資料6

資料6

演出家とミュージカル脚本家の養成を

演劇評論家・静岡文化芸術大学特任教授 扇田昭彦

 現代演劇関係の人材養成は,平成17年度(2005年)に新国立劇場が3年制の俳優養成のための演劇研修所を設立したことで大きな進展を見せた。

 だが,現在の日本の演劇界とミュージカル界には,大きな欠落がある。主な欠落は,次の2点である。

  • (1) 演出家(演劇,ミュージカル)の養成
  • (2) ミュージカル脚本家の養成
  • (1) 演出家の養成

     日本の演劇界は公演数がきわめて多く,隆盛を極めているように見えるが,国際的に通用しうる,知性と実力を備えた若手の演出家は実に少ないのが実情である。
     日本では,劇作家が演出家を兼ねて舞台を演出するケースが多く,演出専門の演出家を育てる制度が確立していない。
     古典劇や名作劇を新しい視点でどう解釈し,どう舞台化するかなど,演出家には独創的なアイデア,現場経験と同時に,高い知性と豊かな教養が必要とされる。
     すでに演出コースを置いている大学もあるが,演出家を育てるは座学だけでは無理。プロの演劇を上演する劇場の稽古場で,演出助手などをしながら実地に演出を学ぶことが必要。  このため,新国立劇場の演劇研修所に小人数の演出コースを早期に設けることが望まれる。

  • (2) ミュージカル脚本家の養成

     現在の日本ではミュージカルの公演が増え,ぴあ総研の『エンタテインメント白書2007年』によれば,2006年現在,観客動員数では,ミュージカルの観客数が舞台関係の観客全体の48.5パーセントを占めている(演劇の観客は24.8パーセント)。
     それにつれ,日本発のオリジナル・ミュージカルの公演も増えているが,オリジナル・ミュージカルの脚本のレベルはまだ低い状態にある。
     これは英米と違い,日本にはミュージカル専門のプロの脚本家,作詞家はほとんど存在せず,演劇(ストレート・プレイ)の劇作家がミュージカルの脚本を手がける例が多いからだ。
     劇作家養成の講座などは数多くあるが,ミュージカルの脚本についての講座はほとんどないのではないか。
     日本のミュージカル界の成長のためにも,大学,劇作家協会などが,英米から講師を招くなどしてミュージカルの優れた脚本家を育てることが急務である。

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