文化審議会第4期文化政策部会(第1回)議事録

1. 日時

平成18年3月16日(木)  10:00~13:00

2. 場所

東京會舘本館 11階 ゴールドルーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 岡田委員 河井委員 川村委員 熊倉委員 嶋田委員 白石委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 富澤委員 
中島委員 根木委員 真室委員 山西委員 横川委員 吉本委員 米屋委員

(事務局)

河合文化庁長官 加茂川文化庁次長 辰野文化庁審議官 寺脇文化部長 岩橋文化財部長 亀井文化財鑑査官

(欠席委員)

伊藤委員 上原委員 尾高委員 松岡委員

4.議題

  1. (1)部会長の選任
  2. (2)運営規則等の決定
  3. (3)文化政策部会における主な審議課題等について
  4. (4)意見交換
  5. (5)その他

○辰野審議官 ただいまから文化審議会文化政策部会を開催いたします。本日は、委員改選後初めての会合ですので、部会長が選任されるまで、私が議事を進めさせていただきます。
 初めに、文化政策部会の委員の先生方をご紹介いたします<資料4の名簿に沿って紹介>。
 また、伊藤委員、上原委員、尾高委員、松岡委員は、本日はご欠席です。
 続きまして、本日の会議に出席の文化庁関係者を紹介いたします。
 <河合文化庁長官、加茂川文化庁次長、寺脇文化部長、岩橋文化財部長、亀井文化財鑑査官>

○辰野審議官 会議に先立ちまして、お手元の配付資料の確認をさせていただきたいと思います<配布資料の確認>。
 それではまず、文化政策部会の部会長を選任いただきたいと思います。選任方法については、資料5にあります、文化審議会令第6条第3項の規定に基づき、部会に属する委員の皆様の互選により選任するということになっております。
 事務局案といたしましては、前期に引き続き青木委員に部会長をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○辰野審議官 ご異議がないようでございますので、青木委員が部会長に選任されました。
 それでは、今後の議事進行は青木部会長にお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。

○青木部会長 ただいま、ご指名にあずかりました青木でございます。前回、1年務めさせていただきまして、いろいろと皆様のご指導を仰ぎまして、なんとか無事に「審議のまとめ」を取りまとめることができましたが、今期はいろいろと議案がございまして、それを皆様と一緒に何とかきちんとしたものをまとめたいと思います。どうか、ご指導をよろしくお願いいたします。
 それでは、まず、文化審議会令第6条第5項の規定に基づきまして、部会長の代理を指名させていただきたいと思います。
 私としましては、昨年と同じように引き続き富澤委員にお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○青木部会長 ありがとうございました。富澤委員、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、これから始めさせていただきたいと思います。この文化政策部会は、先ほど説明がありましたように、文化芸術の振興に関する基本法の見直しをどのように進めていくかというのが今回の役割です。私は去年1年間参加させていただきまして、日本において、文化政策全般の重要性を社会あるいは政府にもっとアピールしていきたい、また我々にはそういう役割があるのではないかということを感じております。
 文化政策という言葉もまだきちんと根づいておりませんし、また去年の3月まで在籍していました政策研究大学院大学の文化政策コースという大学院のコースが、私が赴任したときにできましたが、そこに人事院の国家公務員が派遣されて、大学院の学生として来るのですが、人事院の派遣のカテゴリーに、公共政策とか地域政策はあっても、文化政策はないのです。それで、文化政策をやりたい地方公務員や自治体の公務員などいろいろな方がいらっしゃっても、実際はそれを受け入れないということがまだあります。
 ですから、そんなことも含めまして、皆様とご一緒に文化政策の重要性というものを指摘して、また訴えたいというふうに思っております。
 それでは、議題を始めさせていただきます。
 まず、本部会の概要を事務局より簡潔にご説明いただいた後で、部会の運営に必要な事項といたしまして、運営規則及び議事の公開について決定したいと思いますので、事務局よりご説明をお願いいたします。

○事務局 <資料1,2,3,6,7,8の説明>

○青木部会長 それでは、資料7,8の(案)に関しまして、部会の決定といたしたいと存じますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

○青木部会長 ご異議がないようですので、決定とさせていただきます。
 それでは、議事の公開の対応方針に基づきまして、これ以降、本日の議事を公開といたしたいと思いますので、傍聴者の方はどうぞご入室をお願いします。

(傍聴者入室)

○青木部会長 続きまして、本日は河合長官が出席されておりますので、ご挨拶をいただきたいと思います。

○河合長官 本日は、ご多忙の中ご出席くださいまして、まことにありがとうございます。文化審議会の文化政策部会の開会に当たりまして、一言ごあいさつ申し上げます。
 まず、初めに、皆様方に対しましては、本部会の委員をお引き受けいただきましたことに厚く御礼申し上げます。今後のご審議をどうぞよろしくお願いいたします。
 今期の文化政策部会においては、先の文化審議会総会において文部科学大臣から諮問がありました、「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて」ご審議いただくことになっております。文化芸術振興基本法に基づき、平成14年12月に閣議決定されました「文化芸術の振興に関する基本的な方針」は、我が国の文化芸術振興施策の根幹をなすものであります。文化庁では、この基本方針を踏まえてさまざまな施策を総合的に推進してまいりましたが、社会、経済及び文化芸術の現状や諸情勢の変化などを踏まえこれを見直し、我が国の文化芸術を一層振興してまいりたいと考えております。
 このため、本部会におきましては、文化芸術振興基本法に沿いつつ、先の文化政策部会で取りまとめていただきました審議のまとめや、広く国民からのさまざまな意見などを踏まえまして、基本方針全体をいかに見直していくべきかについて、各委員の専門的な立場からのご審議をお願いしたいと存じております。
 私としましては、本部会における論議を十分に踏まえまして、基本方針の見直しに向け、引き続き尽力してまいりたいと考えておりますので、委員の皆様におかれましては忌憚のない、活発なご議論をいただきますようよろしくお願い申し上げます。

○青木部会長 それでは、文化政策部会の今後の進め方とその議論の主な審議課題に関してお諮りいたしたいと思います。
 本日の進行についてですが、前半は今期の文化政策部会の進め方と中間まとめに向けての主な審議課題について、委員の皆様にご検討いただき、それぞれについての了承をいただいた後で、後半は、基本方針の見直し全体について幅広くご意見を賜りたいと考えております。
 それでは、まず、部会の進め方と主な審議課題について、ご意見を伺いたいと思いますので、最初にそれらに関して私より私案を説明させていただき、その後この案に対して、委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。
 今後の文化政策部会の進め方については、まず資料9及び10をご覧ください。
 今後のスケジュール及び主な審議課題が載っておりますが、大臣の諮問理由説明にもありましたとおり、基本方針の見直しについては、年内を目途に取りまとめるように依頼されております。よって、本部会といたしましては、年内の取りまとめを目指して精力的に審議をしていく必要があります。また、基本法及び国会附帯決議にもあるとおり、基本方針の策定に当たっては、広く国民の意見を求めることが必要でございます。前回、平成14年の基本方針策定時と同様に、一般の方や関係者の方から聞くパブリック・コメントの実施等を行う必要があると思います。
 そのため、文化政策部会としましては、審議の中間まとめを、7月末を目途に公表し、国民の皆さまや関係者からご意見をいただきたいと考えております。
 そこで、委員の皆様には、今後は月2回のペースでご審議をいただき、7月末までに基本方針の見直しに関する中間まとめを取りまとめたいと思います。
 既に、事務局より委員の皆様のご都合を伺っておりますけれども、4月から6月までの日程は、今申し上げた資料9のとおりとさせていただきたいと思いますが、皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思います。5月、6月はまだ予定ですが、概ねこのような予定になります。7月下旬には中間まとめを公表しなくてはいけないということです。また、8月にパブリック・コメントの実施し、9月から12月にかけて、報告書案の審議を行い、最終的に12月に報告書を取りまとめ、来年1月の文化審議会総会において、これを文部科学大臣へ答申するという日程になる予定です。
 その後の政府の動きですが、来年2月に第2次基本方針の閣議決定があって、4月から第2次基本方針が実施されるという予定になっております。よろしくお願いいたします。
 次に、審議方法についてお諮りいたしたいと思います。前回、平成14年の基本方針の策定時におきましては、28の文化芸術団体と4人の学識経験者から、5回にわたりヒアリングを実施したということでございます。前回の策定時は、初めて基本方針をいわばゼロから策定する状況であったために、こうした手法がとられました。
 しかし、今回は、既に策定されている基本方針の見直しが主な仕事でして、また、第3期の文化政策部会において基本方針の評価と今後の課題、審議のまとめを行っておりますから、今回は、前回のような包括的な文化芸術団体からのヒアリングは実施せずに、中間まとめに向けて基本方針の見直しに当たって、特に重点的に議論すべき事項や、メリハリをつけるべき事項に関して、必要に応じて関係団体等の協力を得ながら、議論を深めていってはどうかと考えております。
 しかし、文化芸術団体や芸術家などからのご意見やご要望に関しましては、例えば中間まとめの前までに、それらの方々に書面等で本部会にご意見あるいはご要望を提出いただきまして、部会における議論に反映していったらどうかと考えております。
 ですから、議論の審議内容に応じて、必要な方をここで決定してお呼びする、あるいはヒアリングをする。しかし、前回実施したような総花的なヒアリングという形では行わず、むしろ各団体からいろいろなご意見を書面でいただきまして、それをここでまた我々が用いさせていただくということになるわけですが、こうした審議方法について、いかがでしょうか。
 これがまず審議方法についてですが、本日、お聞きしたいもう1点は、審議課題についてでございます。それも続けてご説明いたします。
 資料10について、本部会では、現行の基本方針の見直しを審議いたいますが、第3期の文化政策部会でまとめました「基本方針の評価と今後の課題(審議のまとめ)」を土台にして考えてまいりたいと思います。資料13に審議のまとめがございます。この6ページに「基本方針の見直しについて」ということが書いてございまして、これに基づいて、この指摘を土台にして考えていきたいと思います。
 まず、基本方針の見直しに当たりましては、基本法に関する国会審議及び附帯決議に留意しつつ、基本法の趣旨に沿ってその見直しを考えることが必要であります。さらに、第3期の文化政策部会における審議過程で明らかになったように、文化芸術をめぐる情勢の変化を踏まえまして、特に基本法施行後に課題となった事項等に関しましては、新たに基本方針に盛り込んでいくこと重要だと考えます。
 第4期の文化政策部会としましては、先ほどご説明いたしましたスケジュール案にのっとりまして、7月末の中間まとめでは、基本方針の見直しに当たっての重点的に議論すべき事項や基本方針の内容としてメリハリをつけるべき事項に関して、議論を深めていってはどうかと考えます。
 そこで、第3期文化政策部会における議論及び審議のまとめを参考といたしまして、中間まとめまでに本部会において審議すべきと思われるテーマを資料10として、先ほど申し上げましたように整理しております。
 テーマとしては、大きく分けまして5点ございます。1つは、文化芸術の振興における国の役割、第2番目は地域文化の振興方策、第3番目は民間の文化芸術支援活動の充実方策、第4番目は子供たちの文化芸術活動の充実方策、第5番目といたしまして文化芸術による国際交流の推進方策として、そこに整理しています。
 また、各テーマについて、具体的な課題を設定して例示しております。本日は、今後の審議内容としてこうしたテーマの設定が適切であるかどうか、他のテーマは考えられないかなどについてご意見をいただき、審議の方向性を確定したいと考えております。
 なお、各テーマにおける具体的な課題は、あくまでもここに示しておりますのは例示ですので、より適切な課題の設定案があれば、この場でご意見をいただきたいと思います。さらに、各テーマを審議する際には、外部から有識者や文化芸術団体などをお呼びしてヒアリングを行い、委員と意見交換することも可能ではないかと考えております。前に申しましたように、前回14年度のときとは違いまして、ここでは審議内容に即して皆様からこういう人がいいとか、そういうご意見が出ましたら、あるいはそれを検討して、もし可能であればお呼びしたいと思います。
 これは、従来の団体ヒアリングのように広範な分野の団体に一律にヒアリングをするものではありません。本部会が設定したテーマに関して、適切な外部の方や団体からヒアリングするものであって、部会における審議を深めるために有効ではないかと考える次第です。このようなテーマ設定と関連性を持ったヒアリングの方法についても、ご意見をいただければと思います。
 それでは、長くなりましたが、今後の進め方について3点申し上げました。それで、まずここでお諮りしたいのは、スケジュール案及び審議課題(案)に関して、どなたからでもご意見をお願いしたいと思います。
 まず、スケジュールですが、本案でよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○青木部会長 ありがとうございました。
 では、この形で進めさせていただきます。順次また細部についてはご連絡を事務局から申し出させていただきます。
 次に、今ご説明いたしました主な審議課題案に関してでございますが、これは資料10にございます。1番から5番までの各課題についてご審議をいただきたいと思います。
 これを今後取り上げて本部会にて審議していく必要がありますし、また、ここにそれぞれの項目の下に例として、議論すべき具体的内容といったことをまとめてありますが、これでよいかどうか。あるいはこれにつけ加えるもの、あるいはこういうものは要らないというようなご意見がございますでしょうか。お諮りいたしたいと思います。

○岡田委員 この資料10では、1から5まで書いてありますが、全部枠組みのようなもので、直接人間の心に訴えかける何かというのがないのですね。ずっと気になっていることですが、最近小学生まで殺人事件を起こすようになったり、中高校生などはすごく風俗が乱れ、行儀の悪さとかも恥じらいをなくしてしまっているという現状があると思います。そういうところに、人間の気持ちに直接働きかけるとか、人間の心のゆとり、道徳、心の豊かさといった人間の内面に関する事項を新しい項目として審議課題につけ加えてはいかがかということを申し上げたい。

○青木部会長 6としてつけるということですね。

○岡田委員 結局、いわゆる文化芸術というものに対してだけ、こうしましょう、ああしましょう、予算を使ってということだけでは、やはり何かが抜け落ちていっていて、文化というのは、人の心が豊かでゆとりを持って暮らすことがまず文化的なことだと思いますので、そこが抜けていると何か絵に描いた餅を見ているような気がしてならないのです。

○根木委員 今、岡田委員がおっしゃったことはもっともだろうと思いますが、もともと法律の前文の中にそれは盛り込まれています。したがって、あえて基本方針の中でもう一回それを繰り返して書くべきかどうかということがあるかと思います。それは全体の構成の問題ではないかという感じがしておりまして、基本方針で再説するということも一つの方法だろうとは思いますけれども、法律にもあるものは基本方針ではあえて捨象するというのも1つの選択肢ではないかと思います。
 また、現在の基本方針もその線に沿っているのですが、第1の部分である程度それに触れているということが言えるのではないかと思います。

○岡田委員 概念としては触れられているかもしれませんが、実際にそういう問題が数多く起こっていて、それに対して何か働きかけるという意志を持ちたいと思います。ですので、それに対して人の心を容易に口先で変えることはできませんが、それに対して何ができるかということは、やはり具体的に考えてみることが必要なのではないかと思います。

○青木部会長 いかがでしょうか、人の心、確かに文化は価値感や心の豊かさなどいろいろな問題が関連しますから、それどのような形で盛り込むか。確かに前文には国民の生活を豊かにするとか、そういうことが書いてありますから、それで済むのか。やはり具体的にもし検討するなら、どんなことが議論の対象になるかですね。

○田村(和)委員 私は、先ほどの岡田委員の意見に賛成です。やはり、こういう話というのは時代によって課題も変わっていくわけですから、私はそれを入れていくべきだと思います。ただ、本当に政策の中にそういうことがきちんと入れられるかどうかということは別問題ですから、課題としてしっかり書き込んでいく議題だと私は思っています。
 それ以上に私がちょっと気になっているのは、この基本方針というのは、芸術文化に関して大いに支えになるのだけれども、どうも国民の血とか骨とか肉になってないという感じがしています。これはなぜかと言いますと、文化政策論というのがはっきりしてないところがあると思うのです。
 前年度のまとめをしたときにも感じたことなのですけれども、いろいろなレベルがあったりいろいろな角度があるのですが、それがすべていろいろなジャンルにすぐ落ちてしまって、そこのところで何をすべきかという話になってしまい、今何をするかという問題ではなくて、いろいろな分野をいろいろな方策で支えなければいけないというような話になって、一向にメリハリがつかないという感じがします。
 やはり、文化政策の文化という言葉は一体何なのかということを、一度きちんと議論する場所があっていいと思います。日程で言いますと、中間まとめでは最初から積み上げて議論するのではなくて、やはり基本的な概念が何なのかということをきちんと出していく段階があってほしいと思います。
 例えて言いますと、文化政策の文化というのは、私は、文化状況そのものを語ることではないと思っております。やはり政策の対象として、特に国の政策の対象として一体どういう文化があるかということを考えたときに、単なるジャンルではなくて、もっと違ったカテゴリーとしてとらえていかなければいけないなという感じがしているのですが、文化のとらえ方をしっかり考えていかないと、文化の凝縮力みたいなものが見えないと思うのです。凝縮力が見えないというのは、結局はすべてがあるけれども少しも血にも肉にもならないという話だと私は思っています。
 ですから、このあたりの文化の方法論というのを一度きちんと議論してはどうかという気がしておりまして、これは非常に難しい問題ですが、1つのポイントになる議論ではないかと感じております。

○青木部会長 今の問題はやはり根幹的な問題だと思いますけれども、基本法にとっての文化というのは、どういうことを考えているかということですね。それをある程度コンセンサスを得るような議論を重ねるべきだということですね。

○田村(和)委員 そういうことですね。
 少し加えますと、ジャンルとカテゴリーの違いというのは、例えば料理の話でしますと、例えば中華料理を議論するのか日本料理を議論するのかではなく、やはり蒸料理を議論するのか、焼き料理を議論するかという、そういう1つの切り方ですね。これはある意味でいうと、縦に全部分節化するのではなく、横に共通化して、この文化政策で語るべき世界が何なのかということという、そういう意味合いですので、乱暴な言い方ですけれども、ご容赦ください。

○米屋委員 今の田村委員のご意見に全く同感なのですが、岡田委員がおっしゃったことに関して、文化政策のテーマとして取り上げるとしたら、それは文化の多様性に向かって政策としてどう考えていくかという議論になるのではないかなと思います。
 この審議課題の案では、多様性のことに関しましては、国際交流の推進方策というところだけで触れられておりますけれども、昨今胸を痛めるような事件というのも、結局相手を容認できないというコミュニティーの硬直性の問題が背景にあるなど、多様性というのは何も国際問題ではなくて、私たちが生きている日常の中でのテーマなのだと思います。
 そういうことから考えますと、多様性というのはてんでばらばら、みんな勝手でいいということではなくて、相手を認めつつどう協調し、1つのアイデンティティーあるいは幾つかのアイデンティティーというのを共存させるのかというようなことかと思いますので、そういったアプローチでテーマに加えるのであればよいかと思います。
 また、田村委員のご意見と共通しているのですが、この案を見ますと、例えば地域文化の振興でしたら本部会でもテーマとして取り組んだことがありますし、国際交流の推進に関しても、政府の懇談会があったりということもあって、これまでも幾つかの議論の積み重ねがあるかと思うのです。それを踏まえて審議するというのも1つの方向なのでしょうけれども、それを串刺しにするようなテーマ設定が必要なのではないかと。
 例えば、この課題案を見たときに、デジタル時代の進化というような中で、期待する部分と危惧する部分というのがこういったテーマ全部にかかってくるような気がしています。ですので、そういった縦と横といいますか、少し重層的なテーマの立て方というのを考えてはいかがかなというふうに思っております。

○青木部会長 文化の多様性というのは、確かに日本でも、1つは従来のように地域的な文化の多様性というのはもともと存在しますけれども、いまや世代間でも文化の違いにより日本語が全然通じない場合もあるのです。ですので、世代間における文化の多様性というとらえ方は非常に重要だと思います。

○富澤委員 資料10の今後の審議課題案には5つの項目が書いてあるわけですが、これを見て、私は2つの意見というか感想を持ちました。
 第1は、1番の「文化芸術の振興における国の役割」という仮の題になっていますが、これでは少し弱いのではないかという感じがあり、つまり、やはり文化というものを、これからの国の基本政策にすべきであるということです。国家戦略と言うと何か文化となじまない面がありますけれども、日常的に国民全体が文化を意識できるような取り組みを一層推進するということです。それは広域的な面もありましょうし、そういうことをもう少し強く打ち出した方がよいのではないかという点。
 それから、第2点は、課題3と4の民間、それから子供たちの文化活動に関係するのですが、1つ抜けているとすれば、今の日本の現状を見たときに、やはりシニアの役割というのが非常に大きいと思うのです。これからはシニアの役割がますます大きくなる時代ですから、シニアの活躍が目立ってきているし、企業でも定年をどんどん延長しているわけですね。
 そういう中にあっては、やはりシニアの方に活躍していただく、あるいはシニアに文化をもっと親しんでもらう、そういう意識が大事なのではないかというような感じがしております。そういう意味では先ほど来出ている日本の理念というのも、To haveという所有、物とか金とかではなくて、To beですよね。やはり存在そのもの、あるいは心というお話がありましたけれども、そういうものに移っていると思うので、そういう観点もこの中に加えられたらいいのではないかと思います。柱に立てる必要はないかもしれませんけれども、民間あるいは子供たちというテーマの中にそういう観点を加えて審議をしていったら、もう少し幅広いものになるのではないかなと思い申し上げました。

○青木部会長 重要なご指摘だと思いますけれども、戦後の60年は日本のシニア文化を壊してきたのではないかと思います。今高齢化社会などと言ってもシニアの文化は何もない。ですので、文化に関しては、富澤委員がおっしゃったシニアに焦点をあてたものを充実させることによって、そこにある若い世代についても一種のモデルになるようなものを積極的につくるような必要があるかと思います。
 私は、以前から高齢者文化の重要性ということを言っているのですが、日本ほど高齢者文化をないがしろにしている国は世界でも少ないのではないか。若者とか子供というと、ジャーナリズムやマスコミも注目するのですが、実際にはモデルがなかったら文化の展開の仕方が非常に難しくなる。シニアの文化というと、一種の伝統というものが支配的になっていて、非常にかた苦しくなるとか、そういうような意識の方が強すぎるのではないかと思います。先ほどの文化の多様性の問題の中にやはりシニア文化も必要だと思います。

○川村委員 この資料10を拝見をして、大変よくまとめていただいていると思うのですけれども、これを見ると文化財の保存・活用というのはあちこちにばらばらと出てきていて、例えば国の施策として、それは文化財に保存・活用を支える技術や人材を確保するという、非常に部分的なことを取り上げている。
 しかし、文化財を守るというのは、もっとトータルにつかまえて、営々とした積み上げがあるわけです。今まさに文化の多様性というお話があったが、日本の伝統文化というのは、やはり過去数千年の間で積み上げられてきて、その営みが毎日続けられているわけです。
 それはご存知のとおりに、例えば法隆寺の解体・修復工事というのは、昭和10年から昭和30年、第2次大戦の中ですら、積み重ねられてきたわけです。それは国がきちんと法隆寺の価値を認めてやってきたからなのです。ところが最近、文化財をなぜ守るのかということについて共通理解がなく、当然の如くのこととして考えられていますが、私は最近非常に危機的な状況になってきていると思っています。
 文化財というのは一度失われたらもう元に戻すことはできないわけです。例えば、今の建造物の修理で言えば、きちんとした修理をすれば50年、100年保存できる建物が、今はお金がないから先へ伸ばす、あるいは手軽に済ませるようになっており、50年もつものは30年しかもたなくなってくる。一見今の時代で、とりあえず修理しておけばとりあえずもつではないかというような手軽なことを考えていたら、そのつけは必ず30年、50年後には回ってくるわけです。しかも、我々の日本の一番大切な伝統文化というものは、気がついたときにどうにもならなくなってくるという気がしています。
 先ほど、今回の審議でできるだけメリハリをつけてというお話があって、それは私も賛成なのですが、メリハリで目の前の話ばかりしていると、そういう基礎・基本のところが抜けてしまうのではないかと危惧しています。先ほど田村委員から、ここで取り上げる文化とは何かというお話がありましたが、私は文化財保護というものをもう少し重くきちんと受けとめておくべきではないかという思いがありますので、一言申し上げました。

○河井委員 この基本的な方針が非常によくできていまして、よくできているというのは、ある程度メリハリをつけ過ぎると、パブリック・コメントあるいは公開した後いろいろな批判を受けやすいので、ある程度総花的な表現になっているという意味でよくできていると思うのですが、昨年の議論を踏まえますと、文化芸術の必要性、もう少しこれを具体的に強調してもいいのではないかという印象を持っています。
 それから、私ども現場で活動する者にとって、やはりこの基本方針の中で、財政処置、財源についてももう少し具体的な表現があってもいいのではないかというふうに思っております。今、地方で困っているのは、三位一体の改革の中で、財政が厳しい中で、文化芸術に対する予算が削られやすいという性格を持っているのですが、そこを何とか頑張ろうということで努力しておりまして、そういう意味で財政処置についてもう少し具体的な議論があってもいいのではないかと思います。
 それから、この基本的な方針の中でも、国語についてはかなり強調されているのですが、去年の議論ではほとんど国語についての議論がなかったのですけれども、国語分科会との関連がどうなっているのか、具体的な議論はそちらに委ねているのかどうか、もうちょっと整理して、もし国語の部分についても、もう少し詰めることがあれば検討してはどうかなと思っています。
 私どもで、今、3月期なので予算を要求しておりますが、学校図書の充実ということを含めて、国語の教育について非常に力を入れたいということで、かなり理解をいただきまして、文部科学省の学校図書の整備基準、冊数の基準。あれが積極的にどういう意味を持っているのかちょっと理解できないが、とりあえずあの線まで持っていこうと。全国平均では小中学校数でその基準を満たしているのは、学校数の30%と言われていますね。私どもでは、中学校が40%、小学校が38%ぐらいでしたか。それで、全校を基準に持っていこうということで、19万台の都市ですので、そんなに学校は大きくないのですが、5,400万一気にいただいたということで、国語教育に力を入れていきたいと思っていますので、国語の議論についてはこの場でどうなるのか。整理していただきたいと思います。
 以上でございます。

○白石委員 私も、今回初めて出席させていただいて、ざっと見たら重点的とは言いながら総花的だなという印象はあったので、重点的なところを取り上げたいという方針はよいと思います。
 私は地方でずっと仕事をしておりまして、1つは非常に地方の地力といいますか、まず人が少なくなってきて、先ほどシニアのことを重点的に取り上げたらというのは、まさに地方ではシニアしか残っていないから、シニアの力がなくなってきているというような現実があります。
 そういう点でもっと地方ですと、特に三重県は知事が文化力というのを随分打ち出しておられますけれども、現実には文化に対する予算というのはどんどん削られているのです。それは三重でさえそうですから、恐らくほかの地方ではさらに激しいのではないかと思います。
 それはやはり、地方で文化を支える基盤がなくなりつつある。力がなくなってきているというところがあるのです。ですから、具体的にどうしたらいいかというのはなかなか出てこないのですけれども、そこはきちんと議論していかなければならない点ではないかという気がいたします。

○中島委員 私も今回初めてこの会議に参加させていただいているのですが、最初お話をお受けしたときに、私は40代後半のまだ若者なのですが、我々以降の世代の人間もみんなやはり文化と言われても一体何かはっきりしない感じがあります。体育と文化があったなみたいな、それぐらいのことでしかなくて、例えば有名な文化財くらいだったらわかる程度です。しかし、文化とは何だろうというところが、国の方向性として文化芸術の振興の必要性というのを語られているにもかかわらず、実際のところは届き切ってはいないという気がしておりました。
 方策としてまとめるということ以上に、やはりこれを伝えていくということを大きな1つの目標にすべきではないかと思います。これは国がやっていくことかもしれませんが、そのことをどうやってみんなに伝えていくのかという点が大事であると思います。私は、広告やCMの仕事をしておりますが、ほとんどのCMというのはだれも見てないだろうという設定で制作しているのですね。そこにどうやって振り向かせるのかということを考えているのですけれども、伝えることというのは非常に難しいものです。
 このことをやはりきちんと次の世代に伝えていかないとならないと思います。先ほどから議論になっていっている文化財の価値であるとか、何千年も続いている営みの先に我々がいて、それからまた未来をつくっていることの意義、文化の重要性というものを、何とかして伝えないといけないのではないかと、今、感想を持っております。
 この資料10について言うと、一番最初に岡田委員がおっしゃった心の問題というのは、多分各テーマのベースとして、我々が共通で持っておかなければいけないベースだと思うのです。何のためにそれがあるのかというと、文化というのは最終的には心に帰ってくるものですから、このそれぞれの最後の目的はやはり心を豊かにして、国民生活を豊かにして、ひいては世界人類が豊かになっていくということをベースに置いて、各論の根本の部分、文化とは何かをしっかりと肝に銘じる心持ちで私自身は参加させていただきたいと思っております。
 個々については、私はちょっとまだコメントできないと思うのですけれども、皆さん、大体言っておられることは、意外と端で聞いていると同じようなところに来ているのではないかと思いますが、改めて、文化とは何なのだということ、これについてはここでテーマにするということではないのですが、僕たちはとらえていかなければいけない問題ではないかなと。文化はもう既に十分に理解されているという上からの感覚ではなくて、今もまだ理解されていないという前提で進めた方がよいと私は感じております。

○田村(孝)委員 私も、実は基本法が成立したとき、それから基本方針が決まりましたときも、取材という立場でずっと拝見してまいりました。基本方針の本当に衝撃的な決定の仕方も拝見いたしまして、そのときの文化審議会の方々のお力というものを本当にありがたく思いました。  でも、私はその後も、私は放送という立場ですので、自分の責任でもございますのですが、基本法がどれだけ周知されたかというと、関係者内だけのものになっているという感じがいたします。
 私から見て驚きましたのは、社会教育施設に関係する方は、全く文化施設について別個のものと思っていらっしゃるということです。先日文化ボランティアの全国フォーラムに参加した際に、その施設の担当者はもとより、行政の方や文化ボランティアをしていらっしゃる方々も同じ認識だというのを痛切に感じまして、やはりそこは、文化とは何なのかということについて、基本方針だけにとどまらず、先ほど富澤委員がおっしゃいましたように、ある種の戦略が必要というふうに、基本戦略ぐらいにつながる考え方をしていかないと、理解は得られないということをこの5年間痛切に感じております。
 私が、放送で取り上げましたようなことも、他では聞いたことがないことだということをよく言われます。それが残念ながら日本のマスコミも何も含めて現実だと思いますので、ぜひ今回は、国家戦略といいますか、基本戦略につながる方法をとってほしいというふうに感じております。
 それから、もう一つ、物の豊かさから心の豊かさにということについては毎日報道などいろいろなことで伝わらない日はないです。しかし、そのために何をしているかといったら、それは皆無ではないかと思っております。
 例えばこどもの伝統文化体験ということに関して、文部科学省の学習指導要領が変わりまして、日本の伝統音楽を授業に取り入れるということが決まっております。しかし、予算措置はされておらず、ほとんど関係者のボランティアに頼り切っている。ボランティアというものを否定するものではありませんが、それにおんぶに抱っこはいかがなものかなということを、最近つくづく感じております。

○川村委員 今の話に関連をして、先ほど白石委員が言われたことで私も気がついたわけですが、芸術文化を実際に享受したり、それに参加しているのは普通の国民である。国民というのは、実はそれぞれの地方の地域の住民なのですね。国家戦略という話をするときに、日本が単一の、フランスのような中央集権の国ならそれでいいのだけれども、地方分権ということが今盛んに言われているわけです。だから、先ほどの文化財だって、これを守り育てるのは地域の住民のはずですし、それ以外の芸術文化活動を伝えていき、参加するのはやはり地域の住民であるはずなのです。
 ところが、今の自治体の状況は神奈川県でも全く同じで、県の施策からどんどん予算が削られていってしまう状況なのです。  だから、国家戦略として考えるときに、国と地方のそういう意味での役割分担というか、そこのところはきちんとしていかないと、今田村委員がおっしゃったように、国が幾ら旗を振っても、現場の方はそんなものは関係ないということにならざるを得ない。
 この資料の2番目の地域文化の振興でそのことが書いてあります。「地域文化の振興における国と地方の役割分担」、地方は地域文化をやっていればいいという考え方が前提になっているようですが、私はそうではないと思うのです。国は国家レベルのトップの文化芸術を支援し、地方は底辺の裾野を広げろというふうな切り口自体が、私はおかしいのではないかと思っております。
 もっと芸術の幅をずっと本当に広げていくためには、地域でもっと自主的で創造的な、そのまま世界に発信できるようなものもつくらなければおかしい。ですから、今白石委員がおっしゃったように、本当に大変だと思うのです。私のところも実はもう本当に大変で、特に今指定管理者制度などが入って、とてもではないけれども地域文化は指定管理者でつぶれてしまうのではないかと思うぐらい危機感を持っているものですから。
 富澤委員がおっしゃったように、国家戦略としての文化を考えるときに、その視点も、国と地方の関係をどう考えるのかということもご議論いただければありがたいと思います。

○青木部会長 どうもありがとうございます。
 大体、非常に重要な問題が提出されましたし、これを皆様と一緒にいろいろな形で考えていきたいと思います。確かに国家戦略といいますか、ただ、文化と戦略という言葉を結びつけると、何か余りそぐわないような印象もあるのですけれども、どちらにしてももっとダイナミックな形の、富澤委員がさっきおっしゃったような、世に訴えるような形のものが必要ですね。
 全体として文化というものをどういうふうに考えるか、どのように一般に認識していただくのか。文化はみなそれぞれが自分で様々な形で味わい、また貢献しているわけですが、やはり改めて文化というものの重要性ということを言いたい。
 国家というのは、政治・経済・文化の3本柱だと思うのですが、この政治・経済についてはいろいろな、特に日本では経済についてはいろいろ言われますけれども、文化については確かにいろいろなレベルの議論が足らないことは事実ですね。
 それで、先ほど最後に今後の審議方法についてお諮りいたしましたけれども、この審議の内容に即して必要な団体の方とかあるいは有識者をお呼びするという形で進めていってよろしいでしょうか。平成14年度のときは網羅的に28団体ということでヒアリングをしたのですが、これはまた皆様からいろいろとお知恵を借りて進めてまいりたいと思います。
 それでは、今、皆様からいただきましたご意見をよく検討し、今後の部会の進め方と審議課題というものを決定していきたいと思います。
 続きまして、本日は、委員の皆様の文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直し全般に関しまして、ご意見を一人ずつ賜りたいと思っております。では、岡田委員から順次お願いいたします。

○岡田委員 手短に申し上げます。中間まとめができたときに、読んだ人が、ああ、国はこういうことをやろうとしているのだ、やっているのかというような、ただ流し読みされるようなものではなく、人の心がどうあるべきかが文化につながってくるのだということが伝わって、読んだ人が何か感ずるものがあるというものになればよいと思います。
 やはり、枠組み重視ではなくて、そこに人の顔が見えるようなものになったらよいと思います。

○河井委員 この文化に関する基本的な方針が、実践的な立場にある人の行動指針になればよいなという希望は持っております。私どもの方でも、こういう基本方針を受けて、地方公共団体として具体的にいろいろな政策を練っていくと。そういう指針になれば非常にありがたいというふうに思っております。
 茨城県では、今年は全国生涯学習フェスティバル、来年は年輪ピックで、平成20年は国民文化祭というふうに続きますので、これを市民への動機づけの期間ととらえ、一人一芸運動という形で具体化していっています。そういう指針になっていけばいいなというふうに思っております。

○富澤委員 私は実は、観光政策というのに関係しておりまして、今、国を挙げて日本を観光国家にしようということを盛んに推進しているわけですが、それは文化も同じだと思います。これからはソフトパワーを力にしていかないと、これまでのハードなものだけではもう日本という国は成り立たない、あるいは国民の賛成を得られないということだと思うのです。
 観光も、今観光基本法の改正の時期に入っておりまして、国を挙げて観光立国をつくろうという動きになっております。しかし、私は、もっと大事なのは文化であって、文化が国を支えていく大きな力になるし、経済的にも文化のもたらす経済効果というのは相当大きいと思うのです。そういう意味で、先ほど来申し上げているように、国の基本政策、基本方針の中に文化というものを大きく取り入れていくことが必要であると思っています。
 それと、もう一つ大事なのは、それを国民が共有するというのですか、みんながそれを知り、意識して、そして国も地方も、あるいは国民の多くがそれを日常的に意識して活動し、また外国に対してもアピールをするということだと思いますので、そういう方向で議論をしてまいりたいと思います。

○川村委員 今回のこの審議の結果、基本方針というのはやはり実際的な政策の指針となる形で生かされるものとしてまとめていくのが重要ではないかということが1点。
 その際に、先ほど申し上げましたように、国という議論はあるけれども、いかに地方政府、自治体ですが、自治体がいかに主体的、積極的に文化振興に取り組む、彼らが元気を出して自分たちが自分たちのものとして文化政策にきちんと取り組むということを、国としてどれだけ支援できるのか、役に立つのか。あるいは、国と地方がこういうふうに役割分担するのが、つまりこれからの日本はやはりどうしても地方の主体性というものを第一に考えていくべき時代だと思いますので、そういう意味での国としての国家戦略という考え方で進めるべきではないかというのが2番目。
 3番目には、先ほど申し上げましたように、文化財の保護ということについて、これはトータルとしてきちんとした取り組みを進めていかないと。この仕事というのは、やはりこの部分についていえば国の役割が非常に大きいわけですけれども、しかし文化財は地域で守られることによって初めて生かされるものであるならば、これも地域との関係ということをきちんと考え、文化財が我々のルーツそのものであるという認識にきちんと立って、トータルの保護の方策ということを考えていければというふうに思っております。

○熊倉委員 一応、これはもとの法律が文化芸術振興基本法という法律なのですけれども、「文化」とが何なのかということは非常に重要な問題だと思うのですが、もう一つ、ぜひ「芸術」というものが何なのかということも国民全般にもう少し考えた方がいいのではないかと思っています。
 というのは、「文化」と言ったときに、先ほどの議論の中にもありましたけれども、今文化が消費財化していると思うのです。高齢化社会に向けてシニアの文化をという富澤委員からのお話もありまして、文化の担い手と言ったときに非常に玉虫色だと思うのですが。
 既に文化施設などの現場では、シニアは重要なターゲットとして、いかにシニアのお客様を呼び込むかというような様々な施策は行われていると思います。国の方針としてはそれが大事なのではなくて、むしろこれから大きなマスとなっていくシニアの方々の価値観と若者の価値観とを貫いていける、あるいは大きな隔たりの中で両方が対話をするきっかけとなるようなものが、文化の中でも普遍的な力を持って芸術というふうに呼べるようなものなのではないかと思います。
 これまでの日本の文化政策の功罪のあえて罪の方を言うとすると、ちょっと芸術を囲い込み過ぎたかなという気がしているのです。高齢者の方々も、こういう芸術があるのは知っているのだけれども、余り見たくない、行きたくないという状態です。若者に至っては、あることすら知りません。
 国立大学にいますと、地方から来た若い、この間まで高校生だったという若者にたくさん出会いますが、多くは学校の中に囲い込まれている。県庁所在地だったら今は立派な文化施設がたくさんあります。現場の職員の方々はとても頑張っていらっしゃいます。東京にまさるとも劣らない立派なプログラムも、東京ほど頻繁ではないにせよ実施しているはずなのですが、話を聞くと、その文化施設の存在すら高校生たちは知らない。芸大に入学してくる者たちがですよ。それは、ちょっと愕然とする思いがあります。
 一方では、昨年話題になった社会学の本の中で、いわゆる「下流社会」と呼ばれている、お金がないわけではないけれども、特に地方都市にたくさんいると言われているような人たちの、社会参画への意思や望みを失った世代に顕著な傾向として、歌ったり踊ったりするのが好きというふうに言われてしまって、これも非常に愕然としました。
 ですので、今、「文化」というふうに言われたときに、何がどのようにとらえられていて、それで経済が活性化する部分ももちろん必要なのですが、何がどう血肉になっていないのかという、先ほどの田村委員のお言葉にもありましたけれども、そのあたりの現状認識は非常に大事なのではないかと思います。
 だれがどのようにして、その血肉化を行っていくのか。そこの措置がやはり足りないというのが、毎年同じことを言っていますけれども、痛切に日ごろ感じられるところです。
 今回の議論に関して言うと、もちろんそれが心の問題というところに、国民の心にフィードバックされない文化政策をやっていてもしようがないという、厳しい現状認識を持つべきだというところは全く同感なのですが、でもだから、心の問題なのですよというふうに余りそこだけ先走ってしまうと、また若者にそっぽを向かれてしまうという危惧もあります。
 だから、皆さん行儀よくしましょう、というふうに、今回、国の方針として言うのではない形で、どうやっていろいろなタイプの人たちの心に働きかけられるのかということを考えたいと思っています。

○嶋田委員 私は、企業の立場で今回も参加させていただいておりますので、その立場からお話をさせていただきたいと思います。先日、ある音楽団体の方が当社に見えまして、最近景気がよくなってきたので、大型の海外オペラの協賛はこぞって金融関係の方、何千万とお出しになるのに、日本のオペラの助成をお願いしに行くとほとんど出してもらえないと。皆さん、育成ということを果たして考えてくださっているのでしょうかというご意見をちょうだいして、私もはたと気づきまして、確かに、企業ですので、パフォーマンス性の高いものということを問われるので、どうしても海外のオペラは満員だけれども、日本のオペラはすいていたりとか、という効率で選ぶわけですが、やはり国民として考えたときの育成の役割というのは一人一人が担うわけで、今回改めてこの内容を見てみますと、育成という責任の分野がやや欠けていたかなというのを感じております。
 それはなぜかというと、どちらかというとメンバーの皆さまも含めて、文化を担う側の方々が議論をされているので、一人一人の受ける側の国民が、ではどうすべきなのかというところは、どうしても抜けてしまう部分があるのですね。
 私は、国はどういう分野の文化芸術を推進すべきかといったら、ある部分がとても進んでいる方が国力的には魅力的なのだけれども、あらゆるものが欲しいときに手に入る、享受できる国というのは、やはりこれからは一番すばらしい文化芸術大国なのではないかなと思いまして、そういう国を目指したときに、それぞれの国と企業と国民が文化を担うのですよという表現だけになっているのですが、もう少し育成していくのだという、もう一歩進めた視点を少し今回は入れてつくれると、少し国民に近づく方針になっていくのではないかということをちょっと感じております。

○白石委員 私は、実は思い出しましたけれども、基本的な方針ができたときにある会議でいただいて、どうして文化を法律でしばるのだという違和感があったのです。文化というのは、さんざん議論されているのだと思いますけれども、本当に個人のもの。先ほど文化の多様性と言いましたけれども、まさにそうだと思うのです。
 ただ、実際に文化を担っているとところを見ますと、やはり盛んにやっているところとそんなにやってないところ。盛んにやっているところでも非常に一生懸命やる人がいたらやるけれども、余り熱心ではなくなるとやめるというような、非常に単発的なところが多いものですから、そういう点で言うと、こういう指針のようなものはやはり必要かなとも思います。
 ただ、先ほど来から何人もおっしゃっているのですが、なかなかこれが広く知られていないというところが問題かと思います。ですから、どのように広く一般の方へ周知していくのかが必要だなと思います。
 先ほどちょっと言いましたけれども、文化の多様性というのはありますけれども、ただ、やはり若い人でもお年寄りでも、一緒に活動しているところは非常に多いのです。川村委員が先ほど文化財とおっしゃいましたが、まさにその文化財の伝承というのは一緒に行っているところが結構多いのです。ですから、そういうところはきちんと見ていって、それをこういう基本方針の中で生かしていくと、国の役割が出てくるのではないかと思います。

○田村(和)委員 大体先ほどお話ししたのですが、最初にちょっと川村委員がメリハリのお話で文化財の話をおっしゃったのですが、実はメリハリをつけるということは、私も同じ考えで、むしろ、どっしりとした話にしなければいけないということです。単に目前の話だけで左右するということではありませんので、誤解なきようにお願いします。
 それから一つ提案なのですが、この審議課題について、これは全部「文化」というのを主語にしたらどうかと思います。原案では、みんな文化の方が何かしてもらうというような形での受身になっているのですが、例えば、1番の話などにしても、「文化がつくる国のこれから」というようにすると。それから、2番の話は、「地域文化が活性化する地域社会」と。それから、子供たちの文化に関しても、「文化芸術が育てる子どもたちの将来」とか、そのような形で考えてみますと、可能性も見えるけれどもかえって限界も見えてくるという感じがいたします。
 そうしますと、先ほど富澤委員がおっしゃった戦略性というのか、そういうものが少し見えてくるのではないかという感じがしています。
 私は、ともかく文化本位で物を考えていくというのか、文化立国の中心にこれを置いていただいて、本当は基本方針は憲法の次に来ていいものではないかと思っているぐらいですから、そういう考えで行けばよいのではないかと思っています。
 それから、先ほど嶋田委員がおっしゃったことなのですけれども、文化行政の文化というのは、私は物事を始めるための条件づくりだと思うのです。ところがやはり文化といいますと、我々は今まで蓄積されてきたものを基層にして物を考えなければいけませんから、どうしてもそちらの方に足をとられていく。これは大変なストックなのですけれども、文化政策の文化というのは、事を始める場合に、つまりこれから育てていくというか、インキュベートしていくための文化と条件ということであると思うのです。ですから、そのあたりの話に力が行かないと、どうしても一つ一つばらばらな話になっていくのではないかという気がしているのです。
 それから、地域の話が随分出ていますが、前回一度お話ししたように、私は地域というのを文化構成体としてとらえていますので、やはりそこのところの、場合によっては非常に肥満児化しているところもありますけれども、そうではなくてここは体力を持たなければだめだなという感じがしております。  大体その4つぐらいの件を感じております。

○青木部会長 文化が国をつくるとか、文化が人間をつくるという認識で行くことはいいですね。確かにこの文言ですと、何とかみんなで文化をつくっていこうというような、そういう側面もありますけれども、こういう基本法的な部分はしっかり打ち出した方がいいですね。

○田村(孝)委員 私も今のお話に賛成です。と申しますのは、文化芸術の価値、力を伝えていくというのは非常に難しい。なかなか理解を持っていただけない。暇な人がということにすぐなってしまうというのが現実だと思うのです。本当に、住民や地域の方々、それから国民にとってどうあるべきかというふうに、そちらの視点というのは、もちろん大切なのですけれども、残念ながら国側、それから地方もそうなのですけれども、文化政策がないと前に進まないという気がいたします。
 それを、私としてははっきりとした文化政策を国に持っていただきたいということをつくづく感じておりまして、そのためのものになればいいと思っています。

○中島委員 私の近い話から話させていただきますけれども、テレビコマーシャルで、世界のコマーシャルが競うカンヌの広告祭というものがありまして、そこで私もかつて93年にグランプリを頂戴したことがあるのですが、あれからばったり受賞できなくなってきています。
 広告づくり、映像づくりをしている人間たちにとっては、この10年というのは自信を失ってきた10年であったと思います。
 それが、ここへ来て少し風向きが変わり始めているという感じがありまして、いざ、自分の足元を振り返ってみると、ここにすばらしい日本という国があると改めて認識しております。私自身は何もやってないけれども、大きな文化の蓄積の上に立っているのだということに振り返ってみたときに、大きな自信が持てるのです。
 自分自身ということではないのだけれども、ここ日本に生きていることによって何か失っていた、外国を追いかけることによって見失っていたものをもう一度自分たちの足元を確かめて自信を持っていく。これは、シニアの方々より以上に、我々以下の世代、若い世代たちが、何をベースにして生きていけばいいのかということで迷っている状態があると思うのです。そこに、何か私たちがこれまでつくってきたもの、それからこれからつくろうとしていくものが日本の文化であり、それはとても大事なものだということを伝えていければ思うのです。それが多分、国の自信につながってくると思うのですが、非常にいいものを持っていながらそれが生かされていないという状態を感じます。
 それで、どうすればいいのかということですが、私は、メディア芸術祭の審査委員をさせていただいているのですが、メディア芸術祭では、かなり奇抜なファッションをした若者が長官の前に行って賞状をもらうような状況があり、こういった催し物を1つ行うことによって、文化庁はすごいねということが、つくり手たちの間に広がっていくのです。今の社会環境ですと、よい話の伝わる速度というのは、別に我々マスメディアを通さなくてもあっという間に伝わっていくようなネットワークの環境にあるのです。
 ですから、1つのいい投げかけを国の方からしていくということで、私は若者たちにそういう文化のすばらしさというのを伝える術はあると思うのです。

○根木委員 文化とは何かということについて、哲学的に議論をし始めますと、恐らく結論は出ないと思うのです。従って、文化というものをどう考えるかといったときに、大事なのは、政策の対象としての文化をどう考え、どのように限定し、それに対してどのような効果的な手を打つかということになるかと思います。
 一方、文化に関して、国ないし地方公共団体がかかわる事柄というと、大きくは伝統的な文化の保存・継承という側面と、各種文化芸術の創造・発展という両面があるかと思います。
 保存・継承と創造・発展は、恐らく紙一重だろうと思います。ところが、保存・継承に関しては、先ほど文化財の話も出ましたように、これについて補助金を支出するということについては、おそらく国民的なコンセンサスは得られると思いますが、もう一方の創造・発展という側面については、ある意味で私事という側面あります。それはまた、文化の多様性にもつながっていくであろうとも思われるわけです。
 したがって、国ないし地方公共団体として、創造・発展の側面に一体どのようにお金を出し、人的資源を投ずるか、そこの見極めをどうするかということが必要になってくるのではないかと思います。そうなると、なかなか戦略の立てようがないとも言えるのですが、やはり全体的な構造、枠組みを踏まえた上でどうするかということは、考えていくべきではないかと思います。
 それから、基本方針の現在の構成、構造そのものについては、ほぼこれで基本的によいのではないかという感じがいたしますが、いろいろと出ている意見は、例えば重視すべき事柄や留意事項の方に盛り込んでいき、また、現行の第2以下のところにありますような個別具体的な方策に関しては、ある程度具体性を持ったものを書いておかないと、余り観念論ばかりを展開していても、なかなか実効性がないということになりますので、両々相まった形で最終的につくり上げていくということが必要ではないかと思います。

○真室委員 私は、前回から委員の一人として参加させていただいているのですけれども、全体的にこの方針でいいとは思っているのですが、何度これを読み返しても、何か漠然としているという印象はぬぐえない感じがします。
 先ほど来からの皆さんのご意見で、特に人の心の豊かさというものを最終的には文化というのは追求するものではないかという話が出ておりますが、私は、美術館にいて、確かに入館者とかあるいは展覧会によって人気度などを非常に気にしながら毎日を送っておりまして、一般の人の好みというのが、そう簡単に変えられるものではないと感じています。
 例えば、美術の分野で言いますと、印象派のような親しみが持てるような展覧会を開催すれば大勢人が入る。ところが、現代美術のコンテンポラリーアートになるとやはり人が少ない。先ほどの、アニメあるいはメディアアートの新しい傾向が一方ではありますが、文化の多様性と言っても、やはり全体的にはまだまだ偏りがあるということです。
 これは、いろいろな背景があると思うのですが、特に先ほど地方の話がありましたが、場合によっては地方の危機的な状況がやはり背景にあると思うのです。格差社会などですね。やはり財政的に豊かな人は文化を享受できるけれども、そうでない人はそうはいかないというような背景があって、なかなか心の豊かさを求めようとしても求められない。内閣府の調査では、国民の心の豊かさを求めるという割合が6割だというような調査がありますが、この6割をやはり7割、8割にしていかなければいけないと、強く感じているわけです。
 ですから、文化全体の文化の概念を考える一方では、やはり現実を見て、それをいかに是正していくか。文化を発展させるにはどういう方策なりどういう戦略を持っていくか、それをもう少し考えていかなければいけないと思っております。

○山西委員 前年の議論の中で、公教育に携わる者の立場からという形で意見を述べさせていただきましたが、学校教育と地域社会の担うべき期待と役割ということについてはかなり議論がなされ、学校教育についてはだいぶ具体化してきた感じがいたします。
 今、岡田委員からありました、子供たちの心の問題や道徳をどうするか。これは極めて大きな問題で、人間の生き方とかかわって大きな文化をどう取り込んでいくかというところが重要になってくるかと思います。
 そういう中において、学校ではこれらがどう生かされていくかというと、学習指導要領の中に道徳の問題、心の教育の問題、そして文化の問題が、知的な面、情的な面、体験的な面とバランスよく反映されていくとよいと期待をしております。そして、さらにそれが制度面としても実施可能なものとして、どういう状況で施策が生きていくのかといったような問題が出てくるとよいと思っております。
 私どもの学校でも、筝曲を今大きく取り上げており、いろいろなところからお琴を購入をしますけれども、かなりの金額も要る。もちろん市教委からの大きな援助もあるのですが、部員が多いと足らない。現状でそれはどうかというと、粗大ごみに出ていますよという情報があると、粗大ごみにお琴を拾いに行くという状況もあるのです。ですから、制度面での充実ということもこれからは必要になってくるかなというような状況があります。
 一方、教育という視点で見たときに、この答申に出てまいります「子どもたち」という言葉の定義をどう解釈するのかという問題があると思います。何歳から何歳までが子どもと言っていいのか、あるいは教育に関与する部分での子どもという部分でこれを読み分けてみると、まだ年齢の低い子どもとある部分では呼んだり、中学生までを子どもと呼んでいたり、別な部分では青少年という言葉も出てきておりますので、青少年と子どもの整理をどうしていくのかという部分をはっきりとさせていくべきではないかと思います。
 そういう中において、仮に中学生ぐらいまでを青年前期とするならば、青年後期の部分の教育の分野や、それにかかわる社会との役割ということが、学校教育が議論された割に抜けていたのではないかなという気がします。
 シニアの問題については先ほどお話がありましたので、その間をつなぐ青年後期の子どもたちの文化をどう育成をし、充実させていくのかという観点が、今後の議題の中で扱われていくとよいと思います。したがって、この審議課題にもあるような、子どもということの中で、幅広い青少年、あるいは青年後期という部分まで含めてご議論いただきたいと考えております。

○横川委員 まず、審議のまとめの概要がきちんと整理されているという点を評価したいと思います。
 資料10について今後検討していくわけですが、まず最初に、文化や芸術という言葉を使う場合、とてもハイブローなイメージがあります。一般大衆とちょっと乖離している感じもあり、そのあたりをどのように浸透させていくかということが1つあるかと思います。
 では、文化とは何かをわからせるにはどうするのかというと、やはり先ほどから出ている地域が重要だと思います。それぞれの地域にはそれぞれの伝統的な大切な文化というのがあるわけですから、そういうことも念頭に入れて、まず身近なものから文化は何かということをとらえる必要があるのではないかと思います。
 それから、芸術と言うと、絵画や音楽、建築など個々にとらえがちです。しかし、どのように芸術というものを解釈するかということも大切な問題ではないかなと思います。つまり、もっと足元から文化は何であるのか、芸術とは何であるのかということを洗い直してみるというのか、そういったことをまず念頭に考えておく必要があるのではないかなと思います。
 我々は、文化というはやはり底辺にあると思うのです。そこから、例えば政治であるとか経済であるとか、いろいろなものが出てくるわけですが、それは逆の発想で、文化が上に来て、そこからいろいろなものが出ていくわけです。
 そういうことを考えますと、温故知新みたいな言葉でよく使われるわけですが、発想の転換をしまして、知新温故というような形で、現状を見ながら遡っていくようなとらえ方で今後取り組んでいくべきというのが、私の個人的な考えです。

○吉本委員 前半の議論を聞いていて、私も漠然と思っていたことは、全く田村さんと同じ意見です。課題の1番「文化芸術の振興における国の役割」、これはむしろひっくり返して「国の政策における文化政策の役割」と考えることが重要なのではないかと思いました。
 たとえば、ここで5つ挙がっているのですが、その大前提として1番より前に、国の政策における文化政策の役割というのは何なのか。なぜ文化政策を重視しなければいけないのかということを、明確に打ち出した方がいいような気がしました。
 ですから、さっき部会長もおっしゃいましたが、文化は国をつくるとか、あるいは文化政策が国をつくるとか。文化政策というのは、文部科学省あるいは文化庁の政策ではなく、国の基幹政策と考えるべきなのです。
 ですから、そういう文化政策が必要だということをちゃんと最初に明確に基本方針の中で出して、その必要な文化政策をどのようにやっていくのかという方針が出せるとよいのではないかと思いました。
 それから、もう一つ、基本法の中で国民の権利として、創造する権利と享受する権利というのがうたわれているのですが、国にとって文化政策が必要だと言ったときに、国民の権利と言えるかどうかわかりませんが、支援をする権利というのですか、要するに文化政策そのものを国民一人一人がつくっていくのだという、国民一人一人にそういう責任があるのだというようなことも打ち出せるとよいかなと思いました。
 それで、あとは基本方針のでき上がった姿というのでしょうか、それがどのように使われるかということを考えたときに、やはり今地方自治体で予算がどんどん減っているというお話もありましたので、地方公共団体のご担当者、あるいは文化ホールや美術館の現場で困っている人がこれを財務当局に持っていって、国はこう言っていますと。だから、文化予算を減らしてはいけないという、何か戦う武器になるようなものができないかなということを考えています。
 それと、このごろ地方自治体のビジョンづくりなどでも、概念的な政策だけではなくて、それに付随してちゃんとアクションプランというのをつくって、非常に実行力のあるものを出すということが多いと思います。ですから、先ほど根木委員もおっしゃっていましたが、基本的な方針の中でどれぐらい具体的に盛り込めるかわかりませんけれども、政策レベルまで落とし込めるような具体性を持ったものも、可能な限り盛り込むことができたらいいと思います。
 それから、もう1点だけ、今回からNHKの田村委員が委員にご就任いただいていますので、国の審議会でも、例えば経済財政諮問会議などは頻繁にニュースに出ますよね。ですから、ぜひこの文化審議会を頻繁にニュースに取り上げていただいて、文化政策というものがあり、こういう審議会で議論しているのだということを、多くの国民の皆さんに知っていただけたらと思いました。

○米屋委員 私は、舞台芸術芸能の分野の、それを職能としている人たちを束ねるような団体に勤務しておりますので、プロの芸術家あるいはその周りで働いている人たちというところに近しい者なのですが、1990年に芸文振基金ができ、また基本法ができて以降、国の文化予算、公的な支援は増えていますので、そういったところではよくなってきていると思いながら、本当によくなっているのだろうかという疑問が一方で本当に膨らんでもいます。
 それはどういうことかと考えますと、先ほど来、文化とは何だろうというようなことがしばしば議論されているのですが、これを一番大きくとりますと、日々の人間の営みの総体というようなことになるかと思います。そこで私が重要だなというのは、繰り返しや積み重ねであるとか継続していくというようなことなのだと思うのです。
 ところが、これまでの文化政策というのは、何か芸術というのは作品であったり、イベントを客体として起こせばいい、配給すればいいというようなところでとどまりがちで、継続的にそれにアプローチしていく姿勢を育てるという視点では、文化政策が語られてこなかった、施策が行われてきてなかったのではないかということを感じております。
 ですので、先ほど子供ということと青少年というお話がありましたが、もう少し大人も含めて、次世代に何を伝えていくのかという視点から、その継続というものをどのように考えていくのかということを考えつつ、今期の部会に参加したいと思っています。
 1つ、つい最近私どもで開催したある伝統芸能のお家元が、ほかの分野の実演会に向けて行ったワークショップでのワンシーンがとても印象的だったのでご披露しますと、その方は伝統を担っていくということは、保存と継承と、その後一呼吸置いて、破壊であるとおっしゃられて、周りにいた俳優や他の方々は、一瞬息をのんだのですね。
 その方は、漫然と伝えていくだけではいけなくて、普通ここは発展というふうな文化政策の言葉なのだと思うのですが、発展させるということは、多分ある部分壊して、それで取捨選択しつつ発展させていくことなのだと。それを破壊という言葉でおっしゃったのだと思うのです。
 先ほど、継続が大事だと言ったのですが、今あるものをすべて継続すると、漫然と継続するということではなくて、取捨選択しつつ、では次の世代に何を伝えていこうとするのかという視点で考えなければならないと。ただし、ここの取捨選択をだれがするのかということになると、多分国民一人一人ということになるのでしょうが、そこに行政や政府がどのようにかかわるのかというのは、非常に重要な問題なのではないかと思っております。
 ですので、芸術作品、すぐれた芸能というようなものは、人々の心の豊かさを誘発する大きなきっかけを提供するものなのですけれども、やはりそれはある点にすぎず、それを囲む日常継続性というようなものをどんなふうにつくっていくのかと言ったときに、選択するということをどんな仕組みにしていくのかということが大事であると思っています。

○青木部会長 大変貴重なご意見をいただきまして、今後、今いただきましたご意見を反映させながら議論を深めてまいりたいと思います。
 やはり国の文化芸術の振興に関する役割は非常に大きくて、歴史的にも現在も文化が非常に魅力ある国とか、あるいは地方都市とか、そういうところはもう非常に戦略的な文化振興をやってきた。ルネッサンスのまさにフィレンツェなどの都市でもそういう代表的なものがあります。それを現代日本でどういうふうに生かすか。最近では、韓国が金大中政権のときに方向転換をして、韓流が大きく注目されました。ですから、それは確かに重要だと思います。保存も含めて、国がどういう姿勢で文化を振興していくかについて、今後文化政策を確かにアピールしていくような方向での、ダイナミックな政策案ができればありがたいと思います。

○岡田委員 音楽文化について一言申し上げたいことがあるのですけれども、手短に申し上げます。
 レコード・テープなどに再販制度がかかっているのですけれども、それが今廃止されようという動きがあります。再販制度というのは、まさに文化政策でありまして、再販制度によって音楽文化というものがある意味でバックアップされているわけです。
 それで、もしも再販制度が外れてしまうと、売れるものしかつくれなくなる。売れないもの、売れないものの中には、童謡だとかお琴だとか純邦楽だとか、そういうものもありまして、そしていい音楽だけも売れないもの、売りにくいものもあるわけです。そして、アーティストだって出ればすぐスターになれるかというと、5年10年かかってやっと日の目を見る人もいれば、楽曲にしても2年3年と、人の心につながれていってやっと日の目を見るいい歌もあります。
 そのようなものが、育てたり守ったりしなければいけないものが、切り捨てられていくというおそれがあります。なぜかというと、レコード会社というのは文化的側面を持ちながら経済行為をやっているわけで、売れないものをつくって赤字を出していく訳にはいかないのです。
 そこで、そういう状況になってしまうと、音楽文化というものが非常に薄っぺらいものになってしまう。売れるものしかつくらないということは、売れないもののよさが無視されてしまう。人間の心も、売れているものだけ聞けばいいのだという、売れないものの中にいいものを見つける楽しみもなくなってしまえば、そういう奥深さがなくなってしまうと思います。
 それで、今、私はここで再販制度の廃止に反対をしたいと思います。

○青木部会長 それでは、事務局より、次回の日程についてご説明をお願いします。

○事務局 <次回の日程について説明>

○青木部会長 それでは、これで閉会とさせていただきます。本日はありがとうございました。

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