが急速に進展し、現在も美術館の市場化テスト等が議論になっています。対してこの資料5の骨子案によると、例えば最初の方にある基本理念等は、これまでの基本方針の考え方を堅持するということだと思いますが、僕はこの文化審議会の政策部会がこうした状況に対して、政府の政策の大きな方向はそうだとしても、こと文化に関してそれでいいのかというようなことを発言していく必要があるのではないかと思います。これはそもそも基本方針そのものの更に前段にくるような想定の話になるかもしれません。いずれにしても文化芸術をめぐって何か哲学というか、ある種の問題提起ができるとしたら、それはこの文化審議会文化政策部会だということになると思います。
 それがこの基本的方針の評価と課題のまとめという、今期の部会の役割において行うべきことなのかどうかはよくわかりません。例えば指定管理者制度も来年9月までに全部移行することになっていますので、この部会の報告が3月にまとまっても、もう直接的にはほとんど影響ない状態かとも思います。たとえそうだとしても、何かメッセージを出していくような役割が、今からまとめようとしている報告にあるのではないかと思います。細かな個別のことについてもちろん十分議論すべきですが、最初の大きな理念のようなことについても意見交換できたらと思います。

○米屋委員 私も同感でして、これまでのこの部会の検討、特にこの指定管理者制度については皆さんたくさんご意見があったのに時間の関係で十分議論できなかったのではないでしょうか。その意味でも、今議論されているように新たに浮上してきた重点項目あるいは留意すべき事項については、もう一度列挙しておく必要があるのではないかと思います。それで、前回の方針と同じような章立てを本当に必要とするのかといったところの議論も、必要ではないでしょうか。

○松岡委員 まったく同感です。この部会は文化に立脚しているというところを確認して、その視点からいろいろな現状に対して意見を言い、これから先の見通しと方向性をつけるというところが一番大事ではないかと思います。

○山西委員 学校の立場から発言します。子どもたちが豊かな文化芸術に触れるのは、豊かな感性と情操を育てる意味でこれからますます重要になります。しかし現状で本物の文化芸術に触れるとなって、学校で裁量のできるお金は通常5万円、かき集めても10万円がせいぜいです。そういう中で資料4の9ページにある形で「本物の舞台芸術に触れる機会の確保」として、一流の方々が学校に入って本物の芸術を公開するのは、子どもにも保護者にも極めて重要です。
 10ページの「学校教育における文化芸術活動の充実」にある、「学校への芸術家等派遣事業」についても学校とするとたいへんありがたいと考えていますし、体験した子どもたちにとっては大人になってからも、やわらかな感性のうちに深く心に刻み込んだものを残しているようになると思います。この辺を今後一層推進する政策の充実が図られればありがたいと思います。
 また、学校週5日制に伴って生み出された(土)の時間や、(日)あるいは夏休みを使った伝統文化子ども教室の事業。これにも多くの子どもたちが参加し、通常敷居の高いお茶の先生に公民館で講座を開設していただく機会を設けていただく等、これは点から面に広がりつつある事業だと思います。
 ひとつ質問があります。「本物の舞台芸術に触れる機会の確保」が、「青少年の文化芸術活動の充実」と「学校教育における文化芸術活動の充実」の両方にあります。これはこの一本の事業で学校と社会教育と両方ということでよろしいですか。他にも2つにまたがって書かれている事業があれば教えていただきたい。

○地域文化振興室長 ご質問の「本物の舞台芸術に触れる機会の確保」事業は学校教育と社会教育の両方に書かれていますが、これは舞台芸術を披露していただく場が学校の体育館等を使ったものと、地域の公立文化施設を使ったものがあることから再掲という形で両方の場面に掲載をしています。なお、ほかにはそういったものがあるかということでしたが、現在のところ「本物の舞台芸術」事業だけです。

○岡田委員 もうこれで終りで先ほどご指名された方たちがおつくりになるのですか。

○青木部会長 これで終りではありませんが、これまでのご意見をまとめて骨子案をつくり、今度1月の部会でご検討をいただくプロセスになります。

○岡田委員 米屋委員のご発言と同じですが、書きぶりとしてこのままいくと、これに近いものができあがってくると思います。ですが、ここに来て書きぶりはこれでいいのかということが、大きなテーマとして出てきたと思います。私は必ずしもこういう書きぶりでなくてもいい。もう少し読みやすいもの、読んで楽しいものであってほしいと思います。

○青木部会長 たしかに今日は、方針のプレゼンテーションの仕方から書式の書き方、あるいはどうそれを国民の皆さんに伝えるかという問題に対するいろいろな議論が出ました。

○根木委員 この基本的な方針に、トピックス的なものだけを取り上げて書き入れるのもひとつの方法だろうとは思います。けれども、もともとこれは基本法に即応した格好で、方針を文化庁というか政府として策定するということですから、あらゆるところに目配りをした上で柱立てをせざるを得ない。その際によるべき基準は、法律の個々の条文にのっとった格好で組立てざる得ません。
 ところが現在もそうですが、あらたに留意すべき事項とか充実すべき方向とか、そういうものが別の項目として入っているわけです。今アップツーデートに問題になっている事柄は、その中に入れることによって処理をする。そういう形で全体がおさまるのではないかと思います。

○岡田委員 関課長にお尋ねしたいのですが、こういうフォームをはずれてはだめなのですか。

○関政策課長 1点目に申し上げたいことは、今根木先生がおっしゃったように、基本的な枠組みは文化芸術振興基本法に定められていて、その基本法を踏まえるということ。かつこの基本法の中に、その基本方針はどういった目的で何について定めるか、あるいはそれを定める際にはどういう手続きを踏むのかということが定められています。したがって、やはり基本法を前提として定めていただくことが必要だろうということです。
 それから、もう1点申し上げたいのは、新しい基本方針をつくる時期は1年先であるということです。委員の皆さまの任期が来年の2月で切れます。そこからまた新しく任命されるわけですが、皆さまにお願いしているのは、「現行の基本的な方針についての評価と課題」です。それをいただいた上で、来年の2月から始まる文化審議会等で、次の基本的な方針をどう決めるかの本格的なご審議をお願いする予定です。

○渡邊委員 文化庁としては既にできている基本方針にしたがった見直しというか比較検討評価を書かざるを得ないと思います、だからその分のほかに、前半をもう少し工夫すればいいのではないか。いろいろと松岡委員から出ているように、私も文化財の世界にかかわった範囲の中で言うと、この五、六年で文化財保護にかかわる人たちが随分変わってきた。NPOとか地域の人とかが文化活動において客体的な受け手ではなくなり、そこに主体的に参加することで、文化が動くようになってきている。そうした視点も明確に出すことで新しい部分ができるのではないかという気がします。

○米屋委員 今のご意見に関連して。この部会では今まで出ていないのですが、現在内閣府で広域法人制度改革が進んでいます。来年度の通常国会には法案も上程されるのではないかというスケジュールになっている。これは官から民へという法人のあり方を変えていこうという大きな流れの中にあって、今までは法人格があればそれをもって志もあり実績もありとみなされていたところが、志のある人たちにまず法人格を与えて、実績については別に評価していくという仕組みに変わっていくものと理解できます。
 ですから経過措置も含めると、次の基本方針の間にそういった制度が大きく変わっていくことが見越されます。この骨子案の中でも現状でアートNPO等も出てきますので、そのあたりについて所管の在り方や評価の仕方等を、大きな流れの中でとらえて記述していく必要があると思います。

○青木部会長 大変本質的なお話から具体的な表現の問題まで、多岐に渡るご意見を拝聴いたしまして、ありがとうございました。
 今後の作業としては先ほど申し上げたように、4人の委員と私も一緒に加わり、12月に1回か2回本日のご意見、そのほか全部まとめたものをつくります。それを一応の骨子案として皆さんにお送りして、改めてまたご意見を拝聴して、来年2月に文化審議会総会を開きます。そこで文化政策部会での本年度の議論を報告するものが、今回作成するものですので、次の基本方針の最終案ではありませんので、そこはご確認ください。
 いずれにしてもプレゼンテーションの仕方とか表現の仕方、文章のあり方とかが問題です。それから文化と行政にかかわるときにどういう姿勢でいくのか、両方がです。ここにはやはりなかなか難しい基本的な問題が含まれています。それからきょうは拠点主義に対して、地方末端まで行き渡るというようなことの背後にあるものには、意外と意味がないのではということ。そういう問題もうまく反映できればいいと思います。
 それでは、ここで前回ご説明があった独立行政法人の統合の問題について、その後の動きを小松伝統文化課長よりご説明いただきたいと思います。

○小松伝統文化課長 資料の本文2行目に、独立行政法人に関する有識者会議の10月28日の「指摘事項」が書かれていますが、前回の部会でこの有識者会議の指摘事項をご紹介しました。その内容は本年度見直しの時期を迎えている独立行政法人のうち、国立美術館、国立博物館、それから文化財研究所、この3独立行政法人の統合について検討すべしというものでした。
 それを受けて今回のこの総務省の政策評価独立行政法人評価委員会で勧告の方向性がまとめられ、法人の統合については、国立美術館がはずれて、国立博物館と文化財研究所について、文化財に関する展示や保存修復のノウハウの相互活用等、相乗効果を発揮できるのではないかとのことで、そのような勧告の方向性が示されています。
 それからこの勧告の方向性の中では、この統合に関することだけではなくて、職員の非公務員化といったようなことも提言されていて、これについては国立美術館、国立博物館、文化財研究所、それから文化庁の所管で申しますと国立国語研究所についても対象となっています。このあとの道行きですが、私どもとしてはこの勧告の方向性を踏まえて、独立行政法人の見直しをして、それが12月の末に予定されております政府の行政改革推進本部の会議で最終決定されるという、予定になっています。
 それから、先ほどご議論の中で出ていた市場化テスト等については、別に市場化テスト規制改革推進会議が検討していて、そこから公開討論の申込みを受けていて、12月2日に国立美術館と国立博物館について市場化テスト及び民間開放についてどう考えるかという、公開討論を行う予定です。

○青木部会長 今の課長のご説明に対して、ご意見ご質問はありますか。統合の問題、この間も最後に問題になりました。それから平山先生そのほかの皆さんの反対意見を内閣府へ持って行ったこともありました。美術館とか博物館とかをほかのものと一緒に考えていいかどうかというのは文化に関するものですから、必ずしも簡単にはいかないと思います。今独立法人統合化に進んでいて、僕は基本的には統合してもいいと思っていますが、文化に関してはちょっと別だと思います。

○岡田委員 これに抵抗してどうにかなるものですか。

○小松伝統文化課長 このたびの総務省のこの評価委員会から出されたものにつきましては、文部科学大臣宛てに公文書でいただいています。この方向性に沿って検討しているかどうかについても注視し、必要な場合には政府の行政改革推進本部に意見を述べるとありました、私どもとしては、この方向性を踏まえて検討する立場にあると思っています。

○青木部会長 僕は大学も含めて独立法人が、統合をテコにして逆襲というか、もっとやれるとは思いますが、どこの大学へいってもなかなか難しい。だからこの美術館とか博物館もそういう余地があればいいが、今のところは見えてこない。

○辰野文化庁審議官 当初、政府の審議会から話が出たときには、博物館と美術館と文化財研究所、3本を統合せよというものでした。我々が説明を続けるうち文化財の保護という観点で文化財研究所との統合には意味があるが、美術館と博物館とは違うというところまで理解を得ることができたのは成果だと思います。
 もう1つ市場化テストの話についても、あさって2日に公開討論を行います。きょうも文化審議会として何か立場を出す必要はないかと意見がありましたが、今日のものを含めて今までの議論のあり様について、つまり経済性、効率性だけでことが進むということへの危惧がこの審議会できちんと議論されていることを、引用しながら伝えていきたいと思っています。

○青木部会長 この部会でもその成り行きについては注視していく必要があると思います。それでは時間になりました。きょうは貴重なご意見をたくさんいただきましたが、皆さまそれぞれに言い足りない部分や、もっとこういうものが必要だというご意見がありましたら、12月9日(金)までに事務局宛てにお寄せください。そして、それらを盛り込んだ報告案を、できるだけ12月末日まで委員の皆さまにお送りして、それをもとに今年度の最終的な報告案をつくりたいと思います。
 それでは最後に事務局より次回の日程、そのほかについてご説明をお願いいたします。

○関政策課長 次回の日程は、部会長の方からご紹介をいただきましたような日程を経て、来年の1月18日(水)の14:00から16:00でお願いします。場所は如水会館3階松風の間です。内容は現行の基本方針につきましての評価と課題についての報告書の案についてご審議いただきたいと思います。

○青木部会長 ありがとうございました。これにて閉会します。

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