参考1

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第5期文化審議会文化政策部会でのこれまでの主な意見の概要

 本資料は,アートマネジメント人材の育成及び活用について,これまでの文化政策部会(第1回〜第3回)における主な意見の概要を整理したもの。

1.基本的な考え方

  • 芸術家は創造活動に専念し,芸術を支え広く発信していくためのアートマネジメント人材で役割分担し,バランスをとって発信力を高めることが必要。
  • アートマネジメントについては,学芸員のような資格がないため,どのような仕事をやっているのかわかりにくい。アートマネジメント人材がどういう場でどういう目標を持って活躍していくことができるのかを検討すべき。
  • アートマネジメントという言葉は十分根付いておらず,まだ市民権が得られていない状況であり,新しい言葉を検討すべきではないか。
  • マーケット側からアートマネジメントがどうあるべきかを議論していけばよく,需要を発掘して,需要にあった人材を育成することが必要。
  • 自治体の文化への投資は非常に減ってきており,マネジングの説得力のあるアートマネジメント人材がほしいというのが現場サイドとしての実感。
  • 需要と供給の両サイドをみながら議論する必要がある。
  • アートマネジメント人材のトレーニング,養成の問題を議論するにあたって,芸術団体の現状,アートマネジメント人材の数,その人達が持っているニーズや,抱えている障害,課題等々を把握することが必要である。

2.大学等における人材養成,現職研修

  • アートマネジメントを根付かせるため,大学における養成を進め,数を増やすことが必要。また,現職の育成も強化することが必要。
  • 大学の学部や大学院においては,全般的なアートの重要性やアートマネジメントの知識も含めちゃんと教育するところがあってほしい。
  • アートマネジメント人材の養成に当たっては,劇場などと積極的に提携し,高校生や大学生の時からその運営に参加することが重要。
  • 劇場へのインターンシップの依頼も増えてきているが,現場で働く職員は減っており,十分な対応ができないこともあるため,学生を受け入れた方がいいのかどうかも悩みも劇場側にはある。
  • 大学でアートマネジメントに関する講座等を置いているところもあるが,人集めの手段として人気のあるアートを使っているという傾向もある。学生が就職しても十分収入が見込める仕事が少ないため,現場に飛び込んで行きにくくなっている。
  • 長期インターンシップについては,ゴールを設定した上で,大学と現場をつなぐ期間として位置付けて進める方がよいのではないか。
  • 今現場に生き残っている人材は,何も仕組みがない時代に自分から飛び込んでいった世代。指示待ち世代が多くなってきた若者をどう育成するのかが課題。
  • 国立劇場などの専門的な芸術機関において,人材育成事業やプログラムにアートマネジメントの人材育成を加えることの可能性を検討すべきではないか。
  • アートマネジメントの仕事をしたいという人が少ない。どういう人がいるのかという情報も少なく,同じ人ばかりに仕事がいくような状況になっている。
  • アートマネジメントに関する人材養成,研修,文化施設等の情報が共有されていない。これらの情報を共有するための異業種,異分野の交流のためのプラットフォームとしての研究会を立ち上げることを進めることが必要ではないか。
  • 大学においてアートマネジメントの科目が単位としては高い確率で取得されているが,それが将来の職業選択に結びついていない。
  • 海外の大学と学生間交流を行うことにより,日本の学生が海外の恵まれた環境の中で経験する機会を作り,それを持ち帰って日本にどう活かすかを考えるような過程が必要。
  • アートマネジメントを学んでいることが自分の将来の目標に結びついていくビジョンが持てないと,ただアートマネジメントを学んでいるだけという教養主義的なところで終わってしまうのではないか。
  • 芸術活動のための予算を増やすため,芸術の価値について議員や役人に対して説明できる言葉を持つ人材を育成することが必要である。

3.文化施設等における活用

  • アートマネジメントの一番大事な部分として,アーティストの活動を育て,環境を整えていくことが重要。
  • 劇場に来る観客のニーズを汲み上げて演目を選ぶなど,アートマネジメント機能の充実のためには専門の職員,とくにトップにアートマネジメントに詳しい人材を配置することが重要。
  • 文化施設はたくさんできたが,芸術家の運営に任され,評価がなかったことが一番の問題。マネジメントの評価基準がはっきりしないため,むしろ指定管理者制度の中では効率的な管理がいいという状況になっている。
  • アートマネジメント人材が何かを学んだとして,それがその後何になるのかという目標が持てない状況にある。キャリアアップに向けた明確なビジョンをもてるようにすべき。
  • 地域の文化芸術の振興のためにも,アートマネジメント人材は各地のメディアとの連携を進めるべき。

4.舞台技術

  • 舞台技術のスタッフに光が当たっておらず,モチベーションが高まらない。
  • 昔の舞台技術者は先輩の背中を見て育ってきたが,舞台の在り方が80年代以降変わり,公立ホールの数がかなり増え,プロデュース公演でその都度スタッフを雇うという形に変化してきた結果,人が育たなくなってきた。
  • ハイテクの時代に専門職員がホールにいないというのは危険であり,舞台技術者の最低限の資格が必要ではないか。
  • 舞台技術者を育成していくためには,舞台技術者に求められる共通項を作り上げていくことが必要。
  • 舞台技術者は外注に頼るのではなく,雇用関係をしっかりして,舞台技術の継続性を確保することが重要ではないか。
  • 以前は旅公演をしていく中で人を雇って育成していったが,最近は効率化で職員数が減っており,人材育成も難しくなってきている。

5.日本型アートマネジメント

  • 日本はアマチュア文化が非常に盛んであるが,社会をリードするような力になっておらず,内側に閉じこもっており,これをどうやっていくかが課題。
  • 日本人のアーティストには,行政にお金は出してもらっても作品の中身や内容に口を出してくれるなという傾向があり,アーティストがアートマネジメントを求めていないという状況も実際にある。
  • 日本の芸術は個人が責任を負わなければならない環境の中で仕事をしており,それを周囲の人のシャドーワークで支えてきたという状況がある。
  • 日本でアートマネジメントのシステムを作り上げていくとき,近代市民を前提とした欧米モデルのアートマネジメントだけでは対応しきれなくなっており,日本の風土を踏まえたアートマネジメント概念の立て直しが必要。
  • 日本のアートマネジメントを欧米のように個人や団体に依存しないように制度化するためには,政策的に誘導するとともに,日本型のソフトランディングが必要。
  • 日本のアートマネジメントについて評価のない世界であったことが一番の問題である。
  • 医療などすべての分野でマネジメントということは重視されているが,日本においてはアートの部分についてそれが非常に欠けていた。

6.国と地方公共団体の役割

  • 文化行政の風土環境として,地域社会における文化行政のガバナンスが欠如しており,ガバナンスそのものの在り方が問われるべき。
  • 地域においてアートマネジメントがうまくいっているところは,行政の中に地域で芸術をどう生かすかをよく捉えている人がおり,目立たず活動しているところである。
  • 国や地方公共団体で文化行政を担う担当者に文化振興やアートマネジメントに関する専門的な知識や理解のある人材を配置することが必要。
  • 国として評価基準を明確化するとともに,よい評価のものには支援を行っていくことが必要。評価がはっきりすると,評価を上げるために質の良い人材を採ることにつながっていく。
  • アートマネジメントの評価については,国際的なフェスティバル等への参加をちゃんと評価して何らかの手当を出すとか,国として10年後には必ず大きなフェスティバルには日本も参加するなどの目標を立てる方がよいのではないか。
  • 国がアートマネジメント人材の育成を目指すのであれば,アートマネジメント人材が理想的な職業人の一つであることをPRすべき。
  • 文化庁の助成に併せて,地方はマッチンググラントを打ち出すべき。資金集めができる人材が必要になり,アートマネジメント人材の循環ができてくる。
  • 地方では文化施設を建てて終わりというところが多い。地方公共団体の予算の何%か,1%でも文化芸術に使うことにすれば,確実にアートマネージャーが必要になる。

7.その他

  • 優秀なプロデューサーや舞台技術のスタッフに賞を与えるなど,裏方で評価が低いところに光を当てていくことが必要。
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