資料5

資料5

新国立劇場演劇研修所について

新国立劇場運営財団
研修主管 演劇

(1) 設立の経緯とその狙い

欧米で確立された近代演劇は,その劇場での作品上演システムの中に,俳優育成の仕組みを同時に持つものがほとんどである。残念ながら,日本においては人材育成については,民間の養成機関がほとんどで,その民間では予算やスペースの問題から充分な教育が施せない。そこで欧米並みの専門教育機関の必要性が長く訴えられ,平成15年から「我が国おける演劇養成機関の在り方について」の検討会・調査が行われ,それに基づいて平成17年度から演劇研修所が開校することとなった。

(2) 研修の方針(三年制)

新国立劇場演劇研修所(NNTドラマ・スタジオ)は,明晰な日本語を使いこなし,柔軟で強度のある身体をそなえた次代の演劇を担う舞台俳優の育成を目的としています。 国内外を問わず現役で活躍している演出人や俳優教育の専門家による講師陣の指導によって行われ,3年制,週5日の全日制フルタイム(10:00から18:30)を基本とします。1年次は,「声と演技」,「身体と演技」,「歌唱と演技」,「即興」など,身体と言語をつなぐ基礎的な俳優訓練に力点をおきます。2年次には,それに加え,緻密なテキスト分析・解釈を前提とした第一線の演出家や,俳優指導の専門家を軸とする講師陣の指導による「シーンスタディ」を中心的な課題とし,日本の伝統芸能を含むさまざまな演劇メソッドに触れる機会を設けます。さらに3年次は,実習の公演を通じて,俳優としてスタートを切るための舞台経験を積んでいきます。また修了後の進路をサポートするための特別講義を用意されています。1年次,2年次に共通して,国語力を高め,高度の戯曲分析行い,演ずる役の内面性を深く考える座学がおこなれます。これには現役のプロデューサー,劇作家,批評家,舞台技術者があたり,同時に演劇の本質についての思考能力を鍛えます。最終的には,芸術表現としての演劇を,主体的に実践し,組織していく俳優を育てることを中心としたカリキュラム編成です。

(3) カリキュラム(1年次・2年次・3年次)

【研修1年目】俳優としての基礎固め-演劇に主体的に関わる

1年目は,さまざまなバックグラウンドをもって集まってきた研修生たちが,3年間,この研修所で学ぶための共通の方法を身につけ,演劇についての認識を新たにする期間です。基礎段階であるとはいえ,この初年度においても,明確なテーマと目標が提示され,その達成に向かってカリキュラムが進められていきます。

1学期に,まず行われるのは,「声と演技」と「身体と演技」です。声と動きは,明晰な日本語を発語し,また柔軟な身体表現をするための,基盤にあたります。この訓練によって,俳優にとって必要不可欠な身体的条件の獲得を目指すとともに,この訓練をみずからに課していく習慣を身につけます。また,1学期の半ばから,「アクティング」の授業が加わります。この集中的なトレーニング期間を通して,俳優としての個に内向するのではなく,他者とのコミュニケーションを自在に行える身体と精神の基礎を固めます。2学期から3学期にかけて,「声と身体」「身体と演技」「アクティング」の基礎訓練が継続して行われますが,新たな授業として,「朗読」と「シーンスタディ」が加わります。「朗読」は,第一線で活躍する俳優を講師に迎え,明晰な日本語表現が,いかなる技芸によって支えられているかを体験します。戯曲のみならず,すぐれた詩や散文をテキストとして用い,文章表現に対する理解力を高め,俳優の身体を通して,テキストが音声として発語され,いかに台詞として実体化されていくか,そのプロセスを探求します。また,「シーンスタディ」は,栗山民也所長はじめ,現役の演出家の指導によって行われます。長い歴史を生き抜いてきた古典から現代の清新な作品まで,劇文学としてもすぐれた達成とされる戯曲を取り上げます。ここでは,上演を前提とする舞台稽古にありがちな必要以上の緊張は排除されます。また,演出家の一方的な指示によるのではなく,俳優自らが自主的に考え,発想し,試行錯誤を繰り返して,演技を組み立てていくプロセスが重要視されます。
また,台詞劇のみならず,幅広い演劇ジャンルに対応するための実技として,「歌唱と演技」「日本舞踊」「ダンス」「アクション」の授業が設けられています。「歌唱」では,単に歌唱法の指導に終わるのではなく,音楽劇や挿入歌のある作品を想定して行われます。「日本舞踊」は,舞踊を通して,着物を着て動くときの所作の基本を身につけ,和物の作品に対応できる俳優育成を目指します。「ダンス」では,コンテンポラリーダンスの領域も含め,劇中における俳優のダンスについて,初歩的な手ほどきを行います。また,「アクション」では,和物の立ち回りや翻訳劇のフェンシングなど,どちらにも対応できるように,ステージ上で行われる武闘のベーシックな様式を実際的な訓練によって学びます。
また,本研修所では,実技偏重の弊害を避け,自ら思考し,演劇の新しい地平を切りひらく理念を持った知的な俳優を養成します。座学は,主に「演劇について」「戯曲について」「俳優について」「日本語について」の4ジャンルに分類されます。「演劇について」では,伝統演劇から前衛まで,舞台表現を支えてきた理論を紹介するとともに,その実際的な展開について,視聴覚資料を駆使して学びます。「戯曲について」では,台詞の行間に込められているサブテキストを精査するとともに,俳優のみならず,演出家,スタッフが戯曲に向かうとき,どのような読解を行うかが示されます。「俳優について」では,単に舞台上の職人ではなく,美しい日本語の継承者-伝達者としての役割を果たし,ついには時代の象徴ともなりうる俳優のあるべき姿について講義が行われます。それぞれの講座は,集中講義形式で行われ,演劇界で活躍する評論家,劇作家,研究者が中心となって担当します。

さらに,本研修所の特色として,「観劇とディスカッション」と「金曜サロン」があります。俳優は基礎段階で,すぐれた舞台表現に接することが重要です。新国立劇場主催公演に限らず,伝統演劇から小劇場まで年間を通して数多くの観劇を行い,その直後に担当講師を囲んでディスカッションを重ねます。現在形で進行する舞台を素材に,単なる技術論にとどまらず,政治・経済・社会をめぐるさまざまな問題について討議します。「金曜サロン」は,週末の午後に設けられた自由な意見交換の場です。現代演劇をリードする劇作家・演出家・スタッフ・俳優のみならず,アーティストや音楽家など,隣接分野の芸術家を迎え,時代の先鋭的な空気を呼吸する機会を設けます。

【1年目の主な実技】 【1年目の主な座学】
シーンスタディ
朗読

声と演技
身体と演技
コメディア・デラルテ
身体は喋る
つくらない演技
Pleasure in Play
歌唱と演技
日本舞踊
伝統芸能
ダンス
アクション
マナー
演劇について
俳優について
戯曲について
日本語について
観劇とディスカッション
金曜サロン

【研修2年目】キャラクターを創造する-俳優としての出発

研修2年目の中心になるカリキュラムは,「シーンスタディ」です。創作劇,翻訳劇のバランスを考え,また時代や国に偏りのない立場から,総合的な見地から見て重要と思われるテキストが,スタジオ・サポート委員会によって選定され,本格的な「シーンスタディ」に取り組んでいくことになります。
それぞれの俳優が,さまざまな役柄に挑む過程で,俳優としてもっとも大切な自らのキャラクターを,従来の類型にとらわれるのではなく,それ自体を斬新な表現行為として創造していく意志が求められます。
また,演出家を中心に行われる「シーンスタディ」は,その授業時間で完結するものではありません。同時に,取り上げた場面が,舞台表現として豊穣なものとなるために必要とされる技芸(ステージ・コンバット,殺陣,歌唱,ダンスなど)を学ぶ授業が「シーンスタディ」と密接な連携をとって構成されます。また,各「シーンスタディ」の最終回には,原則として,自主的な試演を想定しています。そこでは,舞台を支える装置・照明・音響・衣裳などは最小限に抑えられ,演技の実質を観客に向けて提示していく作業が行われます。研修生は,演出家に過度に依存するのではなく,演劇を実践する主体としてこの「シーンスタディ」に関わり,自主的な試演会を通して,演劇の本質とは何かを自ら問いかけていくことになります。
「声と演技」や「身体と演技」の基礎科目は,研修生それぞれのレベルや課題に応じた個別のトレーニングに発展し,1年目で培われた基礎力をさらに高めていきます。「日本舞踊」の基礎が出来上がったところで,歌舞伎や狂言などの所作,和楽器の奏法を学ぶカリキュラムが加わり「和物」への素養をさらに高めていきます。

この学年の座学は,「シーンスタディ」との連携によって行われます。「演劇について」では,シーンスタディで取り上げられるその戯曲の上演史,批評史を含めたバックグラウンドを理解するとともに,書かれた時代の思想的な潮流や他ジャンルの芸術の動向を学びます。また,「戯曲について」では,シーンスタディと連携を取りながら,取り上げた戯曲を担当演出家とは異なる視点から読解する試みを行うとともに,同一の劇作家の他の代表作や同じ時代の対照的な劇作を概説します。自らの演技プランをつくるために戯曲を読むのではなく,戯曲を全体として把握し,複眼的な視点を持つ訓練を行います。
また,補足的な授業として,演劇における商習慣・保険や事故対策・著作権など実演家として自立していくために必要な実践的知識を学びます。
「観劇とディスカッション」「金曜サロン」は,一年次と共通の講座が設定されます。

【2年目の主な実技】 【2年目の主な座学】
シーンスタディ
朗読

声と演技
身体と演技
歌唱と演技
日本舞踊
伝統芸能
和楽器
アクション
ダンス
演劇について
俳優について
戯曲について
日本語について
観劇とディスカッション
金曜サロン
演劇実務

【研修3年目】役柄を確立する-舞台人として働く

世界演劇のなかで,自分はどこに立っているか

研修の3年目は,発表公演を通じて,一個の舞台人としての表現を確立するための実践的な活動にあてられます。大劇場から小劇場まで,ステージの規模や客席数,舞台を取り巻く環境が異なる劇場での発表公演を通じて,幅広い演技を身につけるとともに,舞台芸術の創造者として,演劇の未来を担うための自覚を高めていきます。

座学では,発表公演のたびに,その公演を行うにあたっての基礎的な知識を学び,現代においてその戯曲を取り上げ,研修生によって公演が行われる意義についての討議が事前に行われます。また,稽古が進んでいく段階では,稽古過程で起こるさまざまな問題を解決するためのクリニックが開かれ,1,2年次で学んだ基礎訓練を見直す立場からコーチングをあわせて行います。

(4) 講師陣

所長 栗山民也
副所長 西川信廣
カリキュラム・コーディネーター 川南 恵
ヘッドコーチ 池内美奈子
スタジオサポート委員 井上ひさし 大笹吉雄 河合祥一郎 永井愛 服部基 宮田慶子 (五十音順)

シーンスタディ

栗山民也

早稲田大学文学部演劇科卒業。紀伊國屋演劇賞,読売演劇大賞最優秀演出家賞,芸術選奨文部大臣新人賞,毎日芸術賞第1回千田是也賞,第1回朝日舞台芸術賞などを受賞。前新国立劇場<演劇>芸術監督

西川信廣

1986年,文化庁派遣在外研修員として1年間渡英,ロイヤル・ナショナル・シアターなどで演出助手を務める。92年度紀伊國屋演劇賞,芸術選奨文部大臣新人賞,第4回読売演劇大賞審査員特別賞,第6回読売演劇大賞優秀演出家賞など,受賞多数

宮田慶子

1985年,『ブンナよ,木からおりてこい』の演出で注目を浴びる。東京都優秀児童演劇選定優秀賞をはじめ,文化庁芸術祭賞,紀伊國屋演劇賞個人賞,第5回読売演劇大賞優秀作品賞・優秀演出家賞,第9回読売演劇大賞最優秀演出家賞,毎日芸術賞千田是也賞,芸術選奨文部大臣新人賞など,受賞多数。演劇教育,地方の演劇人としての交流にも積極的に取り組んでいる

高泉淳子

女優,劇作家。早稲田大学社会科学部卒,在学時,早稲田大学演劇研究会に在籍。卒業後83年に遊◎機械/全自動シア ターを結成し,少年,少女から老人,老婆にいたるまで,あらゆる人物を演じる役者として人気を得る。舞台の本も手がけ,演劇の中にジャズを取り入れた「オー・マイ・パパ」,「ムーンライト」,「メランコリー・ベイビー」等々,音楽界からも注目される。89年から中西俊博氏と組んで始まった,音楽と芝居のコラボレーション「ア・ラ・カルト」は話題を呼び,今年で19年の大ロングランとなる。91年「ラ・ヴィータ」で文化庁芸術祭賞受賞。04年「エレファント・バニッシュ」のニューヨーク,パリ,ロンドン公演で世界的評価を得た

ペーター・ゲスナー

「うずめ劇場」主宰。国立ベルリン俳優学校エルンスト・ブッシュで学び,ハレのターリア劇場で4年間演出,俳優,助監督として活躍。ライプチヒ大学で演劇学修士取得。2000年,財団法人舞台芸術財団主催の第一回利賀演出家コンクール最優秀演出家賞,2001年に北九州市市民文化奨励賞を受賞。04年より桐朋学園短期大学演劇専攻科専任講師。

声と演技 池内美奈子

1991年英国ヨークシャーにあるARTTS International 校にて演出ディプロマを取得。2000年度文化庁派遣在外研修員としてロンドンのセントラル校のヴォイス・コースに学び,ヴォイス&スピーチ講師術を修得。ヴォイス学修士を取得。ロンドンではセントラル校,RADA日本人ワークショップ,メアリーマウント演劇校などでヴォイスを教える

身体と演技 山中ゆうり

ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校演劇学部演出コースで修士号取得。LAMDA ムーブメント・インストラクターコース卒。エコール・フィリップ・ゴーリエ(ルコック・テクニック),日本舞踊(花柳流),舞踏(大野一雄,大野慶人,岩下徹,竹之内淳志,カルロッタ池田に師事)を学び欧州のオペラカンパニー,劇団などにワークショップや振付を行う。英国の劇団にも多数ムーブメント・ディレクター/コーチとして貢献。役者としても幅広く活躍。ロンドン在住。

身体は喋る/"Body Speaks" ローナ・マーシャル

演出家,ムーブメント・ディレクター,ライターとして活躍。演劇学校としては英国のRADA,ウェーバー・ダグラス,ローズ学院などで教える。また欧州各地で俳優のみならず,オペラ歌手,ダンサー,サーカス・パフォーマーなど広い範囲のパフォーマーを教える

つくらない演技/"Acting without Acting ジェレミー・ストックウェル

英国で俳優・劇作家・演出家として活躍。1992~95年,ロイヤル・ナショナル・シアタ-エデュケ-ション部,およびスタジオにおいて俳優・学生のためのワ-クショップでインプロヴァイゼ-ション,マイム,フィジカルシアタ-などを指導。欧州各地で指導教官として活躍。

"Pleasure in play" ジム・チム

現在香港で最も活躍している「劇場組合」の芸術監督にして主演俳優。ヨーロッパの2人の演劇指導者,フィリッ プ・ゴーリエとモニク・パニョーのもとで学び,香港に戻って以来,演劇界のみならず,映画・テレビと幅広く活躍を続けている。アジア地域のほか,英国にも演技指導の講師として招かれ,高い評価を得ている。

マイズナーテクニック 柚木佑美

学習院大学経済学部卒。1982年NHKドラマ人間模様「夕暮れて」で女優デビュー。以来舞台・映画・TV・CMで幅広く活躍。イトーカンパニー所属。その傍ら,キャリー・ジベッツ女史から学んだサンフォード・マイズナーテクニックを基にワークショップを開き,若手俳優の演技指導にあたる。PAI付属養成所専任講師やNHK朝ドラなどのアクティングトレーナーもつとめる

存在する身体 木村早智

1992年以降,劇団四季を経て俳優として舞台・テレビで活動後,2001年度文化庁在外派遣員として渡英。ジェレミー・ストックウェル氏の元でイムプロヴァイゼイション,他エコール・フィリップゴーリエ,アントニオ・ファーヴァ(コメディア・デラルテ)の元で学ぶ。アクターズセンターロンドン,ロンドンメットフィルムスクールなどで教師を務める他,俳優としてもロンドンを拠点にヨーロッパなどで舞台,TV,映画で活躍する。

歌唱と演技 伊藤和美

名古屋音楽大学声楽科卒業。1985年よりパフォーマンスグループ「時々自動」に所属,作曲とパフォーマーを担当。数多くの演劇,オペラ,ミュージカルのスタッフを務め,音楽助手,歌唱指導として新国立劇場の多くの舞台に参加している。平成17年度文化庁在外研修制度に より一年間渡英。

歌唱と演技 小川美也子

ミュージカル劇団フォーリーズ出身。1988年「歌麿」全米公演では,「とりわけ美しい声の持ち主」とワシントン・ポスト紙で評された。歌唱指導のほかに,演出助手,演出も手がけている。

歌唱と演技 深沢桂子

国立音楽大学ピアノ科卒業1987年 宮本亜門演出「I Got Merman」で音楽監督,編曲演奏を務めミュージカルデビュー。数多くのB.Wayミュージカルの音楽監督を務める。また,数多くのオリジナルミュージカルの作曲を手がけ,高い評価を得ている。

歌唱と演技 安崎求

東京芸術大学音楽学部声学科卒業。ミュージカル「ファンタスティックス」のマット役でデビュー。その後,野沢那智主宰の劇団薔薇座に入団し,数々のブロードウェイミュージカルのメインキャストを演じる。「レ・ミゼラブル」のマリウス,「その男・ゾルバ」のニコ,「ミス・サイゴン」のクリスなど。最近では東宝ミュージカル「マイフェア・レディ」「十二夜」「風と共に去りぬ」の歌唱指導を務める。

俳優の声 樋田慶子

女優。湘南白百合学園卒業。1956年俳優座養成所第5期卒業。同年,劇団新派に入団,花柳章太郎に師事。1969年フリーに。出演作品に,舞台「近松心中物語」,「たぬき」助演女優賞,映画「蕨野行」,NHK大河ドラマ「葵三代」など多数。

日本舞踊 花柳千代

花柳応輔,初代花柳昌太朗に師事。1950年,第7回全国舞踊コンクール邦舞部門で第1位,文部大臣賞受賞,68年同コンクール創作部門の「鐘によせる幻想より久遠」で第1位,文部大臣賞・高松宮賞受賞,1981年,花柳千代創案『実技・日本舞踊の基礎』東京書籍より出版。内外にて日本舞踊の普及を開始。90年紫綬褒章,95年勲四等宝冠章受章。

日本舞踊 花柳太郎

日本大学芸術学部演劇学科卒業。1975年,花柳流より指導者の資格である専門部を許される。以後,UCLA夏期講座,ハワイ大学,新国立劇場オペラ研修所,沖縄県立芸術大学,二期会オペラ研修所などで日本舞踊の講師として活躍。

伝統芸能 中村又蔵

上智大学文学部卒業後,1958年,歌舞伎俳優となり,坂東三津五郎(八世)に師事。61年,中村又五郎(二世)に師事し,東宝劇団員となる。67年5月,名題昇進,国立劇場『佐倉義民伝』で披露。70年より国立劇場歌舞伎俳優研修生の指導にあたる。以後,昭和音楽大学,ハワイ大学,ミュンヘン大学演劇科講師などのほか,ベルリンやワシントン,ローマ,ロンドンなど世界各地で歌舞伎のレクチャー,ワークショップを行っている。

中伝統芸能 村京蔵

法政大学文学部日本文学科卒業。1980年,国立劇場歌舞伎俳優養成所第6期生となり,研修終了後,82年,四代目中村雀右衛門門下となり,中村京蔵を名乗る。以後,国内の歌舞伎公演,また海外での歌舞伎レクチャー公演に参加。94年4月,歌舞伎座『鳥辺山心中』仲居お雪にて名題昇進。95年,歌舞伎座賞,2002年国立劇場奨励賞受賞

ダンス 前田清実

日本大学芸術学部演劇学科卒業後,名倉加代子,鈴木恵美子,柳瀬真澄,河野潤に師事。『ダンスコレクション』『ステイヒア』を定期的に公演しダンサーとして活躍するかたわら,振付者としても数多くのミュージカルやストリートプレイ,宝塚歌劇団の作品を手がけ,1997年『YOURS』を初演出。“KIYOMI DANCE COMPANY”の設立,解散を経て,2000年,再び原点に戻りドラスティックダンス‘O’を結成。第8回読売演劇大賞スタッフ賞優秀賞を受賞。

ダンス 井手茂太

ダンスカンパニーイデビアン・クルー主宰。集団のなかのコミュニケーションをモチーフとして振付に取り組み,オリジナリティのある作品で注目される。日常的な身振りから生まれる動きと演者の個性を活かした振付が特徴。読売演劇大賞優秀スタッフ賞受賞

日大芸術学部演劇学科卒業。名倉加代子・鈴木江美子に師事。82年渡米。帰国後,演劇的ダンスの創作活動を展開。新国立劇場栗山民也演出「夢」シリーズ三部作,「RENT」,「tick tick Boom!」,「The Last Five Years」,「レインマン」,蜷川幸雄演出「桜の園」,「ロミオとジュリエット」,「メディア」等,振付。また,井上芳雄全ソロコンサート演出,ステージング。

バレエ 河野有紀子

3歳よりクラシックバレエを初め,小林紀子バレエシアターを経て前田清実主宰のドラスティックダンス"O"へ所属。東宝ミュージカルアカデミー舞踊講師。

和楽器 杵屋勝芳壽(三味線)

三味線演奏家,桐朋学園芸術短期大学講師(2007年度より客員教授),NHK邦楽技能者育成会講師

アクション 渥美博

13歳からアクションスタントプレイヤー・俳優として活動,1989年に「盲導犬」で殺陣師としてデビューし,以降主に舞台を中心にアクションシーン・立ち回りシーンのステージングを数多く担当。代表作は「浪人街」。新国立劇場では「今宵かぎりは…」「ブッダ」「キーン」「世阿弥」「母・肝っ玉とその子供たち」他多数の作品に参加。

殺陣 剱伎衆かむゐ

殺陣のスペシャリストによる俳優集団。1998年結成,独自の立ち廻りのスタイルを確立。和楽器はもちろん,ロックやトランスといったジャンルとのコラボレーションにも積極的に取り組む。LAでのストリートパフォーマンスやラスベガスでのショーで大喝采を浴びるなど海外でも評価が高く,映画『キル・ビル』の殺陣振付・指導に加わる

ボディワークス 橋本佳子

ボディーワークス主宰。幼少よりクラシックバレエを学び,1979年より英国ロイヤルバレエスクールに留学。谷桃子バレエ団所属の舞踊家として活動中に‘85~’87まで文化庁芸術家在外研修員として,英国でプロダンサーの体の内面からの表現および管理法について研修。英国PILATES第一人者 A.HERDMAN氏に師事し,ピラーティスベースボディコンディショニング技法および指導法を研修。日本においては舞踊界を皮切りに,体育大学など,さまざまな場において報告活動および授業を行う。‘90日本初のピラーティスマシン導入のスタジオを設立し,一人一人に対して心身への意識と動作の基盤を安定させる訓練法を実施。現在,新国立劇場バレエ研修所・演劇研修所講師

朗読

鈴木瑞穂

1952年劇団民藝入団。62年『るつぼ』で芸術祭奨励賞受賞。劇団の中心俳優として活躍の後,71年退団。以後, 72年劇団銅鑼結成に参加。現在フリー。舞台『女相続人』,新国立劇場『請願‐静かな叫び‐』などの他,映画やテレビドラマの出演も多い。また,ラジオド ラマ,テレビドラマやドキュメンタリーのナレーション,映画の吹き替えなどでも活躍

すまけい

芸術劇場を経て,新舞台を設立。1966年「すまけいとその仲間」を結成。『ゴドーを待ちながら』『動物園物語』等を翻案,演出,出演。伝説的な舞台を作り「アングラの帝王」と呼ばれた。72年解散後は演劇界から離れていたが,85年『日本人のへそ』(こまつ座)で復帰。第11回読売演劇大賞優秀男優賞,第10回日本アカデミー賞優秀助演男優賞など,受賞多数。

今井朋彦

慶応義塾大学文学部卒業。同大学在学中より文学座附属演劇研究所に入所,1992年に文学座座員となる。以後,劇団内外を問わず多くの舞台,TV等に出演。96年,文学座アトリエ『水面鏡』で第31回紀伊国屋演劇賞個人賞,2001年に新国立劇場『コペンハーゲン』他で第9回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。

<座学の主な講師>

大笹吉雄

演劇評論家・大阪芸術大学教授。早稲田大学文学部演劇科で郡司正勝に師事。『演劇界』編集者を経て評論家に。歌舞伎・新劇・ミュージカルから小劇場演劇まで分野にとらわれず幅広い評論活動を展開している。 主著に『日本現代演劇史』全8巻。

村井健

演劇評論家。明治大学卒業。演劇書の編集を経て,1982年より演劇批評。「朝日ジャーナル」,NHK・FM,NHK「芸術劇場」などで活躍。1999年「日露演劇会議」を設立。ロシア語版『現代日本戯曲集』の出版やオムスク大学への「日本文化講座」開設などを行う。05年度文化庁文化交流使。現在,日露演劇会議事務局長,紀伊國屋演劇賞審査委員,新国立劇場演劇専門委員,テアトロ新人戯曲賞選考委員,淑徳大学非常勤講師。著書に『シチュアシオン』など。

河合祥一郎

東京大学卒。同大学院より修士号・博士号取得。ケンブリッジ大学留学,修士号・博士号取得。現在,東京大学大学院総合 文化研究科助教授。著書に『ハムレットは太っていた!』,『謎解き確「ハムレット」』ほか,訳書に『新訳ハムレット』『新訳ロミオとジュリエット』ほかがある。

服部 基

照明家,吉井澄雄,沢田祐二両氏に師事。ライティング・カンパニー・あかり組設立に参画。多くの演劇,ミュージカル,オペラなどの照明を手がける。日本照明家協会最優秀賞,読売演劇大賞優秀スタッフ賞などを受賞。

垣ヶ原美枝

「エンジェルス・イン・アメリカ」,「テレーズ・ラカン」,「蜘蛛女のキス」,「グリークス」,「ベガーズ・オペラ」など多くの戯曲を翻訳。パッツィ・ローデンバーグ著『話す権利-あなたの人生を変えるボイス・トレーニングの本』などを劇書房より刊行。垣ヶ原美枝として「レ・ミゼラブル」,「ベガーズ・オペラ」をはじめ,外国人演出家のアシスタントの仕事も多い。第一回湯浅芳子賞,日本演劇興行協会賞,ニッセイ・バックステージ賞受賞。

井上ひさし

主な戯曲に『日本人のへそ』『藪原検校』『雨』『頭痛肩こり樋口一葉』『黙阿彌オペラ』『紙屋町さくらホテル』『夢の裂け目』『円生と志ん生』など。直木賞,岸田國士戯曲賞,紀伊國屋演劇賞,読売文学賞,菊池寛賞,朝日賞ほか受賞多数

ほか,特別講師陣。

(5) 修了生の活躍

  • ・1期生には,在学中より終了後すぐ現場で活躍できるような支援態勢がとられ,在学中より多くの舞台経験を経ることが出来た。
  • ・また,修了公演のあとにも,プロダクションや劇団などに「プレゼンテーション」と称して,事務所への斡旋を行った。その他,研修所の講師や事務局の人脈を活かして,様ざまな舞台作品への出演斡旋を行っている。
  • ・また修了生のうち,更に可能性のある5名を選び,新国立劇場の主催公演に積極的に参加できるような仕組みを検討している。
別紙資料(1) 一期生の研修三年目の出演作品
別紙資料(2) 一期生の修了後の出演作品

以上

ページの先頭に移動