第5期文化審議会文化政策部会第4回議事録

1 日時 平成19年11月22日(木) 13:30〜15:30
2 場所 東京藝術大学 美術学部 絵画棟 石膏室
3 出席者
(委員)
唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 宮田委員 吉本委員 米屋委員
(事務局)
高塩文化庁次長 尾山文化部長 大西文化財部長 清水芸術文化課長 他
(欠席委員)
尾高委員 富澤委員 パルバース委員 三林委員 山内委員
4 議題

(1)アートマネジメント人材等の育成及び活用について ○中間まとめに向けた論点整理(1)

(2)その他

【宮田部会長】
 それでは始めさせていただきます。3回目の会議の後に,少し雰囲気を変えて新しいアイデアもということで,突然,会場を東京藝術大学に移しての開催となりました。この会議は,大変難しい会議ですが,ぜひとも一つの提言をし,世の中の次に続く人材に,活力と向かう方向性,並びに教育する場所において,先生方の意識を高めて質の高い人材育成をしていくための会議ではないかと思っています。それでは,部会を始める前に,この場所を少し紹介させてください。ここには,ギリシャ並びにローマ,日本彫刻の数々,そして近現代の作家の作品もあります。日本のものでいいますと,真後ろにあるのは山田寺の仏頭です。以前に山田寺が焼失したときに転げ落ちたもので,それが興福寺の縁の下にあったものです。これは,とても貴重で,しかも非常に品のよい像であるということで,第1回目のレプリカを東京藝大でやらせていただきました。それから,入口付近に後ろ姿が見えますが,ミロのビーナスがあります。一番精度の高いミロのビーナスですが,皆さんがおいでになる前に,少しきれいにしようかという議論が出て,美術学部の方で侃々諤々とやりました。実際にはできませんでしたが,後でご覧になってください。その横に小さな像で,アフター・ビフォーの違いをつくって置いています。このように先生方に会議においでいただくことで,また違った波及効果が我が大学の中でも出ています。例えば,向こうの壁の方にメディチ家の墓,ミケランジェロの作です。のみの跡がそのまま残っていますので,大理石がいかにつくりやすいものであるかという素材を見せることができると思います。あとは,ガッタメラータ将軍とかモーゼの像等々,皆様,ご存じのものがあります。他にもロダンの像などいろいろありますので,後でゆっくりご覧いただいて,会議の後,教育現場も少しご覧いただき,音楽,美術の見学をしてお帰りになると,第5回目がよりよい会議になるのかなと思いました。では,進めます。よろしくご審議ください。本日の部会は,中間まとめに向けた論点整理ということで審議を行いたいと思います。事務局から配布資料の確認をお願いします。
【清水芸術文化課長】
 <配付資料確認>
【宮田部会長】
 ありがとうございます。それでは,論点整理の案の説明を行いたいと思います。検討いただく素案として,資料3を開いてください。「アートマネジメントの人材の育成及び活用について」,この点について事務局から説明してください。
【清水芸術文化課長】
 資料3をご覧ください。会議に先立ち資料をお送りしていますので,ご覧いただいた方も多いかと思いますが,これまでのヒアリング,またヒアリング後の意見交換などで言及された発言を,第1に基本的な考え方,第2に現状と課題,第3に取り組むべき施策の3つに大きく分けました。また,それぞれの内容についても,同種類の意見については,できるだけまとめて整理しました。この論点整理をもとに,さらに審議いただき,その意見を踏まえて追加修正し,中間まとめへとつなげていきたいと考えています。この資料はそのたたき台です。では,内容について説明します。まず,第1が基本的な考え方として,アートマネジメントの必要性。アートマネジメントは,文化のつくり手と受け手をつなぐ役割を担う。具体的には,公演や作品等の企画・制作・資金の獲得などが,芸術を発展させるために不可欠だということ。2点目は,芸術家,実演家とアートマネジメント人材との関係ですが,芸術家が創造活動に専念することができるように,その芸術を支え受け手のニーズを汲み上げるアートマネジメントを担う人材との間で分担・協力して,芸術の発信力を高めていくことが必要という点。最後が,ハードとソフトということですが,各地にハードとしての文化施設は整備されてきましたが,ソフト面の充実が課題であり,中でもアートマネジメントの役割を担う人材の充実が必要という認識です。そして,(2)としてアートマネジメントの捉え方。少しふわっとした言い方ではありますが,アートマネジメント人材がどういった場所でどういう目標を持って活躍していくかを明確にすべきであるということで,職務内容の例として,以下に劇場・ホール等,あるいはメセナ団体等の中間組織などを挙げています。2つ目として,アートマネジメントという概念の明確化,また,そのためにもわかりやすい言いかえも検討したらどうかという意見がありました。そして,基本的な考え方の第3として,アートマネジメント人材に求める資質・能力としてどういったものがあるのか。マーケット側の需要に合った資質・能力を有する人材を育成することが必要で,資料に書いているように,こういった資質・能力が必要ではないかという議論がありました。次に,2ページ目ですが,基本的な考え方を踏まえて,大学あるいはそれぞれの現場の現状がどうなっているのか,課題がどうなのかということです。まず第1に,大学における人材育成です。これは,後ほど調査結果も報告しますが,大学等でアートマネジメントに関する講座,コースを置いている学部,大学院は増えてきましたが,カリキュラムは様々で,必ずしも体系的・系統的なものにはなっていないのではないかという指摘がありました。また,内容的に理論・実践の両面を教える必要がありますが,その実践面,文化施設等におけるインターンシップはまだ短期間のものが多く,実習効果を高めることが課題ではないかということでした。それから,参考資料にまとめましたが,現職研修,既に働いている人の研修も,国・地方公共団体,財団法人,NPO法人などが実施していますが,内容については,必ずしも現場のニーズを十分に踏まえていないものもあるのではないかということ。また一方で,個々の文化施設において,現職の人材育成をしていくのも,なかなか難しくなってきているということです。(3)として,文化施設等の受け入れ側。人材の受け皿ですが,大学でアートマネジメントの人材を養成しても,就職の受け皿が少ないという問題の指摘。また,アートマネジメント人材がキャリアアップ,将来を考えたときに,なかなか目標を持てない状況になっているのではないかということ。第3として,評価の観点ですが,各地域で文化施設が整備されましたが,マネジメントについての評価基準がはっきりしていないのではないか。したがって,指定管理者制度が導入される中,効率的な管理という部分の評価だけが強調される傾向にあるのではないかという課題が指摘されています。それから(4)として,アートマネジメントと並んで,舞台技術の問題ですが,舞台技術のスタッフに光が当たっておらず,モチベーションが高まらない状況にあるのではないのか。また,公立文化施設の数は増えたが,プロデュース公演でその都度スタッフを雇うという形に舞台の在り方が変化した結果,舞台技術者が育ちにくくなっているのではないのか。その結果,舞台技術のノウハウが劇場・ホール等で蓄積されず,安全管理上の問題が生じる原因になっているのではないかという指摘がありました。(5)アートマネジメントに関する情報ですが,人材養成,研修,文化施設等の情報が共有されていない。アートマネジメント人材として,どういう人が必要かという情報が少ないのではないのかということです。それから,(6)として文化行政の在り方。地域行政における文化行政の継続的なガバナンスが欠如しているのではないのか。裏返しになりますが,地域においてアートマネジメントがうまくいっているところは,行政の中に地域で芸術をどう生かすのかをよく捉えている人が活動しているという指摘もありました。それから,現状と課題の最後,日本型アートマネジメントとまとめていますが,日本ではアマチュアの文化活動が非常に盛んといった特徴がありますが,やや内側に閉じこもっており,社会をリードするような力にどう変えていくのかが課題だということ。また,日本の現状では,アートマネジメントが制度化されていないために,周囲の人のシャドーワークによって支えられてきた状況があるのではないのか。そして,日本でアートマネジメントのシステムを考えていくときに,日本の風土を踏まえたアートマネジメント概念の構築が必要ではないかという意見がありました。それらを踏まえて,3.として取り組むべき施策の方向ですが,第1に,大学等における人材養成の支援としては,コアとなる体系的・系統的なカリキュラムの開発が必要だということ。また,人材の養成に当たって,劇場・ホール等との連携によって,高校生や大学生のときから施設等の運営に参加する実習機会の充実が必要ではないか。そのために,劇場・ホール等での長期のインターンシップを行うことが望ましいのではないかという指摘がありました。次に現職研修についても,現場のニーズに即した効率的なプログラムを開発することが必要ではないか。また,専門的な芸術機関の人材育成事業やプログラムの中に,アートマネジメントの人材育成も加えていくことも検討すべきではないかという指摘がありました。(3)アートマネジメント人材の活用面の充実ですが,文化施設のアートマネジメント機能の充実のために専門の職員を配置していくことが重要ではないかということ。それから,日本のアートマネジメントを欧米のように個人や団体に依存しないように制度化するためには,政策的な誘導と日本型のソフトランディングが必要ではないかということ。さらに,アートマネジメントの人材がキャリアアップに向けたビジョンを持てるようにすることが重要ではないかということです。(4)舞台技術者ですが,舞台技術者を育成していくために,安全管理の問題などを初め舞台技術者に求められる共通項をつくり上げていくことが必要ではないか。そして,舞台技術のノウハウを蓄積して,舞台技術の継続性を確保することが重要ではないかという点です。(5)アートマネジメントに関する情報の整備ですが,アートマネジメントに関する人材養成,研修,文化施設などの情報を共有化するための体制の整備が必要ではないかということ。最後に,国と地方公共団体の役割ですが,まず第1に,国や地方公共団体で文化行政を担う担当者に文化振興やアートマネジメントに関する専門的な知識や理解のある人材を配置することが必要ではないか。また,文化施設等のマネジメントの評価基準を明確化していく必要があるのではないか。その中でよい評価のものには支援を行うということを検討すべきではないかということ。そして,最後ですが,優秀なプロデューサーや舞台技術のスタッフを顕彰するなど,アートマネジメント人材が魅力的な職業人の一つであることをPRすべきではないかといったところです。以上,ざっと説明しましたが,これをもとに,さらに意見をいただければと思います。続きまして,参考資料についても簡単に説明します。参考1は,論点整理案をつくるに当たり,これまでの主な意見を整理したものですので,これは後ほどご覧ください。参考2は,今回,アートマネジメント人材の育成と活用について,事務局として調査したものです。概要部分だけ説明します。調査の目的,方法ですが,教育現場と,アートマネジメント人材が働いている文化施設等,その2つを対象に,アートマネジメントの人材の育成と活用についての状況を把握するために,アンケートをお願いしました。調査の対象は,文化施設としては全国214施設,文化庁の芸術拠点形成事業の採択施設,あるいは公文協の加盟文化施設で,たくさんある文化施設の中でも企画・制作の機能を持つ施設に調査をお願いしました。それから,実演団体についても,文化庁の重点支援事業の採択団体,トップレベルの公演を行う能力のある168団体に調査をお願いしました。公立施設の関係では,指定管理者制度が導入されていますので,施設の指定管理者となっているNPO法人等,あるいは行政と協働歴があるNPO法人についても調査の対象としました。育成の面では,大学(学部・大学院),専門学校に関して,165校を選んでお願いしました。2〜4ページまでが調査結果のポイントですので,ご覧ください。まず,2ページの上から,文化施設,実演団体,NPO法人というアートマネジメントの人材の活躍する受け皿がどうなっているのかですが,各機関の臨時職員まで含めた平均の職員数が23.5名。この中で,アートマネジメント人材が平均13.7人。少し多いかと思いますが,アートマネジメント人材をかなり広く捉えて調査をしています。内訳が下に出ていますが,舞台技術者も,ここではアートマネジメント人材に含めています。そのほか,劇場・劇団の制作の担当者,企画・プロデューサー,立案・構成・ディレクター,営業・渉外・資金調達の担当,そのほかマーケティング,広報の担当などを含めて,かなり幅広くアートマネジメントを捉えたので,感覚よりも多目に数字が出ていると思います。それから,アートマネジメント人材の採用時期,選考については,随時採用が85%と定期採用よりもかなり多い。雇用形態は,正職員が62%で,臨時,非常勤もいます。それから,機関の長にアートマネジメントの経験があるか聞きましたが,38%がアートマネジメントに関する職種の勤務経験があるという答えでした。アートマネジメントに関する業務でボランティアを活用しているかという点については,42%の機関がボランティアを活用しています。また,資質の向上のための取組としては,全体で70%の機関が研修等何らかの取組を行っています。また,地元住民,自治体との交流・連携・協働を図っているところもあります。それから,文化施設,団体等が大学に期待するものとしては,第1が文化施設等との共同企画の積極的な実施,現場を知る専任教員を増やすこと,専門家の派遣・交流などです。また,国や地方自治体に期待することとしては,やはり第1は財政支援の充実ですが,それに続いて,文化芸術に関する社会的な普及啓発活動の推進,アートマネジメントに関する知識を持った職員の配置,文化施設等に対する優遇税制措置などが続いています。今後の課題としてどういうものが考えられるか聞いたところ,アートに子どもの頃から触れる機会を増やすことが一番多く,以下,連携・ネットワークの強化,アートマネジメント専門職の設置などが挙げられています。次に,アートマネジメントの養成側,大学,専門学校等にアンケートした結果ですが,アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設していると回答があったのは48校でした。うち,専ら舞台技術に関するものを開設しているのが6校。48校の中で,体系的・総合的なカリキュラムを設けている学校は29校で,全体に占める割合は60%です。4ページに行きます。大学等が文化施設等への実習・インターンシップを実施しているかについては,実習・インターンシップを実施していると答えた学校は58%で,実施している場合の平均は,20日程度でした。専任教員の配置状況ですが,アートマネジメントの専任教員を配置している学校が27校で,コースを設置している学校の57%が専任教員を持っている状況です。1学年当たりの学生数は,平均で38名。それから,学生の中で実務経験がある学生が25%と,大体4分の1ぐらいの学生が,実務経験を持ってアートマネジメントの講座等に入ってきています。次は卒業に関してですが,アートマネジメントを実際に学んだ上で,アートマネジメント関連の業務に就職する卒業生の割合は24%でした。地元の住民,自治体との交流については,9割を超える大学等で何らかの交流・連携・協働の取組が行われています。以下が大学側から文化施設等に期待すること,国・地方自治体に期待することですが,文化施設に期待するものとしては,トップが2つあります。アートマネジメントを学習した学生を積極的に採用してほしいということ,実習・インターンシップの積極的な受け入れをしてほしいということ,これが両方とも88%です。それから,国や地方公共団体に対しては,大学等への支援をしてほしいというのがトップで,インターンシップの受け入れの充実,文化芸術に関する社会的な普及啓発の活動の推進等が続いています。今後の課題としては,学生の就職先の開拓が第1ですが,次にインターンシップなどの現場研修の強化,アートに子どもの頃から触れる機会を増やすことなどが続いています。5ページ以降は,今の説明より詳細なデータです。最後は,13ページ以降に自由記述の欄を設けたところ,かなりの機関が意見を書いてくれましたので,それをまとめたものです。こちらは後でご覧ください。最後になりますが,参考3が,アートマネジメント研修の実施状況です。文化庁もアートマネジメント研修を実施していますが,地方公共団体,公立の文化施設,大学等,アートマネジメントに関係する研修等を実施しているところがあります。その中で幾つかの事例を調査して,プログラムの内容なども含めてまとめたものです。こちらも,参考にしてください。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。ここまで会を重ねてきて,いろいろなデータも含めて,一つの参考資料が出ています。今回,この時間帯を使い,この部分,また,これにつけ足すことも含めて,議論いただけたらと思います。いかがでしょうか,先生方の忌憚のない話をお願いします。
【田村(和)委員】
 このアンケートの人材と育成の活用の中で,アートマネジメント人材と,アートマネジメント経験というのがあります。これは,アートマネジメントを勉強されてきた方ということではなくて,いわゆる仕事の領域ということですか。例えば1館に13.何人いるというのは,仕事の領域で担当されている方が,それほどいるということですね。これは,その後の話で,アートマネジメントを学習することから雇用していく,就業していくということとは違って,仕事の領域の話をされているわけです。
【清水芸術文化課長】
 調査結果の5ページの方が見やすいと思いますが,この調査では,アートマネジメント人材に関しては,その人の能力,あるいはどんなことを学んできたということではなくて,今どんなことをしているのかという観点から聞きました。しかも,企画・プロデューサーから営業・渉外・資金調達担当というような形で,かなり広目に捉えています。
ただ,各機関の受けとめも少し違ったところもあるかもしれません。営業担当ということで事務職の方まで入れて回答しているところもあるのではないかと思います。
【田村(和)委員】
 そうすると,全体としてかなり広目にとられているのですね。
【清水芸術文化課長】
 そうですね。専門的人材としてのアートマネジメント人材という,今,検討しているものからすると,この調査はかなり広く答えていただいていると思います。
【田村(和)委員】
 わかりました。
【宮田部会長】
 例えば,資料3の基本的な考え方から,現状と課題,そして取り組むべき施策の方向と,大きくあるわけですが,それに偏らず,まだ時間もありますので,フィードバックして,こういうことは足しておきたいとか,いろいろあると思いますので,どうぞ。
【田村(孝)委員】
 これは,文化庁が調査したのでしょうか,委託してどこかが調査したのでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 文化庁が調査しました。それぞれの機関にお願いしています。
【田村(孝)委員】
 そうですか。こういう視点で調査が依頼されるということだけでも何か光が少しさしてきたのかということが自由記述覧のどこかに書いてありましたが,これまでに比べますと,隔世の感があるというのが私の正直な気持ちです。実際問題として,全く違う分野ですが,福祉医療機構というところでプログラム・オフィサーとファンドレイザーをどうやって育成するか検討が始められています。私がアートマネージャーの必要性を主張してきましたので,分野が違いますが参加しています。そこで「この違いは何だろう」と思ったのは,お金を出す人はいるということです。お金は幾らでもある。日本の中でお金を出す人はいる。ただ,どうやって使うかがわからないという話がありました。私は寄附文化が醸成されていない「そちらの方が問題です」と言ったのですが…。でも,そういう例もあるということだけは事実でして……。
【高萩委員】
 どういう分野でしたか,それは。何の分野ですか。福祉の分野?
【田村(孝)委員】
 福祉医療機構というところがやっています。
【宮田部会長】
 ファンドレイザーも含めて。
【田村(孝)委員】
 実は,なぜ私が参加するようになったかと言いますと,共同募金会も日本赤十字社も,今,地域社会が壊れて,募金活動が非常に大変になってきています。地域に頼った募金活動ができない。最終的には,アメリカ型のように,寄附文化を醸成していかなくてはならないということを考え始めて,これまでの募金活動の形や考え方を変えていかなければいけないと。いったん,すごく落ちるかもしれないが,地域に頼っていたのでは,どんどん先細りになっていくという危機感を皆さんが持っており,それがきっかけで,いろいろな分野の方が参加しています。その一方,「それでもお金はあります」と言われてしまうと,「えっ,そんなことはないです」と言ってしまったのです…。そういう意味では,自由記述欄に非常に参考になる意見がたくさん載っていたように思います。それと,もう一つ,先日,昭和音楽大学で,オペラ劇場運営の現在という研究会があり,バイエルン国立歌劇場の財務担当の方と広報マーケティングの方の講演がありました。ヨーロッパでもアートマネジメントを最近は教えるようになったが,浅くいろいろなものを学んでも,現場では役に立ちませんということをはっきりおっしゃっていました。バイエルンの財務担当の方は,法律を学んだ方です。アートマネジメントの現場で,何が一番大切なのか。今回の調査の自由記述欄の中にも書かれていましたが,私自身,解説委員の立場で,いつもそれを主張してきたのですが,「芸術の力」に気づいてほしい,そのことを言葉で伝えることの出来る人,アートマネジメントの担当者は,社会人としてきちんとしていることが最前提で,なおかつ,芸術が社会にとっていかに大切であるかを言葉できちんと伝えることが,一番求められていることではないかと思います。この調査は,文化施設の担当者等,みんなに勉強してほしいなと思ったのが正直なところです。
【宮田部会長】
 そうですね。ありがとうございます。いわゆる社会に対して芸術がどういうふうになっているかということをきちんと言える人,これはすごく大切なことだと思います。芸術をやっている人は意外と,芸術を確立はするけれど,その後がないのです。そこが欠点だと思います。正直,我が社も少しそうです。つくることはすごく頑張るけれど,それを世の中に訴えることが大変弱いということがあったので,よくわかります。
【田村(和)委員】
 今,田村孝子委員がおっしゃったとおり,この調査は本当におもしろいですね。私も読みふけってしまいましたが,非常に乱暴なことを言いますと,両方の調査とも大きなすれ違いが表れているなという感じです。人材の育成と活用については,一番大切なことは,人材を受け入れる側と供給する側と言うと,大学とかは送り出す方,それから受け入れる側の施設があります。これは,アートマネージングの話で言うと,非常におもしろいですが,3ページの国や地方自治体に期待することとか今後の課題というのは,受け入れる側の方ですが,文化施設等におけるアートマネジメント専門職の設置というのが意外に52%ぐらいです。この上も52%というのは,どういう数字なのかな,不思議な数字だなと考えているのですが,大学の方をみると,今度は雇用の場所が欲しいというような話が,急に70%ぐらいに上がるのです。これを見ていると,送り出す方は一生懸命,就職の場所が欲しい,行き先が欲しいが,受け入れる側は何か,今アートマネジメントを学習してきた人の即受け入れというのは,非常に逡巡があるような気がします。むしろ,それよりも手前にある人たちをどうしていくのかという話,それから施設がぶつかっているもっと大きな問題があります。その話が,参考2の方で全体的に感じることです。それから,もう一つの研修の実施状況について感じるのは,大きく主体の問題ではなく,2つに分かれるので,まさに田村孝子委員がおっしゃったことに関連してきますが,1つはアートマネージャーの育成とか研修ということで,これは将来をにらんでどうするかということで,典型的なのは,高萩委員がいらっしゃいますが,世田谷でされている,例えば6名ですか,それだけを専門にやっていくという話があって,私はそのプログラムもしっかりしていると思います。ところが,大半は,そのプログラムの位置づけがはっきりしないで,割合に地域の人材養成とか,場合によっては文化芸術の普及とか,また場合によっては市場獲得みたいな話ということで,むしろ現状改善のような話があって,そこで養成される人とは一体何なのだろうという感じがします。だから非常に対象の人数が多くて,期間が短いようなセミナーをされている。こういうところでは,中間的な人材が出てきて,これも確かにアートマネージングの一環だけど,一体この人たちはどこに行くのだろうかという感じがします。そうすると,この2つの渓流が何かあって,国の文化行政というのは,文化ストックを持つのが文化財とか遺産の行政であり,文化芸術の創造というのはこちらの側だと思いますが,文化財行政をずっと見てきてると,やはり非常に長い時間にいろいろなストックがあって,いろいろな経緯があるわけです。これで,やっと今,一つの形ができたという感じがありますが,やはりこの話をしていると,文化芸術行政の中で特に人材の話というのは,今,過渡期にあるなと感じます。今言いましたように,この2つの調査から,2つのすれ違い―すれ違いというよりも,二分法があって,これがどこかで交錯しなければいけないなと。交錯するところが,先ほど田村孝子委員がおっしゃったところだと思うので,このあたりを,果たして外在的な要因なのか,それとも内在的な要因なのかをもう少し論点として整理していかないと,だんだん前後が逆になったり,混乱したりすると感じました。
【宮田部会長】
 そうですね。データが出ると出てくるおもしろい問題ですね。非常に興味深いと思います。ありがとうございます。
【米屋委員】
 論点整理の基本的な考え方を読んでいて,確かにそうなのですが,何かうなずき切れないところがあるなと考えていて,それでこの調査結果を見て,はっと思ったのです。というのは,アートという芸術の範囲が何なのかがとても曖昧模糊としていたなということと,アートマネジメントの捉え方というのもどうなのだろうと思って調査対象を見てみると,すべてパフォーミングアーツと公立文化施設なのです。それで,「ああ,そうか」と思ったのは,「アートマネジメント」という言葉自体は,もう日本語ですが,もともとはアングロサクソン系の国から来ています。その場合は美術も含めて,芸術のどの分野であろうが,それに共通するものとして社会との関わりをどうしていくかということを教育しなければならない,公的なお金を使うからには,説明責任を果たせる人材をつくらなければならないとして高等教育機関で始まったのが,アートマネジメントの実践教育だったのです。しかも,それは既に多少経験のある人たちが,よりマネージャーとして,いわゆるトップマネジメントに近い部分として,価値判断ができるような教育をしようというので,マーケティングであれ,ファンドレイジングであれ,そういう科目が中心になっていて,「芸術の創造とは」とか,「そもそも芸術分野とは」などということは,あまり科目にはあらわれてこないというのが海外です。日本で「アートマネジメント」という言葉が最初に使われ始めたのが,たしか1991年だったと思いますが,公立文化施設協会が毎年やっている公立文化施設の職員に対する職員研修が,この年から「アートマネジメント研修会」に名前を変えて,「公立文化施設の人に施すのがアートマネジメント」ということで言われた時期が多少ありました。これはなぜかというと,劇場やホールのマネジメントのやり方というのが海外と日本の慣行は全く違っていたから,海外に倣って,単なる貸し館ではなくて,創造機能を内部にあわせ持つようなホールにしていかなければいけないのではないかという考え方で,変えていきましょうという動きが本格的になったのが90年以降だと思いますが,そうした歴史的なものを背景にしているので,「アートマネジメント」といったときに,暗黙裏のうちにパフォーミングアーツの問題だというふうに語られてしまって,芸術全体に及ぶ問題であるということが,あまりこのまとめの中でも,そういう形では提出されていない。これが,今回のこの部会の検討として,ホールマネジメントに限った問題としてやってよいのかということを,1つ確認していただきたいなと思った次第です。2回あった部会の検討の中でも,地域の文化行政とか国の文化行政ということに言及されましたが,こうなってくると,先進諸国の世界的な潮流というか,私が知っているのは一部ですが,芸術文化の力を使って,ソーシャル・インクルージョンというか,地域社会や人の関係そのものを改善していこう,それで生活の質を上げていこうという文化政策に転換していますので,芸術をつくって鑑賞してもらおうという部分だけではなくて,もっと芸術の力を応用していこう,そのための政策というふうに,変化してきていると思います。そうなってくると,ホールマネジメントというところで限定してしまっては,とても狭くなるので,現状のニーズはもっと広い概念というのを抱え込むことが求められているのではないかと思いますが,歴史的な経緯があるので,問題が顕在化しているホール・劇場をどうするか,それも公立のものをどうするかということなのでしょうが,地域のニーズというところでは,もっと大きな問題があると思います。それと,アートマネジメントというと,つけ足しのように実演団体が十把一からげになってくるのですが,今回の重点支援の採択団体を見ても,自由記入を見ても,いろいろなレベルのところが含まれているな,ジャンルも多岐にわたっているなということが見受けられるので,この辺も本当に一律に論じられるものではないので,ここで議論すべきアートマネジメント人材というのは,どこでどう働いている人なのか,あるいは参入してこようという人なのかが,やはりいま一つ明らかではないなと。少なくとも,海外のアートマネジメントの教育ということで考えると,マネジメントディレクターとか,トップレベルを目指すような人のためということなので,全くまっさらな18歳や20歳という人たちをそこに持っていこうという教育ではないので,学部レベルの話は,存在しますし,学部レベルの教育ももちろんありますが,そういったところからどんどん若い人をそっちに向けようということではないので,日本の雇用慣行と現実とのギャップも,この混乱の背景にあるのではないのかなと思います。
【宮田部会長】
 そうですね,なるほど。今おっしゃったように,割に大学で教わって即社会に,それでその社会とのキャッチボールとの関係のギャップだとか,先般の新国の伊藤さんにお話しいただいたときでも,受け入れる側としては,現場で育ってきた人間と高等教育から行った人間とのずれみたいなものがあって云々というような話もありましたから,当然,その辺も議論の中の対象になると思います。もう少し意見をいただきたいと思います。
【田村(孝)委員】
 今おっしゃったように,アートマネジメントがもっと幅広いものであるということは事実だと思います。しかし,日本の場合,美術館と博物館と図書館は,文化施設とは言いません。社会教育施設となってしまいます。プログラム・オフィサーというかアートマネジメントというか,司書の在り方,学芸員の在り方というのは,それぞれの場所で,今,検討されています。ですから,ここではどうするのか,この検討会ではどこが一番弱いかということだと思います。日本の場合は,劇場・ホールが,公民館法というか,社会教育法の中で公民館としてしか位置づけられていないという現状が,幾ら「そんなことはありません」と言っても,地方公共団体の行政の方は,公民館法でしか動けないというのが現実です。文化行政の方にもっと意識を持っていただくためには,その方たちが動きやすくなるようにということも必要だと思います。うまくいっているところというのは,行政の中にその意識のある方がいるところであるのは事実だと思います。でも,それは本当に個人に頼らなくてはならないというのが現状ですので,より広い範囲で全国的に自治体の方が動きやすくするにはどうしたらよいかという方策を考える必要があります。図書館,美術館の方も,今,文部科学省で検討されています。
【宮田部会長】
 この辺に関しては,文化庁の方ではいかがですか。
【高塩文化庁次長】
 田村孝子先生がおっしゃったとおりで,今,中教審で博物館,いわゆる生涯学習政策局所管の機関についての検討をやっていて,いろいろな課題があるようですが,私どもとしては,このアートマネジメントは,前回の文化政策部会で基本方針の中に位置づけられたことが,この部会の検討の最初なわけでございますので,基本法でもそう書いてありますが,我々もイメージしているのは劇場・ホール・音楽堂など,実演家団体,そうしたところに現実にいるアートマネジメント人材という人たちの在りようや,今後の方策を考えようということです。理想は必要ですが,現実の行政施策になると,あれもこれもと言いますと,なかなか大き過ぎてできなくなるので,できるところから一つずつ具体的な施策の提言をいただいて,一つ一つ少しでも前に進めたいというのが基本的な考え方です。確かに今回のまとめ方は,少し漠としている面がありますので,その辺の視野を絞っていただければ,限定的な条件をつけて整理するということは可能で,劇場・ホールを中心に考えたということでまとめていただければと思っています。
【宮田部会長】
 ある意味では,多少,今回に限りみたいな言葉ですね。
【高塩文化庁次長】
 ええ,そうなのかもしれません。
【宮田部会長】
 今後もあるというような感じになってしまうかもしれません。総花になってしまうと,かえって提言が弱くなる可能性もありますよね。
【吉本委員】
 そうだとしたら,資料3のアートマネジメントの捉え方のところで,大きく丸が2つあって,それからアートマネジメントを担う職務の内容の例もあって,それも,このあたりが劇場・ホールのことで書かれているのだと思いますが,まずこのアートマネジメントという仕事の内容がどういうものかをもっと丁寧に,1回,すごくブレークダウンしてやってみて,そこには美術館とかも含めた形全体を整理して,その中で今回のこの論点整理については,特に劇場・ホール,あるいは実演団体を中心にまとめましたという,何かそれがないと,これだけで出ていくと,美術館の仕事はアートマネジメントではないというような,それはまた別で検討していますよということがあるのであれば,ここは全体をこういうふうに捉えているけれど,この論点整理のペーパーはこの範囲に絞ってやりましたという整理が頭に必要かなという気がしました。それから,このアートマネジメントの捉え方のところも,一言で「公演や作品等の企画・構成・政策」と書いてしまうのではなく,もっと具体的に言うとどういう仕事なのかを,1回,洗い出す作業をもっと細かくできるだけやることが,範囲を整理する上で必要な気がします。特に,この中間支援組織のところでは,ここでは「文化施設や芸術団体と企業等とのコーディネート等の業務」と書かれていて,前回の文化審議会の政策部会でも,このコーディネート業務は結構議論のあったところで,たしか最終的には,「文化芸術と国民等をつなぐ業務」という言葉で整理されたと思います。そうすると,そこで言われていたのは,企業等よりも,むしろ学校とか福祉施設とかだったので,この表現だとそういうものは入っていないことになると思いますので,何かこの定義が曖昧なまま進んでいくと,この論点がどの範囲を指しているのかが見えなくなるのではないかなという気がします。これをもう少し詳細に検討するということと,頭のところでは美術とかを含めて整理した上で,ここには含まれていないということを整理してはどうかと思いました。
【宮田部会長】
 あと,発言のない先生,どうぞ。
【高萩委員】
 極端なことを言うかもしれませんが,今,日本でホール・劇場とかがハードとしては整備されたが,いろいろなことがうまくいっていないということで今回のテーマが取り上げられていると思うのです。ですから,概念を整理するよりは,うまくいくにはどうしたらよいかという話をされるのが,多分,一番いいと思います。そう思って見ると,吉本さんとか唐津さんとか私は,一応,アートマネジメントの専門家と言われていますが,我々は非常に謙虚だったので,アートマネジメントの専門家などはなくても劇場は運営できるのではないかというようなことを,今まで何となく言ってきたのです。
【吉本委員】
 そんなことを言ってきたんですか,高萩さん。
【高萩委員】
 いや,今まで何回か,アートマネージャーに資格を与えようとかいう話が起こるたびに,「いや,芸術というのはもっと広くいろいろな形があるんだから,そういう資格などは与えなくていい。みんながもっとアーツに親しめるように,僕たちだってちょっと勉強しただけで,そんなすごい専門家ではないのです」というような感じでした。僕も留学させていただいてから15年ぐらい経ちます。相変わらず今でも,本当に笑い話のようですが,芸術施設に赴任してきた役人の方が「私はこの分野,全くの素人なので」というようなことをおっしゃっても,不思議ではない分野なのです。それこそ,さっきおっしゃった図書館や保健施設などに行って,もしそう言ったら,下にいる人たちは「この人,何だろう」と思うぐらいに,やはり役人の人たちは,ある種,どの分野にでも,専門的に仕事できるように教育されるべきものだったのが,芸術施設に関してだけは,その専門家教育がきちんとされてこなかった。この際,一つの方向として,はっきり専門家がいるのだと打ち出したらどうでしょう。つまり,専門家を雇うのにお金がかかっても雇いなさいと。我々は,それこそ弁護士や医者とも話をしますが,彼らの年収は,全然違うわけです。やはり,資格を取られた方の年収は高くなっていたわけですが,芸術施設,音楽堂にしても,きちんと運営するのはものすごく大変で,知識は必要なのです。芸術の知識,つまり,音楽に関しての西欧のアーティストと出会って,話したときに音楽史を知らなかったら,やはり向こうは「ああ,この人,素人だな」と思うわけですし,演劇に関しても,ダンスに関しても,やはり知らないとできない分野ではあります。それをはっきり打ち出す。一つの方向としては,はっきり資格試験を導入して,しかもかなり難しい試験で,ある一定以上の施設に関しては,資格を持った人間がいない限り運営はできませんというのを打ち出します。これは非常に論議があると思います。ただ,これぐらいのところまで言っておいた上で対案を立てていかないと,うまくいかないのではないかなと思いました。何となくまだ,施設さえ整備しておけば,日本にいるアーティストの方たちがうまく使うのではないか。芸術に関しては,芸術が好きになってしまったかわいそうな人たちに使えるようにしておけばよいのではないかという思いがあるわけです。芸術文化施設は本当にお金もかかっているし,運営するのも維持するのも大変だと思います。これを,これから日本の子どもたちとか社会に芸術活動を役立てるというときに,もっとうまい役立て方がある,ほかの国ではもっとうまい役立て方をしているというところから,今回のテーマが起こっている話だと思います。芸術施設の運営を何のためにやっているかがわからなくなると,結局,やはりアートマネジメントは,何となくそんなに専門知識がなくてもやれるのではないかという話に落ち着いてしまう気がしたので言わせていただきました。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。そう言われていると,私などは送り出す側ですので,大変責任を感じますが,どうですかね。唐津先生からも一言いただいてから,私も発言させてもらいます。
【唐津委員】
 高萩委員が,かなり極端な意見というふうにおっしゃいましたが,私も今の意見には賛同する部分もあります。一般的に,専門家が不在でも運営できる組織と考えられがちな分野が,芸術分野だと感じています。例えば,昨日,たまたま新潟市の芸術財団が運営している「りゅーとぴあ」という劇場の芸術監督でいらっしゃる金森穣さんに話を伺う機会があり,現状をお聞きしたのですが,日本で初めてのレジデンス・ダンス・カンパニーを「りゅーとぴあ」がつくられたということで非常に話題にはなったのですが,内情を聞いて私もかなり驚きました。と申しますのも,別枠でレジデンス・カンパニーのための予算がついたわけではなく,今ある新潟市の文化予算の中で,ある部分を削っていって,レジデンス・カンパニーに「この範囲でやれるならやっていいですよ」というような方法での運営だということです。この方法だと,新しいカンパニーができたわけですから,当然,それを発展させていきたいと思っていても,その発展は「予算枠の中であれば」という条件つきになります。多くの場合,毎年シーリングがかかって,予算的にどんどん削られていく中で,内容的には発展させられることを求められる状況です。これは,私のような施設,それから多分,他のたくさんある公立文化施設も同じ状況だと思います。専門家がいれば,逆に「専門家がいるのだから,予算が少なくても当然発展させていくことができるだろう」というような過度の負担を,芸術家もしくはプロデューサーに求めていく,それ以外の行政の部分に関しては,逆に予算的な,それから管理的なところから,創造活動とはどちらかといえば反対に向いていくような在り方で,どんどん創造性から離れていくような運営の仕方がなされていることを感じています。ですから,そうした中で,行政の根幹にこそ専門家を入れていくということが,必要なのではないかと思います。行政は素人でもよいという考え方を,むしろやめるべきで,外から芸術監督とか入れるというのも,一つの方法だと思いますが,県の職員,財団の職員の中に,やはり専門的知識を持っている人を配さない限りは,その仕組みは変わっていかないのではないかと。金森さんが言われていたことで,ひとつ,非常に象徴的だったのが,自分が劇場の方に「これだけの予算ではできないので,もう少しこういったことをやりたいので,これだけの予算を下さい」ということを提示します。そうすると,劇場は,「うちは市から補助金を得ているわけですから,市の方にそれをお願いしてください」と言われるわけです。市の方にそれをお願いしますと,「財団には補助金を与えていますから,財団の中でやり繰りしてください」と言われるわけです。結局,どこに話を持っていけば,よりよくなるのかがわからない。この議論は,多分,どこの公立文化施設でもある議論だと思います。結局,行政の窓口とうまくコンタクトができる人材が育成できていないと,幾ら専門家を雇ったとしても,それがうまく生かされないわけですから,行政側の専門家の育成を,文化庁から大きく掲げていただけるといいなと考えました。
【宮田部会長】
 なるほど。ありがとうございます。
【高萩委員】
 今のは,アーティストはいても,アートマネージャーがいなければ,うまくいかないという典型です。アーティストは,「僕,こういうことがやりたいんだけど」と言います。そうすると,それを行政や民間スポンサーとつないで実現できるようにするのがアートマネージャーです。そういうことを行う人がいない場合は,本当にうまくいかないのです。新潟市にとって,あの劇場があるおかげ,金森穣さんのカンパニーがあるおかげで,何がどう変わっているかについて説明をできるかどうか,それは金森さんの仕事ではないと思います。
【宮田部会長】
 違いますね。
【高萩委員】
 昔は,もしかしたら1人のアーティストが,芸術面もマネジメント的側面も両方兼ね備えていて,小沢さんのように自分でタクトも振るし,ファンドレイズパーティーなどでも,魅力を発揮するということをできる人もいますが,必ずしも天がそういうふうに才能を与えるわけではないのです。すばらしい才能を持った今を表現できるアーティストを,どう使っていくか,ちゃんとその才能を生かしていける人間として,やはりアートマネージャーという存在は必要だと思います。
【宮田部会長】
 先般の後に,文化庁の人たちと,私もそれに近いようなことを話させてもらいました。そうすると,話していながら難しいなと思うのは,ある意味での権威づけをすることによって,今度はそれに人間というのは頼ってしまって,また違った方向へ行ってしまうという部分もあることです。この部会では,提言はちゃんとあるところまでしなければいけないと思っています。そのときに,先ほど言いかけてやめましたが,インターンシップも含めて,いわゆる高等教育の方で人材をどこまで教育して送り出してやるかというあたりの調査が,まだ行き切っていないなというのと,それからそういう講座を設けたとしても,非常におざなりで終わっているのではないかと思います。例えばさっきのデータの中にもありましたが,20日間というインターンシップが出ていたとしても,そのときにお聞きしたのは,1カ月もやっているところもあれば,2日しかやっていないところもあったり,それでも判こがおりているというあたりが,いささか疑問であります。その辺をちゃんと制度化しておかないと,一つの形,鑑札を与えたときに,受け取る側とするととてもがっかりしてしまう,使い物にならないではないかということになっても,困るなというものもあるのではないかという気がします。いかがでしょうか。そういう意味では,(3)の資質や能力に対しての問題は,すごく論議しなければいけない部分ではないかと思いますが,今,高萩委員の話の中にありましたが,私なども単なる鍛金作家であったのが,いつの間にか学長になってしまったら,今やっている仕事はほとんどアートマネジメントの仕事なのです。どうやったらうまく伝えられるかと,今日のこの設定も,言ってみれば,「ああ,そうだ。これはアートマネジメントのことをやっているな」というふうに世の中の人に認知してもらうにはどうしたらよいかということがあるのではないかと思います。そうすると,ひらめきですが,もしかしたらアートマネージャーというのは,芸術家よりも芸術家素養をきちっと持った上で仕事のできる人が,一番要請されているのではないかなという気も少ししています。そのニーズが,結局,現場と合っていないと,どんなに優秀であってもバランスが悪い。そうすると,アートマネージャーの中にAコース,Bコース,Cコースがあるみたいな,そういう捉え方もあってもいいのかなと。演劇系といっても,演劇の中でも古典もあれば現代物もあります。そのときに,「絶対に古典に関しては彼がうまいけれど,果たして現代物はどうかな」みたいな話も出てくるとは思いませんか,高萩委員。
【高萩委員】
 そう。だから,資格試験の話をすると,それが出てきます。今,実は伝統系のマネージャー試験とか,ビジュアルアーツのマネージャーの3級,4級とか,あることはあるのですが,どれも基礎的な知識を習得してくださいねというのにとどまっていると思います。少し違うかもしれませんが,アートマネジメントの研修に関して言えば,広くアートに親しむ方法をいろいろな人がいろいろな形で勉強すること自体はすごくよいことなので,そのことと,今ここで話しているもっと専門的なアートマネージャーを育成して,その専門的なアートマネージャーの地位とかアートマネージャーの活用を考えていく作業は別のものだと思います。アートマネージャーがちゃんとアーツ,それからアーティストを,今の日本の社会を豊かにする活動ができるようにすることが目的なのです。その人材は,実はそんなにたくさんでなくてもよいと思います。そのことがきちんとわかっている上で,教育とか地域で活躍する人たちが出てきてくれればよいと思います。その辺のアーツマネージャーの育成のレベルを,少し分けて考えた方がいいような気がします。
【宮田部会長】
 少し話が飛びますが,今はもう普通になりましたが,以前に,高等教育に博士が要るかというときに,「芸術博士とは何だ」といって,随分議論したことがあります。最近は何の抵抗もなく,むしろ博士課程の審査を大学では美術館の中でやって,皆さんに評価してもらおうというふうになりました。随分変わってきたなと思ったのですが,10年ぐらい前までは本当に,「博士をやって飯が食えるのか」みたいな素朴な話になっていました。もしかしたら,今,これも似たようなことを,少し遅れて議論しているのではないかという気がしますが,できれば早く認知されて,「この課程を出られた方は,ぜひとも我が館に欲しい」という捉え方にまでなってもらえたらいいのかなとは思います。
どうでしょうか。(3)のこの提言の中を,全体に調整しながら膨らませていきたいと私は思っていますが,「ここは要らないだろう」とか,あるいは「ここはもう少し事務局の方で足してもらえないかな」というものがありましたら,提言いただけたらと思います。ただ,この参考2の回答の有効回答率が49%ということ,これは大変な数字で,いろいろなところのアンケートに対して出てくるのは,大体,一生懸命やっても十何%で,それも何かただの悪口で終わりというものがあるのですが,これは貴重な部分ではないかなと思います。この辺も含めて,この論点整理の中にうまく調整されていたらよいのではないかと思います。特に,2ページの現場の方の研修について,必ずしも現場のニーズを十分踏まえた内容となっていないのではないかという,この辺のところも,この前の新国の伊藤さんなどもそうですが,「あれを持ってこい」と言ったときに,「あれ」ではなくて「これ」を持ってきたりすると困ってしまうみたいな話があった気がしますが,知らないうちに,阿吽の何か出てくるようなものも含めて,アップしていく方法は,この論点の中には必要でしょうか。必ず書き入れて,もっと膨らませた方がよいでしょうかね。
【高萩委員】
 先に確認しておきたいのですが,美術館とか図書館とか博物館については,文科省の方で何らかのことをやっていると思っていいのですよね。つまり,これから提案していかなければならないのは,今,劇場・ホール,実演団体に関わる部分ですよね。我々の場合は公共施設で,劇場・ホールに関してですが,今,指定管理者制度の中で,公民館から高度な機能を持った劇場・ホールまで含めて,いわゆる公の施設という中で,極端なことを言うと,金銭的な効率化の中で指定管理者を指定する方向に行っています。そして,そのことが非常に我々にとってプレッシャーになっていることは確かなわけです。そうすると,つまり高度な芸術表現をする芸術施設だけを,法律をつくって特別扱いすることは可能ですか。そうすると,先ほど話した美術館についてのキュレーターに関しての研修とかと同じように,劇場・ホール,高度な芸術表現を創造するような施設に関しての何らかの別の研修を提案していくということで済む話なのですか。そんな可能性はあるのでしょうか。
【宮田部会長】
 それはいかがでしょうか。
【高塩文化庁次長】
 可能性というか,むしろ米屋さんの方が,発言があると思いますが,いわゆる芸団協といいますか,文化芸術推進フォーラム,そういうところの提言の中に,特に文化芸術振興基本法ができた後に,1次の基本方針にも入れていますし,また,前回議論いただいた2次方針にもありますが,劇場・音楽堂の整備の中に,いわゆる法的な整備があります。それを推進しようといった文化芸術推進フォーラム,そういった動きも,ありまして,いわゆる博物館法,図書館法,それぞれ法律が戦後すぐできていますが,劇場は,田村孝子委員がおっしゃったように,地方自治法による公の施設です。何らそういう法的な根拠はないと。そういうことが,そこに置かれている人の問題,それから今やっているような税制に対して優遇措置をやりたい場合の法的な根拠が薄いとか,そういったさまざまな弊害になっていることも確かです。そういうことを踏まえた動きはありますが,全体の国の流れが行革の中で,そういったものをつくったときに,では必置要員みたいなものを置けるとか,博物館であれば学芸員を置かなければならないとか登録制度とか,いろいろな規制行政があるわけですが,そういった行政が非常に難しくなっています。こういう中で,法律を仮につくれるかつくれないかということもあります。つくった場合に,どういった内容としてどういった形にするかということは,よく勉強しなければいけないのですが,そういうものが本来あった上で今日のこの議論をすると,相当スムーズにいくのではないかと思います。そういう前提がなくて,人だけを―資格という面も難しいということも,先ほど高萩さんがおっしゃられたとおりです。そういう国の全体の流れの中で,今,手足を縛られるというのではないですが,指定管理者制度などはまた別の面の規制改革ですが,そういう中で劇場の活性化を図る方策を,今,模索しているところです。ただ,基本法もご承知のように議員立法という形で,行政的にというよりは,むしろ政治家の先生方が中心に推進していった経緯もありますので,いろいろな方途はあると思いますが,私どもも未検討ですし,団体の方でもさまざまに検討していただきたいと。昨年から芸団協にお願いしているのは,いわゆる劇場の安全基準の面ですが,安全基準は,まさに法律で縛るというよりは,あるべき姿として必ず先にやらなければいけないことで,一つのそういったものをつくり上げて,100%それが適用されるわけではないですが,そういったものを各劇場に示すことによって一つのレベルアップも図りつつ,また,私どもでやっているような芸術拠点形成事業の対象は,そういったことをクリアしたところに限りますといった形で,まさに規制ではなくて,政策誘導の一つの手段として考えたい。さまざまな事故もあるという話もありましたので,安全基準だけを実行上,検討いただいて,我々も若干の支援をしている状況です。この人材の問題も,本来,順番は逆なのかもしれませんが,部会でそういった人材面での活用方策をぜひ提言していただけないかと思います。
【宮田部会長】
 部会長を引き受けたときに「これはやりにくいな」と思ったのは,そこの部分でした。ですから,肉づけをするにしても,方向性があっちへ行ったりこっちへ行ったりするので,どこに焦点を持っていったらよいかが非常に難しいと思います。同時に,このアートマネジメントそのものが,皆さんの概念の中にあるのと,それぞれの中に概念の目的の終着点が違ったりしていると,議論がまとまりませんので,あるところで一つの旗をつくった状態で,それに向かって1回走ってみることも,必要かと思います。
【吉本委員】
 この資料3の取り組むべき施策の方向ということで,6つ出ています。それで,これはいずれもそうだと思いますが,アンケートの結果などを見ると,先ほどの高萩さんの発言とも関係しますが,いわゆる大学でのアートマネジメント教育のような部分と現場での本当の実務経験のようなものの,ちょうど間をつなぐところが非常に弱いのではないかという気がします。どこかの資料に,現場で採用する側は,やはり実務経験がある人を優先して,新卒はなかなか採用できないというのがあるので,その辺をうまくつなぐような仕組み,インターンなどもその一つだと思いますが,そういうことを政策として打ち出せないかなと,1つ思いました。それと,もう一つは,この人材育成そのものとは少し観点が違うかもしれませんが,私はここで非常勤講師をしているので,たまたま昨日,この第2次基本方針のことを授業の素材にして話していたら,学生が,今日これがあるというのを知っていて,「傍聴します」と言って,今日,来ていますが,そのときに人材育成の話をしたら,非常に生々しい声として,一生懸命勉強して,働きたいと思っても,安定的な仕事場がないのが一番の課題だと,学生の非常に生々しい声として言っているのです。その理由はいろいろあると思いますが,例えば指定管理者制度が導入されて5年とかで終わると,この間もたまたま,ある財団の方に話を聞いたのですが,「プロパーとかを雇用しないんですか」と聞くと,「いや,指定管理者でいつ終わるかわからないから,プロパーを採用するわけにいかない」というようなことがありました。だから,この中にも「キャリアアップに向けた明確なビジョンを持てるようにすることが重要ではないか」ということが書かれていますが,その原因は,要するに雇用の安定がないということが最大で,前回の審議会のときも,随分議論になったのですが,人材育成そのもののことについては書けないかもしれないので,人材育成の周辺の環境というか,雇用の安定化を図るとか,そういったようなこともあわせて書き込まないと,このアンケートの自由記述の中にも,「人材を幾ら育成しても失業者を増やすばかりだ」というようなものもありましたので,それもぜひ書けないかなと思います。ちゃんと「ここで働きたい。ここに働くと,ずっとこういう仕事をしながらキャリアアップできる」というようなやる気を持ったままやってもらえるような人を,環境としてつくっていくようなことも書けないかなと思いました。
【宮田部会長】
 まさしくそのとおりで,彼らは不安ですよ。
【米屋委員】
 雇用の話に行きたいのですが,その前に,この3ページの現職研修の充実というところが,「現場のニーズに即した効果的なプログラムを開発することが必要ではないか」と。実は,プログラムの開発が必要なのではなくて,研修を受けやすい体制をつくることの方が重要だと思います。私のところでも,私自身,現職者の研修を担当していて,長くても3日とかでやるのですが,そうすると,「本当はこれとこれとこれをつなげれば,より効果的なのに」ということがわかっていて,3日の中ではそれを入れられないので,どうしても虫食い的になってしまい,本当は長期の研修をやりたいのだが,なかなか踏み切れないでいると。その実情には,「それだけ職場をあけることができません」という現場の声があります。ですので,中身ではなくて,やはり研修を受けやすい体制,条件づくりというところを第1に挙げたいと思います。それと,4ページの舞台技術者の養成・活用の強化というところも,安全管理の問題は,確かに先ほど次長がおっしゃいましたように,最優先ですので,これは割と資格というか,技能認定になじむ部分ではないかなとは思いますが,安全が最優先ではなくて,安全最優先だったらホールを使わなければよいので,真っ暗にしておけばよいのですが,安全と創造・公演活動を両立させるための技能だということ,創造活動ということが大前提にあるので,そこを落とさないでいただきたいと思います。もう一つ,今,実演団体の方々に,私もヒアリングをしていろいろ伺っていて,「もし支援があって,もう1人,人材が雇えるとしたら何を任せますか」と言ったら,大概の方が「うーん」と悩んで,「1人と言わず5人欲しい」と言ったりします。いろいろ聞いていきますと,大概の実演団体が,多分,数人の事務局で回しています。ということは,1人のやる仕事の範囲がやたらと多岐にわたっているのです。ですから,マーケティング専門の人が置けるなどという,そんな幸せな団体はまずないし,ファンドレイジング担当者が単独でいるなどというところもまずありません。そうすると,何が起きているかというと,人は欲しいけれど,あれもこれもできる人が欲しい,幹部が欲しいというのが現場の声です。新卒者でどんなに多少,数年の実務経験があっても,いきなり幹部は無理なので,大学が送り出すのは,将来幹部になる素質があるかもしれないという若い人で,それがある経験を経て,よりステップアップをするために現職者研修として充実したプログラムがあって,幹部がうまく交代していける,世代交代できるという状況が必要だと思います。もう一つ,間に必要なのは,アシスタントレベルで将来幹部になる人を雇える環境をつくることだと思います。
【宮田部会長】
 なるほど。
【唐津委員】
 今の米屋委員の現場研修の話は,本当にまさにそのとおりで,実際,芸団協,それから文化庁等のいろいろな現場研修の案内が来ますが,職員の間ではあまり知られていないという現状があります。というのは,日にちがとれないというのもありますが,実は一番リアルな理由として,出張旅費が出せないというのがあります。とにかくいろいろなところの予算を削っていった中で,出張旅費を削ることが,現時点で,かなり大きくなってきていますので,そういった旅費等の問題,それから,やはり2年,3年で異動になっていく職員にそこまでエネルギーを割くのかどうかということも,もう一つ挙げられます。これから例えば10年間とか20年にわたってその仕事に従事していただくということであれば,やはりつぎ込むということもあり得ると思いますが,とりあえず2,3年でかわるというのが前提になっているような職場で,研修に送り出そうという機運は,ちょっと見られないということが現実としてあります。それからもう一つ,今,安全管理の問題がありましたが,舞台技術者によるセミナー等が,全国的にいろいろと行われています。その中で地域ごとの格差があるように感じています。例えば,具体的な例でヘルメットをかぶるかどうかというような劇場や各地域の技術スタッフ間の考え方の違いもあります。こういったところも,やはりある一つの基準は明確にしておくべきものではないかということを感じました。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。どうでしょうか。今のような話も考えますと,受け入れ側の方の4ページの(6)の行政の方の担当者とアートマネジメントの相互の中における人材,この辺のところで,担当者が専門的にしても3年ぐらいでいなくなってしまうから云々というふうにも捉えてよいのですか。
【高萩委員】
 アートマネジメントとか規則に関しては,何のためにやっているかがわからなくなることが起こります。ヘルメットに関しては,かぶっていると危ない事態もあるわけです。音が聞こえなくなるので,ある種の仕事に関しては,かぶらない方がよいという説もあったりして,実際問題として,やはりこの現場に関してはかぶらない方がよいとか,この種の仕事はかぶった方がよいとかは,誰かが判断をしなければいけない。それと,さっき高塩さんがおっしゃったことで,僕は,やはり政策誘導というのはすごく大事だと思います。今,はっきり言って,現状はよくありません。米屋さんがおっしゃったように,いろいろな困っているところにアートマネージャーを全部つけたって,うまくいかないのです。だから,次の5年,10年を目指してどういうふうにしたらよいかが問題です。ハードは整いつつあると思います。東京は,どういうわけか次々と劇場施設ができてはきています。そこでハードのない時代に存在した芸術団体たちがそのままの機能で存在していること自体の方がおかしいと思います。では,ハードとどういう関係をとっていくかを真剣に考えなければいけないときに,ちょうど90年に文化庁のお金が増えたので,みんなあまり困らずに,そんなことを考えないで存在し続けてしまったわけです。これは,逆に現状がおかしいのです。ちゃんと政策誘導していればよかった。音楽系の団体はすごく考えたわけです。「フランチャイズでなければいけない。自分たちが稽古場を確保するためには,どこかの施設と組まなければいけない」と考えて,動き始めた。演劇の団体ももちろん,今,地方とフランチャイズを始めようと考えています。考えているところには,ちゃんとお金を出して,人を出してあげるべきだし,5年,10年先をにらんだ政策誘導は本当にすばらしい事柄だと思っています。舞台芸術に関してもそういうマネジメントが必要だというために,それを考える人が必要だと思います。人材をばらまいたりするためにあるわけではないと思うので,そこを大事にしていきたいなと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。いや,今日は何か,よい発言がぽんぽん出ますね。
【田村(孝)委員】
 私は,4月1日から館長をしていますが,指定管理者制度になって正規の職員を雇わないと,3年,5年で契約のきれる職員と県庁に戻る職員の割合が多いため,ノウハウの蓄積が全くできないという事が起きてしまいます。どちらかというと文化政策というか文化行政が進んでいる県でもそれが実態です。本当にいかんともしがたいというのが現実で,先ほど,アートマネージャーの資格などというふうにおっしゃいましたが,大学で司書科を出た方が全員,司書になっているわけではありまでん。学芸員だって,そうです。
【宮田部会長】
 そうです。
【田村(孝)委員】
 何も文化政策を学んだからといって,全員がならなくてもいいわけです。この間,バイエルン州立歌劇場のインターンシップの話,研修の話が出て,「何をさせますか,どういうふうにやっていらっしゃいますか」の問に,「雑務をさせます。それに文句を言う人は,4日でクビです」とおっしゃいました。「私のところできちんと研修している人がいます。でも,その人は将来,劇場ではなくて,違う企業に就職することを希望しています」と。さっき,米屋さんがおっしゃったように,アートマネジメントはソーシャル・インクルージョンといいますか,社会をどうしていくか,それをアートの面でどうするかということだと思いますので,そんなに遠慮することはないと思います。今日劇場はできました。今度はいわゆるアートマネージャーの方が社会にどう貢献できるか,その基盤を整備していただくことが,大切ではないかと思います。
【宮田部会長】
 おもしろいですね。
【田村(和)委員】
 ただ,今おっしゃるのはよくわかりますが,やはりキュレーターとか司書とか社会教育主事というのは,もうちょっとこなれていますよね。ですから,今,アートマネージングを勉強してきた人が社会に出るよりも,はるかに歴史も古いし,社会教育という世界の中で,融通性もききます。それからもう一つは,美術館,博物館の場合は特定だけど,やはり図書館などは,非常にある意味で,かなりいろいろな変化がありますので,需要の場所が増えています。それに対して,アートマネージングというのは,逆にだから,今のことが大切なのですが,何か外在的というか,もう少し総量が増えていかないと変わらないみたいな世界がすごくあるような気がしていて,何かそこのつっかえているところがアートマネージングを学んだ人と,それからパフォーミングアーツみたいな間が,ほかと比べられますが,少し違う感じが,いつもしています。
【宮田部会長】
 なるほどね。どうでしょうか。こういう教育の現場ですので,ドラスティックな話をもう少し,出していただけませんか。例えば,「育ててどうするの」ぐらいの話まで出るのもよいのではないかと思うし,とらせるためには,法制でそういう館をつくったなら,自動的にそういうポジション,ポケットはつくらなければいかないみたいな話を今度はこちら側から出すともあれば,どんどんよい人材は出てくるだろうし,目的の山がしっかりとしていれば,そこへ走るための法律は,あっと言う間につくれると思います。その辺が曖昧としているところで話をするので,少しあっちへ行ったりこっちへ行ったりしています。
【高萩委員】
 この間,青木長官のセミナーを聞く機会があったのですが,アジアの中で日本の文化をきっちり表現できるような芸術活動,アジアの文化のトップを走れるような国にしていきたいということをおっしゃっていて,非常に,明確な論理だなと思いました。今,どうもそうなっていないのではないかという認識があるからこそおっしゃったのだと思うのです。確実に今,アジアのほかの国が,生活水準,経済水準が上がってきていて,みんな現代アートにも目が行くようになっています。今までは,アジアの中で,現代アートをやっている国はものすごく少なかったし,ごく一部だったわけです。これから,確実に中国,韓国,それから東南アジアの国などでも,現代を表現するアートは出てくると思います。日本は,やはり今,少し先に行っていると思います。そのリードをどう生かしていくかといったときに,様々な人材を活用する必要が出てきていて,現状では何かシステムがうまくいっていないと思います。そういう意味でいうと,静岡のグランシップなどは,ハード的にはすばらしい施設です。アジアの中でも,設備的にいって,すばらしい施設だと思います。それなのにうまくいかない現状が,すごくよくわからないですよね。それは,やはり法律が何か縛っているのだと思います。それを,どうしたらそうではない,専門家がいられる施設にしていけるのかを話せれば,一番簡単なのではないか。そうすると,逆にそこにはちゃんと専門家がいなければいけない。専門家を,大学で教育する部分と,入ってから教育する部分とに分かれてきて,わかりやすくなってくると思いますが,どうも素人を雇って,素人からですと育てるのは大変です。公共のお金を扱う専門家は,行政から来て行政へ帰っていくので,それはそういう人も必要なので,よいとは思いますが,劇場側に残っていく専門家を雇えないとおっしゃったことは,すごく問題だと思います。それを解消する方法を提案できれば,かなり画期的だと思います。
【宮田部会長】
 そうですよね。うん。
【田村(孝)委員】
 現実問題でこういうことが起きてしまいます。今,アウトリーチ活動が全国で盛んに行われています。でも残念ながら,玉石混淆なのも現実です。そして,それをチェックする人が文化施設にいないのです。何のための誰のためのアウトリーチ活動なのか,芸術家のための新たなる収入の場ではないはずです。教育プログラム,アウトリーチ活動をすれば,地域住民のニーズに答えていると素直に考え,全国どこの施設でも起きていることです。世田谷パブリックシアターがやはりすばらしいのは,芸術監督がいて,そしてアートマネージャーもいる,専門家を動かすスタッフもいるという事です。それだけ考えて専門家を配置し,質の高い様々な活動を展開しているところは,そんなにありません。それが現状です。
【宮田部会長】
 そうですね。今,ふと,田村孝子委員の話を聞いていると,ハーバートリードが,社会の中にすばらしい芸術品を置くことによって,人間のモラルそのものまでも向上するという話をしていましたが,僕らが議論していることは,本当にこれが構築されたら,言ってみればNHKのニュースは事件が1個もなくて,楽しい話だけになるのではないかというような気がします。一番大事な部分は,3つお話になりましたこの関係が確立することによって,人材も養成されるであろうし,行くべき道もはっきりしてくるだろうというのは,もう結論になるぐらいの話ではないかと思います。
【高萩委員】
 今,ほかの国がよいというと,少し問題がありますが,イギリスは非常にイギリス文化の最高峰のものを維持することが文化政策の最初でした。その後,アクセシビリティの拡大といって,芸術に接する人の拡大という方向に大きく方向転換しました。そのとき,かなりの論議がありました。日本ではあまり論議はせずに,芸術文化振興法を通すことについて文化政策の専門家の方が少し反対したのは,論議がないと社会が動かないのではないかというのがあって,法が通ったこと自体は,よかったと思いますが,やはり少し論議不足だったかなと思います。そのとき,イギリスの方はクリエイティブ・インダストリーというのを打ち出しました。「芸術は産業の役に立つんだ。例えばビートルズだ」というふうな,わかりやすい例があったということもありますが,そのことで,芸術活動を拡大することがイギリス社会全体の役に立つという論議をいろいろなところでしました。その後,5年ぐらいたって,今,クリエイティブ・パートナーシップというのを打ち出しているのです。一緒に何か創造活動をすることが子どもたちのクリエイティビティを養うのだということで,芸術家を地域に派遣したりしています。日本だと,そういう「子どもたちに芸術を」というのが出てくると,補助金をばらまいてしまう方向にいきます。「いろいろなところで,どこでもやって,どんどんやってください」というのです。イギリスの場合,モデル地区をつくったのです。10個ぐらいのモデル地区にかなりのお金を出して,そのモデル地区で芸術家が学校に行ったり社会的な活動をしたりする。そこがこのくらい変わったという報告書を出させて,次の何年か参加したいところは応募してくださいと。そのかわり,地方でもそれだけの負担はしてもらいますよというのを出して,だんだん,地域を増やしています。この間,報告書を読みましたが,よいことばかり書いてあるのかもしれませんが,非常によくできているなと思いました。やはり,我々に欠けているのは,どうも我々も「お金を取ってきてください」とは言いますが,使い方についてです。芸術家を学校に行かせたりするとなると,絶対にそのことをコーディネイトする専門家が必要です。アーティストでもないし,学校とつなぐために必要であると思います。この人たちをどう育てていくかということも,多分,次の課題になると思います。さっきの静岡の例で,やはりつなぐ人がいないとうまくいきません。アーティストが行けばよい,とにかく学校に行っていればよいということで,確かに,行けば楽しんではくれるという事実はあります。だから,「ばらまいてもだめですよ」と言うと,「学校にアーティストが行ったらすごく喜んでいたという報告書をいっぱいもらっているよ」と反論されたりしますが,それがどう評価されているかというのが問題です。必ずしもうまくいっていない面もあると思います。
【宮田部会長】
 形に見えにくいところがあるわけですからね。吉本委員,藝大においでいただいて,この辺の話をしたときの学生の反応はどうでしょうか。先ほども,ちらっとおっしゃっていましたけれど。
【吉本委員】
 ですから,人材育成の問題も重要だけれども,それ以上に,やはり働く場所を……。
【宮田部会長】
 その話以外で。
【吉本委員】
 その話以外でですか。
【宮田部会長】
 その論点は,先ほどお聞きしましたが,今のような話をお聞きした中で考えたときに,学生の反応みたいなものはどうでしょうか。
【吉本委員】
 今の話の観点でいくと,学生に,また次の授業で取り上げてみたいと思いますけれど,高萩さんがおっしゃったクリエイティブ・パートナーシップの現場を,たまたまロンドンに行って見てきました。取材もいっぱいしてきましたが,やはりモデル校だけではなくて,それを広めようとしていて,ある小学校へ行くと,常に誰かアーティストが1人います。それで,あちこちでいろいろなことをやっていて,部屋に直接そういうことを行う場所が,きちんと学校の中でつくられていて,ソーシャル・インクルージョンというようなことをアートでやっていこうということもあるし,イギリスはクリエイティブ・インダストリーでいろいろなことを打ち出しているので,「地域を活性化するためにはとにかくアートだ」というのが,今や定着しているらしいです。逆に,どんな小さな町でもそういうことを言い始めているということなので,そのことを心配している人さえいます。だから,ここで言うアートマネジメントというのは,やはり劇場やホールだということになってはいますが,もう少しアートマネジメントの仕事の範囲を広げていくようなことです。要するに,劇場やホールで専門的なことをやることは重要ですが,社会の中にアートマネジメント的な職能が,もっと使える場所がいっぱいあると。学校もそうだろうし,福祉施設もそうだろうしということもあわせて盛り込めると,人材育成をすることの意義をもっと強く打ち出せるのではないかという気がします。
【宮田部会長】
 一つのパイをつくるのだけど,そこの中に入れる形は,これだけのパイの中でしか活躍できないのではないのですよということを伝えるということですね。
【吉本委員】
 ええ。
【宮田部会長】
 それは,当然,とても大事なことだと思います。だけど,やはりとりあえず何はともあれ,ここにこれだけのものができるのだということをつくらないと,ほかにも回っていかないというのはありますよね。
【高萩委員】
 全国の均質的な発展というのは無理だと思います。都会と都会ではないところ,それはお金の配分だけではなくて,やはりそれはそこなりの発展の仕方というのがあると思うので,そこなりのアート,それから現代アートだけではなくて,伝統的なものとかも含めた芸能的,芸術的なことを,今後どう,日本の社会の中で役立てていくかをきちんと言えないと,うまくいかないと思います。
【宮田部会長】
 そうですね。個人的なことで恐縮ですが,私は佐渡の生まれです。佐渡には33の能舞台がいまだにあります。5つぐらいのときに,そろばん塾に行くか,能・仕舞をやるかという選択肢を与えられます。私はたまたま,そろばんではない方を選びました。それがいまだに役立っているのは17:00からですが,何かがあったときにそれをすっとできる。銭湯が,必ずそういう舞台になります。個人のうちに風呂がないわけですから,1日置きに銭湯の脱衣所でやるわけです。奇数日はそろばん,偶数日は能・仕舞をというのが日常でした。そうすると,佐渡のような環境の中で,経済と文化を選択させてつくっていくというものがある。東京へ来ると,今度は極端に巨大過ぎるために,やる人はとんでもなくやるけれど,やらない人は全くやらない。それから,その中間層に対するつなぎが全くできないものだから,すごく難しいのです。埼玉へ引っ越したことがあるのですが,子どもが小さかったので,自然にと思ったら,今度は,あれはあれなりに県の展覧会だとか何かがあったときに,きちっとそういうマネジメントのことを,いわゆる都会とちょっと違う,でも,都会っぽいようなところというのは,またそれなりのやり方がある。そうすると,高萩先生の話ではないですが,東京も地域ですから,やはりその地域それぞれにある非常に根づいたものをきっちりと立脚しながら,経済と文化を両方立てておいて,とかく経済に行き過ぎる話で,政治家はすぐ文化,文化と言うけど,何もできないのだから,その辺のところのもう一つの柱を,きちっと僕らからの提言でやっていかなければいけないのかなと,ちょっと昔語りも含めながら話しています。
【吉本委員】
 高萩さんが政策誘導の話をされて,僕もそれはすごく重要だと思います。そのときに,世田谷の場合は芸術監督もいて,専門家もいてということで,すばらしいということですが,3,000館,4,000館あるホール,それがすべてそうなるわけはないと思います。でも,多くの館に話すと,「世田谷は特別だからね」という,何か特別の存在になってしまっています。だから,世田谷のような劇場の在り方が,ある種の日本のスタンダードに―それが全部のスタンダードになるわけはないと思います。例えば国内で100館ぐらいは,世田谷と同じぐらいの館があってもよいと思います。だから,そういう政策誘導をする方法はないのかなという気がします。今はどうか分かりませんが,芸術拠点形成事業の助成のときに,たしか芸術監督,もしくはそれに類する職能のある人がいることというのが条件になっていました。それは,ある種の政策誘導の方法だと思ったのですが,何かそういう専門家がちゃんといる館が手厚く助成されて,手厚く助成される条件のためにはちゃんと専門家がいなければいけないみたいなことがあわせてあると,雇用の場も広がるし,人材育成にもつながるのではないかなと思います。
【宮田部会長】
 そうすると,そういう状態の一つの見本があることによって,大学のカリキュラムなども,それに合わせるような環境になっていくと思いますね。では,そろそろ時間なので,簡潔にお願いします。
【米屋委員】
 2点,今の政策誘導に関することですが,今,吉本委員がおっしゃったように,よいものを伸ばすための仕組みとしての何か政策を導入して,より分厚く資金も投入できるし,そのかわり専門性が高いと。ただ,この場合,気をつけなければいけないのは,地域の方からよく言われますが,今,まさにおっしゃったような「世田谷は特別」というのではなくて,「都市部はいろいろな選択肢があるからそういうことができるけれども,地域はまず使える場所がないんだ」というようなこともあるので,やはり階層的に政策を形成していくということが必要なのかなというのが,1点あります。それと,先ほど来,クリエイティブ・パートナーシップの話などが出ていましたが,これは文化だけの予算ではなくて,教育行政であったり,あるいは福祉に関わる労働行政であったり,そういった予算が全部投入されているものなので,共管でないと,政府を挙げての施策でないと,できないことです。しかも,やはり行政の手法をかなり変えないとできないことで,これをやるために,地方のイニシアチブを生かしながらも,今のように応募してきたものに応えるということではなくて,各地域の実情を踏まえて立案するという,中央集権とはまた違うのですが,地方と中央との関係をもっときっちりと構築した上で行われている施策なので,手が挙がった人にばらまくという行政手法では全く立ち行かないことだと思います。こういったことをやるときには,ある予算規模と数を限った上で,そこに集中して充実させる。それが成功したら数を増やすとか,より広げるとかというふうにしていかないと,うまくいかないのではないかなと思いますので,人材育成そのものではないですが,そういったことを傍らに置いて考えないと,こういった分野で働きたいという人が働ける環境が,できていかないのではないかなと思います。
【宮田部会長】
 ポイントはある程度。
【田村(和)委員】
 いろいろ今回の提案で,一つの大きなシステムみたいな話を考えるというふうになるのかもしれませんが,私は,むしろシステムを考えるのではなくて,やはり今の話で,例えばここで学んだ人がいて,ここで人材がいて,施設のいろいろな問題が解けるとすれば,そこにある物すごくぐちゃぐちゃした話は,やはり個人だと思います。その個人みたいなものがいろいろな形で動ける話と,それからこちら側にそれがぶつかっていったときに,いろいろな解決をしていくという能力が出てくる,発揮できるというふうになれば,それぞれの場所でしっかりしたことをやるということが,まず転換の第1ではないかと思います。そのつながりは物すごく千差万別だし,地方と都市によっても機会が違いますし,ですから,吉本さんがおっしゃったような形で一つのモデル的な発想で考えることも大切だけど,それは一つの戦略としてはっきり出すが,一つ一つの問題のところで,教える場所は教える場所として,どういうことを本当にきちんとすべきなのか。そこは,少し独断と偏見に満ちてもよいと思います。ですから,そういうところで一つ一つを明快にして,それを非常に強い形で出していくことによって,初めて現実の動きがついてくるのではないかなという感じが,今日の話を聞いていてしました。
【宮田部会長】
 そうですね。ありがとうございます。あくまでも,文化庁の提案の下に,私どもは集まらせていただいて,意見交換して構築しているわけなので,いわゆる政策優遇という部分で,私どもの話を文化庁の方でまとめたときに,大きな力になってもらえることを願っているということで,ちょうど時間が来ましたので,今日はこれで終わりたいと思います。この後,事務局から説明があります。
【清水芸術文化課長】
 <次回日程,追加配付資料の説明>
この後,宮田学長のお世話により,大学の施設などの見学を行いますので,時間の許す方は参加いただければと思っています。よろしくお願いいたします。
【宮田部会長】
 <学内見学の紹介>
ありがとうございました。
1 日時
平成19年11月22日(木) 13:30〜15:30
2 場所
東京藝術大学 美術学部 絵画棟 石膏室
3 出席者
(委員)
唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 宮田委員 吉本委員 米屋委員
(事務局)
高塩文化庁次長 尾山文化部長 大西文化財部長 清水芸術文化課長 他
(欠席委員)
尾高委員 富澤委員 パルバース委員 三林委員 山内委員
4 議題

(1)アートマネジメント人材等の育成及び活用について ○中間まとめに向けた論点整理(1)

(2)その他

【宮田部会長】
 それでは始めさせていただきます。3回目の会議の後に,少し雰囲気を変えて新しいアイデアもということで,突然,会場を東京藝術大学に移しての開催となりました。この会議は,大変難しい会議ですが,ぜひとも一つの提言をし,世の中の次に続く人材に,活力と向かう方向性,並びに教育する場所において,先生方の意識を高めて質の高い人材育成をしていくための会議ではないかと思っています。それでは,部会を始める前に,この場所を少し紹介させてください。ここには,ギリシャ並びにローマ,日本彫刻の数々,そして近現代の作家の作品もあります。日本のものでいいますと,真後ろにあるのは山田寺の仏頭です。以前に山田寺が焼失したときに転げ落ちたもので,それが興福寺の縁の下にあったものです。これは,とても貴重で,しかも非常に品のよい像であるということで,第1回目のレプリカを東京藝大でやらせていただきました。それから,入口付近に後ろ姿が見えますが,ミロのビーナスがあります。一番精度の高いミロのビーナスですが,皆さんがおいでになる前に,少しきれいにしようかという議論が出て,美術学部の方で侃々諤々とやりました。実際にはできませんでしたが,後でご覧になってください。その横に小さな像で,アフター・ビフォーの違いをつくって置いています。このように先生方に会議においでいただくことで,また違った波及効果が我が大学の中でも出ています。例えば,向こうの壁の方にメディチ家の墓,ミケランジェロの作です。のみの跡がそのまま残っていますので,大理石がいかにつくりやすいものであるかという素材を見せることができると思います。あとは,ガッタメラータ将軍とかモーゼの像等々,皆様,ご存じのものがあります。他にもロダンの像などいろいろありますので,後でゆっくりご覧いただいて,会議の後,教育現場も少しご覧いただき,音楽,美術の見学をしてお帰りになると,第5回目がよりよい会議になるのかなと思いました。では,進めます。よろしくご審議ください。本日の部会は,中間まとめに向けた論点整理ということで審議を行いたいと思います。事務局から配布資料の確認をお願いします。
【清水芸術文化課長】
 <配付資料確認>
【宮田部会長】
 ありがとうございます。それでは,論点整理の案の説明を行いたいと思います。検討いただく素案として,資料3を開いてください。「アートマネジメントの人材の育成及び活用について」,この点について事務局から説明してください。
【清水芸術文化課長】
 資料3をご覧ください。会議に先立ち資料をお送りしていますので,ご覧いただいた方も多いかと思いますが,これまでのヒアリング,またヒアリング後の意見交換などで言及された発言を,第1に基本的な考え方,第2に現状と課題,第3に取り組むべき施策の3つに大きく分けました。また,それぞれの内容についても,同種類の意見については,できるだけまとめて整理しました。この論点整理をもとに,さらに審議いただき,その意見を踏まえて追加修正し,中間まとめへとつなげていきたいと考えています。この資料はそのたたき台です。では,内容について説明します。まず,第1が基本的な考え方として,アートマネジメントの必要性。アートマネジメントは,文化のつくり手と受け手をつなぐ役割を担う。具体的には,公演や作品等の企画・制作・資金の獲得などが,芸術を発展させるために不可欠だということ。2点目は,芸術家,実演家とアートマネジメント人材との関係ですが,芸術家が創造活動に専念することができるように,その芸術を支え受け手のニーズを汲み上げるアートマネジメントを担う人材との間で分担・協力して,芸術の発信力を高めていくことが必要という点。最後が,ハードとソフトということですが,各地にハードとしての文化施設は整備されてきましたが,ソフト面の充実が課題であり,中でもアートマネジメントの役割を担う人材の充実が必要という認識です。そして,(2)としてアートマネジメントの捉え方。少しふわっとした言い方ではありますが,アートマネジメント人材がどういった場所でどういう目標を持って活躍していくかを明確にすべきであるということで,職務内容の例として,以下に劇場・ホール等,あるいはメセナ団体等の中間組織などを挙げています。2つ目として,アートマネジメントという概念の明確化,また,そのためにもわかりやすい言いかえも検討したらどうかという意見がありました。そして,基本的な考え方の第3として,アートマネジメント人材に求める資質・能力としてどういったものがあるのか。マーケット側の需要に合った資質・能力を有する人材を育成することが必要で,資料に書いているように,こういった資質・能力が必要ではないかという議論がありました。次に,2ページ目ですが,基本的な考え方を踏まえて,大学あるいはそれぞれの現場の現状がどうなっているのか,課題がどうなのかということです。まず第1に,大学における人材育成です。これは,後ほど調査結果も報告しますが,大学等でアートマネジメントに関する講座,コースを置いている学部,大学院は増えてきましたが,カリキュラムは様々で,必ずしも体系的・系統的なものにはなっていないのではないかという指摘がありました。また,内容的に理論・実践の両面を教える必要がありますが,その実践面,文化施設等におけるインターンシップはまだ短期間のものが多く,実習効果を高めることが課題ではないかということでした。それから,参考資料にまとめましたが,現職研修,既に働いている人の研修も,国・地方公共団体,財団法人,NPO法人などが実施していますが,内容については,必ずしも現場のニーズを十分に踏まえていないものもあるのではないかということ。また一方で,個々の文化施設において,現職の人材育成をしていくのも,なかなか難しくなってきているということです。(3)として,文化施設等の受け入れ側。人材の受け皿ですが,大学でアートマネジメントの人材を養成しても,就職の受け皿が少ないという問題の指摘。また,アートマネジメント人材がキャリアアップ,将来を考えたときに,なかなか目標を持てない状況になっているのではないかということ。第3として,評価の観点ですが,各地域で文化施設が整備されましたが,マネジメントについての評価基準がはっきりしていないのではないか。したがって,指定管理者制度が導入される中,効率的な管理という部分の評価だけが強調される傾向にあるのではないかという課題が指摘されています。それから(4)として,アートマネジメントと並んで,舞台技術の問題ですが,舞台技術のスタッフに光が当たっておらず,モチベーションが高まらない状況にあるのではないのか。また,公立文化施設の数は増えたが,プロデュース公演でその都度スタッフを雇うという形に舞台の在り方が変化した結果,舞台技術者が育ちにくくなっているのではないのか。その結果,舞台技術のノウハウが劇場・ホール等で蓄積されず,安全管理上の問題が生じる原因になっているのではないかという指摘がありました。(5)アートマネジメントに関する情報ですが,人材養成,研修,文化施設等の情報が共有されていない。アートマネジメント人材として,どういう人が必要かという情報が少ないのではないのかということです。それから,(6)として文化行政の在り方。地域行政における文化行政の継続的なガバナンスが欠如しているのではないのか。裏返しになりますが,地域においてアートマネジメントがうまくいっているところは,行政の中に地域で芸術をどう生かすのかをよく捉えている人が活動しているという指摘もありました。それから,現状と課題の最後,日本型アートマネジメントとまとめていますが,日本ではアマチュアの文化活動が非常に盛んといった特徴がありますが,やや内側に閉じこもっており,社会をリードするような力にどう変えていくのかが課題だということ。また,日本の現状では,アートマネジメントが制度化されていないために,周囲の人のシャドーワークによって支えられてきた状況があるのではないのか。そして,日本でアートマネジメントのシステムを考えていくときに,日本の風土を踏まえたアートマネジメント概念の構築が必要ではないかという意見がありました。それらを踏まえて,3.として取り組むべき施策の方向ですが,第1に,大学等における人材養成の支援としては,コアとなる体系的・系統的なカリキュラムの開発が必要だということ。また,人材の養成に当たって,劇場・ホール等との連携によって,高校生や大学生のときから施設等の運営に参加する実習機会の充実が必要ではないか。そのために,劇場・ホール等での長期のインターンシップを行うことが望ましいのではないかという指摘がありました。次に現職研修についても,現場のニーズに即した効率的なプログラムを開発することが必要ではないか。また,専門的な芸術機関の人材育成事業やプログラムの中に,アートマネジメントの人材育成も加えていくことも検討すべきではないかという指摘がありました。(3)アートマネジメント人材の活用面の充実ですが,文化施設のアートマネジメント機能の充実のために専門の職員を配置していくことが重要ではないかということ。それから,日本のアートマネジメントを欧米のように個人や団体に依存しないように制度化するためには,政策的な誘導と日本型のソフトランディングが必要ではないかということ。さらに,アートマネジメントの人材がキャリアアップに向けたビジョンを持てるようにすることが重要ではないかということです。(4)舞台技術者ですが,舞台技術者を育成していくために,安全管理の問題などを初め舞台技術者に求められる共通項をつくり上げていくことが必要ではないか。そして,舞台技術のノウハウを蓄積して,舞台技術の継続性を確保することが重要ではないかという点です。(5)アートマネジメントに関する情報の整備ですが,アートマネジメントに関する人材養成,研修,文化施設などの情報を共有化するための体制の整備が必要ではないかということ。最後に,国と地方公共団体の役割ですが,まず第1に,国や地方公共団体で文化行政を担う担当者に文化振興やアートマネジメントに関する専門的な知識や理解のある人材を配置することが必要ではないか。また,文化施設等のマネジメントの評価基準を明確化していく必要があるのではないか。その中でよい評価のものには支援を行うということを検討すべきではないかということ。そして,最後ですが,優秀なプロデューサーや舞台技術のスタッフを顕彰するなど,アートマネジメント人材が魅力的な職業人の一つであることをPRすべきではないかといったところです。以上,ざっと説明しましたが,これをもとに,さらに意見をいただければと思います。続きまして,参考資料についても簡単に説明します。参考1は,論点整理案をつくるに当たり,これまでの主な意見を整理したものですので,これは後ほどご覧ください。参考2は,今回,アートマネジメント人材の育成と活用について,事務局として調査したものです。概要部分だけ説明します。調査の目的,方法ですが,教育現場と,アートマネジメント人材が働いている文化施設等,その2つを対象に,アートマネジメントの人材の育成と活用についての状況を把握するために,アンケートをお願いしました。調査の対象は,文化施設としては全国214施設,文化庁の芸術拠点形成事業の採択施設,あるいは公文協の加盟文化施設で,たくさんある文化施設の中でも企画・制作の機能を持つ施設に調査をお願いしました。それから,実演団体についても,文化庁の重点支援事業の採択団体,トップレベルの公演を行う能力のある168団体に調査をお願いしました。公立施設の関係では,指定管理者制度が導入されていますので,施設の指定管理者となっているNPO法人等,あるいは行政と協働歴があるNPO法人についても調査の対象としました。育成の面では,大学(学部・大学院),専門学校に関して,165校を選んでお願いしました。2〜4ページまでが調査結果のポイントですので,ご覧ください。まず,2ページの上から,文化施設,実演団体,NPO法人というアートマネジメントの人材の活躍する受け皿がどうなっているのかですが,各機関の臨時職員まで含めた平均の職員数が23.5名。この中で,アートマネジメント人材が平均13.7人。少し多いかと思いますが,アートマネジメント人材をかなり広く捉えて調査をしています。内訳が下に出ていますが,舞台技術者も,ここではアートマネジメント人材に含めています。そのほか,劇場・劇団の制作の担当者,企画・プロデューサー,立案・構成・ディレクター,営業・渉外・資金調達の担当,そのほかマーケティング,広報の担当などを含めて,かなり幅広くアートマネジメントを捉えたので,感覚よりも多目に数字が出ていると思います。それから,アートマネジメント人材の採用時期,選考については,随時採用が85%と定期採用よりもかなり多い。雇用形態は,正職員が62%で,臨時,非常勤もいます。それから,機関の長にアートマネジメントの経験があるか聞きましたが,38%がアートマネジメントに関する職種の勤務経験があるという答えでした。アートマネジメントに関する業務でボランティアを活用しているかという点については,42%の機関がボランティアを活用しています。また,資質の向上のための取組としては,全体で70%の機関が研修等何らかの取組を行っています。また,地元住民,自治体との交流・連携・協働を図っているところもあります。それから,文化施設,団体等が大学に期待するものとしては,第1が文化施設等との共同企画の積極的な実施,現場を知る専任教員を増やすこと,専門家の派遣・交流などです。また,国や地方自治体に期待することとしては,やはり第1は財政支援の充実ですが,それに続いて,文化芸術に関する社会的な普及啓発活動の推進,アートマネジメントに関する知識を持った職員の配置,文化施設等に対する優遇税制措置などが続いています。今後の課題としてどういうものが考えられるか聞いたところ,アートに子どもの頃から触れる機会を増やすことが一番多く,以下,連携・ネットワークの強化,アートマネジメント専門職の設置などが挙げられています。次に,アートマネジメントの養成側,大学,専門学校等にアンケートした結果ですが,アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設していると回答があったのは48校でした。うち,専ら舞台技術に関するものを開設しているのが6校。48校の中で,体系的・総合的なカリキュラムを設けている学校は29校で,全体に占める割合は60%です。4ページに行きます。大学等が文化施設等への実習・インターンシップを実施しているかについては,実習・インターンシップを実施していると答えた学校は58%で,実施している場合の平均は,20日程度でした。専任教員の配置状況ですが,アートマネジメントの専任教員を配置している学校が27校で,コースを設置している学校の57%が専任教員を持っている状況です。1学年当たりの学生数は,平均で38名。それから,学生の中で実務経験がある学生が25%と,大体4分の1ぐらいの学生が,実務経験を持ってアートマネジメントの講座等に入ってきています。次は卒業に関してですが,アートマネジメントを実際に学んだ上で,アートマネジメント関連の業務に就職する卒業生の割合は24%でした。地元の住民,自治体との交流については,9割を超える大学等で何らかの交流・連携・協働の取組が行われています。以下が大学側から文化施設等に期待すること,国・地方自治体に期待することですが,文化施設に期待するものとしては,トップが2つあります。アートマネジメントを学習した学生を積極的に採用してほしいということ,実習・インターンシップの積極的な受け入れをしてほしいということ,これが両方とも88%です。それから,国や地方公共団体に対しては,大学等への支援をしてほしいというのがトップで,インターンシップの受け入れの充実,文化芸術に関する社会的な普及啓発の活動の推進等が続いています。今後の課題としては,学生の就職先の開拓が第1ですが,次にインターンシップなどの現場研修の強化,アートに子どもの頃から触れる機会を増やすことなどが続いています。5ページ以降は,今の説明より詳細なデータです。最後は,13ページ以降に自由記述の欄を設けたところ,かなりの機関が意見を書いてくれましたので,それをまとめたものです。こちらは後でご覧ください。最後になりますが,参考3が,アートマネジメント研修の実施状況です。文化庁もアートマネジメント研修を実施していますが,地方公共団体,公立の文化施設,大学等,アートマネジメントに関係する研修等を実施しているところがあります。その中で幾つかの事例を調査して,プログラムの内容なども含めてまとめたものです。こちらも,参考にしてください。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。ここまで会を重ねてきて,いろいろなデータも含めて,一つの参考資料が出ています。今回,この時間帯を使い,この部分,また,これにつけ足すことも含めて,議論いただけたらと思います。いかがでしょうか,先生方の忌憚のない話をお願いします。
【田村(和)委員】
 このアンケートの人材と育成の活用の中で,アートマネジメント人材と,アートマネジメント経験というのがあります。これは,アートマネジメントを勉強されてきた方ということではなくて,いわゆる仕事の領域ということですか。例えば1館に13.何人いるというのは,仕事の領域で担当されている方が,それほどいるということですね。これは,その後の話で,アートマネジメントを学習することから雇用していく,就業していくということとは違って,仕事の領域の話をされているわけです。
【清水芸術文化課長】
 調査結果の5ページの方が見やすいと思いますが,この調査では,アートマネジメント人材に関しては,その人の能力,あるいはどんなことを学んできたということではなくて,今どんなことをしているのかという観点から聞きました。しかも,企画・プロデューサーから営業・渉外・資金調達担当というような形で,かなり広目に捉えています。
ただ,各機関の受けとめも少し違ったところもあるかもしれません。営業担当ということで事務職の方まで入れて回答しているところもあるのではないかと思います。
【田村(和)委員】
 そうすると,全体としてかなり広目にとられているのですね。
【清水芸術文化課長】
 そうですね。専門的人材としてのアートマネジメント人材という,今,検討しているものからすると,この調査はかなり広く答えていただいていると思います。
【田村(和)委員】
 わかりました。
【宮田部会長】
 例えば,資料3の基本的な考え方から,現状と課題,そして取り組むべき施策の方向と,大きくあるわけですが,それに偏らず,まだ時間もありますので,フィードバックして,こういうことは足しておきたいとか,いろいろあると思いますので,どうぞ。
【田村(孝)委員】
 これは,文化庁が調査したのでしょうか,委託してどこかが調査したのでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 文化庁が調査しました。それぞれの機関にお願いしています。
【田村(孝)委員】
 そうですか。こういう視点で調査が依頼されるということだけでも何か光が少しさしてきたのかということが自由記述覧のどこかに書いてありましたが,これまでに比べますと,隔世の感があるというのが私の正直な気持ちです。実際問題として,全く違う分野ですが,福祉医療機構というところでプログラム・オフィサーとファンドレイザーをどうやって育成するか検討が始められています。私がアートマネージャーの必要性を主張してきましたので,分野が違いますが参加しています。そこで「この違いは何だろう」と思ったのは,お金を出す人はいるということです。お金は幾らでもある。日本の中でお金を出す人はいる。ただ,どうやって使うかがわからないという話がありました。私は寄附文化が醸成されていない「そちらの方が問題です」と言ったのですが…。でも,そういう例もあるということだけは事実でして……。
【高萩委員】
 どういう分野でしたか,それは。何の分野ですか。福祉の分野?
【田村(孝)委員】
 福祉医療機構というところがやっています。
【宮田部会長】
 ファンドレイザーも含めて。
【田村(孝)委員】
 実は,なぜ私が参加するようになったかと言いますと,共同募金会も日本赤十字社も,今,地域社会が壊れて,募金活動が非常に大変になってきています。地域に頼った募金活動ができない。最終的には,アメリカ型のように,寄附文化を醸成していかなくてはならないということを考え始めて,これまでの募金活動の形や考え方を変えていかなければいけないと。いったん,すごく落ちるかもしれないが,地域に頼っていたのでは,どんどん先細りになっていくという危機感を皆さんが持っており,それがきっかけで,いろいろな分野の方が参加しています。その一方,「それでもお金はあります」と言われてしまうと,「えっ,そんなことはないです」と言ってしまったのです…。そういう意味では,自由記述欄に非常に参考になる意見がたくさん載っていたように思います。それと,もう一つ,先日,昭和音楽大学で,オペラ劇場運営の現在という研究会があり,バイエルン国立歌劇場の財務担当の方と広報マーケティングの方の講演がありました。ヨーロッパでもアートマネジメントを最近は教えるようになったが,浅くいろいろなものを学んでも,現場では役に立ちませんということをはっきりおっしゃっていました。バイエルンの財務担当の方は,法律を学んだ方です。アートマネジメントの現場で,何が一番大切なのか。今回の調査の自由記述欄の中にも書かれていましたが,私自身,解説委員の立場で,いつもそれを主張してきたのですが,「芸術の力」に気づいてほしい,そのことを言葉で伝えることの出来る人,アートマネジメントの担当者は,社会人としてきちんとしていることが最前提で,なおかつ,芸術が社会にとっていかに大切であるかを言葉できちんと伝えることが,一番求められていることではないかと思います。この調査は,文化施設の担当者等,みんなに勉強してほしいなと思ったのが正直なところです。
【宮田部会長】
 そうですね。ありがとうございます。いわゆる社会に対して芸術がどういうふうになっているかということをきちんと言える人,これはすごく大切なことだと思います。芸術をやっている人は意外と,芸術を確立はするけれど,その後がないのです。そこが欠点だと思います。正直,我が社も少しそうです。つくることはすごく頑張るけれど,それを世の中に訴えることが大変弱いということがあったので,よくわかります。
【田村(和)委員】
 今,田村孝子委員がおっしゃったとおり,この調査は本当におもしろいですね。私も読みふけってしまいましたが,非常に乱暴なことを言いますと,両方の調査とも大きなすれ違いが表れているなという感じです。人材の育成と活用については,一番大切なことは,人材を受け入れる側と供給する側と言うと,大学とかは送り出す方,それから受け入れる側の施設があります。これは,アートマネージングの話で言うと,非常におもしろいですが,3ページの国や地方自治体に期待することとか今後の課題というのは,受け入れる側の方ですが,文化施設等におけるアートマネジメント専門職の設置というのが意外に52%ぐらいです。この上も52%というのは,どういう数字なのかな,不思議な数字だなと考えているのですが,大学の方をみると,今度は雇用の場所が欲しいというような話が,急に70%ぐらいに上がるのです。これを見ていると,送り出す方は一生懸命,就職の場所が欲しい,行き先が欲しいが,受け入れる側は何か,今アートマネジメントを学習してきた人の即受け入れというのは,非常に逡巡があるような気がします。むしろ,それよりも手前にある人たちをどうしていくのかという話,それから施設がぶつかっているもっと大きな問題があります。その話が,参考2の方で全体的に感じることです。それから,もう一つの研修の実施状況について感じるのは,大きく主体の問題ではなく,2つに分かれるので,まさに田村孝子委員がおっしゃったことに関連してきますが,1つはアートマネージャーの育成とか研修ということで,これは将来をにらんでどうするかということで,典型的なのは,高萩委員がいらっしゃいますが,世田谷でされている,例えば6名ですか,それだけを専門にやっていくという話があって,私はそのプログラムもしっかりしていると思います。ところが,大半は,そのプログラムの位置づけがはっきりしないで,割合に地域の人材養成とか,場合によっては文化芸術の普及とか,また場合によっては市場獲得みたいな話ということで,むしろ現状改善のような話があって,そこで養成される人とは一体何なのだろうという感じがします。だから非常に対象の人数が多くて,期間が短いようなセミナーをされている。こういうところでは,中間的な人材が出てきて,これも確かにアートマネージングの一環だけど,一体この人たちはどこに行くのだろうかという感じがします。そうすると,この2つの渓流が何かあって,国の文化行政というのは,文化ストックを持つのが文化財とか遺産の行政であり,文化芸術の創造というのはこちらの側だと思いますが,文化財行政をずっと見てきてると,やはり非常に長い時間にいろいろなストックがあって,いろいろな経緯があるわけです。これで,やっと今,一つの形ができたという感じがありますが,やはりこの話をしていると,文化芸術行政の中で特に人材の話というのは,今,過渡期にあるなと感じます。今言いましたように,この2つの調査から,2つのすれ違い―すれ違いというよりも,二分法があって,これがどこかで交錯しなければいけないなと。交錯するところが,先ほど田村孝子委員がおっしゃったところだと思うので,このあたりを,果たして外在的な要因なのか,それとも内在的な要因なのかをもう少し論点として整理していかないと,だんだん前後が逆になったり,混乱したりすると感じました。
【宮田部会長】
 そうですね。データが出ると出てくるおもしろい問題ですね。非常に興味深いと思います。ありがとうございます。
【米屋委員】
 論点整理の基本的な考え方を読んでいて,確かにそうなのですが,何かうなずき切れないところがあるなと考えていて,それでこの調査結果を見て,はっと思ったのです。というのは,アートという芸術の範囲が何なのかがとても曖昧模糊としていたなということと,アートマネジメントの捉え方というのもどうなのだろうと思って調査対象を見てみると,すべてパフォーミングアーツと公立文化施設なのです。それで,「ああ,そうか」と思ったのは,「アートマネジメント」という言葉自体は,もう日本語ですが,もともとはアングロサクソン系の国から来ています。その場合は美術も含めて,芸術のどの分野であろうが,それに共通するものとして社会との関わりをどうしていくかということを教育しなければならない,公的なお金を使うからには,説明責任を果たせる人材をつくらなければならないとして高等教育機関で始まったのが,アートマネジメントの実践教育だったのです。しかも,それは既に多少経験のある人たちが,よりマネージャーとして,いわゆるトップマネジメントに近い部分として,価値判断ができるような教育をしようというので,マーケティングであれ,ファンドレイジングであれ,そういう科目が中心になっていて,「芸術の創造とは」とか,「そもそも芸術分野とは」などということは,あまり科目にはあらわれてこないというのが海外です。日本で「アートマネジメント」という言葉が最初に使われ始めたのが,たしか1991年だったと思いますが,公立文化施設協会が毎年やっている公立文化施設の職員に対する職員研修が,この年から「アートマネジメント研修会」に名前を変えて,「公立文化施設の人に施すのがアートマネジメント」ということで言われた時期が多少ありました。これはなぜかというと,劇場やホールのマネジメントのやり方というのが海外と日本の慣行は全く違っていたから,海外に倣って,単なる貸し館ではなくて,創造機能を内部にあわせ持つようなホールにしていかなければいけないのではないかという考え方で,変えていきましょうという動きが本格的になったのが90年以降だと思いますが,そうした歴史的なものを背景にしているので,「アートマネジメント」といったときに,暗黙裏のうちにパフォーミングアーツの問題だというふうに語られてしまって,芸術全体に及ぶ問題であるということが,あまりこのまとめの中でも,そういう形では提出されていない。これが,今回のこの部会の検討として,ホールマネジメントに限った問題としてやってよいのかということを,1つ確認していただきたいなと思った次第です。2回あった部会の検討の中でも,地域の文化行政とか国の文化行政ということに言及されましたが,こうなってくると,先進諸国の世界的な潮流というか,私が知っているのは一部ですが,芸術文化の力を使って,ソーシャル・インクルージョンというか,地域社会や人の関係そのものを改善していこう,それで生活の質を上げていこうという文化政策に転換していますので,芸術をつくって鑑賞してもらおうという部分だけではなくて,もっと芸術の力を応用していこう,そのための政策というふうに,変化してきていると思います。そうなってくると,ホールマネジメントというところで限定してしまっては,とても狭くなるので,現状のニーズはもっと広い概念というのを抱え込むことが求められているのではないかと思いますが,歴史的な経緯があるので,問題が顕在化しているホール・劇場をどうするか,それも公立のものをどうするかということなのでしょうが,地域のニーズというところでは,もっと大きな問題があると思います。それと,アートマネジメントというと,つけ足しのように実演団体が十把一からげになってくるのですが,今回の重点支援の採択団体を見ても,自由記入を見ても,いろいろなレベルのところが含まれているな,ジャンルも多岐にわたっているなということが見受けられるので,この辺も本当に一律に論じられるものではないので,ここで議論すべきアートマネジメント人材というのは,どこでどう働いている人なのか,あるいは参入してこようという人なのかが,やはりいま一つ明らかではないなと。少なくとも,海外のアートマネジメントの教育ということで考えると,マネジメントディレクターとか,トップレベルを目指すような人のためということなので,全くまっさらな18歳や20歳という人たちをそこに持っていこうという教育ではないので,学部レベルの話は,存在しますし,学部レベルの教育ももちろんありますが,そういったところからどんどん若い人をそっちに向けようということではないので,日本の雇用慣行と現実とのギャップも,この混乱の背景にあるのではないのかなと思います。
【宮田部会長】
 そうですね,なるほど。今おっしゃったように,割に大学で教わって即社会に,それでその社会とのキャッチボールとの関係のギャップだとか,先般の新国の伊藤さんにお話しいただいたときでも,受け入れる側としては,現場で育ってきた人間と高等教育から行った人間とのずれみたいなものがあって云々というような話もありましたから,当然,その辺も議論の中の対象になると思います。もう少し意見をいただきたいと思います。
【田村(孝)委員】
 今おっしゃったように,アートマネジメントがもっと幅広いものであるということは事実だと思います。しかし,日本の場合,美術館と博物館と図書館は,文化施設とは言いません。社会教育施設となってしまいます。プログラム・オフィサーというかアートマネジメントというか,司書の在り方,学芸員の在り方というのは,それぞれの場所で,今,検討されています。ですから,ここではどうするのか,この検討会ではどこが一番弱いかということだと思います。日本の場合は,劇場・ホールが,公民館法というか,社会教育法の中で公民館としてしか位置づけられていないという現状が,幾ら「そんなことはありません」と言っても,地方公共団体の行政の方は,公民館法でしか動けないというのが現実です。文化行政の方にもっと意識を持っていただくためには,その方たちが動きやすくなるようにということも必要だと思います。うまくいっているところというのは,行政の中にその意識のある方がいるところであるのは事実だと思います。でも,それは本当に個人に頼らなくてはならないというのが現状ですので,より広い範囲で全国的に自治体の方が動きやすくするにはどうしたらよいかという方策を考える必要があります。図書館,美術館の方も,今,文部科学省で検討されています。
【宮田部会長】
 この辺に関しては,文化庁の方ではいかがですか。
【高塩文化庁次長】
 田村孝子先生がおっしゃったとおりで,今,中教審で博物館,いわゆる生涯学習政策局所管の機関についての検討をやっていて,いろいろな課題があるようですが,私どもとしては,このアートマネジメントは,前回の文化政策部会で基本方針の中に位置づけられたことが,この部会の検討の最初なわけでございますので,基本法でもそう書いてありますが,我々もイメージしているのは劇場・ホール・音楽堂など,実演家団体,そうしたところに現実にいるアートマネジメント人材という人たちの在りようや,今後の方策を考えようということです。理想は必要ですが,現実の行政施策になると,あれもこれもと言いますと,なかなか大き過ぎてできなくなるので,できるところから一つずつ具体的な施策の提言をいただいて,一つ一つ少しでも前に進めたいというのが基本的な考え方です。確かに今回のまとめ方は,少し漠としている面がありますので,その辺の視野を絞っていただければ,限定的な条件をつけて整理するということは可能で,劇場・ホールを中心に考えたということでまとめていただければと思っています。
【宮田部会長】
 ある意味では,多少,今回に限りみたいな言葉ですね。
【高塩文化庁次長】
 ええ,そうなのかもしれません。
【宮田部会長】
 今後もあるというような感じになってしまうかもしれません。総花になってしまうと,かえって提言が弱くなる可能性もありますよね。
【吉本委員】
 そうだとしたら,資料3のアートマネジメントの捉え方のところで,大きく丸が2つあって,それからアートマネジメントを担う職務の内容の例もあって,それも,このあたりが劇場・ホールのことで書かれているのだと思いますが,まずこのアートマネジメントという仕事の内容がどういうものかをもっと丁寧に,1回,すごくブレークダウンしてやってみて,そこには美術館とかも含めた形全体を整理して,その中で今回のこの論点整理については,特に劇場・ホール,あるいは実演団体を中心にまとめましたという,何かそれがないと,これだけで出ていくと,美術館の仕事はアートマネジメントではないというような,それはまた別で検討していますよということがあるのであれば,ここは全体をこういうふうに捉えているけれど,この論点整理のペーパーはこの範囲に絞ってやりましたという整理が頭に必要かなという気がしました。それから,このアートマネジメントの捉え方のところも,一言で「公演や作品等の企画・構成・政策」と書いてしまうのではなく,もっと具体的に言うとどういう仕事なのかを,1回,洗い出す作業をもっと細かくできるだけやることが,範囲を整理する上で必要な気がします。特に,この中間支援組織のところでは,ここでは「文化施設や芸術団体と企業等とのコーディネート等の業務」と書かれていて,前回の文化審議会の政策部会でも,このコーディネート業務は結構議論のあったところで,たしか最終的には,「文化芸術と国民等をつなぐ業務」という言葉で整理されたと思います。そうすると,そこで言われていたのは,企業等よりも,むしろ学校とか福祉施設とかだったので,この表現だとそういうものは入っていないことになると思いますので,何かこの定義が曖昧なまま進んでいくと,この論点がどの範囲を指しているのかが見えなくなるのではないかなという気がします。これをもう少し詳細に検討するということと,頭のところでは美術とかを含めて整理した上で,ここには含まれていないということを整理してはどうかと思いました。
【宮田部会長】
 あと,発言のない先生,どうぞ。
【高萩委員】
 極端なことを言うかもしれませんが,今,日本でホール・劇場とかがハードとしては整備されたが,いろいろなことがうまくいっていないということで今回のテーマが取り上げられていると思うのです。ですから,概念を整理するよりは,うまくいくにはどうしたらよいかという話をされるのが,多分,一番いいと思います。そう思って見ると,吉本さんとか唐津さんとか私は,一応,アートマネジメントの専門家と言われていますが,我々は非常に謙虚だったので,アートマネジメントの専門家などはなくても劇場は運営できるのではないかというようなことを,今まで何となく言ってきたのです。
【吉本委員】
 そんなことを言ってきたんですか,高萩さん。
【高萩委員】
 いや,今まで何回か,アートマネージャーに資格を与えようとかいう話が起こるたびに,「いや,芸術というのはもっと広くいろいろな形があるんだから,そういう資格などは与えなくていい。みんながもっとアーツに親しめるように,僕たちだってちょっと勉強しただけで,そんなすごい専門家ではないのです」というような感じでした。僕も留学させていただいてから15年ぐらい経ちます。相変わらず今でも,本当に笑い話のようですが,芸術施設に赴任してきた役人の方が「私はこの分野,全くの素人なので」というようなことをおっしゃっても,不思議ではない分野なのです。それこそ,さっきおっしゃった図書館や保健施設などに行って,もしそう言ったら,下にいる人たちは「この人,何だろう」と思うぐらいに,やはり役人の人たちは,ある種,どの分野にでも,専門的に仕事できるように教育されるべきものだったのが,芸術施設に関してだけは,その専門家教育がきちんとされてこなかった。この際,一つの方向として,はっきり専門家がいるのだと打ち出したらどうでしょう。つまり,専門家を雇うのにお金がかかっても雇いなさいと。我々は,それこそ弁護士や医者とも話をしますが,彼らの年収は,全然違うわけです。やはり,資格を取られた方の年収は高くなっていたわけですが,芸術施設,音楽堂にしても,きちんと運営するのはものすごく大変で,知識は必要なのです。芸術の知識,つまり,音楽に関しての西欧のアーティストと出会って,話したときに音楽史を知らなかったら,やはり向こうは「ああ,この人,素人だな」と思うわけですし,演劇に関しても,ダンスに関しても,やはり知らないとできない分野ではあります。それをはっきり打ち出す。一つの方向としては,はっきり資格試験を導入して,しかもかなり難しい試験で,ある一定以上の施設に関しては,資格を持った人間がいない限り運営はできませんというのを打ち出します。これは非常に論議があると思います。ただ,これぐらいのところまで言っておいた上で対案を立てていかないと,うまくいかないのではないかなと思いました。何となくまだ,施設さえ整備しておけば,日本にいるアーティストの方たちがうまく使うのではないか。芸術に関しては,芸術が好きになってしまったかわいそうな人たちに使えるようにしておけばよいのではないかという思いがあるわけです。芸術文化施設は本当にお金もかかっているし,運営するのも維持するのも大変だと思います。これを,これから日本の子どもたちとか社会に芸術活動を役立てるというときに,もっとうまい役立て方がある,ほかの国ではもっとうまい役立て方をしているというところから,今回のテーマが起こっている話だと思います。芸術施設の運営を何のためにやっているかがわからなくなると,結局,やはりアートマネジメントは,何となくそんなに専門知識がなくてもやれるのではないかという話に落ち着いてしまう気がしたので言わせていただきました。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。そう言われていると,私などは送り出す側ですので,大変責任を感じますが,どうですかね。唐津先生からも一言いただいてから,私も発言させてもらいます。
【唐津委員】
 高萩委員が,かなり極端な意見というふうにおっしゃいましたが,私も今の意見には賛同する部分もあります。一般的に,専門家が不在でも運営できる組織と考えられがちな分野が,芸術分野だと感じています。例えば,昨日,たまたま新潟市の芸術財団が運営している「りゅーとぴあ」という劇場の芸術監督でいらっしゃる金森穣さんに話を伺う機会があり,現状をお聞きしたのですが,日本で初めてのレジデンス・ダンス・カンパニーを「りゅーとぴあ」がつくられたということで非常に話題にはなったのですが,内情を聞いて私もかなり驚きました。と申しますのも,別枠でレジデンス・カンパニーのための予算がついたわけではなく,今ある新潟市の文化予算の中で,ある部分を削っていって,レジデンス・カンパニーに「この範囲でやれるならやっていいですよ」というような方法での運営だということです。この方法だと,新しいカンパニーができたわけですから,当然,それを発展させていきたいと思っていても,その発展は「予算枠の中であれば」という条件つきになります。多くの場合,毎年シーリングがかかって,予算的にどんどん削られていく中で,内容的には発展させられることを求められる状況です。これは,私のような施設,それから多分,他のたくさんある公立文化施設も同じ状況だと思います。専門家がいれば,逆に「専門家がいるのだから,予算が少なくても当然発展させていくことができるだろう」というような過度の負担を,芸術家もしくはプロデューサーに求めていく,それ以外の行政の部分に関しては,逆に予算的な,それから管理的なところから,創造活動とはどちらかといえば反対に向いていくような在り方で,どんどん創造性から離れていくような運営の仕方がなされていることを感じています。ですから,そうした中で,行政の根幹にこそ専門家を入れていくということが,必要なのではないかと思います。行政は素人でもよいという考え方を,むしろやめるべきで,外から芸術監督とか入れるというのも,一つの方法だと思いますが,県の職員,財団の職員の中に,やはり専門的知識を持っている人を配さない限りは,その仕組みは変わっていかないのではないかと。金森さんが言われていたことで,ひとつ,非常に象徴的だったのが,自分が劇場の方に「これだけの予算ではできないので,もう少しこういったことをやりたいので,これだけの予算を下さい」ということを提示します。そうすると,劇場は,「うちは市から補助金を得ているわけですから,市の方にそれをお願いしてください」と言われるわけです。市の方にそれをお願いしますと,「財団には補助金を与えていますから,財団の中でやり繰りしてください」と言われるわけです。結局,どこに話を持っていけば,よりよくなるのかがわからない。この議論は,多分,どこの公立文化施設でもある議論だと思います。結局,行政の窓口とうまくコンタクトができる人材が育成できていないと,幾ら専門家を雇ったとしても,それがうまく生かされないわけですから,行政側の専門家の育成を,文化庁から大きく掲げていただけるといいなと考えました。
【宮田部会長】
 なるほど。ありがとうございます。
【高萩委員】
 今のは,アーティストはいても,アートマネージャーがいなければ,うまくいかないという典型です。アーティストは,「僕,こういうことがやりたいんだけど」と言います。そうすると,それを行政や民間スポンサーとつないで実現できるようにするのがアートマネージャーです。そういうことを行う人がいない場合は,本当にうまくいかないのです。新潟市にとって,あの劇場があるおかげ,金森穣さんのカンパニーがあるおかげで,何がどう変わっているかについて説明をできるかどうか,それは金森さんの仕事ではないと思います。
【宮田部会長】
 違いますね。
【高萩委員】
 昔は,もしかしたら1人のアーティストが,芸術面もマネジメント的側面も両方兼ね備えていて,小沢さんのように自分でタクトも振るし,ファンドレイズパーティーなどでも,魅力を発揮するということをできる人もいますが,必ずしも天がそういうふうに才能を与えるわけではないのです。すばらしい才能を持った今を表現できるアーティストを,どう使っていくか,ちゃんとその才能を生かしていける人間として,やはりアートマネージャーという存在は必要だと思います。
【宮田部会長】
 先般の後に,文化庁の人たちと,私もそれに近いようなことを話させてもらいました。そうすると,話していながら難しいなと思うのは,ある意味での権威づけをすることによって,今度はそれに人間というのは頼ってしまって,また違った方向へ行ってしまうという部分もあることです。この部会では,提言はちゃんとあるところまでしなければいけないと思っています。そのときに,先ほど言いかけてやめましたが,インターンシップも含めて,いわゆる高等教育の方で人材をどこまで教育して送り出してやるかというあたりの調査が,まだ行き切っていないなというのと,それからそういう講座を設けたとしても,非常におざなりで終わっているのではないかと思います。例えばさっきのデータの中にもありましたが,20日間というインターンシップが出ていたとしても,そのときにお聞きしたのは,1カ月もやっているところもあれば,2日しかやっていないところもあったり,それでも判こがおりているというあたりが,いささか疑問であります。その辺をちゃんと制度化しておかないと,一つの形,鑑札を与えたときに,受け取る側とするととてもがっかりしてしまう,使い物にならないではないかということになっても,困るなというものもあるのではないかという気がします。いかがでしょうか。そういう意味では,(3)の資質や能力に対しての問題は,すごく論議しなければいけない部分ではないかと思いますが,今,高萩委員の話の中にありましたが,私なども単なる鍛金作家であったのが,いつの間にか学長になってしまったら,今やっている仕事はほとんどアートマネジメントの仕事なのです。どうやったらうまく伝えられるかと,今日のこの設定も,言ってみれば,「ああ,そうだ。これはアートマネジメントのことをやっているな」というふうに世の中の人に認知してもらうにはどうしたらよいかということがあるのではないかと思います。そうすると,ひらめきですが,もしかしたらアートマネージャーというのは,芸術家よりも芸術家素養をきちっと持った上で仕事のできる人が,一番要請されているのではないかなという気も少ししています。そのニーズが,結局,現場と合っていないと,どんなに優秀であってもバランスが悪い。そうすると,アートマネージャーの中にAコース,Bコース,Cコースがあるみたいな,そういう捉え方もあってもいいのかなと。演劇系といっても,演劇の中でも古典もあれば現代物もあります。そのときに,「絶対に古典に関しては彼がうまいけれど,果たして現代物はどうかな」みたいな話も出てくるとは思いませんか,高萩委員。
【高萩委員】
 そう。だから,資格試験の話をすると,それが出てきます。今,実は伝統系のマネージャー試験とか,ビジュアルアーツのマネージャーの3級,4級とか,あることはあるのですが,どれも基礎的な知識を習得してくださいねというのにとどまっていると思います。少し違うかもしれませんが,アートマネジメントの研修に関して言えば,広くアートに親しむ方法をいろいろな人がいろいろな形で勉強すること自体はすごくよいことなので,そのことと,今ここで話しているもっと専門的なアートマネージャーを育成して,その専門的なアートマネージャーの地位とかアートマネージャーの活用を考えていく作業は別のものだと思います。アートマネージャーがちゃんとアーツ,それからアーティストを,今の日本の社会を豊かにする活動ができるようにすることが目的なのです。その人材は,実はそんなにたくさんでなくてもよいと思います。そのことがきちんとわかっている上で,教育とか地域で活躍する人たちが出てきてくれればよいと思います。その辺のアーツマネージャーの育成のレベルを,少し分けて考えた方がいいような気がします。
【宮田部会長】
 少し話が飛びますが,今はもう普通になりましたが,以前に,高等教育に博士が要るかというときに,「芸術博士とは何だ」といって,随分議論したことがあります。最近は何の抵抗もなく,むしろ博士課程の審査を大学では美術館の中でやって,皆さんに評価してもらおうというふうになりました。随分変わってきたなと思ったのですが,10年ぐらい前までは本当に,「博士をやって飯が食えるのか」みたいな素朴な話になっていました。もしかしたら,今,これも似たようなことを,少し遅れて議論しているのではないかという気がしますが,できれば早く認知されて,「この課程を出られた方は,ぜひとも我が館に欲しい」という捉え方にまでなってもらえたらいいのかなとは思います。
どうでしょうか。(3)のこの提言の中を,全体に調整しながら膨らませていきたいと私は思っていますが,「ここは要らないだろう」とか,あるいは「ここはもう少し事務局の方で足してもらえないかな」というものがありましたら,提言いただけたらと思います。ただ,この参考2の回答の有効回答率が49%ということ,これは大変な数字で,いろいろなところのアンケートに対して出てくるのは,大体,一生懸命やっても十何%で,それも何かただの悪口で終わりというものがあるのですが,これは貴重な部分ではないかなと思います。この辺も含めて,この論点整理の中にうまく調整されていたらよいのではないかと思います。特に,2ページの現場の方の研修について,必ずしも現場のニーズを十分踏まえた内容となっていないのではないかという,この辺のところも,この前の新国の伊藤さんなどもそうですが,「あれを持ってこい」と言ったときに,「あれ」ではなくて「これ」を持ってきたりすると困ってしまうみたいな話があった気がしますが,知らないうちに,阿吽の何か出てくるようなものも含めて,アップしていく方法は,この論点の中には必要でしょうか。必ず書き入れて,もっと膨らませた方がよいでしょうかね。
【高萩委員】
 先に確認しておきたいのですが,美術館とか図書館とか博物館については,文科省の方で何らかのことをやっていると思っていいのですよね。つまり,これから提案していかなければならないのは,今,劇場・ホール,実演団体に関わる部分ですよね。我々の場合は公共施設で,劇場・ホールに関してですが,今,指定管理者制度の中で,公民館から高度な機能を持った劇場・ホールまで含めて,いわゆる公の施設という中で,極端なことを言うと,金銭的な効率化の中で指定管理者を指定する方向に行っています。そして,そのことが非常に我々にとってプレッシャーになっていることは確かなわけです。そうすると,つまり高度な芸術表現をする芸術施設だけを,法律をつくって特別扱いすることは可能ですか。そうすると,先ほど話した美術館についてのキュレーターに関しての研修とかと同じように,劇場・ホール,高度な芸術表現を創造するような施設に関しての何らかの別の研修を提案していくということで済む話なのですか。そんな可能性はあるのでしょうか。
【宮田部会長】
 それはいかがでしょうか。
【高塩文化庁次長】
 可能性というか,むしろ米屋さんの方が,発言があると思いますが,いわゆる芸団協といいますか,文化芸術推進フォーラム,そういうところの提言の中に,特に文化芸術振興基本法ができた後に,1次の基本方針にも入れていますし,また,前回議論いただいた2次方針にもありますが,劇場・音楽堂の整備の中に,いわゆる法的な整備があります。それを推進しようといった文化芸術推進フォーラム,そういった動きも,ありまして,いわゆる博物館法,図書館法,それぞれ法律が戦後すぐできていますが,劇場は,田村孝子委員がおっしゃったように,地方自治法による公の施設です。何らそういう法的な根拠はないと。そういうことが,そこに置かれている人の問題,それから今やっているような税制に対して優遇措置をやりたい場合の法的な根拠が薄いとか,そういったさまざまな弊害になっていることも確かです。そういうことを踏まえた動きはありますが,全体の国の流れが行革の中で,そういったものをつくったときに,では必置要員みたいなものを置けるとか,博物館であれば学芸員を置かなければならないとか登録制度とか,いろいろな規制行政があるわけですが,そういった行政が非常に難しくなっています。こういう中で,法律を仮につくれるかつくれないかということもあります。つくった場合に,どういった内容としてどういった形にするかということは,よく勉強しなければいけないのですが,そういうものが本来あった上で今日のこの議論をすると,相当スムーズにいくのではないかと思います。そういう前提がなくて,人だけを―資格という面も難しいということも,先ほど高萩さんがおっしゃられたとおりです。そういう国の全体の流れの中で,今,手足を縛られるというのではないですが,指定管理者制度などはまた別の面の規制改革ですが,そういう中で劇場の活性化を図る方策を,今,模索しているところです。ただ,基本法もご承知のように議員立法という形で,行政的にというよりは,むしろ政治家の先生方が中心に推進していった経緯もありますので,いろいろな方途はあると思いますが,私どもも未検討ですし,団体の方でもさまざまに検討していただきたいと。昨年から芸団協にお願いしているのは,いわゆる劇場の安全基準の面ですが,安全基準は,まさに法律で縛るというよりは,あるべき姿として必ず先にやらなければいけないことで,一つのそういったものをつくり上げて,100%それが適用されるわけではないですが,そういったものを各劇場に示すことによって一つのレベルアップも図りつつ,また,私どもでやっているような芸術拠点形成事業の対象は,そういったことをクリアしたところに限りますといった形で,まさに規制ではなくて,政策誘導の一つの手段として考えたい。さまざまな事故もあるという話もありましたので,安全基準だけを実行上,検討いただいて,我々も若干の支援をしている状況です。この人材の問題も,本来,順番は逆なのかもしれませんが,部会でそういった人材面での活用方策をぜひ提言していただけないかと思います。
【宮田部会長】
 部会長を引き受けたときに「これはやりにくいな」と思ったのは,そこの部分でした。ですから,肉づけをするにしても,方向性があっちへ行ったりこっちへ行ったりするので,どこに焦点を持っていったらよいかが非常に難しいと思います。同時に,このアートマネジメントそのものが,皆さんの概念の中にあるのと,それぞれの中に概念の目的の終着点が違ったりしていると,議論がまとまりませんので,あるところで一つの旗をつくった状態で,それに向かって1回走ってみることも,必要かと思います。
【吉本委員】
 この資料3の取り組むべき施策の方向ということで,6つ出ています。それで,これはいずれもそうだと思いますが,アンケートの結果などを見ると,先ほどの高萩さんの発言とも関係しますが,いわゆる大学でのアートマネジメント教育のような部分と現場での本当の実務経験のようなものの,ちょうど間をつなぐところが非常に弱いのではないかという気がします。どこかの資料に,現場で採用する側は,やはり実務経験がある人を優先して,新卒はなかなか採用できないというのがあるので,その辺をうまくつなぐような仕組み,インターンなどもその一つだと思いますが,そういうことを政策として打ち出せないかなと,1つ思いました。それと,もう一つは,この人材育成そのものとは少し観点が違うかもしれませんが,私はここで非常勤講師をしているので,たまたま昨日,この第2次基本方針のことを授業の素材にして話していたら,学生が,今日これがあるというのを知っていて,「傍聴します」と言って,今日,来ていますが,そのときに人材育成の話をしたら,非常に生々しい声として,一生懸命勉強して,働きたいと思っても,安定的な仕事場がないのが一番の課題だと,学生の非常に生々しい声として言っているのです。その理由はいろいろあると思いますが,例えば指定管理者制度が導入されて5年とかで終わると,この間もたまたま,ある財団の方に話を聞いたのですが,「プロパーとかを雇用しないんですか」と聞くと,「いや,指定管理者でいつ終わるかわからないから,プロパーを採用するわけにいかない」というようなことがありました。だから,この中にも「キャリアアップに向けた明確なビジョンを持てるようにすることが重要ではないか」ということが書かれていますが,その原因は,要するに雇用の安定がないということが最大で,前回の審議会のときも,随分議論になったのですが,人材育成そのもののことについては書けないかもしれないので,人材育成の周辺の環境というか,雇用の安定化を図るとか,そういったようなこともあわせて書き込まないと,このアンケートの自由記述の中にも,「人材を幾ら育成しても失業者を増やすばかりだ」というようなものもありましたので,それもぜひ書けないかなと思います。ちゃんと「ここで働きたい。ここに働くと,ずっとこういう仕事をしながらキャリアアップできる」というようなやる気を持ったままやってもらえるような人を,環境としてつくっていくようなことも書けないかなと思いました。
【宮田部会長】
 まさしくそのとおりで,彼らは不安ですよ。
【米屋委員】
 雇用の話に行きたいのですが,その前に,この3ページの現職研修の充実というところが,「現場のニーズに即した効果的なプログラムを開発することが必要ではないか」と。実は,プログラムの開発が必要なのではなくて,研修を受けやすい体制をつくることの方が重要だと思います。私のところでも,私自身,現職者の研修を担当していて,長くても3日とかでやるのですが,そうすると,「本当はこれとこれとこれをつなげれば,より効果的なのに」ということがわかっていて,3日の中ではそれを入れられないので,どうしても虫食い的になってしまい,本当は長期の研修をやりたいのだが,なかなか踏み切れないでいると。その実情には,「それだけ職場をあけることができません」という現場の声があります。ですので,中身ではなくて,やはり研修を受けやすい体制,条件づくりというところを第1に挙げたいと思います。それと,4ページの舞台技術者の養成・活用の強化というところも,安全管理の問題は,確かに先ほど次長がおっしゃいましたように,最優先ですので,これは割と資格というか,技能認定になじむ部分ではないかなとは思いますが,安全が最優先ではなくて,安全最優先だったらホールを使わなければよいので,真っ暗にしておけばよいのですが,安全と創造・公演活動を両立させるための技能だということ,創造活動ということが大前提にあるので,そこを落とさないでいただきたいと思います。もう一つ,今,実演団体の方々に,私もヒアリングをしていろいろ伺っていて,「もし支援があって,もう1人,人材が雇えるとしたら何を任せますか」と言ったら,大概の方が「うーん」と悩んで,「1人と言わず5人欲しい」と言ったりします。いろいろ聞いていきますと,大概の実演団体が,多分,数人の事務局で回しています。ということは,1人のやる仕事の範囲がやたらと多岐にわたっているのです。ですから,マーケティング専門の人が置けるなどという,そんな幸せな団体はまずないし,ファンドレイジング担当者が単独でいるなどというところもまずありません。そうすると,何が起きているかというと,人は欲しいけれど,あれもこれもできる人が欲しい,幹部が欲しいというのが現場の声です。新卒者でどんなに多少,数年の実務経験があっても,いきなり幹部は無理なので,大学が送り出すのは,将来幹部になる素質があるかもしれないという若い人で,それがある経験を経て,よりステップアップをするために現職者研修として充実したプログラムがあって,幹部がうまく交代していける,世代交代できるという状況が必要だと思います。もう一つ,間に必要なのは,アシスタントレベルで将来幹部になる人を雇える環境をつくることだと思います。
【宮田部会長】
 なるほど。
【唐津委員】
 今の米屋委員の現場研修の話は,本当にまさにそのとおりで,実際,芸団協,それから文化庁等のいろいろな現場研修の案内が来ますが,職員の間ではあまり知られていないという現状があります。というのは,日にちがとれないというのもありますが,実は一番リアルな理由として,出張旅費が出せないというのがあります。とにかくいろいろなところの予算を削っていった中で,出張旅費を削ることが,現時点で,かなり大きくなってきていますので,そういった旅費等の問題,それから,やはり2年,3年で異動になっていく職員にそこまでエネルギーを割くのかどうかということも,もう一つ挙げられます。これから例えば10年間とか20年にわたってその仕事に従事していただくということであれば,やはりつぎ込むということもあり得ると思いますが,とりあえず2,3年でかわるというのが前提になっているような職場で,研修に送り出そうという機運は,ちょっと見られないということが現実としてあります。それからもう一つ,今,安全管理の問題がありましたが,舞台技術者によるセミナー等が,全国的にいろいろと行われています。その中で地域ごとの格差があるように感じています。例えば,具体的な例でヘルメットをかぶるかどうかというような劇場や各地域の技術スタッフ間の考え方の違いもあります。こういったところも,やはりある一つの基準は明確にしておくべきものではないかということを感じました。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。どうでしょうか。今のような話も考えますと,受け入れ側の方の4ページの(6)の行政の方の担当者とアートマネジメントの相互の中における人材,この辺のところで,担当者が専門的にしても3年ぐらいでいなくなってしまうから云々というふうにも捉えてよいのですか。
【高萩委員】
 アートマネジメントとか規則に関しては,何のためにやっているかがわからなくなることが起こります。ヘルメットに関しては,かぶっていると危ない事態もあるわけです。音が聞こえなくなるので,ある種の仕事に関しては,かぶらない方がよいという説もあったりして,実際問題として,やはりこの現場に関してはかぶらない方がよいとか,この種の仕事はかぶった方がよいとかは,誰かが判断をしなければいけない。それと,さっき高塩さんがおっしゃったことで,僕は,やはり政策誘導というのはすごく大事だと思います。今,はっきり言って,現状はよくありません。米屋さんがおっしゃったように,いろいろな困っているところにアートマネージャーを全部つけたって,うまくいかないのです。だから,次の5年,10年を目指してどういうふうにしたらよいかが問題です。ハードは整いつつあると思います。東京は,どういうわけか次々と劇場施設ができてはきています。そこでハードのない時代に存在した芸術団体たちがそのままの機能で存在していること自体の方がおかしいと思います。では,ハードとどういう関係をとっていくかを真剣に考えなければいけないときに,ちょうど90年に文化庁のお金が増えたので,みんなあまり困らずに,そんなことを考えないで存在し続けてしまったわけです。これは,逆に現状がおかしいのです。ちゃんと政策誘導していればよかった。音楽系の団体はすごく考えたわけです。「フランチャイズでなければいけない。自分たちが稽古場を確保するためには,どこかの施設と組まなければいけない」と考えて,動き始めた。演劇の団体ももちろん,今,地方とフランチャイズを始めようと考えています。考えているところには,ちゃんとお金を出して,人を出してあげるべきだし,5年,10年先をにらんだ政策誘導は本当にすばらしい事柄だと思っています。舞台芸術に関してもそういうマネジメントが必要だというために,それを考える人が必要だと思います。人材をばらまいたりするためにあるわけではないと思うので,そこを大事にしていきたいなと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。いや,今日は何か,よい発言がぽんぽん出ますね。
【田村(孝)委員】
 私は,4月1日から館長をしていますが,指定管理者制度になって正規の職員を雇わないと,3年,5年で契約のきれる職員と県庁に戻る職員の割合が多いため,ノウハウの蓄積が全くできないという事が起きてしまいます。どちらかというと文化政策というか文化行政が進んでいる県でもそれが実態です。本当にいかんともしがたいというのが現実で,先ほど,アートマネージャーの資格などというふうにおっしゃいましたが,大学で司書科を出た方が全員,司書になっているわけではありまでん。学芸員だって,そうです。
【宮田部会長】
 そうです。
【田村(孝)委員】
 何も文化政策を学んだからといって,全員がならなくてもいいわけです。この間,バイエルン州立歌劇場のインターンシップの話,研修の話が出て,「何をさせますか,どういうふうにやっていらっしゃいますか」の問に,「雑務をさせます。それに文句を言う人は,4日でクビです」とおっしゃいました。「私のところできちんと研修している人がいます。でも,その人は将来,劇場ではなくて,違う企業に就職することを希望しています」と。さっき,米屋さんがおっしゃったように,アートマネジメントはソーシャル・インクルージョンといいますか,社会をどうしていくか,それをアートの面でどうするかということだと思いますので,そんなに遠慮することはないと思います。今日劇場はできました。今度はいわゆるアートマネージャーの方が社会にどう貢献できるか,その基盤を整備していただくことが,大切ではないかと思います。
【宮田部会長】
 おもしろいですね。
【田村(和)委員】
 ただ,今おっしゃるのはよくわかりますが,やはりキュレーターとか司書とか社会教育主事というのは,もうちょっとこなれていますよね。ですから,今,アートマネージングを勉強してきた人が社会に出るよりも,はるかに歴史も古いし,社会教育という世界の中で,融通性もききます。それからもう一つは,美術館,博物館の場合は特定だけど,やはり図書館などは,非常にある意味で,かなりいろいろな変化がありますので,需要の場所が増えています。それに対して,アートマネージングというのは,逆にだから,今のことが大切なのですが,何か外在的というか,もう少し総量が増えていかないと変わらないみたいな世界がすごくあるような気がしていて,何かそこのつっかえているところがアートマネージングを学んだ人と,それからパフォーミングアーツみたいな間が,ほかと比べられますが,少し違う感じが,いつもしています。
【宮田部会長】
 なるほどね。どうでしょうか。こういう教育の現場ですので,ドラスティックな話をもう少し,出していただけませんか。例えば,「育ててどうするの」ぐらいの話まで出るのもよいのではないかと思うし,とらせるためには,法制でそういう館をつくったなら,自動的にそういうポジション,ポケットはつくらなければいかないみたいな話を今度はこちら側から出すともあれば,どんどんよい人材は出てくるだろうし,目的の山がしっかりとしていれば,そこへ走るための法律は,あっと言う間につくれると思います。その辺が曖昧としているところで話をするので,少しあっちへ行ったりこっちへ行ったりしています。
【高萩委員】
 この間,青木長官のセミナーを聞く機会があったのですが,アジアの中で日本の文化をきっちり表現できるような芸術活動,アジアの文化のトップを走れるような国にしていきたいということをおっしゃっていて,非常に,明確な論理だなと思いました。今,どうもそうなっていないのではないかという認識があるからこそおっしゃったのだと思うのです。確実に今,アジアのほかの国が,生活水準,経済水準が上がってきていて,みんな現代アートにも目が行くようになっています。今までは,アジアの中で,現代アートをやっている国はものすごく少なかったし,ごく一部だったわけです。これから,確実に中国,韓国,それから東南アジアの国などでも,現代を表現するアートは出てくると思います。日本は,やはり今,少し先に行っていると思います。そのリードをどう生かしていくかといったときに,様々な人材を活用する必要が出てきていて,現状では何かシステムがうまくいっていないと思います。そういう意味でいうと,静岡のグランシップなどは,ハード的にはすばらしい施設です。アジアの中でも,設備的にいって,すばらしい施設だと思います。それなのにうまくいかない現状が,すごくよくわからないですよね。それは,やはり法律が何か縛っているのだと思います。それを,どうしたらそうではない,専門家がいられる施設にしていけるのかを話せれば,一番簡単なのではないか。そうすると,逆にそこにはちゃんと専門家がいなければいけない。専門家を,大学で教育する部分と,入ってから教育する部分とに分かれてきて,わかりやすくなってくると思いますが,どうも素人を雇って,素人からですと育てるのは大変です。公共のお金を扱う専門家は,行政から来て行政へ帰っていくので,それはそういう人も必要なので,よいとは思いますが,劇場側に残っていく専門家を雇えないとおっしゃったことは,すごく問題だと思います。それを解消する方法を提案できれば,かなり画期的だと思います。
【宮田部会長】
 そうですよね。うん。
【田村(孝)委員】
 現実問題でこういうことが起きてしまいます。今,アウトリーチ活動が全国で盛んに行われています。でも残念ながら,玉石混淆なのも現実です。そして,それをチェックする人が文化施設にいないのです。何のための誰のためのアウトリーチ活動なのか,芸術家のための新たなる収入の場ではないはずです。教育プログラム,アウトリーチ活動をすれば,地域住民のニーズに答えていると素直に考え,全国どこの施設でも起きていることです。世田谷パブリックシアターがやはりすばらしいのは,芸術監督がいて,そしてアートマネージャーもいる,専門家を動かすスタッフもいるという事です。それだけ考えて専門家を配置し,質の高い様々な活動を展開しているところは,そんなにありません。それが現状です。
【宮田部会長】
 そうですね。今,ふと,田村孝子委員の話を聞いていると,ハーバートリードが,社会の中にすばらしい芸術品を置くことによって,人間のモラルそのものまでも向上するという話をしていましたが,僕らが議論していることは,本当にこれが構築されたら,言ってみればNHKのニュースは事件が1個もなくて,楽しい話だけになるのではないかというような気がします。一番大事な部分は,3つお話になりましたこの関係が確立することによって,人材も養成されるであろうし,行くべき道もはっきりしてくるだろうというのは,もう結論になるぐらいの話ではないかと思います。
【高萩委員】
 今,ほかの国がよいというと,少し問題がありますが,イギリスは非常にイギリス文化の最高峰のものを維持することが文化政策の最初でした。その後,アクセシビリティの拡大といって,芸術に接する人の拡大という方向に大きく方向転換しました。そのとき,かなりの論議がありました。日本ではあまり論議はせずに,芸術文化振興法を通すことについて文化政策の専門家の方が少し反対したのは,論議がないと社会が動かないのではないかというのがあって,法が通ったこと自体は,よかったと思いますが,やはり少し論議不足だったかなと思います。そのとき,イギリスの方はクリエイティブ・インダストリーというのを打ち出しました。「芸術は産業の役に立つんだ。例えばビートルズだ」というふうな,わかりやすい例があったということもありますが,そのことで,芸術活動を拡大することがイギリス社会全体の役に立つという論議をいろいろなところでしました。その後,5年ぐらいたって,今,クリエイティブ・パートナーシップというのを打ち出しているのです。一緒に何か創造活動をすることが子どもたちのクリエイティビティを養うのだということで,芸術家を地域に派遣したりしています。日本だと,そういう「子どもたちに芸術を」というのが出てくると,補助金をばらまいてしまう方向にいきます。「いろいろなところで,どこでもやって,どんどんやってください」というのです。イギリスの場合,モデル地区をつくったのです。10個ぐらいのモデル地区にかなりのお金を出して,そのモデル地区で芸術家が学校に行ったり社会的な活動をしたりする。そこがこのくらい変わったという報告書を出させて,次の何年か参加したいところは応募してくださいと。そのかわり,地方でもそれだけの負担はしてもらいますよというのを出して,だんだん,地域を増やしています。この間,報告書を読みましたが,よいことばかり書いてあるのかもしれませんが,非常によくできているなと思いました。やはり,我々に欠けているのは,どうも我々も「お金を取ってきてください」とは言いますが,使い方についてです。芸術家を学校に行かせたりするとなると,絶対にそのことをコーディネイトする専門家が必要です。アーティストでもないし,学校とつなぐために必要であると思います。この人たちをどう育てていくかということも,多分,次の課題になると思います。さっきの静岡の例で,やはりつなぐ人がいないとうまくいきません。アーティストが行けばよい,とにかく学校に行っていればよいということで,確かに,行けば楽しんではくれるという事実はあります。だから,「ばらまいてもだめですよ」と言うと,「学校にアーティストが行ったらすごく喜んでいたという報告書をいっぱいもらっているよ」と反論されたりしますが,それがどう評価されているかというのが問題です。必ずしもうまくいっていない面もあると思います。
【宮田部会長】
 形に見えにくいところがあるわけですからね。吉本委員,藝大においでいただいて,この辺の話をしたときの学生の反応はどうでしょうか。先ほども,ちらっとおっしゃっていましたけれど。
【吉本委員】
 ですから,人材育成の問題も重要だけれども,それ以上に,やはり働く場所を……。
【宮田部会長】
 その話以外で。
【吉本委員】
 その話以外でですか。
【宮田部会長】
 その論点は,先ほどお聞きしましたが,今のような話をお聞きした中で考えたときに,学生の反応みたいなものはどうでしょうか。
【吉本委員】
 今の話の観点でいくと,学生に,また次の授業で取り上げてみたいと思いますけれど,高萩さんがおっしゃったクリエイティブ・パートナーシップの現場を,たまたまロンドンに行って見てきました。取材もいっぱいしてきましたが,やはりモデル校だけではなくて,それを広めようとしていて,ある小学校へ行くと,常に誰かアーティストが1人います。それで,あちこちでいろいろなことをやっていて,部屋に直接そういうことを行う場所が,きちんと学校の中でつくられていて,ソーシャル・インクルージョンというようなことをアートでやっていこうということもあるし,イギリスはクリエイティブ・インダストリーでいろいろなことを打ち出しているので,「地域を活性化するためにはとにかくアートだ」というのが,今や定着しているらしいです。逆に,どんな小さな町でもそういうことを言い始めているということなので,そのことを心配している人さえいます。だから,ここで言うアートマネジメントというのは,やはり劇場やホールだということになってはいますが,もう少しアートマネジメントの仕事の範囲を広げていくようなことです。要するに,劇場やホールで専門的なことをやることは重要ですが,社会の中にアートマネジメント的な職能が,もっと使える場所がいっぱいあると。学校もそうだろうし,福祉施設もそうだろうしということもあわせて盛り込めると,人材育成をすることの意義をもっと強く打ち出せるのではないかという気がします。
【宮田部会長】
 一つのパイをつくるのだけど,そこの中に入れる形は,これだけのパイの中でしか活躍できないのではないのですよということを伝えるということですね。
【吉本委員】
 ええ。
【宮田部会長】
 それは,当然,とても大事なことだと思います。だけど,やはりとりあえず何はともあれ,ここにこれだけのものができるのだということをつくらないと,ほかにも回っていかないというのはありますよね。
【高萩委員】
 全国の均質的な発展というのは無理だと思います。都会と都会ではないところ,それはお金の配分だけではなくて,やはりそれはそこなりの発展の仕方というのがあると思うので,そこなりのアート,それから現代アートだけではなくて,伝統的なものとかも含めた芸能的,芸術的なことを,今後どう,日本の社会の中で役立てていくかをきちんと言えないと,うまくいかないと思います。
【宮田部会長】
 そうですね。個人的なことで恐縮ですが,私は佐渡の生まれです。佐渡には33の能舞台がいまだにあります。5つぐらいのときに,そろばん塾に行くか,能・仕舞をやるかという選択肢を与えられます。私はたまたま,そろばんではない方を選びました。それがいまだに役立っているのは17:00からですが,何かがあったときにそれをすっとできる。銭湯が,必ずそういう舞台になります。個人のうちに風呂がないわけですから,1日置きに銭湯の脱衣所でやるわけです。奇数日はそろばん,偶数日は能・仕舞をというのが日常でした。そうすると,佐渡のような環境の中で,経済と文化を選択させてつくっていくというものがある。東京へ来ると,今度は極端に巨大過ぎるために,やる人はとんでもなくやるけれど,やらない人は全くやらない。それから,その中間層に対するつなぎが全くできないものだから,すごく難しいのです。埼玉へ引っ越したことがあるのですが,子どもが小さかったので,自然にと思ったら,今度は,あれはあれなりに県の展覧会だとか何かがあったときに,きちっとそういうマネジメントのことを,いわゆる都会とちょっと違う,でも,都会っぽいようなところというのは,またそれなりのやり方がある。そうすると,高萩先生の話ではないですが,東京も地域ですから,やはりその地域それぞれにある非常に根づいたものをきっちりと立脚しながら,経済と文化を両方立てておいて,とかく経済に行き過ぎる話で,政治家はすぐ文化,文化と言うけど,何もできないのだから,その辺のところのもう一つの柱を,きちっと僕らからの提言でやっていかなければいけないのかなと,ちょっと昔語りも含めながら話しています。
【吉本委員】
 高萩さんが政策誘導の話をされて,僕もそれはすごく重要だと思います。そのときに,世田谷の場合は芸術監督もいて,専門家もいてということで,すばらしいということですが,3,000館,4,000館あるホール,それがすべてそうなるわけはないと思います。でも,多くの館に話すと,「世田谷は特別だからね」という,何か特別の存在になってしまっています。だから,世田谷のような劇場の在り方が,ある種の日本のスタンダードに―それが全部のスタンダードになるわけはないと思います。例えば国内で100館ぐらいは,世田谷と同じぐらいの館があってもよいと思います。だから,そういう政策誘導をする方法はないのかなという気がします。今はどうか分かりませんが,芸術拠点形成事業の助成のときに,たしか芸術監督,もしくはそれに類する職能のある人がいることというのが条件になっていました。それは,ある種の政策誘導の方法だと思ったのですが,何かそういう専門家がちゃんといる館が手厚く助成されて,手厚く助成される条件のためにはちゃんと専門家がいなければいけないみたいなことがあわせてあると,雇用の場も広がるし,人材育成にもつながるのではないかなと思います。
【宮田部会長】
 そうすると,そういう状態の一つの見本があることによって,大学のカリキュラムなども,それに合わせるような環境になっていくと思いますね。では,そろそろ時間なので,簡潔にお願いします。
【米屋委員】
 2点,今の政策誘導に関することですが,今,吉本委員がおっしゃったように,よいものを伸ばすための仕組みとしての何か政策を導入して,より分厚く資金も投入できるし,そのかわり専門性が高いと。ただ,この場合,気をつけなければいけないのは,地域の方からよく言われますが,今,まさにおっしゃったような「世田谷は特別」というのではなくて,「都市部はいろいろな選択肢があるからそういうことができるけれども,地域はまず使える場所がないんだ」というようなこともあるので,やはり階層的に政策を形成していくということが必要なのかなというのが,1点あります。それと,先ほど来,クリエイティブ・パートナーシップの話などが出ていましたが,これは文化だけの予算ではなくて,教育行政であったり,あるいは福祉に関わる労働行政であったり,そういった予算が全部投入されているものなので,共管でないと,政府を挙げての施策でないと,できないことです。しかも,やはり行政の手法をかなり変えないとできないことで,これをやるために,地方のイニシアチブを生かしながらも,今のように応募してきたものに応えるということではなくて,各地域の実情を踏まえて立案するという,中央集権とはまた違うのですが,地方と中央との関係をもっときっちりと構築した上で行われている施策なので,手が挙がった人にばらまくという行政手法では全く立ち行かないことだと思います。こういったことをやるときには,ある予算規模と数を限った上で,そこに集中して充実させる。それが成功したら数を増やすとか,より広げるとかというふうにしていかないと,うまくいかないのではないかなと思いますので,人材育成そのものではないですが,そういったことを傍らに置いて考えないと,こういった分野で働きたいという人が働ける環境が,できていかないのではないかなと思います。
【宮田部会長】
 ポイントはある程度。
【田村(和)委員】
 いろいろ今回の提案で,一つの大きなシステムみたいな話を考えるというふうになるのかもしれませんが,私は,むしろシステムを考えるのではなくて,やはり今の話で,例えばここで学んだ人がいて,ここで人材がいて,施設のいろいろな問題が解けるとすれば,そこにある物すごくぐちゃぐちゃした話は,やはり個人だと思います。その個人みたいなものがいろいろな形で動ける話と,それからこちら側にそれがぶつかっていったときに,いろいろな解決をしていくという能力が出てくる,発揮できるというふうになれば,それぞれの場所でしっかりしたことをやるということが,まず転換の第1ではないかと思います。そのつながりは物すごく千差万別だし,地方と都市によっても機会が違いますし,ですから,吉本さんがおっしゃったような形で一つのモデル的な発想で考えることも大切だけど,それは一つの戦略としてはっきり出すが,一つ一つの問題のところで,教える場所は教える場所として,どういうことを本当にきちんとすべきなのか。そこは,少し独断と偏見に満ちてもよいと思います。ですから,そういうところで一つ一つを明快にして,それを非常に強い形で出していくことによって,初めて現実の動きがついてくるのではないかなという感じが,今日の話を聞いていてしました。
【宮田部会長】
 そうですね。ありがとうございます。あくまでも,文化庁の提案の下に,私どもは集まらせていただいて,意見交換して構築しているわけなので,いわゆる政策優遇という部分で,私どもの話を文化庁の方でまとめたときに,大きな力になってもらえることを願っているということで,ちょうど時間が来ましたので,今日はこれで終わりたいと思います。この後,事務局から説明があります。
【清水芸術文化課長】
 <次回日程,追加配付資料の説明>
この後,宮田学長のお世話により,大学の施設などの見学を行いますので,時間の許す方は参加いただければと思っています。よろしくお願いいたします。
【宮田部会長】
 <学内見学の紹介>
ありがとうございました。
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