第8回文化審議会文化政策部会議事録

1. 日時

平成18年7月14日(金) 14:00~17:00

2. 場所

霞ヶ関東京會館 35階 シルバースタールーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 伊藤委員 上原委員 岡田委員 尾高委員 川村委員 白石委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 富澤委員 松岡委員 
真室委員 山西委員 横川委員 吉本委員 米屋委員

(事務局)

加茂川文化庁次長 吉田審議官 高塩文化部長 土屋文化財部長 亀井文化財鑑査官 竹下政策課長 他

(欠席委員)

河井委員 熊倉委員 嶋田委員 中島委員 根木委員

4.議題

  1. (1)中間まとめ素案審議
  2. (2)その他

5.議事

○青木部会長 ただいまから文化審議会の第4期文化政策部会(第8回)を開催いたします。
 まず始めに、文化庁に人事異動があったということでございますので、事務局よりご紹介をお願いいたします。

○竹下政策課長 <文化庁人事異動について報告>

○青木部会長 それでは、議事に入ります。
 事務局から配付資料のご確認をお願いしたいと思います。

○事務局 <配布資料の確認>

○青木部会長 前回の部会終了後、委員の皆様よりいただきましたご意見及び2回の作成チームでの検討結果を踏まえまして、作成チームにおいて中間まとめ素案を作成いたしました。
 それでは、簡単に、この中間まとめ素案のご説明を私の方からさせていただきます。
 この中間まとめ案は、これまでの部会での審議・ヒアリングなどを含めまして1年半ほどの検討を踏まえ、重点的に取り組むべき事項や文化芸術振興の基本姿勢などをまとめたものでございまして、最終的な答申案に盛り込むべき個々の施策の在り方などの詳細に関しましては、秋以降の部会において検討していくことになります。
 また、作業チームでの検討の結果、中間まとめ案は意見募集を通じて広く国民から意見を伺うものであることを踏まえまして、記述の精査を行い、内容的なメリハリをつけ、部会として明確なメッセージ性を打ち出せるように、できる限りコンパクトなものを優先させていただいた点はご留意いただければと思います。
 1の「はじめに」につきまして、これまでの審議会の経緯と中間まとめの位置づけについて記載しております。この中間まとめが今後5年間に予想される状況を考察し、次期基本方針に関する方向性を提示するものである点と、秋以降の部会の審議の参考とするため意見募集(パブリックコメント)を実施し、広く国民各層よりご意見をいただくことになっている点を記述しております。
 2「第1次基本方針の評価と課題」(1)の「文化芸術の振興の今日的理由」に関しまして、初めに文化芸術を振興する普遍的な理由については基本法前文にあるとおりでございますが、今日の世界状況と日本の置かれた状況を踏まえた今日的な理由として特に2点を指摘いたしまして、また「文化芸術立国」を目指すべきとの点を記述しております。
 それから、次に注意すべき点としまして、「第1次基本方針に対する評価」について、基本法第2条に掲げられています8つの基本理念をもとに6つの観点から整理し、それぞれについて現状と施策の方向性を記述しております。これらは、本年2月に本部会で取りまとめました「基本方針の評価と課題(審議まとめ)」で示された認識や意見と、審議会でのヒアリングや書面による団体等からの意見なども踏まえて記述したものでございます。
 なお、前回の部会でご指摘のありました「芸術家の地位の向上」や「芸術家等の権利の保護」に関しまして、今後5年間に限らず施策を継続していくべき事柄であることを考慮して、この(1)の現状と施策の方向性の部分で記述いたしました。
 また、現行基本方針の基本理念には入っておりませんが、これまでの部会での議論で何度も指摘されてきました「子どもの文化芸術活動の推進」を、今後の方針に新たに盛り込むべき基本理念として(6)「次世代への文化芸術の継承」に掲げました。その背景及び重要性などについても記述しております。
 3の「第2次基本方針における基本姿勢」の基本姿勢に関しましては、前回の部会において箇条書きの形でお示ししました論点を作業チームにおいて文章化し、記述の整理を行っております。
 まず、(1)「文化力の時代」について、文化の持つ力や国内外において文化力が重視されてきた背景などについて説明した上で、社会システムの効率化・合理化の傾向が強まってきております中で、文化芸術の特質を踏まえた長期的で継続的な視点に立った文化芸術施策の推進の必要性と、文化芸術活動に短期的な経済的効率性を一律に求めるべきではないということを記述しております。
 (2)「文化力で地域から日本を元気に」に関しまして、地域文化が豊かになることが日本の魅力を高め、人々を元気にすることに触れた上で、近年の市町村合併の影響などによって地域に根差した文化の継承に危機が迫っていることを指摘し、シニアの人々が地域の文化芸術活動に対する参加や支援の仕組みなどについても検討する必要があることを述べております。
 (3)「文化芸術の振興における国の役割」でございますが、国民一人一人が文化芸術を支えていく環境を醸成し、文化芸術の享受、支援、創造、継承のサイクルが実現する社会の構築が求められていることを指摘しました。国は地方公共団体(特に、市町村)において文化芸術の振興について予算面で十分担保されていないという現状を認識して、文化芸術活動の発展を支える環境を整備することが求められていることなどが記述されております。
 「文化芸術を支えるシステムの構築」につきましてですが、文化芸術の振興における基本姿勢として国が果たすべき重要な役割であると考えておりまして、基本姿勢を語る部分に「法令、財政、税制等のシステムの構築」として記述いたしました。
 それでは、資料3の前半に基づきまして、自由に皆様のご意見、あるいは質疑を行いたいと思います。

○松岡委員 2「第1次基本方針の評価と課題」で、(1)「文化が経済活動に」と、いきなり経済活動と結びついた記述が出てきて、若干違和感を持ちました。後の方でも「経済効率を最優先させるものではない」と大事な指摘もありますので、(1)と(2)を逆転させた方がいいのではないか。

○青木部会長 まず第一に「文化には」というのを入れて、それから次に経済の方。

○松岡委員 あくまでも、経済というのはそれに付随して出てきているものという姿勢でとらえた方がいいのではないかと思ったんですね。

○川村委員 今の点で、私も(1)と(2)は逆転した方がいいと思います。
 それから、(2)の「文化には、人々を惹きつける」を「人々の心を惹きつける」、「精神を豊かにする」のようにしたり、それから社会に与える影響を「社会にうるおいを与える影響力がある」など、言葉を足していただければ、なおいいのではないかと思います。

○岡田委員 『審議のまとめ』の5ページの、(3)「我が国における文化芸術の振興の考え方」は非常に理念もあり、情緒もあり、すばらしいと思いましたが、この1ページの文章がすべて全体に散らばってしまって、経済のことについて語ってあるところ、それから文化がどういうものかということ、文化が人間の心にどういう影響を与え、どういう豊かさをもたらすものかということが綿々と書いてあるものが分散されてしまったことが残念でなりません。それで、2(1)「文化芸術の振興の今日的理由」に、この5ページを何らかの形で持ってきて、簡潔に、何が言いたいかということをまとめて伝えることはできないのかと思いました。

○上原委員 長崎県の報告の2ページ目に、テレビ会社の方が、基本方針第1の1にある「人間が人間らしく生きるための糧」云々のスタンスは永遠に変えないでほしいということを言っていらっしゃいます。そこのところをうまく言わないと、突然これが出てきてしまうという感じがしました。
 そして、(1)(1)、(2)の「文化」と「文化芸術」という言葉をつなぐ言葉が必要だなと思います。それは、伊藤委員が文化と文化芸術の関係を非常にコンパクトにうまくご説明いただいたので、あのフレーズを入れるとここがつながるという感じがしましたが、いかがでしょうか。

○伊藤委員 最初に、この1と2の入れかえは私も大賛成です。と同時に、川村委員がおっしゃったように、「文化には、人々を惹きつける」云々の記述があいまい過ぎるので、もう少し明確に文化の意味を述べていく必要があると思います。

○尾高委員 文化を支えるのに経済が必要だというのはもちろんわかるのですが、資本主義経済が必ずしも文化に今までよかったかというと、決してそうではなくて、崩壊した東ヨーロッパの方が文化が非常に成功していた例があります。やはり視聴率が高いものにお金が集まっていく。例えば、5万人入る野球に比べて、演奏会は2,000人ですし、日本の芸術になったら何百人しか味わえない。そういうものに対してやはりお金が流れないような方向になっています。この(2)はとても大事だと思うんですが、並列されているのが違和感を感じるんです。「文化が経済活動に」というのが、経済活動と必ずしも密接にプラス・マイナスが一致していないのではないだろうかということを感じました。

○富澤委員 軍事力と経済力の追求をあらゆる国がしてきたわけですね。今、それを乗り越えるような指標、理念といいますか、新しい力を加えようという議論も我々はしてきたと思うんです。ですから、急に経済活動が出てくるから引っかかるんだと思うんですね。むしろ、市民生活において新たな需要や高い付加価値を生み出す形で、経済活動だけ取り出すのではなくて、新たな指標に文化を持ってくるんだという位置づけがもうちょっと鮮明になった方がいいなということと、もう一つ、「文化芸術立国」と言わなくても、「文化立国」でいいのではないか。文化芸術で国づくりを進めるという「文化立国」を目指すべきであるという形でいいのではないかなという感想を持ちました。

○岡田委員 (1)の「経済活動」の意味の裏には、政府の知財戦略があると思うんですけれども、経済活動という言葉で単純に置きかえられていて、誤解を生むようなことになっているのではないか。『審議のまとめ』5ページには、文化が経済的な付加価値を生み出すという形で書いてありまして、経済というのは市場経済ではないことがわかるわけで、これは、おっしゃりたいことと書き方がちょっと違っているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○青木部会長 文化は人間の生活社会活動、経済活動を含めたものを活性化することだと思いますね。これまで余りにも経済、経済と言われてきたので、文化も重要だということを改めて強調したいから、どうしても経済との対比になってしまう。
 尾高さんのおっしゃったような観点で、市場経済的な経済と、それから、旧ソビエトや旧東独の計画経済の中で、芸術は比較的優遇されていたことですよね。国家が保護するという面はやはり評価すべきだと思いますが、余りにも経済活動と一緒にされてしまうと大きな問題だと思います。特に、演奏家、芸術家にとっては大きな問題かもしれませんね。

○伊藤委員 (1)と(2)の入れかえで私はいいと思っているんですが、入れかえたときの、「文化には、人々を惹きつけ」という部分を、やはり人の精神なり個性をきちんと付記していくということと、社会性というのは人と人との関係を豊かにしていくということを、もう少しきちんと書くことによって、「文化力」のイメージがはっきりするのではないだろうか。
 さらに、経済の方に関しては、特に近年においては経済的な効果ということに対して注目が集まっている。こういった書き方をはっきり書くことによって、注目すべき一つの視点として取り上げておく。
 文化は経済的価値を生み出すものだと言い切ってしまうと、誤解を受けたり問題を生み出すと思いますので、特に近年の一つの傾向として指摘をするという形で書けば、問題ないのではないかと思っております。

○田村(孝)委員 「はじめに」というところでございますけれども、真ん中あたりに「文化芸術の振興は国民の大きな関心事項であることから」と書いてありますが、なかなか「国民の大きな関心事項」でないところが非常に大変なので、こういうふうに言ってしまうのはどうか。

○青木部会長 こういうふうに、既成事実みたいに書いてしまうと、これでいいのかということになりますよね。逆に関心事項にしなくてはいけないですね。

○上原委員 関心を喚起するためにとすればいいんですか。

○青木部会長 これはやはり工夫が要りますね。

○松岡委員 文化がいかに大切なものかということの認識をまず持ちましょうという呼びかけがないと、何にも始まらないということですよね。日本の文化芸術がなくなってしまうと日本人ではなくなってしまうんだよと、そのくらいのことまで言ってもいいのではないかと思うんですね。
 最近、高階秀爾さんの「本の遠近法」を拝読して、いたく感銘を受けました。地域の文化がなくなってしまうと、その地域の人ではなくなってしまう。民族の文化がなくなってしまうと、その民族ではなくなってしまう。それくらい大事なものだと思うんですね。経済などいろいろな要素が集団を成り立たせているけれども、精神も感受性も美意識も価値観も全部ひっくるめて文化が担っているんだ。これを次の世代につないでいかなかったら、日本人は日本人ではなくなってしまうんだぞというくらいの気持ちでいかないとだめなのではないかなとつくづく思うんです。
 文化というところでは、その地域なり民族なり、国民が長い歴史を通して継承してきた、共通の価値観の体現だと思うんですね。だから、それがなくなってしまったら私は私でなくなってしまうと同じように、日本人が日本人ではなくなってしまう。あるお祭りがなくなってしまったら、江戸っ子が江戸っ子ではなくなってしまう。各地域にも、どの世界にもあると思う。今度のユネスコの問題で、多元的にいろいろな文化を尊重し合おうというのも、その民族であることの証明が文化だからだと思うんですね。

○青木部会長 「大きな関心事項」をもうちょっと注意深く書かなくてはいけませんね。それから、やはりユネスコが文化の多様性擁護ということを打ち出しているわけで、やはりグローバル化、情報化という大きな流れの中で、文化のアイデンティティが容易に失われてしまう。

○松岡委員 文化も今、保護と継承と発展と言っていますけれども、あるものを守るというのではなくて、積極的に壊そうという力も働いているわけですから、破壊を防止すること、守ること、発展させること、創造すること。

○岡田委員 先ほどの松岡委員の前半の発言ですけれども、5ページの冒頭に書き込まれていると思うんですね。私は、「文化芸術活動に触れて日本人としての心や」ではなくて、「人間としての教養、道徳、礼儀を身につけ、そして日本の文化、伝統を継承していくことが子供の調和のとれた人格形成のためには不可欠である」という言い方のほうが、日本だけではなくて、国際人という意味も含まれていいのではないかと思います。
 そして、保護、それから破壊の防止ということですけれども、「保護」はわかるんですけれども、文化財の「活用」が漠然としていて余りよくわからない。「保護」となると、「活用」とつけたくなる気持ちはわかりますが、やはりあいまいな形で「活用」という言葉を使わない方がいい。「保護」だったら「保護」、「破壊防止」だったら「破壊防止」と具体的な言葉で述べた方がいいと思います。

○横川委員 日本の場合は経済が先にありきで、やはり一般的には、経済が活性化しないと、文化、芸術というのはなかなかうまく励行していかないというような受けとめ方があるのではないかと思うんですね。そこのところを少しお考え願うということ。
 もう1点、やはり文化だとか芸術だとか、身近なとらえ方がしづらいんですね。つまり、もっと身近なところでの文化というもののとらえ方がどこかに少し書き込まれていると、もう少しわかりやすくなるのではないかなと思いますね。

○青木部会長 生活面での文化の定義の基本的なところに生活様式があるわけですから、現実の生活に関するもので、文化をどうとらえていくかですね。

○横川委員 そのあたりから日本が変わってきてしまったのではないかと思うんですね。例えば、道徳の問題や人間育成の問題ですね。そういうものが、食事といいますか、台所というのか、身近なところから崩れてきてしまった感じがするんですね。

○青木部会長 もっと現実の生活に関係あることなんですよということをどこかで入れる必要があるということですね。

○横川委員 継承ということを考えた場合、先ほどのお祭りが、まさにそうだと思うんですね。

○尾高委員 一番まずいのは、経済のための文化が激しくなってきていること。野球やフットボールは仕掛けている人たちがいるわけです。そういう方が文化となってきて、それで、いわゆる文化芸術の方に実はいかなくなっている現状があります。
 それから、やはり日本はすばらしい芸術があって、すばらしい文化があったのに、戦争に負けて、アメリカに追随してしまった中で経済が一番大事なこと、と思ってしまっている若い子たちが育っていくことがすごく怖くて、若い子たちに、日本ってこんなにすごかったんだ、すばらしい国だったんだ、こんな文化があったんだということをどうやって教えてあげたらいいのかということがどこかに欲しいという気がするんです。実際、私たちの国はすばらしい。日本の食事ほどきれいなものもありませんよね。おはしで食べた方が、フォークよりおいしいと感ずる日本人がいつまでもいてほしいなという気がいたします。

○白石委員 地域、それから伝統というのは、今の日本をつくってきた、まさにそれが文化だと思うんですね。それからやはり文化、文化財は、今生きているものでないと後へ伝わらないものだろうと思うんです。当然、保護をしなければならないんですけれども、それを今の私たちがどう考えて、どう生かしていくかというのが活用だろうと思うんです。ここはもう少し、具体的な言葉が必要かなと思いますけれども、そういう意味で活用はやはり必要だろうと思います。

○山西委員 民族性を外して考えたときに、この文化というのは成り立たないんだろうと思うんですね。文化と文明の違いはそこだろうと思うんです。今、尾高委員や松岡委員のお話をいただきながら、日本文化の創出と経済の効率性の歴史が大きく今の日本の教育を変えてきたということが、大事な視点だろうと思います。
 それから、日本の文化をどう教え込んでいくということが大事になってくるかと思う。食事の話が出ましたけれども、学校の食事で「いただきます」という指導はしないでほしい、給食費を払っているのに、なぜ「いただきます」や「ごちそうさま」と言うのかというのが、結構多くの学校へのクレームとして入ってきています。これは単に、まさに文化そのものであって、入場料を払って演劇を見たから、感謝の気持ちは持たないということ自体が、文化が国民的な課題にならない大きな問題ではないか。

○川村委員 3ページ(2)、今、白石委員が言われたような「地域にかかわらず等しく文化芸術を鑑賞」できるようにすることは大変よくまとまっていると思うんですが、現状の説明で、「文化基盤の整備は進展したが、地域による文化享受機会の格差」と指摘されている。この「文化基盤」というのは、ハードのことを言っているのかどうか。指定管理者制度は非常に大きな問題です。せっかくハードがあっても、それを生かすソフトの方が、今、むしろ危なくなってきている。この指定管理者制度の問題点を大きく取り上げてもらいたいというのが、今回は、注書きされている程度なんですね。文化基盤の整備は進展したが、それらを地域社会のために活用するシステムとかソフトの方が問題があるということを、現状認識としておっしゃっていただければ大変ありがたいことでございます。

○田村(孝)委員 「文化芸術」という言葉があるために、「第1次基本方針に対する評価」 の(6)に「基本法第2条では直接触れられていないものの」と書いてございますけれども、前回の基本方針では、体験となっておりましたが、文化芸術教育が重視すべき方向ということでトップに上がっていることでございます。文化芸術と文化ということを少し整理しないと非常にわかりにくいと思います。

○上原委員 伊藤委員のご報告にございました文化と文化芸術政策との関連性を入れると、かかわりがよくわかるのではないかと思うのですけれども。

○伊藤委員 文化と芸術の違いみたいなものについては、個の問題と集団の問題、個人と共同というような重要な問題がありまして、例えば、民族とか国家とか地域だけで文化を語ってしまいますと、やはり共同性の中の文化になってきまして、人間の精神的な活動としての、芸術等々を初めとする、もう一つの文化の側面から消え落ちてしまうのではないだろうか。しかし一方で、芸術だけが文化かというと、決してそういうことではなくて、食文化を初め、さまざまな文化があるわけですので、そういう意味においても、文化と芸術という言葉について、やはりどこかで使い方を明確にしておく必要があるのではないかと考えているわけです。
 個と集団というものは常にかかわりを持っていて、個の精神的な活動というのは、あくまで、その社会、集団の中から生まれ、長年共有され、伝承されてきたものをベースに生まれていくわけですが、それからまた集団の持ってきた古いしきたりを変えたり、そこに新しい息吹をもたらしたり、伝統を革新していったりという形の変化を起こしているのではないかと思っています。このような相互関係を文化政策ではどういう形で発展させていくのか、調和あるものとしていくのか。
 それから、先ほど松岡委員がおっしゃったように、文化財の問題を考えたときに、「保護・活用」というのは非常にあいまいな言葉だと思っております。現在、文化財に限らずに、さまざまな芸能活動、芸術活動も含めて、地域にさまざまな文化資源があるわけですが、ある面、経済、社会、さまざまな変化の中で、破壊、危機に瀕していることも事実です。したがって、保護というよりは、そういった環境変化の中で文化、あるいは芸術活動が発展できるような基盤をつくり上げていく。活用というのは、それを利用して商売をしていくというイメージが強いので気になるんですが、もともと文化が持っている力というのは、まさに「文化力」という言葉に代表されますように、そこからいろいろなものが引き出されていく。つまり想像力やクリエーティビティー、イマジネーション等の源泉になっているのが文化だと思いますので、活用というよりは、そこから何を引き出していくのかという要素が重要ではないだろうか。あらゆる人たちが文化に触れることによって、新しい何かをそこから得ていくことができるようにしていくことが本来の活用ではないかと思います。ここについてもやはりどこかできちんとコメントする必要があるのかなという気がしております。

○川村委員 「文化財の保護・活用」というのは、文化財が、単にそれが保護されているだけでなくて、それを通じて、特に子どもたちが日本の歴史や伝統、文化を理解する。それに役立つようにするという意味で使われている点はご留意いただいて、私は、文化財の場合に、そういう意味での活用というのは非常に大切だと思うんですよ。破壊から守るだけではなく、それをもっと歴史理解に役に立てるという意思がそこにあらわれていると理解していただければと思います。

○上原委員 2ページ(2)(1)の(現状)ですが、「関係者の協議が継続して実施され少しずつ成果が見られる」とあるのですが、これは、パブリックコメントに出した場合、関係者以外の人には理解できない、どんな成果が見られているのかがよくわからない、と思われます。それから「社会経済及び科学技術の進展に対応して芸術家等の権利が十分保護されて」とここで言っている「芸術家等の権利」と「十分保護されて」というところは何を意味しているかというのが少しわかりにくいと思います。

○米屋委員 この科学技術の進展というところは、デジタル技術とかメディアとか具体的なものを出した方が、よりわかりやすいのかなと思います。そうしますと、芸術作品、演じられたり展示されたりしたものが、映像になる、音源になるとした場合に、それを制作するためには資本が必要ですよね。制作者、それから流通、それから創造の現場にかかわる人たち、そういったところとの協議が今までなかなかされてこなかったのが、この基本法ができて、ようやく一緒に考え始めましょう。しかも、縦割りの行政を超えて、各省庁が共同して考えなければいけない問題でありますねということで、文化の創造の立場、それから産業の発展、知的財産の活用という観点とをあわせ持って、議論していかなければいけませんねという風潮がようやくできてきたということでございます。

○岡田委員 前回の議論で、一つ別項目をつくりましょうか、それとも無理やりどこかに入れましょうかといったことですか。隣接権者の契約のことだとか、著作権者の著作権に対するケアだとか。

○米屋委員 そうですね。その辺も含んでいることの指摘だと思っております。

○岡田委員 これは、隣接権者に対するケアのようにしか読めなかったので、だれにでもわかるようになった方がいいと思います。

○青木部会長 いずれにしても、ちょっと表現が抽象的過ぎるとか、足らないとかいうような問題がある。

○川村委員 4ページ(5)のちょっと下の方、(施策の方向性)なんですが、その数値のみでは評価できないから定性的な評価が必要と、そのとおりでありますが、もう一つの要素として、時間の要素も入れていただきたい。「長期的な視点に立った定性的な評価」としていただければありがたいと思います。

○伊藤委員 子どもは教え込んでいくという感じのニュアンスがやや強いんですね。子どもというのは非常に物的な存在であり、そういう状況を保障していくという考え方がどこかにあってほしい。子どもの権利条約を日本も批准しているわけですし、そこで言われている権利として子どもたちの文化にかかわる生き方を、もう少し積極的に書いていく必要があるのかなという感じがしています。
 さらに子どもたち自身が文化等々に触れていく機会を推進していくと同時に、子どもたちが、文化の世界において自分自身がこのように生きていきたいというような夢、職業という問題も入ってきます。なぜスポーツがあれだけ力を持つのかというと、やはりプロの世界がきちんと確立していて、サッカー選手になれば、それによって世界に旅立っていけるということがあるわけですが、なかなか芸術家の場合には難しいんですよね。子どもたちにとってみると、そういうイメージが持てないというところに非常に大きな問題があるのではないかと思います。

○岡田委員 6ページ(1)「文化力の時代」の上から2行目、「その厳しい競争の中で、人々は精神的な緊張を強いられているとの指摘もある」というところが違和感を覚えるんですけれども、人々は精神的な緊張を強いられているよりも、割と弛緩しているのではないか。

○青木部会長 精神的緊張というと、ちょっと高尚な意味になるけれどもね。
 それから、先ほど伊藤委員がおっしゃった集団と、いわゆる国家、集団、地域といったところの問題と個人の関係ですね。地域にいるから地域の伝統芸術だけやれというわけではなくて、日本を超えて、世界に行く場合がいっぱいあるわけで、個人の尊重というのもありますね。地域でそこの文化を大事にしろ、あるいはそれを育てなくてはいけないという意見はもちろん正論、重要だと思いますけれども、同時に、地域を超えるものがやはり出てこなくてはだめですよね。地域の芸術、文化芸術の保護となりますとその関係は難しい。それから、このコンテクストで個人を生かせるかという問題。

○岡田委員 7ページの「地域のアイデンティティの形成」というところですけれども、「アイデンティティ」という言葉はやはり日本語に置きかえた方がいいと思うんです。いろいろな日本語が考えられるので、ここは的確な日本語で表現した方がいいと思います。

○青木部会長 「アイデンティティ」という言葉は広く使われ過ぎてしまったんですね。もともとは、青年期の自己確認みたいな、自己を自立することを言っていたわけでありますね。

○岡田委員 だから、ここは、文脈からいうと、「地域の特性」とか、そういうことかなというふうな感じもいたします。
 そしてあともう一つ、もともとこの法律は文化芸術振興基本法は文化芸術ではなくて、芸術文化でしたよね。

○高塩文化部長 文化芸術振興基本法は議員立法ですがこの法律を出す前の段階で、法律の名前が「芸術文化振興基本法」となっておりまして、その後本法案が超党派で議員によって検討・協議がなされ、その調整の中で「文化芸術振興基本法」と、現在の法律の名前になったということです。
 国会での法案審議の中で「文化芸術」と「芸術文化」の違いについて質問があった際に「文化芸術」とした理由について、芸術が中心のものとしてとらえられる「芸術文化」ではなく、芸術を含む、それぞれの分野が並列なものとしてとらえられる「文化芸術」との文言ということで整理したという説明をしておりますけれども、いずれにしろ、法律には明確な文化芸術の定義はございません。ですので、解釈としては、「文化芸術」は、文化芸術振興基本法の第3章の文化芸術の振興に関する基本的な施策という第8条以下、個別の振興方策が並んでおりますが、8条は芸術の振興、9条がメディア芸術、10条が伝統芸能、その後、芸能、さらには生活文化、国民娯楽、出版物、それから文化財、それから地域における文化芸術の振興があり、国際交流、それから芸術家の養成、さらには教育研究機関の整備、それから国語、日本語、著作権、国民の観賞機会、それから青少年の文化芸術活動の充実、学校教育、劇場、音楽堂、美術館、博物館、図書館の充実、地域の場の充実、情報通信技術、項目としては、今申し上げたようなものを射程にしたものであるととらえております。
 「文化」は、基本方針にもありましたように非常に広く考えますけれども、「文化芸術」については、そのような「文化」の概念を前提としてとらえるということでして、「文化」と「文化芸術」の違いについては、第1次の基本方針をご覧ください。これは岡田先生、川村先生、富澤先生にも当時論議いただきましたが、1ページ目のまえがきの後の「第1 基本的方向」の中に、「文化芸術の振興の必要性」がありまして、文化の定義があります。この定義とその後の(1)から(5)の5つの文化の意義は、この基本方針に先立つ、14年4月の「文化を大切にする社会の構築について」という、文化審議会最初の答申において記述された文化の意義について、そのエッセンスを基本方針にも踏襲したものでございます。
 本日議論になっております「文化」と「文化芸術」の関係の問題というのはその当時も議論になりました。基本方針の冊子の2ページをご覧いただきたいのですが、「このような文化の意義にかんがみると、文化の中核を成す芸術、メディア芸術、伝統芸能、芸能、生活文化、国民娯楽、出版物、文化財などの文化芸術は」となっております。文化は、人間の精神的な営みだということがこの1ページに書いてあるわけですけれども、その中の中核は、この芸術や伝統、文化財であると。それらについても文化芸術に含まれるということで、それは社会全体で振興を図っていく必要があるということが記述されておりこれ以降の記述は、全て文化芸術という表現で統一されています。ですから、本来であれば、文化芸術の振興に関する基本方針ですから、全ての表記を「文化芸術」で統一することも検討されたわけですが、4月の答申を踏まえる必要もあったということで、やはり文化一般論について言及すべきではないかという、当時の文化審議会での議論を踏まえて。ですので、文化の一般論については冒頭部分に記述をし、芸術、メディア芸術、文化財、芸能等の文化芸術の具体的内容について記述した上で、重視すべき方向や留意事項なども含めて、各論部分において文化芸術の個別の基本的施策を書くとういう構成で整理を行い閣議決定をしたということです。
 また、この基本方針の冊子の14ページに「大地からの手紙」という文章が付されております。これは、平成14年12月5日の文化審議会の答申に当たって、答申の冒頭に、文化審議会としての思いを「大地からの手紙」として付したということでございます。一方、文化芸術の基本方針というのは、法律に基づいて、閣議決定をしなければいけない行政文書でありまして、行政文書では表現しきれない、当時の岡田先生をはじめとする委員の思いが、この「大地からの手紙」に集約されたと受け止めております。
 大きく文化をとらえるべきということで4月に答申をいただいたのですが、この基本方針の答申は、実務的な、政府の方針として閣議決定するための基本方針でございますので、この「大地からの手紙」を冒頭につけ、その後ろに基本方針を付して、答申としたわけですが、閣議決定の際には「大地からの手紙」を除いた本体の基本方針の部分について閣議決定をしたという経緯がありました。やはり「文化」と「文化芸術」の違いは当時から議論がありまして、ただいまご説明させていただいた形で整理をしております。

○青木部会長 「文化芸術」という言葉がどういう形で出てきたかということのご説明は、この法案の提出の段階において、定義されているということです。だから、それを踏襲してやっていくけれども、どうしても表現の上で混乱が起こることは間々あるわけですから、そこはなかなかそう解決されない問題だと思いますけれども、一応これを踏まえた形で今度の見直しをやっていくということですね。

○真室委員 これは、英語だと、カルチャー・アンド・アートですかね。

○青木部会長 英語だと何と言いますかね。「文化芸術」なんていう言葉があるかな、英語で。

○伊藤委員 前の勤務校が文化芸術大学という名前で、英語の方はアート・アンド・カルチャーですかね。

○川村委員 今、7ページの「指定管理者制度」という言葉は、文化施設について指定管理者というのはいろいろ問題点があるので慎重に対応すべきだということを、この注ではなくて、本文の方に入れていただければありがたいと思います。

○上原委員 8ページ(3)4行目、「国の文化の在り様はすべての国民に影響を与えるものである」というのはそのとおりだと思うのですが、文化芸術と文化との関係がここでも少しややこしい関係になっているので、整理をする必要があると思います。「本部会としては」と、部会の主張が以下3行にあるのですが、この点については部会で議論しておく必要があります。原文では国民一人一人の義務のように書かれてしまっていると思います。

○田村(孝)委員 「文化施設」という言葉が使われておりますけれども、これはどういうことを意味するのでしょうか。例えば、美術館なども私たちから見たら文化施設と思いますけれども、これは法律的には社会教育施設である。図書館も社会教育施設であるとなっておりまして、安易に、この「文化施設」という言葉が使われてしまって、それが何を意味するかということがはっきりしなくなってしまうのではないかなと思います。法律的には文化施設というのはないので。

○尾高委員 日本ほどコンサートホールが多い国は、世界中ありません。しかしソフトを動かす人がだれもいないんですね。箱をつくることばっかりに神経がいっていたと思うので、それを動かす人もちゃんとつくっていくのを国が支援しなくてはいけないのかなという気がいたします。
 もう一つ、オーケストラは演奏旅行をしますと、一晩の出演料より交通費がよっぽど高いお金になるんですね。旅費だけでもみんな払えません。その上に滞在費なんて払ったら、一晩5万円でも10万円でもなかなかというのが事実なんですが、レジャーで行く人のほうが、かえって安いですね。そういうことも何か盛り込んでいただけたらうれしいということは思います。

○青木部会長 文化割引も重要ですね。それから、確かに、ソフトのことは、この5年間でもソフトが大事だということは言われてきて、恐らく見直しのときに中心になる話題だと思うんですね。もう少し効果的に入るという必要はあるかもしれませんね。

○伊藤委員 「文化会館」という言葉はやはり全くあいまいな言葉でして、昨年、公立文化施設協会で指定管理者制度に関する検討会のときにも、文化庁の方に、「文化会館」、「文化施設」という言葉についての定義はあるんですかと聞いてみますと、基本的には全くないということがわかりました。そのときに、指定管理者制度の問題を考えるに当たりましても、全く箱だけの文化施設と、きちんとスタッフもいて活動している文化施設に関して、指定管理者制度の適用は全く違ってくるのではないだろうかと議論になりました。公文協の提案としては、文化施設について、法律をつくるかどうかは別として、定義を明確にし、文化施設、文化会館と自称する施設に関して言えば、最低、これだけの要素、人材、機能を含めてなければ、つくってはならないぐらいのことを言っていかないとまずいのではないかと提案しております。
 公文協の提案書であれば、これは何の規制力もありませんので、できれば、この基本方針の中に、今後の課題という形でも構わないと思うんですが、少し触れていく必要があるのではないだろうか。文化施設の活性化とか、指定管理者制度が始まるといっても、イメージされている文化施設がみんなばらばらであって、違っているなら、余り効力を持たないのではないかと思います。

○川村委員 9ページの下から3行目、国の役割として、「国は地方公共団体と連携したシステムの」と書いてあります。しかし、公文協や、オペラ団体連盟など民間の、ソフトを扱っている団体、あるいはその施設を運営している団体、その民間団体との連携ということも頭に入れていく必要がある。自治体だけ相手にしていればいいというのでは困る。
 システムの構築を図るというのは、さらに充実、発展させ自治体やら民間団体へとしていただければ、民間団体の方もまた元気が出るのではないかと思います。

○青木部会長 伊藤委員がおっしゃった、文化施設とか文化会館の定義は重要な問題です。いろいろな条件を満たした場合には国から援助するとか、明記したらおもしろいかもしれません。文化会館というものは、そういうソフトな部分をちゃんと具備したものであって、それがないようなものは認めない。そうすると、いわゆるディレクターからいろいろなものを全部入れていく。
 それでは、中間まとめの素案の詳細について、米屋委員から簡単にご説明をいただきたいと思います。

○米屋委員 ポイントだけご説明いたしますと、今回の中間まとめの最大のポイントとなるのが、この「今後5年間で重点的に取り組むべき事項について」というところでございます。10ページのところです。前回の部会でもご議論いただきました5項目を継続して取り上げ、それぞれの項目についてご意見をいろいろいただいたものを踏まえまして記述内容を整理して、具体的な方向性を書き込んでおります。リード文では、前回、部会意見を受け、文化芸術の国際交流の意義を冒頭に記述するとともに、前期部会の「審議のまとめ」での指摘などを踏まえて、5つの重点的に取り組むべき事項を取り上げて記述しております。
 まず、1番目の(1)「人材育成と支援」では、文化の担い手の育成が国の使命であることを述べ、大きく3つの点、芸術創造活動、伝統文化の継承者、文化芸術活動の仲介者というところに考慮しまして、施策を展開していくことが必要であると指摘しております。特に、(1)では、関係機関の連携・協力を図り、優れた人材が自らの才能を伸ばし、能力を最大限発揮できる環境を整備することの重要性、2では、伝統芸能の継承者が育ちやすい環境整備や子どもたちが伝統芸能に親しむ機会を充実していく際に考慮すべき点、3では、コーディネーターの活用や文化芸術サポーター、これはいわば国民運動を展開することも検討すべき点などを盛り込んでおります。
 (2)「子どもの文化芸術活動の充実」では、学校の文化活動を地域ぐるみで支援する仕組みを構築することができるよう国として支援すべきであること。それから(3)「地域文化の振興」では、特に、地域の高等教育機関と協働し、地域文化の振興に貢献することが期待されることなどを記述しています。
 (4)「文化芸術創造活動の戦略的支援」では、前回お示ししました論点に、支援方策の見直しの検討など若干の記述を追加しましたが、具体的な施策の戦略については今後検討が必要なことから、方向性だけを示すにとどまっております。
 (5)「日本文化の海外発信及び国際文化交流の推進」では、関係府省の連携などの点を記述追加しておりまして、論点整理・文章化を行っております。
 それから、資料の14、15ページに当たります「基本的施策の見直しの方向性」に関しましては、この中間まとめの段階では本当に大ざっぱな方向性を示すにとどめまして、意見募集で国民の多方面から意見を伺いたいと考えておりますので、現在ではまだ簡単に記しているというところですので、加除訂正等ご指摘いただけたらと思っております。

○青木部会長 資料3、10ページの「4.今後5年間で重点的に取り組むべき事項」というところと、それから14ページの基本方針、5の「基本方針『第2 基本的施策』の見直しの方向性」。作業部会ではいろいろと考えながらこういうふうに行いましたけれども、皆様のご意見を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○尾高委員 メディアを通して文化庁なり国が、実は私たちはこんなにすごい文化を持っているんだということを言ってあげないと、どうしてもコマーシャリズムの方の力に負けてしまうのではないだろうか。そういうときに、そういうような国民に知らせるということももしできたらありがたいと思うのですが。

○青木部会長 つまり、日本の文化、あるいは日本の文化施設も含めた潜在的な力が非常に大きいと。世界有数のホールもあるし、もちろん能劇場とか、歌舞伎とか。歌舞伎は本当に歌舞伎座へ行くと、やはり日本文化を感じますね。

○川村委員 10ページ(1)、「地域における文化の担い手が不足してきている」というのが最初に来るから、人材養成の話かと思うと、(1)はそうではないんですね。これは、世界に発信できる創造、技術をつくれる人の養成というので、どうかなという感じがすることが1点。
 それから、11ページ、4行目、伝統文化の継承に携わる人々(保存技術保有者やその素材の生産者等)と特記してございますが、伝統文化の継承にかかわる人は、いわゆる無形文化財、人間国宝のような、それ自体の技を持っている人も入れていただきたい。ここは「伝統文化の継承に携わる人々」ということで、その括弧書きをとっていただければ大変ありがたいということでございます。
 これは質問ですが、11ページ7行目、「子どもの豊かな感性をはぐくむ観点と地域文化の担い手育成の観点のバランス」、一体これはどういう意味なのか。

○山西委員 前半をAとすれば、Aの方は、子どもの豊かな感性をはぐくむ観点、いわゆる文化芸術に親しむとか、あるいは文化芸術を通して豊かな人間性を育てていくとかといった、個人に関する、豊かな人間性を芸術で培っていくという視点。後半は、それらをもとにして、あるいはそれを発展的にして、その文化活動を保持、発展させていく人間、いわゆる継承者という視点と、これがBではないかなと読ませていただいたんですが、そのことでご理解いただくといいかなと思うんですね。
 そこは、「はぐくむ観点や地域文化の担い手育成の観点のバランス」とすると、幾らか並列的に包含されて、両方大切ですよと読み取りができると解釈させていただきました。

○伊藤委員 この4(1)の見出しに、まず「日本の」と書いてある言葉がちょっと気になっています。それで、次の行に「地域に」が入ってきて、それから、先ほど川村委員が触れたように、(1)の方で今度は普遍的な芸術が入ってきていますので、ここで言おうとしているのは基本的には人材ですが、一方で、地域の伝統的な文化をきちんと守り、発展させていく人材であると同時に、他方で、世界に通用するような創造的な文化でもあったり、あるいはそれを支える人材も入ってくるわけですので、例えば、固有の文化を継承し、次に、発展、創造する人材の育成と支援という形に少し変えた方がいいのかなという気がしました。
 それから、「支援」という言葉はもう少し具体的な方向を出していきたいなと思っています。(2)では一応きちんと書き込まれているわけですけれども、自ら職業としてその活動を継続し、「経済的に自立できる」という言葉が、伝統産業、伝統文化の方に書かれています。これは創造的芸術活動に関しても同様なことではないかと思っています。そういう点で、「支援」という言葉について、もう少し全体的に説明すべきではないかと思うんですが、育成だけではなくて、育成した後、その人たち自身が活動を継続していけるような場の形成ということについて明確に触れた方がいいのではないだろうか。
 それから、(3)「仲介者の育成と支援」が入ったことは非常に画期的ですばらしいなと思っております。「文化芸術コーディネーター」、「文化ボランティア」という言葉が出てくるわけですけれども、いわゆるアートNPO、あるいはインタビリティとか仲介機関といったものをもう少し明確に書いた方がいいのではないだろうか。つまり、個人個人のボランティア、コーディネーターという役割は非常に重要ですが、同時に、そういった人たちが機能する組織として地域に根づいていくということが、より求められていくのではないかと思います。

○上原委員 「育成と支援」という、(1)の柱立てで、「支援」は(3)のボランティア活動への支援が具体的に書かれているだけなので、具体的に活動の場の形成とか、仕事として経済的に自立できるような場の形成をしないと、人材を育成しても全く意味がない。手法について書き込んでおかないと、この「育成」という言葉が生きないという感じがいたしました。

○青木部会長 文化会館、文化施設をつくりますということは、附帯条件をクリアしたと認めたものに対しては、国が認定して、それをまた支援もする。内容的に、国が認定するものはこういう条件であると、必要かもしれませんね。文化の規制も必要だと思います。

○上原委員 11ページ(2)の「子どもの文化芸術活動の充実」の一番下の段に、「文化多様性を理解する」という2行があるのですが、「日本文化の発信役」となる子どもたちというのはどういうイメージなのか教えていただきたい。

○青木部会長 子どもたちが国際交流をするときに、やはり文化の継承者として日本のことをよくわかっている。きちんと言えるということではないでしょうか。

○伊藤委員 (2)の子どもについて、日本人としての自覚を持った、日本文化の発信役という側面があることは望ましいと思うんですが、それ以前に、子どもとしてのはつらつさが求められると思うんですね。その上で、やはり自分が育った地域、あるいは国の文化をきちんと理解し、伝えていくということが養成されるべきではないかと思います。日本人としての自覚、日本文化の発信役だけを表面的に第一義的に書かれてしまいますと、やや窮屈ではないかなという気がします。健康で自分の個性を発揮するようなことを保障しつつ、加えて、こういったことについても役割を担ってほしいという書き方にした方がいいのではないかと思っております。

○青木部会長 文化に興味を持つことが必要だということですね。

○横川委員 育成ということを考えた場合、我々は、どうしても指導者的な育成が先に来るんですね。でも実際には、受け手側の育成が第一にあるのではないかと思います。「世界の文化多様性を理解するためにも、子どもたちが国際的な文化交流を通じて日本文化の発信役となる施策が期待される」これは、例えば、自治団体や学校によっては、他国と、文章だけではなく、絵やいろいろなものを書き込んで交流しているところがあるんですね。これがもっと積極的になっていけば、子どもたちは自分たちの足元を見なければいけないというようなことで、自国を小さいときから見つめていく姿勢が出てくるのではなかろうかと思います。
 それから、まず日本の文化なり、伝統的なるものが何であるのかということぐらい小さいときからやっていけば、培われて、どこに出ていってもある程度の話ができるのではないかと思うんですね。

○青木部会長 相手の国のこともほとんど勉強しないで行く場合が多いし、間違ったことがいっぱいあるんですよね。同時に、日本のこともちゃんと言えなくてはいけない。

○富澤委員 例えば、私が所属している大阪ロータリークラブで留学生を派遣すると、事前に浄瑠璃や歌舞伎を見せます。一人一人が小さな民間大使ですから大事だと思いますよね。

○横川委員 少なくとも、書物でも読んでおいて、理解しておいてほしいという気はしますね。

○山西委員 11ページ(3)「文化芸術活動の仲介者の育成と支援」の3行目、「学校や地域における文化芸術コーディネーターの活用や」、こういう存在の人はいると思うんですが、こういう枠組みそのものの名称を持っている人がいるのではないかという、誤解があるのではないかと思うんですね。だから、「文化芸術コーディネーター」の活用というよりは、的存在の活用ということになるのではないかということで補足的な言葉を入れていただいた方がいいと思いました。

○米屋委員 (3)は本業としないんだけれども、地域とアートを結びつけていくサポーター的な役割の人たち。(1)の方は、それを専門的な人材として、きちんと知識も情報も経験も積んでやっていく人たちというように色分けしてはどうかというので、こういう併記になっています。どういう呼称がいいのかというのは、今のご指摘を踏まえて考えなければならないのかと思いますが、あるいはこの先5年で、また名称も変わるかもしれませんので、機能に着目して言葉を選んでいった方がいいのかなと思います。

○富澤委員 (3)「地域文化の振興」で、地域文化の振興に当たっては、市民、教育関係者、文化芸術団体、学校等と思われるわけですけれども、地域のメディアの力が非常に大きいんですね。メディアそのもの、メディアが持つ普遍性というものもあります。その地域の新聞も大きな役割を担っているので、大いに活用した方が大きな力になると思います。
 やはり芸術とか文化は国や地方公共団体が力を入れていかないと、さらに、地域のメディアも一緒になってやる。そういう形にした方が力が出るということを日ごろ実感していますので、ぜひ地域メディアも明確に入れておいた方がいいのではないかなと思います。

○青木部会長 4「今後5年間で重点的に取り組むべき事項」の前段で「2.(1)で述べたとおり」と国際的な関係が非常に重要だということがうたってあるんですけれども、この項目の(5)「日本の文化の海外発信及び国際文化交流の推進」を(2)に持ってきたいんですけれどもね。(1)「日本文化を継承」の次に、「日本文化の海外発信及び国際」というのを持ってきて、それから「子ども」とか「地域文化」、それから「文化芸術創造型の戦略的」としたらどうかなと思いますけれども。

○吉本委員 伊藤委員の中間支援とかNPOは、機関の問題で、この(1)は人材育成の問題なので、そこと一緒にすると難しいという気がしました。
 前段の方で、文化芸術の振興に、国民一人一人を含めて、いろいろな立場の人がかかわっていかなければいけないと書かれていますので、例えば、その中間支援とかNPOだけではなくて、今後、公益法人制度の改革等ありますから、文化庁とか地方公共団体だけではなくて、いろいろな機関がいろいろな立場で日本の文化芸術を振興するようなことを行って、それが中間支援も含めた総合力を発揮していくような土壌をつくっていくという項目も1項目立てるのか、あるいは、この戦略支援のところに再助成制度のこともありますので、ここに盛り込むべきなのかわかりませんが、この中に重点的な項目として入れてはどうかなと思いました。

○上原委員 10ページの(1)の表題、「日本の文化を継承し」がいいのか、「文化芸術を継承する」のがいいのか、より大きくとらえた方が、身動きがいいという気もします。日本の文化としてしまうと少し苦しい気がします。

○青木部会長 それで、中に日本文化とちゃんと入れておけばいいですよね。

○田村(和)委員 ここは5つ話があるんですが、文化と文化芸術が入れ子になっているんですよね。一番上の(1)「日本の文化」は、文化芸術ではなくて、文化総体の話を割合にしている。(2)「子どもの文化芸術活動」は、子どもの世界の文化だけではなくて、特に子どもの文化芸術という活動の話ですね。それから(3)「地域文化の振興」になっているんですが、これは実は芸術文化なんですよ。(4)「文化芸術創造活動」は、国がなすべき文化芸術の創造活動への支援。(5)「日本文化の海外発信」、これは文化総体の話に近いんですね。

○上原委員 字句整理がないとすごく難しい。

○田村(和)委員 ここの「文化」と「文化芸術」と「芸術文化」の違いは、作業部会でさんざん議論したんですが、やはり基本法がそうなっているものですから、我々はいかんともしがたい。ここは、文化総体の話と芸術文化の話は少し分かれて見えますから、そういう意味では、今、青木先生の話で、文化、文化で来て、それから芸術文化を後半に持ってくるというのがいいのではないかという気がしているんです。

○青木部会長 国際を2番目に持っていくという案はどうですか。

○田村(和)委員 そうすると、3、4、5が割合に、文化芸術政策みたいな形で見えてきますよね。

○岡田委員 松岡委員からも「お祭り」という言葉が出ましたが、お祭りが盛んな町は世代間の交流が非常に盛んで、子どもが不良化したり悪いことをしたりすることの抑止力になるのではないかと思っております。ここの地域文化の振興の中では、「社会教育関係者」とか「芸術団体」、「学校」、「地方公共団体」という言葉は出てきますが、世代を超えた人間関係という、コミュニティー、もう少し小さな人間の集まりというニュアンスがちょっと欠けているので、そこら辺も書き込んでほしいと思います。

○青木部会長 どこに入れたらいいですか。

○岡田委員 「国民文化祭をはじめ地域の文化芸術活動の関係者が交流する機会の充実も重要である。また、世代を超えた人間関係の輪ができることで」としたらよいかと思います。それができることで、青少年の心の豊かさとか、暮らしの豊かさにつながってくるのではないかと思います。そして地域活動が活発になっていくということですね。

○青木部会長 その「世代を超えた人間の輪ができる」ということでいいのではないかな。それは確かに重要ですね。祭りといいますと、地域の祭り、秋祭りとか、重要ですよね。

○岡田委員 10ページ、「今後5年間で重点的に取り組むべき事項」の一番下で、「メリハリを付けて」という言葉がありますが、これは俗語みたいなので要らないのではないかと思います。
 もう一つ、12ページの(4)の一番下の方ですけれども、「その他の助成機関等の役割分担を図るとともに、評価や審査を充実させ、きめ細かでかつ効率的な業務を行うため」と書いた方が、文章的な流れがいいかと思います。
 できれば、10ページの「フォローアップ」も日本語にした方がいいのではないかと思います。
 「追跡調査」とか。

○米屋委員 5でいろいろな基本的な施策が並ぶんですが、その中でも特に財政的な支援を念頭に置きながら重点的に取り組むところを5項目つけたよということがメリハリをつけたということなんだということでございました。

○青木部会長 「メリハリ」のかわりに、特にどうしてかということを表す文言を入れていただいた方がいいかもしれませんね。

○米屋委員 具体的に書き込んだ方がいいという場合もあるのかもしれませんが、これは5年間の方針ですので、いろいろな工夫の余地を残して、包括的な言葉を選んでいくという方がいいのではないかなという気がします。

○青木部会長 「メリハリ」をとってしまって、「重点的」でいいですか。

○米屋委員 「重点的」で、「メリハリ」をとってしまってもいいんだと思いますけれども、そういう議論があったということが皆さんにご了解があれば。

○岡田委員 急に俗語が出てくることに違和感がある。

○青木部会長 やはり時々、ちょっと文章が崩れるというところはありますね。それから、「キャッチアップ」とか「フォローアップ」とか、何となくわかるようでわからないような言葉がよく使われますよね。だから、結局、日本語で明確にできない。

○米屋委員 国語委員会でも、なるべく英語はやめようと、審議会でもそういう話になっているわけです。

○青木部会長 時代の変化と言葉の変化と、それからやはり実際使っているいろいろな流用語というものがありますからね。その中でこうやって意味を固定化してしまうというのはやはり避けたいというところがあるんですよね。

○上原委員 「フォローアップ」というのは、フォローする、活動の場を少し提供するという気持ちもあるのかなと読んでしまったんですが。

○青木部会長 「フォローアップ」というと、一緒にやっていこうというような意味もありますね。

○伊藤委員 これを読んでいますと、例えば、地域文化というと、すべてアマチュアというイメージが出てしまうんですね。高度な芸術文化というのは東京にあるイメージがやや強くて、地域文化における人材育成や地域文化の振興にしましても、多くの一般の市民によるアマチュア文化。しかし、プロの活動がもっと地域に分散化すること自体が、これから先の日本の社会においては必要ではないかという気もしているんです。
 (1)が専門的な文化芸術という枠組みの中で人材をきちんと育成していくという形に焦点を置き、(2)の分野においては子ども等々を分けて、(3)で地域文化をもっと多くの人たちが参加できる文化と考えたことはわかりますが、参加できる文化だけを地域文化としてしまうニュアンスがかいま見られてしまっているので、区分けの仕方についてご検討願いたいなと思っております。

○青木部会長 「地域文化」という言葉は、どうしても地域文化の振興などと言いやすい。何かそれを是正するような、バランスとるような言葉が入ればいいですね。

○伊藤委員 政策的には例えば、地域における芸術拠点形成、あるいは文化施設の充実といった問題は、地域にきちんとした文化が育ち、発展していく基盤をつくっていこうとすることだと思うんですね。ところが、この文章の中で使われてくる地域文化というのは、そうではないニュアンスがつきまとっていますので、そこを明確に区別する言い方を考えてみたいと思っていますが、ご検討願いたいと思います。

○松岡委員 例えば、陶芸とか漆芸とかというようなものを一つでも入れれば、必ずしもアマチュアのものではなくて、むしろプロ中のプロが各地域でやっている印象になる。

○青木部会長 無形文化財も確かにそうですね。

○松岡委員 そういうイメージができればいいわけですよね。だから、そういうのを一つ入れれば、盆踊りとか何とかとは違うんだよということがわかるのではないですか。

○伊藤委員 ただ、ここで言う地域文化の大切さということも非常に重要なんですね。したがって、地域には伝統的な文化、伝統産業に基づくような陶芸等々もあったり、あるいは音楽にしても演劇にしても地域から生まれてくるものもいっぱいありますし、こういうことを地域文化の中に、(1)もいいと思いますし、あるいは(4)戦略的のところでもいいと思うんですが、地域における戦略的重要性というものを明確に書くことによって、解決できるのかなという気はしております。

○米屋委員 (4)に、「国内外で評価の高い団体や地域の劇場等との共同制作など」と、かなりこれは具体的なので、「共同制作」というよりは「共同」とか「連携」の言葉の方がいいのかなと思うんですが、全国各地というのを国は視野に入れていて、その中での創造活動は国も支援しますよということで、別のところでフォローされているという理解でおりましたので、それがわかるような書き方にすればいいのかなと思っております。

○岡田委員 ネット文化の振興と、それから規制についてぜひ書いてくださるようにとお願いしたんですが、それに関してはどういう議論がなされたのでしょうか。

○田村(和)委員 余りそのあたりを強調し過ぎると、少しバランスを欠いてしまうのではないか。

○岡田委員 「ゲーム」や「バーチャルな世界」という言葉が出てくるだけで、現在のネットの中での無法地帯的なことへの規制、警告は一つも出てきていません。

○田村(和)委員 4ページ、「次世代への文化芸術の継承」で、この話を心の中の問題に、持っていきますと、非常に重くなり過ぎるのではないか。おっしゃる意味は非常に大切ですし、ここのところに集約して書いたということでいるんですが、まだこれは言葉が足らないかなという気はしております。

○青木部会長 問題は「ネット文化」という言葉を使うか使わないかですね。

○岡田委員 もう市民権を得ていると思いますが。

○松岡委員 まだ本当に文化に行く前の、それこそカオスの状態という感じがしますよね。今後5年で、文化活動の中で重要な役割を占めることは、まず間違いないと思うんですね。ですから、全く触れないというのはちょっといけないのではないかと思うんですが、功罪両面があるということをきちんと抑え、これからの展望として言っておく必要があるのではないかと思います。

○岡田委員 カオスだからこそ規制をしてほしい。そして、一方ではネット文化の振興もしてほしい。そして、振興させるためには、カオスの暗闇の無法地帯の部分を取り締まるすべを我々は考えなければいけないということを申し上げたいわけです。

○青木部会長 そういう言葉をここに入れておいておかしくないですかね。

○米屋委員 「規制」という言葉を入れてしまうと、表現の自由もありますし、どこでどう規制するのだという難しい問題になります。5章の各論のところに、その功罪両方あるということを踏まえて、何か言及する手はないのかという意見は出ておりましたが、では、どこからどう規制するのかという具体論に踏み込んでいくことになってしまうかと思いますので、その辺は慎重に言葉を選ばなければいけないと思います。

○岡田委員 やはり自由のはき違えがございまして、人の悪口を匿名で書いたり、そして自殺志願者を募ったり、殺人依頼をしている人たちの自由を守る必要はないわけで、言論の自由を規制するのではないかということをこちら側で自己規制する必要はないと思う。毅然として、悪いものは悪い、いいものはいいという区別をつけながら、我々は物を考えていく必要があるのではないかと思います。自由のはき違えだけは、私は怖いことだと思います。

○川村委員 カギ括弧つきでも「ネット文化」という言葉はもう登場させて、功罪といいますか、陰の部分も指摘をしておくということが必要ではないか。

○青木部会長 それは、言葉は使ってもいいということですね

○伊藤委員 「ネット文化」という言葉は、使うとしたら、現状分析的なところに述べて、功罪を触れておく程度でいいと思います。ただ、ネット文化も含めて、新しいメディアの状況の中から、これから先、新しい文化が生まれてくるだろうと思いますが、そのとき誘導政策になるだろうと思います。当面5年間の中には、国際の中に、例えば、新しいメディア芸術等々を含めた国際的な拠点を形成していこうということが書かれています。この記述の中に、ネット文化の中から新しい文化が芽を、いわばくみ取り、広げていこうという姿勢は入っているのではないかと思いますので、この辺をネット文化との関連で一言つけ加えれば、前向きの政策が出せるのではないのかという気がします。

○上原委員 5.基本方針の14ページ、1の一番下、「人材育成」という言葉になっているので、5に入るのではないかと思います。人材育成だったら下におろした方が整理ができるかなという程度の意見です。

○川村委員 14ページの3に、地域文化の多様な担い手の連携・協力になるんですと書いてありますが、人材育成が1と5にあって、地域文化の担い手の育成に触れていないというので、地域文化の様々な担い手の育成及び彼らの連携・協力ということかなと思っていました。
 2の文化財の保存・活用のところで、最初に「確実な保存・管理・継承」というところ、「管理」という言葉が出てきていますが、ここは「保護」と「活用」でいいのではないか。そうすると、2番目と1つにまとめて、「文化財の確実な保護・活用のための施策を推進する。その場合、民間の非営利活動や文化ボランティア等との連携を推進する」ときちんと書かれれば、1行節約できるのではないかと思うんですが。

○上原委員 15ページの10の一番下、「社会教育施設」は定義として何を指すのでしょうか、。

○田村(孝)委員 公民館は社会教育施設であって、文化施設と呼ばれている劇場や音楽ホールは法律的には公民館のひとつと考えられてしまうのです。

○米屋委員 10のところで、公立文化施設や、イベント会場で、結構スタッフの方の死傷事故が発生しているという現状がありまして、今後、ベテランの方が退職していくとか、あるいは指定管理者の導入で効率優先の考えが進むだろうという中で、非常に悲観視するところがあって、関係団体でも、何らかの運用ルールをつくっていかなければならないのではないかという動きが出ております。安全確保に向けての整備について推進する、ぜひ民間の活動を行政としても支援して、ルールとか指針づくりというところを念頭に置いていただければと思います。

○青木部会長 危機管理の問題が出てきていますからね。それはやはり5年間で明らかになってきた問題でありますね。

○田村(孝)委員 11ページ(3)の「文化芸術活動の仲介者の育成と支援」のコーディネーターとかボランティア、それともう一つ、次の「子どもの文化芸術活動の充実」のところに、「指導者が不足しがちな学校の文化活動を」というところがありますけれども、どちらも、本来ならば、文化施設や、芸術団体、学校できちんと役割を果たしていくべきものだと思うんですね。文化ボランティアや、あいまいなコーディネーターに、おんぶに抱っこというのはよくないことだと理解いたしますので、その前の(1)「日本の文化を継承し」というところの「文化芸術団体のアートマネージメントの研修などを充実する」ではなくて、「についても同様の充実が急務である」ぐらいに書いていただいきたい。
 結果として、ボランティアの方が参加することによって、より豊かになるということは必要だと思いますけれども、文化庁の基本方針として、そういうものにはなから頼った施策はどうかなと思います。

○青木部会長 作業部会でも考えてやるんですけれども、やはりほかの皆様の前でご検討いただきますと、いろいろな不備が出てきまして、それをどうやって生かすか、結構難しい。全体的には、ともかく、長いものはつくりたくないですよね。そういうことがありますので、どうしても文言が抽象的になるところもあるんですけれども、ただ、それだけやはり具体的に考えなければいかぬこともあるということもよくわかりましたし、言葉の内容がはっきりしないとか、そういうこともありましたので、それを踏まえて、またさせていただきますので、次回、よろしくお願いいたします。

○事務局 <次回連絡>

○青木部会長 本日は、長い間、ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。これで終わります。

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