第5期文化審議会文化政策部会第5回議事録

1 日時 平成19年12月10日(月) 13:00〜15:00
2 場所 東京會舘丸の内本館 ゴールドルーム
3 出席者
(委員)
尾高委員 唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 宮田委員 富澤委員 パルバース委員 米屋委員
(事務局)
青木文化庁長官 高塩文化庁次長 尾山文化部長 清水芸術文化課長 他
(欠席委員)
三林委員 山内委員 吉本委員
4 議題

(1)アートマネジメント人材等の育成及び活用について ○中間まとめに向けた論点整理(2)

(2)その他

【宮田部会長】
 第5期文化政策部会第5回を開催します。第4回は東京芸大の石膏室で開催したので,そこをのぞいていた教員から,その後,何をやっていたのかという,大変な反響があり,説明すると,「それは惜しかった,学生をあの中にぜひ参加させてもらい,多くの話を聞かせてもらったらとてもよかったのに」という話とともに「ああいうドラスティックなことはどんどんやってください」という激励もいただきました。先生方には,上野の森を散策することで,大変な思いもされたかもしれませんが,楽しく2時間を過ごしていただけたなら幸いです。議論的にも大変中身の濃い,また違った議論ができた気がしましたので,そういう意味では,よかったのかなと思っています。さて,それでは,論点整理へ入っていきますが,本日は,前半,中盤,後半と分けて審議をしたいと思います。まず始めに,配布資料の確認をお願いします。
【清水芸術文化課長】
 <配付資料の確認>
【宮田部会長】
 ありがとうございます。論点整理,中間報告ですが,まず本的な考え方を行い,それから現状と今後の課題について中盤で行いたいと思います。後半には,取り組むべき政策の今後の方向性について審議いただきたいと考えています。前回,審議いただいた内容を加えたものが資料3のアートマネジメント人材の育成及び活用(論点整理案その2)ですが,これについて,事務局から説明してください。
【清水芸術文化課長】
 それでは,資料3について説明します。ただいま部会長からも説明がありましたとおり,前回の議論を踏まえ,ご指摘,ご意見があった部分を追加,修正したものです。変更部分は,赤色にしています。時間の関係もありますので,変更部分についてのみ説明したいと思います。あとの議論は,基本的な考え方,現状と課題,今後の施策の方向性と,それぞれある程度分けて行っていただきたいと考えていますが,説明は一括でしたいと思います。まず1ページ目ですが,アートマネジメントの必要性のところに,展示を加えるとともに,アートマネジメントの捉え方の部分に1つ目と2つ目の○を加えています。これは前回,どこを議論するのかをはっきりさせておくべきではないのか。すなわち,アートマネジメントと言うと,舞台芸術のみならず,本来は美術などアート全体を含むものなのですが,今回については,劇場,音楽堂などを中心に検討していこうということで,それを明確にするように,書きました。したがって,(2)の1つ目,2つ目ですが,アートマネジメントの概念は美術館,博物館,劇場,音楽堂等だけではなく,美術館,博物館,図書館等,また文化芸術団体など,いろいろな場所での役割を指すものといった捉え方をした上で,美術館,博物館,図書館等については,中央教育審議会において生涯学習・社会教育関連法制の中で司書,学芸員といった人材のことも含めて検討が進められていること,また,劇場,音楽堂については,ソフト面の充実が課題となっているといった事情があるということで,この部会では,主に劇場,音楽堂等において,舞台芸術にかかる人材を中心とした方策を検討すべきであるということを明確にしました。その下のアートマネジメントを担う人材の職務内容については,少し具体的に書き加えています。続いて,2ページ目の2.現状と課題ですが,まず大学等における人材養成については,前回,大学等を対象にした,あるいは受け皿である文化会館等を対象にした調査の中で,育成側と受入側で意識のギャップがあることがはっきりしてきましたので,その部分を書き加えています。現場の研修のところでは,現職研修について,内容面の指摘があり,2つ目の○とも関連しますが,長い期間のものがやりにくいことが1つの課題ということで,1つ目の○に期間が短いものも多く,と付け加えるとともに,現職研修の問題として,それに参加する人たち,参加したい人たちがなかなか日程を確保できない,旅費もなかなか出ないといったことが問題としてあると指摘がありましたので,追加しています。それから,2ページ目の一番下の文化施設の受入側の課題としては,大学等と現場をつなぐところが弱いのではないかといったこと。また2つ目の○については,現状としてアートマネジメントに携わる人材が少ないため,1人でやる仕事の範囲が広いということも踏まえて,長期的な視野に立った人材育成が課題ではないかと加えています。それから,同じ項目ですが,次のページに,文化施設のハード面の整備が進む中で,フランチャイズをつくるために動き出したところもあるが,そうしたマネジメント努力を怠っている文化芸術団体もあるのではないかという指摘がありましたので,追加しました。同じページの下の方ですが,文化行政のあり方の課題として,文化行政の担当者,地方の文化行政の担当者が2,3年の短期間で入れ替わるために,ノウハウの蓄積が困難になっていることを課題として追加しました。次の4・5ページ目が取り組むべき施策の方向です。大学等における人材養成の支援の今後の方向として,3つ目の○のところですが,2,3年の長期のインターンシップや研修などを実施することが望ましいと,少し詳しくしました。それから,最後の○ですが,意識のギャップがあるという指摘があったことを受けて,人材の育成側と受入側の相互理解を促すために協議する機会を充実すべきではないかということを入れました。現職研修の部分については,1つ目の○,プログラムの開発が重要だということに加え,研修を受けることによってそれをどのように活用していくのかを明確にしていくことも必要だということでしたので,追加しました。最後の○は長期の研修がなかなか受けにくいという課題を踏まえ,研修を受けやすいような環境整備が必要ではないかと加えました。それから,(3)のアートマネジメント人材の活用の充実については,1つ目の○は少し言葉を丁寧によりわかりやすくということで,創造活動を本来の魅力を引き出すためには,演目を選び,文化を発信していくなど,実演家任せではなく,マネジメントの専門の職員を配置することが非常に重要であるというのを強調しました。最後,このページの一番下の2つの○の部分ですが,前回さまざまな意見が出たところですが,アートマネジメントの充実のためには,専門的な人づくりが重要であると。難易度の高い資格試験を導入し,一定の条件を満たした文化施設には試験に合格した人しか置けないこととしてはどうかという提案もありました。また,一方で,学芸員,図書館司書といった法律で資格になっているもの,これらは歴史も深く定着してきていますが,アートマネジメント人材については,もう少し総数が増えていかないといけないのではないか。資格制度を導入しても,すぐに変わるわけではないのではという意見もありました。この部分は,さまざまな意見があったところですが,それを踏まえて,こういった形でまとめています。最後,5ページ目ですが,国と地方公共団体の役割について,新しい提案,意見があったところでは,国による文化施設の支援について,規制していくということではなくて,政策誘導として人材面の活用方策を検討してみたらどうか。その政策誘導のあり方として,対象を絞って,想像活動の盛んな専門性の高いところに手厚く支援すべきである。ばらまくということではなくて,モデル地区を設けるなど,重点的な支援方策を検討すべきではないかという意見がありました。以上が,前回の意見を踏まえて追加をしたところです。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。赤が入っているところが論点として,第4回目にプラスアルファされたということです。さて,ここで3つの案件,基本的な考え,現状と課題等々も含めて,先生方から意見をいただきたいと思います。まず,この中で議論が必要な部分という点において,人材育成の活用に当たって,今後重視すべき論点,視点と言いますか,その辺はどのような考えでしょうか。マネジメントの職務の内容,例えばある意味では,どこまでがアートマネジメントと言い,どこまでが違うことになるのかということが出てくると思います。結果的には,アートマネジメントはここまでですよと,これが将来想像される人材としての部分であるとか,あるいは3番目にある資質とか,能力の問題ということに関しても出てくるとは思います。具体的な職務の内容なども話しながらだと,審議が進んでいくのかなと考えています。いかがでしょうか。
【田村(和)委員】
 第3回までの議事録を全部読んで考えていたのですが,アートマネジメント人材といったときに,アートマネジメントを学んだ人たちの方から考えるのか,それとも仕事の成立の方からか,両方あると思います。このアートマネジメント人材をアートマネージャーと言いますが,これは日本語で何かないかと思って,仮に芸術支援士と名前をつけたのですが,その「し」が武士の「士」なのか,教師の「師」なのか,それとも落語家の「家」なのか,相当悩んで考えましたが,一番大切なことは,そういうことをなさる人のイメージとか社会的なポジションとか,アートマネジメントをやる人たちの仕事のくっきりした修練点みたいなものがぜんぜん見えないことです。そういう意味では,もっと広い話でいくと,特にこういう第四次産業は,仕事の成立というところから見ますと,アートマネジメントをやった人は,必ずそっちに進むから人材が補給されるのだという,なぜそれがちゃんと受け取れないのかという話と,一方では,こういう仕事がきちんとあって,それにアートマネジメントは本当にふさわしいのか,勉強しているのかどうか,そういうことを現職の方も含めて,どういうことをやらなければいけないのか。はっきり言うとアートマネジメントの就職口がないという話なのか,日本の文化芸術,文化行政が不毛なのかと,どっちの方から行くのかということが,大きな論点で違うと思いますが,皆さん両方から話されていると思います。特に,私は何とか「家」とか「士」と考えたのは,これは最後のところに来ると資質の問題がすごく大きいからです。資質と覚悟の問題です。ですから,アートマネジメントを勉強した人がそういうところに行かなければいけないはずはなく,むしろ施設とか,実際の活動の側から見れば,本当に欲しい人がどういうふうに来てくれなければいけないかということを,もっと強く語らないと,政策は出ないと思います。ですから,そのあたりで,どちら側から語っていくのが今必要なのかということが非常に気になりました。
【宮田部会長】
 おっしゃるとおりです。と言いながら,私も教育の現場にいるわけですから,出す方です。理想は,こんなふうにキャッチボールをして取ってくれたらありがたいのになと思うのですが,なかなかそこでは違うキャッチボールをするボールの取り方があるので,いつも複雑だなと思ってはいました。いかがでしょうか。その件に関しても,少しお時間をいただいて,先生方で現場の方から考えてみたら,1つの論点が出ると思います。例えば,文化庁としたら,このアートマネジメントで,最後はどこに行きたいのかを,僕が書いちゃった方が早いなと思ったりすることがありますが,それでは議論になりませんので,今の田村先生の話はすごく重要な部分を指していると思います。文化庁では,どのようにイメージなさっているのでしょうか。イメージで結構ですが。
【高塩文化庁次長】
 あまりイメージしていませんが,一歩ずつ前進というのが文化政策でして,理想型は当然考えていいのですが,現状があるので,それを踏まえて,改善点というか,ニーズがどういうところにあるかです。理想型は先生も私どもも同じように,芸術文化に国民が親しんで,劇場と芸術文化団体が活発に活動できる状態,そのつなぎ手としてのアートマネジメントがさまざまな活動のためにある,そういう文化芸術国家をつくれれば一番いいのですが,まだ相当前段階です。先ほど田村先生がおっしゃったように,文化行政が非常に貧しかったので,数年かかってやっと少しずつ上りかけている途中で,アートマネジメントというつなぎ手人材を行政としてできるような方策を幾つか,サジェスチョンというか,提示していただければありがたいなというのが,この部会に対する要請です。
【田村(孝)委員】
 この活用についての検討が,どういう力を持つものなのかが,はっきりわかりません。検討しました,でも駄目でしたというふうになるのか。例えば地方公共団体とか芸術団体や文化施設にきちんと届けるためには,最終的には法整備をしない限りは,強制力は持たないのではないかと思います。この報告書は,どういうものなのでしょうか。
【宮田部会長】
 その中の1つは,前回か前々回にありましたね。ある意味での学芸員のような資格証の問題,あるレベルまで達してないと駄目な問題,そういうことをこの部会から提案し,行政から指示するというぐらいのところまで強制力を持っていいのではないかという議論が確かあったように思います。と言いながら,学芸員のことも少し調べてみると,単位は取ったが,なかなかタンスの中に眠っている資格証しかないということがあるようです。ただ,文化というのはもしかしたらそういうのがあってもいいのかなと。若者を育てる中の一つにそういうものを蓄積した上で実際には文化とは関係ない世界に身を置くことがあっても,文化力があることによって,例えば経済の方に行ったとしても,経済的なものに対しての考え方も幅広いものができる,これは決して文化行政としては悪いことではないと思います。極端な話,プロを養成している東京芸大と言いながら,本当にプロになっている人が何人いるかと言ったら,非常に少ない。ただ,やはり芸大を出たということが1つの大きな波及効果になっていることだってあるわけです。その基本的な考え方の中で,先生のおっしゃることはものすごくよくわかりますが,具体的にアートマネジメントとは何ですかという部分が少しないと,その両方ともうまくいかなくなってくるので,どうですか,例えば……。尾高先生。
【尾高委員】
 まず最初に,このアートマネジメントはとてもいいことで,とても必要なことだと思いますが,実際にこれが稼動していくときに,卒業した人がどんどんいろいろなところに行くかというのは,到底無理で,裏方さんはホールに1人です。それから,企画の人も数人です。一度入ってしまったら,その後は就職としては難しいところです。でも,こういうことに対して,何も考えてなかった日本だから,今こういうことが必要であって,それを文化庁が率先して,出すことは,とてもいいことだと思います。まして,僕の携わっている音楽の方から話しますと,コンサートホールが市長の争いでどんどんできてしまった。そして,できたはいいが,全然使われない。特に,クラシックのために,残響を2.2秒にしたのに,クラシックのオーケストラの演奏会は年に1回か2回というようなところがあまりにも多いわけです。昔,焼津の市民会館に行ったことがありますが,焼津の市民会館で,英国のオーケストラが呼ばれ,マーラーの5番という大変難しい曲をやってくれと言われました。英国のマネージャーも日本のマネージャーも僕も,焼津でマーラーは駄目ではないかなと,悪いけれども偏見で思いました。そしたら,市の方でしたが,市民会館にいた方が,どうしてもやってくれと。その人が大変な音楽ファンで,ゲラ刷りで,友の会をつくって集めて,今度マーラーの5番を持ってくる英国のオケはこういうオケで,マーラー5番を聞いたことがない人は,ここのレコード屋に行くと2割引きで買えるよとか。そういうことまでやってくれて,びっくりしました。行ってみると,満席だし,反応がものすごくいいのです。だからこういう人たちが,ホールに1人でも2人でもいると大変な財産ですし,そしてそういう人が日本中の,公的なホールだけではなくて,いろいろなホールにいてくださると素晴らしいと思います。それとまた別なことで,アートマネジメントと1つで括ってしまうのは,少し引っかかりますが,やはり今話したのは,ソフトウェアの話で,実際ここにも書いてあるハードの方を動かすのは,なかなか難しい。例えば神奈川県のあるホールは公的なものですが,素晴らしいホール,NHKホールに似たようにできていますが,最初,音楽家にとってものすごくやりにくかったのは,裏の方が何もわかってくださらないことでした。譜面が見えないほどの照明が当たっている。指揮者が見えないような照明が当たっている。オーケストラのステージマネージャーが,これではできませんから直してくださいと言うと,普通の会議はこれでやりますと。会議ではないのです。会館なわけですから。逆に,すごく感動したのは,アメリカのニューヨークにカーネギーホールで,あそこはちゃんとカーネギーホールのステージマネージャーのおじちゃんがいます。オーケストラのステージマネージャーとのやり取りでいいセッティングができるのです。一度,三善晃さんのキョウモンという曲をやって,子どものコーラスがあまりに声が小さいので,僕がマイクロフォンを入れると言って,オーケストラの人も,よし,入れようと言ったのですが,カーネギーホールの座つきのステージマネージャーが飛んできて,絶対よくないと。成功したことはないと。聞こえると。絶対不自然だからやめた方がいいよと。オーケストラは,マイストラが言うんだからやろうと言いましたが,僕はそのときは,ステージマネージャー,この名人の言うことを聞こうと思いました。本番は,全然大丈夫でした。子どもたちの声が本番になったら響いてきて,僕たちのそういうやり取りを聞いていて,子どもたちが頑張ったのかもしれませんが,ああいう人が日本のいろいろなホールにいてほしいなと思います。ハードを生かす人とソフトを発展させる人,その両方まとめてのアートマネジメントでしょう。何となく,アートマネジメントというと音楽事務所に行く人を育てるみたいにとれます。もしかしたら名前は何かほかの方がいいかもしれませんが,基本的に大賛成です。どうやったらいいかはまた少し別の話ですが。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。実践を踏まえた先生の話ですが,それは私もよくわかります。最近どういうわけか,スポットライトを浴びるようなことがあり,やたらどこからか引っ張り出されてますが,そうするとホールで全然違うのです。尾高先生の話ではないですが,こんなにしゃべりやすいのか,こんなにしゃべりにくいのかというのが出てくる,その前段階のことをつくってくださる方は大事だなと,つくづく思いました。私はただのトークですが,それを実際に演じる,あるいはいろいろなことをするとなると,よく知っている,そこの癖がわかっている,そういう人が必要になってくると思います。もう少し具体的なところを攻めませんか。どうぞ。
【富澤委員】
 今度の政策部会で,このアートマネジメントあるいはアートマネージャーを取り上げたのは,非常に時期に合ったというか,タイミングがいいというか,今日的な課題だろうと思います。そういう意味では,いろいろな議論がなされて,これで1つの結論が出れば,日本の芸術,あるいは文化の上で大きな結論になってくるでしょう。将来に対して,非常にいいことになると思います。というのは,日本の芸術家は,かなりレベルが高いし,これはよその国と比べても,立派な芸術家,あるいは価値を創造できる芸術家がたくさんいると思います。ところが,それが現実のマーケットに結びついてないというか,マーケットを掘り起こしてないというか,想像してないというか,そこが一番問題で,やはりそれを結びつけるのがいわゆるアートマネジメント,あるいはアートマネージャーだろうと思います。そう解釈すれば,そういう人材が今後育ってくることは非常に大事なことと思います。少し話は違いますが,芸術の分野ではなく地方行政の分野で,アメリカにシティマネージャーというシステムがあります。アメリカの場合は,地方の行政は非常に大事で,日本は中央集権ですから,地方が置き去りにされたりしますが,地方の行政は民主主義の小学校だという概念が非常に強くて,だからアメリカの場合は,知事が大統領になったりするわけで,地方の行政は大変大事です。そうは言っても,財政難とかいろいろなことでうまくいかない場合も多々あります。そういうときに,アメリカの地方行政にはプロがいて,それがシティマネージャーです。資格でも何でもなくて,地方の自治に精通したというか,あるいはそういう問題を解決する能力を持った人がたくさんいて,例えば自分のところが5万人の都市で,うまくいかないということになると,よそから卓越した能力のあるシティマネージャーを連れてきます。高い給料を払うのですが,その人に方向だけ示して,全部任せるのです。そうするとそれがうまくいく。10万人以下の都市と言いますか,5万人ぐらいの小さい都市では,シティマネージャーをかなり活用して,うまくいっているケースが多いのです。アメリカの政治では,シティマネージャーシステムが定着していますが,そういうことから考えて,アートマネジメントが,そういう人がいれば,例えば自分のところの劇場がうまく財政が成り立っていかない,あるいは情報はあるがうまくいかないというときには,そういう人にお願いをして,うまくマーケットをつくり出してもらうということは非常に大事になってくのではないかと思います。そういうアートマネージャーをどうやって育成するのかというと,これは単に学芸員とか,図書館の専門家とかでは,資格を与えてつくるというのではうまくいかないと思います。そうではなくてやはり実践です。実践をして,実際のマーケットで実績として上げてきた人たちをうまく活用する。そういう人たちがたくさん出てくれば,地方でいろいろ困っている劇場とか,あるいは音楽堂とかも活性化してくるのではないかと思います。ですから,アートマネージャー的な存在になるには,芸術家からいってもいいし,あるいは,経営の理念がなければ駄目ですから,経営の専門家の中で,芸術に理解を持ち,あるいは芸術を深く愛する人たちの中から,そういう人たちが出てきてもいいのではないかと思っています。学校で学ぶよりも,やはり実際の経験の中で,社会全体が育成していくことではないかなと考えています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。某美術館の館長が非常にそういう能力に長けていて,言ってみれば世話好きで,まめであると。つなぎがうまい。そういう美術館は大体うまくいっています。ある意味では,それを館長がやるのではなくて,若手のつなぎの人がやるというところにこのアートマネジメントのすごく大事な部分があるような気がします。そのためには歴史を知っているとか,いろいろなそこのくせを知っているとか,弱点を知るということもすごく大事なことだと思いますが,それによって長所を伸ばしていくことも可能ではないかなという気がします。結果的には,例えば劇場で演奏をされたり,演じられたりするものに一般の方たちが大変感動を受けることができるための,そのつなぎをしてくださる方になってくると思います。そこを行政としては,こういうことが必要ですよと言い切ってしまうだけでいいのかどうかということもすごく大事なことだと思います。置きなさいとは言えないかもしれませんが,いろいろな問題がありますから,置くことにより,より地域活性ができ,あるいはモラルの向上になるということまで持っていくのも必要なのかなと思います。米屋先生,どうぞ。
【米屋委員】
 資料3の1ページ目を読んでいて,どこにも間違いは書かれてないなと。今,委員の方々がおっしゃったようなことも文化のつくり手と受け手をつなぐ役割というところで収束されてしまうと。間違ってはいないけど,何かおかしいと思って,よくよく読み直してみると,公演や作品等の企画・政策・展示,資金の獲得というように,何か発表の最終型のことしか触れられていません。アートマネジメントの究極の目標といってもいいのかもしれませんし,底流に流れているべき思想ということなのかもしれませんが,そこがひょっとしてコンセンサスがないのではないかなと思い,やはりそれはオペラを見るとか,コンサートホールに行くとか,美術館に行くとかということがアートマネジメントの目的ではなくて,芸術に触れることがあらゆる人々にとって必要だと,芸術に触れる権利を誰でも持っていると,それで生活を豊かにする,気持ちを豊かにすることが必要で,その手助けをするのがアートマネージャーだというような形での理解があれば,文化行政の理解のレベルが少し低いと言われることもなく,いろいろなことが変えられると思いますが,芸術を発表する最終的な形を実現することがアートマネジメントと思われていると,そこにギャップがあるのではないかと思います。もちろん発表することはとても大変で,最後のことですが,それだけではなくて,それを取り巻くあらゆるレベルで芸術にどう触れてもらうかということを考えて提供するのがアートマネジメントの役割ではないかと思います。そのことを踏まえて考えると,ここで書かれている捉え方には,もう少しいろいろなことを付加していかなければいけないと思いますが,もし細部に入ってよろしければ……。
【宮田部会長】
 どうぞ。
【米屋委員】
 (2)のアートマネジメント人材がどのような場所でどのような目標を持って活躍していくことができるのかというところの,まず最初の人材の職務内容ですが,いい言葉かどうかわかりませんが,アーティストマネジメントという言葉を入れていただきたいなと。あらゆる側面で,マネージャーは,アーティスト,クリエーターが何を考えているのかということを常に把握して,それを実現するという役割なので,アーティストありきという部分を忘れてはならないのではないかということが1つです。それから,メセナ財団等の文化支援のための中間支援組織ですが,国民が入っているのは少しおかしいと思います。中間支援組織は,流通業に例えると,卸売りのようなものなので,サービスの対象はプロユースです。ですから,そこの定義づけが少し違うのかなというのと,中間支援組織がきちんとしなければいけないのはやはり現状の把握,分析,アートボカシーとよく言われますが,政策提言能力とか,専門性の高い人材育成,この辺がコアとして必要なのではないかと。それは,劇場,音楽堂などの役割とは明確に違うものだと思うので,この2つは分けてきちんと機能を考えていただいた方がいいと思います。
【宮田部会長】
 今,米屋先生から非常に具体的な話がありましたが,具体的なところで,他に先生方いかがですか。高萩先生,どうぞ。
【高萩委員】
 改めて,立場の違いがあるなと思いました。米屋委員は芸団協を代表されていると思いますので,アーティスト代表と言えると思います。今問題になっているのは,もちろんアーティスト側から我々アートマネージャーをうまく活用してほしいというのもあるかもしれませんが,実際今,アートマネジメントが各先進国で取り上げられるようになってきているのは,つまり社会が創造性のある豊かさを確保していくときに,アートとかアーティストが必要ということで,社会の方から必要性が言われてきているのです。日本はその中でアーティストを育てるのには比較的今まで頑張ってきたのです。美術学校もある,音楽学校もある。舞台芸術の学校がないのは少し残念ですが,アーティストは育ててきたわけです。ところが,プロのアーティストの活用の仕方が非常に下手だったと思います。ここに来て,ほかの国と比べてみると,建物はつくったし,頑張っている,だけど,どうも全体的にうまく活用されていない。では,ボトルネックは何かといったときに,アーティストを活用する人材がいないのではないか,それはアートマネージャーと呼ばれている人ではないかということで出てきた問題だと思います。つまり全体的な施策をあげていく中で,ボトルネックを解消していきながら,アートがあり,アーティストがいて,芸術活動が行われる創造性のある豊かな社会をつくっていくために,何が問題かというのをはっきりさせていかないといけない。アーティストのためにある集まりではない,ということが言いたかったのです。
【宮田部会長】
 アーティストとしてというと,尾高先生の先ほどの話もまさしくそうですよね。子供たちを含めて壇上にいる人たちのすごさを一般の人たちにどう伝えるかというときに,絶対的に必要な場面です。米屋先生の話からいったときと,例えば田村先生の話だと,少し目線というか,立ち位置によって持っていき方が変わってきますね。長官はどうでしょうか。
【青木文化庁長官】
 今,いろいろな問題が出ました。1つは,委員会で決められたことはどうなるのかです。文化芸術振興法ができたのは5年ぐらい前です。それでいろいろなことをやってきて,第2次基本方針ができて,そのトップにこれを入れたわけですから,ここで存分に話をいただいて,それを文化庁がまとめて,報告するというのが1つの大きな進展であろうと思います。それに基づいて,今度は国もここまで考えるようになったから,民間でも一緒にやりましょうという機運が,地方との関係も出てくれば一番いいのではないかと思います。実際に具体的な法律というのは,なかなか難しいと思います。法律はできるかもしれませんが,文化芸術振興法はもう既にできていますので,どういうふうになるかわかりません。モデル地区をつくると書いていますが,それを文化庁が,全く仮にという話ですが,施策にしてそこに重点的に援助をしていくとかいうことは今後いくらでもできると思います。もう1つは,大学のことですが,アートマネジメントの教科は,基本的に大学院の教育だと思います。ただ,学部でもこういう授業をとれることが必要で,これから日本の大学は変わってくると思いますが,学部と大学院共通科目があってもいいと思います。ただ問題は,大学はアートマネジメント学科にどういうカリキュラムを置くのがいいかなんてまだはっきりしないでしょう。それはここで出ているニーズなどをどういうふうに大学が吸収して,具体的な授業科目やゼミの科目にしていくかというのがインターンも含めて大事ですが,そういうことがモデルになるところはどこにもないと思います。だから,そういうことがむしろ大学側の刺激になれば,非常に意味があるのではないかとは思います。
【田村(孝)委員】
 今,長官にお答えいただきましたが,正確な数は分かりませんが,例えば科学技術基本法に対して,個別法は100以上あるそうです。だから,前進しているわけです。昭和25年にできた図書館法ですら個別法がないため,今のような実態です。県立の図書館を指定管理者にしようというところまで出てきています。昭和25年に法律ができても,司書を置くことは義務ではないそうですが,司書がいたにもかかわらず,充分にその役目が果たされなかったということです。個別法がないということは,大変申しわけありませんが,地方公共団体の行政の方は,積極的ではなくなってしまうということで,そういう意味では,個別法に落とし込んでいくのが実際の力を持つのではないかと思います。
【宮田部会長】
 はい,どうぞ。
【米屋委員】
 先ほど,高萩委員から芸団協を代表しているからと言われたのですが,アーティストを代表して発言しているつもりは全くありません。芸団協はアーティストの集団だけではありませんし,それ以上に文化芸術振興基本法は別に実演家保護法でもないということを口を酸っぱくして実演家の方に申し上げている立場ですので,ここで言っているアーティストというのは,アーティストであれば必ず優遇されるとか,芸術活動であれば,必ず優遇されるとか,そういうことを言っているのではなくて,アートマネジメントを担っている人というのは,それが地域に住む人々であり,国民である,そういう享受者にとって有意義な活動であると感じたときに,それを実現するということで,基底はやはり享受者だということは忘れてはならないことだと思いますし,それを理解しているアーティストだけが活躍の場を与えられるのではないかと思いますので,そこはアーティスト有利にといっているつもりではなく,創造者ということの視点がなければ,ここは企画とかマーケティングとかという言葉だけになると,少し無味乾燥なのではないかなということです。
【唐津委員】
 今のアーティストのマネジメントに関してですが,もちろんそこの地域に住んでいる方々が芸術に触れる機会をどのようにして持つことができるかという中に,アーティスト自身がどのようにその地域で自分たちの活動を生かしていけるのかということを考えていかなければいけないと感じています。例えば,愛知県で劇場ができれば,そこで自分たちは当然上演できるのだという期待を皆さん持たれるわけです。そういった状況の中で,彼らが育っていく場所であると同時に,やはりそれを見ていただく,その地域にいらっしゃる方々にどのようにあなたたちは貢献できるのですかという視点が,日本では忘れられがちであると思います。アーティストが,やはり自分たちの活動内容をもう少し地域の方々に向けて発信できるようなことも当然考えていかなければいけない。それを劇場が,地域アーティストたちにある意味誘導していくというか,活用していく使命も担っているのではないかと感じています。ですから,先ほど高萩委員が言われたことと米屋委員が言われたこと,両方ともそれぞれのお立場としての意見としてあると思いますし,今の状況では両方必要ではないかと思います。
【宮田部会長】
 少し散らばったので……。
【パルバース委員】
 1つ,宮田部会長がさっき言っておられたことですが,芸大から出る学生が行くところがないとか,2ページの下に,大学等と現場をつなぐところが弱いのではないか,と書いていますが,これはかなり婉曲的な書き方で,極めて弱いとか,ほとんどないではないかとか言った方が,現実に近いのではないかと思います。私も京都造形芸術大学で3年間教鞭をとりましたが,芸大までいかないということもありますが,同じような状況がありました。会長,そのネックは何でしょうか。卒業して,一人前として,これから世に出る学生が行くところがないとか,行く劇場がないとか,どうしてですか。そういう現象があると思いますけど……。
【宮田部会長】
 すごく悩むところですが。
【パルバース委員】
 具体的に。
【宮田部会長】
 具体的にですか……。今,なぜ私がそれを求められているのかよくわからないのですが……。
【パルバース委員】
 ごめんなさい。正しく聞き取れてないかもしれない。正しく解釈したかどうかわかりませんが。
【宮田部会長】
 わかっています。
【パルバース委員】
 どうしてなんだろう。それがわかればもう少し。
【高萩委員】
 具体的には,日本の文化行政は歴史的に伝統文化の保存に重点があって,生きているアーティストが芸術活動することについてはあまり熱心ではなかったということが根底にあると思います。90年代に入って,現在アート活動をすることについて,もう少しちゃんとやっていこうということが始まった。ですから,美術館が作品の作成を委嘱するということは,海外ではごく当たり前ですが,日本ではすごく少ないです。
【宮田部会長】
 ほとんどないですよね。
【高萩委員】
 音楽に関しても,プロのアーティストは東京に集中している。つまり社会の中で,生きているアーティストをどう活用していくかについては,ほとんど考えられてこなかったということかすごく大きいと思います。それで今これが問題になって,別に海外が全部いいわけではないので,日本型の,ここまで到達した日本の資本主義社会の中で,アートの活用の仕方を考えるのに非常にいい時期なのかもしれません。
【宮田部会長】
 例えば,東京芸大の話をここでしてもしようがないのですが,たまたま振られたので,あえて言いますが,専門性の非常に高いものばかり皆さんやっています。高ければ高いほどいいのです。狭ければ狭いほどいい。それを徹したことによって,その頂点まで行ったことによって,それがあるからこそ,それを軸点として,例えばさっきも言いましたが,アートではなくて経済の世界に走っても,商業の世界,科学の世界に走っても,非常に大成している人が多いです。極端な例ですが,ソニーの相談役は声楽家です。声楽家だけど,毎回生の声は聞いていられないから,テープレコーダーがどうしても欲しいと,よって彼は大学4年生の時にそれをアメリカの進駐軍から買うのです。当時のお金で16万円を,18歳から20歳くらいのときに,国から持ってくるのです。それから,スタートしたのが文化庁みたいなものです。そういうのをつくらなければいけない。その彼とこの間,「学長と語ろう」というのに呼んで,話をしたときに,芸大に経済学部をつくれと。なるほどと思いました。非常に優れた人,ものすごく素晴らしいピアニストが医者でいます。手術をするときの瞬間とタッチを入れるときとが全く同じだと彼は言っています。この鼓動がまさしく音楽のリズムと変わらないという話をしていました。数学者と非常に似たところがあったりするので,芸大の役割は,ある1つの頂点を極めるということをある年齢のときにすることであって,すべてが芸術家になるためにやっていることではないのです。その1つの手段として,非常に明確にわかりやすい部分が,アートの中にあるということで,答えになると思います。ですから,1割,2割が,アーティストになっているので,十分だと思います。学生自身が就職のために芸大に入っていませんので。
【パルバース委員】
 そうですか。何のために入っているのですか。
【宮田部会長】
 つまり自分を見つめるためにです。
【パルバース委員】
 自己表現するためですか。
【宮田部会長】
 そう。
【パルバース委員】
 でも,いつまでも自己表現,自分の……。
【宮田部会長】
 僕の表現力の弱さでしょうね。もう少し理解していただいた方がいいと思います。今度ゆっくり話しましょう。すごく大事なことだと思います。ありがとうございました。
【パルバース委員】
 いや,いや。なぜ現場と大学との間に大きな溝があるか。すごいですね。私的ギャップでもあるし。
【宮田部会長】
 例えば,会社が何かを求めているときに,即効性のあるものを求めてしまうのです。世の中,日本は,すぐ数字,去年より右に上がらなければならないみたいなことがあって。
【パルバース委員】
 そうですね。
【宮田部会長】
 ところがそうではないのです。本当は,2,3年たって,その中で感じたときに,すごい力を発揮する人は,若いときに何かを極めたことのある人間だと思います。それは数学でも科学でも構わない。その中にアートがあったときに,文化と芸術というものがものすごくきちんとした立ち位置を持てるし,国家が成り立つというところまで行くのではないかと思います。先生のところの国もそうだと思います。
【パルバース委員】
 現場はいろいろあると思いますが,大雑把に言うと,現場は大学がやろうとすることを尊重してないかもしれない。君たちは本当に立派だが,少し違うではないかと。目標とか,レベルが全然違う。それもあると思う。そうだとすれば,僥倖にすがるしかないです。いつまでも泥縄式で,何とかキャッチアップするわけですから。
【宮田部会長】
 それは駄目です。
【パルバース委員】
 だから,英語で言うと,ウェルノベンスですね,重要性,つまり僕らがやろうとすること,大学でやろうとすること,君たちにとって大変重要であると,関係があるんだと,違うことではないと,こっち側が大学として見せないといけないです。証拠を出さないと現場がいつまでも偉い先生,素晴らしいけれど,僕らの仕事と少し違う。どうもすみませんということになってしまう。特に,演劇ではそうです。日本人は音楽を愛する国民の世界一ではないですか。美術もそうです。美術館は東京のいたるところにあるし,新しいところはみんな大入り満員ばかりですが,演劇は根付いてないから,それを考えると,溝がすごく広いのではないかと思います。
【宮田部会長】
 今の話でいきますと,高萩先生は,演劇に関しては,古典ものは過去だけれど,それ以外は云々という話が先ほどございましたが,どうですか。最近,演劇って,すごく面白いと思っていて。
【高萩委員】
 そうですね。最近はさっき米屋さんがおっしゃったように,最後の上演のところだけをどうするかみたいな話になっているのですが,演劇は本当に集団でものをつくるのだと思います。物語をつくり,それから表現して,コミュニケーションするということを考えると,本当に教育の初歩的なところ,中等教育でもすごく役に立つわけです。だから,必ずしも演劇を学んだ人たちが役者として舞台に立たなくても,いろいろな使い方ができると思います。今まではあまり地方の劇場でそういう活用する制度がなかったし,そういうことはしなかったのです。建物をつくって,好きな人が発表する場所としてしか活用していなかった。ですから,どういうふうにアーティストとかアートを学んだ人を活用していくかは,それが次の社会につながるということをうまく伝えられないと,なかなか問題が解決していかないと思います。
【宮田部会長】
 それと同時に,小中学校が,文化祭をやらなくなったのです。
【高萩委員】
 全部ではないです。
【宮田部会長】
 特に進学校がやらない。頭がいいと言われる,財界が求めているすぐ使える人材育成でいくと,文化祭は要らないと。あの辺の人たちと最近会う機会がありますが,非常に悲しく腹が立って帰ってくるのですが,それは人間として違うだろうみたいな気持ちが随分あります。文化祭で演劇をやることなんて,ちょっとしたことかもしれないけど,含まれているものが,ものすごくいっぱいあります。絵を描くこと,歌を歌うこと,コミュニケーションをすること,身体表現をすること,それから監督をしたり,人間を誘導したり,終わった後,掃除をしたり,みんなでよかったと反省会をしたりすること。全部を引き受けて先生と子どもたち,それから父兄も巻き込んでやる。大変な秋ができ上がっているはずなのに,そして耐える冬というのが日本のよさだったはずです。どうもこう,…違っていませんか。その辺もこの中に言いたいなと思っています。そこからちゃんとやれみたいなところがあって,これは教育法の中にでも,秋は必ずやれみたいなことを言ったっていいのではないか。それだけでも,ファンは絶対に増えます。そうしたら,次の高級なもの,つまりずっとここまで話をしているのは,プロのためのプロ云々の話しかしていないので,どうもすかすかするなと思うのは,その辺にあるのかなと思います。子どもたちがどうしても楽しみにしているというようなこと,先ほどの先生の静岡かどこかの話の中に,マーラーなんか聞きませんよ,普通は。そういうふうになってしまうのは,やはりそういう人がいるのと同時に,土台,土壌の中にそういうものが子どもたちや大人の中にあったのではないかと思います。その両者があるから,焼津でしたか。
【尾高委員】
 焼津です。漁師の町ですよね。人が組まなきゃ死んでしまう,しっかりタッグを組んでなければ駄目だという,ああいう関係があるからではないでしょうか。
【高萩委員】
 日本では,東京にやはりアーティストが集中しているわけです。ヨーロッパの国で,首都にだけ文化が集中していることはあり得ないわけです。ベルリンだけ,パリだけ,ロンドンだけであるわけでもなく,やはり地方のいろいろな都市で,いろいろな,美術にしても音楽にしても,それぞれ有名なアーティストがいて,活動しているし,その人たちは決して作品を見せるところだけをやっているわけではなくて,普段自分たちがアーティストとして活動しているところをみんなに見せているし,学校にもワークショップで行くし,という非常に地域との関係が豊かだと思います。そういう生活というのが全部経済に結びついていくのがいいかどうかわかりませんが,やはり創造性のある豊かな社会をつくっていくのだということで,日本は,今そこがどうもうまくいっていないのではないかということが問題だと思います。
【宮田部会長】
 そのシステムはどうやってつくったらいいだろう。これはやっぱりもうつくらなければいけないのです。
【高萩委員】
 そのためにアートの価値をしゃべれる人が必要です。僕の場合は,世田谷区でやっているわけですが,やはり区の役所の方たち,それから議員の方たちで,芸術にお金を積極的に使おうという人はそうたくさんはいません。必ず目の前のことが一番問題になるわけですが,さっき部会長がおっしゃったように,「目の前のことではない,今これをやることが将来につながっていくのだ」という話をしていけば,決してそんなに理解の悪い人たちではないのですが,そういうことをいろいろな言葉で伝える人が非常に少なかったので,芸術系の予算は削られやすいのです。福祉的な予算が削られるのと違って,痛みがすぐ目の前には来ないので,最初に劇場をつくったとき,美術館をつくったときに予算をつけていても,困ったときには一番先に削られる。今これを削ると何年後に困るよ。10年後,20年後に削ったことがどういうふうに地域に影響してくるかをしゃべれる人が少なかったと思います。だから,アートマネージャーというのは必要だということになる。アーティストは,そうはしゃべらないわけです。自分が表現することが大事なので,それをやはり側面的に支える人材が必要です。
【宮田部会長】
 それを論理的にしゃべれる人,政治家にしろ,その町の有力者にしろ,そういう人たちにちゃんとしゃべれる人ですね。
【高萩委員】
 政治家とかに向かって,ちゃんとその人たちにわかる言葉でしゃべれるということがすごく大事で,今までそれはやられてこなかったことです。
【宮田部会長】
 いわゆる日本型の……。
【田村(和)委員】
 今の話は,本当にシリアスだと思いますが,少し戻って話ししたいのですが,アートマネジメントの捉え方の上の方はわかりますが,2番目の○のところに,美術館,博物館,図書館については,とりあえず別のところで話しているからというのがあります。これは非常に問題があると思います。実際に,私は,美術館,博物館のキューレターとか,図書館の司書に知り合いが多いし,それから教育委員会の社会教育主事の講習にも出ますが,そこではアートマネジメントの話をしていません。ですが,あるところダブっている部分がすごくあるのと,結局,今話があったように,文化はこのあたり全部含めての総合力です。中央教育審議会が検討されていると思いますが,ぜひこの部会で,生涯学習とか社会教育の世界に,アートマネジメントを押し込んでほしいと思います。そういうもののベースをきちんとつくってもらうような話をしていただかないと,ここでは舞台芸術に携わるとおっしゃっていますが,これは非常に大きな問題で,夕べも私の町で,生涯学習,社会教育から文化へどうテイクオフするかという話をしましたが,やはりこのあたりが完全に,教育委員会人事と教育委員会の世界の中で動いているのです。ですから,非常にたくさんいい話があっても,それ以上に伸びない。つまり総体として,地域の中でテイクオフしない。特に,今高萩さんがおっしゃったように,地方の町に行くと,もっと強いです。だから,ここで遠慮しないで,むしろキューレターとか,司書の研修の中にもそういう話が入っていいということです。現実の問題としては,そのあたりでもっと組んでいけるような話をやっていただきたいと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。こういう話って中教審ではどなたにお聞きすればいいのかわかりませんが,あのメンバーをザーッと拝見してみますと,あまり明るい人は……。
【青木文化庁長官】
 会長は明るいのではないですか。
【田村(和)委員】
 会長はどなたですか。
【田村(孝)委員】
 山崎さんです。
【田村(和)委員】
 山崎正和さんね。
【宮田部会長】
 でも,会長ってなかなかしゃべれないですよ。その辺にいた方が僕もずっと楽でいいのですが。本当に何人か,議論で盛り上がっていけるような環境が欲しいですね。そういう意味では,文化芸術に対しての部分は,メンバーを見ますとどうしてもどちらかと言うと,科学やあちらの方面に行っている。直接的日本国力みたいな感覚があるとすると,本当に教育というものがいいのかどうか。両極に必要ではないかという田村委員の話を聞いていても感じます。
【青木文化庁長官】
 例えば,これは役所だけではありませんが,企業とかが,地方に文化的な援助をするような場合,こちらの担当官が,アートマネジメントの専門の方がいらっしゃいますか,そういう方を寄こしてくださいと。そういう方にお会いしましょうという傾向が強くなって,そうしたらそういう人が必要だということにだんだんなってくるでしょう。だから,そういう傾向を少しでも助成できればいいなと。地方自治体でもそういう人を育てると。
【宮田部会長】
 そういう人を育てようと。
【青木文化庁長官】
 そういう人を置かないと,やはり芸術振興というか,地方の町おこしとか,自治体おこしもなかなか難しいという傾向が出てくるといいですよね。
【宮田部会長】
 そうですね。少なくともその地域,地域にとって,今の長官の話ではないですが,その地域の中にそういう方がどなたかいますかと言ったときに,必ず最低でも教育委員会のメンバーか,長か,最低でもそこの町の話,文化の話,芸術の話,それから掘り起こしの部分,人間性の話などがちゃんとほかの町に行って話せる人,きちんと説明できる人が欲しいですね。そういうものがアートマネジメントというのだったら,とてもいいなという気がします。同時に,そういう人は,年齢を経た人でなければならないわけではなくて,来て数年でも勉強すれば,その町の面白さは,いるよりも逆に,ほかから来た人の方がよく見えたりする場合もあるわけで,そういうことを,吸収できる人間を育てることが必要だと思います。
【高萩委員】
 さっき部会長がおっしゃったように,文化祭をやるべきだということについてですが,もし言えるならば,文化祭はいろいろな時間の問題とかでできなくなったことと,それから指導ができないというようなこととかでやらなくなっている部分が多いと思いますが,むしろ学校がそれこそ地域の人材を活用して,文化祭とかをもっと豊かにしていきなさいというのがあれば,もっと豊かな文化祭ができると思います。今はどっちかというと,いろいろな問題があるから縮小して,指導もできないからやめていく方向になっていると思います。実際,それをやることで次にどんなことになるのか見えにくくなっていると思います。だから,それこそこの間,高塩さんがおっしゃったように,何か施策を提案するとすれば,「文化祭をやりなさい」と,ここで言うことが何か力になるならば,ぜひ言ってほしいなと思います。
【宮田部会長】
 あの中に含まれたものというのは,ものすごい総合力の。
【高萩委員】
 やると決めてもできにくい状況がきっとあると思います。どこをどうやったらできるようになっていくのかが,そこから見えてくると思います。
【唐津委員】
 実は,私は文化祭にかかわったことが2回ほどあって,2つの小学校でやりました。ある地域の小学校で,ダンスとか音楽のアーティストと一緒に作品をつくらないかという提案をしましたが,まず上げていくときのシステムが非常に難しいのです。教育委員会という問題,その地域の市長さん,町長さんの判断,それから校長先生の判断,どこかで「ノー」が出たらできない状況があります。1つの学校に持っていったところが,校長先生が乗り気で,ぜひやるとおっしゃったのですが,市長さんレベルで,NGになりました。それから,もう1つの学校は,校長先生がやはり非常に理解があって,地域のコミュニティーとアーティストがかかわる機会があるのであればということで,文化祭,大々的にアーティストにかかわっていただいてということができました。実は,こういう話は,ときどき地域の方に起こるのですが,どこにどのように持っていったらうまくいくのかというラインが,本当に個人に委ねられているところがあって難しい状況です。学校の先生が面倒を見ていくという部分で皆さん困難を感じていて,私も子供がいますが,うちの小学校が去年までは毎年文化祭をやっていたのが,来年から文化祭と体育祭が隔年になることに決定しました。ということが,多分全国的に起こっているような状況があり,そういった中で,アーティストが教育現場に入っていく可能性を推し進めると,意外とうまくいくのではないかと感じています。
【尾高委員】
 文化祭をやめたというのは,全然知りませんでいした。とんでもないことです。それは文科省にうまくやってもらう方向がいいと思います。でも,結局どこから来ているかというと,教育のための時間が欲しいということが原点にあると思います。昔,コシムラケンイチさんがニューヨークで,議員の奥さんたちの,いわゆるツアーがあって,その人たちを前に講演会をしたら,「日本の文化は駄目ですね」とある女性が言った。そうしたら,コシムラさんは,一言で,「いや,議員の人たちが勉強ばかりするからいけないのです。朝から勉強会をして,だから夜演奏会なんか行かない。少しの時間に美術館でも行かないですよ。そんな人たちがやっているのだから,文化なんてよくならないのですよ。」ということを随分前におっしゃったのですが,特に勉強,勉強で,いまだにね。でも,優秀な人が最近生まれてきてないという気もします。結局,今ここにいる人たちも含めて,本当に自分たちが文化を,芸術を,エンジョイしているかということ。エンジョイしている人たちが大人の中に少ないからこんなことになってしまっていると思います。ですから,例えばクラシック音楽でいうと,鎖国をしていたときに,向こうで発展したものを無理してこっちに持ってきたから,ひずみがあった。そして演奏家はどんどん追い越してきました。作曲家も大分追いついてきた。でも,裏方さんは追いついてないという現状でこういうことなのではないかと思います。
 ですから,やはりいろいろな意見が全部わかるにつけ,アートマネジメントを推し進めるということは絶対に必要だと思っています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
【田村(和)委員】
 先ほど申し上げたかったことは,結局教育の分野に隠れアートマネージャーがいっぱいいるのです。要するに,アートは1つの感覚ですから,教育で夢中の人に,あなたはアートをやっているのだと言ってあげなければいけないと思います。そのあたりが図書館,美術館,博物館という縦割りの中で,文節化されている人たちはないです。実際,いろいろなところに行く,人材というのは,教育からたくさん出ていますから,やはり学校教育,社会教育,生涯学習,それから文化創造みたいな形で,ある意味で,連続音でも構わないと思うので,そういう意味で,文化は,アートというのはもう少し実際に担っている人たちのところにもっと出していくことをやっていただきたいなという感じです。特に,美術館,博物館,図書館は,演劇と舞台芸術と違って,もっと裾野が広いです。たくさんの人の目に触れています。ですから,非常に大きな機会をつくっていると思うので,ここのところに,やっている人にアートそのものの感覚をもっともっと共有できるようにしていただきたいと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。先ほどの尾高先生の,3つの枠があって成立するのですが,取り残されていたのが,アートマネジメントであるという図式がありましたが,これはまさしくそのとおりで,例えばそれが歌舞伎,あるいは文楽だと,もちろん国もしっかりそれをわかっていなければならないし,そうではないものに対しても,今これからちゃんとそれを平行して持っていきたいというのが,この会議の非常に大事なところだと思います。これによって日本の国力,いわゆる文化力,芸術力は高まります。そうすればプラスアルファで,アーティストももっと高い位置に行けるし,世界に行っても全く恥ずかしくない人たちの数が今以上に増えていくことになると思います。そうすると,日本型のアートマネジメントは,遅れていたものを取り戻せばいいと,すごく簡単な話ですが,それがなかなか行き切らないのは論点がやはりもう少しぼけているところにあると思います。パルバース先生,どうですか。ドイツに行ったときに,逆にすごく日本がよく見えたような,先生は今度逆に日本に来て,今までの話ではないですが,日本型というのは一体どの辺にあると。
【パルバース委員】
 日本の何ですか。
【宮田部会長】
 日本の今後進めるべきアートマネジメントの形みたいなものは。色でも結構ですが。
【パルバース委員】
 そうですね。僕はどうも大学に鍵があるのではないかと思います。昔からそう思っていました。ドイツもあきないし,アメリカはよく知りませんがが,ポーランド,イギリス,オーストラリアの事情はかなりよく知っているつもりですが,やはり大学から出たマネージャーとか,あるいはアートマネジメントになろうとする人たちが,演劇の場合は,舞台監督の仕事から,照明係の仕事まで,全部知っているわけです。習ったこともある。経済もそうですし,批評もそう。特に,ポーランドのホール。ポーランドの演劇大学では4年間ですが,例えば俳優になりたい人,演出家になりたい人,批評家は5年間ですから,プラスもう1年です。とにかくその人たちがすぐ現場にスッと入ります。みんながみんなではないですが,非常にパーセントが多いと思います。オーストラリアもそうです。なぜそうなるのかは,やはり習ったことがすごく現場で尊重されているからです。先ほどの話ですが,むしろ大学がやっていることをもっとわかるように。そして,地方の問題ですが,日本の地方は,私は今年で41年目ですから,ほとんど歩いていますが,地方に文化がありません。文化の大切さを理解している政治家もほとんどいないのではないかと。リーダーたちがそうだから,そのギャップは大きいと思います。優れた人が出てくると,すぐ東京にやってくるわけです。だから,もっともっとそれぞれの地方に,ユニークな文化があるのではないですかと。北海道から沖縄まで。それを生かすアートマネージャーとか方法がないと,いい人が出るとすぐ逃げてしまうわけです。
【宮田部会長】
 そうですね。地方だから,いわゆる地域だからというところにこそある1つの芸術があったとすると,それを育てる人と同時に,政治的な部分においてもいろいろな意味においても,バックアップは必要です。見てもらっているというだけで頑張れるものね。
【パルバース委員】
 そうですね。でも,明治以来,日本は逆の方向,中央主義の方に行っているわけですから,それをリバースするのはちょっと大変ではないかと思います。でもそうしないと,ウンノタカミチさんも言っておられたように,やはりリーダーたちにもっと理解してもらわないと駄目ですから。それもアートマネージャーの仕事ではないかなと思います。課題が多いと思います。
【尾高委員】
 僕は,今札幌のオーケストラをやっていますが,随分昔,1981年ごろも札幌のオーケストラをやっていました。そのころにちょうど札幌に芸大をつくろうという話がありました。僕らはそれを一番いいアイデアだと思って,札幌交響楽団のメンバーが教えに行って,そしてコミュニケーションをとって,卒業したら札響になるべくいれるようにする。そして,もしくは外国に留学しても,札幌市がお金を出して,そしてそのかわり2年勉強して帰ってきたら,必ず最低3年は札幌で活動しろとか。そういうことで,ローカリティを守らなければ駄目だということを言ったのですが,芸大の話すら消えてしまいました。そして,例えばオーストラリアのオーケストラも,英国のオーケストラもそうですが,今度メルボルンに行くというと,向こうからメールが来て,そのメルボルンの音楽学校の学生が4人ほど練習で一緒に弾いていいですかって。もちろんいいですよと。そして,優秀だったら本番も2人ぐらい弾かせてあげたい。そういうふうにそこの学校はぴったり合致しているのです。ですから,こういうことは日本でもやればいいのですが,東京に関して言うと,学校が多過ぎます。音楽学校がたくさんあるから,東京に今二十幾つオーケストラがあって,それも多過ぎます。100ぐらいないと到底卒業生を吸収できないほど,音楽学校は東京に集中しています。だから,どうですか。思い切って,東京芸大を札幌にでも……。
【パルバース委員】
 この会議,1回くらいは地方でやるべき。お金はかかりますが,どこか地方に行って,地方の方々に来てもらって,後ろからバンバンと。何をやっているのだと。そう言わせたいですね。東京でやって,僕らいい気持ち,寛大な心でやっているわけですが,寛大な心じゃ,少し物足りないのではないかと。
【宮田部会長】
 寛大ではないですね。現場でこの間,やったのですが,先生おいでにならなかった。
【パルバース委員】
 すみませんでした。
【宮田部会長】
 とてもいい話だと思います。また自分のところの話をして恐縮ですが,法人化になって就職を出しているのはうちだけですから,みんな今縮こまっているのですが,出したはいいが,この後どうするかというのが課題です。例えば今度アニメをつくるとか,横浜につくるとか,毎回いろいろなところで,もう上野だけにこだわらないようにしないと,芸術というのは駄目なのではないかという意識が頭の中であります。常に出ていく。振興宗教と芸術は外に出ていかないと,信奉者はいない。極めて強烈な話をちょっと……カットしておいてください。そのぐらいの意気込みで動いていますので。そうすると面白い人がいっぱい来るということです。何しろ,教育は不思議ですが,ゼロの人を教育することはできないのです。何かがあるというのが見えたときに,例えば黄色を持っている子がいたら,黄色に対してより黄色がきれいになるには赤を入れたら,ほらこんなに真っ赤な太陽というけど,あれはオレンジなんだよみたいな話ができるわけじゃないですか。そうしたときに,3つの色の話ができるわけです。ところが,色のない人にはなかなかできないのです。そういう色を見つけられるような環境,それを言える,次の色を投げて混ぜ合わせることができる,ここに教育が出てきて,新しいその人の個性が出てくると思っています。それを具体的なものでどうやって持っていくかという,このアートマネジメントの,本当に曖昧模糊としているが,絶対これからやらないと,地域は育っていきません。また私の話ですが,5歳のときに,扇子とそろばんを親に持たされて,どっちを選ぶかと言われました。これは,経済の人間になるのか,アーティストになるのか,佐渡は能がいっぱいあるでしょう。33の能楽堂があります。僕は,扇子を選びました。結果的には,能は小学校に入って忙しくなって,それまでで終わったのですが,たった2年ですが,そのベースがいまだにものすごくあります。つまり人様の前で,自分がどういう立ち位置をしなければならないか。瞬間で,こんなときに覚えたわけです。こういうことはすごく大事だと思います。その後,獣医になろうと思いましたが,結局,その立ち位置の方が面白いので,こうなりました。こういうことが地域だからこそできるのです。そのときにそれを言える親がいる。親というのは誰かというと,僕の親ではないのです。周りの環境です。そういうのを育てていくことをやれるのが,このアートマネジメントだと思います。大きな意味のある人間の生き様みたいなものをつくれるようなところにそれがあるのではないかと思います。日本型アートマネジメント,ちょっと面白い話ですね。
【唐津委員】
 アートマネジメント人材に対するマーケット側の需要に合った資質能力を有する人材ということで,マーケットの中で,どのような資質を欲しているのかを考えてみますと,地域の特性を理解しているけど,グローバルな視点を持てる人が必要なのだと感じます。そういった意味では,先ほど客観性があるという発言があったかと思いますが,客観性をもてる人材がやはり必要だと感じます。喫緊の例で申しわけありませんが,私は15年前に愛知芸術センターに勤めることになって,愛知県に初めて行きました。出身地でもないので初めて足を踏み入れる土地だったわけです。現代アートの舞台芸術の分野に関して企画制作を担当したのですが,愛知県は古典の方が好まれる非常に保守的な場所でした。そういったところで,現代芸術をテーマにした企画を立て始めたのですが,3年位たっていくうちに,あるパイ以上は,お客さんが増えてこないなということを痛烈に感じました。そこで,そこにいる人たちに,接点をもっていただけるにはどうしたらよいか,ということを考え,地元の公演を見るため,様々な公演に足を運ぶようになりました。特に,愛知県の場合は,ダンスといえばバレエが非常に盛んですので,バレエ団の公演を中心に地元の公演に足を運ぶことを10年続けました。10年たって,ある程度どういうバレエ団がある,どういうダンサーがいるということを自分で把握した段階で,初めてその人たちと仕事ができると思っていたからです。主催事業で与えられた使命である「現代芸術」という分野と地域にたくさんある地元の団体のダンサーたちをどうにかうまく結びつけながら企画できることを考えて,10年たって,1つ大きな企画を実現することに踏み切れました。ちょうどそのときに,拠点形成事業の助成金のタイミングがぴったり合いましたので,3年間継続して,こういった方針でやってみましょうということを県に申請して,3年間,ある程度継続してできるのであればいいのではないかということで,今まで全くやってなかったプロジェクトを立ち上げることができました。考えてみますと,客観性ということでは,私が愛知県の人間じゃなかったからよかったという部分もあります。地域を知るための時間を待っていただけたというところがもう1つ大きかったと思います。やはり2,3年で結果を求められていたら,もしかしたら難しかったかもしれない。もう1つの方法として,例えば,極めて客観性を持った地域の特性を知る人が,アドバイザーとして間に入っていただければ,もう少し早く実現できたかもしれない。地域によって,どういった方法がよかったのかというのは当然違ってきます。あまりうまくいってない文化施設は,東京から2,3年,地方の劇場の立ち上げに,手伝いに行って,その地域のことをあまり知らずに,東京のサテライトのような形で企画する場合か,あるいはその地域出身の方が,グローバルな視点を持てずにただ地元の団体を起用している場合。どちらかに偏りがある場合が多いような感じがしています。ですから,グローバルな視点を持ちながら,地域の特性を考えることができる人材を有することができるかが,特に地域の文化施設にとっては重要だと思います。
【宮田部会長】
 わかりました。毎回話していると,面白い問題とか提案とか,これは駄目だったねみたいな話ばかりが出てきますが,その中に1つ1つ非常に面白いところ,注視されるところが結構あるので,いいなと思いますが,朝まで行ってしまうから,この辺で切ります。少なくとも提案をしなければいけないわけですから,今日の話の中で,大学はどうあるべきかと。大学はやはり発信しなければならないのではないかと。
【パルバース委員】
 もう1つあるのですが,後で……。
【宮田部会長】
 それから,今の唐津先生の話ではないですが,実際に現場でどうやって,ベテランの人がいたら,その人との関係をつくるかと。それから,キャリアアップ全体に実施をしないとうまくいかないというところの話を含めて,日本人ってどうなんだろう。何か資格をつくらないと何か満足しないような,私自身すごく不安定な気持ちがあるので,何かそんな意識があるのかもしれないですね。先ほどの長官の話にもありましたが,どこかある地区,地域でも構いませんが,モデルケースをつくるとします。そこにドンといろいろなものを投入して,人材もそうですし,資源もそうだし。そういうことによって,そこにあった昔からの何かと新しい何かの両方を,2,3年ぐらいテストケースをしてみる。ここにいらっしゃる先生方がときどき行って,その中の輪に入る。ということをして,それが1つの教科書ですよみたいなものをつくるというのも,1つの生きた意味での教科書づくりがアートマネジメントの中に必要になってくるのではないかと思います。大学も結構それができるのですが,やはり座学です。この仕事って,座学の仕事ではないわけです。現場の仕事であるわけです。
【高萩委員】
 今のところに関連してですが,さきほどから,地方はうまくいってないと言われています。しかし東京は,ある意味いろいろなものが集中しているが,決してうまくいってないわけです。東京に,アーティストがいる,アートマネージャーがいる施設もある,大学もあるのに,うまくいっていない。東京である種のモデルケースをつくった方が早いと思います。今,東京ですごくうまくいっている美術館,劇場があるかと言ったら,そう数はないと思う。今,モデルケースをつくるとしたら,どこかほかの地方で何かやってみるというよりは,日本型のモデルケースをつくるのであれば,東京が一番いいモデルケースになると思います。
【宮田部会長】
 そういうケースがあると,各地区の教育委員会などは,すぐ持ってきて,それと近いことをやりましょう。それを我が地方と合わせて,それに合わせたものでつくっていきましょうとか。すごく安直重視型の民族だから,これ何か,即効薬でいくならば,そういう安直のモデルケースをつくるのは必要なのかなと。そういうのがあると,具体的に,その論法もこの中ではいっぱい出てくるような気がします。なかなか先生方の話はいいですが,具体性がやはり出てこない。時間が少なくなってきました。どうしましょうか。
【パルバース委員】
 1つのモデルケースとして外国にあるのは,芸術祭です。各地方の町で,アデレード芸術祭,パース芸術祭,シドニー芸術祭,メルボルン芸術祭など,規模の大変大きなもので,1カ月ぐらいやっています。ローカルなものもあれば,ベルリンフィルも行くし,ピナ・バウシュみたいな人も行く。その監督,芸術祭のジェネラルマネージャー,アートマネージャーですが,その人が,例えば半年ぐらい世界中駆け回って見て,いろいろなマネージャーたちと会って,自分のビジョンでプログラムをするわけです。一番世界的に大きなのは,スコットランドの芸術祭ですが,エジンバラという町は,人口50万ぐらいだと思いますが,1カ月以上やって,ヨーロッパ,ポーランドからも人が行きますし,ロシアからも行くわけです。そういうのが日本の地方の町ではほとんどないのではないかなと思います。ただし,そのマネージャーは,ほとんど外国人です。オーストラリアの場合は,この人ならとアイルランドから引っ張っています。もちろんオーストラリア人もいるわけですが,そうするとその地方,パースみたいな町とか,アデレードという100万人の大都会も,60年代からアデレード芸術祭は根付いて,ドン・ダンスタンという素晴らしい知事がいて,60年代後半から74,5年まででしたが,彼のビジョンで,それがすごく拡大して……。
【宮田部会長】
 大体わかった。
【パルバース委員】
 そうするとそれが1つのモデルケースになるのではないかと。実際に町の人たちが切符を買っていくわけです。経済的にもうまくいくわけですから。
【宮田部会長】
 その小さい版が,実は小学校や中学校の文化祭だったのですが。
【富澤委員】
 でも,文化庁は芸術祭をやっているではないですか。新たにつくらなくても。それをうまく……。
【パルバース委員】
 文化庁ではない。その町の人たちが自らイニシアティブをつくるのですから。文化庁から,東京からでは駄目です。
【田村(孝)委員】
 でも,あるときは200もあると言われた,各地にある音楽祭,演劇祭は,きちんとマネジメントもできて,ボランティアが機能している地域は確実によくなっていきます。そういうところはあります。例えば松本で開催されている「サイトウ・キネン・フェスティバル」は,行政と芸術家とそれから市民が,対等の場できちんと音楽祭を盛り上げようとしています。音楽祭を利用して,地域を活性化しようということをきちんと考えています。そういうところが全く日本にないわけではないのです。それは結構地方にあります。
【田村(和)委員】
 この間,静岡,浜松でしたか,ものづくりネットがありました。アートマネジメントはやはり裏地の話なので,これが表に出るのはとても恥ずかしいことですが,今の芸術祭だけではなくて,それに合わせてアートマネジメントコンテストみたいなのもできるのではないかと思います。つまり先生がいつかおっしゃった朝ドラの主人公にアートマネージャーを演じてもらうとか。
【宮田部会長】
 そうそう,いまだに僕は忘れていませんよ。
【田村(和)委員】
 そういう形である意味でくっきりとアートマネジメントということが,大学で教えるとか難しい話ではなくてね。それからいろいろ探してみましたが,アートマネジメントの読本みたいなものはないのです。手引書みたいなものは。
【宮田部会長】
 ないです。
【田村(和)委員】
 簡単なのはいろいろあるけど,今ここで話しているような話。それから特に私のような図書館とか博物館も全部含めて,地域社会の中でというみたいな話はないですよね。何かそういう裏地を表に出して,またしまえばいいのですから,そういうものが,舞台芸術の話だと,よく米屋さんがおっしゃるように,舞台の装置は技術の話で,とても大切な世界なのです。ああいうことを芸術祭に合わせてやっていくことはできないかなと,この間,ものづくりオリンピックを見ていて,何時間の間に舞台をどうするとか,そういう話ってできませんか。そういう感じがしました。
【宮田部会長】
 僕もオリンピックを見ていて,結構通じるものがあるなと思いました。
【富澤委員】
 兵庫県の宝塚市に宝塚歌劇団というのがあります。今,東京に出ていますが。3年ほど前,それまでは3つ組がありましたが,それを4つにしました。なぜ4つにしたかと言うと,4つあると,1つは宝塚市の本劇場で舞台公演をやる。もう1つは東京でやる。もう1組は次の出し物の練習をしているわけです。これでもう手一杯。ところが当時の阪急の社長がこれでは駄目だという問題提起をしました。なぜ駄目かと言うと,宝塚の宝ジェンヌはほとんどが地方の出身です。地方を巡業して回ることによって,宝塚歌劇を広めると同時に地方にいる少女たちに憧れを持たせて,そして宝塚に入りたいという人たちを掘り起こしてくるのです。そういう需要があったので,もう1つ,つくって,4組にして,1つは必ず地方を回っていると。これはもう立派なアートマネジメントだと思います。こういうことができる人がまさに必要で,東京は需要がいっぱいありますからマーケットも大きいし,いろいろな刺激もありますし,インセンティブもありますからいいのですが,やはり問題は地方とか,小さなところです。そういうところにどうやってこういうアートマネジメントという考え方をしみ込ませるかということだと思います。ぜひ,地方にインセンティブをつくるような形で提言をしていきたいと思います。東京はもう要らないと思います。たくさんありますから。
【宮田部会長】
 東京は要らないかどうかは横に置きますが,ごちゃごちゃして結局は何も整理されていないのです。すごく何かありそうな気がするけど,どこに頼んだらいいかって,意外と頼みようがなかったりするものが結構あったりして。でも,その4組というのは面白いですね。
【富澤委員】
 非常に活性化しました。
【宮田部会長】
 僕は,宝塚の方は知りませんが,東京のあそこの前にいると,皆さん一生懸命寒い中並んで待っています。出てくる人を待っている。あれはすごいなと思います。さて,大変申しわけありませんが,あと15分ぐらいしかありません。いろいろな話をしましたが。舞台芸術の全体に,いろいろ触っていただいてはいますが,もう1つ詰めさせていただきたいのですが,資格の問題を少し前にも議論しましたが,いかがでしょうか。それは大学の教育の中でも当然含まれてくると思います。カリキュラムの中に含まれてきたりするので,アートマネジメントそのものの資格に関して,どなたかもう少し深いところの話などありますか。必要であるかもしれないし,そうではなくて,そんなことをやるとかえってそのためにろくな人間なんてできないという話も必ずあるわけです。まさに両極をもった話ではあると思います。
【尾高委員】
 僕は資格がなくていいと思う方ですが,資格があってもいいだろうと思います。別にあったって構いません。学長の前で申しわけないですが,大学の卒業証書があってもなくても構わないというのと似ています。難しいと思うのは,この資格を誰がどのように決めるかといったときに,特に舞台の監督とか,その辺は資格の項目が非常に専門的になってきて,それこそ僕たちは決めようがありません。舞台監督の人に聞くと,多分みんな言うことが違うと思います。ですから,実際につくるのはとても難しいと思います。でも,あってもいいかなと思います。その反面,ソフトウェアの方は,例えば英語ができるとか,音楽をよく知っているとか,演劇をよく知っているとか,そういう資格は意外と審査しやすいかなと思います。実際の舞台の現場,裏方さんに関しては,それこそ劇場によって全然仕組みも仕方も違いますし,難しいのではないかと思います。ここにある1,2,3という,2,3はもちろん絶対に必要ですが,大学がよほどいいカリキュラムをつくってくれないと無意味で,それよりか丁稚奉公で,今の名舞台監督の横で10年働いた方がすごい人ができるでしょう。だから,1とか資格に関しては,非常に曖昧だなという感じがします。
【宮田部会長】
 横浜で,映画が大学でつくれるかという議論をオープニングの日に,一番最初にシンポジウムでやりましたが,大変おもしろかったです。
【米屋委員】
 新国立劇場の伊藤部長がおっしゃっていたように,アートマネジメントに資格を導入したとしてもそれがどういうふうに現場で生かされるのかという絵図がなければ,実効力を持たないのではないのかなという気がします。どちらかと言うと,あってもいいけど,つくるのが大変だったら多分あまりできないのではないかなと私も傾きがちですが,それよりも劇場の方で政策的誘導という言葉がありましたが,アートマネジメントに関しても,こうあるべきだというような枠組みとか基準を示して,そこをクリアしているところには重点的な支援が与えられるという形での誘導を明確に出していった方がいいのではないかと思います。今日の話を聞いていても,先ほどの宝塚の話にしても,ほかの劇場の話にしても,要するに予算の決定権を持っていて,事業をグルッと変えられる人というところが,ひょっとしたら重要なのではないかなと思います。現に公立文化施設では,いろいろな規則とか要綱とかがあって,それが自由にならないから変えられないでいると察しています。そうすると予算をどういうふうに配分できるかという実験をどこまで現場に下ろせるかが要になってくると思いますので,そのあたりとの関連が,やはり重要なのではないかと思います。1ページ目の(1)の2つ目の○に,芸術家は創造活動に専念し,とありますが,現実には専念できず,アルバイトをしなければ成り立たないというのが日本の多くの芸術団体の状況で,今日は時間がないので細かくは言いませんが,これを本当に専念できるような支援の仕方とか,登用の仕方を一方できちんとやっていけばいいのではないのかなと思います。今,自称,私はアーティストですという人も,発表の機会が比較的容易に得られるというところでは,日本は民主的だと,門戸が開かれているということが言えると思いますが,頂点を極めるというところになるととても困難がいっぱいあると思いますので,そのメリハリをちゃんとうまくつけられるような支援制度と絡めて行くことによって,あるべきアートマネージャーの姿がもっと明確になってくるのではないのかと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。別に行政に責任を振るわけではありませんが,富澤委員からも話がありましたが,意外といろいろな芸術祭って結構国の方からやっています。いろいろな地域に。だけど,丸投げしているのか,ちゃんとやっているのか。その中にこれだけ先生方に議論をしていただいて,確実に1行,アートマネジメントという部分に関しての項目を必ず振っておく。それによって,それをいただいた人たちが,その県だってあるわけではないですか。国民文化祭とか,いろいろあります。あの中に,私は委員になったりしていますが,もったいないなというときが何回かあった記憶があります。あの中にきちんと項目があることによって,それがまさしく生きた教科書として蓄積されていくことがすごくあるような気がしますが,その辺,どんなふうに,こちらに振りましょうか。例えば,国民文化祭とか何とか芸術祭とか,それを成功させることに対して一生懸命やるけど,人材育成に関して一生懸命やっているかと言うと,そう思いにくいときがときどきあります。
【高塩文化庁次長】
 芸術祭は,国の直轄で直接やっていますし,国民文化祭も県と共催ですが,どちらかと言うとそういった国主導の事業で,先ほど田村孝子先生が言われたような,各地域にあるいろいろな演劇祭とか,いろいろな催し,そういうものに対しては,あまり直接的な……。それで一番私どもが忸怩たるところは,先ほど,唐津先生からも話がありましたが,芸術拠点形成事業です。これは平成14年につくり,そのときに合わせて基本法が通っていますが,基本法の25条,26条に,国は芸術家等の配置等への支援と書いてあります。芸術家等の等に一番意識したのは,間違いなくアートマネージャーであり,舞台技術者なのです。芸術の拠点であるホール,劇場に,そういう専属の人がいなければ成り立たないであろうと。そういうものに対して,私どもは支援をしようと,この芸術拠点形成事業をつくり上げました。平成17年度からは事業補助という形で支援しています。一般的になぜそう難しくなったかと言いますと,地方の人件費,人材の費用を国が出すことは全般にやめようというのが国の流れです。どちらかというと芸術拠点に対しては,まとまったお金,使い道のいいお金をある程度支援して,その中で事業に使ってもいいし,人の配置に使ってもいいというようなコンセプトでつくり上げたのですが,現実にはそうなっていません。芸術拠点形成事業は,先日の芸団協のこの10年の,お願いしたレポートでも一番評価の高い事業だという話もいただいていますので,今回アートマネージャーを1つの核にして,我々の支援の対象先として,そういった人材をちゃんと配置していること。それから,今,芸団協と一緒にやっている安全基準とかがしっかり確立しているところを重点的に支援していくと,そういうスキームも考えたいと思っています。なかなか直接の支援は人件費を置けないとすれば,ここに今日,取り組むべき方向で書いているような現職研修,人材を育てる。また,大学で人材育成をする際に,コラボレートするときに支援をしていくこと。それから,舞台技術者は別の観点で,場合によっては,民間的な資格もできればいいなと。今も現実にあると思いますが,そういった安全を確保するような人間については,1つの資格みたいなものができればそれに越したことはないと思いますが,そういった舞台技術者に対するいわゆる積極的な研修,そういうものを施策としてやれないかということ。それから,長官が申し上げたようなモデル的な地方に重点的にやるというのは,平成14年に,文化体験プログラムという事業をつくり,子どもたちの文化芸術体験を本物の舞台芸術ということで各学校に芸術団体を回しています。伝統文化子ども教室と伝統文化と大きな柱が2つあります。芸術家派遣もあります。各地域に集中的にそういったものを年間を通じてやるという話は,あまりうまくいかなかったのです。やはり地方がなかなかそこまで積極的に前に出なかったというようなこともあり,今回は,子どもという観点ではないと思いますが,モデル事業についても,こういった4ページ,5ページの提言を整理させていただければ,今行っている施策に対する1つの特化ができますし,また新たな支援方策で一番わかりやすいのは概算要求,予算で支援をしていくということで,予算と税制と先ほどから言われている法律と,地方交付税と,この4本ぐらいが政策手段で,それをどうやって1つ1つ実現するかというのが現実の話としてあるわけです。そのための1つの提言をまとめていただければというのが,この政策部会でお願いしたいことです。
【宮田部会長】
 そうですね。それで財源がきちんと生かされているかどうかというときに,この部門に対するお金を投げたときにキャッチボールするミットがあまりにも希薄であるということがそれをバックアップする論法をつくることがこの部会の大きな目的ではないかなと思います。どうでしょうか。そういうときに,一言先生方に向けて,インターンシップの部分で,幅の広さ,狭さがすごくありましたが,すごいいい若者の教育体験になるのではないかという気がしますが,極端に言うと2日ぐらいで終わるところもあれば,2カ月ぐらいかけて丁寧にやるところもあります。提言として何日やらなければならないとは言えませんが,少なくともあの実体験は教育実習以上にもっと面白いものがあるような気がするので,このアートマネジメントに関して,少し効率を上げる方向があった方がいいのではないかぐらいのことは言いたいと思いますが,いかがでしょうか。
【パルバース委員】
 どこへインターンに行かれるのですか。日本のどこかですか。
【宮田部会長】
 日本の中。
【パルバース委員】
 外国では駄目ですか。
【宮田部会長】
 全然構わないです。国のことなんか全く考えてないです。
【パルバース委員】
 そっちの方が。
【宮田部会長】
 なかなかね。
【高萩委員】
 学部生を出しても全然駄目です。これはもうはっきりいって駄目です。なぜかと言うと,やはりヨーロッパとかの方が芸術に対しての支援がある種厚いわけです。それを日本の現状を知る前に知ってしまうと,日本に帰ってきてから,どうしても違和感を持ち続けます。日本の現状をちゃんと知って,日本はいいですよ,ちゃんと古典芸能もあって,お稽古事の世界もしっかりしている,アマチュア文化がしっかりしている日本の文化というのがあって,それをちゃんと体験してから外国に行って,外国のやり方を見れば,フランスはこうやっているのだな。ドイツはこうやっているのだなと。イギリスはこうやっているのだなとわかるわけです,学生が行ってしまうと,西欧の国家は近代社会ができ上がったときに,なぜアートを援助しなければいけないかということについてそれなりの理論がなされていますので,その中のアートを学んで帰ってくると,かわいそうなことに,20代前半で行った人たちのかなり多くの人は芸術界を離れて行ってしまいます。日本の現状では,自分の生きているうちには変わらないだろうと思ってしまうようです。
【宮田部会長】
 どっちにしても体験することがすごく大事であるということにおいては変わらないということですね。
【田村(和)委員】
 インターンシップの話は,本当に身近すぎて,受ける方も受け取る方も,出る方も非常に問題が多いのですが,やはりこの手法は,今いろいろ改善されてきています。例えば,サービスラーニングのような形で,コンパクトだけどきちんとした輪をつくる。つまり出しっぱなしにしないで,大学の方に返ってきた話をどういう形で循環させるかという方式が今いろいろなところで出てきています。そういう方向にやっぱり改善していく余地は随分あるような気がしています。ですから,ここは単にインターンで出すというのではなく,大学がどう責任を持つかという形です。それから,今おっしゃったように,いろいろな年齢層,大学生,学部生,大学院のレベルがありますから,これに相応しい選択ができると思います。それから,複数の大学で連携して,そういうことを一緒にやっていくみたいなことを限られた指導の中でやるのは幾らでも方法があると思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。時間が来てしまい,進行がやっとで大変申しわけありませんが,1つ1つが大変興味深い話なものですから,論点整理がすべてできたとは思いませんが,事務局の方はいかがでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 毎回話をいただいてありがとうございます。時間がなく,本日の審議はここまでということですが,中間報告案という形でまとめていきたいと思っていますので,言い足りなかった点とか,帰宅後に気づいた点などございましたら,メモをしていただき,事務局までメール,ファックスでいただければ,それを含めて次回の資料に反映をさせていきたいと思いますので,どうかよろしくお願いします。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。今,清水さんからの話のように次回まとめていきたいと思います。アートマネジメントは,必要だ,必要だということを言い切るような,位置点をきちんとつくっていく,それは大学教育でもそうです。現場でもそうだし,それから行政の方でもそうだしということを,その位置が今まで曖昧としていたところに,スパッと入れたいというのが僕らの願いかもしれません。そんな感じがします。ご協力どうもありがとうございました。
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