文化審議会第4期文化政策部会(第7回)議事録

1. 日時

平成18年6月22日(金) 14:00~16:30

2. 場所

霞ヶ関東京會館 35階 シルバースタールーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 伊藤委員 上原委員 岡田委員 河井委員 川村委員 熊倉委員 嶋田委員 白石委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 
富澤委員 根木委員 中島委員 真室委員 山西委員 横川委員 米屋委員

(事務局)

加茂川文化庁次長 辰野審議官 高塩文化部長 岩橋文化財部長 亀井文化財鑑査官 竹下政策課長 他

(欠席委員)

尾高委員 松岡委員 吉本委員

4.議題

  1. (1)中間まとめに向けた論点整理(2)
  2. (2)その他

5.議事

○青木部会長 文化審議会第4期文化政策部会(第7回)を開催させていただきます。

○事務局 <配布資料の確認>

○青木部会長 前回に引き続きまして「中間まとめに向けた論点整理」を行いたいと思っております。前半は「第2次基本方針における基本姿勢」について審議を行い、後半は「今後5年間で重点的に取り組むべき事項」に関しまして、本日も継続してご審議いただきたいと考えております。
 6月15日の(木)に開催されました作業チームの会議では、中間まとめにおいて何を前面に打ち出していくかということを中心に議論を行いました。議論の結果、中間まとめ全体の構成案をお示しした上で、新しい基本方針における基本姿勢及び今後5年間で重点的に取り組むべき事項に関しまして、さらに集中してご議論をいただきたいということでございます。中間まとめで特に重要と思われる部分を固めていってはどうかという考えが作業チームでは結論的にまとまりましたので、皆様にお伺いする次第でございます。
 本日は資料2で中間まとめの全体の構成案をお示ししておりますが、資料3として該当項目である「3.基本姿勢」と「4.重点事項」を抜粋して配付してございます。
 この基本姿勢については、柱として3つの項目を掲げております。まず、文化の持つ力、すなわち「文化力」の意義、重要性が近年国内外において大変高まっていることを受けまして、(1)として『「文化力」による国づくり』。(2)として『「文化力」で地域から日本を元気に』ということを掲げました。(3)としては『地方分権を踏まえた文化芸術振興における国の役割』を掲げております。
 アメリカの文化外交などで「ソフトパワー」という言葉がよく使われまして、それにある種対応するような形で「文化力」という言葉が出てきました。これは文化の持つ影響力について世界的にも認識が強まっている。世界規模で国の「文化力」を高める国際競争が展開され始めたということが一つ大きな理由であります。これは特に近隣諸国の文化政策あるいは文化外交の攻勢がかなり強くなっておりまして、そういう国際環境もございます。
 そして、文化と経済の関係については、前回もご議論いただきましたけれども、「文化は経済活動において新たな需要や高い付加価値を生み出す源泉となり、文化と経済は車の両輪のように作用し合うことにより社会に活力をもたらすものである」「文化芸術は国の経済力を支える要素となってきている」ということをはっきりと示すということであります。
 また、文化芸術の享受、支援、創造、伝承のサイクルが循環する社会を構築するとともに、文化芸術を国民一人一人が支えていく環境を醸成する必要があることを6つ目として記述しております。
 また、社会システムの効率化、合理化の傾向の中で、文化芸術の特質を踏まえまして、長期的で、継続的な視点に立った施策を推進することが求められるということであります。文化芸術活動に短期的な経済的効率性を一律に求めるということは、本質的に文化芸術の特質になじまないということをもっと国民の理解を得るようにすることが必要であると、8つ目に記述してあります。
 9つ目として、特に文化財の保護に関しましては、保存技術や材料の特殊性が配慮されるべきであるということを念頭に置いていると思います。
 2ページ目の(2)『「文化力」で地域から日本を元気に』ということですが、「文化力」で地域社会全体を活性化させ、魅力ある社会づくりを推進する動きが各地で展開されてきている、これは1つ目のところに書いてあります。
 また、少子高齢化、地方の過疎の進展により、地域文化の担い手が不足しているということ、その継承についての見直しが迫られていることを2つ目に指摘しております。
 それから(3)の『地方分権を踏まえた文化芸術振興における国の役割』ですが、これは地方分権を進める政府方針を踏まえまして、文化芸術振興における国の役割を再検討する必要があるということ(3つ目)、それから文化芸術活動は国民の自主的、自発的な営みであり、文化芸術政策においても行政の役割は国民生活に近い地方公共団体が担うことが期待されていること、国として保護・継承し、創造してくべきものに対しては、国が直接かつ重点的に支援することが必要であるということを指摘しております。
 そして、前回の部会での議論を踏まえまして、国が法令、税制等のシステムを構築する際にも、文化芸術の特質に配慮することが必要であるということを5つ目として挙げております。
 それでは、資料3の「3.第2次基本方針における基本姿勢」について、自由に質疑、意見交換を行いたいと思います。

○河井委員 日立市でもオペラづくりを全国でやっている人たちに集まっていただいてオペラフォーラムをやっておりますし、それ以外にも全国的には山車のサミット、あるいは人形芝居のサミット、地芝居、芝居小屋、それぞれの分野でいろいろな組織をつくって活躍している人たちが情報交換しております。そういう地域でやっている人たちが日本の文化の基礎を支え、発展させているのではないかという感を強くしております。
 それから、日立市でも子どもの文化環境を少しでもよくしようということで、文化庁の補助事業の文化体験プログラムを契機にしまして文化少年団をつくっておりますけれども、文化の未来を考えますと、もっともっと子どもの文化活動を促進しなければならないというふうに意を強くしております。
 長期的に考えときに、やはり地域の文化振興とか、子どもの文化活動の促進というのをじっくり構えてやる必要があるのではないかと思っております。

○青木部会長 最初は基本姿勢について、「文化力」とか、これについて何かつけ加えることとかご指摘がございましたら、お願いします。

○河井委員 1番目の「文化力」による国づくりの中で、副題として「グローバル化」という言葉がありますけれども、じっくり腰を落ちつけて、日本の過去、現在、未来を見据えた芸術活動が必要かなと思っております。
 国におかれましても、地方政府である市町村、都道府県それぞれの地域での文化活動を促進する必要がありますし、中央政府である国自身がやる必要があると思っております。

○田村(孝)委員 「文化力」が国の力であるということに反対するわけではございませんけれども、福沢諭吉が、国の光は、芸術によって発すると言っております。「観光」も力を観るわけではなくて光を観るわけです。「国力」を広辞苑でひきますと、「主に経済力」と書いてあります。「国の力」という言葉にいろいろな意味があるということはよくわかりますけれども、その辺はいかがなるものかなと。

○青木部会長 「文化力」イコール「国力」だと。

○田村(孝)委員 「国威」、「国力」とは違うのではないかと、最終的には「国の力」ではあるのですけれども。

○上原委員 逆に言うと、「経済力」ばかりではなく、「文化が持つ力」イコール「国の力」という時代になってきたんだという意味で、ここに「国の力」と入れることにそう違和感はないのですが、いかがでしょうか。
 それから、3の(1)の位置づけですが、突然『「文化力」による国づくり』とくるので違和感があるわけです。もっと本質的な文化の力があるのではないでしょうか。

○嶋田委員 今まで文化は自分たちには関係ないと思っていた人たちの意識を少し集約できるということで、こういう新しい視点は絶対必要なのではないかと思っていたので賛成です。
「文化芸術」と言った場合と「文化」と言った場合には、どういう意味の差があるのだろうか、あるいは「文化を形成する芸術は」と言いかえるのだろうかとか、ここがわかりづらいというのが1点です。
 もう1点は、最後から6行目の「文化芸術の特質になじまないことについて国民の理解を得ることが必要」という文言で、私が理解しているのは、文化とは公益のものだから、利益のあるなしにかかわらず国としてやらなければいけないんだということを主張してはいけないのだろうかというところを明確にすることによって、今日本で起こっているいろいろなことの方向性が整理できるのかなと思ったのです。

○青木部会長 どういうような表現を使ったらいいでしょうか。

○嶋田委員 「我が国の構造改革」の最後、「文化芸術の特質になじまないことについて国民の理解を得ることが必要」というところが、文化芸術というのは、公益性のあるものだから、利益のあるなしにかかわらず、国として必要なんだという視点が崩れると、利益ということと同じ視点で文化を語らなければならなくなってくるのではないかと思うのです。

○横川委員 例えばフランスにしてもそうですけれども、文化というのは国そのものだと思うのです。国づくりそのものと文化というのは、フランスやイギリスでは一体化していると思うのです。もともと日本も古くから文化と国というのは一体化していたと思うのです。ですけれども、先ほど来出ているように、経済的な意味合いが非常に強くなりましたので、今田村委員からお話が出たようなことで、そのあたりのところが理解されないのかなと思っております。

○青木部会長 どういうような言い方にしたらいいですか。

○伊藤委員 「文化力」という言葉がキーワードであると考えた場合、私は「文化力」という言葉に対しては違和感は感じるのですが、もっと明確に「文化力」とは何かということについて述べておかないと、非常に便利な言葉で使われていくのではないかという気がするわけです。各人がイメージするものを通して、これこそ「文化力」だという形で使われていくと、政策としてはあまり有効ではないという気がしています。
 文化には大きく二つの意味があって、一つは個々の文化的活動であったり、成果があると思います。こういったものは振興することは可能ですが、ここで言う「文化力」の文化というのは、多くの人たちに共有され、継承されて、そして根づいていったときに「文化力」の文化になるのではないかと思っています。そのためには、個々の文化芸術の活動の振興だけではなくて、長期的な視点の中で、地域社会、あるいは国の中に根づいていくようなプロセスまでをきちんと視野に置いた形で述べていかないとまずいのではないかと思っております。
 特に(2)の「元気」という言葉と関連するのですが、「元気」という言葉も曖昧な言葉だと思いますので、例えば「持続可能性」といいますか、従来の経済的な考え方よりはもう少し長期的なスパンに立って、それが人々の間にきちんと定着していくプロセスを強調して、そのための政策を基本方針の中に明確に書いていくという形にすると(1)と(2)がもう少し明確に、具体的になってくるのではないかという気がしています。

○岡田委員 私は、「文化力」が「国の力」であるということを言うことに反対ではございません。文化の持つ力が今や「国の力」であると言っても過言ではないような時代になってきているという意味合いだと思います。
 その理由として、文化が経済の柱として新しく立ったということです。知財などの戦略会議が持たれて、そして国の経済の柱として一つ立った。そういうことを踏まえ、1ページの一番下に「文化芸術(特にメディア芸術)の知的産業としての一面を踏まえた」というところを、「文化と経済は車の両輪」というところに持ってきて、実際に知的な創造活動、文化芸術が産業としてお金を稼ぐ一つの柱となりつつあるということを、ここで明確に言った方がいいような気がします。
 私はかねがね文部科学省が一番頑張ってもらわないと日本はよくならないと思っておりますので、文部科学省、文化庁の皆さん方に、ぜひとも『「文化力」による国づくり』を一生懸命やってもらいたいと思っております。

○川村委員 私は『「文化力」により国づくり』というのは大変結構なことだと思っております。
 1ページの下から10行目あたりに「文化芸術の特質を踏まえ、長期的で継続的な視点」とありますが、もう少しここを強く、「危惧される状況も生まれてきている。優れた文化芸術の創造には、長期的な取り組みが不可欠」と言い切っていただいて、次の「我が国の構造改革」の中で、「効率性を一律に求めることは極めて不可欠」と言っていただいた方がより明確になるのではないかという点が1点でございます。
 もう1点は、下から5行目の「文化財」の部分ですが、今の文化財を取り巻く状況の中で、基本的な問題として何が一番問題かといえば、文化財を個別に、これは芸術的な価値があるから、これは歴史的な価値があるから、これは鑑賞の価値があるからと、ばらばらにやっていたわけです。高松塚は、まさに壁面は絵画上の価値があるから国宝で、石室は歴史的な価値があるから特別史跡だと、こういうことの中でああいう事件が起こったわけです。
 今、文化財に対して国民が求めている価値観が多面化していると思うのです。国宝だから、名勝だからというのではなくて、その文化財のある空間の中で心の安らぎを覚えたり、それを材料にして地域の活性化を図る。ですから、文化財の保護で、ぜひ文化庁で取り組んでいただきたいのは、文化財を総合的なものとしてとらえるということではないかと思っております。

○青木部会長 それぞれの区分けはあるけれども、まず、総合的に、これは文化財だということですね。

○富澤委員 「国力」と言いますけれども、その時代時代の背景があって、変遷があるだろうと思うのです。日本の場合は、近代国家になってから、やはり国の力をどうやってつけていくか、それを対外的に示していくかということは大事なテーマになってきて、明治の時代は、まず経済力を養って、軍事力を強化する。言いかえれば、軍事力と経済力が国力の象徴で国民もそこへ心を一つにしてきたわけです。
 第二次大戦後はアメリカの膨大な軍事力に頼り、経済力一本に絞ってきたのが戦後の日本の姿ではないかと思うのです。
 確かに世界でも有数の経済大国になった。しかし、考えてみると、経済力だけではなかなか国の品格も出てきませんし、やはり何かもう一つ必要だなと考え始めたのが今の日本ではないかと思うのです。それが文化庁がここ数年進めている「文化力」というもので、やはり文化というものがあってこそ国の力、あるいは国民の求心力、あるいは活力が生まれてくるだろうということがここに書いてあるし、私もかねてそういう主張をしてきたわけです。
 「文化力」という言葉はまだなじんでおりませんけれども、やはり文化をもってする力、文化が醸し出す、あるいは発揮する力というのは非常に大きなものがあって、今までの経済力プラスアルファということでバランスも非常によくなってくるのではないかと思います。対外的にもそれはアピールする大きな力になると思うわけであります。
 むしろもっと強く文化をもって国づくりをするとか、あるいは言い方としては「文化国家を目指す」とか、そういう表現まで踏み込んでもいいのではないか。私は憲法の中にそういうものを盛り込むぐらいの気持ちでやった方がいいなということを思っております。
 特にアジアの国、この間、青木先生が新聞に書いておられましたけれども、韓国などもまさにそういう姿勢ですし、中国も膨大な金を使って文化を織り込もうとしています。ここで経済プラスアルファで文化、文化によって国をつくるということをはっきり主張した方が、国民あるいは市民の方でもわかりやすいのではないかと考えております。

○伊藤委員 文化というのは、ある面では、後半の方に書いてあるように、効率性の尺度、つまり定量化しにくいものであることを一方で書きつつ、「文化力」という形で国力をはかるような形の言い方をすると非常に指数化されやすいような部分を持っていて、ここにも「文化力」という言葉の持つ曖昧性が端的にあらわれているのではないかという気がしているので、もう少しきちんと「文化力」とは何かということについてワンフレーズ書き込まないといけないのではないかという気がしています。

○上原委員 先ほど富澤委員がおっしゃったことに賛成ですが、経済プラスアルファではなくて、今や「文化力」がないと経済力も保っていけないという時代になっていると思います。

○田村(和)委員 総論の最初のところのキーワードは多分「文化力」という言葉と「サイクル」という言葉と、そのあとの(2)、(3)に出てくる「地域」という話だと思うのです。「文化力」という言葉はこのレポートの一種のシンボル、言霊だろうと思います。それから「サイクル」は国や自治体がどういうことを中心に文化行政を進めていくかというときの基本になる言葉だと思うのです。それから「地域」という言葉は、分権という言葉とあわせて、文化が展開していく場所、舞台の話をするだろうと思うのです。
 最初に「文化力」という言葉が出るのですが、この中で一つ抜けているのは「社会力」だと思うのです。この中で経済力と対比されるので、「国の華」というか、国力になってしまうのですが、実は、文化というのは、もちろんこれからは国の光華を見る非常に輝やいた部分になると思うのです。『「文化力」により国づくり』というのは、「文化力」というのは社会とか経済をつくる基礎体力だろうと思うのです。「文化力」をただフラットにとらえるのではなくて、社会力とか経済力との関係性でとらえるべきだろうと思っています。
 そういう意味で言いますと、社会力というのは、都市づくりや社会政策、都市政策の中で、例えば福祉、医療、保険、安全、防災などに関して、今我々の社会が持っている自力でやっていく、内在的な力を言うわけです。こういうものの基礎になっているのが「文化力」なんだという解釈をされると、ここの『「文化力」により国づくり』は読めるのではないかと考えております。
 それから、先ほど嶋田委員が1ページの下から3番目のパラグラフに対して消極的とおっしゃったのですが、私もまさにそう思います。これだけ時代が変わった中で、文化なり文化施策、文化行政そのものが構造改革されていいんだろうと思うのです。そういう意味でここの表現を、「国民の理解を得ることが必要」というような消極的な言い方ではなくて、もっと積極的な言い方をすることができるのではないかと思っています。
 基本法ができて、その前後に「文化を再発見する」とか、「立ちどまって考えよう」とか、「文化による日本の蘇生」というような標語が出ているのです。改めて文化を国づくりの中で再評価してみようという時代だったと思うのですが、今度は、このレポートができる背景の中で、時代にあわせて「文化力」に凝縮してきたものを、今度は我々はどんどん使っていこうではないかと、そういう積極的な意味でこの「文化力」というのを使ったのではないかというふうに考えています。生命力を持った言葉として解釈していただきたいと思っております。

○青木部会長 やはりイメージが非常に大切ですから、5年後の見直しということですから、非常に新鮮なイメージで、この5年間でかなり社会そのものも変わってきておりますから、そこに訴えるようなことを文言としても示さなければいけません。

○中島委員 全体的にどういうふうにまとめられるかということだと思うのです。羅列という形にしか見えないと困るなということがあります。「文化力」が果たす役割というのは、各項目を見ておりますと、今のシステムではだめだということをはっきり言った方がいいと思うのです。いい部分は残さなければいけないのですけれども、保護の部分とか、これから伸ばしていかなければいけないという部分も全部含めて、これから新しくシステムを整備していくことが国の役割であるという、基本的な、シンプルな前段が一つあると個々に入りやすいのかなと思います。最終的にまとめていかれるときに、一つの段取りを持ったプロセスでやると「文化力」もドーンと来ると思います。

○青木部会長 「文化力」については、今のご議論でよろしいでしょうか。かなりのご意見をいただいたと思いますけれども、「文化力」にかわる言葉はなかなかないですね。

○富澤委員 文化をもっと大事にして、国の施策の中で中心に据えていくべきだということが(1)だとすれば、それと同様に非常に重要なのは(2)であって、やはり文化というのは、従来から言われているように、各地域でいろいろな文化があって、それが各地を活性化していくということだと思うのです。
 市町村合併などがあって、それと公共事業の削減という経済のプレッシャーがあって、地方がかなり疲弊しているのです。それを活性化していくのはやはり文化だろうということが、この(2)だと思うのです。
「YOSAKOIソーラン」という歴史の新しいお祭りがありますが、今北海道の中では一番元気のいい文化行事ではないかと思うのです。ああいうものが市民の活力として生まれ出されているということが、非常に大きな元気のもとになるなという感じがしたのです。まさに日本全体として文化を中心に据えていく中で、一方で各地域の文化をどのように育てていくかということを、ここでもう少し強くうたっていきたいという感じがします。

○岡田委員 先ほど「社会力」という言葉が出ましたけれども、(2)の中に「社会力」という言葉をまぜてもらいたいと思うのです。常々青少年のモラルが低下していることだとか、非常にお行儀が悪くなったり、言葉遣いも汚くなっていることに関して、社会、コミュニティが何かできないかということは申し上げてきたのですけれども、ここで文化と、そして生きている人間のモラルというのは文化そのものであるということを再認識した上で、「文化力」が社会力を使って何かを変えていくという力になってもらえればいいと思います。
 今の「YOSAKOIソーラン」のことですけれども、大きなお祭りをやる地域というのは、小さい子どもからお年寄りまで、一つになる機会が少なくとも1年に1回はあるわけです。そういうものも社会力の一つだと思いますし、社会力という言葉を入れることで、心がばらばらな人たちのまとまりというものを探し求めていけたらいいなと思います。

○山西委員 (1)には国づくりと「文化力」の問題はかなり書き込んであるんです。これで文化の重要性というのはかなり出てくるかなと思います。(2)に行くと、これが誰をターゲットにするのか、いわゆる社会力、人間力の部分ではないかと思うのです。どうもここが要素として少ないかどうかということが一つと、(3)でいわゆる「団塊の世代」だけを特筆して考えていいものかどうかというところです。ここの議論の中でも確かにシニア時代が大事だという話は出たんだろうと思いますが、むしろ元気にさせるには、異世代とか、年代を超えて本物に触れていく、あるいは文化活動に親しんだり、継承したりしていくという、もう少し幅広い枠組みでのまとめ方がいいのかなと感じました。

○青木部会長 この『「文化力」で地域から日本を元気に』という言い方についても、もっと効果的な言い方がありましたら、言っていただきたいと思います。

○伊藤委員 先ほど元気という言葉が曖昧だということが出たのですが、例えば地場産業の問題だとか、あるいはまちづくり三法の改正に基づいて、文化が大きな柱になっていく可能性は非常に高いと思います。具体的に元気にするということはどういうことなのか。シニア、団塊の世代が元気になるというのも一つには違いないのですし、先ほど山西委員がおっしゃったように、異世代の交流だとか、あるいは私は「社会力」という言葉もいいと思うのですけれども、「市民力」という言葉でもいいと思います。地域に暮らす人たちが自分たちの地域をよくするために何ができるのかという、場を与えていくようなチャンス、こういったことが少し強調されるといいという気がしています。

○青木部会長 「文化力」「社会力」「知識力」「老人力」とか、ずっとつながっていくので、やはり「文化力」を際立たせるためには「社会」という文言は必要ですよね。それから、おっしゃったようにどういう人をターゲットにするかということ、それはもう少し具体的に盛り込んだ方がいいかもしれません。

○上原委員 (2)がイコール(1)だと思うのです。地域が元気になってはじめて国が元気になるので、書き方の問題だと思うのです。「国力」というのはこういうことなんですよと、ここの文章の一番最初にそういうことを書いたらいいのではないかと思います。
 (1)を受けて(2)があるんだということになるのではないかと思うのですが、それは作文の仕方かもしれません。

○青木部会長 それは重要ですね。

○白石委員 今までいろいろな委員の方から出ておりましたけれども、本当に地域の元気さというのが、まさに国の文化をつくる源泉だと思うのです。地域ということを考えると、確かにある世代だけで何かをするということは地域の活性化にはつながらない。ここで「伝統文化をはじめとする地域文化の継承」というのも消極的かなと思うのです。もっと積極的な言葉遣いをしてほしいと思うのです。

○青木部会長 「継承」のほかに何がありますか。

○白石委員 例えば継承して新しい文化をつくっていくというような文言が入った方がいいと思うのです。

○青木部会長 文化の創造を支援してきたというふうに。

○白石委員 それと世代間の問題は地域には絶対欠かせないことだろうと思うのです。それがないと本当の地域の生きた文化というのは出てこないだろうと思うので、一つの世代と固定しないで書いていただきたいと思います。

○青木部会長 世代間の継承というか、発展というか、創造的な発展、創造的な継承でもいいですね、そういうものがきちんとうたわれる必要があると。今はどこでも団塊ばかりで、定年だとか、変な話ですよね。わかりました。それも重要なことだと思います。

○中島委員 「団塊、団塊と言わんでくれ」と青木先生がおっしゃったけれども、私はやはり団塊しかないかなと思っているのです。ある程度経済的な余裕を持って、もう一回地域に目を向けていくということは。若者はどうやっても大都市に来ます。ものすごく豊かな自然に目を向けるのは、現地の人たち、地域に住んでいる人は面倒くさいんです。だけど、都会にいる人がもう一回自分が育ったところに目を向けたときに何かが発見できて、そこを活性化していこうという動きは、意外と団塊がキーになっていくような気がしています。地域に対して中央というものがあるとするならば、一つの都市部から地域に対してまなざしを向けていくことというのは、現実問題として、向こうも求めておりますし、必要だと思いますので、それは団塊も重要であるぞということです。

○根木委員 先ほど「社会力」とか「市民力」とかいろいろな言葉が出てきておりまして、そのこと自体はそのとおりだろうと思うのですけれども、もともと「文化力」そのものが非常に曖昧な概念である上に、さらに「社会力」だとか「市民力」だとか、そういった言葉をあまり羅列するとますますこんがらがって訳がわからなくなるということがあろうかと思います。
 今までの議論では、コミュニティ形成論の域まで入り込んだような感じを受けておりまして、文化政策のあり方ということであれば、その辺ある程度のたがをはめた上で、少し焦点を絞って議論をした方がいいのではないか。したがって、「社会力」とか「市民力」というのは気持ちの上でベースに置きながら、文章表現をするということの方がベターではないかという感じがしているのですけれども、いかがなものでございましょうか。

○青木部会長 これは「社会」という言葉は使った方がいいと思うのです。

○横川委員 今市町村合併で、小さな村や地域は吸収され、伝統的な文化なり、芸能なりが失われていくというのが一番心配な部分です。確かに市町村合併とかということは経済的な意味合いというのが背景にあると思うのですが、そのあたりを念頭に置いていただければと思っております。

○田村(和)委員 (2)と(3)の関係ですが、(2)で少子高齢化と市町村合併の話、大きな社会変化と考えられるということですけれども、この中にもう一つ、情報とか経済力などの面での地域格差というのが大きくなっているということも今回の状況の中では入れるべきではないかという感じがしております。
 (3)の関係でいきますと、地方分権を踏まえたという話は、実はその範疇に入る言葉であって、地方分権というのは、何なのかという主張が少ないような気がしているのです。ここで語らなければいけないことは、今まで安定的だった地域社会が、こういう要素によってまた一段と変わってきたんだと、従来の文化創造基盤が大きく変わったんだということがベースにならなければいけないので、地域の変容というのをもう少し書くことと、一般的に地域がベースであるということは事実なのですが、第2次基本方針は端境期にあるんだということをもう少し打ち出すべきだという気がしています。
 特に、前半に文化のサイクルということを書かれているのですが、地域づくりなどに反映される、一種の「文化の地産地消」といいますか、そのあたりの話と今の状況論をもう少し的確に書かなければいけないかなという気がしています。

○青木部会長 それでは、そろそろ(3)に移りましょう。

○米屋委員 「文化力」というところは皆様積極的に打ち出すべきだというトーンの割には、(3)が「民間や地方公共団体による施策の及ばない部分を国が補うという考え方に立ちつつ」という非常に消極的な表現になっているのです。やはり国としてやるべきことはあると思いますし、役割分担を踏まえつつ、特に創造性など、国でしかできないことはもっと強力に担っていくということが入らないとまずいのではないかと思います。

○青木部会長 どのように言ったらいいでしょうか。

○米屋委員 「補う」ということではなくて、「民間や地方公共団体による施策と役割分担しつつ」ということです。国が担うべきことを担っていくということです。

○川村委員 まず第一義的には地方でやれと、それでもう一つ国が直轄でやるものはやると、書いてあるわけです。基本的には地方自治体がやったもので国が補うというのはいいでしょう。しかし、まず国としてやるべきことは地方との連携とか対話によるきちんとした協力システムをつくるということだと思うのです。ですから、文章的にいえば、考え方に立ちつつ、地方との連携・対話に立った協力システムの創出ということをきちんとやれということを書いていただくことです。
 もう一つ気になる文言を言いますと、国としてやるべきものは国が直接やる、国が直営で芸術文化活動をやる、というのはいかがなものか。国が責任を持ってやるというのならわかるのですけれども、国が直接舞台づくりをやったり、文化財保護をやったりすることがいいのかどうか、責任があるということと直接やるということとは別だと思うのです。ですから、この「直接かつ」は「国が責任を持って」と改めていただいた方がいいのではないかと思います。

○青木部会長 「直接」という言葉を入れることによって国がやらなければいけないということなのか、「責任を持つ」と言うと曖昧になるのか、その辺のことは若干問題が残ると思いますけれども。

○伊藤委員 「直接」という言葉は誤解を受けやすい表現だと思っております。
 その前にもう一回整理してみますと、この(1)、(2)、(3)は、(1)が「文化力」というキーワードを提出して、(2)は「文化力」が実際に現場でどう見えてくるかという形で地域と人という問題に焦点を当てた。(3)はそれを実現するための方法論を提起すべき内容ではないかと思っております。地方分権化も重要ですが、「民間化」という動き、大きな意味で二つの分権化、官から民へ、中央から地方へといった流れで「民間化」ということを強調してほしいと思います。特にNPOだとか、さまざまな動き、可能性を今後大きな柱にしていくということが課題になってくるのではないかと思います。
 それから、次の章の中身のところで重要な項目である『文化芸術創造活動への戦略的支援』につながってくるポイントになる基本的考え方を提示しなければいけないのではないかと思っております。
 新しい仕組みを模索する、検討していくんだという強いを姿勢を書き込むべきではないかという気がしております。

○上原委員 (3)は3つ目が一体何をしようとしているのか全く見えないのです。地方分権を進める政府方針を踏まえて、国の役割を再検討する必要があると書かれているのですが、一体それで国は何をしようとしているのかがわからない。
 それから、一番最後は、国の役割の最も大きいことの一つが、法令、税制等のシステムを構築するということが国の大きな役割であろうと、何度も申し上げましたけれども、それを強調して、構築に向けて検討するべきであるとか、これからの5カ年にやるべき施策の最も大切なことの一つに挙げられないかなと思います。

○青木部会長 これはむしろ「国が法令、税制等の文化支援システム」でしょうね。

○上原委員 「にも」という弱い書き方ではなくて、「構築することが求められる」。その際には、芸術文化の現状と未来を展望しながら発展を支える仕組みをつくることが大切ぐらいの強い言い方をしないといけないのではないかと思っています。

○青木部会長 それはきちんと国に要求するべきだと思います。

○富澤委員 市町村合併とか、今進められている国と地方の関係というのは、基本的には経済合理性を求めてやっているわけです。そういうことによって地方の文化も疲弊をしていって、おかしくなっているのが現状ですから、「政府方針を踏まえ」ではなくて、国として、文化政策として、そういうものと相反しても、それを支援していく。
 それから、最後のところの「文化芸術の特質に配慮する」と言ってもよくわからないので、むしろ地方が文化活動をいろいろ活発化する、活性化する上で、活動しやすくする、エネルギーを出しやすくする。そのために法令もあるいは税制も変えていくと、ぜひお願いしたいと思います。

○青木部会長 次に、「今後5年間で重点的に取り組むべき事項」に関しまして皆様のご検討をお願いしたいと思います。ここには(1)から(5)までありますが、全体の構成も含めまして、あるいは文言なども含めまして、ご意見を賜ればと思います。

○川村委員 字句的なことを言うと、「伝統文化(芸能及び保存技術)」と限定されるのかよくわからないので、「伝統文化の継承者」でいいのではないか。「生まれやすい」というか「育ちやすい環境整備」だと思います。
 特に申し上げたいのは、「また、将来的には産業として成り立つシステム」、伝統文化に従事する人が産業として成り立つということは求めるべきではない。彼らが職業として成り立って生活ができるということと、それが産業として世の中で成り立つということは必ずしもイコールではないと思うのです。つまり伝統文化を伝えていくためには、彼らが職人として成り立つだけの仕事がなければいけない。その場合に、それが産業として、民間ベースだけでやったのでは絶対に成り立たないわけですから。言い方はよくないけれども、一種の公共事業ではないかと思います。熊本城の本丸御殿を修復したり、名古屋城の本丸をつくったりというのは、言うならば公共事業です。そこへ公共的な資金が投入されているわけです。そうしてそういう技術を持った人が経済的に成り立つ、こういう趣旨で、改めていただければありがたいと思います。

○上原委員 (1)として人材の育成よりも、むしろ先ほど言ったような基本的な文化芸術を支える仕組みの構築ということがぜひあってほしいと思います。

○青木部会長 それは5点に入っていないということですか。

○上原委員 入っているとは思えないです。「戦略的支援」のところに入れるのでしょうか。最もやるべきことはそういうことではないかと思っているのですが、いかがでしょうか。

○青木部会長 それは新しい項目を立てるということですか。

○上原委員 「文化芸術を支える仕組みの構築に向けて」とか「検討」とか、「構築」というのはきついなら、「検討」とか、そういう言葉を入れてもいいので、項目を起こしてほしいと思います。

○青木部会長 「構築」の方がいいかもしれません。そういうことを一つ立てろということですね。

○河井委員 一番上ですけれども、「国民」の次の括弧書きに「(芸術家及び支援者、鑑賞者)」とありますけれども、「表現者」としては芸術家しか入ってこない。一般国民の表現活動を国としても支援してほしいということなので、ここは括弧書きがない方がいいのかなという気がします。「芸術家」に限定するのはちょっと狭いのではないかという気がします。

○米屋委員 私は、むしろ国の重点ということにかかわってくるということになると、専門性というところがもう少し強調されてもいいのかなと思います。
 第1次の基本方針の中での留意すべき事項の5点の中で、この「今後5年間で重点的に取り組むべき事項」の中に入ってくる項目もあり得るのではないかということで考えまして、芸術家等の地位向上のための条件整備というのは二つの観点から1項目立てていただきたいと思います。6月8日に知財本部が2006年の戦略計画を発表しましたが、その中に「クリエイター大国」、「文化創造国家づくり」という言葉が入っておりますし、そことの関連と、日本舞台音響家協会の松木さんのお話の中にありましたような、働く人たち、専門家の安全性ということからのルールづくりは結構急務ではないかと思っておりますので、別項目として「芸術家等の地位向上のための条件整備」というのを6項目か7項目に入れていただきたいと思います。

○青木部会長 別項目を立てるということで、何と言ったらいいでしょうか。

○米屋委員 「芸術家等の地位向上のための条件整備」これは前の留意事項をそのまま引き継いでということです。

○岡田委員 それは(4)の文化芸術創造活動の戦略的支援というところに入るのではないかと思って、そこで私も発言したいことがあったのですけれども。

○青木部会長 (2)について何かございませんか。

○山西委員 3つ目ですけれども、私の解釈からすると、前段と後段と分かれておりまして、「また、日本の文化を理解し、親しむことを通じて日本人としての自覚を育むことを期待」、これが前段で、求心力が先にあって、遠心力が後に来るというような書き方の方がいいのではないかという気がしたところであります。言われることはよくわかるのですが、まず、「日本の文化を理解し、親しむことを通じて日本人としての自覚を育むことを期待し、また、文化の多様性を理解するために、日本の文化を愛すると同様に国際的な文化交流を進める」と前段と後半を入れかえてみたらどうかと思ったところであります。

○青木部会長 確かにそうですけれども、日本の文化、日本の文化を理解するというのはというのは何ですかね。

○上原委員 外と触れて初めてわかる国家の輪郭みたいなところがあるような気がします。
 ワーキングチームでご検討いただいた方がいいかなと思うのですが、子どもに特化していいのでしょうか。一番精神的に大きく育つ、思春期の一番多感な青少年期というのが抜け落ちていいのかなという気がしているのですが、それはいかがでしょうか。

○米屋委員 一般的な言葉の語感では、子どもというともっと小さなお子さんという感覚がすると思いますので、むしろ文化政策の理念からいくと、ここは次世代にどういうものを提供していくかとか、「次世代」というのがあって、個別の記述の中では「特に小さな子どもの場合は」という施策が言及されるという方がいいのかなという気がします。

○伊藤委員 子どものことに触れようとしたら、「子どもの権利条約」は日本もきちんと批准しているわけですので、子どもの文化に対する享受権という考え方も必要ではないという気はするのです。

○河井委員 1番目ですが、文化一般と、伝統文化、郷土文化の表現が混在しているような気がします。書き出しで、「地域において子どもが」といいますと、いかにも郷土文化のことのようですが、大事なのは、郷土文化に限らず全般について触れてもらうことなので、「地域において」を削ったらどうかと思います。「特に」以降の後段ですが、地域文化から書き出していますので、ここの「伝統文化」の前に「地域における」と入れないと、ここで地域と言いながら文化全般に広がってしまうので、地域文化の継承といえば郷土文化、地域の伝統文化、とつなげるために入れた方が話が通るかなという気がします。

○上原委員 今の記述に関して、「特に」というのは要らないのではないかと思っています。

○青木部会長 確かに日本文化というのが何かということをもっとよく考える必要がありますね。日本文化というのは世界でも創造的、活性的な存在であることも事実です。我々はそれをもっと自覚してやる必要があると思います。
 では、子どもの件はいろいろとご意見が出ましたので、(3)地域文化の振興について、何かございますか。

○上原委員 4ページの一番最後ですが、「地域の文化資源」のところに「伝統文化」と「文化財」以外にも地域の文化資源はあると思いますので、こういう限定的な書き方はいかがなものでしょうか。例えば新しくできた文化拠点とか、文化施設とか、たくさんあります。

○川村委員 ただいまの上原委員のご意見には賛成で、私もぜひそうしていただきたいと思います。「地域のさまざまな文化資源を」と言えばいいのではないかと思います。
 (3)の最初「創造活動の拠点への支援が重要」と、拠点というと、今お話が出ましたけれども、やはり公共ホールなどは非常に大きな拠点になるわけです。この審議のまとめで、公共ホール等への指定管理者制度導入の問題点が指摘されているわけですけれども、私は、公共ホールなどに指定管理者制度を導入することには大きな問題があると思っております。大きく分けて3点あると思うのです。
 1点目は、それが3年なり5年なり期間を限られてやられるので、短期的で、しかも、その間の経済的な効率性が重視される。ところが、やはり地域社会として舞台をつくっていくためには、時間的な長さはどうしても必要で、長期的な取り組みが必要だということが2点目です。
 3点目に、舞台をつくるだけではなくて、まさに住民の文化への参加活動、具体的に言えばお母さんコーラスであるとかみんなで参加をしてやっていく。そういう場合に、そういう民間の活動団体と活動家とホールとの関係が5年ごとに変わるというのでは、長期的な信頼関係が結べないと思うのです。国のつくった制度を国の審議会で言うのはどうかと思うけれども、指定管理者制度を公共ホール等へ導入することについては、よほど慎重に前後を見渡してやるべきだということを書いていただければありがたいと思います。

○上原委員 それを第1の仕組みの構築の中に、強調して1として出すべきではないか。

○川村委員 やはり指定管理者ははっきり書いていただいた方がいいように思います。

○河井委員 地域文化の振興で、「今後5年間で取り組むべき事項」に「地域での文化活動者たちの交流の促進」というのを入れていただけないでしょうか。情報交換というのは地域で活躍している人にとっては非常に重要であるし、高等学校総合文化祭、あるいは国民文化祭は地域で活躍している人にとっては交流の場として非常にありがたい場です。

○青木部会長 国がしなければいけないことですか。

○河井委員 はい。国民文化祭ですけれども、県外からの参加団体が右肩上がりで増えています。そういうことで各地方で活躍している人にとっては、国が主催してくださる国民文化祭、全国総合高校文化祭等は非常にありがたい機会だと思います。ですから、そういうような大会をもっと活発にやっていただければという意味で「交流の促進」ということが入ればありがたいと思います。

○青木部会長 地域文化の交流、地域同士の交流、全国的な規模での交流ということですね。
 それでは、今のところについてまだ問題があるかもしれませんが、(4)に入りましょう。『文化芸術創造活動の戦略的支援』についていかがでしょうか。

○岡田委員 先ほど米屋委員がおっしゃっていた条件整備はここに入れたらいかがでしょうということが一つです。
 芸術創造活動に対する支援ということは入っているのですけれども、その利用開発、そして利用開発に伴う権利保護ということが一言も書かれていないので、ぜひそれを書き込んでいただきたいと思います。権利保護のシステムの確立をぜひ強調していただきたいと思います。
 それとネット文化が悪い方向に広がっているということに対する警告、それに対するケアをどうするかということに対しても一言入れてほしいと思います。

○上原委員 (4)の3つ目「その他の助成機関等の役割分担を図るべき」という書き方になっておりますが、「その他の助成機関等の助成を総括し」、ここに「戦略的支援」という言葉が入るのではないか。役割分担というよりも戦略的支援、総括的に眺めて、文化庁所管ばかりではなくていろいろ支援があるでしょうから、そういうものを見て、戦略的に支援をしていく、どこかそういう視点が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○青木部会長 「~等の戦略的文化支援の強化を図るべき」ですか。

○上原委員 つまりさまざまな助成を総括して、「戦略的支援を行う」という言葉が使われるのではないかと思うのですが、これは「いかがでしょうか」という問いかけです。

○伊藤委員 「戦略的」という言葉は、戦略的目標が明確に示されたときに意味を持つわけです。例えば戦略的な目標の考え方の中に、3番目を考えますと、民間も含めた再助成制度というものを掲げていく、これが戦略的なのか、あるいは拠点形成を図っていくということが戦略的なのか、上の方に書かれた子どもの問題とか地域の問題とかいろいろな問題があります。したがって、最初の方の、先ほど議論し合った「文化力」、あるいはそれを生かせる場としての地域、人、あるいはそのための方法論としての国と民間と地方の役割分担のつながりがここでは一番重要になってくるポイントではないかと思っているのですが、その連関が見えてこないのでじれったい感じがしているのです。

○嶋田委員 各省庁間でも少し助成のやり方が重なっている部分もある。そこは戦略的に方向性を整備すべきなのですけれども、民間は、自由でなければいけないと思うので、民間も含めるというのはおかしい表現になるのではないかと思います。

○伊藤委員 この5項目はすべて戦略的支援のはずなのです。つまり子どもに焦点を置こうとか、人づくりに焦点を置こうという話ですから、(4)で戦略的支援というのが唐突に出てくるのがおかしいので、重点的支援イコール戦略的支援として考えた場合に、ここに入る項目を最初に持ってきて、まず仕組みをつくれ、次に人を育てろという流れになってくるのが順当ではないかと思います。そういう意味で、指定管理者制度の問題なども含めて、最初に仕組みの中で、現在の問題点と、今後こういった仕組みをやるべきであるということをもう少し検討してつけ加えて、その次に人、子ども、地域といった形で伸ばしていくというのがいいのではないかと思います。

○青木部会長 これは、その後に「メリハリを付ける」という言葉が出てきますけれども、つまりメリハリを付けることが戦略的だという意味なのでしょうね。

○田村(孝)委員 (4)の3つ目後半ですが、「国が直接支援するのではなくて、(民間を含む)専門的機関を経由して助成する再助成制度の有効性も検討すべき」というのはどういうことでしょうか。

○青木部会長 これは、間にいわゆるコンサルティング的な機関とかエージェントを置いてやるということではないでしょうか。

○熊倉委員 「art council」みたいことを想定されているのではないしょうか。

○青木部会長 むしろ「art council的なもの」と入れた方がわかりやすいですね。それも一つの考慮すべき点であると思います。

○根木委員 (4)の創造活動への支援というのは極めて重要な事項なのです。ですから、これをばらしてしまうということは得策ではないわけで、やはり一つの項目としてきちんと押さえておく必要はあると思います。そうでないと、訳がわからなくなってしまうことになるのではないかという感じがしております。
 それから、先ほど田村委員がおっしゃった一番最後のところ、「専門的機関を経由して」ということですが、これは現実問題としてはほとんど不可能ではないかという感じが私はしております。といいますのは、今の仕組みからそういった「art council」の支部をあちこちにつくるというのは、実際問題としては、不可能に近いので、「何らかの検討する余地はあるのではなかろうか」ぐらいのところかなという感じを持っているところです。

○青木部会長 確かに現実的にはそうですけれども、こういう文言が入ると、それぞれのところがこういうものをつくろうとする動きになるかもしれません。方向性としてそういうものをつくるのがいいことであれば、そういうことを誘発するということは重点のところできちんと言うべきだと私は思います。

○岡田委員 突然戦略という言葉が出てきて、(4)に関しては、これは強くやるぞと見出しには意志が見えるのですけれども、内容は具体性に欠けていて、システム、方法、支援をする対象などが抜けているように思われます。先ほど私が利用開発の促進だとか、権利の保護ということを申し上げましたが、先ほどの米屋委員の働く人たちの条件整備も含めて、支援の具体策というのは書き込んでいただきたいと思います。

○青木部会長 (4)のところで絶対欠かせないということですね。ただ、ばらまき的な支援では困るから、メリハリを付ける、戦略的にやろうということです。

○根木委員 支援ということもさることながら、創造活動という側面を浮き彫りにする必要があるだろうと思うのです。

○熊倉委員 専門的な創造活動もきちんとやっていかなければいけないということだと思います。

○岡田委員 今、国が創造と利用と、そして権利の保護を打ち出しておりますが、ここには「創造活動」という言葉が入っていて、創造に対する重きは置かれているわけですけれども、利用開発、それから権利保護に対することが少ないということを申し上げているわけです。

○米屋委員 この創造活動という中でも、実演芸術や基幹的な美術館といったところを念頭に置いての支援が中核にあると思います。そういったことと、あらゆるクリエイティブな活動の利用、権利を考えると、ちょっと性質を異にする、同じ見出しの中に入れるのは少し厳しいと感じます。この辺は事務局とご相談してどう施策と結びつけるのかということも勘案して考えた方がいいのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○岡田委員 今のようなご意見であれば、新しい項目を設けていただいた方がはっきりすると思います。
 それと、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、ネット文化に対する対応ということもやっていただきたいと思います。

○青木部会長 ネット文化のことはどこで扱ったらいいでしょうか。

○中島委員 ネット文化というのは、いけない面というのが取りざたされるわけですけれども、これからの文化の根底になっていく問題だと思うので、それについてどうするのかというのはなかなか結論を出せないのではないかと思うのです。文化が今までにないような状況に置かれていることをきちんと認識した上でシステムを整備するということだと思うのです。
 あと、権利の問題というのは当たり前のことで、当然やっていかなければいけないわけです。著作権の問題はあると思うのですけれども、重点的な項目としてそれをここに入れていくというのは、必要ですけれども、手が回るのかなという感じがするのです。

○岡田委員 手が回るとか回らないとかというより、権利の保護というのは文化の再生産につながるものですから、やはりきちんと著作権に対する意識も、小さいころから植えつけて、そして当たり前のことのように、使ったら払わなければいけないということを教えてもらいたいし、それが身につくような方向で教育していただきたいと思っております。

○青木部会長 文化審議会には著作権の分科会がありますよね。

○中島委員 ここの項目に入れるべきかどうかということなんです。

○青木部会長 この中でどこまで触れるかということと、ネット文化のマイナスの部分というのはご指摘のとおりなのですけれども、一般的に考えるとそれだけを取り出すのも今の段階ではどうかという問題がありますね。

○岡田委員 前のものには入っているんです。

○川村委員 ですから、最初に芸術文化を支えるシステムという中に、今の権利保護の問題や、芸術家の地位の問題をきちんと入れていただく。そして、ここの(4)はまさに創造活動への支援だということに特化して、そうすると、この表現では「メリハリを付けることが必要」とありますが、メリハリを付けつつ、本当に重要なものをはっきり書いていただいた方がいいのではないかと思います。

○伊藤委員 今の川村委員の意見に賛成です。やはり最初に文化芸術の支援のための考え方として必要条件の整備と、それから十分条件というのがあると思うのです。そのときに、権利の問題等というのは必要条件としてきちんとそれは押さえていかなければいけない。しかし、十分条件に関して言うと、ばらまきは絶対まずいわけで、メリハリを付けなければいけないということは当然ありますから、もし今の項目に1項目加えるのであれば、今の(4)は創造活動に絞って、十分条件の方の考え方を明確に出していく。それに対して必要条件の方に関しては、1の方で、創造活動だけではなくて、文化芸術を支える基盤としての国の取り組みを明確に出すという整理をするといいのではないかという気がします。

○青木部会長 1というのは、上原さんがおっしゃった新しい項目としての1ですね。

○伊藤委員 はい。

○青木部会長 それでは、(5)の日本文化の海外発信及び国際文化交流の推進についてお願いします。

○真室委員 2番目のところで、「我が国は芸術創造分野でアジアにおける比較優位性を有する」と言い切っているのですが、これは取ったほうがいい。。

○青木部会長 今は大体あらゆる点でどちらがいいとか悪いとかという問題ではないですね。今アジアというのは日本にとって非常に重要な地域で、これまでは西洋やアメリカを見ながらやっていればよかったのですが、今はアジアを見なければいけなくなってきたということを、ここである程度は言った方がいいかもしれません、意識として。

○真室委員 それと、例えば諸外国の、文化芸術とその振興について適切な情報を得るということが必要ではないか。そして、その理解の上に立って、広く国際的視野のもとに施策を推進するべきではないかという感じがしています。

○青木部会長 ここは、日本文化の発信とか国際交流というのが、日本のいわゆる国際的な地位を高めたり、実際国際的なイメージがよくなって、日本との友好関係を推進させるというような積極的な役割を果たすということをうたった方がいいと思うし、第1番目の項目はここから行った方がいいと、私は思うようになりました。やはり文化庁も国際的に出すという時代が来たので、その次にこれまでの重要なことを、今いろいろとおっしゃったようなことを書いていくということですね。
 従来、文化庁というのは国内的なイメージが非常に強いです。実際問題、今や文化というのは、外国の文化財も日本が保護するということですから、今度そういう議員立法が通ったということですから、そうなってくると、ますます日本の文化というのは日本人だけのものではないし、それが国際的にも意味がある、地球上の人間にとって意味があるということです。それも文化庁はきちんと意識しているということを書いた方がいいと思います。

○横川委員 3つ目『アニメ、漫画等の「Japan Cool」』というのは、マクルーハンのとらえる「Cool」という意味ですか。

○青木部会長 「Cool」という言葉はそこから来ているのですけれども、最近は、その「Cool」という言葉が日本文化の特徴をあらわすように、数年前にアメリカのジャーナリストが「Japan Cool」と言い出したので、それを使っているわけです。

○横川委員 実は、今国費とかさまざまな基金、あるいは私費留学とかということで、日本各地の大学とか研究機関にものすごい人が来ています。ああいう人たちに、日本文化をどう考えているんだとかと問うといろいろな情報が入ってくると思うのです。まず足元のあたりから、彼らがとらえている日本文化というのを問うことも大切ではないでしょうか。

○青木部会長 それをどういうふうに表現したらいいかですね。確かにこれを書いたころは、強調する必要があったわけですけれども、今は常識になってきましたから。「Cool」という言葉も、去年、首相の文化外交のときには、21世紀型の「Cool」を目指せという項目を挙げたのですけれども、今回、来年に発表される場合にどういう言葉を使ったらいいか、それは若干慎重にやった方がいいと思います。

○田村(孝)委員 省庁再編のときに、文化庁が文化国際交流は担うとなっております。それで予算も増えていると思うのです。文化庁が担うんだということがはっきり決められているわけですから。それから、国際交流というと文化が添え物的にならないように。

○青木部会長 そうですね。ほかの官庁も非常に立派にやっていらっしゃることは事実で、それを否定するわけではありませんけれども、経産省は経済とか、外務省は外交、安全保障とかということになってくるので、文化というのが添え物的になってくるのは否めないわけです。ですから、文化をやるのは文化庁だと思います、国際的にも、国内的にも。それは明確に出した方がいいと、私は個人的には思いますけれども。

○田村(和)委員 文化の国際化も多様化しているわけですから、ここの文章として、各省庁とか、公共団体との連携のもとにという形ではっきり書かれた方がいいと思います。
 あと、先ほど中島委員からもお話がありましたが、ネット文化などは動態的に動いています。そういうダイナミックなものに対して、情報をキャッチしていく、これは戦略という言い方ではないと思うのですけれども、何か手段としてできないかなという感じはします。

○川村委員 一番最後の部分ですけれども、諸外国の文化財の保存・継承ですが、諸外国の文化財というのは、それぞれの国から見ると、自分たちのナショナル・アイデンティティの根源なのです。それに手を触れるか触れないかというのは微妙な問題が一方であるわけです。「我が国がリーダーシップを発揮し」と、ここがちょっと気になって、我が国が積極的に協力するのはいいけれども、途上国に対して「おれがやってやる」というのがリーダーシップなのか。表現としては「リーダーシップを発揮し」ではなくて、より積極的に協力すべきというところでとどめておいた方がいいのではないかという感じがします。

○青木部会長 そうですね。例えばバーミヤンとか、あのように破壊されたりというときに、ほかの国が手をこまねいているときに、日本は積極的に、サマワの人道支援と同じように、出かけていってきちんとやると、それが日本の国力、国の一つのイメージになる、貢献になるということだと思います。アンコールでは、最初はフランスとかが日本に対してクレームを出してきた。非常に立派なことなのですけれども、協調的にやる必要がありますね。我々だけではないということです。

○伊藤委員 文化の国際交流の中に、相互理解等々も非常に重要なのですが、これから先はコラボレーション、協力し合って新しいものをつくり上げていくという要素が必要になってくると思うのです。海外のアーティストたちが日本の若いアーティストたちと一緒に活動できるようなチャンスというのが必要になってくるのではないかと思うのですが、そういったことに対する言及がどこかにあっていいのではないか。

○青木部会長 それは重要なことだと思います。これは前にもうたってありますけれども、改めてここできちんと言うことが必要でしょうね。日本でいろいろな優れた作品を発表していただくと、それは日本のものになるんです。

○山西委員 3ページの(3)『地域文化の振興』の終わりから2行目の言い回しのところが若干気になるところであります。例えばここで言う「社会教育関係者」というのは行政を指すのでしょうか。というのは、例えば仮に「○○地域和太鼓保存会」というのがあったとしたときに、これは文化芸術団体でもあるし、子どもたちの教育の立場に立つと社会教育関係者にも入るのかなと思ったのですが、こちらで言ういわゆる「社会教育関係者」というのはむしろ行政を指すのかどうか。
 それから、「連携がいまだ不十分」と、これはとても気になっておりまして、かなり大きな成果はたくさん出てきているのではないかと思うのです。学校、文化芸術団体、住民等々が連携をしながらいろいろな成果はたくさん出てきている。ですから、ここで「連携がいまだ不十分」と断定されることが、今までそれぞれ努力をなさってきた方々に対して大きな侮辱にならないかどうかということです。
 それから、後段の部分で、「その連携を促進する仕組みを地域自身で検討することが期待される」、これは地域文化の振興ですから、地域自身で検討することも大事だろうと思うのですが、むしろ文化庁が今おやりいただいている、例えば「子ども文化教室」が委託事業で出ていて、地域と学校と子どもたちを結ぶ制度が上手に機能しているのではないかと思うので、これを地域自身ということでくくっていいのかということで疑問に思いました。「一層」という言葉でも入れて、「一層○○が期待される」という形で。

○田村(孝)委員 4(1)の一番最後「質の高い文化ボランティアや専門性を有するコーディネーターの養成」と書いてありますけれども、専門性を有するコーディネーターを養成して、文化ボランティアが育っていくのだろうと思います。この文化ボランティアを先に養成というのはいかがなものかなと思いました。
 それから、(2)2番目「文化芸術関係者と教育関係者との緊密な連携」とありますけれども、行政の連携というのも私は必要ではないかと思います。

○中島委員 先ほど伊藤委員がおっしゃったように、必要条件として整備すべき、今大きな時期にあるんだということがまずあって、そして戦略的に、今度は十分条件になると思いますが、こういうことをやっていこうということが、見る人がわかりやすくしておいた方がいいと思います。戦略的に重点項目というのと、可及的速やかに整備しなければいけない問題を、結構危機感を持ってお書きなるとわかりやすくなるかなというふうに思いました。

○熊倉委員 先ほど部会長が国際交流を一番最初に打ち出したいんだとおっしゃったので、どういうストーリー展開なのかようやく見えました。これまでの非常に内向きの文化庁の政策、何のクライテリアもないけれども困っている人たちに、満額ではなく自己負担が当たり前みたいな助成金をばらまいてきたことを大きく改めるべきではないかということで、必要性がようやくわかりました。今日の皆様のお話を聞いていると、構造改革だとか、上原委員がおっしゃるように、本当に新しい仕組みをつくっていくことが、私は「検討すべき」ではなくて、「急務だ」と言うべきではないかと思うのです。というのは、中国も、例えば映画政策に、ものすごく大きな国立の映画学校をつくっている。

○青木部会長 北京電影学院というのは世界最高で、パリよりも上に行くという評価もあるぐらいですよね。

○熊倉委員 韓国も非常に新しい施策をどんどん、大きな施策だけではなくて、もう少し地道に韓国の方はオルタナティブスペースというものを振興していくべく、小さな拠点を決めて、自治的な組織をつくらせて振興しようとしたりとか、もう既にアジア諸外国は国策として文化振興をやり始めているのです。

○青木部会長 今はタイ、シンガポールまでやり始めていますね。

○熊倉委員 そういった状況の中で、まさに新しく打って出ることが必要なのではないかと思いますので、新しい仕組みも必要ですし、それに伴って新しい文化政策も必要だと思いました。
 あと気になるのは、先ほど河井委員は「国民(芸術家及び支援者、鑑賞者)」を取ってしまえとおっしゃったのですが、そうすると「国民の育成は、国の使命」と、別のところでは民間がやれと言っていて、どちらにしたいのか、今の状態では見えないわけです。

○青木部会長 むしろ「国民」を取って「芸術家」とかと書いた方がいいかもしれません。

○熊倉委員 あるいは括弧は残して、「表現者」とか、例えば「支援者」という言葉が入っているのは割と画期的なことだったりするのですが、普通はつくり手と受け手だけという視点だと思うのですけれども。
 あと、先ほど「日本の文化を理解し」というのが前段だろうというお話がありましたが、むしろ国際交流の前ぐらいになるのかもしれませんが、日本の、特に伝統文化の継承が危機的な状況なんだということを、項目を一つ立てて、専門的な創造も、ぜひ重点的に、アーティストたちも忘れずに支援をしていただきたいと思っております。
 今回たくさんのヒアリングを行ってきて、一番足元の伝統文化がかなり危機的な状況に瀕していて、それが日本人がまさに国際的に打って出たりするにしても大事なのではないかという視点で取り出した方がいいのではないか。
 最後は、地域のところで、2ページの『「文化力」で地域から日本を元気に』というところは、このままでは悲惨な感じがして、地域には過疎と高齢化が進展していて、「年寄りだけで伝統文化だけ継承していけばいいのよ」みたいなシナリオに、この3つだけですと読めてしまって、まさに郊外も含めた地方都市の文化的状況はかなり悲惨で、これも本当に急務な問題で、若者はみんな都会を目指すと中島委員はおっしゃいましたけれども、私は、必ずしもそうではないと、取手の実践を通じて思っています。
 自分はその地域の出身ではないけれども、何かをしたい、お役に立ちたいと思っている若者たちはたくさんいますし、地域文化の活性化ということは考えていただきたいので、地域文化イコール伝統、シニア世代という構図は20世紀的で、悲しいなという気がしました。

○青木部会長 それは非常に重要なことで、そういう視点は、特に相対的に言って若い世代から出てくるものは非常に大事だと思います。またそれをプラスして、皆様にも今後これをエラボレートしていかなければいけないのですけれども、全体的に、戦略的というか、メリハリが付いたような報告、提案ができればいいですね。世代を超えて文化芸術振興についてはいろいろなご意見があるということですけれども、非常に前向きな意見が出てきた感じがしますので、ありがたいと思います。

○加茂川文化庁次長 今日は大変積極的な議論を展開していただき、多分報告書に取り込まれるオープンなご発言をしていただいたと思っております。
 ただ、この後、作業チーム等の作業の中で成文化を図っていく必要があると思うのですが、今日いただいたご意見は作業チームで再度整理が必要なのかなと思いました。特に資料2構成(案)のように、今日は第2次基本方針における基本姿勢、総論部分と、それからいわゆる重点、各論の二つの章についてご審議をいただいたのですが、その後には基本施策のさらに各論があるわけです。重点、各論にたくさん盛り込むことは大事かもしれませんが、総花になってしまうと何が重点だったのかわからないという弊も起きるのかなということを心配しながらお聞きをおりました。
 文化庁の政策について言えば、文化庁が新しい時代に求められる政策を打ってほしいと書かれたからできるのではなくて、ここに具体のシーズを入れてほしいのです。それを今度の基本方針として、政府が閣議決定をして、文化庁の政策として打ち出したいわけですから、抽象論ではなくて、具体の案を、できればメリハリを付けた重点項目と各論で整理をしたものをいただければ一番ありがたいと思います。
 政府の方針について言うと、指定管理者制度、地方分権の話もありましたが、この報告書のまとめとしては、政府の方針はこうだけれども、自分たちはこう思うというまとまりをご意見として整理していただくのはもちろん可能ですが、前からお話をしておりますように、この基本方針、基本的な方針は閣議決定をする必要がありますので、その直前には各府省協議をかける必要があるわけです。規制改革の中の指定管理者制度の位置づけや、構造改革の中で官から民へ、官から地方へという大方針を全く無視して打ち出せるかというと、そうではないのだろうと思っております。

○青木部会長 「文化庁が国際文化の」という文言をもっと大事にして、効果的に使ってやっていかなければいけないですね。

○辰野文化庁審議官 いろいろな意見を要素として書き出しただけですから、これをどのように説得力があるような形で組み立てていくか、ストーリーをつくっていくかというのは、これからがまさに勝負だと思っております。
 ただ、その際にちょっと考えなければいけないと思っておりますのは、まず、第1期があって、レビューをして、何が不足だったのか、新しい要素は何かということの取捨選択をしながら第2期につなげるという作業を、どこかの時点で一回きちんとしておく必要があろうかと思います。
 もう一つ、第2期は2007年~2011年、平成19年~23年です。この期間において一体何が、構造的に変化をしていくのか、ということをきちんと踏まえないと、浮いたものになってしまう。例えばすぐ考えられるのは、少子化がじりじり進むことは間違いないです。これは長期的傾向としてありますけれども、もう一つ、先ほど団塊だけを取り出すのは世代論としてどうかという話がありましたけれども、このときにまさに大構造変化が起こるのは間違いないわけです。まさに2007年から始まるわけですから、3年間かけて1,000万人近く、配偶者等を含めれば、この5年間で団塊の世代というのがどんどん出ていく。この人たちが文化の享受者であるとともに、また支援者にもなり得るし、どう組み込んでいくのかという視点は絶対欠かせないことだと思うのです。ですから、世代間で協力していくということはあるにしても、こういう状況のもとにこの世代をどう使っていくかということはやはりあるのだろうと思っております。
 それから、地域の問題が出てきましたけれども、平成の大合併が今年一段落して、これが実際どういう形で根づいていくのか。メリット・デメリットがはっきりしなくて見えない部分もありますし、地方の形がこの5年間ぐらいでつくられていくであろうと思います。

○青木部会長 道州制という人もいますから、5年間でそうなるかもしまれません。

○辰野文化庁審議官 ですから、ここのところは文化的にも下手をすると壊滅的な部分に行くし、うまく行くと新しいパワーが生まれてくる場合もある。そういうものを見据えながら、どういう文化政策を打っていくかという観点は絶対に必要だと思います。
 例えばネットの問題がいろいろ出ておりましたけれども、これも国策としてスケジュールが決まっているわけです。2011年にアナログがとまって完全デジタル化するわけです。2010年には光ファイバーゼロ地帯解消という計画がありますから。

○青木部会長 通信技術、コミュニケーションは非常に変わるということですね。

○辰野文化庁審議官 これは人々の生活だとか、まさに文化的な基盤にかかわるところが相当大きいと思いますし、また、それは子どもたちのいろいろなことにもかかわってくると思います。ですから、2007年から2011年までの5年間の計画だというところは相当意識をする必要があるという感じがしております。

○青木部会長 確かに、これからの5年間という視点をどこかにきちんと書かなければいけないということですね。
 それから、確かに世代の問題はいろいろと意見はあるにしても、今のご説明のように、団塊の世代の問題は非常な社会的ファクターになるということです。ですから、そういうことを最終的にどう入れるかということは問題かもしれません。
 ただ、ここでは文化芸術との関係が問題なので、一般的な社会論とは違いますから、その辺を文化芸術との関連でどのように方針を見直していくかということだと思います。あくまでも文化芸術に視点があるということだと思います。
 それから、地域社会の変容というのは、行政区分の変容から何からすごく変わってきていることは事実で、その辺のこともいただいたご意見を含めて検討しながら、また皆様のご意見をお聞きしたいと思います。
 それでは、事務局から次回の日程等についてご説明をお願いいたします。

○事務局 <次回日程>

○青木部会長 次回は中間まとめを最終的に審議して、7月末に公表ということになっております。
 本日は大変貴重なご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。今日はこれで終わります。

以上

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