第5期文化審議会文化政策部会第1回議事録

1 日時 平成19年8月2日(木) 13:20〜15:00
2 場所 東京會舘丸の内本館11階シルバールーム
3 出席者
(委員)
唐津委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 高萩委員 富澤委員 三林委員 宮田委員 山内委員 吉本委員
米屋委員
(事務局)
青木文化庁長官 高塩文化庁次長 吉田審議官 尾山文化部長 大西文化財部長 清水芸術文化課長 他
(欠席委員)
尾高委員 ロジャー・パルバース委員
4 議題

(1)部会長等の選任

(2)文化政策部会における検討内容等について

(3)その他

【清水芸術文化課長】
 ただいまから文化審議会文化政策部会を開催します。本日は委員改選後の初めての会合ですので,部会長が選任されるまで私が暫時議事を務めます。初めに,本文化政策部会の委員の先生方を紹介します<座席順(あいうえお順)に紹介:資料2の名簿参照>。なお,尾高委員とロジャー・パルバース委員は,本日欠席です。続いて,本日の会議に出席しています文化庁関係者を紹介します<青木文化庁長官,高塩文化庁次長,吉田文化庁審議官,大西文化財部長>。尾山文化部長もおくれて到着予定です。会議に先立ち,配付資料の確認をお願いします。<配付資料の確認>それでは,ここで本部会の部会長を選びたいと思います。選任方法については,文化審議会令の第6条第3項の定めにより,この部会に属する委員の互選により選任することとなっていますので,どなたか推薦をお願いします。
【山内委員】
 これまでの経験,文化審議会全体での経綸などを踏まえ,東京藝術大学学長の宮田亮平先生を推薦します。
【清水芸術文化課長】
 宮田委員の推薦がありますが。
(「異議なし」の声あり)
【清水芸術文化課長】
 それでは,異議なしとのことですので,宮田委員が部会長に選任されました。今後の進行については宮田部会長にお願いします。
【宮田部会長】
 先生方のお力をおかりして,日本の文化芸術の向上のために尽くしていきたいと思います。よろしくお願いします。それでは,文化審議会令第6条第5項の規定に基づき,部会長の代理を指名したいと思います。富澤委員にぜひとも部会長の代理をお願いしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【宮田部会長】
 ありがとうございます。富澤委員,よろしくお願いします。それでは,7月19日に河合元文化庁長官が,1年近い闘病の末,残念ながらお亡くなりになりました。我が国のすばらしい指導者を失ったということは痛恨にたえませんが,議事に先立ちまして,河合元長官に哀悼の意を込め黙祷したいと思います。ご起立願います。約1分間ですが,皆さん,よろしくお願いします。黙祷。
(黙祷)
【宮田部会長】
 ありがとうございました。お直りください。初めに本部会の概要を簡潔に説明いただいた後,部会の運営に必要な事項として,運営規則及び議事の公開について決定したいと思います。清水課長,説明をお願いします。
【清水芸術文化課長】
 <資料1,2,3,4,10,11,12,13の説明>
【宮田部会長】
 ありがとうございました。それでは,資料3,4の案について部会の決定としますが,よろしいですか。
(「異議なし」の声あり)
【宮田部会長】
 ありがとうございます。それでは,本日の議事を公開しますので,傍聴者に入室してもらいます。
(傍聴者入室)
【宮田部会長】
 続いて,青木長官からあいさつをお願いします。
【青木文化庁長官】
 本日はお忙しいところ出席いただき,誠にありがとうございます。まずこの委員会の委員をお引き受けいただき,お礼申し上げます。ご承知のとおり,この前期の文化政策部会に私も委員として参加しましたが,そこで「文化芸術の振興に関する基本的な方針,」いわゆる第2次基本方針の審議を行い,1月に結果を取りまとめ,2月9日に閣議決定されました。今回の文化政策部会においては,その閣議決定において提言されている内容の実現に向けて,文化の振興に関する基本的な政策の形成にかかわる重要事項に関して,皆様の専門的な立場から自由闊達な議論をいただければと思います。前回の政策部会も大変活発な,全く自由な議論をいただきありがとうございました。今回もまた前期に増してすばらしい議論をいただけると期待しています。今日はよろしくお願いします。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。ぜひとも実のある会議にしたいと思います。先生方のご協力をお願いします。それでは,本日の進行についてですが,まず清水課長よりアートマネジメント関係の資料の説明をしていただき,その後に今期の文化政策部会の進め方について,委員の皆さんに意見を承りたいと思います。よろしくお願いします。
【清水芸術文化課長】
 それでは,今期の文化政策部会の進め方について議論,決定いただきたいと思いますが,その参考として,幾つかの資料を入れていますので,関係資料を一括して説明したいと思います。資料5,資料8と資料9をまずご覧ください。青木長官からのあいさつの中にもありましたが,平成13年に成立した文化芸術振興基本法に基づく文化芸術の振興に関する基本的な方針については,今年の2月に第2次の基本方針が閣議決定されたところです。このパンフレットを開くと,その右側に経緯をまとめていますが,これまで文化政策部会においては,一昨年,昨年と2年間にわたり,第1次の基本方針の検証から,新たな基本方針の策定まで,非常に広く活発な審議が行われたところです。そういった経緯が右の一番下にも出ています。そして,新しい基本方針においては,全体的な方針としては,ページの左側にまとめてありますが,我が国は文化芸術立国を目指すということを目標に掲げ,左側をもう一つ大きく開くと,次の視点に立って,文化芸術を振興する,次の事項に重点的に取り組むといった,第2次の基本方針の骨格の部分がまとめられています。特に,その中段から下のところ,「特に,次の事項に重点的に取り組みます」といった部分が6つの重点事項が並べられており,その一番左側,一番最初の課題として挙げられているのが「日本の芸術文化の継承,発展,創造を担う人材の育成」であり,その中でも特に議論が行われたのが,文化芸術と国民等を結びつける人材,文化芸術を支える人材であるアートマネジメント担当者,舞台技術者等であったと伺っています。そして,基本方針の具体的な内容はパンフレットを右側に開いたところに項目が並んでいますが,ただいま申し上げたアートマネジメント等に関する記述については,資料9に第2次基本方針におけるアートマネジメント担当者,舞台技術者に関する部分の記述を抜粋していますのでご覧ください。それから,アートマネジメントに関しては,資料16にこの2年間における文化政策部会における議論の中からアートマネジメントに関しての意見を抜粋しています。こういったところも参照いただければと思います。資料5に戻りますが,一昨年,昨年の文化政策部会の議論,そしてそれを踏まえてつくられた新しい基本方針の中で重点として位置づけられている人材養成,特にアートマネジメント等といった部分について,今期の文化政策部会で検討いただけたらと考え,資料5を用意しました。この文化政策部会の検討内容については,この部会の設置を決めた文化審議会,6月29日の総会においても同様の資料を配り議論いただいたところですが,本日の資料は6月29日の総会における各委員の意見を踏まえ若干の修正をしていますので,その部分を含めて,補足しながら説明したいと思います。まず,検討内容の第1として,アートマネジメント及び舞台技術に関する人材養成及び活用についてという項目を挙げ,この活用の経緯,現状,諸外国における現状,アートマネジメント人材の役割,定義,養成のあり方,活用という5つの項目を挙げています。総会においては,人材の養成についてというところを重視した資料になっていましたが,複数の先生方から養成するだけではなくて人材の活用,つまり活躍の場所や受け皿のこともあわせて検討しないといけない。その部分を検討内容に明記すべきであるといった意見がありましたので,それを踏まえて活用といった表現,また(5)のアートマネジメント人材の活用という項目を追加しました。検討内容の第2は,芸能実演家及びメディア芸術に関する人材養成について。この人材養成活用の経緯,現状,課題,諸外国の現状,活用のあり方といった検討事項を挙げています。この部分は総会のときと大きな変化はありませんが,総会のときにはオペラ,バレエ等の例示を入れていましたが,現代舞台芸術のみではなく伝統芸能等を排除するような誤解を与えないためにもそういった例示は外し,一般的な音楽・舞踊・演劇,現代舞台芸術も伝統芸能も両方含めて検討することが明確になるような表現としました。次に検討のスケジュールについてです。人材の養成及び活用について,全体で2年間の検討をお願いしたいと思っていますが,まず1年目については,検討項目の1つ目,アートマネジメント人材等の養成,活用について絞って審議いただき,2年目に第2の審議事項である芸能実演家及びメディア芸術に関する人材養成について審議いただきたいと思います。そして,今年度の審議については,本日が第1回の会議ですが,大体月に1回程度の会議の開催をお願いしたいと思っており,9月,10月の2回を有識者からのヒアリング,11月,12月,2回程度,論点整理の審議を経て,1月,2月,来年2月には中間報告をまとめていただくといったスケジュールを考えています。資料5は以上です。それでは,関連する資料ということで,資料6,資料7をあわせて説明します。資料6はアートマネジメントの現状資料です。この資料の1枚目がアートマネジメント,あるいはアートマネジメント人材の定義,役割について,さまざま言われていることをまとめたものです。資料の左上に出ていますように,アートマネジメント,アートマネジメント人材というのは,文化のつくり手,芸術文化を行うものと住民等受け手,つくり手と受け手をつなぐ役割を担う人材というのが一般的な理解,説明かと思います。具体的には文化施設や文化団体等において事業の企画運営,教育普及を担う専門家という,そういう説明をされることもあるかと思います。昨年,一昨年の文化政策部会においても,かなりこのアートマネジメントについて議論がなされましたが,その中でもアートマネジメントの概念,役割というのは必ずしも明確になっていない。むしろ漠然としているところがあるとか,かなりさまざまな役割を総称したものとしてこう言われているんじゃないかといったような発言もあったということですが,右側の色がついている図は,これからの議論を整理するために,アートマネジメントに求められている役割を大きく,企画的マネジメント,団体の経営実務,文化と社会を結びつける作業といった形で3つに分類して示したものです。ただ,これは人によって考える,あるいは重視する役割が異なっているというのが実態なのではないかと考えています。それでは,資料の2枚目ですが,現在のアートマネジメント人材の養成と活用の現状ですが,一番左側のところが養成の部分です。近年,アートマネジメントのコースなどが各地の大学で設置されてきていますので,それの事例を挙げています。ただし,それぞれの大学の教育,研究の内容については,必ずしも全く同じとか,統一されたということではなく,むしろ大学の性格,当該コースの成り立ちとか教員の構成などから大学ごとに特色,傾向があると聞いています。それから,中央が活用。活躍の場ということでありますが,全国の劇場,文化施設や実演団体等の芸術団体に加えて,プロダクション,あるいは劇場メンテナンスの企業,指定管理者制度の導入に伴い,そういった民間企業の活動も活発になってきているところもありますし,一般企業の広報宣伝部なども考えられるということで羅列をしているものです。ただ,現在においては,こういったアートマネジメント人材の受け皿,活動の場はまだまだ少ないのではないか。そこに大きな課題があるのではないかという意見もあったところです。それから,一番右側が再教育と書いていますが,現在劇場等で働いている社会人に対する再教育,研修等ですが,ここでは文化庁が社団法人全国公立文化施設協会と協力して実施しています研修について記載をしていますが,これ以外にも芸術団体,芸術家の技能者団体,あるいは劇場等が企画実施をしている研修等もあります。その後,資料の3枚目,,4枚目,5枚目については,ただいま説明しました社団法人全国公立文化施設協会が実施しているアートマネジメント研修の実態,全国研修と,それからブロック別の研修。それから,実際に行われている講義の内容。プログラムの名称のみですが−をとじています。以上,簡単な資料ですが,議論の参考になればということで用意しました。それから,最後ですが,資料7として,有識者からのヒアリングについてという資料を用意しました。次回,次々回,9月,10月ごろの2回の部会においては,有識者からのヒアリングを予定していますが,そのヒアリングの方針について案をつくりました。各回2名程度,合計4名の方からヒアリングをしようと思っていますが,アートマネジメント人材の養成等について,さまざまな角度から検討する必要があると思いますので,4つのカテゴリーを考え,大学等において養成に携わっている方,劇場等においてアートマネジメントに実際に携わっている方,受け入れ先というか活躍の場である団体あるいは文化施設の代表,そして外国のこともあるので日本,諸外国を含めた全般的な状況について見識のある方と。大まかですが4つに分類して,それぞれについて詳しくお話のできる方,各1名からヒアリングをしたいと考えていますので,この方針についての意見,またそれぞれの分野,カテゴリーについて具体的にこういう有識者がいいのではないかといったような意見をいただければと思い用意した資料です。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。この検討内容ですが,ただいまの資料5です。説明にありましたように,アートマネジメント,総会でも話がありましたように,なかなか難しい部分です。しっかりと根づいたらと思っています。それから,舞台技術に関する人材養成の活用,さらには来年度の芸能実演家及びメディア芸術に関する人材養成の活用ということになっています。この件に関して進めていきたいと思いますが,ご了承いただけますか。
(「異議なし」の声あり)
【宮田部会長】
ありがとうございました。
【吉本委員】
 資料5の(2)についてですが,ここでは芸能実演家とメディア芸能に関する人材育成とありますが,いわゆる芸術家全般を考えると,ほかにも美術家,脚本家,作曲家,振付家とかもいます。そういった方々がこの分類だと含まれないと思いますが,そういう理解でよろしいですか。英語でアーティストというと,実演家はインタープリティブアーテストといって,美術家,脚本家,作曲家という個人が作品を生み出すようなアーティストはクリエイティブアーティストというふうに言われ,区別されることがありますが,今回のこの検討対象に後者の方は含まれないという理解でいいのかどうか,質問です。
【宮田部会長】
 清水さん,いかがでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 実演家に絞ってということで用意はしましたが,もう少しそういった幅広い美術なども含めて検討すべきだといった意見があれば,むしろこの場で検討いただければと思います。
【吉本委員】
 例えば俳優さんが幾ら育っても脚本,作品がないと芝居はできないと思うので,そういう作品創造の原点を担うアーティストの活動というか,育成がすごく重要ではないかというふうに個人的に思いますが,いかがでしょうか。
【宮田部会長】
 ただいまの吉本委員の発言に対していかがでしょうか。皆さんご意見は。
【三林委員】
 全くそのとおりだと思います。やはりもとになる脚本が不足していると思います。それは全部の世界に,芸能界,舞台もテレビも含めて。もちろん若手の人は育ってきていますが,かなり少なくなっていると実感していますので,ここはぜひ強力に。
【宮田部会長】
 言ってみれば,これは両輪みたいなものですよね。実演をする人と,それをすべて演出する人と,両輪で成り立っている。
【三林委員】
 どちらが欠けてもできないものですから。
【宮田部会長】
 今の三林委員のように演ずる人がいても,演ずる中の内容の,作品がないとできないという意味の発言ですね。私も文化庁さんの会議に出席して難しいなと思うのは,一つをやり出すと全部考えないとできないという部分があります。そうすると結果的には総花になってしまうという部分もありますが,今の2人の先生方の話を聞いてますと,これまたやっていかないといけないという部分も感じられますが,いかがでしょうか。今回はここに絞るか,両方持っていくかということも議論いただきたいと思いますが,とりあえず,この5に関しては当然進めなければいけないと思います。この2番,そこに(3)ということをつけてもいいかと思いますが,いかがでしょうか。ほかの先生方,意見をどうぞ。
【高萩委員】
 「芸能実演家及びメディア芸術に関する人材養成」なんですよね。だから,「芸能実演家」と言わないで,「芸能及びメディア芸術に関する人材養成」にすれば両方含むので,わざわざそこで限定して,メディア芸術だけ限定してないというのもちょっとよくわからないですが。
【宮田部会長】
 この区切りそうですよね。
【高萩委員】
 できれば「芸能及びメディア芸術に関する人材養成」にすれば実演家も,それから演出家も作家も全部含むので,いかがでしょうか。
【宮田部会長】
 ほかにございますか。言われてみると,2は妙に縮まっているのと妙に広がったのがかぶさってますね。
【高萩委員】
 つまり,芸団協さんが比較的,芸能実演家という言葉を使っています。芸団協はやはり実演家団体ですから,作家,演出家は含んでないんだと思うんですよね。ただ,皆さんそれぞれ関係しているので,そのことについて芸団協側が何か言うということもないと思いますから,ぜひ含んでいただければと思います。
【宮田部会長】
 ほかにございますか。
【米屋委員】
 では,芸団協ですが,細かいことを言うと演出家は含まれていますし,現在,芸団協の傘下はスタッフやマネジメントも含めてですので,実演家に限定していません。全体の状況がよくならなければ,実演家の活躍の場もないということで,直接作家だけの方は加盟できませんがカバーしていますので,そういったところでうちだけを主張したいという意味でこうなっているのではないと思います。ただ,ここは「実演家等」か何かにして,本当に創造に携わる人たちという理解で何か汎用的な言葉にしたらいいのではないかと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。これとプラス,もうちょっといろいろな意味で大きい議論をさせていただきたい部分がありますので,今の話をかんがみて,決してくくりをつくったというふうに考えないで,広く考えるという意味で,「芸能芸術家等及びメディア芸術」というのも一つの案ですが,清水課長はいかがでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 ちょっと細かい表現とも思いますが,今の趣旨,演出家やそういった方も含めて検討すべきであるという意見であれば,そういう趣旨で,「芸能芸術家及びメディア芸術」,メディア芸術の並びがどうかというところはありますが,そういう趣旨で進めようということであれば,それで整理したいと思います。
【宮田部会長】
 わかりました。では,今の先生方の発言をかんがみ,ここに「等」と入れ,進めるということで,吉本委員の最初のお話も網羅されるかと思います。よろしくお願いします。三林委員,よろしいですか。
【三林委員】
 はい。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。それでは了承いただいたということで,進めていきたいと思います。次に,今後の進め方ですが,資料7,第2回,第3回に関して,有識者の先生方からヒアリングを行うということになっています。これに関して,各カテゴリーで……
【高萩委員】
 ちょっと申しわけありません,よろしいですか。先ほどのところに戻りますが,資料5の(1)がアートマネジメント及び舞台技術に関する人材養成になっていますが,(1),(2),(3),(4),(5)あたりがアートマネジメントというだけできています。舞台技術はどうされるのですか。私はアートマネジメント系ですが,やはり舞台技術の方も人材育成を一緒に議論するならば,それからヒアリングのところも舞台技術系のことはちょっと落ちていると思いましたが,その辺はどうでしょう。
【清水芸術文化課長】
 すみません,資料の5に関しては,確かに(1),(2)だけが「等」が入っていて,(3),(4),(5)がアートマネジメント人材に限定しているというのは,これはまさにご指摘のとおりだと思いますので,(3),(4),(5)についても,舞台技術に関する人材も含めたものということで,「等」を入れたいと思いますので,ヒアリングにおきましても,なかなか時間的に難しいところはありますが,そういった部分も含めて,ご紹介をいただければと思います。
【米屋委員】
 もう一つよろしいでしょうか。また戻って申しわけありませんが,資料5では,この(1)が人材養成及び活用についてとなっています。第二次基本方針の方は人材の育成で,文化庁の行政の用語の使い分けとして,養成というのはこれから参入していく人ということで,育成というのは現職者研修も含めて研修と養成の両方を含む語だと思います。私は現職者研修の方を担当しているので,そちらの方きちんと位置づけてほしいという思いで今日来ていまして,この養成に割とシフトして議論を必要としているのか,現職者の方を視野にきちんと入れているのかというところを少し明確にしていただければと思います。
【宮田部会長】
 この前の総会のときに,アートマネジメントに対してのいろいろな意見があったときに,割にどちらかというと,養成の方が多かったように記憶していましたが,先生の言うようにその件はまさしく,また同じように両輪だと思っています。ただ,アートマネジメントそのものも,私は大学の人間で,なかなかまだ根づいてないという部分が,本当の意味で,こういう人たちをもっともっと養成しなければいけない,数もふやさなければいけない。それから同時に,今,話にあったように,現職の人たちの育成,もっともっと力強さが欲しいことが当然だと思います。いかがしましょうか,この議論が,この約半年の中で一つの形をつくり上げなければならないということを考えたときに,さっきも申しましたが,両方持っていくのか,1つから絞り込んでいくのかというところに,最初の段階で,大きくこの後のヒアリング等についても変わってくると思います。非常に大事な議論が今,続いているのではないかと思いますが,その辺は先生方,いかが考えますか。
【高萩委員】
 米屋さんの言ってることを,もう1回整理して言ってくれますか。
【米屋委員】
 アートマネジメントに携わっている人間,現在,例えばどのぐらいいるかとか,そういうことが多分最初につまびらかにされなければいけないと思っています。と申しますのは,例えばこれが学校の教師などだど,日本全国こういう教師は何十万人いますと。そうすると,毎年退職していく人,それから新規に採用される人というのは,定期的にある一定の人数があるわけですが,芸術の世界では定期採用しているような芸術団体というのはまずほとんどないというか,非常に限られていて,芸術団体というのは非常に零細というか中小というか,そういう規模なので,やめたい人がいると補充されるというような形で新規の人材が採用されています。これは給料が出るとか,ちゃんと報酬があるというような世界ですけれど。そうすると,年間どんなに大学で優秀な若い人を一生懸命養成しても,その人たちが就職する場所がないので,どうやってパイを大きくしていくかということを考えると,現在,芸術団体でそういったマネジメントをやっている人たちが,どれだけ充実して,より活動を広げられるかという能力にかなりかかっているのではないかと思いますので,そういった面でも現職者研修と新規の人材,あるいは参入してくる人たちというのは関連なくして議論できないのではないかということがあります。それと,私はかつてイギリスやアメリカでアートマネジメントを勉強してきましたが,海外でそういったアートマネジメントの教育というのが充実したというのも,当初は現職者研修という形で始まっています。インサービストレーニングということなんですけれど。それはやはり支援を受けて,特に公的な支援を受けて活動するに当たって,その責任を全うできる人たちをきちんと育てていきましょうという考えから始まっているので,まずは芸術団体がどういう現状にあって,それでそれがどのぐらいの数の人がいて,その人たちがどういうニーズを持っていて,どういう障害,課題を抱えているのかということなくして,トレーニングの問題,養成の問題というのはあり得ないのではないかと考えていますので,その辺を出発点にしてヒアリングなども問題を整理していっていただければと思います。
【宮田部会長】
 高萩委員,よろしいですか。
【高萩委員】
 はい,わかりました。
【宮田部会長】
 基本的には受け皿と育てる方と,その関係の問題ですよね,すごく大事なことですけど。悔しいけど,やはり海外の方がうまくいっていますよね。日本はまだ根づいてないという,言い切ってはいけないけれど,皆さんにアートマネジメントそのものの言葉も本当に根づいているかというと,ちょっと怪しいところもあるので,ぜひとも前の委員の議論にありましたが,片仮名ではない何かがあったらという話もありましたが,養成すること,それから実際の人たちにもっと力をつけていただく。それから受け皿そのものの人たちとか組織を養成する,指導するという仕事もこれから必要なことじゃないかと思います。実践で教育しないと,大学教育というのはある意味では架空の部分も,バーチャルな部分もあったりするものですから,それをより力づけるためには,どうしてもそういう実践教育というのはすごく必要なことじゃないかと思っています。さて,それではその辺も含めて,皆さんに少しぼやかさないようにしながら人選とか,あるいはヒアリングの中での考え方を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。それで,その辺のことも考えた上で,資料7のことですが,そこに1,2,3,4といろいろな有識者があります。今の発言も含め,この辺のカテゴリーに感じられる人,いらっしゃいましたらぜひとも先生の中で推薦いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。それから,それにまつわることでも結構です。しばらく時間をつくりたいと思いますので,忌憚のない意見をお願いします。ここまでつくってこられた経緯から含めて,今の先生方の話を含めて,何かありましたら議論されるきっかけづくりなど。次長の方からお願いします。
【高塩文化庁次長】
 先ほど米屋先生から育成,養成という話が出ましたが,用語としては育成の方がちょっと広いと思います。養成というと,どうしても大学など教育機関でやるのが養成ということになります。資料5の2枚目にあります再教育というのはどちらかというと研修なんですね。ただ,文化芸術振興基本法では,芸術家等の養成の中で,具体例は研修のことしか書かれていません。というのは,別に縦割行政ではないですが,この文化政策部会で議論いただいて,その後,私どもが政策という形に結びつけていく際に,なかなか大学や専門学校における養成について,文化庁としての直接の政策というのはなかなか難しい面があります。大学の養成課程に対して支援が全くできないわけではありませんが,やはりどちらかといえば,アートマネジメント研修が公立文化施設等で行われていますが,今のままで果たしてそれで十分なのか,現職の方に対してどういった形で研修をやるのか,その量を増やすかどうか,そういったことが文化庁の政策としては前面に出しやすいわけです。ですから,アートマネジメントだけではなくて,先ほど高萩先生から話がありました舞台技術者の研修も考えられます。舞台を支える照明や音響などに従事する方々の研修が民間委託になったり,また,最近事故もあるという話を芸団協やその他の団体から聞いていますので,舞台技術者の方に対するきちんとした研修の機会をどう整備していくかということを施策として打ち出せるのではないかと考えます。養成の部分については,私どもの芸術団体人材育成事業の中で,各芸術団体のやっているさまざまな研修会とか人材育成事業に対して支援をすることが可能です。その中に大学枠をつくり,大学に対する支援方策もこの枠内で工夫ができると考えていますので,養成の部分の支援も全くないわけではありません。ただ再教育と申しますか,研修の部分についてさまざまなご議論の結果,一つの提言をいただけたらありがたいと思います。そして,基本的にはやはり芸術団体や劇場などの活動が活発にならないと,なかなか人材を雇うことにならず,雇用の場がふえませんので,芸術団体への支援や,芸術拠点形成事業などの支援を通じて,さまざまな形で芸術文化の総量をふやすことが必要です。今年度はぜひアートマネジャーや舞台技術者,周辺の各団体の有識者の方に,現場の声を聞かせていただいて,現場でどういったことで悩んでいるのか,どういったニーズがあるのか,実際にやっておられる方の具体の話を聞いて,その上でどうすればいいかということをここで具体的な提言としていただきたいというのがお願いです。来年度以降については,実演家だけでなくというお話がありましたが,たくさんの分野をやっていますとなかなか2ヶ年では終わりませんので,議論の流れを見ながら焦点を絞っていきたいと思います。今年度は舞台芸術に限りませんが,芸術を支える人材に焦点を当てたいと考えています。これが前期の文化政策部会の一つの大きなテーマだったことを踏まえて提案しておりますので,具体的な政策提言をお願いしたいと考えています。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。高塩次長からの話の後半部分で,大体この会議の大きな流れは集約させていきたいというふうになっていると思います。いかがでしょうか。それで,ぜひとも確認いただいたということで,芸術を支えるという人たちに対しての人材の養成も含め,育成も含め考えていきたいと思います。
【田村(和)委員】
 先ほどの舞台技術と,それからアートマネジメントの問題ですが,余りアートマネジメントというのは,大体概要は存じ上げていますが,細かくは存じ上げてないという立場から見ますと,アートマネジメント人材というのは,何か現実にそういう人材がどういうところにいるのかというのは,例えば舞台技術というのは,これは具体的にわかりますよね。何かアートマネジメントというのは,一つの学のあり方であって,ある領域であって,人材というのは本当にいるのかどうかというのは,ちょっとアプリオリ過ぎるんじゃないかなという感じがずっとしています。そういう意味でいうと,例えば博物館,美術館の学芸員とか,それから図書館の司書とか,社会教育主事というのは,もともとあるのは,これはどういう人たちなのかイメージできますよね。ところが,アートマネジメント人材というのはどういう人たちなのかというのが,余り国民にも見えてないだろうというのが非常に不思議なところです。
ですから,余りアプリオリに考えるのではなくて,むしろ現在アートマネジメントが7つの大学でこういうふうにしているということであれば,そこからどういう人たちがどういうところに行き,それからどういう気持ちで今なさっているのかと,それをまずベーシックに知りたいという気持ちがあります。そういうことで,初めて欧米とのアートマネジメント人材の比較もできるという感じですが,どうもここでアートマネジメント人材ときて,それから舞台技術というふうになると,一方は非常に具体的な話だし,アートマネジメント人材って一体,実際に私どもはいろいろなところにあっても,私はアートマネジメントを勉強したということをなかなか顕在的にいう方はいないけれど,一体どういう人がどこでどうなのかという,その人材という言葉自身,ちょっと私はイメージできないところがあるので,そのあたりもヒアリングの中で少し,もうちょっと近いところの存在として議論できるような話を伺えればと思っています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
【唐津委員】
 私は愛知芸術文化センターという公立文化施設の方で,まさにアートマネジメントの人材という,多分そこに当たる仕事をしていると思います。まさにそこの矛盾が私の肩書きにもあらわれていると思いますが,私は舞踊を専門としていながら学芸員という肩書きを使っています。学芸員というのは,実は本当に後付けでとった資格でして,愛知芸術文化センターができるときに,専門家として雇うためにはまず技術職という,専門職という職種を持ってなければならないので,その専門をあらわす言葉として学芸員という免許を持っている方にお願いしましょうというような選び方だったと聞いています。実際的には,舞踊というところでの学芸員という名称を使われている方は,多分どこにもいないと思います。ですから,あなたの仕事は何ですかと聞かれたときに学芸員という言葉を使うと,イメージが多分美術館,博物館の学芸員を大抵の方はイメージされてしまうわけです。そういった中で,実質的には何をやっているんですかという問題になり,そうすると,舞台のプロデュースというようなことになりますでしょうかというような発言になります。実際,海外などに行きますと,プロデュースという言葉には,非常に資金繰りまで含めた大きな意味合いがあり,どちらかというと自分で資金を集めて興行を打つというようなニュアンスがまた強くなってきますので,そこで軽々しくプロデューサーという言葉は使えなくなってしまいます。いろいろ考えて,私はパフォーミング・アーツ・コーディネーターという言葉を使うことにしています。ここで学芸員,プロデューサー,パフォーミング・アーツ・コーディネーターと,3つ出てきたわけです。こういったものすべて含めてアートマネジメント人材というふうに言えるとは思います。今,田村(和)委員の方から出てきたように,こういった現場にいながらも,自分が何をやっているのかということを明確に言うことすらできないというのが本当に現状です。そういった中で,当然,アートマネジメントを学んでいる学生が,じゃあ自分がどういう存在になっていくのかというところが本当に見えてないのではないかと。例えばアメリカですと,ブロードウェイのミュージカルのプロデューサーになりたいとか,それからある劇場の館長になりたいというような夢を持ってアートマネジメントを学んで,それが一つの自分の将来の目標というものにつながっていくような見え方をしていかないと,やはりアートマネジメントを学んでいるだけという,教養主義的なところで終わってしまうのではないかという危機感を実は持っているところです。ですので,こういったアートマネジメントということを,せっかくここで議論していただけるという,本当に一つのいい機会をいただいたと思っていますので,アートマネジメントの目指す方々が,実際にどういう場に出ていって,どういう目標を持って活躍していくことができるのかというところを一緒に議論していくことができればと考えています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。私もこのアートマネジメントの話をいただいたときに,正直言って市民権が余りないですよね,この間選挙ありましたけど。それを確立するための会議かなと。それが本省である文化庁さんからきちっとそういうことを考えようと。それから日本そのものについても芸術文化に関してのアートマネジメントが,ちゃんと人材が育成されると。芸術家はいっぱい出てきます。評論家もいっぱい出てきます。アートマネジメント出てきてないです。これもやはりちゃんとそれはこの会議から,あるいは皆さんにいろいろな意見をいただいたところからきちっと,市民権をいただけるようになってほしいと思っています。貴重なご意見,ありがとうございました。やはり現場の話はリアリティがあります。
【吉本委員】
 今の唐津委員の発言,大変共感をする部分が多かったです。今の発言を聞いて特に思いましたのが,資料7の有識者からのヒアリングについてということで,今,ここに4つの区分候補が出ていますが,これは皆何か有識者であったり,むしろそのアートマネジメント人材を採用する側の人だと思います。むしろ逆に育てられる側,あるいは活用される側の生々しい意見というのをぜひこういう場で聞くことの方が私は重要ではないかという気がしました。それで例えば,世田谷パブリックシアターに今入って,将来の高萩2号を目指しているような方が,たしか研修でいらっしゃると思いますが,例えばそういう方。あるいは文化庁の在外研修でアートマネジメントで留学されている方とか,随分いらっしゃると思いますが,戻ってきてもまさしく仕事の場がなくてというような状況があります。半年ぐらい前にもあるMPOが「アートマネジメントの大学は出てみたものの」というタイトルのシンポジウムを開いたりしていますので,そういう,まさしく我々が育成をしなければいけないと思っている方々を有識者ということではなくて,この部会に呼んでぜひ生々しい声を聞いてみたいと思いますが,いかがでしょうか。
【宮田部会長】
 有識者というのは,何も確立した人を呼ぼうとか,そんな。そういう人がいたら最初からこの会議やらなくてもいいわけで,今,構築していかなければいけないということを,多分,皆さんでここで再確認,再認識したのではないかと思います。ありがとうございます。今の流れで,いろいろ意見いただき,こんな人がとかいうのがありましたら,ぜひストレートに固有名詞など出されてみたらいかがでしょうか。本当に今勉強している段階の人たちというのは,この後,どうなるんだろうかというのは非常に不安だと思います。ですから,本当に身が入るのだろうかと。先生はどんなことを教えているのだろうかというのと同時に,先生は本当にアートマネジメントやっているのかななんて,そこまで言い切っていいのかどうかわかりませんが。いろいろ議論するのがこの部会のおもしろさではないかというふうに思います。我が身を振り返りながら話しているわけですが,いかがでしょうか。
【高萩委員】
 少し話がずれるかもしれませんが,先ほど高塩さんがおっしゃったことに関して言わせていただくと,我々としては養成の部分というか,大学できっちりある程度アートマネジメントというか,そのアート全般的なことについて,特に舞台芸術について,もう少しきっちり教育が行われてほしいというのは思っています。ちょっと言いにくいなとおっしゃったので,今回に関しては再教育中心でも構わないと思いますが,どこかきっちりダンス,演劇関係に関しては,ちゃんと一般教養的な日本の古典芸能から批評まで含めて,それからアートの重要性,アートマネジメントの知識も含めた教育というのが大学4年生,それから大学院とかで行われてほしいなというのは,常に思っています。いろいろな理由で今のところ日本にはそういうのがなくて,単科大学的に,演劇というのはコースは幾つかもちろんありますが,全般的なアートの自覚をして,舞台芸術が必要であるということを自覚しながら養成されているというような状態ではありません。ここではちょっと議論しにくいのかもしれませんが,そのことはどこかに押さえておいてほしいなという気はします。
【宮田部会長】
 どうぞ,みんな生身ですからいろいろと言い足らないこと,言い過ぎたこと,いろいろあってよろしいのではないかと思います。
【高塩文化庁次長】
 大学のカリキュラムで言えば,我が国の大学のカリキュラムがそれぞれの学部でいかようかということは大体皆さん,大学の先生方もおられますし,まちまちでありまして,基本的には大学のカリキュラムというのは,当然,大学の自治で決まっており,大学のカリキュラムがあって,一定化する一つの要件というのは,その資格が国家資格に結びつく場合です。医師国家試験とか,歯科医師国家試験とか,それを目指すような場合には,どうしても大学のカリキュラムというのは,その試験を目指すためのカリキュラムで,ある程度の整合性がつく。ただ,医学部でもコアカリキュラムなどという,今,動きがありますから,大学によって必ずしも一様ではないですね。今,文部科学省で一番重要になっているのが,いわゆる教員養成のカリキュラムが極めてばらばらというか,それぞれ大学が独自にやってきましたが,それを一つ,カリキュラムをどうにか標準的な,今,高萩さんもおっしゃったように,アートマネージャーであればいろいろな分野について一通りというようなことが,なかなか大学,教員養成課程,これは免許制度はありますが,免許というのは,ご承知のように,大学のカリキュラムの履修だけでとれるという,国家試験がかまないんですね。ですから,今,大学は課程認定制度というのはありますが,その認定さえ受ければ,同じ教育原理といってもさまざまな教育原理が行われて,そういう方がそういう単位をとれば教員の資格はとれると,こういう仕組みになっています。ただ,この大学のカリキュラムになかなか国や公的なところがものを言うというのは,現実の問題として大学の自治というのが我が国は非常に強くて,それぞれの中身についてはそれぞれの大学の自主性だということは案内のとおりで,ですから,法律だって,法律は余りないですが,歴史学という科目をとってきたといったって,先生によったらフランス革命だけの歴史学というのも,当然,これは大学がまさに,この先生の専門だけをやってきて,それを履修してくるというものが今の現実でして,その部分について,なかなかコーディネートしていくというのは難しい面もあるということは理解いただきたいと思います。
このアートマネジメントで言えば,まだ私自身の考えですが,もしも可能なら望ましい,先ほど今,医学部なんかでもコアカリキュラムというのをやるんですね。一つの望ましい,こういったものは一つのモデルケースですよと。これは示すだけで強制力も何もないですけれども。そういったものをもし養成の議論の中で,各大学のカリキュラムなど,私ども取り寄せることはむろんできますし,あと直接大学の方々からも話を伺いますから,そういったものを集約した形でこんなものがということを,どういう形で示すかというのはむろんありますけれども,こういった審議の議論の場で,こういったことが一つのマネジメントの最低というんじゃなくて,標準ですというふうな形で示すということは,私どもは可能だと思います。また,そういった知識を持った方ができ得ればこういった労働環境の場に入る際の一つの,これはそれぞれの団体が採用試験というのをやっているわけですが,そういうものにつながっていくということを期待するという世界になります。そういう面で,養成課程についても全く何もできないというわけではなく,コアカリキュラム的な考え方もあるのではないかと考えています。
【青木文化庁長官】
 大変すばらしい意見をいただき,ありがとうございます。いわゆるこのアートマネジャーが必要な業界といいますか,つまり,どういう人材が欲しいかという,今,こういう劇場とか,こういう芸能プロダクションで求めている人材というのは何かというのもやはり必要ですよね。それと,こちらのアートマネジャーの養成,あるいは次長がおっしゃったような研修とか,そういうこととの対応というのは非常に多岐にわたっていると思うので,あそこに俳優の方がいますけど,俳優のおつきのマネジャーとかよく出てくるじゃない。そういう芸能プロダクションなんかのマネジャーというのは,よく言葉としては出てきますね。そういう方と,それからここで考えているようなアートマネジャーとどう違うのか,どういうふうにすり合わせるのかとか。ある程度確立された名古屋の芸術センターみたいなところだとまた別かもしれませんが,いろいろなレベルのことがあるので,そのレベルでのニーズがないと活用というのはなかなか考えにくいですよね。ただ,いわゆる現場をずっと下からやってきて,それでアートマネジャー的なことから,普通のおつきの,個々の俳優なんかにつくおつきのマネジャー的なことも全部こなせるような人というのはいるわけですよね,映画界でもどこでもね。そういう人はなかなか研修とか,そういうことでは養成できないわけでありますが,そういうところに,例えば委員がおっしゃったように,いろいろな大学も含めた養成機関でアートマネジャー養成のための一種のカリキュラムとか,アートマネジャー学みたいなものが確立することによって,業界そのものもまた変わっていくことができるのかですね。ホテル業界なんていうのはもともとそういうふうに,非常にたたき上げが多かったわけですが,いつの間にかコーネル大学のホテル学とか,スイスのホテル研修,いろいろな観光ホテル学科とか,そういうのが大学にできて,今,ほとんど主要ホテルはみんなそういう人たちが占めています。学卒,あるいはPHPを持っている人もいますかね。そういうふうに将来なっていくような分野なのかどうかというのは,やはり非常に重要だと思います。
【高萩委員】
 私は今,世田谷パブリックシアターという世田谷区の財団の運営する公共劇場を担当しています。その経験から言わせてもらいますと,日本の地方公共団体の,今,現状に対する変化の速度が遅いと思います。実際,各地方自治体の皆さんの予算に対する考え方は,十年一日と言うと怒られますけど,芸術に対しての感度は非常に鈍い。建物をつくっておしまいというところが多かった。今回も指定管理者制度の導入にあたって,予算を削りたい,効率化という形で予算をできるだけ下げようとしています。その中でアートマネジャーというのが,確実に必要なのは,今,文化芸術にお金を使ってください。地方自治体が持っている予算の中で必ず何%か,何割か,現金幾らかというのを必ず持ってくる。それを財政当局に説得できる根拠を持っているかどうかというのが一番大きいと思います。そうすれば,アートマネジャーの働き口というのは出てきます。もし,今,それこそ各自治体が1%は必ず文化芸術に使います,使わなきゃいけないというふうに決められたとします。1%の使い方について各自治体が競い始めたときは,確実にどの自治体でもアートマネジャーが必要だと思います。1%をどう使っていくか。あっちの自治体の方がうまく使っている。こっちの自治体の方がうまく使っているという話が出てきます。文化芸術に親しむということ,それから文化芸術に親しむ中で新しい発想を持つということが,その次の日本の社会を確実に良くしていくと,我々は思っています。今,自治体の方たち,多分,田村さんなんかも検討にかかわっているからそうですが,今のままでいいんじゃないかと思っていると思います。文化芸術に関しては,好きな人は勝手にやればいいんじゃないかというところに行きがちなんです。確実に予算をふやそうと思っているところはほとんどないと思います。常に減らしたい,なるだけ前年よりは減らしていきたいと。芸術活動のためのお金を増やすことを,説得できる,芸術の価値についてしゃべれる,芸術がある社会がどんなにすばらしい社会かをしゃべれる,それからそれを議員さん方にちゃんと説得できる,それから役人の方たち,2年か3年で変わっていく役人の方たちを説得できる言葉を持てる人を養成するというのが一番大きいと思っています。
【宮田部会長】
 現場の意見ですね。
【田村(和)委員】
 今,高萩委員がおっしゃったように,やはりその状況の中で育っていくわけですよね。ですから,本当に今おっしゃったように,今,自治体の財政を見ていますと,本当に文化への投資というのは,条例なんかはできるけれど,非常に減っています。その中で,本当にマネジングの説得力のあるアートマネジャーが欲しいというのは,私,本当に実際に現場で感じます。ですから,先ほど青木長官もおっしゃったように,やはり需給両サイドで市場が育てる部分というのは非常に強いと思います,市場とか状況が。そういう意味では,このヒアリングもただ1人を呼んで学識経験者から話を聞くというのではなく,この中にも高萩委員であるるとか,唐津委員とか,現場にいる方がいらっしゃるわけですから,その方とアカデミストの方で実際に教えている方とがここで対論されるという話の方が私はおもしろいんじゃないかなという気がしますが。
【宮田部会長】
 おもしろいですね。
【田村(和)委員】
 やはりキャッチボールがないと,今の話が生きてこないだろうと。
【宮田部会長】
 そのとおりです。ずっと昔から,私なんか学生時代からアートマネジャーが育つとものづくりは楽だなと。楽だななんていうと大変恐縮ですが。結局,ところが日本人って,結構,妙に器用なものだから,僕なんか金属造形科ですが,つくるのと同時にアートマネジメントのことも全部やっちゃうんですよね,自分が納得したいものですから。自分に納得したいというのがあって,どんどん,どんどん全部やっちゃう。ところが,本当はやっちゃいけないですよね,それは。ものづくりだけに専念しなきゃいけない。自分の中で割り振りをつくらなきゃいけないんですが,その辺が大きく,日本人のなかなか育たないところの一つかなというところがありますが,もうそろそろものづくりも世界に越すものづくりであるのと同時に,それを支えるという言葉が本当にいいのかどうかわかりませんが,そういう役割分担みたいなのがきちっとできるような人がいてくれるとバランスがいいし,そして同時に発信力がすごく違ってくると思います。ここが大きいと思う。いいものを持っているんだけど,なかなかそれが非常に狭いところの世界でしか発信されてないのがもったいないというは,若者を輩出している人間としてはすごく感じます。先生方でもとてもいい作品をつくっています。いい演出をしたり,いい演技をしたりしていますが,なかなかそれが伝わってないというところが,裏づけがないというんですか。その辺を養成する人が必要と思っておりますが,そうなってくると,有識者という言葉がまたひっかかってきたりするので,もうちょっと肩の力を抜いて,あと10分ぐらい,先生方の話をいただいて,15:00にはしめたいと思います。全く発言のない山内委員とか,田村委員とか,富澤委員とかに話をいただけたらと思いますが,いかがでしょうか。
【田村(孝)委員】
 ちょっと戻りますが,マネジメントというのは,アートマネジメントというふうに限定してしまうからそういうものが日本にあるかないかという話になってしまうので,マネジメントということを考えたら,医療の世界も,舞踊の世界も,すべて今,それは求められていることですよね。だから,アートの部分について日本は非常にそれが欠けてきたということが一番大きな問題で,それともう一つ,さっき高萩さんがおっしゃった,アートに関する価値観の問題が日本で,それをきちんとやはり,多分,大学のアートマネジメントのコースでは,それをきちんと大学の役割,アートマネジメントのコースは,もしかしてそれが研修とか,それももちろん大切ですけれど,そこの部分をやはりアートマネジメントコースではきちんとやっていただくのが,何でそれが必要なのかということをきちんとやっていただくという必要は一方にある。今は多分,もしかしたら始まったばかりなので中途半端になっているのではないかという気はします。私はこういうことですから,実際,マネジメント能力があるということで,やはり芸術の分野,歌舞伎界か劇団四季といったらあれかもしれませんけれど,要するにペイできるように,マネジメントを芸術分野でもって活動してる方,そういう方の話を,何が大切かということを聞かせていただきたいと思います。
【宮田部会長】
 本当にキャッチボールなんですよね。的外れなもの,どんないい球投げてもしようがないですからね。富澤委員,いかがでしょうか。
【富澤委員】
 芸術文化の振興という大きい流れの中で,この部会もあるわけですが,その場合に芸術家の養成とかいろいろありますよね。今回は芸術のマネジメントをする人たちをどうやってつくるかということですが,先ほどから育成か養成かという。私は大学とか,あるいはそういう教育機関は,本来的にアカデミックであっていいと思っていまして,余り効率的なことを学校で教えるのはどうかという気がしています。例えば,今,政府が一生懸命観光振興ということを言っています。そうすると,すぐその大学で観光学科をいっぱいつくって,そういう人たちを養成していこうと。それも一つの考え方でしょうが,むしろそういうことよりも,芸術文化を振興するのなら,そのマーケットの方から,まずマーケットがないとそういうものは振興できないわけですから,マーケットでどういう要請があるのか。マーケットの要請を生かすために,どういうことが必要なのかというのがまさにマネジメントであって,イタリアであるとか,欧米の有名な劇場なんかで見ますと,必ずそういう人がいますよね。監督のほかに,あるいは芸術家のほかにそういうことをやる人が。多分,そういう人たちがアートマネジャーだろうと。私の概念としてはそういうのがありまして,そういう人たちというのは,必ずしもアカデミックな場でそういう教育を受けた人でなくてもいい。つまり,大学で経済学部を出た人でも,文化芸術に幅広い理解を持っている人ならばそういうことができるんじゃないかという気がしますので,むしろ,先ほどの繰り返しになりますが,マーケットの側からそういう議論を重ねていけば,このマネジメントというのはどうあるべきか,あるいはどういうふうにつくり上げていくか,そういう議論が深まってくるのではないかという気がします。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。ほかに先生方,いかがでしょうか。そうですよね,馬が水飲みたくないのに連れていってもしようがないですものね。逆に非常に的を射たことをきちっとやらないと。
【富澤委員】
 それと,さっきから各委員から出ていますが,やはりそういう養成をしても,その人たちがどこへ埋没しているのかわからないというところがどうもあるようですね。必ずしもそういう人材が活用されてないというのは,やはりその辺のところに問題があるんじゃないかという気がしますので,やはり需要がどういうところにあって,あるいはないのかもしれないけれど,需要を発掘して,そしてその需要に合ったような,仮に人材を育成するならそういう教育なり育成・養成をしていくということの方が大事じゃないかなと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
【三林委員】
 文化のないところに経済は発展しないというのは,どこの国でも共通していると思いますが,まず文化優先だと思います。文化があるところには必ず人が集まってきて発展すると思うので,その大切さをしっかり教えて,国が文化にお金をだだっと出すような話を聞きたいと思います。
【宮田部会長】
 先ほど高萩委員からたしか1%のお話出ておりましたが,私もさっきのアジアゲートウェイ戦略会議の中で,1%・フォー・アートという言葉を使わせていただきました。それによって今,こういう議論はほとんどしなくてもいいぐらいに多くの人材が育つのではないかという感じがしていますし,先生方ご存じだと思いますが,日本は0.12しかないんですね,そういう意味では。隣の韓国が0.98,もちろんヨーロッパの方に行きますと,当然1%ぐらいあると。中国でさえ0.3あるわけですから,そういうことを考えますと,余りにもひ弱な感じがしますが,そのことは横に置いたとしても,むしろ逆に横に置かずにそれを念頭にしながら,こういういろいろなことの活用も含め,人材を育成・養成も含めて国にお願いをするというぐらいの力を持って,この委員会が育っていったらいいのかと思います。なかなか固有名詞出てきませんが,いかがでしょうか。例えば富澤委員のように,大学教育そのものはアカデミックがよろしいと,ベーシックなものがいいと。もちろん当然だと思います。基礎力がしっかりしていれば,対応能力が十分出てくるわけですが,そのこともありますが,具体例の部分と基礎力の部分と両面からいろいろな方にお話をいただきながら,最終的に私どもが一つの答申をするというような関係で持っていったらいいのではないかと思いますが,いかがでしょうか。事務局の方では何かいろいろお考えになっていることもあるでしょうが,一つの提案も,今後のきっかけづくりにしていきたいと思いますが。それから,どうも私も言いにくいのですが,皆さんも言いにくいんだよね。ア,アートマ,マみたいになっているので,本当に根づいてない。これどうですか,新しい言葉つくりませんか。それも課題にしませんか。少し外れましたでしょうか,そんなことないよね。この間もちょっとそんな議論ありましたけど。
【清水芸術文化課長】
 それでは,ヒアリングに関してはこういった方という,具体的ではないですが,こういったタイプの方,むしろ育てられる側,活用される側の方,また実際にペイしているような,劇団四季などで活用されている方,また舞台技術者側もカバーした方がいいだろうといった意見をいただきましたので,事務局としても考えてみたいと思いますが,また少し,もし皆さんいるところでということであるならば,会議終わった後でもこういった方どうだろうかということでいただければありがたいと思いますし,また少し個別にご相談を……
【三林委員】
 中根さんという方ですが,蜷川幸雄さんを世界に出した方です。それで,元東宝のプロデューサーで,その後ポイント東京という会社を興されたのですが,そのポイント東京は倒産しました。それで,中根さんはちょっと体を悪くしていますが,話はできると思うので,おもしろいかなと思いました,今。
【宮田部会長】
 三林委員,ありがとうございました。そのような感じで,今日ここでおしまいということではなくて,清水課長の方に電話なりいろいろな形で結構だと思いますが,指名・推薦いただくという感じで進めたらいかがでしょうか。よろしいですか。今の話,一人,蜷川さんを世界にという方ですのですばらしいじゃないでしょうか。
【田村(和)委員】
 やはり劇場とか団体,文化施設というのは,公共と民間というのは相当違うのではないかと思います。ですから,そこの分け目をつけた方がいいかなという感じがあります。
【宮田部会長】
 おいでいただいた方が1人じゃなくて2人だとか3人になったときに,その人たち同士が,今のお話のように,背中に背負っているものが違うと意見が真っ向対立すると思います。僕はそれはおもしろいと思う。
【田村(和)委員】
 それがおもしろいところなんです。
【宮田部会長】
 ええ。そうしたときに,そこから僕らは何を学ぶべきかというようなこと,これ,勉強会かなと思っています。そんな感じがしますので,事務局の方でもその辺も含めて,いろいろなおもしろい方,ぜひ私ども勉強したいと,思っております。ありがとうございます。
多分朝までやってもどんどん出てくると思いますが,何しろ24時間,皆さんに平等に与えられているもので,この辺でしめたいと思いますが,今後の日程等につきまして,事務局の方からお願いしたいと思います。
【事務局】
 <今後の日程調整について説明>
【宮田部会長】
 またいろいろと日程の調整等させていただきたいと思います。これで閉会とさせていただいてよろしいでしょうか。では,貴重な時間ありがとうございました。ご意見いただきありがとうございました。
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