第10回文化審議会文化政策部会議事録

1. 日時

平成18年9月21日(木) 14:00~16:00

2. 場所

東京會館 11階 シルバールーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 伊藤委員 上原委員 岡田委員 河合委員 川村委員 熊倉委員 嶋田委員 白石委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 
中島委員 富澤委員 根木委員 松岡委員 真室委員 横川委員 吉本委員 米屋委員

(事務局)

加茂川文化庁次長 吉田審議官 高塩文化部長 土屋文化財部長 亀井文化財鑑査官 竹下政策課長 他

(欠席委員)

尾高委員 山西委員

4.議題

  1. (1)意見募集の結果について
  2. (2)答申・第2次基本方針の構成等について
  3. (3)その他

5. 議事

○青木部会長 ただいまから文化審議会文化政策部会第10回を開催させていただきます。まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

○事務局 <配布資料の確認>

○青木部会長 では、まず私から、8月8日に奈良県で開催されました文化芸術懇談会に関しましてご報告させていただきたいと思います。
 文化芸術懇談会は、文化芸術振興基本法第34条の趣旨に基づきまして、各地域の文化芸術関係者や住民と広く意見の交換などを行うことによって今後の文化芸術振興施策の充実に資する目的で開催されております。河合長官が就任されました平成14年から全国各地で開催されていて、奈良県が32回目ということでございます。私は32回のうちの最後の3回に公聴会の責任者として出席させていただきました。
 内容は、地元の知事や文化関係者の方々と文化政策についてシンポジウムや意見の聴取を行うものでございますけれども、あわせて今年度は基本方針の見直しを踏まえまして、「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて」をテーマに、懇談会の後で公聴会を実施しております。奈良県においても、さきに行われました長崎、神奈川同様、文化政策部会を代表いたしまして、これまでの部会での議論を踏まえまして基本方針の概要と見直しの趣旨等の説明を行い、今回奈良県においては白石委員とともに、参加者である文化行政担当者や文化芸術関係団体の方々からご意見を伺いました。
 シンポジウムは「文化財で地域を元気に~文化財の保護と未来への継承~」というテーマで行い、基本方針の見直し公聴会では、例えば文化財に関するものといたしましては、「先人の生き方や教えを学ぶ上で文化財が重要な役割を果たしている」といったご意見、「伝統文化、郷土文化を大切にしてほしい」というご意見、またアンケートでは、「文化財は失われると取り返しのつかないものだけにその保存修復に努力してほしい、文化財の保存のあり方についてもっと地元の知識を持っている方あるいは文化人の方々の意見が届くように検討願いたい」といった意見が寄せられておりました。そのほかにも、「文化に関する教育を幼稚園から行うよう考えてほしい」とか、「日本語の正しい理解、国語力についてもっと重点的に取り扱われたい」と、広く文化芸術全般に関する意見もいただきました。
 懇談会の概況やアンケートの回答も含めた会場からの意見の詳細は、資料1にまとめてございますので、ご覧いただきたいと思います。今後、中間まとめに対するパブリックコメントの結果と同様、会場からのご意見も参考にして、基本方針の見直しの中に反映していきたいと思います。
 また、奈良県では、文化財部長から高松塚そのほかの保存修復の問題について周到なご説明がありまして、会場では納得されたと思います。
 次に、議題の1として、先ほど申し上げました中間まとめに対する意見募集の結果に関しまして、まずその概要に関して事務局よりご説明をお願いしたいと思います。

○事務局 それでは、お手元の資料3をご覧いただきたいと存じます。
 中間まとめにつきまして、8月4日から9月1日までの1カ月間、国民の皆様からの意見募集を行いました。記者発表、ホームページへの掲載、さらには都道府県や文化芸術関係団体等へ送付し、ご意見は、郵便、ファクス、電子メール等々でいただいたものでございます。
 意見総数は102件で、内訳といたしまして、団体から46、個人から56の意見をいただいております。
 参考資料の「意見募集の結果」の最後のページに意見提出いただいた団体のリストを付けております。この参考資料でございますが、中間まとめの項目ごとにいただいた意見を分類して、そのまま掲載しているものでございます。したがいまして、いくつかの項目に分けて意見をいただいた団体につきましては、各項目に分かれて意見が掲載されていますので、ご了承いただければと思います。
 資料3にお戻りいただきまして、簡単に概要についてご説明させていただきます。
 初めに、1.「第1次基本方針」の評価と課題について、全般的な意見といたしましては、1つ目の○にもございますように、芸術家の地位の向上については、環境づくりが必要であり、公演数など公演機会の数量的な把握も必要である。あるいは劇場スタッフの職業としての確立の環境整備が重要である。さらには、子どもの文化芸術体験活動を推進する上では、家庭環境による格差や学校間の格差に対する一定の措置を講ずる必要があるといったご意見がございました。
 それから、この中間まとめについては、具体的なビジョンとか、目標や時間軸等が示されていないのではないかというご意見、また寄附文化の醸成とか、税制の見直しといった仕組みづくりについても検討することを書く必要があるのではないかという意見がございました。
 下の2つの○についても、具体的なイメージがわいてこないのではないか、あるいは検証結果の提示が必要ではないかという意見が示されてございます。
 2ページ、(1)文化芸術の振興の今日的意義についてでございますが、上の2つについては、重要な課題であるというご意見でございます。また、「文化力」という言葉はやや自国文化中心主義的な誤解を生むのではないか。あるいは、文化と経済の関係ではやや経済重視の記述になっているのではないかというご意見をいただきました。
 (2)「第1次基本方針」の評価について、上から3つ目の○、「文化施設の整備が進展した」という現状認識は適切ではないというご意見もございます。それからいくつか、芸術家の地位の向上に関して、どのような状況を指すのかといったご意見とか、公正なルールづくりよりは現行制度の見直しを図るべきではないかというご意見もいただいております。環境整備については、多様な協働の仕組みづくりが必要ではないか。それから、現代の文化芸術に関しても、伝統文化と同じ比重で記述することが必要ではないかという意見もいただいております。
 次に「第2次基本方針」の基本的方向性について、3つに分けて基本的方向を示しているわけでございますが、全体的な事項につきましては、例えば関係府省間の連携・協力を一層推進していくことを明記した点は評価できるというご意見もいただいています。
 3ページでも、具体的な実現目標をもう少し明示することが必要ではないかというご意見。それから、税制関係では、公益法人やNPOの健全な組織運営を実現する施策を講ずるなどの積極的な取り組みの要望、企業が文化芸術活動に支出する寄附金に関しての税制に関する要望がございました。それから、文化財の保護についての記述を充実させるべきといったご意見もいただいております。
 「(1)の文化力の時代を拓く」につきましては、伝統文化の保存と継承は経済的効率性とは異なった評価軸が必要ではないか。文化芸術活動の方では、短期的な経済的効率性を一律に求めるべきではないといった内容に賛同するというご意見もいただいております。指定管理者制度について慎重に対応すべきという意見をいくつかいただいております。
 次に「(2)文化力で地域から日本を元気にする」につきましては「東京一極集中の緩和」について、一方では一極は望ましいというご意見もいただいておりますし、もう一方ではその方向は誤っているのではないかというご意見もいただいております。団塊世代向けの施策の充実に当たっては、生涯学習・社会教育政策との連携が必要ではないかというご意見をいただいております。
 「(3)国、地方、民間が相互に連携して文化芸術を支える」につきまして、4ページをご覧いただきたいと思います。地方自治体に高い専門性と見識が必要であるというご意見。それから、「地方公共団体が様々な民間団体とともに協働することが期待されている」という表現が必要ではないかというご意見。それから、国は自治体や民間と競争するのではなく、それらの活動を後方支援するべきというご意見をいただいております。
 3.「第2次基本方針」で重点的に取り組むべき事項を5つ示しております。全体的なご意見といたしましては、文化財に関する事項をこの重点の中に立てるべきではないかという意見、あるいは、劇団については活動の総体に目を向けるべきではないかというご意見、それから、中間支援組織の重要性に関する認識が不足しているのではないかといったご意見をいただいております。
 個別の事項では、「(1)日本の文化芸術を継承、発展、創造する人材の育成」につきましては意見の数もかなり多くいただいております。例えば、文化芸術コーディネーターは民間に求める前に地方公共団体及び地方の教育委員会において育成すべきといったご意見や国の役割は個人が活動しやすい仕組みをつくることなのではないかといったご意見もございました。
 5ページ、経済的自立の点については伝統文化の継承者のところで記述してございますが、これについてはそれに限らず、文化芸術創造活動に携わる人材にとっても大きな課題ではないかといったご意見や舞台技術者等の養成・研修についてもご意見をいただいております。それから、教育機関との連携を図って、文化財の保存・活用の場面に参加するようなプログラムの提供が望まれるといったご意見、文化ボランティアの受け入れ体制の強化とその指針を明確にすることが重要ではないかといったご意見もございました。また全国で創造的な活動を行っている劇場と研修を希望する人材とをマッチングさせる制度を検討できないかというご意見をいただいております。
 「(2)日本文化の発信及び国際文化交流の推進」につきましては、アジアとの文化交流が重要ではないか、そのためにネットワークを構築することが必要だというご意見や、国際共同制作の推進に力を入れるべき、それから、発信も重要であるけれども、自国の文化の保護が急務ではないかという意見もございました。
 「(3)子どもの文化芸術活動の充実」につきましては、今回の意見募集の中でも最も多く意見が出されました。中でも、子どもの鑑賞機会の充実について、国を含めた多角的な取り組みの検討が必要といった意見でございますとか、すべての子どもに対して少なくとも年に1度、生の舞台芸術に触れる機会を等しく保障すべき、あるいは、親子で生の舞台を鑑賞できる機会を増やすべきというご意見。それから、学校と地域文化、芸術家を結ぶバランス感覚のあるコーディネーターが必要だといった意見などをいただいております。
 「(4)地域文化の振興」につきましては、文化財を積極的に保存、活用することによって地域づくりを行うことを強調すべき、さらに、国立劇場とそれを補完するいくつかの拠点劇場を準国立劇場として、東京圏を含めた各地域に整備すべきといった意見がございました。さらに、例えばいくつかの特定の地域を国や地方公共団体が積極的かつ重点的に文化芸術振興策の展開を図っていってはどうかといったご意見もございました。一番下では、各地域の小規模の文化行事を知るための全国的な情報源がまだ不十分ではないかといったご意見をいただいております。
 7ページでは、大学が持つ文化力を地域によりよく還元できるための助成を希望するといったご意見をいただいております。
 「(5)文化芸術創造活動の戦略的支援」につきましては、再助成制度の実施について、評価や審査を充実させる、さらには専門性の高い機関の新設を望むといった形で、いくつかのご意見をいただいております。さらに、企業のメセナ活動も含めるべきといった意見もございました。
 次に、「第2次基本方針」における基本的施策の見直しの方向性についてという項目でございます。例えば、様々な文化財のデータベース化及びウェブを含めた様々な媒体での公開の促進が必要といった意見を含めて、文化財に関するものもかなり出てきております。
 8ページ、2つ目の○で、地域文化コーディネーター育成の問題では、経験豊かな人材と、新しい若い人材の双方の育成が急務であるというご意見、その他、国語の問題、著作権の問題、それから文化芸術活動のデータ収集体制をもっと強化すべきというご意見や、ここでも税制の問題のご意見をいただいております。文化施設については、専門性を持った人材育成センターとしての見直しが必要だという話や、舞台技術者の位置づけを定める法的制度の整備が必要であるといったご意見などいただいております。
 最後に、その他中間まとめ全般につきましては、アートNPOとの協働の推進を図る具体的な方策を講じるべきである。ここでも寄附税制について、公立劇場を含め適用を拡大していくといったご意見をいただいております。それから、関係府省間の連携が重要である。学校教育との密接な連携が必要である。それから、大人の観客育成のプログラムもつくってほしいといった意見など、ご意見をいただいております。
 大変雑駁ではございますけれども、いただいたご意見の中から主なものを事務局の方で取り上げさせていただきました。以上でございます。

○青木部会長 大変多様な意見がたくさん寄せられておりますが、これにつきまして委員の皆様のご意見を賜りたいと思います。
 具体的なビジョンなどをどう入れるかですね。最終的な第2次基本方針は、いろいろなものをある程度ならして入れていかなければいけないので、どうしても足りないところは出てくると思うんですけれども、いかがでございましょうか。

○田村(孝)委員 パブリックコメントが102件しか来なかったというのに私は非常に愕然としております。放送などでシンポジウムとかフォーラムとか、意見を寄せるような番組があった場合、私も全くPRしなかったわけではありません。もっとお一人お一人がどなたかに声をかける必要があったのではないかと思います。後ろを見ますと意見をお送りいただいているのは芸術関係者なんです。一般の方がどう思っていらっしゃるかということがわからないというのと、もう一つ、各自治体の教育委員会、社会教育課にご意見をということを言っていただけたのかどうか。実際、ここにお話しにきてくださった方でも、パブリックコメントを求められているのは知らなかったというお話は聞いております。これは私も含めまして反省すべき点だと思っております。

○青木部会長 確かに、ネット、新聞とかテレビとか雑誌とか、そういうところにも、こういうものをやりましたよというのを示すことは必要かもしれませんね。

○竹下政策課長 教育委員会を通じて周知してくださいというお願いは文書でさせていただいております。102件という数でございますけれども、ちなみに最近学校教育の分野でパブリックコメントを求めていますが、その件数を見ていますと、1けた、あるいは十何件とか、そういうものがほとんどでございまして、それに比べましたら多いかなと思っています。ただ、おっしゃりますとおり、PRという点でやはり不足はあったのかなと考えております。

○田村(和)委員 時期的に最も非文化的な暑い夏にかかっていますね。それから文化というのは非常にたくさんの人が興味を持っていることだけれども、いざ議論するとなると、文章化するのに難しい。数は少ないけれども、ここからスタートするしかありません。拝見して中間まとめ全体に説得力に欠けているところがあるなという気がします。方針への期待もあるだろうという気はするんですが、一番問題なのは、我々の側でこういうレポート、あるいは今度は最終答申ですから、我々なりの割り切りと定見をきちんと持たなければいけないと思います。何回もお話ししていますけれども、決して経済の議論ではなくて、こういうところでも政策としての選択と集中というのは全体論の中できちんとやっていくべきだというのが、読んで感じたところです。
 それから、具体論に関しましては、アイデアレベルでもっともっと生かせるものもたくさんあるなと思います。ただ、これはどういう論理の中で生かしていくかをもっと考えていかなければいけないということなんですが、最終的な答申としては、このアイデアレベルのあたりを目玉として提起する必要もあるかなという気がしています。

○青木部会長 どこの部分ですか。

○田村(和)委員 後半のいろいろな試みなど細かい話があります。そのあたりで気がついていないところもあるので、こういう話を我々の提案として考えていく必要もあるかなという感じがします。
 ですから、全体論の説得力の欠如と、それからもう少し具体論のところで、ある意味でマーチャンダイジングというようなことが必要かなという感じはしました。

○青木部会長 これを拝見しますと、かなり選りすぐったいいご意見ですよね。きちんと読んで、考えていただいてます。ですからあまり数は問題にならないと思います。内容的には非常に立派なものだと思います。
 奈良での懇談会でも文化財が非常に問題になって、文化財について触れていないというご意見がありましたが、やはり触れるべきかなと思いました。領域は5つですけれども、それに追加しても構わないと思いますけれども。

○川村委員 全体は非常によくまとまっているんだけれども、組み立てとして伝統文化とか文化財の継承という大きな部分が抜けてしまったなと思います。このご意見の中に、それは自国文化主義だという表現があったけれども、伝統文化というのは我々のアイデンティティーの問題なんです。それを、国の力というのは自国文化中心主義だからだめという発想ではなくて、国際社会に生きていく我々のまさにカルチュラルなアイデンティティー、そのよりどころとしての伝統文化を保護する、継承するというのが柱立てとして抜けてしまっていると思います。

○青木部会長 文化財と言っても、いわゆる物質的なものと、それから無形文化財というのがありますね。両方入れておくべきですね。無形文化財は、特に今ユネスコの問題にもなりましたから。

○川村委員 法隆寺が風雪に耐えてきたのはきちんと手入れしてきたからではないかというご意見がここにありましたね。法隆寺の建物を現代まで伝えているのは確かに地道に何年かおきに修理しているといったこともあるし、無形文化財はそのもの自体がまさしく心のよりどころになっているのだから、何かそういうものが全体の柱の中で抜けているというご指摘があって、大変もっともなことだと思います。

○根木委員 コメントの方はもっともなご意見が多分にあったのではなかろうかと思います。ただ、方向性などということになりますと、どうしても抽象的にならざるを得ない。ただ、第2のところでもうちょっと具体化するといった手はあろうかと思います。
 それから、確かに全体の構成としてやや芸術文化に少し傾斜し過ぎているかなという感じがあります。もともと文化行政というのは、施設などをつくる設置者行政と、民間の芸術活動を支援する支援行政と、いま一つの重要な柱が文化財の保護行政なんです。保護行政の部分が確かに柱として欠落していたのではないかと作業部会の一員としても反省しているところですけれども、全体の構成として、やはりこれを一つの重要な柱として、方向性の中にもきちんと位置づける必要があるかなという感じを持ったところでございます。

○青木部会長 確かに、文化の多様性の擁護、文化的表現の多様性の擁護というのはユネスコ条約にありますので、それを踏まえた文化財の問題提起だといいと思います。

○松岡委員 基本方針をつくるときに、文化庁自体が主導的に直接行えることと、ほかに働きかけてそれを動かしていくという、大きく2つに分かれるはずなのが、この意見を読んでいると、混同されてしまっているところもかなりあるのではないか。ですから、こちらとしてそれをつくる場合も、文化庁主導では、例えば文化財の保護や、一つの組織をつくって、それをプロパーでやれるということもあれば、例えば寄附行為や税制の問題はものすごく難しくて、民間からの支援がなくては、成り立っていかないと思いますが、それに関しては、文化庁主導では絶対できなくて、他の省庁に文化庁が働きかけていかなくてはならないというものがある。今の場合は国の組織の中の他の省庁に働きかけるという部分です。それからまた別に、民間団体とNPOなどと協調してやっていかなければならない。もちろんこの基本方針の組み立て方というのはこれでいいとは思うんですけれども、他の省庁にはどういうことを働きかければ、要望に少しでもこたえていけるのか。一度考え、基本方針を組みかえて、それを入れていくということをすれば、弱いところが埋められるのではないかなということを思いました。

○横川委員 今回いわゆるアンケートをとったということは大切なことなんですけれども、演劇・舞台、音楽関係がその中の半分ぐらい占めているんです。そういう分野の専門家たちが各論的なところで回答していると思います。我々も気づかないところは数多くあり、これを参考にするということは大切ですけれども、まとめをしていく上で、いろいろなご意見を盛り込むということになりますと、ますます混乱するのではないでしょうか。
 興味のある人たちは積極的に参加なさるけれども、一般の人というのはほとんど目に触れない、大切なことをみんな興味を持って見ないんです。一般の人がいかに興味を持っていないか、あるいはそういうものに対するとらえ方、考え方を思うと寂しくなります。これだけ一生懸命皆さん真摯な意見を出されてやっているのにもかかわらず、それを支えなければいけない一般国民はそっぽを向いているような状態じゃないかと思うんです。ですから、多少盛り込むところはあるにしても、またこれをいろいろな盛り込もうとすると、収拾がつかなくなるのではないかという懸念を持っております。

○青木部会長 確かに特定の分野の専門家の方がかなり書いていらっしゃいますね。文化機関、文化施設あるいは舞台芸術の関係、そういうところの方がもっと支援してほしいと一番痛感されているということですね。文化財の重要性をどう現代の日本人に認知させるかというのも難しいですね。

○横川委員 新聞報道でもそれについては提示されているんですけれども、意外と新聞社自体もフィードバック的なことがないんです。

○青木部会長 文化財の重要性を広く認知されるような形での報道は本当に少ないですね。ただ、日常的な活動として、子どもの芸術活動でも文化財の重要性をもっと教える。どうしてそれが文化財になったのかという面で説得力のある説明がないと、なかなか納得しませんですね。

○富澤委員 気になるのは、一つは、関係する各省間の連携・協力を求める声が非常に目立っています。裏返せば、なかなか連携がうまくいっていないということを皆さん感じてらっしゃるからこそそういう意見が出てくるのではないかと思います。例えば、寄附金の扱いなどについても、なかなか前へ進まないといったいら立ちもあるでしょうし、何とかしてほしいという強い要望もある。そこのところを何とか突破していかないと、近い将来、日本が文化芸術立国になかなか近づけないだろう。大きく掲げた文化芸術立国を目指そうというのは、内閣、政府の基本的な政策の中に反映していくかということが非常に大事で、そうなればまた国民の関心も高まるでしょうし、メディアの関心も高まるということではないかと思います。具体的なビジョンがないという指摘も、私はそう思います。そのように持っていけるように少しでも努力するということが大事だなということを感じました。
 それからもう一つは、この中で日本文化の発信という中に、アジアとの文化交流が大変重要だというご指摘がありますけれども、これは非常に大事なことで、日本の強さというのをピーター・ドラッカーなども必ず日本の地域性、地政学的なメリットを言うんです。日本というのは非常にいい位置にいて、今世界が目をみはる中国とか韓国に一番近い地位にいるということは、メリットになっているわけです。だから、うまく活用して日本の多様性のある文化を世界に発信していく。日本の強さも生かしていくということも必要と感じた次第であります。

○上原委員 確かに各省庁の連携ということが見えていないと思いますが、文化立国と言うからには、これを国を挙げてやっているんだという姿勢を示すために、文化に関する各省庁の施策一覧ができないかというお願いを以前いたしました。それがあると、随分国を挙げていろいろな省庁が文化、地域文化、農村文化に対して支援しているということが見えてくるのではないかなと思うのですが、そういうことができないかというのが1点です。
 2点目は、これは別の意見ですが、意見の4ページの3、今後5年間で重点的に取り組むべき事項の(1)のところの日本の文化芸術を継承、発展、創造する人材の育成についてというところは、実はこの部会の中で随分議論があったのと同じような内容の意見がたくさん出ています。これを参考にしながらもう一度整理すると、意見に対する答えが出るのではないかなと思います。

○白石委員 私は、委員長と長官とご一緒に奈良の懇談会に参加させていただいて、直接住民の方の声をお聞きしたんですけれども、参加人数は200人以上だったんです。ですから、必ずしも国民の関心が低い、意見をなかなか言わないということではないのではないかなと思います。
 内容的にいいますと、奈良という土地柄かもしれませんけれども、いろいろな分野にわたって文化財保護・活用という声が非常に強かったのを感じ取りました。保護だけではなくて、保存と活用は常にペアになっているものだと思います。奈良のときにも、創造的活用といったご意見をいただきましたけれども、現代の文化をつくっていく、そのためには基礎になる日本のそういう文化財、伝統文化、地域文化、そういうものをどれだけ今の文化をつくる力にしていくかということが重要だろうと思いますので、確かにそういう柱立ては必要かなという気がいたします。

○熊倉委員 文化財保護はもちろん非常に重要な問題で、この部会のヒアリングで、私個人も大変勉強させていただいて危機感を募らせました。ただ、文化庁がもちろん引き続きこれまで行ってきたあるいはそれ以上に文化財保護をしっかり行うべきという認識には異論はないんですが、国は文化財保護だけをやって、それがメインの役割ということになると、日本の文化行政は1980年代に逆戻りすることになると思います。あの当時の文化庁の方針でいたら、この文化芸術振興基本法という法律は決して成立しなかったと思います。古いものを守っていくと同時に、これから新しい文化力というものをきちんと国も振興していく責務があるということをうたったことでこの法律は意味があると思います。
 それから、滅びつつある産業を国が全部税金を投入してひたすら守っていけばいいかというと、もちろんそういう問題でもないと思います。この文化財保護あるいは活用の分野においても、中間まとめの中で、十分な形で打ち出せなかったかもしれませんが、民間との連携や、地域の人々の力などの活用がまさに求められると思います。それは、何年か前に、「地域文化で日本を元気にしよう!」ということで政策部会でまとめられました。近代文化遺産も含めて、なかなかおもしろい事例が取り上げられていたと思います。学校で日本文化を見直せと子どもに無理やり言っても、中には単に反発を感じるだけの子どももいるでしょうし、そういったところでも非常にきめの細かな、なぜ伝統文化というものがあなたの人生にとって必要なのかということをさまざまな形にかみ砕いて教えてくれるような人的資源が欠けているというところをむしろ認識したいと思います。

○嶋田委員 この意見書の中には、この中間報告を受けたいろいろな具体的なプランというのもかなりあります。その具体的なプランの方は文化庁の毎年の施策の中で取り入れられるものもかなり入っていると思いますので、そういった形で国民の声にこたえるという視点があれば、皆さん納得されるんじゃないかなということと、2ページ目の(1)の4番目の○で、経済重視の表現を緩和してはどうかというご意見がありました。参考資料の2ページのところで、「文化芸術の振興は、国際競争のみの表現ではなく、国際的な平和や友好と信頼関係を築く上でも重要な意義を持っている」とあります。これから5年先を考えていきますと、国際的な紛争もますます増えてくるような気がいたします。どうしても国力を高める上でも文化は重要だという視点を入れようということで今回つくられたんですけれども、根源的な意味での文化の持つ力の範囲をもう少し広げ、平和という表現を少し加えるのもいいかなと思いました。

○青木部会長 そうですね。確かに重要なご指摘だと思います。

○吉本委員 パブリックコメントのまとめを拝見すると、具体的なイメージがわかないとか、目標や時間軸を盛り込んだ計画の機能を持たせるべきだという意見が結構あります。けれども基本的な方針はある程度抽象的にならざるを得ないというのは確かにあるかと思います。基本的な方針がある程度抽象的、理念的なことしか記述できないのであれば、具体的な政策としてそれがどのようになるのかということとあわせて何か提示できるような方法はないかなと思いました。

○米屋委員 いろいろな方に意見を出してくださいとお願いして、直接意見を聞くような場も設けました。作成チームにかかわった身としてとても反省させられることが多かったんですが、その中で、まずわかりにくいという反応が相当ありました。大事なのはわかるけれども、具体的に何のことなのかよくわからないし、どう反応していいかもわからないという率直な意見を結構身近に聞きました。わかりやすい文書としてPRするということと、理解してもらえる努力というのをもっとしなければいけないということを強く感じました。
 それと、現状認識が甘いというおしかりをいただきました。それは、例えばそれは東京一極集中というところのコメントの要約にもございましたけれども、何をもって東京一極集中と言っているのか、実際に具体的な分野では格差があったりとか、あるいは東京対地方ではなくて、家計の中での所得格差であったりというところでかなり格差が広がっているのではないかという危機感であったり、あと1970年代、80年代ぐらいにたくさんつくられた文化施設の老朽化の問題があって、ハードが大体行き渡ったからソフトの充実などという安易な問題ではないのではないかといった指摘もあって、もう少し危機感を持ってシビアに認識した上でそれをどうしようとしているのかという政策として提示しないと、甘いと言われてしまうのかなというところが大きな反省点として2つありました。

○青木部会長 お二人のおっしゃったことは、この次の第2の議題に直接関係してきます。

○河井委員 この中間まとめについて、内容がよくわからないという意味の意見については、もう少し前向きに取り組む必要があるのかなと思っております。私どもはこの方針があくまでも現場でいろいろ文化活動をする人たちの指針になればと願っているのですが、例えば資料5に文化庁の概算要求の重点事項というのがありますが、この程度のレベルに具体的に表現していただけると、国がやろうとしていることがわかりやすいし、それから現場で活動している人の指針にもなるのかなという気もしております。5年、できましたら向こう3年ぐらいの、文化庁が考えている具体的な施策のメニューを示された方が、この基本方針のより深い充実に役立つのではないかと思っております。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、第2の議題にも関連しておりますので、第2の議題の方に移りたいと思います。もちろん、今いただきましたさまざまなご意見をまた部会及び作業チームでの検討でいろいろと入れさせていただきまして、それで答申案作成に向けた審議の参考とさせていただきたいと思います。
 次に、答申・第2次基本方針の構成等についてでございますが、それでは、答申・第2次基本方針の構成等についての審議に移る前に、事務局から資料4のご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○竹下政策課長 資料4-1、4-2をご覧いただきたいと思います。あわせまして、机上にお配りいたしております緑色の冊子ですけれども、現在の第1次方針、基本的な方針、それからおまとめいただきました中間まとめについても少し引用させていただきながら、ご説明させていただきたいと存じます。
 現在の第1次の基本方針の構成との関係、そしておまとめいただきました中間まとめとの関係について図示させていただいて、今後、答申案、そして基本方針案をまとめていただく際のご参考にしていただき、柱立てについてご検討いただければということでつくった資料でございます。
 資料4-1をご覧いただきますと、左から中間まとめ、そしてこれからおまとめいただく予定になる答申、そして閣議決定レベルになる第2次基本方針の案、そして右側が現在の第1次基本方針でございます。
 下に3点ほど、検討を要する事項ということで、中間まとめと答申との関係を今後どのようにしていくのかが書かれています。特に基本方針としての柱立て、第1次基本方針と現在の中間まとめの構成というのは、そのままイコールではないわけでございまして、そういったことをどうするのか。また、記述の表現でございますけれども、中間まとめでは本部会としてこのように考えるといった記述等がございますので、それが答申レベルではそのような記述は基本的に生きることもあり得ると思いますが、前回の第1次基本方針で申しますと、そこは分けないで整理をされたということです。一番右、第1次基本方針でございますけれども、答申としては、この「(参考)大地からの手紙」を入れていただいたわけですけれども、閣議決定となりました第1次基本方針については、この参考の「大地からの手紙」は当枠を外した形で基本方針として閣議決定されているということがございます。
 それから、検討を要する事項の2点目でございますけれども、これからおまとめいただく答申と閣議決定との関係をどうするのかということでございます。
 そして3点目が、第1次基本方針において、第1の2の(2)に重視すべき方向とございます。文化芸術に関する教育から5番目の文化芸術に関する財政措置及び税制措置とございます。この中に、先ほどパブリックコメントの結果を踏まえてご議論いただきましたが、文化遺産とございますけれども、文化財について重視すべき方向といった形で入っているということがございました。それと、その下に黄色の四角で書いてございますけれども、4として、文化芸術の振興に当たって留意すべき事項というものが現在の基本方針にございます。これは中間まとめに入っていないわけですけれども、これを今後、答申なり第2次基本方針案の中でどう生かしていくのかということでございます。
 この中間まとめにつきましては、国民に広く意見募集をしようということで、それを意識されて、できるだけ網羅的あるいは総花的なものにならないように、審議会としての考え方がよくわかるように、メリハリのきいたものにしようという考え方のもとにまとめられたものでございます。すなわち、現在の第1次基本方針で申しますと、第1、第2と2部構成になっており、その第1部に当たりますが、第1の文化芸術の振興の基本的方向性、ここに相当する部分というのが左端の中間まとめの1~3に当たる部分であろうかと思いますけれども、この中間まとめにおきましては、2の「第2次基本方針」の基本的方向、そして3の「第2次基本方針」で重点的に取り組むべき事項(今後5年間を目標に)と、この部分について審議会としての考え方・主張をしっかり盛り込んでいただいたと理解しております。したがいまして、具体性がないということがパブリックコメント等でございましたけれども、一方で、第1次基本方針であれば2部構成の第2部に当たるところに相当しますのが、左端の中間まとめでいきますと、4の「第2次基本方針」における基本的施策の見直しの方向性という部分にあるわけですけれども、ここではあえて中間まとめ段階では具体的な基本的施策について述べることはせずに、見直しの方向性だけを書いていただいたということがあったわけでございます。
 今後の答申・第2次基本方針案についての事務局としてのご提案でございますが、このようなこれまでの審議会としての考え方あるいは経緯を踏まえさせていただきますと、今ほどの左端の2の基本的方向の部分、それから3の重点的に取り組むべき事項の部分を答申・第2次基本方針(案)の構成の中ほどにそのまま移しておりますけれども、第1部、表題は「文化芸術の振興の基本的方向性」と書いておりますけれども、この中核に位置するということになるのではないかということで、そのような位置づけをさせていただいているところでございます。
 それから、文化芸術の振興の必要性というのが1のところにございますが、そこには中間まとめ段階では今日的意義といったところについて触れられたわけでございまして、現在の第1次基本方針に文化芸術の振興の必要性として、1ページの下、(1)人間が人間らしく生きるための糧、それから2ページ目にまいりまして(2)、(3)、(4)、(5)とあるわけでございますが、この中に世界平和の礎というものがあるわけでございます。この部分を中間まとめ段階でも最初は意識していたわけですけれども、できるだけコンパクトにまとめようということで、この部分はあえて書かずに、今日的意義だけを書いたという経緯がございます。したがいまして、今回答申案・第2次基本方針(案)にまとめていただく際には、この第1次基本方針でご覧いただいた文化芸術の振興の必要性の(1)から(5)といった部分と今日的意義というものを合わせて記述していただくというのも一つの手ではないかなと考えております。
 それから、資料4-1、中間まとめの1(2)に「第1次基本方針」の評価という項目がございます。事務局からのご提案としましては、答申・2次基本方針(案)では、それを第1部のところではなくて、参考といった形で添付資料にしてはどうかといった提案をさせていただいております。中間まとめの2ページに(2)第1次基本方針の評価ということで書いていただいているものでございますけれども、その2ページの(2)「第1次基本方針」の評価の2行目ですが、「基本法第2条に掲げる文化芸術振興の理念にどの程度到達できたかを大きく次の6つの視点から評価する」ということで記述いただいております。理念に対する到達度評価といったことで抽象的にならざるを得ないという面があったかと思います。そういったことも踏まえまして、現在の基本的方向の第1部の部分を明確な主張をするということで、またこの評価分、それから具体的な施策がどのように進んできたのか、前期の政策部会で、施策が方針のできる前と現在とでどのように変わっているかという資料として出させていただいたことがございましたけれども、そういったものをあわせて参考として添付するという考え方もあるのではということでご提案させていただいております。
 続きまして資料4-2をご覧いただきたいと思います。これは、もう少し答申・第2次基本方針(案)と現在の第1次基本方針の構成を比較してつくらせていただいたものでございます。まず、第1次基本方針の3(水色)のところでございますけれども、文化芸術の振興に当たっての基本理念として(1)から(8)までございます。それをこの第2次基本方針案たる答申案においてもそのまま内容として生かしていただくような形でどうだろうか。それとあわせまして、先ほど子どもの文化芸術体験の充実等々のご意見がございましたけれども、中間まとめに当たっても重視していただいた次世代への文化芸術の継承といったものを(9)としておりますが、順番は別としまして、この基本理念の中に入れていただくという方法もあるのではないかというご提案でございます。
 それから、第1次基本方針の4.文化芸術の振興に当たって留意すべき事項が、芸術家等の地位向上のための条件整備をはじめ4点ございます。また、第1の2、文化芸術の振興における国の役割等ということで、(1)国の役割、(2)重視すべき方向、(3)地方公共団体及び民間の役割といった部分があるわけでございますが、これらにつきましては、矢印で中心となるところを図示させていただいておりますけれども、それぞれ新しく入れてはどうかと考えております答申・第2次基本方針(案)の2の基本理念、それから3の基本的方向、また4の重点的に取り組むべき事項といったところで記述できるのではないか。構成上、現在の基本方針の第1の2、それから4は、答申・第2次基本方針(案)では柱として立てないで、内容的にそこで生かしていただくということがあるのではないかと考えたものでございます。
 以上、ご提案とさせていただきます。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、今のご説明を踏まえまして皆様のご意見をいただきたいと思います。

○伊藤委員 パブリックコメントの声も含めて感じていることは、多分この審議会が始まった最初のときの議論にも戻っていくのではないかと思うのですが、そもそも基本方針とは一体何であるのかということをもう一度再確認しつつ、新たな第2次基本方針の構成というものを考えていくべきではないかと思っています。
 たしか昨年の審議のまとめの際に、第1次基本方針の第1と第2の間をつなぐ要素をきちんと明確にしていこうということが一つのポイントであったと思います。今年度、3の基本的方向、4の重点的に取り組むべき事項の中でいくつかの問題が提起されていたわけですが、方向と実現手段が混在しているために、今回パブリックコメントの中でもわかりにくいという指摘が多く出たような気がしております。本来、基本方針の構成としては、まず、向こう5年間の変化を見越した方向を出すと同時に、次にそれを実現するためにはどのような方法、実現手段が必要であるかということを問題提起し、具体的には何を行うかという記述に入っていくべきではないかと思っています。そういった意味で2番目の方向として、現在1に入っているものからもう少し整理して抜き出したり、今の事務局案で言うならば、5の留意すべき事項の中に前回いくつかの政策連携が入ったわけですが、ここを5として入れるか、あるいは第2として、現在の第2を第3とするか、そういった形の処理の仕方をまず検討していただければと思ったわけです。
 その実現方法の中で議論しなければいけないのは、第1点が、文化政策自体を今後進めていくあり方だと思います。これは基本方針とは何かといったときに何度も議論になったと思いますが、これは閣議決定されるものであって、文化庁の施策の体系ではないわけです。すなわち、文化立国としての日本の指針として存在するものではないかと思っています。文化芸術の振興に関する基本的な方針はあくまで閣議決定として、文化庁がある程度大きな役割を担うにしても、他の省庁も含めて国全体の施策の中で文化力という概念をベースに施策を考えていくといったことをはっきりさせていく。そのためには政策連携や調整などの問題、ほかの省庁が取り組んでいる文化施策についての一覧に整備していく問題、あるいは中間支援組織という形で議論されている問題などがあります。この中には、民間や地方自治体との連携も入ってくると思いますが、従来文化施設として存在している、特に国立の文化施設や芸術文化振興会が果たすべき役割についての論点がやはり必要ではないだろうか。このような問題についても問題提起していく必要があるのではないかと思っています。
 もう一つ、評価の問題です。第1次基本方針にも評価のことについて、留意すべき事項で書かれていたわけですが、あまり進展がないような気がしております。
 2番目に、意思決定を踏まえた上で、実現手段としてどういったことが必要になってくるのか。5というよりは、その2として独立させて書いてほしいということが1点です。
 もう一つ問題提起として述べておきたいのが、現在の第2の具体的施策の問題ですが、これについては、今回の中間まとめでも述べている選択と集中を適用するのかどうかということが第1点。従来あった項目を並べて同じように見直して一部書きかえた形にするのか、あるいは選択と集中をして現在の項目を絞った形にして書くのかという問題。2番目は、それぞれについて達成目標なりロードマップ的なものをもう少し具体的にわかりやすく、目に見えるような形でつけるのどうか。現在第2になっている項目については、その辺を前もって決めておかないと、これから先の議論が混乱するのではないかということで問題提起したいと思います。

○青木部会長 今のご意見は大変重要だと思いますが、こういう構成でいいか、それからその内容という点でいろいろな問題がございますので、ぜひご意見をいただきたいと思います。

○中島委員 結局、大きく言いますと、大臣からこの基本方針はどうなんだというご意見を出されていて、それに対しての審議会としての答え、これははっきり出すという形が必要ではないかと思います。見直しについてという文章は、基本的な方針の改良案の部分もあるし、新しい提案をしている部分も入っているというところで、少し位置づけがややこしいと思います。ですから、議論を通して一度整理しておく必要があるのは、この第1次基本方針は一体どうだったのか、例えば理念の部分は、すばらしい、継承しようではないかということを言うのか、あるいは理念にも加えるべきではないかといったことを答えとして言うのかということです。大もとの理念は法律ですから、基本的な方針の最初の前段部分、文化芸術の振興の必要性の部分、ここは認めるなら認め、今新たな問題になっていっているところはどこなのかということをはっきりと答申できればいいと思うんです。既に新たに少し改良の余地が出てきていますということをきちんとお答え申し上げた上で第2次方針を組むのであれば、生かすべきところは生かす。
 一番最初の大臣からの諮問理由というところでも既に一つの示唆といいますか、問題意識として文化芸術立国を目指すということや、国が率先して振興を図っていくことが必要であるといったことがもう書かれているということを踏まえ、我々はこの文化芸術立国ということで話し合いをしてきたわけです。多分ヒアリングでいろいろなところからの意見が出されてきたところだと、出てきたものに対しての意見だったと思うんです。もともと何のためのこの諮問を受けているのかということから組み立てて整理して、何とかうまく答申及び方針を整理してつくれたらいいなと思います。

○青木部会長 つまり、第1次方針について5年間で、こういうところはおかしい、もう使えないとか、これでは足りないとか、こういうことを新しくということをわかりやすくということですね。
 第1次方針では、文化芸術の振興の必要性というところで文化のことが多く書かれています。こういうのはむしろ文化芸術論として入った方がいいかもしれませんね。

○中島委員 大きなトピックとしては、新たに出てきている議論は、文化財保護の問題というのが少し足りていないということははっきりしてきているんですね。ですから、そこの部分を新たな項目としていかなければならない。あとは、子どもについての問題です。教育的な部分についての問題。

○青木部会長 そういうところから重点を5つに絞ったんですが。

○松岡委員 何を継承するか、何を変えていくかということをきちんと洗い直すということなんですが、もう一つ改めて考えておかなければならないことは、第1次方針の出された平成14年と、それから現在平成18年でどう状況が変わったかということで、大きく、つまり官から民へという動きが加速されている。それから市町村合併ということがもうほぼ完了してしまった。それから世界情勢です。平成14年のときには、これほど状況が緊迫するということは恐らく考えていなかったのではないかと思う。文化というのが確かに国の力、土台を固める力でも確かにあるけれども、同時にこういう状況であればあるほど他とつながる力もあるんだということをやはり強調しておかなくては、変化した状況に対応できないのではないかと思うんです。政策課長もおっしゃったように、国の力だけではなく、文化があれば草の根でつながっていける可能性があるんだということは強調しなくてはいけないと思うし、それから、一つの現象として、指定管理者制度の問題というのもやはり官から民への動きがあったからこそ出てきたことです。ですから、文化を取り巻く状況の変化をもう一回確認して、姿勢を打ち出すということが大事なのではないかなと思います。

○青木部会長 官から民へということですから、文化庁、国が文化に対してどれだけのことができるか、しなくてはいけないか。また逆に限定とか範囲とか、それと民という場合に、文化の場合、どのようにとらえたらいいのか。その関係がもう一つ立体的に出る必要はあるかもしれないですね。

○松岡委員 この5年間で考え直すというのは、5年間で何が起こったのかという、ただ時間がたったから、このままで通用するということではないと思うんです。

○青木部会長 それから、例えばこれはあまり反映されていませんが、グローバリゼーションとか、情報化とか、それからアジアです。こういう情勢を踏まえるということは必要だと思います。

○加茂川文化庁次長 既にこれまでの議論の中でこの部会もしくは文化審議会のマンデートは明らかになっていたと思っていたものですから文化庁側から説明しなかったのですが、中島委員から確認をしていただきました。大臣の諮問にもありますように、第1次の基本方針を、状況変化等を踏まえてどう見直していくか。もともとは文化芸術振興基本法に根拠を置いていて、その中で議論をしていただく、第1次方針を踏まえて必要な見直しをしていただくという議論だということを指摘していただいたと思っています。
 文化の定義は、これもこれまでの議論にありましたように、基本法にはどこにも触れられていません。およそ文化芸術振興基本法、または大臣の諮問を離れて、広義の文化すべてについてここで議論して、国として取り組むべき方針を定めることを求められているのではないのであります。もちろん、定義自体がありませんし、状況変化もさまざまな要素がありますから、まとめ方には工夫があると思いますけれども、無制限に文化政策全般について大きな方針を定めてほしいという議論がここのマンデートとして与えられているのではないことをぜひご留意いただきたいと思います。

○青木部会長 それは重要ですね。むしろこの第1次答申にある文化とは何かといったことは省いて、文化芸術という政策的な用語を中心に展開した方がわかりやすいのではないか。文化と文化芸術とはどう違うかとかいろいろな議論が出ましたけれども、次長のおっしゃることを踏まえるとすれば、そういう配慮は必要かなと思います。ただ、これは見直しだから、ある程度は内容が専門的になるところはあると思います。
 それからもう一つは、状況を踏まえる場合に、タリバンがバーミヤンを破壊したことを受けて議員立法ができたり、また世界遺産に対する関心も近年非常に強くなってきたということもありますので文化財にもう少し配慮したほうがいいですね。

○田村(和)委員 事務局に質問ですが、今のお話を前提にどういう形でこの政策部会で論点をつくってお進めになるのか。例えば去年も議論したときに、それぞれの委員の方がそれぞれの専門分野でお話をされましたね。ああいうことをずっと続けていくのか。それともむしろ、今のお話に合わせて何か論点を想定されているのか。
 例えて言いますと、私どもも地域づくりという世界の中では、あれから5年間で一番大きな問題は、持続的成長という話が非常に大きくなったわけです。それから、"common"という、公と私の間に共という領域ができてきたことです。それから多主体協働社会というのが非常に明確に出てきているわけです。もっとミクロに言いますと、ロハスとかスローイズムと言われますね。ですから、自己実現の目標、ライフスタイルが変わってきたという大きな変化がこの5年間にあるわけです。例えば、先ほどから文化財の話があるんですが、実は単に昔の文化財保存に戻るのではなくて、そのあたりでまちづくりの中でどう生かしていこうかということに非常に関係してくるわけです。
 率直に言いますと、どういう論理構成でお進めになるのかお伺いしたいと思っています。

○青木部会長 いかがでしょうか。ちょっとそれをお願いします。

○竹下政策課長 資料6をご覧いただきたいと思います。
 できれば来年の1月中旬ぐらいまでに、この中間まとめを踏まえて、そして意見募集の結果、そして今日のご議論を踏まえて答申案をおつくりいただくことを考えております。そのためにも、中間まとめをおまとめいただく際にも作業グループということで、今日のご議論を踏まえて、中間まとめ案から答申案に変えていくという構成で、お力をいただきまして、それをもとに何回かご議論いただくという形で進めさせていただければと考えております。さらに中間まとめ以降の新たな要素を入れていただくということでお進めいただければと考えております。

○青木部会長 まとめ方はそうやって具体的な文章にしていくようなものに移行するような形でやっていかなくてはいけませんね。
 それからもう一つは、どういうものを出すかです。つまり、これと同じようなものを出すのか。今、文化庁から示していただきましたけれども、構成案についても、一体どういうものを出すかはいろいろと思案のしどころがあると思います。
 もう一つは、どうしても答申というのはだれでもわかる文章になるのはしようがないのかもしれませんが、全体にいわゆる見直しに際しての文化的な危機感が欠けている。何かそういうのがきちんと伝わるような構成の仕方、あるいは文章の書き方というのはあると思います。

○真室委員 まず基本方針の構成をもう少しシンプルに組みかえる必要があるのではないかと思います。大きくは、国の文化芸術の振興の基本方針をまず理念として挙げる。そして、その具体的な事項としては、具体的な施策として第2部で挙げているように、骨組みをつくって、そこに芸術文化の支援あるいは文化財の保護といった大きな柱を理念に入れるとか考えるんですが、基本的方向というのがまずあります。これと、その中で3番に基本的方向という同じような見出しがまた出てくる。そういうことがこれをわかりにくくしているのではないかと思います。

○川村委員 まず答申と基本方針が第1の場合はイコールであった。基本方針というのは、これは閣議決定で、政府の方針なんです。政府の方針の中にいろいろな思いを書き込むというのはおのずから限界がある。ですから、今回まとめるときに、答申は答申としてまとめて、基本方針は別というやり方もあるかと思います。けれども、基本的には答申と基本方針を合わせるということではなかったかということで、一緒にした方がいいのではないかとうことが一つ。
 それから、第1次基本方針というのはきちんとよくできているんです。5年たったから、基本的な芸術文化振興の必要性が劇的に変わったかというと、そうではない。基本的には、第1次基本方針をベースにし、そこで今の状況変化を必要に応じて取り込んでいく。
 それから、選択と集中というのはどのように考えるのか。政府の施策として打ち出すわけだから、今回の第2次基本方針で重点的に取り組むべき事項というのは、まさに状況変化をとらまえて、これから5年間に特に重点を置く、まさにここが選択の部分で、先ほど、文化遺産の継承という話がここに抜けているのではないかということを申し上げました。一方、第2の部分の基本的な施策というのは、これは政府の方針だから、選択で漏れたのは全部そこでなくなってしまったのでは具合が悪い。第1次でもあったように、政府としての文化振興の施策はずっとそこにある。だけれども、その中で特に重点として選択したものが重点的に取り組むべき事項といった整理をしていただければ、大変ありがたいなと思っております。

○吉本委員 資料5に19年度の予算要求が出ていて、これを見ると、随分新規の予算要求、施策の枠があると思いますけれども、基本的な方針で重点項目とうたっていることと、来年度の具体的な施策との間にあまり関連性がないのではないかという気がすごくします。例えばメディア芸術のあたりに新規の施策で予算要求が出ていますけれども、重点のところには全然そういう議論が出ていません。この基本的な方針は大きな理念と、それから第2部のところである程度具体的に書き込むと思いますが、同時に施策レベルの長期ビジョンのものとあわせて出されるようなことがないと、基本的な方針は基本的な方針、だけれども文化庁がやる政策は毎年の新規の予算要求でアイデアレベルで新しいものが出ているといった印象を受けたんですけれども、この基本的な方針と具体的な政策の予算要求との関連というのはどうなんでしょうか。

○加茂川文化庁次長 新規をたくさん要求していますのは、ここでのご審議を踏まえて文化庁でできる精いっぱいのことを"at most"で盛り込んだ案だということです。それも今後5年間の第1年目なものですから、姿勢としては、これまでのご審議を受けとめて、文化庁としての意気込みを盛り込んだというのが基本的な考え方でございます。メディア芸術についても位置づけができていまして、全体としてこの場のご意見を尊重した概算要求の1年目ということが基本的な考えです。

○青木部会長 それでは、いろいろなご意見をいただきましてどうもありがとうございました。答申の構成案や検討を要すべき事項につきましては、今いただきましたさまざまなご意見を踏まえ、作業チームにおいて検討を行いまして、それを次回の部会において提示させていただきたいと思います。作業チームの皆さんは大変でございますが、よろしくお願いします。
 それでは、続いて事務局より資料5、平成19年度文化庁予算概算要求の概要について、ご報告をお願いいたします。

○竹下政策課長 〈資料5の説明〉

○青木部会長 それでは今後のスケジュールに関しまして事務局よりご説明をお願いしたいと思います。

○事務局 〈次回連絡〉

○青木部会長 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。本当に皆様、お忙しいところをありがとうございました。

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