第11回文化審議会文化政策部会議事録

1. 日時

平成18年10月25日(水) 14:00~16:00

2. 場所

東京會館 11階 シルバールーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 伊藤委員 岡田委員 河井委員 熊倉委員 嶋田委員 白石委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 中島委員 根木委員 
真室委員 山西委員 横川委員 米屋委員

(事務局)

加茂川文化庁次長 吉田審議官 高塩文化部長 亀井文化財鑑査官 竹下政策課長 他

(欠席委員)

上原委員 尾高委員 川村委員 富澤委員 松岡委員 吉本委員

4.議題

  1. (1)第2次基本方針素案等について
  2. (2)その他

○青木部会長 ただいまから文化審議会文化政策部会、第11回を開催いたします。
 まず、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

○事務局 <配布資料の確認>

○青木部会長 まず、資料2「第2次文化芸術の振興に関する基本的な方針(素案)」と、資料4「第2 文化芸術の振興に関する基本的施策(骨子案)」についてご審議いただきたいと思っています。
 前回の部会のあと、作成チーム会合を開催いたしました。過程と資料の詳細に関しまして作成チームの米屋委員からご説明をお願いしたいと思います。

○米屋委員 まず、資料3にございますように、作成にあたりましては「中間まとめを最大限に生かす」、「構成をわかりやすくする」、「全体のバランスを考慮して第1部のボリュームを抑える」、「意見募集の結果を極力反映する」、それから「閣議決定を見据えて表現を見直す」、この5つの点を基本に見直しをしております。
 資料2の変更点をご説明いたします。最初に「まえがき」がございます。中間まとめでは「はじめに」でしたが、これは現在の第1次基本方針にならって変更しています。それから第1の1として見出しが「文化芸術の振興の基本的方向」となっておりますが、これは第1次基本方針の「文化芸術の振興の意義」を簡略化したものと中間まとめの「文化芸術振興の今日的意義」をまとめたものでございます。
 次に、2「文化芸術の振興に当たっての基本的視点」は中間まとめでは「第2次基本方針の基本的方向」でしたが、第1のタイトルと表現が重複するということと、前回の会議のご意見などを踏まえ、中間まとめの途中までの案に表現を戻しております。
 続いて「第1次基本方針策定後の諸情勢の変化」を、昨年度の「審議のまとめ」を土台としながら短くしております。諸情勢の変化を踏まえて今回の方針を打ち出すということが諮問で求められているというご指摘がありましたので見直しております。
 「重点的に取り組むべき事項」では、まず、「文化財の保存及び活用の充実」を追加しております。これは意見募集で出されたご意見や前回の部会でのご議論を踏まえたものです。
 また、「地域文化の振興」を「子どもの文化芸術活動の充実」と「文化財の保存及び活用の充実」の前に持ってきております。これはこの2つを包含しうる点を考慮して順番を変更し、さらに「文化芸術創造活動の戦略的支援」という項目の中には全国的なものが含まれていることから、このセットの前に持ってきております。
 配慮事項として「芸術家等の地位向上のための条件整備」と「国民の意見の反映等」を新たに追加しております。これも意見募集の結果を反映させたものとご理解ください。
 次に、資料2の1ページをご覧ください。冒頭で以前は「文化」という表現が多かったのですが、「文化」と「文化芸術」については「文化芸術」で統一することにいたしました。
 3ページ、4行目からの「2.文化芸術の振興に当たっての基本的視点」ですが、ここには文化芸術振興基本法で掲げられております8項目の「基本理念」を列挙しております。法律に定められた事項でありますので、第1次基本方針から継続させるという整理をしております。したがって、中間まとめでは情報通信技術の発展による負の側面など諸情勢の変化というような言及があったのですが、それは「諸情勢の変化」の中に記述しております。
 3ページ、16行目の「諸情勢の変化」というところですが、情報通信技術の負の部分につきましては4ページの最後に中間まとめでふれていたような内容を記載しております。指定管理者制度の問題点に関しましては4ページの1行目から記載しております。少子高齢化による課題というところでは5行目以降のところで指摘しております。中間まとめで指摘されていた順番と多少変わっておりますし、重複を避けるために削除している部分もございます。
 次に5ページ、10行目に「美しい国を創るために」という表現を挿入しております。
 それから6ページの「文化力で地域から日本を元気にする」という見出しですが、17行目から18行目にかけて「地方の文化を支えるのは地方公共団体をはじめとしたその地域自体」から、「地域住民や地方公共団体をはじめとしたその地域全体」と、意見募集を踏まえ表現を変えております。19行目、「東京一極集中」という表現から、やはり意見募集を踏まえ「大都市に偏りがちな文化芸術の鑑賞機会の格差を改善し」というフレーズになっております。
 7ページ、4行目の「国、地方、民間が相互に連携して文化芸術を支える」というところですが、2段落目の最後に、地方公共団体には、「高い専門性と地域を備え」ることが期待されているという記述が追加されています。
 また、8ページの冒頭のところに、「企業のメセナ活動や文化芸術系特定非営利法人をはじめ民間団体による文化芸術への支援が活発になってきている」という指摘をここに挿入しております。
 8ページの10行目からの「3.文化芸術の振興に当たって重点的に取り組むべき事項」ですが、まず、1つ目の人材育成の部分について(1)と(3)の記述を見直しております。(1)につきましては9ページ、2行目のアートマネージメント研修の例示に「教育普及をはじめとする」と挿入しております。(3)「文化芸術活動を支える人々の育成」については、文化芸術コーディネーターが無償のボランティアで行っている方々のみを指しているように理解されてしまうという指摘が意見募集の中でもございましたので、これを文化芸術コーディネーターの活用や育成を文化サポーターの前に持ってきまして、ボランティアの記述をそのあとに続く順番に変えております。
 11ページ、ⅴ)「子どもの文化芸術活動の充実」の2段落目の最初に、「鑑賞」という言葉を使っております。これは意見募集でも鑑賞の重要性についてのご意見をいただいたためで、「親しみ」という表現から改めております。
 それから最後の13ページの「国民の意見の反映等」という項目には意見募集も踏まえ、意見の反映だけでなく、基礎的なデータや調査研究の充実、さらには文化芸術施策の評価方法の開発についての検討といった項目までも含め、適正な行政運営に関する事項をまとめて記述しております。なお、書き改めのポイントとして閣議決定することを念頭において、「すべきである」から「する必要がある」と変わっているところがあります。
 続いて資料4の「第2 文化芸術の振興に関する基本的施策(骨子案)」の下線は、第1次方針から新たに追加された項目、または記述が修正されている箇所をわかりやすくするためのものです。具体的な内容については意見募集で寄せられたものやこれまでの審議の内容を踏まえた、骨子案に過ぎないということをご配慮いただければと思います。
 まず4行目から12行目までは第1部と第2部の関連にふれております。特に重点的に取り組むべき事項がどこにかかわっているのかという記述を入れてございます。
 それから1ページの「1.各分野の文化芸術の振興」(2)「メディア芸術の振興」の1つ目の項目で、国際共同制作の機会の提供について記述をしております。
 3ページ、「文化財等の保存及び活用」では、1つ目の項目で文化財を総合的に捉え保護対象とすることを検討する点、4つ目の項目で、文化財の周辺環境の保存・活用について記述しています。このあたりは中間まとめのご意見や議論を踏まえての記述です。同じく3ページ「3.地域における文化芸術の振興」では1つ目の項目で、国民が等しく文化芸術に触れることができる社会を実現していくとする点、それから7つ目の項目、文化力でまちづくりなどほかの分野にも広く生かす取り組みを促進するという点などを記述しています。
 それから7ページにいきまして、「9.国民の文化芸術活動の充実」、(3)の「青少年の文化芸術活動の充実」では1つ目の項目で、子どもが文化芸術を体験できる機会の充実を図ること。それから(4)の「学校教育における文化芸術活動の充実」では2つ目の項目で、「文化芸術に関する教育の充実を図る」ことを記述しています。
 8ページ、「10.文化拠点の充実等」では、以前は文化施設であったものが文化拠点と見出しを変えておりまして、(1)の「劇場、音楽堂等の充実」では、3つ目の項目で劇場等の施設設備の適切かつ安全な環境の整理の確保を図ること。それから(2)の「美術館、博物館、図書館等の充実」では、3つ目の項目で文化財等の積極的な保存・公開について記述を加えております。
 それから11ページ「11.その他の基盤の整備等」というところになりますが、(6)「政策形成への民意の反映等」では、1つ目の項目で基礎的なデータの収集や調査研究の充実を図ることという記述を入れております。
 この第2の部分につきましては、次回の部会までに素案としてまとめて提示するというスケジュールが考えられておりまして、もう少し第1と第2の関係を整理しまして、少し表現をシェイプアップしていくということにつきましても今日ご意見をいただければと思っております。ちょっと長くなりましたけれども、主なポイントについてご説明いたしました。

○青木部会長 まずご説明をいただいたご指摘の部分も含めまして、資料2の第2次文化芸術の振興に関する基本的な方針(素案)について、皆さんからご審議をいただきたいと思います。
 今後5年間の方針ですから、現在いろんな進行中の文化関係の事象があることについて、やはり目配りはしておいた方がいいと思います。この5年間で状況は変わってきていることも事実です。そう簡単に変えられないところもあります。法律や基本的方向ですからきちんと守っていくところはあると思うので、その辺を今日は忌憚なくご意見をいただきたいと思います。

○岡田委員 「美しい国」という言葉が入っています。これは安倍首相も「美しい国日本」ということを盛んにおっしゃっていますが、こういうところで使う言葉としては抽象的すぎて何を言いたいのかということがよくわからないという点がございます。あえてここで「美しい国」という言葉を入れる必要はないのではないかと思いました。

○田村(孝)委員 第1の2ページ目の23行目の「文化政策における国際競争力が展開されてきている」という3行の代わりに、「評価を高めようという時期を迎えている」とするか、あるいはこの3行をなくして「我が国は」と続いてもよろしいのではないかと思います。

○青木部会長 韓国や中国は対外的な文化発信に力を入れてきて政府がかなり後押しをしています。特に近隣諸国でやっているのでそういう状況を反映した文言だと私は理解しています。文化政策の国際競争はふれておいた方が、緊迫感があっていいと思います。

○中島委員 競争に我が国も入って参加しなければいけないという捉え方をすると、緊迫感があり過ぎるかなと思います。

○青木部会長 日本はあまりにも意識しなさ過ぎるというのが私の感触です。

○中島委員 他国は国を挙げて取り組んでいるということで伝わると思います。
 それから「美しい国」ですけれども、まさに今の政府に向けてのメッセージだということがわかりやすくはなるのですけれども、「今後我が国は心豊かで活力にあふれた社会を実現するために、一層重要である」ということで、十分具体性をもった基本的視点になると思います。

○伊藤委員 まず、人材育成の問題に関して、ここでいうのは単に一般の国民の問題ではなくて、文化の振興を担っていく人的資源、人材を育成していくことが大きな課題である。このことが大きなポイントになってくると思います。それに向けてたとえば細かい表現でいきますと、8ページの(1)に関して、「携わる」はやはり非常に曖昧で、これは「担う」という表現でないと人材という言葉につながってこないと思います。大きな問題としては上原委員が指摘されているように(2)の伝統文化に関しては雇用の問題、経済的基盤の問題がきちんと指摘されていますが、(1)はわかりにくい、具体的には8ページの一番下に「能力を最大限発揮できる環境を整備する。」という言葉の中にある程度込められていると思いますが、この「環境」にかかってくる言葉はほとんど研修や養成の話ばかりであって、例えば働く場の確保やキャリア支援についての言及がないことが気になっています。
 文化芸術コーディネーターの問題に関して、文化ボランティア、それから文化芸術サポーター、それから文化芸術コーディネーター、それにアートマネージャーという言葉を入れようとすると4つの言葉がいかに違うのかということが曖昧です。そのために特にサポーターとボランティアの違いがわかりませんし、それからコーディネーターがどのような位置づけにあるのか、アートマネージャーは文化施設、芸術文化相当団体等でその運営を管理していく役割になっていますが、コーディネーターは現場がない形でボランティアとの間に立ってつないでいくという形に読めてしまいます。そのためにサポーターとコーディネーターの違いが見えてこないのではないだろうか、もう少しコーディネーターについてはっきりさせた方がいいのではないか。それからサポーター、コーディネーター、ボランティアと3つも並べるのはさすがに混乱するだけだという気がします。
 この文化芸術コーディネーターが影響する中間支援組織的なものの発展を、今後検討していかなければいけない課題として提起していく必要があると思います。特に指定管理者制度の中で自治体がつくった文化振興財団自体がその役割を捉えてきています。文化振興財団が文化施設の管理者として活動することも必要だと思いますが、しかしそれ以上に地域でつくる人とそれを鑑賞する人たちの間をつないでいく、あるいは産業や観光などさまざまな教育・福祉につなげていく機能を文化振興財団が担っていくべきではないか。そういった意味では文化振興財団が中間支援組織の方に転換していく時期にきているのではないかと思います。今後の文化政策のあり方に対する課題提起をすることによって文化芸術コーディネーターの役割もよりはっきりしてくるのではないのかなと思います。

○根木委員 確かにアートマネージャーとコーディネーター、サポーターと様々な言葉が混在をしていますが、コーディネーターは基本的にはアートマネージャーという包括概念の中に含まれる一つの機能的な側面であると理解しています。アートマネージメントの概念そのものが芸術と社会の出会いをアレンジするということだと思いますが、広義の概念としては芸術文化活動について3つの要素があると思います。1つは芸術家などの創造性ということ、もう1つは聴衆、観客を中心とする社会、それからこれらを支える人的、物的、財政的な資本、この3つの間の連携接続が広義の意味のアートマネージメントであると思います。ところが往々にして芸術文化活動の管理運営、経営といった狭い意味で使われているというのが今日の状況であろうかと思います。
 コーディネートあるいはコーディネーターという場合は、地域に特有にあらわれた現象です。その機能的な側面を具体化したものが文化芸術コーディネーターと理解していただければいいのではないかと思います。言うなればアートマネージャー、アートマネージメントという言葉自体が最も包括的、一般的、基礎的な概念であって、その様々なあらわれ方で言葉の使い方が違うとお考えいただきたいと思います。

○伊藤委員 それであればこそ文化芸術コーディネーターは専門的な人材としての位置づけが明確になっていく必要があるのではないだろうか。それに対してサポーターは一体何なのかというのがまだ見えてこない。

○根木委員 アートマネージャーはどちらかというと芸術文化活動のやや内側よりの人を捉えている側面があるのですけれども、コーディネーターは芸術文化あるいは創造活動と非常に近接性がある場合もあれば、やや中立的に全体をコーディネートする側面もあります。そういった意味で専門性を持つ人や、そうではなくてボランティア的な活動をやっている人もいる。そういった二重性を持っていると理解していただいた方がいいのではなかろうか。したがって、広い意味ではアートマネージャーの中に含まれるけれども、地域特有のそういう現象形態としてこれを把握できるのではなかろうかと思います。

○熊倉委員 狭義の定義に関して、特に美術館の実態を考えるとおそらく学芸員で自分がアートマネージャーだと思っている人は極めて少ないと思います。実際には文化芸術コーディネーター的な役割もせざるを得ないNPO系の、例えば資金集めから始める人たちは自分たちがアートマネージャーだという認識はあると思うのですが、本来的な意味からするとマネージメントをする人というのは、展覧会の企画を考える人ではなくて、広報やマーケティングをしたり、ファンドレーティングや地域連携をしたりという企画を社会的に展開する人々のことを欧米などでは指していると思います。
 そういう人材が官庁と行政職員以外にはほとんどいないにもかかわらず、指定管理者制度をはじめとしてある大きな数値的な成果を求められているという現実、特に美術関係でいえば危惧されるところなのではないかと思います。8ページの(1)で、文化施設の企画をする人たちにアートマネージメントの養成あるいは研修などを充実するというのは、第1次の基本方針から一歩も表現が出ていないんですね。
 今回、新たな文化コーディネーターというような概念が出てきたことも含めて、人が大事だということが今回の方針の見直しの一つのキーワードであって欲しい。

○伊藤委員 文化芸術コーディネーターの中には特に職業としてではなく、地域においてつなぎ役として動いている人たちも多くいます。そうした機能がきちんと出されて、そして社会的に認めていくことが必要になってくるのではないだろうか。ここの記述はボランティアの延長、あるいはサポーターと混同した感じがします。
 資料4の10、(3)「地域における文化芸術活動の場の充実」という項目で、文化施設あるいは美術館、博物館についてもう一度地域の場の問題が出てきています。実際にここで具体的に何を指すかという問題は重要ですが、例えば公民館などは地域における場として機能はしているわけですが、実際に文化芸術を社会につないでいく場にはなっていない。地域における文化芸術活動の場という概念をここで明確に記述して、この場で一番重要な働きをなしていく文化芸術コーディネーターとの結びつきを基本方針の中ではっきりさせると明確になると思います。

○田村(孝)委員 文化芸術コーディネーターが地域で育っていらっしゃるというのは確かでございますけれども、それは専門家がいないので結果としてそうなっているということだと思うのです。実はアートマネージメントを教える大学は現在100ぐらいあるといわれています。さらに大学院を立ち上げたり、公立の文化施設で2年間かけてアートマネージャーを育てようという試みも始まっています。しかし、現場の学芸員がアートマネージャーという感覚を持っていらっしゃらないということも事実だと思います。
 「文化芸術創造活動に携わる」、ここでの文化芸術とは何を指しているのでしょうか。次に伝統文化というのがありますが、伝統文化にしても文化芸術ではないでしょうか。例えば伝統文化ならば文化財保護法の中でいわゆる無形文化財保持者についてはきちんと研修と育成は実施されていまして、ほとんど歌舞伎の鳴り物とかそれから文楽も何もあの研修制度がなかったら現在は成り立っていないと思います。それから、選定保存技術という制度もございます。それで育成されている方たちはどういうものなのかはっきり捉える必要がある。ただ伝統文化と言ってもこれは何を指しているのか。それから芸術文化活動とは何を言っているのか。資料2、8ページ(1)に広く全部入れていらっしゃるのだったらそれも芸術文化活動であって、「特に」という形でしたら別だと思いますけれども、「また」という付け足しのように3行ここに書く必要はないと思います。

○根木委員 これは人材育成の話で、特に(1)は現代舞台芸術、伝統文化、全部押しなべてということです。9ページは、これは伝統文化の後継者の育成で特にそれをピックアップしたものと考えてもらえば大体筋が通るのではなかろうかなと思います。
 確かに伝統芸能の分野や現代舞台芸術などに分かれておりますけれども、伝統芸能は文化財保護にも含まれています。したがって芸術文化の振興と文化財の保護とが二重行政になっている。伝統文化に関しては両面からオーバーラップした形で施策が講じられている構造があるわけでして、うまく整理することが難しいのですけれども、両面からカバーできるような書き方になっていると理解はしているのですけれども、読みづらいところがおありでしょうか。

○米屋委員 最終的なことを考えますと、もう一度文化コーディネーターや人材育成でどういうことを想起しているのかを確認した上で、個別具体的な記述は第2の方に回して、ここでは人材は大事にするという目指すべき方向のエッセンスだけに記述をとどめるというまとめ方もあるのではないかと思います。
 この文章は、だれがやるのかという主語が実は隠れているんですね。大体のトーンは国が責任を持つということを暗黙の前提として書かれていて、そうではないところに関しては地方自治体であったり、官民が協力してとしたり、民間の活力を、という形になっています。上原委員の文章にもありますように、雇用促進する、職業として専念してやれる人たちをふやすということが本当に目指すべきところなのであれば、国が責任を持ちきれないのなら、それは官民を挙げてそういった方向を目指す、など何らかの形で入れる可能性はあると思いますし、何を目指したいのかをここで確認していただければ文章としてのまとめ方の方向性は打開できると思います。
 文化コーディネーターという言葉を持ち出した方が新しい機能に対して人々の注意を喚起できて便利かもしれませんけれども、本当にここで語りたいことは、地域に密着した形で人と文化芸術をつないでいく役割だと思います。

○熊倉委員 欧米の例でいえば企画を立てて、学校教育への普及をする人たちと、もっと経営を強化する人たちとは職制が分かれていて比較的その概念がはっきり分かれているという認識です。

○伊藤委員 アートマネージメントの中にプロデュース的な機能をする人、プランニングをする人や美術館等の学芸員等、収集物の管理、公開していく人たち、あるいは教育をしていく人たちがいて、総合的に生かしていく技術がアートマネージメントではないかと思います。その中に根木委員がおっしゃったように、文化芸術コーディネーターという機能がアートマネージメントを構成する要素として重要視されてきていることは事実なわけであって、それをわかるように表現していくことが必要ではないかと思っています。
 そういう点で(1)では、芸術家の活動を側面で支えていくという要素は強調されておりますが、(3)では享受する人たちの間に立って、アートマネージメントが機能していくためにコーディネート的役割が確立していく必要があるということをうたいあげていく必要がある。アートマネージャーと対等な形で文化芸術コーディネーターのことも並べてしまうから話が混乱してくるのではないかという気がします。

○岡田委員 アートマネージメントあるいは文化コーディネーター、サポーターを示す日本語は何かということを探すのが先決ではないかと思います。
 ここでやはり英語を使わないで日本語でずばりと言い切った方がいいと思います。

○田村(孝)委員 芸術に価値をおいている海外はアートマネージャーを、コーディネーターを含めた部分まで考えている。日本でアートマネージャーとコーディネーターを分けてしまうというのはもう時代おくれではないかと思っております。
 例えばロイヤルオペラハウスではティーダンスという若者を呼ぶために昼間、劇場の人が社交ダンスのパーティをしております。世界のオペラハウスの一つでもそういうことまでする時代になっているということです。

○青木部会長 アートだけではなくて経営的な感覚をもった人たちもいないとだめだということですね。

○田村(孝)委員 コーディネーターと地域の享受者との結びつきを考えるのもいわゆる劇場や芸術団体の役割です。芸術団体や劇場が社会に対して何ができるか、という視点が足りなかったと思うのです。今まではいいものをやっていればお客様は来てくれると思っていたけど、そういう時代ではなくなった。日本と外国の違いというのは価値観の相違と思っておりましたけれども、最近はかかわる方の努力の違いだと感じております。

○青木部会長 かかわる人の、芸術界と社会的な地位がある程度きちんとしていなければなりませんね。

○田村(孝)委員 環境の整備、経済的に自立できるとありましたけれども、仕事として成り立つ場を与えられなければならないと思います。

○横川委員 岡田委員がおっしゃったように、ある程度の枠づけをしないと、その都度その実態がよくわからなくて、アートマネージャーやコーディネーターという言葉で飛び交う。ボランティアやサポーターにしても様々な形態がある。やはりある程度枠づけをしないと、はっきりと理解できないと思います。

○青木部会長 それはわかるのですが、国との関係でこの一般的な文化芸術の振興といった場合に、どう文言として捉えるかというのが今ひとつはっきりしない。

○横川委員 フランスやイギリスなど、そのものがある程度確立されている国では、それでもう通用していくわけです、しかしそれをそのまま我々が使えるかというと、なかなかそうはいかないと思います。便宜上、言葉として飛び交っていますけれども、その真意を理解するのは難しいと思いますので、枠づけ的なもので提示するということが大切ではないかという気がします。

○青木部会長 振興のための基本的方針ですから、アートマネージメントやコーディネーターという言葉を盛り込むことによって、市民権を与えてこれから充実させるという役割はあると思います。

○田村(和)委員 地域や芸術振興にアートマネージャーやコーディネーターが必要だとは書かれていません。こういう能力や機能、役割が必要だと書いているにすぎないんですね。ところが、本当にこれに該当する人材、資格を持った人あるいは職場がある人、雇用の創出が本当に必要なのかということが一方にあると思うんです。
 やはりそのジャンルを具体的に見ながら、国が本当にそういう人材をつくるサポートをできるのかというところが問題なのであって、それ以上に本当に言い切れるのかというのが非常に大切なところだと思います。

○嶋田委員 文化芸術コーディネーターや文化芸術サポーターが括弧付きになっていますと、そういう職種が実際にあって、それになるにはどうしたらいいのか考える人も出てきてしまいます。ポイントは文化の地域格差をなくし、子どもたちに体験する機会を与えるということで、学校や地域における文化芸術活動を推進する専門家の活用や育成という言い方もできると思います。やはり学校や地域に文化を浸透させていくためには、専門家の育成が必要だということをきっちりと言うことは意味があると思います。ですから括弧付きの文化芸術コーディネーターというのをやめて、「学校や地域における文化芸術活動を推進する専門家」にしたらいかがでしょうか。

○熊倉委員 言葉がカタカナでわかりにくい、しかもイメージが非常に曖昧だというのはまさにおっしゃるとおりです。これまではつくる人と観る人だけがいて、この両方を支援すればよかったのですが、芸術文化の位置づけが社会的な要請が高まりつつも、財政的な基盤が危うくなっている今日では、つなぎ手の育成と充実が必要で、そのつなぐという行為を今の日本ではアートマネージメントと呼んでいて、それには非常に専門的な施設の専門的な職員もいれば、地域の中でそれを行っていく人も必要だという概念で一応現状は整理されると思います。
 文化芸術サポーターはお金を出してくれる人のことをイメージしていると思うのですが、ボランティアが労務提供であるのに対して、サポーターは市民がメセナをしてくれる。この2つをオーガナイズしていくのがその地域の文化芸術コーディネーターの大きな役割ですが、主語の問題で言えば、文化芸術サポーターのような運動を国が展開するのはどうか。こういうのは地域の中で民間から出てきて、それを奨励するのではないでしょうか。

○白石委員 アートマネージメント、コーディネーター、サポーターのいずれにしても非常にわかりにくいことは確かなんですけれども、この言葉を入れることによって、創作者と鑑賞者をつなぐ人をつくるんだということを明確にするためであって、日本語に置き換えたり、あるいはここを削除すると文章としてはわかりやすいのですけれども、意図していたことががなくなるという印象があります。

○山西委員 資格の問題、機能の問題、役割の問題が一緒になって議論されていると思います。で、かぎ括弧で括っているというところに制度、役割としてこういうものがあって、学校や地域がそれを使っていなかったかと読み取れてしまいます。
 必要なのは機能的な側面を持った人たちがたくさん出てきて、裾野を広げていく活動だと考えます。意図的に入れ、市民権を与える形で強調するならば、こういう人々が地域の実態や制度に応じて、というつくり方でもいいのかなと感じていたところでございます。
 また、質の高い文化、良質な文化が、あえて枕詞を入れて強調する必要があるのかどうか。おそらく国が低俗な文化や悪質な文化を支援するという形にはならないだろうと思いますので、この枕詞の中でその質の高い文化ボランティアとか良質なということをあえて入れる必要があるかどうかということも感じました。

○真室委員 実際に美術館の運営にかかわっている者としてはアートマネージメントはおそらく日本の美術館の場合、館長にある職の者を中心にしてやっています。音楽や演劇などでは、アートマネージメントが切実な役割として位置づけられなければいけないものになっていると思います。
 美術館、博物館のコーディネーターといった場合は外部の専門家、大学の先生などに監修者として入って、コーディネートしていただく。おそらくほかの分野では専門の一つのポスト、役割としてこういう人たちが必要なのだろうと思っております。ですから言葉としていきなり出した場合に一般にはわかりにくいと思うので、日本語にかえて括弧付きでコーディネーターとかマネージャーとつけた方が一般的にはわかりやすいと思います。

○河井委員 (3)が地域においてということで限定していますのでそういう文脈で読んでいるのですが、例えば市民オペラをつくったときにどういう人がコーディネーターになるのか、サポーターになるのか想像しているのですが、何となくコーディネーターの方は財団のプロパーの職員、あるいは元オーケストラの指揮者とイメージはわくのですが、文化芸術コーディネーターは説明に苦戦するという印象を持っています。そういう意味でコーディネーターの部分は嶋田委員の意見に賛成したいと思っています。
 それからサポーターについて、果たして国の施策として書き込むことが必要なのかどうかという疑問を持っています。
 2ページの22行目、この文脈全体を見ますと(1)、(2)を受けて「このため」と読めます。そうしますと、例えば10ページにあるような海外の文化遺産の保護に関する活動もここに入ってくるのではないかと思います。自国の文化を高めるばかりの国際競争ではなくて、国際協調、連帯なども入れたほうが適切ではないでしょうか。

○米屋委員 文化芸術コーディネーターのくだりは、社会教育関係者や地域にもうそういう役割を本当に期待されている人たちが既にいて、それを活用するということがあったので、新しい概念というよりはそういう役割に焦点を当てた記述だとご理解いただければと思います。

○田村(孝)委員 専門家がいないから仕方なくアマチュアが担っているという現状だと思います。例えば文化ボランティアという言葉が流行っていますけれども、「ボランティアは昔氏子、今ボランティア」と言う方がいらっしゃいます。要するに氏子という言葉では若者に、活動に参加してもらうということはもうできないから今ボランティア、さらに金銭的なものまで提供していらっしゃいます。

○伊藤委員 9ページ15行目「その裾野を広げる役割を担う人々が求められている」という文章のあとを受けて、つなぐ役割(つなぐはかぎ括弧で括るのがいいと思いますが)の必要性を認識し、人材を育成するとともに学校や地域において活用していくことが必要であるという文章にする。あるいは育成の前に「アートマネージメント研修等の場において」と言葉を補う。

○青木部会長 単につなぐとか今おっしゃったような説明だけで、名前がないとその人たちに積極的な役割をふることも難しくなりますよね。

○伊藤委員 実際にそういう機能を担っているのは個々の人材ではなくてNPOや文化施設のスタッフではないかと思いますので、殊更そういった人たちに対してコーディネーターと呼びかける必要はないという気はしています。マネージャーとかコーディネーターとか名前をつくってもわからなくなるだけです。

○根木委員 アートマネージメントの概念がきちっとしていないところに新造語を入れることに関しては軽薄かと思いますが、そうはいいましても地域には現実があるわけで、それを地域特有の現象として文化芸術コーディネーターという名称をテコにして地域文化振興のための予算措置を講ずるというメリットもあるのではないかという気がします。
 このコーディネーターがアートマネージメントを包括するような概念とされるのは具合が悪く、アートマネージメントというのが基礎的、一般的な概念となって、その特殊な形態がこの文化芸術のコーディネーターあるいはコーディネートということで認識をすればよいかと思います。

○青木部会長 外来語については確かに問題があることは事実ですが、適当な日本語の対応する言葉がないときに、無理に押し込めても狭義になってしまう。曖昧だけれども一応含みを残して、新しい分野で使われるようになるのだと思います。
 次に資料4、第2部の「文化芸術の振興に関する基本的施策(骨子案)」についていかがでしょうか。

○岡田委員 6ページ、「著作権等の保護及び利用」のところですが、中間まとめではここに「知的財産推進計画等に基づき情報通信技術の進展など、社会の変化に対応した著作権の法制度のあり方を検討する」という文言があったのですけれども、抜けているのはなぜか。社会の変化に迅速に対応できるように著作権の法制度のあり方を検討するという言葉で入れていただきたい。もう一つ、見出しでは「著作権等の保護及び利用」になっていますが、その下の「法制度の整備を行うとともに」では、「流通促進のためのシステムの構築等を行う」ということだけが書いてあって、著作権の保護という言葉が入っていません。ぜひ、ここで著作権の保護というのは流通促進とセットであるということを書いてほしいと思います。

○伊藤委員 7ページ、9.「国民の文化芸術活動の充実」(2)の「高齢者、障害者等の文化芸術活動の充実」に施設のバリアフリー化等が出ているのですが、ユニバーサルサービスといわれているようなソフト面におけるバリアフリー化の問題、アクセスというより簡便にしていくための問題ももう少し目配りをした方がいいと思います。
 特にこの音声サービス等に関しては著作権でひっかかってしまうという問題もあるようです。政策として正面から取り組んでいくことが必要になってくるという気がしています。
 それから9~10ページにかけて、まず図書館の問題に関して、全国に数が多くあり、住民との接点になっているので重視していく必要があるのではないか。文学は言語文化として非常に重要な役割を担う文化だと思いますが、図書館が文化政策なのか教育なのか社会活動なのかはっきりしないという状況もあって、取り組みが曖昧であった。子どもの読書活動の促進だけではないのではないかと思います。
 10ページの「地域における文化芸術活動の場の充実」、ここも非常に抽象的でわかりにくい。劇場、ホールあるいは美術館、博物館についてはかなり細かくこれから先の課題が述べられてきているわけですが、例えば新しい地域における活動拠点に対する方向についての検討を今後進めていく必要があるという形での提案を出していく必要があると思います。

○青木部会長 音声サービスはどういうことですか。

○伊藤委員 シティライツというNPOがありまして、視覚障害者に映画を見せる活動をしているわけですが、映画のシーンを単に台詞だけではなくて映っている情景を言葉で説明するために幾つかの言葉を挙げるわけです。それが著作権法にひっかかってしまって、公共ホール等での活動ができないということです。場面の説明が制作者の意図と合わないという形での問題が起こるらしいのです。新しいNPOがアクセスを可能にするための活動をしていくときに著作権法の問題が幾つかあると聞いています。

○真室委員 基本的な方針の一体的なものとして示す場合は、やはり第1と第2が連動して対応していた方がいいのではないかと思います。この基本的方向を踏まえて基本的な施策というのが出てくるわけで、ですから最初に重点事項、それに対する施策があった方がわかり安いのではないかということです。
 それと第1の取り組むべき事項に戻りますけれども、資料2の10ページに「文化芸術創造活動の戦略的支援」という項目がありますが、これがほかの重点事項と比べてこれは活動を進めていくための方法を言っている。戦略的支援のシステムを充実させるとすれば、推進、育成、充実という言い方になります。ただ、この第2と対応させていく場合に、施策がうまく当てはまっていくのか、相当組み替える必要もあるかという感じがしております。

○根木委員 芸術活動の重点的支援という戦略的な部分であって、確かに方法論的な側面のような書き方にはなっているのですけれども、対象としては芸術文化活動です。それから文化財、地域文化といった対象別に重点項目として挙げているということで戦略的支援というのは、対象別に捉えたものが重点項目であると理解していただければよろしいのではないかと思います。
 伊藤委員がおっしゃった図書館ですけれども、これは基本的には社会教育施設です。ですから、文化政策の観点からは難しいという感じがします。したがって、文字・活字文化振興法などの観点からしかアプローチできないと思います。
 それから5ページの5の「芸術家等の養成及び確保等」の中で、学芸員それから舞台技術者、技能者までは挙がっているのですけれども、やはりアートマネージメント担当者はここでも入れておいた方がいいのではなかろうか。
 学芸員はこれ美術館、博物館の話ですから、アートマネージメントを担当者と呼ぶ場合、劇場、ホールの方がイメージされると思います。

○青木部会長 学芸員、アートマネージメント担当者、舞台技術者、技能者等ですね。

○根木委員 それから8ページなのですが、10の(1)「劇場、音楽堂等の充実」の2つ目、「芸術家等の配置等の支援」にもアートマネージメント担当者をぜひとも入れておいた方がいいのではなかろうか。やはり民間の事業者が指定管理者の指定を受けたにしてもアートマネージメントの担当者など専門性を持った人間がこれから必要であろうと思いますし、そういったことを含ませる意味でもここにアートマネージメント担当者という言葉を入れておいた方がいいと思います。芸術家,アートマネージメント担当者と並列に表記してはどうかと思います。

○中島委員 第1部の部分についてよくなったなと思うのは、どこの部分を新しくしたかということがわかりやすくて、「情勢の変化に伴い」というところが明解になっているので答申としてはいい形になりつつあると思うのですけれども、やはりこれから第2部を議論していくに当たっても、基本的にもう閣議決定している第1次方針に対して、どこが時代に合わなくなっているのかというところを明解にする方向で議論を進めた方がいいのではないかと思います。
 ここにあった文言を簡単には削っていかない方がいいのではないでしょうか。第1次方針でアートマネージャーと書かれているわけですから、いつの間にかなくなった答申になるのはよくないと思うのです。

○青木部会長 コーディネーターとかサポーターとか、この分野はいろんな利害も絡まってきて、しかも新しい分野でこれから本当に日本社会に定着させなければなりません。当然いろんなお立場からご意見があってなかなか決まらないことは事実ですが、せっかく5年間でこういう問題ができたので、ここに明言して次に引き渡すというのが責任かと思います。

○事務局 <次回連絡>

○青木部会長 どうも今日は本当にありがとうございました。

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