第22回文化審議会文化政策部会議事録

1. 日時

平成18年1月18日(水) 14:00~16:00

2. 場所

如水会館 3F 松風の間

3. 出席者

(委員)

青木委員 伊藤委員 岡田委員 河井委員 佐野委員 嶋田委員 関 委員 田村委員 冨澤委員 永井委員 根木委員 松岡委員 真室委員 山西委員 横川委員 吉本委員 米屋委員 渡邊委員

(文化庁)

河合文化庁長官 加茂川文化庁次長 辰野文化庁審議官 岩橋文化財部長 亀井文化財鑑査官 関 政策課長

(欠席委員)

上原委員 熊倉委員

4.議題

  1. (1)「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の評価と今後の課題について(審議のまとめ)案について
  2. (2)その他

(配布資料)

  1. 文化審議会文化政策部会(第21回)議事録(案)
  2. 文化芸術の振興に関する基本的な方針」の評価と今後の課題について(審議のまとめ)案

5.議事

○青木部会長 ただいまから文化審議会文化政策部会第22回を開催いたします。それでは、まず配付資料の確認をお願いします。事務局から配付資料の確認をお願いします。

○関政策課長 <配付資料の説明>

○青木部会長 資料1の前回第21回の議事録(案)に関しては、委員の皆様にご確認をいただき、ご意見がありましたら、1週間以内、1月25日(木)までに事務局までご連絡をお願いします。
 それでは、本日の議事に入りますが、「文化芸術の振興に関する基本的な方針」の評価と今後の課題につきまして、審議のまとめ案がお手元にあるかと思います。それについてご説明をまずさせていただきます。
 前回、11月30日の政策部会決定を受けまして、昨年12月15日に報告案作成チームの会議が開催されました。この委員は田村委員、根木委員、吉本委員、米屋委員、そして私です。3時間余り議論をしてさまざまなご意見をいただきました。それを、このまとめ案には含めています。同時に、委員の皆様からいただいたご意見も可能な限り含めています。そのことについてまず簡単にご説明させていただきます。
 審議のまとめの作成経過でございますけれども、審議のまとめの位置づけでございます。前回のご説明申し上げたように、今期の文化政策部会はこれまでの部会における議論を踏まえて、基本方針制定後の施策をレビューして、基本方針の評価及び課題を整理して、部会としての審議内容をまとめて文化審議会総会に報告することを目的としています。
 ちなみに、今期の部会の委員会はきょうが最後でして、これまで1年ほど大変真剣にご議論いただいたことを感謝いたします。委員の任期は1年ですが、次の2月3日の総会においてこの審議のまとめ案を総会で報告することが私にとっての最終の任務になります。
 この審議のまとめは、基本方針が平成14年におおむね5年間を見通して作成されていて、今後その見直しが想定されますから、文化政策部会として基本方針の見直しに関し今後の検討課題や、新たな視点として取り上げるべき事項などについて文化審議会総会に問題提起することを意図しています。基本方針の見直しに関しては、基本法の第2条第3項の規定に従って、今後文部科学大臣が文化審議会の意見を聞くことになっていて、基本方針を実際にどのように見直してどうすべきかという具体的な書き方に関しては改めて文化審議会に諮られることになっています。したがって、今期の文化政策部会としましては、基本方針の見直しについて個々の事項に踏み込んだ具体的な書き方について提言するのではありません。基本方針制定後の社会情勢の変化を踏まえて、今後の見直しに当たって留意すべき事項や新たに考慮すべき視点などについて本部会でこれまで議論されてきた内容をできるだけ盛り込み、今後の検討に役立つ提言にしたいと考えています。各委員においては審議のまとめのこうした位置づけをご理解いただきたいと思います。
 次に、昨年12月15日に開催されました作業チームにおける検討結果ですが、11月の部会に提出された審議のまとめ骨子案とそれに対する各委員からご意見を踏まえて、先ほど申し上げたように、3時間以上の検討を行いました。そして、審議のまとめのとりまとめ方について議論し、次の2点に関して合意を得たことを報告します。
 まず第1部としては、本部会として基本方針策定後の文化施策の展開及び社会情勢の変化を踏まえて、本部会としての明確なメッセージを国民にできるだけわかりやすく伝える部分を設けること。これが第1です。それから、第2部は、基本方針の各事項に関する議論の整理に関して、基本方針に沿って順に記述することです。これは余り大枠を変えることはできないということです。
 特に第1部に関しては、基本方針が作成されて文化施策が進展したことを評価した上で、国際化、情報化の一層の進展、我が国の構造改革と地方分権の推進、NPOや文化ボランティアなど新たな文化芸術活動の担い手の成長など、文化芸術をめぐる状況の変化をまず取り上げています。一方で、指定管理者制度や市場化テストなどの経済効率優先の考え方を特別の配慮なく文化芸術分野に持ち込むことがもたらす危機などについても触れています。
 その上で、資料の5ページ以降で文化政策部会として考える文化芸術振興のあり方を国民に対するメッセージとして「我が国における文化芸術の振興の在り方」として記述してあります。
 第1部は、これまで本部会においてさまざまな議論があった内容も盛り込んでありますが、作業チームにおける議論を踏まえて新たに書き込んだものもありますので、本日皆様からご意見をいただきたいと考えています。
 第2部に関しては、作業チームにおいては基本方針自体の構成についても再検討すべきではないかとのご意見もありましたが、基本方針は基本法の構成と趣旨に沿って構成される必要があるとの認識に立ち、今期の文化政策部会は現在の基本方針の評価と課題を整理することを目的としておりますことから、基本方針の具体的な見直しについては、今後の文化審議会における議論に検討を委ねるという結論に至りました。そのため、第2部は現在の基本方針に沿ってその評価と課題について、委員の課題提起も含める形で記述してあります。この点について委員の皆様のご理解をいただきたいと思います。
 以上の経過を踏まえ、本日は新たに書き加えた第1部を中心に、委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。事務局から審議のまとめについて若干の補足説明をお願いします。

○関政策課長 <資料について、補足説明>
 今後の方向性といたしましては、これも部会長らご発言をいただきましたように、2月3日に文化審議会の総会が予定されています。この審議のまとめ案については本日のご議論によって取りまとめをしていただき、2月3日の総会の席に部会長、青木先生からご報告をいただきたいと存じます。

○青木部会長 ここに今ご説明があったように、記述の仕方ですが、第1部の基本方針の在り方等についてというところで、1.社会情勢の変化と文化芸術という後で、(1)、(2)、(3)となっています。これは策定チームの委員からいろいろとご示唆をいただいたものですので、これについてご意見がありましたらお願いします。
 また、第2部の箇条書きの○印を文章の前に出しておりますが、これも策定チームの委員のご意見です。
 それでは、まず、第1部についてお願いします。

○富澤委員 年末から年始にかけて作業チームの皆さん、大お疲れさまでした。基本方針の在り方の最初のところですが、文化が非常に大事であるということを明快に書いてあります。この間、博報堂研究所の調査をパラパラ見ていたら、現代人がどういうことにどのくらい時間を使うかという調査があって、若い人は1日のうちに1時間ぐらい携帯電話を使うとかいろいろなことが出ていました。結論からいうと、男性は大体2時間以上パソコンに使っている。それから、女性は2時間以上テレビを見ているといっていました。やはりそういう社会になると余計に人間との触れ合いというか、会話というか対話というか、そういうものにも時間を割くようになっているというようなことが書いてありまして、我が意を得たりというような気がしました。だからこそこういう現代社会、情報通信が発達した時代には人間の触れ合いあるいは文化というものが重要だということだと思います。
 そういう立場から申しますと、最初の基本方針策定後の諸情勢の変化の1というところで、文化庁予算の話が出てきます。これは文化庁のご努力で平成15年度に1,000億円を突破した、これは着実な成果である、ということです。私もそう思いますが、最後に「我が国及び世界の諸情勢は急速な変化を続けており、文化芸術をめぐる情勢にも大きな影響を与えてきている。」とある。これには私は何を言っているのかわからないというような感じがしています。先ほど部会長から明確なメッセージを国民に発するということで、文化庁がまとめるものとは別に、文化審議会としてどういうことを言えるかということが大切です。
 今回ユネスコの議長に中国がなって、アフリカ諸国にODAや何かを振りまいているといいます。このところ中国も非常に文化外交に力を入れ始めている。そういうことを聞きますと、日本としても文化立国、文化をもって国づくりをするとか、文化の面でも世界へメッセージを発していった方がいいと感じています。
 これから5年間のことをつくるということになりますと、予算も1,000億で満足しているのではなく、もっと大幅に拡充する。あるいは予算だけではなく、先ほど申し上げたように、日本は文化を大切にする国だというイメージを強化していく。そういうこともはっきり、明快に打ち出していった方がいいのではないか。
 それから、もう1点は、小泉内閣もことしの9月で終わりになるわけで、小泉内閣が進めている構造改革も総仕上げということになるとどういうことをするか。1つは省庁の再々編成ということが大きな課題になると思います。この半年間はそれが大きな課題になってくる。
 それから、もう1つは、地方の在り方です。明治以来日本は県を置いてきたわけですが、それを全部見直すと。この間、答申、調査が出ていましたが、日本を州制度にすると。昔道州制というのがありましたが、これが新たに息を吹き返して州制度にもっていく。日本を8つぐらいの大きな区分に分けて、各地区で経済・文化を発展させる、そういう形に多分なるだろうと思います。
 そういう中でこの文化政策をどのように位置づけていくか、そういう視点も今後5年間ということになると見通して取り入れておいた方がいいのではないかとこの間考えました。
 1つは、繰り返しますが、日本の国全体として文化をもって新しい21世紀の国づくりをするということを、もう少し明確にメッセージとして文化審議会は打ち出していく。それからもう1つは、今後地方の制度が変わってくるわけですから、そういう中で文化をどう位置づけていくかという視点です。そういうものをもってしかるべきだろうと思います。

○岡田委員 私はこの5ページの(3)の我が国における文化芸術の振興の在り方からの部分がこの基本方針の在り方等についての第1部の一番重要な点で、先ほど富澤委員がおっしゃった文化立国としてやっていくためにとか、文化の位置ということに対する理念とか、あるいは情緒、情緒的なものも一番書き込まれている部分です。私はこの部分に感動しました。
 ですので、この(3)を基本方針の在り方等についての一番最初にもってきて、そして我々はこういう姿勢で文化を考えているんだ、こういう理念で文化を考えているんだというところを明確に打ち出した方が、読む人にとって理解しやすいのではないかと思います。

○佐野委員 今の6ページの3の(1)、経済と文化は国の発展を促す車の両輪ということで大変わかりやすいんですが、私は文化を生活文化に比重を置いて考えているので、両輪という考え方に少し引っかかります。つまり、自転車型か荷車型に、いずれにしても経済と文化を同じニュアンスでとらえていると。それよりもやはり文化立国ということであれば、文化は基盤であると。政治や経済もその上にあるという、三角形でいうと底辺の方に文化をもってきて、その上にあるんだというイメージでとらえていますが、いかがでしょうか。
 この場合、経済と文化というコントラストだと、何か一方は物質的な経済効率主義みたいな感じ、それに対して文化という心だとか精神とか、そういう対応にとらえられる気もするのですが、その辺のところを少しお聞きしたいということです。

○岡田委員 たった今のご意見に対してですが、私は著作権のところの報告で、文化と経済というものが両輪としてこれからはやっていかなくてはならないのではないか。文化をやっているからお金はもらわなくていい、霞を食べていけばいいという考え方はもう通用しない。サラリーマンの人たちが会社に勤めてお給料をもらうように、文化に従事している人、文化的な行為の所産で食べている人たちもいるわけで、そういう人たちにも十分な経済的な見返りがないと、文化は拡大再生産されていかないのではないかという考えです。
 文化は経済と切り離して考えた方が見かけはきれいですけれども、現実的にはやはり車の両輪でなければいけないのではないか。実際にそういう生活を私どもはしているわけで、どこにもお勤めしないでうちでネタを書いたりしているわけですので。やはりその辺はしっかり認識していただきたいという考えです。

○青木部会長 これまで日本社会は経済、すべて経済中心でやってきたので、そういう意味では両輪というのは、かなり積極的な意味を込めたと理解はしてきたのですが。たしかに、文化は力であるということを書いてありますしね、その辺また皆さんのご意見を聞きたいと思います。

○松岡委員 私も基本的に今の岡田委員のお考えに賛成です。と申しますのは、これ前もってお送りいただいたものを読んだのですが、第1部と第2部の区別がつかない。印象として第1部があって、それから第2部という、何かその区別がつかない。ですから、そのためにも文化審議会の文化に対する考え方を先に打ち出して、そしてなぜここで見直しをすることになったのかという意義を出して、それから具体的にこういう課題があるから見直していくのだ、具体的にはこういうことがあるのだという流れにする。今の岡田委員のご提案を伺って、少なくともそういうメッセージを、実際にこの案をつくった皆さんの合意点がわかりやすい形でメッセージを打ち出すということであるならば、そういう形にした方がいいのではないかというふうに思いました。

○渡邊委員 文化と経済との関係ですが、両輪という表現はこのところずっと使われていると思います。もともと文化は金にならないと、俗に言えばそういうことで、経済活動が活発になると文化が邪魔になるような部分があったところを、かえってこのところは、いや、そうではない、文化はお金になるのであるという、単純な言い方でいえばそういうことで。文化と経済とが2つの車となるということになってきたのだろうと思います。
 一方で、お金になるということになってくると、最近問題になっている博物館、文化会館の市場化という問題とか、指定管理者制度とかそういうものにつながってくる。だから、文化と経済の両輪という表現が悪いというわけではない。そこに住んでいるところの問題はもう1つ認識しておいた方がいいのではないか。そういう意味では佐野委員の言っている文化の基盤というのは、基盤性といいましょうか、生活の基盤であるというところはどこかで評価しておいた方がいいのではないかと思います。

○嶋田委員 実は私はここの部分を高く評価しています。というのは、この中のフレーズにある産業の発展にも寄与するものであるということを、明確に文章化したものは余り見たことがない。もちろん思想的に文化のベースがなければその国は滅びるとは思いますが、実際問題として文化の発展のためにはお金もかかってくるわけで、その辺やはり日本の我々のような産業界全体も文化に目を向けるために、やはりこのフレーズはすごく重要なので、私はこれを残していただきたいと思っています。

○横川委員 最後の2行、1の(1)の社会情勢の変化と文化芸術というところで、「我が国及び世界の諸情勢は急速な変化を続けており、文化芸術をめぐる情勢にも大きな影響を与えてきている。」という具体的なものがわかりづらいというようなことをおっしゃっていましたが、その後の(1)とか(2)といったところで具体的にその内容を書いてあります。だから、第1部で具体性を帯びたことを書くのは、なかなか難しいだろうと考えますので、あえて私はここはこれでよろしいのではないかと思います。
 それから、両輪の件ですが、日本は確かに経済国家であるわけですが、好景気不景気によってメセナなど企業側の文化への力の入れどころはある程度変えざるを得ない。一方で日本は歴史のある国で連綿と続く文化遺産や文化的な財産を持っていて、文化庁は文化力をモットーとしているわけです。文化と経済というのは、今までは経済優先的なところがありましたが、やはりそういう1つの新しい見方で日本社会に文化の力が喧伝されるようになるということが、大切ではないかと思います。
 ですから、文化がお金にならないとか言われますが、そういうお金になるならない以前に、世界各国からやはり日本の文化ってすごいということを、今回のこのまとめで強調していただきたいというのが私の個人的な考え方です。

○伊藤委員 私は文化と経済の問題に関しては余り気になりませんでした。通常、文化と経済の関係には2つの側面があると思っています。先ほど岡田委員が言われたように、文化活動をしていくに当たって、今日の社会においては職業性等々、この委員会の方でも大分論じられましたが、そういった問題の考え方が今日には欠かせないということがありますので、文化を論じるときに経済的な観点というのは必ず必要だということはそのとおりだと思っています。
 しかし、もう1つ、経済に文化がどれだけ影響を与えているかということに関していえば、これは当然最近のコンテンツ産業等は非常に文化との相関関係があるという形で、都市論等でも随分議論されておりますので、さまざまな形の可能性があると思います。しかし、両者の関係というのは非常に複雑多岐にわたっておりますので、車の両輪という表現に関していうと比喩的にはいいのですが、正直いうと非常に誤解を生むような表現かなという気がしないでもないと思っています。
 ただ、第1部で論じるに当たって、特にここでは文化論というよりもむしろ文化政策というものの進め方が大きなテーマになりますので、そういう意味で経済の視点を失ってはならないということは強調しすぎることはないのではないかと思っております。
 それと合わせて、この問題から外れて全体の印象の方の話に触れたいと思います。私自身は文化の意義を幾つかの形で論じることも重要だと思いますが、しかし、5年間の基本方針を考えていった場合に、先ほど富澤委員が述べられたように、今までの情勢の変化を踏まえていくと同時に、これから5年間の間に起こるであろう情勢変化についても焦点を置いていく必要があると思っています。
 そのときに非常に重要な問題として2つ、富澤委員が指摘されています。第1点が、文化外交という言葉が出てきていますが、グローバリゼーションと文化的多様性の問題。ややそれに対する記述がここでは楽観的といいますか、少しきれいごとに書きすぎている印象を持っています。例えば文化的多様性条約の問題に関しても、フランスとアメリカの間にはかなり解釈の違いがあり、衝突を起こしております。これは何かというと、例えばコンテンツ産業等々の文化を商品と見るか、特に普遍的な商品として見るか、あるいは固有の文化として見るかという考え方の違いがそこにはあるわけです。こういった矛盾が今後かなり大きな問題として起こってくるでしょう。また、ユネスコにおいて中国が議長国になればますますそれが進んでいくに違いないと思います。
 そのときに日本の取り組みの仕方として、私は富澤委員のように必ずしも文化予算を増やしていくのが唯一の解決方法だとは思いませんが、何らかの対応について展望を述べていく必要があるのではないかというのが第1点。
 それから、2番目、これも富澤委員が指摘されたとおりですが、地方分権化の流れ、道州制も含めた分権化の動きの中で、これから先の文化振興をどう考えていくのか。このときに多分幾つかの議論がこれから先行われなくてはいけないと思います。今までそこはまだ余り議論されていない感じがしていますので、議論を進めていくに当たっての視点を少し出していくとすれば、政策の在り方に関して、2つの変化が起こってくるのではないかと思っています。
 1つは、いわゆる給付型の文化政策でいいのかという考え方です。給付型ではなく、むしろさまざまなガイドラインや仕組みをきちんと整備していく。それには人材の問題があります、あるいは資格の問題もあるでしょう。それから、重要になってくるのはインスティテューションといいますか、文化を振興していく意味での中間的な組織の確立等の問題。こういったものをきちんと立てていく中で、地域で文化を育てていくための主体をきちんとつくり上げていく。そういった分権化についてのビジョンとして出していくような考え方があるのではないか。
 そうすることによって、育成のための投資はどんどん行っていく必要があると思いますが、さまざまな文化団体に対していわゆるばらまき型の文化支援をすることは、これから先は通用しなくなるのではないか。このような観点等を打ち出していく必要があるのではないか。
 私の言い方にはやや極端な部分もあって反論もあると思いますが、そういったことを議論しないと意味がないという気がして、この問題もぜひ取り上げていただきたいと思っています。

○青木部会長 これはグローバリゼーションと文化の多様性の問題についてもっときちんと書かなきゃいかんと。

○伊藤委員 それと地方分権の問題。

○青木部会長 地方分権のときの文化の在り方について。

○伊藤委員 新しい文化の担い手の主体形成です。

○青木部会長 主体形成、人材育成とか才能養成とかいうこと。それをきちんと書けということです。いずれにしても重要な問題です。

○富澤委員 私が先程省庁の再々編成のことを申し上げたのは、多分それがこれから今年前半位の大きな政治課題になってくると思うからです。こういう国レベルの議論の中で多分私は文化庁も対象の1つになってくるのではないかという気がしています。もう既に文化観光省構想を言う人もいますし。やはりそういう流れの中で日本にとって文化はものすごく大事だ、私もそう思っているし皆さんもそうだと思います。今度はそれを世界的に見ても、さっき中国のことを言いましたが、文化はむしろパワーになって、文化外交というのですか、文化パワーで、戦争はそんな簡単にできない情勢になってくると、どこで競い合うか。1つは経済力でありますが、やはり文化も1つのヘゲモニーの力になってくる。各国それを競い合うというような傾向にもあるわけです。特に先ほど伊藤委員がお触れになったフランスとアメリカとの対立もありますし、明らかに中国などまさに文化をもってパワーにしようとしていると思うので。
 そこを踏まえた上で、やはり日本として今後どうやって世界の中で立っていくかということを考えると、やはり経済も大事ですが、文化も非常に大事であるという認識から、何も文化庁の予算を増やすだけではない。それも1つ大事でしょうし、それ以外のそういう位置づけを明快なメッセージとして、1の1で出すということではなく、報告書全体としてそういうものが出てくれば文化審議会としていいのではないかということを申し上げました。

○青木部会長 この文章のつくり方が全体として国内向けであることは事実です。だから、やはり文化というものは国内の問題、国外、国際的な位置づけをきちんと日本が自覚して行うという強い姿勢を出した方がいいということです。

○松岡委員 実はついこの間、中国の映画『単騎、千里を走る』という高倉健さんが出演している映画のドキュメンタリーを見たのですが、それでつくづく思ったのは、文化というのは接着力を持つということです。ですから、各国が文化力をつけて競争するということも1つの文化のあり方ですが、文化によって戦争をなくすことはできないけれども、なければもっと危険は増すということだけははっきり言えると思います。
 海外交流とか文化の交流の力ですね、それを、私は前提として今この5からの我が国における文化芸術の振興の在り方というのを、ここにはもう文化は国の力であるというフレーズもありますし、それを前面にもっていって欲しいということを前提として言っています。その中にも文化というものが、バラバラになりがちな各国の在り方などをつなぐ力を持っているのだということを強調しておく必要があるのではないかと思います。

○根木委員 ワーキンググループの一員として参加させていただきました、そういう立場から今までのいろいろなご意見に対してお話し申し上げたいと思います。文化が非常に大事ということは理の当然という前提で構成をしました。といいますのが、文化芸術振興基本法、それから現行の基本方針で、再三再四文化芸術が大事だ、必要だということが言われています。それを前提とした上で、今回のまとめはどういう視点から書いたらいいか、そういったことでややトピック的といった、項目として挙げるべき事柄を精選して挙げた。そしてまた、全体を通じてこの文化芸術の必要性、大事さを全体的にこの中で盛り込んだつもりです。
 それから、5ページの(3)です。岡田委員がこれをトップに出したらいいではないかとおっしゃいましたが、それは全体の構成をどうするかということになると思います。この(3)は、先ほどの2ページ以下の(1)、(2)、こういった諸情勢の変化の実態を分析をし、これが文化芸術をめぐる情勢にどう反映したか、それを前提として、じゃあ、今後どうあるべきかという(3)に集約させたということで、論理構造としては一応手順を踏んだ格好で構成されています。ですから、結論を最初にもってきて、その原因なり背景がどうかというそういう書き方もあろうかと思いますが、私はこういう流れの方が理解しやすいと感じています。  それから、先ほど経済と文化が車の両輪であるということで議論になっていました。この点も前に申し上げたと思いますが、基本法そのものは、文化の本質面と効用面と両面にわたってきちんと書いています。したがって、本質面に関しては、もう理の当然としてそれが大事だということがあちこちでいわれている。ところが、一方、経済との関係でどうかというと、これまでは文化の効用的な側面でいわゆる抽象漠としてしか言っていない。その意味で、文化が経済にとって相当程度裨益するところがある。つまり、結論的には文化と経済はシンショウヒシャの関係にあるという言い方をすべきだというのが趣旨です。
 経済という言葉が出てくると経済効率という方向ばかりにいくのではないかという恐れがなきにしもあらず先ほどありました。しかし、ここはそういう意味ではなく経済に対して文化がどう裨益していくか、それがために文化は必要だということを強調したのがこの件です。
 それから、伊藤委員がおっしゃった給付行政の在り方。これに関しておっしゃるとおりかもしれませんが、まだまだ文化に関して給付行政の絶対額は、1,000億円程度ということで、他の国と比べて多いわけではない。したがって、今の時点でこれをベースとしながら、もう少し質的、構造的な考え方を導入することはどうかということに関しては確かに一理ある。ですが、まだ文化に関わる給付行政の絶対量が少ないという前提で、ものを考えなければいけない段階ではないか。つまり、この給付行政そのものの構造にまで踏み込んで考えるのは時期尚早ではないかと思います。

○青木部会長 今の根木委員のご意見によるところの、構成の仕方。それから、もう1つは、経済と文化の、それをどういう関係として重視するかという問題。伊藤委員の言われたのは、地方分権に関することですか。

○伊藤委員 経済と文化の関係が非常に重要だということはそのとおりだと思いますが、同様今出ているように、政治と文化の関係も非常に重要ですし、あるいは教育と文化の関係も非常に重要です。その辺に関していうと、経済との関係だけが非常に重要なわけではないという気もしております。経済と文化が両輪であるならば、場合によっては文化と政治も両輪であるかもしれない。ただ、政治と文化の話というのは戦前からさまざまな問題を起こしてきて、文化政策という言葉が負のイメージをつくってきた1つの問題もありますので、あえて今までは避けてきたということも事実だと思います。
 ただ、政策ということを論じるときにこの問題が無視できなくなってきていることは、そのユネスコの問題1つとってみても今考えるべき時期にきていますので。それをどういうふうに扱うかです。私自身はそれを書けという気は今のところ余りありません。あるいは根木委員がおっしゃったように、キョウカタの行政に関してそろそろ検討の時期に入ってきているなという気はしていますが、今だからといってすぐにそれをやめろということを強く主張する気はありません。政策の議論はそのような問題を扱うべきではないかという意味で提起しただけです。

○青木部会長 ただ、経済と文化の関係はとかくやはり日本ではこれまでのところを見ますと経済がまず中心であって、経済がよければいいという。同時に文化もよくしなくてはいけないのですが、そこはかなりなおざりにされてきたことは実際あります。つまり、経済と文化というのは同時に展開していかなくちゃいけないと思うんですが、そのことをきちんと書く必要があるだろうと私は思います。
 それから、フィレンツェなども現在は文化財が経済を支えていますが、それもメジチ家の文化政策で行ったわけです、大金もうけたものですから経済を文化に投資して、それがいまやフィレンツェだけでなく、イタリアの国を支えているわけですから。そういう文化投資をもっと行わなくてはいけないと私は思います。

○関委員 私もこれ読ませていただき、青木部会長以下皆さん相当ご苦労されてつくられたなと思いましたし、感謝したいと思います。
 私の受けとめは、岡田委員と全く同じ、このペーパーのディシジョンはこの5ページにあるのではないか。実によく整理されていると思っております。
 問題は、この目標というか考え方をベースにして、本当に第2部以下がこれをどう実現するかということで、大変関心がございます。
 そういう理解をすると、実はこの5ページ(1)の経済と文化が車の両輪というのは、余り抽象的なレベルで議論する必要はないわけで、経済は第一級であるわけですが、文化はポテンシャルはともかく世界で一級とはいえない。しかしこれからは、日本は何をおいても文化立国でいかなきゃいけないというメッセージだと思います。1番は基本的な理念というか、大きなメッセージであって、このこと自身が文化政策をディテールに論じていくキーにはなかなかなりにくいなと思います。
 2番は極めてはっきりしていて、文化芸術ならではの国際交流や海外貢献。つまり、日本の文化のポテンシャルをさらに高めていくということと、それをベースにして、国際交流や海外貢献に使っていこう、こういう極めてポジティブなメッセージですから、この(2)はこの2部以下の政策を評価するときの私は十分キーになることであり、そのことが非常に重要なのではないとかと理解をしています。
 3番目は、ものの考え方でありまして、短期的なとらえ方をするのではなく、長期的な取り組みが重要であること。いわゆる基本的な取り組みの考え方、スタンスの議論をしているわけです。
 4番目は、これは我が国の文化芸術の層を厚くしていくためのインフラ部分をきっちりやっていかなければならない。これも後の文化政策を論じる上での重要なキーになると思います。しかし、当面私どもが本当に文化政策を論じるという観点からいうと、(2)なのではないか。後ろの議論が本当にそれに耐え得るような議論になっているのかということをきちっと検証していただくことが重要なのではないのかというのが私の1部に関する感想でございます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 いろいろと前提の問題から今の構成の問題、また細部的なとらえ方の問題までご意見が出てまいりましたけれども。ほかにご意見ございませんでしょうか。

○松岡委員 3ページの文化芸術の振興における民間の活用とは民間の何を活用するのか。この中に「企業のメセナ活動が再び活発となり」とありますよね。この「再び」という言葉が出てきたのは、9ページの(3)の○の3つ目、「メセナ活動は、長引く経済不況の下で一時落ち込んでいたものの」、これを踏まえて再び活気をということで「再び」がここに紛れ込んだのだと思いますが、もしそうなら、ちゃんとここに入れないと「再び」はおかしいし、そうでなければ「再び」は入れる必要はない。
 なぜこれを質問したかというと、実はこれは嶋田委員に伺った方がいいのかもしれませんが、きちっとデータに基づいた表現なのかどうかということなんですね。と申しますのは、メセナ協議会の女性部会に何年かおりまして、企業がどういう芸術活動に、文化活動に幾らぐらい助成しているのかということをずっと見てまいりました。それから、メセナ大賞というものにもしばらく関わっておりました。
 私は、不況にも関わらず企業がメセナ活動をきちっと大事にやっている印象を持っています。実際に落ち込んでいたならこの表現でも構わないけれども、これからもメセナ活動を頑張ってくれというメッセージを込めるのだとすれば、もっとポジティブに考えたい方がいいと思います。
 特にメセナ大賞の企業の活動を見ますと、本当によくこれだけ長いこと継続してきているなという感銘を受けましたので、ちょっと伺いました。

○青木部会長 はい、どうもありがとうございました。
 今のメセナ活動についてはご意見ございませんか。

○嶋田委員 バブル期と比べて1社当たりの金額ベースは確かに落ち込んでいます。やはりその時期を過ごしてかなり内容について工夫をして、おもしろい取り組みをどんどん行っている企業がふえてきたので、多分松岡委員はそういったところに遭遇されているのでそういうご感想をお持ちなのでは。

○松岡委員 はい。

○嶋田委員 不況になったら企業はメセナやめちゃったという表現を割合安易に使われるマスコミがあるのですが、実はそうではなくて、金額的に見ると確かにそれはできることできないことあるので、大型協賛のような、セルフプロモーションと近いものはすごく減りましたが、実は着々と進んでいるという認識はあります。
 この「活発」というのがお金の面でとらえているのか内容の面なのかによりますが、私はそれほどこだわってなかったのですが、活発になりつつあるということを書いてくださることが我々企業人としては応援になるかなととらえています。

○青木部会長 どうぞ。

○河合文化庁長官 その点についてですけれども。最近、メセナのフカヤ会長と対談しました。数字見せてもらったらやはり下がってるんですね。それから、また上がってきつつあります。どうなっているかというと、バブルのころはものすごい大口があったわけですね。それがなくなってきた。ところが、今おっしゃったように、ジャイネズムなどでは極端にどんどん減る一方かというとそれはうそで、今は上がってきています。なぜ上がってきたかというと、小口の数がものすごく増えたんです。
 だから、メセナというのは金が余ったら文化にやるという考え方ではなくて、文化的なことをすることは会社にとって重要だ、だから、文化活動そのものは会社の活動の中に入っているんだという考え方に変わってきています。だから、内容的にも金額的にも落ちて上がっているというのが実情です。なかなかおもしろいので、あちこちで言ってるんですけれども。

○青木部会長 どうぞ。

○関政策課長 データ的な面をちょっと補足させていただきますと、資料「我が国の文化行政」をお配りしています。その29ページ以降がいわゆるメセナ活動についての分析をした部分でございます。
 今、長官からも申し上げましたように、例えばメセナ活動費の総額ということで見ていただきますと、この棒グラフが示しているように推移しています。それを1社当たりの額という形で見ますと、例えば平成15年度は351社で6,389万円。こういったことで今までの経緯の変遷が示されておるところでございます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。今の長官と政策課長のご説明で、この叙述についてはいかがでしょうか。
 どうぞ、米屋委員。

○米屋委員 確かに民間の活用、この段落全体が民間の資金源の活用ということを前提として書かれているかと思います。これまでも行政文書の中ではよく民間の力の活用といいますと資金を出してくれるパートナーとしてという位置づけで企業に提供したり、つなぎ役であるNPOのことに言及したりということがありましたが、民間の力の活用というのはもっと幅広い意味があるかと思いますので、そのサポートの部分だけに限定するのか、それとも担い手としての民間の役割というところに広げて書くのか、もう一度吟味した方がいいかと思います。
 それと、これだけの長い文章を国民の皆様に読んでいただくのは大変なことだと思いますので、ともかく読んでいただいて、ことしの議論につなげていただければと思います。ぜひ文化庁のご担当の方々にこれの周知でありますとか、議論をどう広げていくかということに今後留意していただきたいと思います。

○青木部会長 どうぞ、田村委員。

○田村委員 ずっと私が考えていましたのは、こういう議論、つまり文化を語る話をまとめる方法論というのが非常に足らないなと思います。
 私も検討委員だったものですから、そういう意味では議論をまき起こす文章ということで、先ほど国民に対するメッセージを送るということであれば、そのコンテンツ、それからレトリック、それからテクニック、日本語で言わなきゃいけないとすれば、内容と文章作法、文章法、そういうものが非常に大切だということでいろいろお話をしたんですが。
 文化ということを重点に置けば置くほど、つまり文化立国というような言い方で非常にウェイトを高く考えれば考えるほど、もう1つは文化基本法ができてからこの21世紀に入ってから5年間の日本の動きというのはあらゆる意味で非常に激動していますね。小泉改革が正しいかどうかは申し上げませんが、やはり非常に大きな変革がいろいろなところに起きたと思います。例えばきのうの新聞見ましても大変なニュースが4つぐらいある。そういう中でこの文化のことを語れば語るほど非常に大切なことがあるものですから、このレポートは足らないことが多いなという感じがあります。同時に論理の方が追いつかないというのは、これはやむを得ないなという感じもしています。
 何回もここの議論で出たことなんですが、例えばここでいろいろなことを書いてありますが、やはり選択と集中の時代の中で全体にこの施策を今度は選択、判断していくとことは非常に少ないですね。それから、先ほど伊藤委員もおっしゃいましたけれども、これからのことに関して触れてられない。国際的に力を出していくということで文化が持つスケール感がなかなかない。これも明らかだと思います。
 特に6ページの基本方針の見直しについてというのが非常に弱い。ここが本来はきちんとこの前の社会情勢の変化を受けて、どんなにパラダイムが変わっていったかということをやはり書くべきだろうと私は思いますが、そこまで突っ込んだ議論をされていない。したがって、先ほど関委員がおっしゃったように、第1部と第2部が本当はつながっているかどうか検証のしようがないところがあるわけですね。  そういう意味でいいますと、足らないこと尽くしなレポートだと私は思っています。では、それがいけないかと申しますと、先ほど最初に座長がおっしゃったように、これからの議論を起こしていくということでのメッセージ、それから新しい方針としての留意点を挙げていくという意味でいえば、逆説的なことで事務局の方に失礼なんですが、かえって陥没があった方がいいのではないかというのが、賛成論です。
第1部のところで変えるとしますと、目次のところで、第1というのは非常に中途半端な目次になっているんですが、基本方針策定後の諸情勢の変化というのは1、2にとどめられまして、3と、それから(3)と2がつながるのではないか。これは在り方ではなくて、まさに最初に岡田委員もおっしゃったように、この政策部会からの文化に対する考え方、姿勢をいうわけですね。ですから、これと2を基本方針の見直しと結びつて、つまり、客観的な話と我々の立場といったものをもう少し鮮明にされれば、メッセージが成立するのではないか。
 それから、もちろん先ほどからおっしゃっているような話の幾つかは改めるに恥じることはないわけですから、できる限りボキャブラリーとしてもコンテンツとしても入れられたらどうかという感じがします。
 はっきり申しまして、議論はたくさんありました。私も全部一遍読み直しました。なかなかまとめるのは大変なことだと思います。そういう意味では事務局の方非常によくやられたと感謝しております。したがって、できる範囲でもう一度第1部のところで加えられるものがあれば、その範囲で加えられたらどうかなというふうにご提案したいと思います。
 以上です。

○青木部会長 5ペーのところを最初にもってくるというご意見がありますけれども、こういう構成の仕方はどうですか。

○田村委員 それはどちらでも構わないと思います。うんと胸張って、少し頑張りたいということであれば、姿勢のところで1の(3)と2を一緒に出して前に出される。その情勢ということであっていいのですが、やはりこういうときには前から客観的な話から出て叙述の仕方を演繹的に述べられてもいいのではないかという気がしています。
 何回も事務局に確かめたことなんですが、やはりこれは委員会の意見のまとめということですから、そういうアローアンスのもとに私は解釈していて、そういう意味では非常にいいまとめ方ではあると思いますが、先ほどおっしゃいましたように、感性的には足らないところだらけだという気もしますので、そこのところさえ補えればいいのではないかと思います。

○青木部会長 基本法の見直しについては来期の委員が具体的に詰めていくわけですね。今年の1年間でこういう議論があり、いろいろと欠けているところはあると思いますが、基本的なラインはある程度出ているかなと思いますけれどもね。
 それから、問題とすれば一種のキャッチフレーズみたいなものがね、全体の方向を示すようなものがもう少しはっきりと……。

○田村委員 そうですね。ちょっと弱いかもしれないですね。

○青木部会長 弱いですね。この1年間議論したことの方向性や全体のトーンをスパッと示すような言葉あるいは見出しですね。
 吉本委員も一言いかがでしょうか。大分ここの、吉本委員が例えばグローバリゼーションと文化の多様性の危機とか、いろいろと主張を込めて小見出しの整理をしていただいたんですけれども。

○吉本委員 はい、今、部会長からご指摘あったとおり、まずワーキングチームの一員として力足らずなところがあったと思いますので、それはちょっとおわびをしなきゃいけないと思います。この第1部の小見出しをつけるというのは私が提案させていただいて、実はもっと、結構過激なタイトルをつけていたんです。このままじゃまずいだろうなと思いつつですね。部会長のご判断でちょうどいいところにまとめてくださったなと思っています。
 第1部と第2部の関係ということでいいますと、第2部はあくまでも基本法及び基本方針に則ってその枠組みの中で書いていかなきゃいけないという制約があるんです。ところが、例えばグローバリゼーションの問題や構造改革がこんなに進んで、指定管理者制度や市場化があるわけです。けれども、それを基本方針や基本法に照らし合わせてそのことをメンションできるところはないんです。ですからワーキングチームでは第1部のところで、基本法あるいは前回の基本方針の枠に入りきらないところを大きな社会の情勢の変化と文化芸術、文化政策のことについてまとめるようということでこんな構成になっているんですね。 見出しはこういう形になっていますけれども、文章を読むと、ここまで言い切っていいのかということも書かれています。例えば指定管理者制度の問題点とタイトルで出しているのは勇敢な部会長のご判断だったなと私も思っています。危機とか危険とかそこまでは書きましたがやはりそれはまずかろうということでこういう形になっているんです。
 ですから、今までのご意見、第1部に関していろいろご意見いただいているので、もちろん盛り込めるところは盛り込んで、第1部もう一度リファインするような作業は必要かなと思います。特に第1部と第2部の関係についてはそういうことになっているということでご意見ちょうだいできたらなと思っております。

○青木部会長 それでは、次に、第2部に移りたいと思います。第2部についてのご意見ですけれども。

○永井委員 質問ですが、7ページの一番下です。「文化芸術は、人々の相互理解等による」というところの2行目、「社会基盤の形成や世界平和に貢献するとともに、その国への帰属意識を確立し、世界に対して国の『顔』となるものである。」と書いてありますね。この「その国への帰属意識を確立し」というのはどういう意味ですか。

○青木部会長 帰属意識というのは、単にアイデンティティとここに書いてある、の意味だと思いますが。

○永井委員 私たちが帰属という言葉を使うときには、何かそこに従う、従属するという感じがします。

○青木部会長 僕もアイデンティティでいいと思いますが、ただ全部漢字化しなきゃいけないという、中国みたいな政策を今日本でもやっているわけですから。

○永井委員 アイデンティティだけの方が逆にわかりやすい。確かに日本語を使った方がいいと思いますが、帰属とアイデンティティが同一の感じなのか、ちょっと相反するような感じがします。

○青木部会長 アイデンティティという言葉を、人によって違った形で、一般に何となく使ってしまう場合とかあるので。この場合は帰属意識としましたが、確かにこれは出さない方がいいとは思います。

○永井委員 ちょっと堅苦しい。国への帰属といったときに何かちょっと芸術の自由な感じが少し損なわれる感じがします。

○青木部会長 まさに国際化の時代に、ですね。限定されますからね。

○岡田委員 今ご指摘の点ですけれども、この前の案ではアイデンティティという言葉が出てくるたびに日本語に変えたらこうだろうというので全く別の意味合いでアイデンティティという言葉が使われてしまった。そういう意味ではアイデンティティという言葉がいかに便利な言葉であるかということ、裏返せば意味がはっきりしないということの証明です。この文章も、帰属意識ではなくて、帰属意識をアイデンティティとして読んでしまうと、その国へのアイデンティティを確立しというのは文章として成り立たないんですね。

○青木部会長 そうですね、アイデンティティという言葉はちょっと違いますね。

○岡田委員 たしか前はこの文章ではなかったですよね。こういう意味のあいまいな、日本語訳をするのが難しい言葉も使うときにコンセンサスを得る必要があると思います。

○永井委員 日本人であることを強く自覚しながら芸術活動に邁進する方もいいかと思いますが、余り余計なことを考えないでやってもいいと思います。この国には外国籍のアーティストもたくさんいて、日本文化に貢献している方もいるので、ちょっと紛らわしい言葉はとっておいた方がいいかなと思います。

○青木部会長 今は日本文学といってもいろいろで、アメリカ人も日本語で日本文学書いていますし。
 もしアイデンティティ全部をとってしまったらまずいですか、やはり。それととともに、世界に対して国の「顔」となるべき言い方の方がいいかもしれませんね。しかし、文言については今のご意見を踏まえまして、またいずれ最終的な点は来期でやると思います。
 ほかに、第2部についていかがでしょうか。先ほどの第1部と第2部の連携ということも踏まえまして、ご意見ございませんでしょうか。

○関委員 1つだけ、大いに不満のあることを申し上げます。25ページ以下の美術館、博物館、図書館等の充実というところです。美術館、博物館、図書館というのはそれぞれ役割が少し違って、一律に論じることはできないなと思っています。
 ティピカルな例は、私は日本の美術館行政というものについては随分疑問があって、各地域あるいは市町村で美術館を持つというようなことを、推奨してできたのか、あるいは地方自治体を含めたいわゆるアトミックコンペティションのようなことでそういうことになったのか。たくさんの美術館が全国にできて、内容は極めて薄いというか、箱はたくさんできたけれども、中身は余りない。そして、それが実は運営に困っている。
 そういう状況が実はすぐれた美術に触れる機会、あるいは美術館の持つ機能を享受する上で大変な支障になっているのではないかと思います。
 今ある箱ものを前提にしてこの美術館員をふやしていくことが重要だ、と読めますが、そうではなくて、やはり集約をする、すぐれた美術館をつくっていくということで文化政策を論じるというのが本論なのではないかなと私は思っています。
 文化芸術というのは経済市場原理になじまないものだというのは正しいと思います。やはり、大きな政策が必要なわけで、反省を入れてきちっと、ぜひすぐれた美術館をどうつくるかという議論に文化政策を論じるときにキーにしていただきたいなと思います。
 ここで皆さんのコンセンサスが得られないのであれば、ぜひ委員からの課題提起というところに書いていただきたいと思います。
 以上です。

○青木部会長 確かに日本にこういう美術館とか博物館があって、それを見ないと世界の常識にならないというようなものは余りないですね。

○伊藤委員 大きな論点になるのは、すばらしい美術館の在り方が今日、例えばメトロポリタン的なものだけでいいのかという問題がまたあると思います。地域には地域における美術館の在り方がもっと議論されていいのではないだろうか。つまり、コレクションだけを増大化していく美術館を唯一のモデルとしていけば、多分日本にはこんなに美術館は必要ないだろうとは思います。むしろ国立美術館等の役割だろうと思っています。
 しかし、地方自治体等々においてつくられていく美術館だとか文化会館等々については複数のモデルがあり得るのではないかと思います。例えばヨーロッパの劇場をモデルとするような創造団体を抱えた劇場というモデルもあるでしょうし、あるいはドイツ等々で今つくられてきている社会文化センターのような、コミュニティの教育普及を中心としたものも結構新しいモデルとして確立されてきています。
 そういう意味で、問題提起しないといけないのは、例えば美術館とか博物館を従来のぼんやりした概念で充実しようという提案では意味がないだろう。もっとこれから先の社会にとって求められている文化施設とは一体何かということを明確化して、その上で必要なものはきちんと充実化していく、不必要であればそれはやめていく、ということも含めて考えなくてはならないと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございました。今ご意見がいろいろとあるかと思いますが、第2部に関しましてはほかにご意見ございますか。

○永井委員 15ページの枠の中の下から4つ目の点、「文化芸術の振興には、文化芸術活動を行う者の自主性や創造性が十分尊重され、表現の自由が保障されることが大切である。」これだけ読めば当たり前のことで、日本国憲法にも保障されていることをなぜまたここで言っているのか、としかとられないと思います。
 私は最近ちょっと思想良心の自由だかと、言論の表現の自由に関して、例えば政府や公権力と反対意見を持つ人の意見の表明の場が少なくなっている。ビラをまくとことは市民のたった1つの言論表現活動ではないか。例えば自衛隊のイラク派遣反対というビラをまいたら75日間拘留されてしまう。公立学校で、特に東京都の学校で卒業式に君が代を歌わない、伴奏しない先生が処分されてしまう状況は、行き過ぎではないかと思います。
 これを政治的なことではなくて文化の面からどういうことなのかということを一度検証していただけるとうれしいなと思います。私は文化上の問題ではないかと思っているわけです。いろいろな言説があるということで文化の基盤は鍛えられていく。それから、これからの芸術家はいろいろな意見に触れることで自身の感受性を高めていくのだとすると、こうした状況ではすぐれた芸術が生まれる基盤自体も弱くなってくるのではないかと思います。
 芸術というのは基本的に反逆者だと思うんです。それは、単に反政府とかということではなくて、これまでの方法に対して違う在り方を考えたり、これまでの方法に満足できないやり方を考えたりという既存の価値観をひっくり返したり、それに対抗しようという意欲のもとに芸術というのは育つ部分も非常に大きいと思います。このような事態は芸術文化が育っていく、振興していくについて余りいい状況ではないと思っています。

○青木部会長 今のご意見に対して何かございますか。
 委員のご意見はホームページには全部載っているんですか。今、ホームページでだれが何言っているかというのはすぐ出てきますからね。そういうことも勘案されているとは思います。
 どうぞ、根木さん。

○根木委員 またワーキンググループの立場から言わせていただきますけれども。今、先生のおっしゃったことはよくわかりますが、ただ、具体的に書くということになりますと、結局は抽象的な表現にならざるを得ないと思います。個別具体的な問題をここで一々取り上げるということになりますと、文化芸術の振興という枠があるわけで、したがって、学校教育の現場の問題やビラ配りとかそういったものをこの中に入れ込むとものすごく違和感が生じるわけです。やはりこういう表現にならざるを得ないのではないかということ。
 それから、先ほどおっしゃったように、これ自体はもう既に基本法や現行基本方針でも何回も繰り返し言っているわけです。本来ならばここまで書く必要もないのではとも思います。これはやはりある程度確認しておく必要がある。特に芸術の振興というこの分野に関しては、従来から各委員が強調されていますし、そういった意味でこの文章自体はこれでよいと思いますが、その一定の文化審議会という枠から出るような事柄に関して、そこまで書くというのはいかがなものであろうかという感じがします。

○永井委員 ビラ配りや国歌斉唱が大切であるということではなくて、表現あるいは教育の現場で保障されているかを確認する作業が必要であるという一文を足してもらえないかということをメールで書きました。そうすれば意味がわかると思います。これだと憲法に書いてあることをもう一回ここに書いたにすぎないと、かえってわかりにくくなってないかということです。

○青木部会長 どうぞ。

○伊藤委員 永井委員のおっしゃったことは非常に重要な問題であって、むしろ第1部の基本的な考え方の中にはっきり書くべきことではないかと思っています。あえて文化権の問題はこの場で余り議論してこなかったわけですが、表現の自由を含む創造者の行為の自由ということに対しては絶対的な条件だと思います。そのことについては、個々の政策の中に逐一書いていくということはないと思います。基本法をつくるに当たって前提となる考え方の中には絶対欠かせない話です。社会権としての文化権に関しては議論が分かれて、なかなかこれは一致ができないかもしれませんが、少なくとも自由権的な文化権ということに関しては憲法に保障された問題であり、文化政策を考えるに当たってのまず最初の前提事項であって、ぜひ、私は永井委員のおっしゃったことは、どういう書き方にするかはお任せしたいと思いますが、第1部に入れていただきたいと思っている次第です。

○青木部会長 表現の自由を尊重するということですね。
 具体的な事例についてはいろいろな見方があるとは思います。ただ、文化芸術というものを考えると、これは意外と難しいですね。必ずしも自由なところにいい芸術ができるとは限りません。

 芸術ということはいろいろと難しいことがあって、芸術論のいろいろなことが出てくると思いますけれども。
 ほかにご意見がございますでしょうか。

○山西委員 まず、第1部の中で、先ほどの文化芸術振興の在り方の中で、いわゆる次世代を担う子どもたちをどうしていくのかというところを4番目の柱に挙げていただいて、それをさらに文化政策部会としては強調したいという応援をいただいて、どちらかというと今まで教育の分野というのはインフラな分野が多かったせいか、いわゆる理念や理想として教育が大切であるという程度にとどまっていたのではないかなと考えますが、今回は力強いメッセージをいただいて感謝をしています。子どもたちが豊かな生き方をもっていったり、次世代をどう培っていくかという縦のつながりの文化を考えるときには極めて重要な内容であるなということで、本当にお礼を申し上げたいなと思います。
 24ページに学校教育における文化芸術活動の充実ということが書かれております。これについても学校教育の中における文化芸術の重要性、あるいは文化を継承する教育の必要性、そして本来学校教育の役割は何かといったような、教育を学校を中核としながらもさまざまな視点から、限界も含めて、重層的、広範的に考えていこうという形でまとめられていられるのは、論議を広範にかもしだすような形になっているのではないかということで感謝します。
 学校と地域、学校と芸術家、学校と文化伝統の地域の担い手、そういうものが相互理解、あるいは相互連携をするという文言は出てきていますが、どうも文末になってくると、学校自体もっとしっかりしなさいよというような言い切りになっている。その第1部で文化政策部会とするとここを強調するのだという割に、どの時間でどういう場でどんな条件をそろえてという部分が弱いのかなと感想として持ちました。
 ほかに、例えばそこにはコーディネーター役であるとか、あるいはプランナー役が必要だという文言が明確に入っておりますので、そういう形で学校と他の機関とにそういうコーディネーター役、プランナー役が必要だという文言等入れていただけるとありがたいなと思いました。
 細かな文言の修正については後で事務局の方にご指摘申し上げたいと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、大体ご意見もいただいたかと思うんですが、最後に、今期のこの約1年間の文化施策部会全体を通しまして、皆様のご意見なりございましたらぜひ言っていただきたいと思います。

○真室委員 今回のこの中間報告、私は全体的にはこういう形でいいかなという考えを持っておりますが。特にこの文化芸術の振興の方向性は、4つほどあります。例えば学校、子どもへの文化芸術の教育、それから地域の振興。先ほど地方の、特に公立美術館等の問題がありましたが、やはり地域住民が自分たちの美術館、博物館を必要としているのかどうかということがもう少し考えられなくてはいけないのではないか。指定管理者制度の問題も、地域が求めるのであれば、形はどうあれ、存続し発展させていくということが出てきていいのかなと思います。
 それから、3つ目としては、伝統に対するもう少し認識を強めるといいますか、これも学校教育とも関連しますが、伝統への教育。伝統芸能だけじゃなくて、これは国語の問題も大きいかと思いますし、美術の分野でも当然伝統は欠かせない大切なことだと思っております。
 それから、4つ目として、日本の国の自然ですね、美しい自然をどう保持していくかという問題。最近のベストセラーによりますと、美しい自然のないところには学問あるいは芸術も余りいいものが出てこないのではないかという意見もありますし。特にこの自然に対して、これは国としてもっと省庁を通して、連携の上で考えていかなくてはいけないことかと思います。日本文化の将来にとってどう取り組んでいくかということを次期には必要ではないかなという感じがしています。そのための基盤整備というか条件整備等を進めていく。
 先ほどの経済と文化の両輪論というのがありましたが、これは立場によってとり方が違ってくる難しい問題ですが、両方とも大切で、例えば見出しをもう少し別の表現に変えるとか。

○青木部会長 どうもありがとうございました。

○関委員 岡田委員がおっしゃったように、私は今回のこのレポートの柱は立ったと思うんです、そういう意味では。問題は、今後理念なり目標なり目的に照らして、日本を文化大国にしていくんだということで何をやるべきかということをきっちり特定するべきです。
 その上で、具体的な、だれが責任持っていつまでにやるんですかという仕事を、やっていただくと大変いいのではないのかなという感想を持ちました。ということです。

○青木部会長 はい、どうも。

○吉本委員 来年度予定されている基本方針の見直しについてはやはりある程度の制約があるという気がしています。ところが、今回のこの審議のまとめでも、第1部に出ているように、その枠の中におさまらないことの方に実は重要なことがありそうなので、それを来年度どう基本方針の中に入れるのか、あるいは今回のように分けて書くのかという、そこに技術的なことも含めてまとめ方にすごく工夫の必要があるのではないかと思います。
 もう1つは、最近政策をまとめるときも具体的なアクションプランまで踏み込んでまとめていくという大きな傾向があると思います。ところが、基本的な方針の中にその具体的な政策、アクションプランのようなものを含めてまとめ込んでいくのは、やはり制約があるのではないかと思います。そうすると、頭の部分でもっと大きなことを書いて、基本的な方針をまとめて、その後ろに基本的な方針の中でより重視するものの具体的なアクションプランまで盛り込むというような構造をつくらないと、この基本方針の中だけですべてのものを盛り込んでいくのは非常に難しいのではないかという気がしています。
 来年度はぜひまとめ方のテクニックも含めて議論しながら進められるといいと思いました。

○青木部会長 それは今の市場化ですとか、経済効率の問題と絡んで、やはり戦略的なものをきちっと築くことがあらゆる面で必要なことだと思いますね。

○渡邊委員 先ほどから博物館の問題が出て、いろいろ問題があるかと思っております。要するに、メトロポリタンはすばらしい美術館であるし、感動的なものがたくさんあります。しかし、あれを目指すかといったら絶対目指さないわけです。そういう環境にありません。あれはかつてメトロポリタン美術館自身が自己批判しているように、植民地政策の1つの成果であるということですよ。ああいう形の美術館、博物館はもともと成り立たない。
 その1つの似たような事例が東京国立博物館ですが、帝室博物館時代に全部みんなものを集めてしまって、勧告という形でありますが、地方の博物館はとられてしまうような事実があります。
 しかし、今政策転換があって地方に美術館をということがこれから一番問われる問題ですね。東京国立博物館自身でも昔はものを容易に貸すということがありませんでしたが、最近ではかなり積極的に地方の美術館に貸し出して展示を助けるということをやっているわけです。
 美術館、博物館というのは地域住民というだけでなくて、そこへ来る大勢の人のためにあるわけで、日本はそういうのを文化的観光拠点の1つとして位置づけられている。そのための努力がなされているというのも事実になっているわけですね。
 あと1つは、今政策上の問題、アクションプランをつくれないではないか、これは当然だと思いますが。かつて文化財分科会でやったことですが、企画部会を中につくって、集中的に将来のあるべき政策を論じました。そういう形をここでとったらよろしいかと思っています。

○青木部会長 はい、どうもありがとうございました。
 大体時間となりましたので、本日の討議はこれで終了とさせていただきたいと存じますが。本日いただきました皆様方の貴重なご意見に関しましては、一応まとめは私にご一任いただけますでしょうか。ご不満は残ると思いますけれども、鋭意いろいろなご意見を反映させて文化審議会総会に持っていきたいと思っていますが。
 よろしいでしょうか。
 はい、どうもありがとうございました。
 それでは、審議のまとめ案に関しましては、本日のご意見を踏まえてとりまとめた上で、2月3日開催予定の文化審議会総会、第40回ですが、において私からご報告させていただき、そしてその後、公表することになります。
 今日は今期の最後ということもございまして、文化庁長官がいらしていますので、一言お願い申し上げます。

○河合文化庁長官 それでは、一言ごあいさつ申し上げます。
 青木会長はじめ、委員の皆様には、昨年の4月以来8回にわたりまして精力的に審議をいただき、ただいま文化政策部会報告の「『文化芸術の振興に関する基本的な方針』の評価と課題について(審議のまとめ)」、これをとりまとめていただきましてまことにありがとうございました。
 審議のまとめでも述べられておりますけれども、我が国及び世界の諸情勢は急速に変化を続けておりまして、文化芸術をめぐる情勢にも大きな影響を与えております。このような背景を踏まえ、今後の文化芸術の振興の基本的方向や国の役割などについて検討を進めていくことが求められていると思います。
 文化庁といたしても、この審議のまとめが文化芸術の振興に関する国民の関心を喚起することを期待するとともに、今後の基本方針の見直しや文化芸術に関する施策の振興の在り方を検討する際の基本的な資料として活用してまいりたいと考えております。
 これまでの委員の皆様のご尽力に対しまして、重ねて御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 今後はこれをまとめまして総会に持ってまいりますが、今の長官のお言葉にもありましたように、文化政策部会というのは非常に重要です。もっと重要性を付与していただいてもいいんじゃないかと思います。最近はミッテラン大統領の再評価が高まっていると盛んに新聞なんか書いてありましたけれども、ともかくユーテックとかルーブルの新しいところ、ピラミッドなどいろいろな文化財をこれほどたくさんつくった大統領はこの20世紀なかったですよね。あとはヒトラーぐらいです。私は、先ほど伊藤委員がおっしゃったように、21世紀というのは新しい文化施設の創造性というものを考えた上で、ある程度ミッテラン的なことをやったらいいのではないかなと思います。文化の力というのは、観光も非常に重要な役割を占めていて、観光によってやはり収入を、経済力も高まってくるわけですから。そういう相関関係もあると思います。
 本当に1年間どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。

以上

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