第14回文化審議会文化政策部会議事録

1. 日時

平成19年1月16日(火) 14:00~16:00

2. 場所

霞ヶ関東京會館 35階 シルバースタールーム

3. 出席者

(委員)

青木委員 岡田委員 河井委員 川村委員 熊倉委員 嶋田委員 白石委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 富澤委員 根木委員
松岡委員 真室委員 山西委員 横川委員 吉本委員 米屋委員

(事務局)

近藤文化庁長官 高塩文化庁次長 吉田審議官 尾山文化部長 土屋文化財部長 亀井文化財鑑査官 竹下政策課長 他

(欠席委員)

伊藤委員 上原委員 尾高委員 中島委員

4.議題

  1. (1)文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて(答申案)
  2. (2)その他

○青木部会長 文化審議会文化政策部会第14回を開催いたします。
 まず、文化庁の人事異動について、事務局より紹介をお願いいたします。

○竹下政策課長 <文化庁人事異動について報告>

○青木部会長 それでは、議事に入ります。
 事務局から、配付資料の確認をお願いいたします。

○事務局 <配布資料の確認>

○青木部会長 第13回、前回の議事録(案)に関しましては、委員の皆様にご確認をいただきまして、修正がございましたら、1週間後の1月23日、(火)までに事務局までご連絡をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 前回の部会開催後、先週1月9日に作業チーム会合が開催されまして、前回の政策部会で皆様からいただきましたご意見を踏まえ、記述の修正そのほか検討を行い、資料2の答申案を作成いたしました。
 修正点などの詳細については、作業チームの米屋委員よりご説明をお願いしたいと思います。

○米屋委員 資料2-2をご覧いただきたいと思います。
 まず、第1については、主に文章として読みやすく、趣旨を変えずに修正した箇所が多くございます。その中の主な変更点について、ご説明したいと思います。
 まず、「文化芸術創造活動」という表現ですが、伝統文化に創造がないわけではありませんが、型や様式を守っているというところが主でございますので、「創造」という言葉を削除しまして、「文化芸術活動」と統一して用いるようにしております。
 それから、5ページ、「国、地方、民間が相互に連携して文化芸術を支える」というところになりますが、この21行目、「創造、継承」の間に「保護」を追加しております。
 また、6ページの10行目、こちらは「国として保護・継承し、創造していく」というところで、国は創造を促進していく立場であるということで、「促進」を追加しております。
 6ページ、7ページの人材育成に関する部分ですけれども、まず、重点事項ⅰ)人材育成の表題について、文章の流れを勘案しまして「文化芸術の継承、発展、創造を担う人材」と見出しを変えております。
 それから、前回、(1)(2)(3)と整理していましたが、ここは「コーディネーター」を廃し、専門性に注目した書き方に全体を改めております。そして、その機能をアートマネジメント担当者の業務として例示するとともに、全体的に専門的人材の育成と、文化ボランティアの推進について最後に書いている格好になっております。
 8ページの「日本文化の発信及び国際文化交流の推進」では、2行目に「外交的側面も有するという観点」と挿入し、「ジャパン・クール」の例示に音楽を追加しております。
 9ページ、「子どもの文化芸術活動の充実」の22行目に「学校や地域において」と追記しているほか、24行目からは読みやすいように文言を修正しております。
 10ページ、「文化財の保存及び活用の充実」では、18行目に「我が国の文化遺産の」という文言を補っております。
 第2にまいります。15ページの「文化財等の保存及び活用」の15行目では「計画」の文言を削除し、22行目に「防火・防犯・震災対策」と挿入しております。
 20ページにまいります。「6.国語の正しい理解」の項では7行目のところに「図書館」を追加して、流れを整理しております。
 それから、22ページ、「(1)国民の鑑賞等の機会の充実」では、人材育成のところにならいまして、「文化芸術と国民を結び付ける活動」という文言を追記しまして、「文化芸術コーディネーター」に係る記述は削除しております。また、「サポーターの活動を活発にするための環境整備」と文言を改めております。
 24ページ「文化芸術拠点の充実」ですが、3行目、25行目の「長期的かつ継続的な視点に立って」という文言は入れる位置を変え、12行目と25ページの1行目に移しております。
 また、25ページの「(1)美術館、博物館等の充実」の1つ目の項目につきましては、支援の対象を広くとらえることができるよう文言を修正しております。
 それから、13行目については、「ナショナルセンター」という言葉を「中心的拠点」に改めております。
 それから、26ページの「(4)公共の建物等の建築に当たっての配慮」ですが、15行目に「景観」という言葉を追加しております。
 そのほか、ご説明しなかったところは、文章の流れから細かい修正を加えておりますが、以上が主な修正点です。

○青木部会長 これらの修正が、これまでの13回の審議において皆様から出された意見を取りまとめたものと考えております。
 それでは、皆様のご意見を伺いたいと思います。

○富澤委員 非常によくまとまっているという感じを持っております。内容も充実していますし、バランスもいいし、めり張りも効いている。
 あえて枝葉末節に触れますと、2ページの「八つの基本理念」の(1)から(8)のカンマは一切要らないと思います。
 それから、(7)と(8)の間の「及び」も削除すると7字か8字節約されます。それから20ページの4行目、「国民にわかりやすくするという観点から」工夫するというよりも、「公用文書等では国民にわかりやすい表現を用いるよう極力努力をする」と、あっさりと書いた方がよりわかりやすくなるのではないか。

○青木部会長 「観点から」は要らないということですか。

○富澤委員 要らないのではないでしょうか。ですから、「公用文書等では国民にわかりやすい表現を用いるよう努力をする」としたほうがいいのではないでしょうか。趣旨がよくわかると思います。

○松岡委員 16ページの7行目の「文化財を類型ごとにとらえる」というところの「類型ごと」が、具体的なイメージがわきません。
 それから、あとは言葉の使い方ですけれども、17ページの15行目に「魅きつける」とありますけれども、キャッチフレーズならともかく、このような文章ではどうか。
 例えば2ページの11行目、「今日では、文化芸術の持つ、人々を惹き付ける魅力」と「惹」という字を使っているので、こちらでいいのではないかと思います。
 それから、19ページの11行目は「社会全体としてその重要性を認識し」でいいのではないか。
 26ページの「学校教育に利用される見込みのない余裕教室」の「余裕」は要らないのではないのでしょうか。「余裕」とついてしまうと、かえってわかりにくいと思いました。

○横川委員 26ページの「その他の基盤の整備等」、「情報通信技術の活用の推進」の24行目で「我が国の多様な文化芸術、映画フィルム」となっています。映画とフィルムとはほとんど同じ言葉でございますので、「映画、映像」としていただいた方が、幅広く理解していただけるのではないかと思います。

○青木部会長 どう言えばいいですか。

○横川委員 やはり「映画」というのは非常に大切ですし、その他のものも映像にかかわるものは多くございます。ですから、「映画」はもちろん外すわけにはいきませんけれども、「・映像」で結構かと思います。今後の5年間を考えますと、そういう言葉はやはりこの中で生かしていただきたい。13ページの15行目の「東京国立近代美術館フィルムセンターにおける映画」にも中黒で「映画・映像作品の収集」と書いてございますので、追加していただきたい。
 それから、14ページの21行目に、「国民生活や社会を支える文化創造の基盤である出版物、レコード等」のレコードというのは非常に幅広く、テープやDVDなどいろいろなものがあります。ですから少し具体性を持たせたらいいと考えました。

○青木部会長 その具体性とは、どういうものを入れたらいいのですか。

○横川委員 例えば、映像記録です。「レコード」というと、音楽的、オーディオ的なものにとらわれがちだと思いますが、映像物にもよく使われますので、「映像記録物」という形で、追加していただきたいと思います。
 それから、「文化財等の保存及び活用」の、15ページの27行目、「記録映像等の活用を図る」とありますが、映像の文化財的な保存ということも今後は大切になってくると思います。映画、映像の文化財保存ということも、今後5年間で生かしていただきたいと思います。
 特にフィルムセンターは、この大きな役割を担ってまいりますので、文化財保存ということで、フィルムもどこかに念頭に入れていただけたらなと思います。

○田村(和)委員 最後のところは、どういうふうに直せばよろしいのでしょうか。

○横川委員 13ページの15行目、「美術館フィルムセンターにおける映画・映像作品の収集・保管を推進する」とございます。それに伴って、文化財としても考慮、推進する、あるいは文化財として推進すると書き加えていただければ、妥当だと思います。

○青木部会長 つまり、ここに「文化財」という言葉を入れたいということですか。

○横川委員 そうです。そういうことも念頭に入れていただきたいと思います。

○高塩文化庁次長 ただいまのご意見でございますけれども、将来的には映画が文化財としてということはあろうかと思いますが、この基本方針に入れるのは唐突の感があるのではないかというのが、私どもの基本的な考え方でございます。
 もう1つ、「出版物、レコード」という言い方は、法律の12条で、「出版物及びレコード等の普及を図るため」と、こういう言い方になっておりますとともに、広く、居住する地域にかかわらず普及し、また身近に親しめるということで、いわゆる再販問題も踏まえて「出版物、レコード」という表現の方がいいのではないかと考えております。

○田村(和)委員 文化財の記録映像のところですが、やはりメディアの方の議論ではなくて、ここは文化財の話にしておいた方がよいのではないか思います。

○横川委員 よくわかりました。いずれはそういったことも入れていただければと思っております。

○青木部会長 確かに映像、映画、フィルムなど、すべて文化財として重要なものになりつつあることは事実なので、これをもっと大事にすると明記することは意味がありますね。

○山西委員 子どもの内容の問題について、2点お願いしたいと思います。
 9ページの22行目、「学校や地域において」という文言を挿入したことで、子どもにかかわる文化芸術の役割や教育的な意義が明確になってきたと思いますが、次のパラグラフで、「このため」ということで方法論的になってきております。
 「このため」から学校にかかわっておりますので、一番最後の行の「重要であり、学校の文化芸術活動」を、「学校や地域の文化芸術活動」としていただくと、前段の趣旨が後段に生きてくると思います。前段が「学校や地域」で、後段が「学校」だけというのはいかがなものかなと思ったところでございます。
 2点目は23ページ19行目、「子どもたちに対する文化芸術の指導を行う教員の資質の向上を図るとともに」のところで「各教科の授業」とありますが、現在学校における教育課程は、主に必修教科、選択教科、道徳・特別活動、総合的な学習の時間となっておりますので、いわゆる「各教科」と限定されると、必修教科、選択教科、高等学校における教科科目に限定されてしまうのではないかと思います。
 むしろ特活や総合で担う部分が多くなってくるだろうと思いますので、この「各教科」の後に「等」と入れていただきますと、一層この趣旨が学校のあらゆる教育活動で展開すると理解されるかと思います。

○川村委員 9ページの3行目、「地域文化の振興」のところで、「国民がその居住する地域にかかわらず等しく文化芸術を鑑賞」するという中の、「等しく」は抵抗感があります。「義務教育は等しく」という教育基本法とは異なり、広く文化芸術を鑑賞するということだと思います。同じ表現が、21ページの23行目にも出てきます。
 27ページの26行目の「寄附文化を醸成する」とありますが、できれば「顕彰」ということも入れられないか。つまり、28ページの17行目に顕彰のことが書いてありますが、すぐれた活動、あるいは地道な活動をした人に限られています。寄附をした人にもきちんとしなくてはならないと思います。
 だから、27ページの26行目に「税制上の措置や顕彰の活用等」と一言入れていただければ、寄附する人はなお元気が出るのではないか。

○高塩文化庁次長 「等しく」の話は以前にもお話がございました。やはり普通に考えると、広く鑑賞する、広く享受するということですが、この文化芸術振興基本法、第2条の基本理念に「その居住する地域にかかわらず等しく」とされています。確かに本当に等しくならないということは川村委員のおっしゃるとおりですけれども、その思いを引き続き入れていきたいと考えております。

○川村委員 やはり、落ち着きが悪いんですね。事柄の性質上、芸術文化における均等性は何かという議論になってしまっても困るのではないかと思います。

○高塩文化庁次長 「顕彰」につきましても、個別にメセナ協議会や長官の表彰を現在行っておりますけれども、国の基本方針として入れるのはいかがと思います。

○青木部会長 やはり文化芸術の振興のために私財を投げうつ方がいらっしゃいますから、そういう人たちに、何らかの栄誉は必要だと思います。これは課題になるかと思います。

○田村(和)委員 松岡委員がおっしゃった16ページの文化財の類型ごとの話ですが、単純に言えば、いろいろな文化財が集まった場合に、縦割りではなくて、総合的に活用しよう、新しい見方で考えようということです。ここは文章を事務局で考えていただいたらどうかと感じました。

○川村委員 これは「有形文化財」「無形文化財」等の類型で、例示を入れると随分わかりやすくなるのではないかと思いますが、そうすると、文章が長くなってしまう。

○真室委員 10ページ、15行目「また、ある程度の文化財が集積している場合」のフレーズを受ける形で「類型」とあると思うのですが、具体例を挙げて説明いただければと思います。

○川村委員 文化財は建て前上は有形、無形と分かれています。具体的に言えば、美術工芸品や建造物などです。例えばお寺があって、その建物は重要文化財で、その中の襖絵は、美術工芸品としての国宝で、お庭は名勝、しかもそのお寺に伝わっている行事は、無形民俗文化財という具合にばらばらになっている。それを無形民俗文化財の行事まで含めて一つの空間としてとらえてはどうか。
 だから、ここのところはそういう意味で、文化の薫り高い空間を総合的に把握と、うまい表現にしていただいたと思っています。

○松岡委員 ご説明いただいて、よくわかったのですけれども、16ページの「類型ごとに」というのを読んで、そこまではわからないのではないかと思います。

○川村委員 だから、美術工芸品とか建造物とか、有形とか無形など加えればいいのでしょうが。

○白石委員 21ページの16行目、「欧米との連携の強化等を行う」と欧米に限定してあるのですけれども、これから5年くらいの間ですと、もう少しいろいろな国との関係が出てくると思うので、むしろ「諸外国」という言い方にした方がいいのではないかと思います。

○吉田文化庁審議官 どちらかというと海賊版をどう防止していくかということになるわけでございます。実態といたしますと、欧米諸国、あるいは日本の著作物が、開発途上国などによって海賊版の被害にあうことが多いということがございます。そういった意味で、開発途上国における海賊版を減少させていくためには、欧米諸国との連携が重要だということでございます。しかしながら、そこを「諸外国」と変えても差し障りはないだろうと思います。

○白石委員 むしろもう少し、権利を侵すところとの連携を強める必要があるという気がします。

○吉田文化庁審議官 実は、その前に「侵害国等への働きかけ」というのがございまして、侵害事案が多いところへの働きかけなどをする際には欧米との連携が必要になってまいります。現地国の行政当局、あるいは裁判当局との連携といったものも重要でございますので、「諸外国との連携の強化」という形で差し支えないと思います。

○田村(孝)委員 ボランティアの部分と専門家の部分をきちっと認識していただいて書いていただいたのは大変ありがたいと思います。
 しかし、さらにいわゆるアートマネジメント担当者と舞台技術者等の人材育成を図ることが急務であるとしていただきたい。前の基本方針の3ページに、国の役割として「文化基盤の整備」と書いてございます。16ページには、5の下から2番目に、企画・管理担当者、アートマネージャー、舞台技術者等の研修の充実を図ると書かれているわけです。
 22ページの第2にも文化施設の職員などの資質向上のための研修の充実を図るということも書かれているわけでございます。
 5年前の基本方針にこのように「充実を図る」という言葉で書かれていたことが、現実にそうなっていないということです。「特に」という言葉を入れていただいただけでも随分変わったとは思いますが、やはり「最重要課題である」、「急務である」という言葉にした方がさらに、基本戦略として実際に踏み出せるような文言になると思います。
 要するに、芸術家と伝統芸術に比べ、アートマネジメント、舞台技術者だけが、この部分にしか書かれていないということです。

○高塩文化庁次長 「特に」という表現で相当強調をしたつもりでございます。前回は文化基盤の整備ということで、総論部分には人材の育成はとらえておりません。今回は、総論部分の戦略的重点事項の6つの柱の1番目が人材で、その中で「特に」とアートマネジメントを書きました。第2の各論部分では、人材育成に加え、19ページの冒頭にアートマネジメント担当者と舞台技術者の記述がございます。
 それと、24ページの劇場、音楽堂の充実の18行目にも書いてありまして、前回より後退したということはなく、アートマネジメントは3カ所で書いているということです。ぜひご理解を賜ればと思っております。

○青木部会長 確かに、アートマネジメントを養成するような教育、大学機関、大学院機関もたくさん出てきたことは事実ですよね。ただ、まだ今の我が国の大学において、こういう分野で世界に通じるような人はほとんどいないのではないかと思うんです。だから、教育の充実はやはりあると思います。

○田村(孝)委員 アートの分野だけのことではなくて、医療機関も学校も、すべてに言えることでございます。

○青木部会長 今日本で専門家に対する評価がきちんとされていないのは問題だとは思います。
 それから、やはり企画から資金集めまでいろいろと考えるプロデューサーがいない。そういうことと連動するお話だと思います。

○熊倉委員 学術的な研究の充実もさることながら、実学の部分が大きいのですが、国際的に通用する研究者もいらっしゃいます。
 ただ、育成することが大事なのではなくて、現場にその雇用のないことが一番重要だと思います。
 ただ前回は、既に配置されている人材の研修の機会の充実ぐらいしか述べられていませんでしたが、今回のものは、24ページの劇場、音楽堂等における研修の充実のところは「舞台技術者等の配置等の支援」としておりますが、「配置等の支援」が何を指すのだか実はよくわかりません。そもそも人材を登用する制度が不足しているので、そこが少し気になっています。

○松岡委員 3ページの15行目のところで、公立文化施設に対しては、指定管理者制度の導入によってプラスの面もあるけれどもマイナスの面も懸念されていると現場から指摘されていると書いてあって、23ページの第10「文化芸術拠点の充実等」で劇場、音楽堂、美術館、博物館、図書館という公共の文化施設について記述がありますが、その懸念を払拭するようなこと一言どこかで入れた方がいいのではないかと思います。

○高塩文化庁次長 今の松岡先生からのご指摘の「劇場、音楽堂等の充実」の3つ目、10行目から始まる文章でございますけれども、「施設の管理運営等に関し、それぞれの目的等に応じ、長期的かつ継続的視点に立って、多様な手法を活用したサービスの向上、運営の効率化等の配慮が行われるよう促進する」と懸念を払拭すべく、長期的観点で、短期的な効率性だけではないという意味を書いてあるという理解でございます。

○河井委員 7ページの最後から8ページの3行までのところ構文が複雑で、「国内の文化芸術振興」という観点が国際交流の方でプラスの要因として書かれているのか、あるいは国際交流ばかりではなくて国内の文化芸術振興もという意味で、「留意しつつ」としているのか、あいまいになっていると思います。国内の文化芸術振興ということをプラスの意味で「留意しつつ」という構成だとすると、「国内の文化芸術振興に寄与することはもちろんのこと、それらの活動が云々」という構成にした方がわかり易いと思います。

○青木部会長 基本方針では全体的には国内のことを言っているんですね。そこに国際的なことを入れたわけです。
 それぞれお立場とかご専門とかございますから、最大公約数的な文章になってしまうので、どうしてもご不満は残ると思います。しかし、要は日本の文化が非常に魅力的になって、それですばらしいパフォーマンスで楽しませてくれるということが前提です。
 これまで14回にわたってご検討いただきまして、問題点が明らかになったと思います。結果的にはここまでまとまったのは大変ありがたく、また有益なことだと思っております。
 今後、若干の文言等の整理がございます。本日いただきましたご意見の扱いも含めまして、2月2日に文化審議会で文化審議会の会長が文部科学大臣に答申を渡す答申案に関しましては、この議長役をさせていただきました私に、ご一任くださいますでしょうか。

(全員「異議なし」)

○青木部会長 どうもありがとうございます。
 国が文化に対してどうしていくのかという観点から、ご意見をまとめさせていただいたと思いますので、何とぞよろしくご了承のほどを得たいと思います。
 それから、個人的には大変勉強になりまして、大変啓発されることが多かったと思います。すばらしい委員の皆様方に恵まれまして、この座長役、どうにか務まったと考えております。
 先ほど申しましたように、2月2日に最終的に総会において文化審議会会長が答申しますのですが、内容に関しましては私が責任を持って答申をさせていただきます。
 最後に、この答申案を受けた日本の文化政策の展開、あるいは期待や、1年の審議を振り返ってのご意見ご感想などを一言ずつ、いただければありがたいと思います。

○吉本委員 3つばかり最後に意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 1つ目は、最終的に閣議決定された後、積極的に広報をして、基本的な方針がまとまる背景には何度も熱い議論があったわけですから、議事録等をお読みいただいて、いろいろな議論の上でコンパクトにまとまっているのだということもあわせて伝えていきたいと思います。
 2つ目は、やはり基本的な方針ということですので、具体的な政策まで踏み込んで書ききれないという部分があったかと思います。今後は現場の声や政策の専門家の方などの意見も踏まえながら、この基本的な方針に盛り込まれた理念のようなことが、制度的なことも含めてより具体的な施策に盛り込まれたらいいのではないかという点でございます。
 もう1つは、この審議会の議論を始めたときに、これまでの5年間をどう評価するかというのが非常に難しかったと思います。基本的な方針、とりわけ重点事項については、できれば政策をつくる過程で5年間のロードマップなどを含めた達成目標を明確にしていくといいのではないでしょうか。それから、第2の各項目については、従前の政策に対して何がこの5年で変わったのか、新しくなったのかということがわかるような対比表をつくっていただけたら、国民にもわかりやすいのではないかと思いました。

○岡田委員 インターネットが無法地帯と化しているということ、それに対する警鐘が入れられないかということを申し上げましたが、やはりあそこで少し頑張っておけばよかったかなと、思っております。
 縦割り行政の弊害をみんな感じているわけで、日本全体の問題、人類全体の問題としてとらえて、警鐘を盛り込むべきだったかと思っております。

○河井委員 2点ほど申し上げさせていただきますが、1つは子どもを取り囲む現状は、家庭、地域、学校とも環境が激変しております。その中で、学習や健全育成ばかりではなくて、子どもの社会性の育成、また心の教育に文化、スポーツ活動は非常に有用であると思っております。
 特に、地域の教育力を生かした文化活動、スポーツ活動が、これから子どもたちにとって非常に重要なのではないかということで、その点に力を入れていきたいと思っております。
 もう1つは、地域間の交流の促進について、力を入れていただきたいと思っております。
 例えば国民文化祭が行われますが、それは開催県中心の催しものではなくて、全国からの代表が集まり演じるような、あるいは情報を交換できるような大会に、より一層のご指導をお願いしたいと思っております。

○富澤委員 日本の政治体制の中では安倍内閣が誕生して、「美しい国、日本」を政策として掲げて国づくりをやろうという時期にちょうど重なったわけです。
 ぜひ、政府としてこれをうまくこの中に取り入れて実現していってほしいと希望しているわけです。
 社会的に日本国内を見ると、団塊の世代が文化をこれからどう受け入れていくか、社会的な環境をつくっていくかということが非常に大事な時期でもあるので、国づくりという意味でも、文化が大事になってくると思うわけです。
 したがって、この答申が、国の政策などで社会的にもうまく活用されていけばいいと思っています。

○川村委員 5年前の基本方針から見ると、やはり社会が確実に大きく変わっているというのを改めて実感しました。1つは、地方分権が確実に進んでいる。また、規制緩和という形でそれが進んできている。
 規制緩和では、やはり指定管理者制度に典型的にあらわれているように、芸術文化の長期的、安定的な発展という観点から見ると、本当に大丈夫なのかと危惧せざるを得なくなってきたと思います。
 それから、地方の時代というのを実感したのは、文化財の観点です。文化財保護法という法律があって、今までは、これは国宝、これは重要な文化財とトップダウンで決めてきたけれども、今回の方針では文化財をみんなで、地域で守っていく、大切にしていくという観点が鮮明に出されたということは実にいいことだと思います。地域から見ればまさにそれが文化的空間そのものなんですね。
 そういうことが、今回のこの答申案で方向として出てきたということが、地方の時代だということの1つのあらわれだと思っています。

○熊倉委員 ちょうど今年度ヒアリングにいらしていただいた野呂三重県知事の「三重県政の基礎に文化を据える」というかけ声のもと、県の職員研修の講師で呼ばれて伺ったのですが、自治体の職員研修で文化がテーマでは昔は人が集まらなかった。しかし100人ぐらいいらっしゃって大変熱心に耳を傾けていただきました。つまりもう地域の側では、このまちを文化で何とかしなくてはという意識が高まっている。でも、その中で何をどうしたらどうなるのかというイメージが十分に描けなくて、困っているという印象を持ちました。
 文化庁としても議論を積極的に展開をしていって、5年後にはもう少し国民が広く、文化というものの多様なとらえ方について共有できているといいなと思いました。

○嶋田委員 1つ2つ感じたことがございます。
 過日、新国立劇場の方にお話を聞いたときに、スタッフが日本は充実していて、技術が高くて、諸外国から来ても安心して芸術活動ができると評価されていると伺いました。やはり裏方が充実しているということは国の文化度の高さをあらわすことになりますので、ぜひそういったところもこれからも目を向けていかなければいけないと思ったことと、それから、先生方皆さん、やはりご自分の専門の世界をお考えになられているかと思うのですが、ぜひ、私も含めて、国民基点という視点は絶対に忘れてはいけないと思っています。

○白石委員 特に最初のころは現場で活躍されている様々な方のご意見を伺いましたが、その中で問題になっていたところが、答申の中によく反映されておりまして、その点は本当にありがたいと感じました。
 これをどのように具体的にしていくかということが重要なところだと思いますので、まだまだこれからだと思います。

○田村(和)委員 基本的な視点の中で「文化力」というのが非常に強調されています。しかし、文化の時代を拓くくとか、文化力で地域からという話をリードしていく、展開していくシナリオが後ろの方で弱いかなという感じがしています。
 実際にここ3年間ぐらいの議論の蓄積は大変なものです。この議論の成果、蓄積をどう使い尽くせるのかということが1つでございます。
 それから、もう1つは、このレポートを実際に具体化していく運営システムを強化して、フォローやチェックを進めていくということだと思います。
 まず、成果の蓄積の方ですけれども、いろいろな分野の方が出てこられてお話をされた。やはり今の日本の文化状況、問題は顕在化してきます。ですから、この課題を整理していく作業が必要であると思います。
 こういう中から、ぜひ文化庁でも調査や検討テーマを洗い出していただきたい。それから、議論の継続的な機会を企画していただきたい。これは、我々もここに携わった以上は、今後努めていかなければいけないことです。
 第2の問題は運営システムでございますが、フォローする委員会を設置しながら、これをどういう形で展開していくのか考えていただきたい。同時に、長期的な、定性的な新しい評価のシステムを考えていくことも大切だと思います。
 それから、最後に、5年後の第3次への道を開いていくための途中経過が見えるように整理していただくシステムがあればいいと思っています。

○田村(孝)委員 実は年末に「文化政策の大切さを思う」ということで放送をさせていただきました。「芸術は心の食べ物である」と言う方がいらっしゃいますけれども、やはりそのことを、私たち日本に住んでいる者が共有できるように努力をしなければいけないと思っております。
 今まで、日本と外国の違いは価値観の違いだということ、芸術に対する価値観の違いだということをよく言われました。でも、ある海外の芸術監督など関係者の方の努力は、日本に比べたらはるかに大きいと感じております。この基本方針の検討会に加わった者の一人として、それを肝に銘じなくてはいけないと感じております。
 具体的な施策とか条例に落とし込んでいくことができるように私たち自身も見つめていかなくてはならないし、文化庁にしていただくというのではなくて、私たち自身が問わなくてはいけないということだと思います。
 具体的に申し上げますと、英語やパソコンを学校でやらなかったら、保護者は文句を言います。でも、邦楽器が学校になくて教えられないという現状があっても、文句はおっしゃらないのです。このことをきちんと問うていかなければ、日本の文化状況は変わっていかないのではないかと思っておりまして、それは私たちの責任だと思います。

○根木委員 今後、制度的にもダイナミックな変革が予想されるような内容も幾つか入り込んでいるのではなかろうかと思われますので、これから文化庁で具体的な施策の展開に当たって、その面を発揮していただければと感じているところでございます。

○松岡委員 文化立国と言うからには、やはり一人一人が、税金の使い方も含めて、目を開いているということが大事だなと思いますし、私たちのこの部会の役目は、今後5年間の方針を出したところで一応終わるわけですけれども、実際に具体的にどういう形になっていくのか、そして、5年後に見直しをしたときに、まったく実現されていないということにはならないように、人任せではいけないのだということも含めて思っています。
 この国が文化立国を標榜しながら、文化庁が文化省になるより先に防衛庁が防衛省になってしまったのが残念でなりません。

○真室委員 各分野の専門に精通した方がいろいろな視点から話をされて、自分の専門分野の美術館、博物館にとってはどうなのかということを改めて考える機会にもなりました。地方分権、あるいはいわゆるローカリゼーション、グローバルな形で経済は特に動いていますけれども、文化は創造性、いわゆる新しい価値をいかに生み出すかということがやはり肝心なので、そのためにはローカリゼーション、あるいはローカルなものこそ、創造性があり独創性を見出すということはあるのかなと思いました。
 そのために、国としてはどういう仕組みをつくったらいいのか、どういう支援をすべきか。文化財を保護し、それを継承・発展させるということも必要でしょうし、また、海外と、あるいは国際関係の交流もやはり必要だというように、これからの新しい価値をいかに生み出すかということが日本の文化力になっていくのかという考えを今強くしております。

○山西委員 特に学校における文化芸術活動の役割、あるいは意義というものが随分明確になってきたかなと考えておりますので、今学校は責められる立場にありますけれども、これらの答申をさらに具現化する中で、地域の人と一緒になって特色ある学校づくりで、攻める立場に変われたらいいなという願いを持っているところでございます。
 文化を中心にしながら、豊かな人間性の涵養や精神的な豊かさを持った子、その裏づけとして知識や体力のある子、そんな子どもたちが育っていったらいいと考えておりますので、今後、学校現場の中で、5年後の子どもたちを見てくださいと言われるような努力を続けてまいりたいと思います。

○横川委員 文化芸術というのは、極めて幅広くて大変な問題があります。でも、ここでは、基本的なところだけを書き入れていただいたわけで、これを一般的国民がどのように今後受けとめることができるか、具体的に見える形に今後展開させていただければ大変ありがたいと思っております。

○米屋委員 反省点と、宿題だなと感じていることを申し上げたいと思います。
 1つは、人材の専門性ということに関しては十分に議論をして、それなりの結果にまとめられたのではないかということはよかったと思うのですが、先ほど熊倉委員もおっしゃいましたように、やはり雇用こそ大事なのではないか。職業としての確立というところでの意見が出たにもかかわらず、その議論をもう少し深められなかったというのが反省点です。今後、具体化に向けての課題の1つではないかなと思います。
 もう1点は、美術館、博物館、それから劇場、音楽堂といったところを中心としつつ、社会教育や生涯学習と文化振興とのかかわりについて、いま一つ議論を深めることができなかったことだと思います。
 それから地方分権化の中で、国と自治体の役割は明らかに違っていると思いますので、それをどう分けて連携していくのかという具体化の議論が今後必要なのだろうと思っております。また、子どもたちのための文化環境に関して具体的にどのような形にしていくのかという議論を重ねなければいけないところではないかと思っておりますので、基本方針の具体化に向けた論点になるかと思っております。
 まだ芸術家の専門家としての確立というところでは途上にある部分が多いかと思いますので、それを自分の宿題としても、またこの基本方針と絡めながら、今後具体化に向けて考えていきたいと思っております。

○青木部会長 この2年間、この文化政策部会の会長を富澤副会長とご一緒に務めてまいったのですが、長崎と横浜と奈良の公聴会や、政策部会でのヒアリングでは貴重なお話を聞きました。
 やはり日本で文化、特にアーティストに対する敬い、社会的な評価が低いと思います。それから、「アーティスト」、「アートマネジャー」という言葉は意外と日本語になりにくい。自分で「芸術家」とは恥ずかしくて言えない。そのような意味でも環境づくりをしっかりして、文化に対する関心や理解度を高めていくことが大切だと思います。
 文化に対する関心が高まってきたと思いますので、具体化の中で生かせれば非常にいいのではないかと思いますし、皆様には文化芸術に関することを話題にしていただきたいと思います。
 続いて、平成19年度の文化庁の予算案の概要に関しまして、事務局よりご説明をお願いします。

○竹下政策課長 <予算概要について説明>

○青木部会長 最後に、近藤文化庁長官からごあいさつをいただきたいと思います。

○近藤文化庁長官 青木部会長をはじめ、委員の皆様には、昨年の3月以来、14回にわたりまして大変精力的にご審議をいただき、ただいま、「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて」ということで文化政策部会として答申案の取りまとめをいただいたわけでございます。厚くお礼を申し上げたいと思います。
 特に作業チームの委員の先生方には、この答申の原案の作成に大変なご尽力をいただきました。重ねて御礼を申し上げたいと思います。
 この答申案では、文化芸術の振興に当たっての基本的な視点や、今後重点的に取り組むべき6つの事項をお示しいただくなど、大変重要なご提言をいただきました。
 文化庁といたしましては、この答申案に基づきました第2次基本方針の閣議決定に向けて諸手続を進めるとともに、今後、第2次基本方針を踏まえ、文化力を高め、文化芸術で国づくりを進める「文化芸術立国」の実現を目指し、文化芸術の振興に関する施策をより一層推進してまいりたいと考えております。
 文化、あるいは芸術文化というこの分野でございますので、数値目標のようなものを書くということがなかなか難しい。指定文化財の数を増やしても、果たして文化財が保護されるのかどうかという議論もあるのだろうと思っております。
 ただ、答申をいただきました上は、やはり文化庁といたしまして、具体の施策にどう反映していくのか、今後5年間、何をどういった形で進めていくのかということを庁内でも議論をしていく必要があるのだと思います。
 そして、3年ぐらい先には、中間的な検証をして、残りの2年間をまた目標に向かって進んでいく必要があるだろうと思っております。大変立派な答申をいただくわけでございますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
 これまでの委員の先生方のご尽力に対しまして、改めて敬意を表しますとともに、引き続きご指導をいただけますことをお願いを申し上げまして、あいさつにかえさせていただきます。どうもありがとうございました。

○青木部会長 どうもありがとうございました。
 長官からしっかりとしたお言葉をいただきましたので、ぜひ文化庁にも頑張ってやっていただきたいと思います。
 本当に皆様、お忙しいところをありがとうございました。
 これをもって第14回文化政策部会を終了いたします。

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