参考2

参考2


1.調査の目的

教育現場や文化施設等におけるアートマネジメント人材の育成と活用について状況を把握し,文化審議会文化政策部会における議論の参考とすることを目的として調査を実施。

2.調査方法等

(1)調査対象

  1. (1)文化施設(平成14年~19年度文化庁芸術拠点形成事業採択施設,社団法人公立文化施設協会加盟文化施設等):214施設,うち回収135施設(回収率63%)
  2. (2)実演団体(平成19年度文化庁芸術創造活動重点支援事業採択団体):168団体,うち回収73団体(回収率44%)
  3. (3)NPO法人(社団法人公立文化施設協会の公立文化施設における指定管理者制度導入状況に関する調査のうち施設の管理者となっているNPO法人,行政との協働歴があるNPO法人):111法人,うち回収41法人(回収率37%)
  4. (4)大学(学部・大学院),専門学校:165校,うち回収74校(回収率45%)

(2)調査方法

対象機関に調査票を郵送し,記入後,ファックス又はEメールにより回収

(3)実施期間

平成19年10月~11月

(4)有効回答

323件 有効回答率49%

(5)主な調査項目

(1) 文化施設,実演団体,NPO法人

  1. ・各機関の職員数,アートマネジメント人材の人数,職種
  2. ・アートマネジメント人材の採用時期,選考方法
  3. ・アートマネジメント人材の雇用形態
  4. ・機関の長のアートマネジメント経験の有無
  5. ・ボランティアの活用状況
  6. ・アートマネジメント人材に必要な資質・能力
  7. ・アートマネジメント人材の資質・能力の向上のための取組
  8. ・地域住民,地元自治体との交流・連携・協働
  9. ・大学等に期待すること
  10. ・国や地方自治体に期待すること
  11. ・今後の課題

(2)大学(学部・大学院),専門学校

  1. ・アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等の開設の有無
  2. ・アートマネジメントに関する体系的・総合的なカリキュラムの有無
  3. ・文化施設等への実習・インターンシップの実施状況
  4. ・専任教員の配置状況
  5. ・一学年当たりの学生数,実務経験がある学生の割合
  6. ・アートマネジメント関連の業務に就職する卒業数の割合
  7. ・地域住民,地元自治体との交流・連携・協働
  8. ・文化施設等に期待すること
  9. ・国や地方自治体に期待すること
  10. ・今後の課題

3.調査結果のポイント

(1)文化施設,実演団体,NPO法人

  • 各機関の職員数,アートマネジメント人材の人数,職種
  • 各機関の平均の職員数は,全職員(常勤・非常勤・臨時職員を含む)23.5名,アートマネジメント人材13.7名である。機関全体の68%にアートマネジメント人材が置かれている。
    アートマネジメント人材の内訳は,舞台技術者4.3名,劇場制作者・劇団制作者2.5名,企画・プロデューサー2.2名,立案・構成・ディレクター2.2名,営業,渉外,資金調達担当1.7名などとなっている。

  • アートマネジメント人材の採用時期,選考方法
  • アートマネジメント人材の採用時期については,定期採用は15%に止まり,必要に応じ随時採用が85%に上っている。選考方法は,面接71%,書類選考52%,実技16%などとなっている(複数回答)。

  • アートマネジメント人材の雇用形態
  •  アートマネジメント人材の雇用形態については,正職員62%,臨時職員21%,非常勤職員19%などとなっている(複数回答)。

  • 機関の長のアートマネジメント経験の有無
  •  各機関の長のアートマネジメント経験については,38%がアートマネジメントに関する職種の勤務経験があるとしている。

  • アートマネジメントに関する業務のボランティアの活用状況
  •  アートマネジメントに関する業務をボランティアのような形で,アーティストやその他外部の関係者が実施している状況については,42%の機関でボランティアを活用しているが,機関内の職員ですべての業務を実施しているとする機関が半数以上となっている(55%)。

  • アートマネジメント人材の資質・能力の向上のための取組
  •  アートマネジメント人材の資質・能力の向上のため,70%の機関で何らかの取組が行われており,「機関内職員に対する定期的な研修の実施」(50%),「他機関と共同での職員対する研修の実施」(44%),「アートマネジメントを学習する学生の実習・インターンシップの受入れ」(40%)などとなっている(複数回答)。

  • 地域住民,地元自治体との交流・連携・協働
  •  地域住民,地元自治体との関係については,85%の機関で何らかの交流・連携・協働の取組が行われており,「地域住民との共同企画の実施」(64%),「地元自治体との共同企画の実施」(61%)などとなっている(複数回答)。

  • 大学等に期待すること
  •  大学等に期待することとしては,「文化施設等との共同企画の積極的な実施」(63%),「現場を知る専任教員を増やすこと」(59%),「専門家の派遣・交流」(50%)などが求められている(複数回答)。

  • 国や地方自治体に期待すること
  •  国や地方公共団体に期待することとしては,「文化施設等に対する財政支援の充実」(78%),「文化芸術に関する社会的な普及啓発活動の推進」(73%),「アートマネジメントに関する知識を持った職員の配置」(52%),「文化施設等に対する優遇税制措置」(52%)などが求められている(複数回答)。

  • 今後の課題
  •  今後の課題としては,「アートに子どもの頃から触れる機会を増やすこと」(67%),「他の文化施設等との連携・ネットワークの強化」(53%),「文化施設等におけるアートマネジメント専門職の設置」(52%)などが挙げられている(複数回答)。

(2)大学(学部・大学院),専門学校

  • アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等の開設の有無
  •  アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設していると回答があった学校は48校,うち専ら舞台技術にかかる講座,専攻,コース等を開設していると回答があった学校は6校である。

  • アートマネジメントに関する体系的・総合的なカリキュラムの有無
  •  アートマネジメントに関する体系的・総合的なカリキュラムを設けている学校は29校で,アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設していると回答があった学校の60%となっている。

  • 文化施設等への実習・インターンシップの実施状況
  •  劇場・ホール等への実習・インターンシップをプログラムの一つとして取り入れている学校は28校で,アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設していると回答があった学校の58%となっている。実習・インターンを実施している場合の実習期間は,平均で20日である。

  • 専任教員の配置状況
  •  アートマネジメントの講座,専攻,コース等に専任教員を配置している学校は27校で,アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設していると回答があった学校の57%となっている。講座,専攻,コース等全体に占める専任教員の割合は,44%である。

  • 一学年当たりの学生数,実務経験がある学生の割合
  •  アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等に在籍している1学年当たりの学生数は,平均で38名である。
    また,アートマネジメント関連分野での実務経験がある学生の割合は,25%となっている。

  • アートマネジメント関連の業務に就職する卒業数の割合
  •  アートマネジメント関連の業務に就職する卒業生の割合は,24%となっている。

  • 地域住民,地元自治体との交流・連携・協働
  •  地域住民,地元自治体との関係については,91%の大学等で何らかの交流・連携・協働の取組が行われており,「地域住民向けの公開講座の開設」(63%),「地元自治体との共同企画の実施」(63%)などとなっている(複数回答)。

  • 文化施設等に期待すること
  •  文化施設等に期待することとしては,「アートマネジメントを学習した学生の積極的な採用」(88%),「実習・インターンシップの積極的な受入れ」(88%),「アートマネジメント専門職の設置」(61%)などが求められている(複数回答)。

  • 国や地方自治体に期待すること
  •  国や地方公共団体に期待することとしては,「アートマネジメント教育を実施する大学等への支援」(67%),「インターンシップ受入れの充実」(65%),「文化芸術に関する社会的な普及啓発活動の推進」(55%),「文化施設等に対する財政支援の充実」(55%)などが求められている(複数回答)。

  • 今後の課題
  •  今後の課題としては,「卒業生の就職先の開拓」(76%),「インターンシップなどの現場研修の強化」(63%),「アートに子どもの頃から触れる機会を増やすこと」(49%)などが挙げられている(複数回答)。

4.調査結果の詳細

(1)文化施設,実演団体,NPO法人

○各機関の職員数,アートマネジメント人材の人数,職種

(注)(1)及び(2)(内訳を含む)は,1機関当たりの平均の職員数
(1)全体の職員数(常勤・非常勤・臨時職員を含む) 23.5名
(2)アートマネジメント人材全体 13.7名
(内訳)
企画・プロデューサー 2.2名
立案・構成・ディレクター 2.2名
劇場制作者,劇団制作者 2.5名
マーケティング,広報担当 1.6名
営業,渉外,資金調達担当 1.7名
舞台技術者 4.3名
その他 1.6名
(2)アートマネジメント人材を置いている機関数
及び文化施設等の全体に占める割合
150機関
68%

○アートマネジメント人材の採用時期,選考方法

(採用時期)
定期的な採用 必要に応じ随時採用
アートマネジメント人材全体 15% 85%
(内訳)
企画・プロデューサー 14% 86%
立案・構成・ディレクター 16% 84%
劇場制作者,劇団制作者 14% 86%
マーケティング,広報担当 13% 87%
営業,渉外,資金調達担当 21% 79%
舞台技術者 16% 84%
その他 11% 89%
(選考方法)
書類選考 面接 実技 その他
アートマネジメント人材全体 52% 71% 16% 29%
(内訳)
企画・プロデューサー 46% 66% 12% 33%
立案・構成・ディレクター 49% 65% 17% 30%
劇場制作者,劇団制作者 53% 75% 16% 25%
マーケティング,広報担当 54% 76% 9% 28%
営業,渉外,資金調達担当 54% 75% 9% 26%
舞台技術者 53% 65% 26% 29%
その他 57% 78% 22% 26%

(注)複数回答のため,合計が100%超となる

○アートマネジメント人材の雇用形態

正職員 臨時職員 非常勤職員 その他
アートマネジメント人材全体 62% 21% 19% 14%
(内訳)
企画・プロデューサー 64% 13% 18% 15%
立案・構成・ディレクター 67% 20% 20% 10%
劇場制作者,劇団制作者 67% 28% 21% 8%
マーケティング,広報担当 61% 22% 16% 10%
営業,渉外,資金調達担当 63% 20% 16% 15%
舞台技術者 54% 22% 21% 22%
その他 57% 31% 26% 20%

(注)複数回答のため,合計が100%超となる

○機関の長のアートマネジメント経験の有無

アートマネジメントに関する職種の勤務経験あり
機関の長 38%
(内訳)
企画・プロデューサー 73%
立案・構成・ディレクター 53%
劇場制作者,劇団制作者 33%
営業,渉外,資金調達担当 33%
マーケティング,広報担当 31%
舞台技術者 27%
その他 7%

(注)内訳については「勤務経験有り」と回答したものの内訳の割合である

内訳については複数回答のため,合計が100%超となる

○アートマネジメントに関する業務のボランティアの活用状況

アートマネジメントに関する業務をボランティアのような形で,アーティストやその他外部の関係者が実施している割合

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
(1)機関内の職員ですべての業務を実施 55%
(2)ボランティアを活用 42%
(3)公演や企画展ごとに臨時職員を雇用 13%
(4)その他 16%

・ボランティアを活用している場合の内訳

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
立案・構成・ディレクター 43%
企画・プロデューサー 42%
舞台技術者 41%
劇場制作者,劇団制作者 34%
マーケティング,広報担当 32%
営業,渉外,資金調達担当 28%
その他 11%

○アートマネジメント人材に必要な資質・能力

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
会計,経営,マーケティングなどでの実務経験があること 55%
大学(学部・大学院)や専門学校などでアートマネジメント関連科目の学習経験があること 47%
実演家としての経験があること 42%
大学(学部・大学院)や専門学校などで芸術科目の学習経験があること 38%
著作権や雇用・労働などの法律関連での実務経験があること 31%
その他 32%

○アートマネジメント人材の資質・能力の向上のための取組

行っている 70%
特に行っていない 30%

・取組を行っている場合の内訳

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
機関内職員に対する定期的な研修の実施 50%
他機関と共同での職員対する研修の実施 44%
アートマネジメントを学習する学生の実習・インターンシップの受入れ 40%
アートマネジメントに関する公開講座の実施 15%
その他 34%

○地域住民,地元自治体との交流・連携・協働

行っている 85%
特に行っていない 8%
検討中 7%

・交流,連携,協働を行っている場合の内訳

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
地域住民との共同企画の実施 64%
地元自治体との共同企画の実施 61%
地域住民対象のアートに関する公開講座の実施 37%
地元企業との共同企画の実施 30%
その他 27%

○大学等に期待すること

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
文化施設等との共同企画の積極的な実施 63%
現場を知る専任教員を増やすこと 59%
専門家の派遣・交流 50%
インターンシップなどの現場研修の強化・充実 44%
アートマネジメントのカリキュラムの充実 42%
一般向けのアートマネジメント公開講座の開催 35%
アートマネジメントを学ぶ学生の増大 21%
アートマネジメントを教える大学等を増やすこと 20%
教育機関間のネットワークの積極的な実施 20%
その他 7%
期待できない 3%

○国や地方自治体に期待すること

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
文化施設等に対する財政支援の充実 78%
文化芸術に関する社会的な普及啓発活動の推進 73%
アートマネジメントに関する知識を持った職員の配置 52%
文化施設等に対する優遇税制措置 52%
研修などの人材養成プログラムの開発 39%
アートマネジメント関連の国家資格制度の検討 24%
アートマネジメント教育を実施する大学等への支援 23%
既存の研修会の充実 21%
文化行政担当者の講師派遣 17%
産学官連携の研究プロジェクトの実施 17%
その他 11%
期待できない 1%

○今後の課題

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
アートに子どもの頃から触れる機会を増やすこと 67%
他の文化施設等との連携・ネットワークの強化 53%
文化施設等におけるアートマネジメント専門職の設置 52%
トップマネジメントの文化芸術認識の強化 47%
地域住民や地元自治体との連携強化 45%
アートマネジメントに携わる人材の社会的地位の向上 44%
アートマネジメントに携わる職員に対する研修機会の拡充 41%
研修機会の地域間格差の是正 20%
その他 7%

(2)大学(学部・大学院),専門学校

○アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等の開設の有無

(注)学校数は,学部,大学院,専門学校の累計
アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設している学校数 48校
うち,専ら舞台芸術にかかる講座,専攻,コース等を開設している学校数 6校
検討中の学校数 1校

○アートマネジメントに関する体系的・総合的なカリキュラムの有無

アートマネジメントに関する体系的・総合的なカリキュラムを設けている学校数 29校(60%)
検討中の学校数 2校(4%)

(注)学校数は,大学(学部・大学院),専門学校の累計

( )内はアートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設している学校数(48校)との割合

○文化施設等への実習・インターンシップの実施状況

(1)劇場・文化ホール等への実習・インターンシップをプログラムの一つとして取り入れている学校数 28校(58%)
実習期間 20日
(2)実習・インターンシップを実施していない学校数 11校(23%)
(3)実習・インターンシップの実施を検討中の学校数 4校(8%)
(4)実習・インターンシップを取り入れるつもりはない学校数 1校(2%)

(注)学校数は,学部,大学院,専門学校の累計

実習期間は,実習・インターンシップを実施している場合の平均の日数
( )内はアートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設している学校数(48校)との割合

○専任教員の配置状況

(1)アートマネジメントの講座,専攻,コース等に専任教員を配置している学校数 27校(56%)
講座・専攻・コース等全体に占める専任教員の割合 44%
(2)専任教員は置いていないが,本学の教員が教授・指導に当たっている学校数 9校(19%)
(3)専任教員は置いておらず,他大学等の教員や企業・団体の有識者が教授・指導に当たっている学校数 6校(13%)
(4)専任教員の配置を検討中の学校数 0校(0%)
(5)専任教員を配置していない学校数 2校(4%)

(注)学校数は,大学(学部・大学院),専門学校の累計

( )内はアートマネジメントに関する講座,専攻,コース等を開設している学校数(48校)との割合

○一学年当たりの学生数,実務経験がある学生の割合

(注)1大学等当たりの平均の学生数,割合
アートマネジメントに関する講座,専攻,コース等に在籍している1学年当たりの学生数 38名
アートマネジメント関連分野での実務経験がある学生の割合 25%

○アートマネジメント関連の業務に就職する卒業数の割合

(注)1大学等当たりの平均の割合
アートマネジメント関連の業務に就職する卒業数の割合 24%

○地域住民,地元自治体との交流・連携・協働

行っている 89%
特に行っていない 7%
検討中 4%

・交流,連携,推進を行っている場合の内訳

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
地域住民向けの公開講座の開設 63%
地元自治体との共同企画の実施 63%
地域住民との共同企画の実施 39%
地元企業との共同企画の実施 30%
その他 17%

○文化施設等に期待すること

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
アートマネジメントを学習した学生の積極的な採用 88%
実習・インターンシップの積極的な受入れ 88%
アートマネジメント専門職の設置 61%
大学等との共同企画の実施 55%
講師の派遣 28%
その他 6%
期待できない 0%

○国や地方自治体に期待すること

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
アートマネジメント教育を実施する大学等への支援 67%
インターンシップ受入れの充実 65%
文化施設等に対する財政支援の充実 55%
文化芸術に関する社会的な普及啓発活動の推進 55%
アートマネジメントに関する知識を持った職員の配置 48%
文化施設等に対する優遇税制措置 44%
研修などの人材養成プログラムの開発 39%
アートマネジメント関連の国家資格制度の検討 36%
産学官連携の研究プロジェクトの実施 30%
文化行政担当者の講師派遣 23%
既存の研修会の充実 17%
その他 5%
期待できない 0%

○今後の課題

(注)複数回答のため,合計が100%超となる
卒業生の就職先の開拓 76%
インターンシップなどの現場研修の強化 63%
アートに子どもの頃から触れる機会を増やすこと 49%
アートマネジメントに関する基礎教育の標準化 43%
アートマネジメントに詳しい専任教員を増やすこと 41%
アートマネジメントの教科書的書籍の編纂 30%
アートマネジメントを学ぶ学生を増やすこと 27%
アートマネジメントを教える大学等を増やすこと 14%
その他 5%

アートマネジメント調査についての自由記述一覧

1 文化会館等

  • アートマネジメントの学問的教化は,これを職業としない市民にもその存在を示し,また,文化芸術啓発の真の目的を一般化するものとして,アートマーケティングの根幹的機能を果たす。文化芸術の果たす社会的役割に理解を示し,ひいては,職業に選ぶ市民が増えることに何の不都合はない。さらに,学問と現場の相互交流は,医学生とインターンと同様,必要不可欠である。
  • アートマネジメント人材を育成しても,受け入れ先となる機関(公共ホール等)が不足している現状では,失業者を増やすだけである。
  • 学校教育にも一歩踏み込んだアートマネジメントの企画充実を期待する。
  • 座学より現場での経験がものをいう仕事であるため,就職採用の需要が大学生の供給と一致せず,需要が圧倒的に少ない。長期的展望に立った事業計画が立てられるようにアートマネジメント担当職員の安定した雇用が守られる制度的保障を希望する。
  • ここ10年間でアートマネジメントを学ぶ機会は大幅に増加している。しかしながら,現場との乖離は,ますます深刻になっているように感じられる。大学では,政策と現場で活きるテクニックなど,理論と実践の両輪を積極的に教える必要性や履修した学生がその力を発揮できるような地位の向上が早急に求められている。
  • アートマネジメントは,まだ市民権を得ていない。アートマネジメントに関わる人材に現在欠けている知識,行動は経営,会計をはじめとする一般的な組織運営上の知識及び一般社会での行動常識と思料する。このため,3年程度の一般企業での職務経験を経て,アートマネジメントの基礎を体得してから現場で活躍するのが望ましい。
  • 文化施設の自主企画事業(特に人材育成)に対する助成の充実・強化をすべき。
  • アートマネジメントには,行政サービスの一部分として捉えた文化施設等の運営,もう一つは民間の芸術団体の支援の方策である。民間芸術団体の場合は,入場料収入の確保や資金集めである。このことは大学を含めた学校教育で教育することは不可能である。実際の活動の中でノウハウを学ばなければならない。アートマネジメントを学ぶ人材をどうやって見つけるか,彼らの学習期間の経費負担などが議論されるべき。
  • 地方の小都市では自主的な芸術公演は難しいのでアートマネジメントのスタッフの確保はできないのが現状である。
  • 文化施設は,地域の文化状況を反映しているため,このアンケートを基礎にヒアリングを実施したほうが良い。
  • 人材育成を行うための安定的な環境の整備が必要である。人材育成プログラムを構築していくためには,文化施設における指定管理者制度の不具合や問題を解決しないことには,その取り組みは難しいといえる。この問題は,地域リーダーを育成していく上で大きい障壁である。
  • 指定管理者制度により文化ホールが運営される場合は,3年或いは5年程度の管理期間終了後,次の指定期間の選定の際,管理を行えなくなるという可能性があることから,長期的展望に立った企画の立案,事業実施や人材の確保・育成が非常に困難。
    また,制度導入の際には,経費削減の側面が大きくクローズアップされ,実際に管理料も従前の管理委託等に比較し大幅に減額された。更に,自治体からの人的支援も打ち切られる等,施設運営の環境は非常に悪化しているのが文化会館を取り巻く環境である。このため,文化会館としての「アートマネジメント人材の育成と活用」への取り組みが困難な状況にある。

2 実演団体

  • 「文化と経済」は国家の両輪であり,真に知的文化力のある国づくりこそ,豊かな未来と国際的信頼をつくる原動力となる。アートは子どもの時から,そして学生にはこれまでの体験を伝え,世のために志を高く生きていくことを教えていただきたいと日々取り組んでいる。このようなアンケート調査は,何か光が少し射してきたのかと嬉しく感じている。
  • アートマネジメントの仕事は非常に多様性がある。大切なことは「芸術」そのものに奉仕する能力である。これは一つの才能であって学べるものではない。一般的にこうした学部が大学等にできること自体疑問が残り,まして,国からの資格等は意味がない。ただ,文学,芸術,音楽,映像等広い知識と興味を持つ能力。それを持続できる精神力をそなえること。語学(英語,フランス語等)と経理はできた方がよい。
  • 日々の活動の中で学び,その積み重ねの中で現在があるので,当団体独自のアートマネジメントがあり,一般的なマニュアルは通用しないと思う。
  • アートマネジメント人材の育成は重要であると考える。日本における現在の芸術団体の状況を考えると,先ず第一に芸術団体の基盤強化が行われなければ,アートマネジメント人材を育成しても実務が伴わないといえる。アートマネジメント人材には,多くの現場経験が最重要と考える。
  • 真の芸術が判る人がこの職種につくべきだ。単なる営業マン,学者では務まらない。
  • アートマネジメントの重要さを認識すると,本物のアートマネジメントを知っている人が教育の立場にいないのは問題。外国に何年住んでいた,資格がある,語学が得意,これらが何の役にも立たないということを知るべきだと思う。
  • 小・中・高の芸術教育に,アートマネジメントの存在を知らせる創造,発信できる感性を持った教育者が欲しい。
  • 行政窓口,公営の文化施設の現場で担当者が次々に異動すると,また,ゼロからの話し合いになるので,慣れた人が長くその場所にいると有り難い。
  • 公共ホールの職員が異動しないような専門家の配置を検討してもらいたい。
  • 貧しい劇団(当方含む)は,アートマネジメントに関わる現在の状況をただちに理解できるノウハウ,データのアーカイブを構築して,全体がそれを共有できるシステム,方法を開発してもらいたいといつも思っている。
  • 職員の選考方法について,舞台制作のすべてを把握し,企画・立案・プロデューサーなどを行うには,10年以上の舞台経験が必要であると考えるので,劇団員の中から人材を選考している。
  • 伝統音楽は危機的状況にある。演奏家のごく一部のほかは生活できない。国の文化政策に百年の計を望みます。
  • 能楽については,専門的な知識がある程度必要であることから,マネジメントスタッフは関西においてほとんどいない状態。能楽師自らが企画主催している場合が多く,広く普及していくにはプロデューサーやマネジメントがもっと必要。
  • 職員有りが前提ではなく,当会には職員雇用の財力が無く,会員相互が協力して作り上げている協会が少なくない。専門職員がいない団体では,伝統芸能,日本古来の芸能が消える心配がある。

3 NPO法人

  • 本来,「アートマネジメント」とは網の目のように張り巡らせられたシステムであり,単に人材育成や資格のための教育機関の拡充だけでは,文化の欠落を起源とする諸問題の解決には決して至らない。必要なのは,民間の活力を用いつつも市場原理に偏らない「非営利の文化産業市場」活性に向けた「ソフトに重点を置いた公共事業スキーム」の開発など,国をあげての文化振興戦略が必要。
  • 公共文化施設を所管する立場の行政職員のアートマネジメントに対する認識の向上が必要で,数年単位で入れ替わる行政職員と協働するためには,行政側に文化施設側と同等の認識と情熱を持つ人材,決定権限を持つ行政職員など,これらの人材がいる無しで,その自治体の文化振興が将来的に明るいかどうかにつながると思う。また,全国的に自治体単位で文化事業にかける予算の縮減が進んでいると思う。昨今の暗いニュースを聞くにつけ,特に子どもたちの成長に何が必要なのか,を真剣に考える必要を感じ,文化,教育,福祉との協働を進めることにより,他人を思いやる優しく豊かな心を持った人間形成につながると考えます。海外では「クリエイティブ・パートナーシップ」のような取り組みを行い,成績向上・意識の向上などの成果を挙げていると聞きます。日本においても,是非,予算化をして文化と教育,福祉をつなげる取り組みをより一層推進してほしい。
  • 地域の中でアートが果たす役割は重要であるとの設問にとても共感するところであるが,そういった場を支える人材のおかれている状況は厳しいものである。このことは,大変重要な問題である。この問題の解決方法として有効なのは,「意味と予算のある現場」が増えることなのではないか。そのためにも,国をあげての地域文化振興の構造改革が必要。
  • 中心市街地の空洞化克服を含めて,我が国でもアートでまちづくりの時代の到来と考える。地元にある歴史と資産をアートの視点から捉え直し,フランスのナント市のように,市民参加と行政との協働のまちづくりや産業おこしをすべき。
  • 地方の足下は様々な「文化の欠落」を起源とした問題に喘いでいる。いまだ地方行政の施策は「経済の発展」ですべての解決が図れるかのようにスクラップ&ビルドを繰り返し,また芸術文化の専門性の低さにより付け焼き刃的事業の「委託契約」の機会を活用し,きちんとした権限委譲もない中,行政が求める成果と社会が求める実質的な成果の両立を目指し,苦戦しているのが実態である。
  • 全国各地の文化施設等には,恐らく熱い想いを抱きつつ施設所管の行政側の視点,認識の低さにより,その考えが生かされず,埋没を余儀なくされている人材が数多く存在するのではないか。この人材を掘り起こし,各自治体単位ででも適材適所に配することで国の文化施策がより生かされるのではないか。同時に,都道府県単位,特に地方の道・県単位での「アートマネジメント」研修会を定期的に実施し,行政の文化担当局職員を含めた研修機会の創出を希望する。
  • 地方ではアートマネジメント人材に乏しいため,文化行政で投入した資源があまり有効に効果を生んでいないように思います。投入した資源が効率的な成果につながるように,優秀なアートマネジメント人材を育て,継続して活動できる場をつくることこそが,現時点での最優先課題だと考えます。
  • 芸術文化の支援拠点に多様性があるのは首都圏や関西圏に限られている。地方に行くほど支援拠点の数は減り,最終的にはアートマネジメント人材と呼べる人材もいないような地域がほとんどである。
  • 基本的なインフラの整備が整った今こそ「公共事業のハードからソフトへの移行」を国をあげて進めてもらいたい。具体的には英国を例とする行政とは独立した民間専門組織「アーツカウンシル」のような恒常的に調査,企画立案,ロビー活動を行う組織が一定の権限のもとに設立され,全国的につながることで,これまで分離していた美術館などの行政文化施設と非営利の民間施設とがともにシステムとして機能することとなる。これにより,地域文化にまつわる人材を育てるための「非営利の文化産業市場」が生まれ,より確かな土壌をつくることになると思う。
  • アートマネジメント人材は,施設や企画の規模,職責に応じて,適切な年収になるような人件費単価の設定が必要ではないか。キャリアのステップアップをある程度明確に見える形にしておくことは人材を確保するために欠かせないと思う。政府機関がある程度の数字を示せば,自治体の文化行政担当部署も財政担当部署に対して予算の根拠が示しやすい。
  • 行政の文化振興担当部署では,定期異動の制度があるため,専門職としてのアートマネジメント人材を育成することは難しい。
  • アートマネジメントという言葉が一人歩きし,カタカナ職業のようにもてはやされている現状の改善。アートマネジメントは下支え業務であることの認識強化が必要。
  • アートセラピー等資格制度の検討を行って欲しい,地域での実施。働く場として,確立して欲しい。
  • アートマネジメント人材にとって,もっとも重要で専門性が高い資質は芸術表現やアーティストという人種に対する理解見識であり,これは,4,5年では育成できない。地域の舞台芸術の状況を知り,適切な施策を打てるような人材を育成するためには10年はかかる。通常の企業にあるマーケティング,広報,営業,渉外,資金調達という業務のスキルはアートマネジメント人材にも必要なスキルであるが,この理解見識の上にない限りは,アートマネジメント人材というよりは事務員に過ぎない。

4.大学等

  • 国の政策としてアートマネジメントの人材を育成することはきわめて重要である。アートマネジメント関連の国家資格制度を早期に実現して欲しい。
  • 舞台芸術の振興を目的とした国や行政の働きが欲しい,舞台作品を観る機会が今の日本には足りない。舞台芸術作品を日常的に観ることが増えると,おのずから作品の振興につながる。ヨーロッパ等は学校教育などで子どもの頃から身近に感じられる。
  • 行政機関によるアート支援活動は,「アートをどのように位置づけるか」という基本的な問題を解決しないままに行われているように思える。地方自治体のからむアートマネジメント関連の活動も同様で,アートに対する基本的認識を議論・確認することなく,結局は「参加者が盛り上がればいい」という程度の意識を持って行われているのではないか。こうした情況で我が国にアートマネジメントの必要性を広く認識させることは困難であろうと思われる。問題の解決のためには,日本の社会がアートとどのように向き合い,アートをどのように生活の中に位置づけるかを明確にしようという批判的な態度が不可欠であるし,その前段階として,アートを評価する感性・審美眼を育成することが前提となる。行政が影響力を発揮できる教育現場において,アート(音楽,美術等)の重要性を生徒・学生たちに適切に認識させることが,解決の糸口になろう。
  • 芸術の創造,教育,分配(マネジメント)を経験する中で,マネジメントに関わる人材養成を進めるために,産官学の連携の必要性を感じている。芸術が創造され,鑑賞されて社会的営みとして成立する要素を全て経験している中で,常に現場での実践を重視した教育を心がけています。創造現場に従事する者は,寡黙な方が多く時間に追われて仕事を遂行する事を最優先します。そういう意味で創造現場のプロの方の意見が反映されなければ,アートマネジメントに関わる人材育成は現場とはかけ離れたものとなってしまう。様々な協議の場に実演家を参加させることを希望する。
  • アートマネジメントと言っても,現在のところ単なる呼び産業に近いところから,もっとラディカルな文化創成に関わる立場まで,そのとらえ方は様々であるように見受けられる。まずは,アートマネジメントという領域とその学を確立していくことが急務であろう。
  • 本学でも「アートマネジメント」という科目を置き,他にも演習活動の一環として,ミニギャラリーを用いて,学生の企画で展示など実施している。しかし,アートマネジメントという言葉自体が普及していないので,履修者も増えない。また,卒業生の進路としても,就職が無く魅力が薄いのではないか。
  • アートマネジメントの人材育成には,専門諸領域の幅広い知識が前提として必要であり,それに実務経験を加えることで初めて可能となる。そのため,欧米では,かつては学部で行われてきたこともあったが,現在では,殆ど大学院の教育プログラムへ移行している。我が国では今後はその方向が追求されるべきである。間違っても,学部の資格課程(例えば,学芸員課程)のような形はとるべきではない。
  • アートマネジメントやアートプロデュースに関連した人材育成を学芸員課程の中で幅広く受け入れ,資格化し,養成できれば芸術制作の領域を広げられるとともに,多くの人々に的確なアプローチが可能になるのではないか。
  • 学生に学習する機会は与えられているが,次のアートマネジメントの担い手を育てるという観点で考えると,誰かに教えるという機会が全く不足している。教えることは最大の学習機会であり,学習の財産であるといえるのではないか。
  • 専門学校という立場から,現場スタッフの育成に注力している。ディレクター,マネジメント職は総合性が求められ,2年という期限ではカリキュラム体系が作れない。
  • アートマネジメントには興味があり,日本にとって必要な人材と考えているが,本学では教員確保に対して,また,施設に関しても負担が多すぎる。
  • アートマネジメント講座を置く大学に法的・財政的支援をお願いしたい。
  • 日本古来の音楽文化も大切であるが,新しい音楽文化にも積極的に目を向けてもらいたい。音楽産業の発展は劇場・ホールの催し物の開催に繋がります。音楽・文化の幅広い啓発活動や優遇措置を期待します。
  • アートマネジメントというと一般的に芸術に関わる業務遂行者と捉えがちで,助成システムや税制・運営上の問題に重点がおかれている感が強い。しかし,これからのアートマネジメントは業務も大切であるが,日本の芸術創造の方向性を模索し,芸術家の良きリーダーシップがとれるような創造面を理解し得るアートマネジメント者育成を目指す方策をもっと前向きに考慮して欲しい。そのためにも文化庁の関係者が各領域の芸術に積極的に触れ,芸術界の現状や動向を自ら理解を深めてほしい。
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