第5期文化審議会文化政策部会第6回議事録

1 日時 平成20年1月23日(水) 10:00〜12:00
2 場所 合同庁舎7号館 東館16階 特別会議室
3 出席者
(委員)
唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 富澤委員 宮田委員 山内委員 吉本委員 米屋委員
(事務局)
青木文化庁長官 高塩文化庁次長 尾山文化部長 清水芸術文化課長 他
(欠席委員)
尾高委員 パルバース委員 三林委員
4 議題

(1)アートマネジメント人材等の育成及び活用について ○審議経過報告(案)審議

(2)その他

【宮田部会長】
 定刻となりましたので,始めさせていただきます。寒い中,御出席いただきありがとうございます。議事に入る前に事務局から配付資料の説明をお願いします。
【清水芸術文化課長】
 <配付資料の確認>
【宮田部会長】
 ありがとうございました。では,審議経過報告の案についてお願いします。
【清水芸術文化課長】
 資料3と4ですが,前回までの部会での議論を踏まえ,事務局で審議経過報告の原案を作成し,各委員にお送りしたところです。非常に短い期間であったにもかかわらず,多くのご指摘,ご提案をいただきました。本日配付した資料3,4はいずれも,委員の皆様の意見を踏まえて修正・改訂したものです。資料3,4は内容は同じですが,資料3が,修正した部分を溶け込ませて,文章として整理し,関連資料を添付したものです。最終的に総会に報告する審議経過報告案は,こういった形になります。資料4は,事務局が策定してお送りした原案について,委員の皆様からいただいた意見を踏まえて修正した部分を赤で示したものです。時間も限られていますので,資料4をご覧いただきなら,事前にお送りした案から変更された点などを中心に説明したいと思います。目次をご覧ください。全体の構成ですが,まず趣旨,経緯などをまとめた「はじめに」をつけて,1が基本的な考え方,2が現状と課題,3が具体的な方策で,前回まで議論いただいた論点整理と同様の構成です。それから,4として,これは論点整理にはつけていませんでしたが,3の具体的な方策に関して,項目別ではなく,国,地方公共団体,大学等,文化施設等,関連する主体別に役割分担を整理するということで,役割ごとに並びかえています。そして,最後に「おわりに」をつけているというのが全体の構成です。報告全体に共通する用語の整理について,ここで一緒に説明をしたいと思います。目次でも修正している「文化芸術機関」という表現ですが,これは前回までアートマネジメント人材の活躍の場所という意味で,劇場・音楽堂などの文化施設,文化芸術の団体,中間支援機関などを例示として挙げ,これを「(以下「文化施設等」という。)」と略称を振っていましたが,報告を途中から読む場合もあるので,「文化施設等」と略称にすると,文化芸術団体が含まれているかどうかが分かりにくいのではないのか,誤解を与えるのではないかという指摘がありましたので,劇場・音楽堂などの施設と文化芸術団体などの両方が含まれるような誤解を与えない表現ということで,「文化芸術機関」という表現にしました。それから,目次には出ていませんが,もう一つ「文化施設」という表現についても,劇場・音楽堂を中心に論じて「文化施設」という表現を使っているときには,これも具体的に記述した方がわかりやすいということで,「文化施設」という表現を「劇場・音楽堂等」という形に書きかえたところが報告全体を通じて数多くあります。1ページ「はじめに」です。ここは,当文化政策部会における審議の背景,また審議の経過,今後のスケジュール等についてまとめたもので,特に修正はありません。2ページ目から基本的な考え方,まずアートマネジメントの意義ですが,委員の皆様からの意見を踏まえて,正確にわかりやすくという観点から,貸し館事業と主催・共催事業の考え方について,追加・修正を行っています。次に3ページ上の方で1項目を追加しています。これはアートマネジメントの充実が重要ということですが,1人のアートマネジメント専門人材の力だけでなし遂げられるものではない,アートマネジメントの人材の力に加えて,文化芸術に関わるすべての人材がアートマネジメントの視点を持つことが大事だという指摘がありましたので,これは基本的考え方に追加すべきと考え,追加しました。3ページの下の部分については,用語あるいは表現について,現状を踏まえ,より正確にということで修正・追加をしたものです。4ページですが,アートマネジメント人材の育成・活用の必要性で1項目を加えています。これは,人材の養成に当たって,これからアートマネジメント人材になろうとする人への教育,現職者の研修,さらに関連職種からのキャリアチェンジという3つを考えていく必要があるという意見がありましたので,それを追加しました。4ページ下については,より分かりやすくするため,用語を追加・修正しています。5ページ上の方の?の追加部分ですが,これもアートマネジメント人材が能力を十分発揮できる環境を整備するということですが,その際に周りの関係者がアートマネジメント機能の重要性について認識する必要があるということを追加しています。その下の○の部分は,美術館・博物館・図書館等について,中央教育審議会において議論をしているといった部分を記述したものですが,学芸員・司書等の専門的職員の質の向上などを検討する中で,アートマネジメントの向上につながるような観点からの議論もなされていますので,そのあたりを正確に記載しました。6ページ目から現状と課題に入ります。まず大学等における人材養成の現状と課題ですが,1つ目の○では,大学等における教育内容の現状について,より具体的にということで記述を追加しました。以下は用語を整理したものです。7ページも,上段は用語等の整理ですが,(3)の文化芸術機関における人材活用のところで○が赤になっていますが,流れを分かりやすくするためにということで,3つの項目の順番を入れかえました。それ以外については,用語を正確にする,あるいは具体的な表現を補って分かりやすくするという意見をいただいておりましたので,それを踏まえて追加・修正をしています。8ページについても,より分かりやすくという意見を踏まえた修正が中心ですが,一番下から9ページの上にかけて,舞台技術に関しての課題について,最近の劇場・音楽堂等の公立文化施設の運営について指定管理者制度の導入が進められているところですが,その際に舞台技術専門家の重要性の認識が不十分なケースが見られるという懸念があることが課題の一つとして指摘されましたので,新しい項目を追加しました。続いて9ページ,アートマネジメントに関する情報,それから地域文化行政の在り方等ですが,地域文化行政の在り方の2つ目の項目に少し文章をつけ加えていますが,行政官など文化芸術にかかわる人材がアートマネジメントの視点を持つよう促していくことの必要性を明記しました。それから,一番下の(7)ですが,原案では「発信」という用語を使い,地域から文化芸術活動を発信していくという言い方をしていましたが,より広く文化的なまちづくりを行っていくという観点が大事だという指摘がありましたので,ここは文化的なまちづくりのためにアートマネジメント機能の充実が重要という形で文章を整理しました。10ページからが3番として,具体的な方策の提言です。まず第1が育成と活用ですが,(1)が育成,その中の1)が大学等における人材養成の支援です。1つ目の○が,大学等におけるカリキュラムを構築する上でのコアとなるカリキュラムの開発の部分ですが,このコアとなるカリキュラムを開発するに当たっての観点,「文化芸術活動の現場において求められる実践的な資質・能力の育成を図る観点から」といったところ,観点をはっきり書くとともに,「各大学等の取組に資するよう」にコアカリキュラムを開発するものだという目的を明記しました。以下,大学等におけるインターンシップ,長期の研修等々の具体的な方策の提案をいただいていますが,これについては用語等の修正です。次に,10ページの下から11ページにかけてが現職研修の部分です。まず1つ目の項目について,研修プログラムの開発に加え実施体制についても検討する必要があるという意見がありましたので,研修プログラムの開発と実施体制の両方を検討する必要があるとしました。11ページの中ほどからの(2)が人材等の活用の推進ですが,この部分については用語の修正以外は特にありません。12ページから13ページが,アートマネジメント人材等が活躍できる環境の整備ですが,すべての関係者がアートマネジメントの必要性を認識するということを明記したこと,情報の整備の中で,活躍の機会を求めるアートマネジメント人材等を,そういった人材を求めている文化芸術機関に紹介できるような体制を整備すべきだ等々の具体的な提案をいただき追加しました。12ページの一番下については,先ほどの現状と課題との並びで,文化的なまちづくりという観点を明記しました。13ページの最後ですが,「よいアートマネジメント人材等は,よい企画から生まれる」という視点に立って,優れた企画公演に再演の機会を与えるようなプログラムの実施を検討したらという意見をいただきましたので,一つ新しい項目を追加しました。14・15ページが,冒頭で申し上げたように,今までの3で提言をしてきた内容を,国,地方公共団体,大学等,文化施設・文化芸術団体・中間支援組織等,企業等という5つのそれぞれの主体ごとに役割分担を明確にする意味で整理したものです。3で修正した部分に関連して,こちらも文章を追加・修正しているところがあります。最後の16ページ「おわりに」ですが,文化政策部会として,この審議経過報告ということで今回取りまとめたということ,関係の皆様からのご意見をお寄せいただきたい旨を記載して,まとめています。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。今までの会議を踏まえ,それから先生方のご指摘等々をいただき,資料4に赤で書かれている部分が加筆訂正されています。この件に関して,いかがでしょうか。例えば,10ページの大学における責任ですが,ある意味では学生たちに教育するというあたりはすごく大切なことかと思います。それと同時にキャッチボールをするという現場との関係もすごく大事なことかなと思いますが,特に私が心配するのは,各大学での先生方のモチベーションあるいは学生のモチベーションに多少の高低差があるとするならば,現場へ行ったときにお互いに少しギャップが出てくる。これは問題かなという感じがします。私ごとで恐縮ですが,昨年末に京都へ行き,国公立の5芸大の大学連合をつくりました。その中で,ばらばらにやっていたのでは,結局共通するいろいろなものが欠落することが多いので,これからは結束して若者を育てていこうといった話をしたところ,皆さんに大変賛同していただきました。その中には留学生問題も含めていますが,私の頭の中にはこのアートマネジメントのことが相当入っていましたので,その辺の話も含めて,今後は全国の,次には私学まで含めて持っていければ,大変いいことなのかなと思い,現在も進めています。そんなことで,この10ページあたりも,一昨日話をお聞きした後,もう少し連合されたときのカリキュラム内容に対して深く入り込んでもいいのかなという感じがしました。先生方,いかがでしょうか。それ以外でもご意見をいただけたらと思います。口切りですが,8ページなどの24%という卒業生の割合の数字自身も,各大学がカウントする数字にいろいろなばらつきがあるので,24%なのかという感じも少々ありますが,この辺のところもデータ化してきちんとしていった方がいいのかなと思います。はい,どうぞ。
【米屋委員】
 その件に関してですが,書かれたものに関しての意見は事前に申し上げましたが,この大学の記述のあたりは本当にこれでいいのかなと,大前提の部分で少し疑問があります。大学は職業訓練校ではないはずなので,アートマネジメントのコースに入った人たちが必ずしも全員芸術文化に携わらなければならないわけではなく,また海外の例などを見ても,随分前ですが,ニューヨークの学部レベルのアートマネジメントコースの先生にお話を伺ったときに,「今年はちゃんと就職した人がいまして」ということでとても自慢げに話していました。ということは,逆に言うと,就職しない人の方が多いということが学部レベルではあったりするので,大学の方針によっては必ずしも実地向けでなく,もっと学問的なコースになっているとか,そういった自由はあっていいのではないのかなと思います。現場の側からしてみると,しっかりと現実を学んで即戦力になってくれる人を育ててほしいと思うのは当然ですが,だからといって全部をそっちに向ける必要があるのかどうか,そこは大学の選択なのではないのかと感じました。この記述で大学関係者の方々は本当にいいのかなと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。他にありますか。実際,特に私どもの大学などは相当専門性が高いのですが,ではそれに合わせて皆さん就職するかというと,そんなにはしません。優秀な人ほど就職しない人間が多いものですから,困ったなとは思っています。どうぞ,お願いします。
【田村(和)委員】
 これを全部読んで非常に気になったのは,アートマネジメントと文化芸術機関の両方が必要だという話がアプリオリに設定されているような気がしたことです。このテーマからいくと,今,米屋委員の議論にあったように,アートマネジメントというものと,文化芸術機関というのは,イコールで求め合う話ではなくていいと思います。そこに不等号があっていいと思います。ですから,そこにアートマネジメント教育というものの広がりもあるし,それから文化芸術機関の豊かさもあるのだろうと思います。そういう意味で,アートマネジメントが非常に大切で,施設あるいは機関もこれを求めているということでなく,そのやりとりで大体等号が成り立って,矢印が同じところを行ったり来たりしているような感じがあり,そのあたりは本当はもっと違うのだろうなという感じがすごく強いのです。そういう意味でいくと,今回は3ページにこういう一つ新しい場所を出されたので,少し充実されたと思いますが,何かアートマネジメントがというよりも,むしろ本当に今の芸術施設・機関がこういうことを含み込む必要性をどういう形で考えるのかということ,そのあたりが,もっと広く見ると,日本の場合は,これだけ文化がいろいろな形で百花斉放にある状態で,必ずしもエンジョイナーにとってみたらそんなにうまくいっていないとは思えないのです。けれども,現場では問題がたくさんある。そのあたりの説明が一種の危機感として伝わってこない。だから,本当にこういう提案をするなら,何かに絞りながら,その危機感はどういうところにあるのか,アートマネジメントをこういうところに持ち込むことの本当の意味,そういうことをもう少しはっきり書く必要があると思います。それからもう一つは,この前委員長がおっしゃっていましたが,要するにアートマネジメントの仕事性とか職業性みたいなものをもう少し書いていく必要があると思います。アートマネジメントが職業とか仕事ということで成り立っているという歴史はまだ非常に浅いと思います。例えば,私の関連している領域でいくと,まちづくりコーディネーターという仕事があります。まちづくりというのは参加であるとか,たくさんの多種単位に広がるようになって,そういうメカニズムが変わってきて初めて開花していくというか,コモンセンスを持つようになります。これは大きな日本におけるまちづくりの進歩で,そのあたりが結局,時代の変わり目の中でこういう形でテーマ自体が変わってくるのだといったところがしっかりつかまれないと,この話が単にいい人がいていいことをやるために行ったり来たりする必要があるという単純な議論に終わってしまうような感じがして,そのあたりを少し書くか,あるいは今の論理の中で国がやるのだということをどこかにもっと焦点を合わせてしっかり書き込むのが提案の重さだと思います。それが非常にきれいにまとめられているから,スーッといってしまうのが少し気になります。ただ,今回赤く加えられたところで,先ほどの3ページ,5ページの?,6ページの最初の1行目のところを見ると,今話ししたようなところをかなり意識されているので,少しは安心しました。そういうところがもう一つ,国民にというか,我々の社会に訴える話になるのかどうかというのを非常に心配しています。
【宮田部会長】
 おっしゃるとおりだと思います。でも,随分変わったというか,充実されてはいますが,充実すると,先生がおっしゃるように,さらっと読まれてしまうという危機感はよくあることなので,気をつけなければいけないですね。
【高萩委員】
 中間まとめなので現状認識までかなと思っていました。今,文化行政全般について直していこうとしているときだと思います。国がする施策というのは,文化庁が補助金を出したりしているところと何かリンクしないと,この「まとめ」が実際に活用されていかないだろうと思います。11ページの「文化芸術機関におけるアートマネジメント人材等の活用の推進」と書いてあるところの幾つかの○の最後は大体「必要がある」「重要である」となっていますが,ではどうするのかというところへいかないわけです。中間なのでこれでいいのかなと思ったら,もしかしたらアートマネジメントに関してはこれでおしまいで,次は芸術家育成にいってしまうのだとすると,重要なことを認識したことで終わってしまう可能性があるのかなと少し心配しています。もう一つは,14ページの各役割というところで,地方公共団体に対してもそういうことだと言っているだけなので,これだと,私の場合は世田谷パブリックシアターといういわゆる基礎自治体の文化財団に属していますが,一番の問題は,時代の変化,社会の変化に,一部の人は気づいていますが,多くの役所の人と議会の人が気づいていないということです。「芸術を芸術家のためだけでなく,社会全般で,もっと活用しろ」という話について,今のところそう気づいていない。施設も整備したし,この程度でいいのではないかと言っている。多分ここが問題で,もっと活用できる可能性がある。そこを活用するための人材をつくりなさいというふうに何らかの施策と結びつけないと,提言にならないと思いますが,これはこのくらいの現状認識が深まったというところでいいのでしょうか,意見をお聞きしたいのですが。
【宮田部会長】
 どうですか。本当は,特に11ページなどは,高萩委員の話にもありましたが,重要であり,かつ,言葉が適切かどうかは別としても,それをバックアップするというぐらいのところまで持っていく国の力があると,この文章に対して大変皆さん元気が出ますよね。
【清水芸術文化課長】
 すべての答えになるわけではないと思いますが,今回,まずこの報告は,審議経過報告という形で,20年度実現化等についての検討を行うとともに,この審議経過報告について,関係の芸術団体等からも広く意見をいただいてまとめていくということは考えています。それとは別途,提言されている中で,やるべきこと,また早くできることは文化庁としても実施したいと考えています。今日は資料を用意していないのですが,20年度の予算案の中で新規の事業として,アートマネジメント人材の育成についての調査研究の予算を2,200万円取っています。これは調査研究ですが,ここで提案いただいている中での大学等における標準的なコアとなるカリキュラムの構築とか,現職者研修のプログラムの開発の調査研究等をさらに詰めていく必要があると考えていますので,20年度の新規予算を活用してやっていきたいと考えているところです。それから,既存の予算あるいは既存の事業の中でも,この報告を踏まえて変えられる部分については,例えばアートマネジメント研修を全国公立文化施設協会(公文協)と連携して,アートマネジメント研修の全国研修とブロック研修を実施していますし,技術職員の研修も同様に実施していますので,その研修のやり方とか内容等については,今年度からできるものは今年度から実施していきたいと考えています。それから,芸術拠点の支援事業等についても,予算はあります。ただ,運用でできるものあるいは新しく予算要求をしていかなければいけないものについては21年度予算以降になりますので,運用でできるものは20年度からさらに検討して,予算要求が必要なものについてはこの提言を検討して,21年度の概算要求に向けて準備していく等々という形で,国でできるものは受けとめて実現を図っていきたいと思います。それから,地方公共団体,文化芸術団体,大学等については,予算等で対応する部分はありますが,それ以外にそれぞれ独自でお願いしたいという部分ももちろんあると思いますので,文化担当の地方公共団体の部課長会議あるいは大学・芸術団体関係の会議等で,この審議経過報告を今回修正して総会の了解が得られた後に,関係の会議等で公表して,意見をいただくと同時に,できるところは取り組んでくださいとお願いしていきたいと思っています。
【高萩委員】
 余り具体的に書かない方がいいことかなと思ったので聞きました。つまり,具体的に書こうと思ったら,今,重点支援にしても芸術拠点形成事業に関しても,申請書にアーティストのプロフィール欄というのはあります。そこのところに必ず,アートマネジメント人材はどのくらいいて,その人のプロフィールを入れなさいというだけで,申請資料ですから,申請する側はよい評価がくるようにと思うので,そこで,そういう人材が必要だとすぐ分かるわけです。ただ,余りにも具体的なので意見として提出しなかったのですが,「重要である」と書いていると,そういう方に移行するのかなという気もします。それは全然予算も要らないことですから,そういうことができればよいと思います。それから,さっき言いました市町村とか区部に関しても,文化庁からある種のアンケートが担当部課長のところに行くだけで,そちらの文化事業におけるアートマネジメント人材について,それから文化庁から補助金がどのくらいきていて,どうなっているかについてきちんとご回答くださいと言われたら,結構みんな考えるわけです。そういうことまでこの提言に盛り込んだ方がいいのか。それとも,この「重要である」というところから,それはお任せしてやっていただけると考えてもいいことなのでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 もちろん,具体的に提言をいただいて,これをやってくださいという強い意見があれば入れていきますが,ただ予算とか事業とかの場合には,確かに事務的に具体的に検討して実現していく部分がありますので,提言された内容について趣旨を踏まえて予算等を調整したところでこのようになりましたといったケースもあり得るとは思います。
【田村(孝)委員】
 予算要求の時期がもう終わっていますので,今回のところで具体的にというのは難しいのだろうと思いますが,最後の「おわりに」というところは何を意味しているのでしょうか。今後何を目論んでこの報告書を書いたのかということを伺いたいと思います。例えば,「既存の施策や制度の運用の改善とともに,新たな仕組みやこれらに必要な支援の在り方などについて」とあり,最終的にパブリックコメントを求めるということにはなっていますが,文化庁として,それはどの様なことを意味するのか,どの様な戦略なのか,そこを伺いたいと思います。
【清水芸術文化課長】
 先ほどの説明と重複する部分もありますが,文化庁の,国の既存の施策ということで言いますと,アートマネジメントと舞台技術者の公文協とやっている研修や,芸術拠点の支援事業等もありますし,大学・芸術団体が行っている人材育成の支援事業とか,アートマネジメントなども海外への留学の支援事業とか,いろいろな施策がありますので,それの運用面でできるところについては文化庁としてももちろん受けとめていこうと思っていますが,今回は審議経過報告でもありますので,最終の報告に向けて,より具体的な意見をいただければ,検討していくところがあると思います。そして,文化庁側ができることとしても,先ほど言いましたように,運用でできるものは20年度からやっていき,新しく概算要求をするものとか,あるいは運用でやるにしても,募集要項を直す形になります。20年度の募集要項はできているので21年度からになりますので,スケジュールはある程度必要になります。文化庁としても受けとめて検討するとともに,この文化政策部会においても,既存の施策の運用等,より具体的なものがあれば,審議計画報告が出た後でも,最終的な1年後の報告に向けて意見をいただければと思います。それから,既存の施策だけではない新たにこういう施策が必要だといった提言については,予算が要るもの,要らないものはあるかと思いますが,21年度の概算要求なり,それ以降,さらに十分な検討をして,早くやる課題,中長期的課題も含めて,具体的な提言をこれにさらに追加してお願いできればと思います。
【宮田部会長】
 この「おわりに」というのは,随分紋切りっぽくなってきていて,世の中の人は間を見ないで,「はじめに」と「おわりに」を見て,「よっしゃ」みたいなことを言われて,「次」などと言われると困ってしまうので,私も実はこの「おわりに」は少し気になっていました。もう少し丁寧さがあってもいいのかなと。アートマネジメントそのものの認知度をものすごく高めることが最大の目的で,これがなくてはこんなにうまくいかない,あることによってこんなに素敵なのだということを伝えることがすごく大切なことではないでしょうか。
【田村(孝)委員】
 それはそのとおりだと思います。ただ,文化庁としてというか,政策部会で検討した結果としては,人材育成と活用についてというテーマですが,最終的には活用というか,雇用の場創出ということに結びつかないと,結局は検討しただけに終わってしまうと思います。例えば,少なくとも図書館の司書,それから美術館の学芸員と同じように,学校で学んだ方がすべてその職業についているわけではありません。アートマネジメントを大学で学んだ者皆がその職業につくということではないと思います。その認識を社会一般が持った方がいいということは米屋さんがおっしゃったとおりですが,少なくとも今,「文化芸術機関」という言葉になっていましたが,世田谷パブリックシアターのような恵まれたところは別格でして,ほとんど日本全国の文化施設などにその意識はないというのが現実です。公文協や企業などでマネジメント研修が沢山行われていますが,実際問題アートマネージャー活躍しているかというと,これはとてもお寒いところだというのが現実です。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。富澤委員どうぞ。
【富澤委員】
 こういう議論をまとめるときに,私は,その取っかかりのところというか,「はじめに」のところが非常に重要で,まずそこから読んだり聞いたりします。そういう意味では,ここに書いてあるように,アートマネジメント人材というのは必要なのだということが世間なり社会なりに広く認識されることが一番大事だろうと。昨年来の議論もそこにあるわけで,最初のころはたしか「アートマネジャー」という言葉がいいのか,それは人口に膾炙していないのではないかといった議論から始まり,それは必要だと。つまり,日本には大変高度な立派な芸術家・文化人はたくさんいる。一方でマーケットがあるわけですが,そのマーケットが非常に狭くて,文化人・芸術家が活用されていない。それをいかに結びつけて,マーケットにつなげていくか。あるいはそのマーケットを拡大して,その文化マーケットの拡大が日本の文化国家としての今後に大きく影響していくという認識だったので,そういうところがきちんと主張されていることが大事だと思います。例えば,今週,福田総理の施政方針演説がありました。これは,国の全体の方向を,内閣が何をやるのかということを言うわけですから,それぞれの分野はほんの一言触れられているだけです。例えば文化についても10行ぐらいのことしか触れられていませんでしたが,多分文化庁も大変苦労されたのだろうと思います。各省の激しいせめぎ合いの中であの文章を入れているわけで,その中では確か文化の振興,それから日本が文化国家として生きていくのだということ,あるいは日本が持っている文化財をきちんと守っていくといったことが書かれていたと思います。こういうことがきちんと施政方針演説に入ることによって,そこに予算がつき,現実の政策となっているわけです。そういう意味で言えば,今回アートマネジメントあるいはアートマネジャーというものの存在が日本にとっては非常に重要で必要だということが認識されることが第一の目的だと思います。それから,具体的にそれではどうするのかということが盛り込まれればいいのですが,今までの議論を聞いていても,例えば学校での人材の育成とかといっても,いろいろな手法があるし,予算の問題等々あるので,これからの議論として引き続き継続して,各方面から,この審議会だけではなくて,日本中のいろいろなところからそういう議論あるいは意見が出てくることを期待したいと思います。特に私がその中で重要だと思うのは,ここにも書いていますが,情報です。まず知るということが必要で,そこからすべて始まるわけで,その情報がないとなかなか……。そういう意味では,今IT社会,インフォメーション・テクノロジーの社会で,ユビキタスと言われていますが,そういうものを充実させることが非常に重要で,ここに一部そういうことが書かれています。9ページに,アートマネジメントに関する情報で,この情報が関係者の間で十分共有されていないという認識が述べられています。このとおりだと思います。情報をとにかく広く集めて,それをみんなが共有する。日本は情報社会に入っていますが,電話料とか通信料はものすごく安くなっています。これを始めたのは森内閣で,引き続き小泉内閣でも強力に推進した結果,世界でも一番安いぐらいの通信料になっていますが,十分活用されていない。それはなぜかというと,情報が幅広く共有されていないからだろうと思います。情報というのは,みんなが知らないと情報ではないのです。どうしても日本は縦社会になっていますから,上の方がいっぱい情報を持っていて,下の方は少ない。それで「おまえ,知らないのか」という社会なので,そういう社会では絶対にIT社会というのは成功しないのです。アメリカ社会がIT社会で活性化したのは,みんなが共有できる社会をつくったからで,そういう意味では,アートマネジメントに関する情報を充実して,それは大都会だけではなくて,日本の隅にいてもわかるような社会をつくっていく。そのためにはまた予算も要るでしょうし,ぜひ文化庁には頑張っていただいて,そういうものを充実していっていただきたいと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。吉本委員。
【吉本委員】
 2つありまして,1つは,用語の点で気になることです。前回欠席したので,議論はあったかもしれませんが,基本的にこれは育成と活用ということで,恐らく「活用」という言葉の中には,人を採用していくというか,登用するという意味も含めての「活用」ということになっていると思います。雇用というのは書けないとすると,どこかで登用するとか,起用するとか,活用だけではなくて,そういうアートマネジメントの現場で働く人材を増やさなければいけないといったニュアンスのことを入れられないかなと思っています。この記述の中に,人材育成をしても失業者が増えるだけだといった記述があって,これは結構踏み込んだ表現だと思います。そこまで書くのであれば,現場で働くアートマネジメントの専門的人材の数を増やすことが,活用の中に入っているとは思いますが,どこかに入れられないかなと思いました。入れるとすると,例えば最初の方の(4)今後の基本的な考え方の2つ目の○の?です。5ページの一番上のところですが,文化芸術機関においてそういう人がふえることが重要だと思いますので,「積極的な活用」の前に,例えば「積極的な登用と活用」とか「積極的な起用と活用」とか,何かそういうものを入れられないのかなというのが1点目です。2つ目は,14ページ以下のそれぞれの役割のところで,国の役割のところで,政策的な誘導を行うということで,かくかくしかじかのことを行うべきであるという記述になっていますが,国は誘導するだけでいいのかと。だから,国はどうなのかと。国立の文化芸術機関でもう十分に専門人材は活用しているということはあるかしれませんが,国立の文化芸術機関でもさらなる活用を図るとか。あるいは地方公共団体のところを見ると,「文化行政」云々の中で,1行目の最後のところに「人材の配置」と出ていますので,専門的な人材をぜひ地方公共団体は配置するようにということですが,では文化庁がアートマネジメントを専門的に学んだ人を来年2人採りますとか,何かそういうことが国家公務員の中でできるのかどうか分からないですが,国は誘導するだけではなくて,自らこういうことをやりますと。あわせて政策誘導をして地方公共団体以下いろいろなところで活用が図れるようにしますという,自らの決意表明をこの中ですることができないかというのが,2つ目です。
【宮田部会長】
 何かやるときにはそのぐらいの踏ん切りが必要ですよね。ありがとうございます。努力していただければと思います。先ほどの富澤委員の情報の問題は非常に大事かと思います。先生方に議論していただけたらなと思いますのは,8ページあたりの指定管理者制度の導入についてです。そのあたりはこれくらいでよろしいでしょうか。それから,インターンシップで受け入れをするというあたりは随分幅があるので,例えば海外では何カ月もというのに,日本では数日でしかないということです。例えば教職で高校とか中学校へ教育実習に行きます。昔は2週間だったのが3週間に変わっています。それによって弊害も多少ありますが,それ以上に経験した3週間が,大学側とすると,カリキュラムが抜けてしまうので困るが,学生たちは大変大きな活力を得て帰ってくる。これはいい経験をしたなというのがあるので,アートマネジメントなどに対しても,現場研修という言葉がいいのか,どういう言葉がいいのか,分かりませんが,その辺を何かこの中に織り込むと,より受け入れ側もちゃんとしなくてはという感じになるのではないでしょうか。だから,その辺を少し足していただけたらと思います。他にありませんか。はい,お願いします。
【唐津委員】
 私の方からも,実は今回幾つかの提案をさせていただきまして,本当に良い形で赤字修正の中に取り入れていただきありがとうございます。まず,最初に全体を流して読んで,非常に気になったのが,だれに対してこれを伝えたいのかという視点でした。読む方によって,それを自分のものとして感じていただけるかどうかというところがひっかかりました。アートマネジメント人材を雇用することが文化施設にとって必要だということを書いてあったとしても,例えば,とある文化施設ではアートマネジメント人材を1人,2人雇用しているということになれば,うちには関係ないという形でスルーされてしまう可能性が高いのではないかと思います。ですから,アートマネジメント人材の有無だけではなく,アートマネジメント機能への理解と普及が不可欠であるという視点が必要だと思いました。また,先ほど情報の話にも挙がりましたが,こういった資料が行政に送られてきますと,見る方が限られてしまうところが大きな問題のひとつとしてございます。資料が例えば文化施設の設置者である地方公共団体に送られていくのか,もしくは文化施設そのものに送られてくるのかということによっても異なりますが,だれがこれを見て,文化庁が言っていることを取り入れようと判断ができるのか,そこに生かせるかどうかというところが,非常に重要ではないかと思います。ですから,例えば助成金を出すとか補助金を出すとかという具体的な施策もあると思いますが,文化庁がこれだけのことを考えているという現状がうまく伝われば,それだけでもかなり効果がある内容だと思います。今回また赤書き修正で内容が非常にクリアになってきていると思いますので,こういった提言をうまい形で隅々にまで伝わるような伝え方をしていただきたいなと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。この会の最初の段階で,これをメディアがどうしてとらえないのかなという話も少しさせてもらいましたが,国はこういうことをちゃんとやっているんだということが認識されることがすごく大きなことかなと思います。この間たまたま芸大でやらせていただいたものをある美術系雑誌が取り上げてくれました。昨日配付されてきましたが,それを見ると即,興味のある学生たちから昨日のうちにメールが来ました。自分としてはそういうことをやったことに対して大変ありがたい,今後進んでいくための力になるという言葉をいただきました。文化はなかなか数字であらわしにくい部分があるので,あそこに山がある,登る場所があるというのをきちんと提言する方がいいのですが,数字であらわせない分,その辺をちゃんと僕らが揺らがないようにあるという感じをつくって,それを世の中に発信していく。先ほどの富澤先生の話ではないですが,情報を発信していく。こんなふうに動いているというだけでも,若者たちは大変反応がいいのです。どうぞ。
【高萩委員】
 14ページの国の施策のところで,これはさっき吉本さんがおっしゃったように,確かにここがまずすぐできることなのであろうと思って,3行目から4行目の「政策誘導に際しては,」「一律の対応を進めるのではなく」というのは,非常に踏み込んだ話をして,いいなと思います。それと,その次の2つ目の「・」の「アートマネジメント人材等に対する全国的な規模での研修を充実すること」という相変わらずのことが載っているということが気になります。それから,富澤さんがさっきおっしゃったのは非常にすばらしいことで,確かに情報なのです。情報というのは,「ただ何かあっただけ」では情報にならないわけです。「情報を発する人」,「情報を欲しい人」というのがはっきりしているときに情報が行き渡る。それには,ここに書いてあるモデル地区や拠点というのをはっきり出す。つまり,はっきり差別する,区別するというか,「あそこはすごく得しているみたいだ」と言った途端に情報がバーッと飛び交うわけです。実は年末から年始にかけて芸術団体の運営についてヒアリングをやったのですが,今はチケット代を少し下げただけでは全然人は動かないというのを言われました。ちょっと何かやったというのではもう情報にならないようになっていて,極端なことが起こったときに情報が飛び交い始めて,それがさらに広がっていくということなのです。ぜひこの「一律の対応を進めるのではなく」を強調してください。今,文化庁は基本的に「一律の対応」というのがある種旗印みたいになって,「全国一律」に出来ないことはしないとなってしまう傾向があると思います。別に東京だけではなくて,種子島でも沖縄でもいいですが,どこかで極端なことが起こると,それが次のいろいろな情報を生んでいくし,「あそこに負けずに頑張ろう」ということがさらによい結果を生んでいくのではないかと思うので,ここをぜひよろしくお願いします。
【宮田部会長】
 世の中,結構そういうものですよね。負けてはならない,乗りおくれてはならないみたいな感じがあります。ただ,それをどこでスポイルできるか。部課長さんの中で指名できるのかどうかというのは難しい部分もあるかもしれませんが,そのぐらいの勢いは欲しいですね。
【田村(和)委員】
 この検討は,アートマネジメントの利益をできる限り明確に打ち出すということと,それから当面限られていても構わないから,アートマネジメントと文化機関との関係を戦略的に押さえる話が3つとか4つあれば,いいと思います。その1つは,この前からずっと言っていますが,行政なら行政のヒエラルヒーのトップをどう押さえるかということだと思います。これがみんな末端のところでいったら,これは必要か必要でないかというのは分からないのですが,例えば私のまちなどは,東京都の武蔵野市というところですが,たくさんの文化施設を持っています。高萩さんたちに加わっていただいたシアターとか。そこの文化担当者は具体的に見えないのです。だから,私は今全体の長期計画などを中心にやっていますが,このアートマネジメントという話は,自治体そのもので8つぐらいの文化施設を持っていますが,アートマネジメントの概念というものを誰もわからないのです。トップなりが認識しなければ,まず機関とか施設そのものが動かないのです。だから,そういう話は,民間施設もそうだと思いますが,それを統べるトップみたいなところでどのようにアートマネジメントというのが利益としてとらえられるのかと,そういうことを明快に出していただきたいなという感じはしています。
【宮田部会長】
 そうですね。もっとも,最初にスタートさせたときから比べると随分,文字そのものさえ変えようかぐらいのところからスタートしたわけですから,田村委員の話は大変大事だと思います。
【山内委員】
 「はじめに」と「おわりに」という話があり,全くもっともなことで,「はじめに」を読むことで内容を押さえようとする人もいると思いますので,これだとアピールが少し弱いかなという印象は確かにあります。拝見していますと,2ページの「アートマネジメントの意義」の最初の○のところだけでも,例えば「第2次基本方針において,文化芸術は」と,これは何となく非常に文章もよくて,メッセージとしても優れているので,「文化芸術で国づくりを進める「文化芸術立国」を目指すことが必要であるとしている」というところぐらいまでを,ここからむしろ「はじめに」の最初の○の「重要な政策課題となっている」で終わる文章の方へ思い切って移して,「アートマネジメントの意義」というのは,まさに意義ですから,「このような文化芸術を振興していく上で」以下,文章の始まりは少し工夫するにしても,具体的なことを書いていく。今の文章を残して,最初だけを移動してはどうかと考えました。そうしますと,「はじめに」が非常に哲学的なメッセージとしても生きてきます。この「はじめに」ですと,どちらかというと,閣議決定されたという経緯について触れているわけですが,もう少し哲学性のある「はじめに」でもいいかなと思い,文章の移動を考えました。あとは委員のおっしゃっているとおりで,ほとんど同じです。印象,感想にしかすぎませんが,「大学等でアートマネジメント人材等を養成しても」という8ページのところは,確かに気がかりです。大学もいろいろな制度改革,教育改革でいろいろ試みるのですが,受け皿をどうするのかという大学等の教育機関の持っているさまざまな悩みがこのアートマネジメント人材の育成でも出てくる,これは教育という現場に近いところにいる人間としてはやはり気がかりであります。だからこそ,同じ8ページの真ん中に「このように」という処遇の改善ということもありましたし,先ほど吉本委員がいずれかで「活用」だけではなくて「登用」あるいは「採用」といった文言を入れたらどうかということになろうと思いますが,これを少しこの報告では重視して,新しい制度をつくっても将来性が見えないということでは,若い人たちに対していささか不親切な態度になるかなという気がしたわけです。以上2点です。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。どうですか。「はじめに」の中に,山内委員の話からちょっと私は勇気をもらったので,日本人というか,人間は比較すると何とかしないという気分が出るとすると,欧米のアートマネジメントに対する考え方と,いかに日本は遅れているかみたいな話までここにガバッと入れてしまうと,それはやらないといけないといった気分になるのかなという意識。それから,後半の山内委員の話の登用云々のことも,入り切れないかもしれませんが,少しぼけているところに照準を当ててもいいのかなと。そこまで踏み込むと成果が随分出てきて,結果的には,美術系・音楽系の学芸員資格を取ったからといって別に学芸員にならなくてもいいのですが,資格を取ったことで学生にとってはモチベーションが大変高くなっているという事実がありますし,卒業した後にも学芸員資格を取るためにまた大学院に戻ってくる子が随分います。以前,資格の問題でいろいろ議論もして,それはとりあえず横に置こうということになりましたが,そのぐらいの意識観があると,アートマネジメントに対しての若者や,あるいは諸機関が需要性を持つというところまでいけるのではないかと思います。もう少し時間があります。いかがでしょうか。先生方の意見等をいただければ。どうぞ。
【田村(和)委員】
 私はアートマネジメントの世界は余り存じ上げませんが,アートマネジメントにかかわってきた古いタイプの人たちはたくさん知っています。皆さん,誇り高くて,非常に苦労話が多いです。ですから,これを苦労話にならないように,要するに裏方から表方にも引きずり出すということを正面に出していただきたい。苦労話は苦労話で,飲み屋では楽しいのですが,これでは一向に前に進まないのが現実だと実感しています。
【宮田部会長】
 まさしくそうです。特に前半は苦労話で終わりましたから。はい,どうぞ。
【米屋委員】
 今のことにも少し関連するかもしれませんが,アートマネジメントとは何かというところで,「問題解決能力」という言葉をつけ加えさせていただきました。知識とか情報とか経験とかいうことはよく言われますが,実際にアートマネジメントについて書かれた書物などを読んでいる学生もたくさんいると思いますが,結局それを現実に活用する,持っている情報や知識を現場にどう生かせるかという,能力が問われると思います。研修も,優れた人はレクチャーを聞くだけで応用できますが,何か自分に引きつけて活用する力にするのが非常に重要だと思います。研修の中身を今後調査研究をされるということですが,それを考えるときにはそういったことに留意していただきたいということと,「自分はもうできるからいい」と言ってしまったらとまってしまうので,常に社会の変化に合わせてのリニューアルが必要だし,変えていく力なのだという認識がもう一つ必要なのかなと思います。そういったことをどう文書に入れるのかはちょっと考えたのですが,議事録に残っていればいいかなと思います。もう一つ,「文化芸術機関」という言葉に変えていますが,このイメージも,日本に芸術文化機関と言われるところがどれだけあって,どれだけの人が働いているのかは,多分今数字は出ないと思います。それは考え方によって変わってきます。ですから,今後人材の登用も含めて考えていくときに,そういったことを明らかにするのが必要だし,その場合,国がその拠点としてモデルとしてといったときには,ある一定の規模でちゃんといいアートの企画を提供できる実力がある機関であるとか,説明能力とか実績ということを考えながらモデルをつくっていっていただきたい,政策誘導していっていただきたいと思います。そこで1点,アートマネジメントの範囲ですが,コマーシャルの部分で活動していくこともマネジメントではありますが,コアになるのは非営利公益の組織で行うマネジメントということを中心に考えた方がいいのではないのかということを確認したいという思いがありましたので,経済的にもうかればいいという観点ではない,芸術のためのマネジメントなんだということの確認をした上で,そこを中心に政策誘導していただきたいと思います。
【宮田部会長】
 どうぞ。
【青木文化庁長官】
 どうしてもこういうものをつくるときには,供給側の議論になってしまいます。ひところサプライサイドエコノミックスとかと言われましたが,どうしてもそれをどうするかという話はこっちの方からになる。需要側の意向は余り反映されてこなかったと思います。最初のときに申し上げたと思いますが,各現場でどういう人材が今欲しいのかです。劇場とか音楽堂といっても,それは全部違います。そういうところでこういう人が今ほしいとか,こういう人が今非常に有効に働いているから,こういう人の後継者をつくってほしいとか,今,先生もおっしゃいましたが,そういう需要の側の具体的なデータ・情報がもっとあったらいいと思います。だから,今,政府も消費庁とかをつくろうと言っています。消費者がどういう動向を示すかというのは,単に供給者側だけではなくて,それはここにもある程度当てはまるのではないかと思います。だから,これは中間報告ですから,今後の議論でもっと展開していただければありがたいと思います。大学にとってもどういう人材が現場から求められているかという情報がもっとないと困るわけで,それで果たしていわゆる人材を養成する側と,それを受け取って実際に仕事に使っていく側との関係をもっと明確に出した方がいいと思います。文言に組み込む場合に,どうしても役所でやるので,それには限界があると承知していますが,ただ,もう少し具体的になると,日本とアメリカとか,ヨーロッパとか,またアジアの国で,それぞれ需給関係が全然違うわけです。メトロポリタンオペラ劇場とかで欲しがっている人材と,アートマネジャーについても,それから日本の新国立劇場とか,あるいは琵琶湖のホールとかで欲しがっている人材が,同じオペラをやるといっても少し違うわけです。こういう関係はそれぞれの国で非常に歴史がありますので,一律には言えません。今日はいらっしゃらない三林さんのやっていらっしゃることを含めて,そういう観点がもっとあったら説得的になるかなという感じがしました。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。はい,どうぞ。
【唐津委員】
 長官のおっしゃった需要と供給の問題にも関わると思われますが,まず今回の中間報告案中で,「文化芸術で国づくりを進める文化芸術立国を目指します」ということを非常に強くうたっているのが印象的でした。「国づくり」を進めるということであれば,地方公共団体の方では「まちづくり」というところでどれだけ打ち出していけるのかというところが重要かと思います。そのまちづくりを地方公共団体が強く自分のこととして受けとめていただくことが重要と思い,12ページの一番下の,「地域における文化芸術活動の機会の充実」の部分で,「文化的なまちづくりを進める」という内容を提案させていただきました。一方「地域における文化芸術活動の機会の充実」という項目の中で,「地域における」が赤書きでつけ加えられ,逆に「発信」は消えています。実は私は「発信」というところを非常に重視して考えておりました。なぜかと申しますと,例えば,今アートマネジメント人材が不足している,そういった人材が欲しいと思っているのは,どちらかといえば地方の方だと思います。地方の,特にかなり過疎地域の文化施設になると,専門家がいないことをネックに感じている施設も多い。そういった中で,例えば東京という中央で育成された人材が,あえて過疎地へ行くかどうかというところの選択の問題が生じてくるわけです。地域に行った場合のデメリットを非常に強く感じられているのが現状ではないかと思います。例えば,行ったことがない地域の人たちとの様々なしがらみ等から生じる負担もさることながら,その地域の行政からは専門家を雇用したわけですから,独自性を出した企画を求められます。一方,中央からは,中央で創作された作品の受け皿として,つまり巡回公演の一会場としての役割を期待されるわけです。限られた予算の中で,地元の意向部分と中央の意向部分の中で引き裂かれていくということを,地方の劇場に行かれた方は感じていて,例えば契約が3年で切れれば中央に戻ってくるという選択肢を余儀なくされている実例もあるようです。そういった中で,実は13ページの赤字の部分は私が提案させていただきましたが,地方での公演を目にしていただく機会が非常に少ないということにも問題のひとつがあると思います。例えば,文化庁の芸術祭は,東京,関西地域という2カ所で,しかも10月,11月ぐらいに行われている中で選ばれるというように非常に限定されていますので,そうではない地域のアートマネジャーがオリジナリティの高い企画をプロデュースしても専門家あるいはたくさんのお客様に見ていただく機会がどうしても不足してしまいます。ですから例えば,実際の企画の段階でも,あるいは拠点として助成されているものの中から選んでいただいてもいいと思うのですが,ぜひ地域で行われている独自性が高い企画については,ここには「再演の機会」という書き方になっていますが,例えば東京とか関西とか,なるべく多くの方に見ていただけるところに引っ張り出していただきたい。そのことによって地域に対して皆さんの目が向いていくように思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。アートマネジメントそのものが地域活性の大きな原動力になる。それから,地域の色がその人に聞けばすぐわかるというぐらいの人材にまで持っていってもらいたいなどとつくづく思います。文化政策をするところがいろいろな地方にありますが,そこへ行って話を聞いても,同じようなことしか言いません。そうではないという色をきちんと見える感じが欲しいなとつくづく思います。そういう人たちがいろいろなところで,今の唐津委員の話のように,アートマネジャーの勉強をする人たちに少しヒントをいただくだけで,「そうか,この地域はこうなんだ」みたいなことが出てくると思います。私は佐渡の生まれですが,「夕鶴」という木下順二の作品を二期会の人たちが佐渡でやります。そうすると行列ができるわけです。つまり,それは「おらが国さは」というのでこんなにすごいことがあるのだということを再認識する。このときにこういう人たちがいるともっとうまく伝えられたのにみたいな感じがとてもあったので,そういうところがすごく気になっています。これは絶対つくらなければいけないと思います。これは余談ですが,実は財務省で仕事をさせてもらっていますが,全国40都道府県の色をつけて,それを貨幣にするという話があり,その座長をしています。こういうときに全国にいるアートマネジメントの人たちへの発信網があったら,みんなに聞いて,よし,ではそれだったらこのデザインにしようとなるのです。夢はいっぱいあるが,なかなか確立していないので,まだ応募してこない県があります。そうすると,抽せんでやるかという話が出ました。烈火のごとく怒りましたが,そんなものではないということで,この提言がすごく大事だなということをほかの省庁へ行って話を聞くだけでも感じました。
【田村(和)委員】
 今おっしゃったのは非常に大切で,私はイメージとしては,文化庁は,アートマネジメントイヤーか何かを1年設定されて,今みたいな話を徹底的にしたらどうかと思います。それで,例えば鳥取県に倉吉というまちがあって,いろいろな文化運動みたいなことをお手伝いしてきましたが,結局そういうところはそういう形でしか動かないのですが,実際にこのアートマネジメントに接触していく部分は随分あります。ですが,それは別に常雇用としてあるわけではない。多分,教育面から見ても,それから将来の,吉本委員ふうに言うと「登用」とか,そのような意味でも,非常に大きな機会だと思うし,多分アートマネジメントというのは一律にしないといったら,それは地域軸みたいなところで割っていかなければ仕方がないことだと思います。仕方がないというか,非常に積極的にいこうとする。だから,例えて言えばアートマネジメントイヤーに人材派遣会社みたいなことをするようなことができないかなと思っていますが,いかがでしょうか。
【宮田部会長】
 この提言をもとに具体的なものがどんどん生まれてくるような布石,ジャンプ台であるといったとらえ方に重要性を持ってもらいたいです。そうすると,本当にいろいろなことに活用できるし,では彼に聞こうというような,そんな重要なポジションになるのではないかと思います。
【青木文化庁長官】
 どこでどういう人材を欲しがっているのかという情報を,求人情報ではないですが,その関連でそういうことができるといいですね。そうすると,ぱっと見れば,滋賀県でこういう人材が欲しいと言っているというと,そこに芸大の学生が行くとか……。
【宮田部会長】
 空振りにならない。
【青木文化庁長官】
 まさに情報がないと。
【宮田部会長】
 そうですね。はい,どうぞ。
【高萩委員】
 先日,UKジャパン,UK日本というのか,本年,2008年は,イギリスの文化イベントみたいなものを日本で年間通しておこなうので,キックオフイベントが森ビルの美術館でありました。かつてのイギリスの何となく古風な感じではなく,テクノロックみたいなものを流して,大臣が「とにかく文化で産業を盛り立てます」みたいなスピーチをして,「うちはもう景気いいですよ」みたいなのが前面に出たことをやっていて,すごかったです。そこで,さっき長官がおっしゃったことに関連して付け加えると,全体的に,つまり日本の文化行政的に言うと,まだそんなに困っていないのです。よく商店街の件で言われているシャッター商店街で,何軒か閉まり始めるとバタバタッと閉まっていって,本当に何とかしなければいけないとなりますが,閉まる前の何となくあいている状態のときは頑張らないのです。今はちょっと似たような状況で,日本の文化施設は,設備は整備し終わりつつある。もちろん,まだ作られたり,計画中のものもありますが,多分芸術文化施設の数では,単位面積当たりで言うと世界で一番ぐらいに,美術館も音楽堂もホールもいろいろなものを入れれば,整備されています。その中で,みんなそんなに困っていないのです。日本人は本当にある意味では芸術に非常に親しんでいる。こんなにお稽古ごとが盛んな国はないし,合唱団にしても吹奏楽団にしてもアマチュアはものすごく進んでいる。そういうものをマネジメントしている分には,実はそんなに専門家というのは必要ない。いわゆる行政の延長線上でもできていたのです。そこへ世界の情報革命の結果,今,世界のあり方が変わってきている。5年後,10年後を考えたときに,このままいくと日本の産業自体が非常に問題になるのではないかという問題がでてきています。インターネットが普及して世界が一律になっていくかなと思ったら,逆に,情報は飛び交うけれど,改めて見てみると,地政学的に日本はアジアの端っこでしかないわけです。日本を越えてモノが行き交うわけではないから,中心にはなり得ない。そうすると,今日本が持っているアドバンテージというか,ほかのアジアの国に比べて先に西洋化した分とか,産業化した分とかについて,少し先へいっている。もちろん伝統を持っていることは非常に強い特徴だと思いますが,そこを生かしていくのに,今このでき上がったたくさんの文化芸術施設を使っていく。そのためにはまず芸術の必要性をとにかく分かってもらう。アーティストというのは,語弊があるかもしれませんが,普通の人ではないからこそアーティストなわけです。いわゆるサラリーマンになってこつこつやるようなタイプではなくて,全然違った発想があるから,お金のことも考えない,時間のことも考えない,人のことも考えないで何か作品をつくったりする。それが何か新しい次の可能性を見せる。そういうことをうまく社会に取り入れていくために,つまり,今までのような芸術愛好家たちだけが使っている施設,発表している施設ではなくて,もっと強く創造性とかを刺激するようなものとして活用していきましょうというためのものが必要だと言っているのです。そこに全国的に地方自治体の方たちはそんなに気づいていない。「だって,そんなに困っていないじゃないか」という状況にあるわけです。だから,そこを何とか刺激するためには,かなり強いインパクトのあるものを打ち出さないと,変な話,5年,10年,シャッターが閉まらずにいて,それこそ市町村統廃合とかで実は幾つか施設ができたりしているのも何となく支えていますが,本当にこの先,支えきれずにどんどん閉じ始める。もちろん,同じ地域に美術館をたくさん持っている必要はないと言う人たちもいますが,次々閉まり始めたときでは遅いと思います。それは,こういうところに専門家として集められた我々としては,そうなる前に手を打ってくださいと言わなければならない。それは重要であるというだけでなく,はっきり手を打つ形の提言にしなければというのを強く思いました。需要がないと長官がおっしゃっているようですが,需要がちょっと見えにくくなっているということです。
【青木文化庁長官】
 どういう需要があるかという情報がないのです。個々のところから出てこない。それが非常に必要です。それによって大学の授業の内容も変わってくる,影響を受ける。理論からいくのと現場からくるのと両方の関係でいかないと。すごいアートマネジャーが出ると,例えば唐津さんがおっしゃったような愛知県のプロダクションが全国とかアジア全体で公演される機会ができてくる。それはアートマネジャーの手腕ということになるわけです。
【高萩委員】
 そうです。我々から言うと,愛知は10年以上前に世界劇場会議というのをやっています。
【青木文化庁長官】
 少し外れますが,若干危機感を持っているのは,美術も音楽も含めて,アジアが今アートの非常に大きな市場になってきているからです。日本のらつ腕のプロデューサーがいて,アートマネジャーがいて,愛知県のプロダクションを全部アジア公演を入れるといったことができる人が必要だと思いますが,そのうち香港やら上海やらが全部握って,例えばニューヨークにコロンビアアーティストというのがあって,クラシック音楽は全部握っています。90%ぐらい。だから,サントリーホールができても,コロンビアアーティストと話をつけないと指揮者もプレーヤーもだれも回ってこないのです。そういうことを上海あたりでやられてしまう可能性があります。我々は,せっかく文化庁をやっている以上は,これは,役人は目先のことばかりと言われますが,特に文化については,実際問題は百年の計で考えなければいけない。アジアの市場を視野に入れてアートマネジメントのことも考えなくてはいけない。そうすると,地方のプロダクションでも,いいものは全世界的に回っていく可能性がある。それは,プロデューサー,アートマネジャーが非常に優秀ならば,そういうことがいっぱいできるチャンスがめぐってくるわけです。だから,劇団四季などは北京公演とかをやっている。やはり浅利さんがそういうらつ腕のアートマネジャーでもあるからです。アートマネジャーは,もっと独立した職業としてそれぞれの能力を発揮することが要求されますが,そういうものをもっと言わなくてはいけない。当事者がこう言うのは申しわけないですが。
【宮田部会長】
 それは,裏方ではないということですね。
【青木文化庁長官】
 裏方ではない。マネジャーは会社でも一応経営者です。
【宮田部会長】
 ほとんど経営者です。どうぞ。
【唐津委員】
 例えばフリーでアートマネジャーをやっていらっしゃる方は,地方へ巡回させるとか,それこそアジアやヨーロッパまでツアーすることを前提に企画されることもあると思いますが,財団の職員や県の職員といった形でアートマネージャーやプロデューサーが配置されている場合には,基本的にはその自治体の置かれている場所で仕事をするのが大前提になってきます。ですから,例えば私も,今回文化庁からということでしたから,何日以内であればということで,こうやって兼職承認で東京での会議に参加させていただけていますが,ではこれが他の地域に例えばプロダクションを持っていくということになった場合に,やはり県を越えるという一つの大きな壁があります。その地域のプロダクションを,どこの県とどこの県がどのように予算配分をして,実質的に公演が行えるのかといった問題,これは実はかなり昔から議論になっている問題で,例えば愛知県と東京都で一緒に公演をやるときに,どういう配分でやることができるのか。そのときの出張費はどちらが出すのか。沢山の難しい問題が出てきてしまうのです。そういうところで国がバッと引っ張っていただけると,その壁が非常に突破しやすいといった状況があると思います。
【高萩委員】
 それに関しては,去年つくられた芸術施設と芸術団体で共同制作を行う場合に補助金を出すという事業というのは画期的な案だと思います。いろいろな問題はあるかもしれませんが,2つ以上の芸術施設と芸術団体が共同ですればということで,そのときに,今,唐津さんがおっしゃったように,役人が入ってくると,自治体同士は平等に負担したいと必ず言います。けれど,我々世田谷パブリックシアターの場合は欧米との共同制作が多いのですが,欧米と共同制作で,あるダンスの作品をつくろうとしたときに,5つぐらいの団体とかフェスティバルとかが集まって作品をつくることになったのですが,決してみんな同じようには出さないのです。それはしようがないと言うのです。アーティストがこれだけ予算をかけたい。このフェスティバルは非常に規模が大きいから,アビニオンフェスティバルからはかなりお金を出してもらおうと。ここの施設は最初に手を挙げてくれたけど,実はすごく小さい文化施設だから,このぐらいしか出せないということで,日本的に言うと不平等です。それでプロデューサーがいて,「おまえのところはこれだけ出して,おまえのところはもう少し出せないか」と言って説得して回ってということで作っていきます。だから,そういうことができるアートマネジャーがいれば,「作品を生み出すためにはそれぞれの大きさとか予算に応じて負担するのですよ」と言って納得させていくのです。ところが,本当に役人の方にオークションすると,「なぜ一律じゃないのか,なぜうちがあっちより多く出さなければいけないんだ」という話になります。でもそこで逆に文化庁が,「良質の作品が出来ることが重要」と言い切って,作品の評価が問題となってくれれば,大分違うと思います。どうでしょうか。
【唐津委員】
 そうですね。
【青木文化庁長官】
 この中に,よい企画がアートマネジャーを育てると書いてあります。これをよく読めば,かなり周到にはつくってあるのです。
【宮田部会長】
 結構入っています。
【青木文化庁長官】
 しかし,それを具体的にするというのは国だけでできるものではありません。国がこういうものを発表することが非常に意味があると思います。それで,今度は民間と地方公共団体とかいろいろなところと協力してやれるような。こういうのが入っていれば,やれるわけです。予算は余りないですが。
【宮田部会長】
 吉本委員,どうぞ。
【吉本委員】
 一つ前の議論に戻りますが,長官のおっしゃった,どこでどういう人を探しているかという情報が必要だというのは,まさしくそうだと思いますが,それと高萩さんの一つ前の発言で,文化会館があちこちにあって,それがすごく起爆剤になるということを言われましたが,人材をあちこちで登用するときに,登用する側の人,例えば公共劇場を設置している地方公共団体の人が,アートマネジメントの専門人材を登用した方がいいだろうなと思いつつ,でも予算がないとか,いろいろなことでできないでいるわけです。でも,アートマネジメントの専門人材を登用して劇場でいろいろなことをやると,地域がこんなふうに元気になるとか,予算がない中で無理にでも登用すると,劇場の運営がうまくいくというだけではなくて,そのことによって地域が文化とか芸術で活性化して,高萩さんのおっしゃるように,普通の人ではないアーティストが来ると,学校に派遣するだけでも本当にいろいろなことが起こるのです。具体例を紹介すると,先日ある札幌のNPOの方に聞いたのですが,アーティスト・イン・ザ・スクールというプロジェクトをやっていて,アーティストが空き教室に一定期間滞在して,そこで作品をつくるのですが,子供たちと自然に触れ合うことで,転校生としてアーティストがやってくるのです。(月)の朝礼で転校生が来ましたと紹介される。それでアーティストがその教室に住み始めると,そこがある種保健室のようになって,何となく居場所を失った子供たちが来て,そこでアーティストと触れ合って自分の居場所を見つけていくといったことが起こって,その人が1カ月いるだけで学校の中の雰囲気が変わったそうです。ある学校では,アーティストが来るというと,がき大将が「おまえらはそのアーティストと触れ合っては絶対だめだ」と言っていたのに,子供たちはおもしろいものだからもう触れたくて触れたくてしようがなくて,がき大将以外の子供たちがみんなアーティストと仲よくなって,最後にはとうとうがき大将もアーティストと仲よくなって,それでそういうのが崩れて学校が変わったとか。だから,アートマネジメントの人材を採用することは,劇場やホールや美術館での運営をちゃんとするということ以上に,もっと何か大きな効果があって,夢があるといったことを,この中では言えないかもしれませんが,いろいろな形でこのメッセージを発していくことが新しい需要をつくることになると思うし,まさしく失業者をふやさないためにはそういうことが重要と思いす。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
【青木文化庁長官】
 もう一つ,先ほど田村さんがおっしゃった,トップセミナーみたいなものが必要だというのは,そのとおりです。トップに重要性を説くわけです。それを文化庁がやるのか,経団連にやってもらうのか,何かそういうことが必要ですね。
【宮田部会長】
 トップセミナーというのは,トップが来て下の人が聞くという感覚がありますが,そうではなくて,トップを改革するという,これが大事です。
【青木文化庁長官】
 トップは全然知らないからね。
【宮田部会長】
 長官には大変いろいろお話しいただきましたが,次長以下皆さん,いかがでしょうか。
【高塩文化庁次長】
 この報告書にありますが,先ほど冒頭に「必要がある」という表現はどうだとありました。「必要がある」というのは,やるという意思表明ですので,そこはぜひご理解いただきたい。また,「検討する必要がある」というのは,少し時間がかかるなということです。その語尾のニュアンスをよく見ていただきたいのです。「重要である」というのは,どちらかというと他者に対する期待感を込めているということです。構成上,4として国の役割と書いたのは,もう少し整理しなければいけないと思っていますが,要はこういう形で国の意思表明を書いていますので,そこは3の部分を踏まえて,先ほど清水課長が申し上げたように,来年度の概算要求はこれからですが,20年度の事業の実施においてアートマネジメントを重視したいという形をつくりたいということです。地方公共団体については,期待というか,お願いを申し上げるだけで,私どもも都道府県の会議などに出ますが,県に対して教育委員会が余り文化芸術をやっていないというところもあります。先立つものの話ばかり出て,ありていに言いまして余り期待できないというのが現状ですが,それを国の事業で,芸術拠点形成事業やさまざまな研修のプログラムの中で,高萩さんがおっしゃった,機会の平等ですが,結果は不平等というか,選択のような形にならざるを得ないのです。やる気のあるところには集中的にやりますと。国がやれること,この提言に書いているさまざまなことも,全国の市町村すべてを一律に1,800やるのはとても無理なので,モデル的な事業という形で集中的に資源も投入していく。この部会でさまざまな議論をいただき,中間まとめをいただきましたので,これを踏まえて20年度の施策,21年度の概算要求につなげたいと思います。大変貴重な提言をいただいたことを本当に心から感謝しています。まだこれから継続して,来期に部会等もありますが,また別の視点の検討もします。パブコメも行いますので,その中でさまざまな提言もいただければと思っていますので,「必要がある」と書いていることはそういう意思表明であるということをぜひご理解いただきたい。「検討する」とあると少しというか,一番自信がないのは,新国立劇場のあたりも,アートマネジメント研修は,やって欲しいという期待ですが,今はもう独立行政法人制度のために,独法に資金投与が非常にできにくいということ。それは地方でも同じです。ですから,私どもの文化芸術立国を目指してやりたいという流れと,規制改革,地方分権,指定管理者制度,世の中を流れる大きなストリームが今非常に逆行しているわけです。その中でどういう手だてを見つけるかというので今行政は苦労しているということは,ぜひ皆さん方にはご理解を賜りたいということを最後にお願いしたいと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
【富澤委員】
 「期待される」というのはどういうことですか。
【高塩文化庁次長】
 大学とか文化芸術団体ということになると,むしろそこがどういう意識でやってもらえるかということですが,ただ,大学に対しても政策誘導は先ほど言ったようにできるわけです。
【富澤委員】
 主体は相手にある。
【高塩文化庁次長】
 むろんそうです。ここはそれぞれ書き分けています。国が直接やれることはある程度限られていますし,建前の平等というのは,行政に限らず,戦後の日本においては絶対必要なことです。建前は,機会は平等である。結果的には,選択と集中とよく言いますが,そういう形にならざるを得ない。
【宮田部会長】
 富澤委員,私も教育の現場にいますので,今の最後のことで,大学のカリキュラム等々については,こういう文言が最後にあって「期待される」といったときには,「よし,では1項目ふやそう」とか,カリキュラム会議では必ず出てきます。大分違います。と同時に,最後の言葉,文言,「検討」云々というのは,私も学長になったころからそうですよと十分教わったので,これは相当意味があるなと。数年前に「先生,困ったなというときには必ず「検討」という言葉を入れてください」と言われたのを思い出しました。さて,大分時間も迫ってきました。本日の意見をまた大切にして,今後,私の方でも最後のまとめをやらせていただき,当然,事務局の力をいただくしかありませんが,よろしいでしょうか。それでは,意見をまとめまして,2月1日の文化審議会の総会で審議経過報告をさせていただきたいと思います。第5期の文化政策部会は本日が最後の会議となります。第6期の文化政策部会の見通しについては,事務局から説明いただきたいと思います。
【清水芸術文化課長】
 今後の件ですが,既に何回か出ていますが,今回は審議経過報告ということですので,関係の方からの意見もこれからまた伺っていきたいと考えていますが,当初の予定では,今年度はアートマネジメント,舞台技術者などを集中してということで,20年度については,芸能の実演家,演出家とか脚本家なども含めて芸術家の育成について,少し広げて検討したいと考えていますので,今年度の検討と20年度の検討をあわせて,来年の今ごろになるかと思いますが,20年度中に芸術家の人材育成という全体についての報告を取りまとめるということに向けて審議をしていきたいと考えています。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。では,長官からごあいさつをお願い申し上げます。
【青木文化庁長官】
 皆様,本当にお忙しいところをこの委員会のために時間を割いていただき,また大変充実した内容の議論をいただきまして,このような中間報告ができました。心から感謝しています。先ほどから部会長もおっしゃっているように,今後はこれをどのように実行していくか,実施していくかということですから,それについてもまた貴重な意見を賜りたいと思います。本当に皆様,どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。それでは時間が来ました。拙い進行で申しわけございません。ただ,何とかしたいという気持ちは,先生方と同様です。これを機会に,選挙権ではないですが,より人権を大いにいただけるような報告書にして,親会議の方へ報告させていただき,皆さんにご理解とご協力をいただけるということになっていけたらと思っています。皆様,本当にありがとうございました。
ページの先頭に移動