資料3
舞踊芸術の社会性
演出振付家,ダンサー, 金森 穣 |
昨今日本ではダンスブームといわれていますが,私の感覚ではダンスを“やる文化”は広がっているけれど,ダンスを“観る文化”が広がっているようには思えません。“観る文化”を養う為には,“観せる文化”が必要です。そして観せる文化を養う為には観せる事が出来る専門家集団,実際に観る事が出来る劇場という場が社会的に機能する必要があります。アマチュアダンサーが溢れ,スタジオ公演が多発し,自分の為に振り付ける振付家が後を絶たない現代の舞踊芸術界に於いて,舞踊芸術の社会性の復権を,その専門性の復権と同義に考えるべきであると私は思います。
1-専門家育成の為の教育(専門家の育成)
〈ベジャールの学校ルードラに於いて学んだ事〉
モーリス・ベジャールの舞台芸術学校ルードラでは,クラシックバレエ/モダンダンス(コンテンポラリーダンス)/音楽/演劇/剣道等,実に多彩な授業が毎日朝から晩まで行われ,そこに集う生徒達は皆舞台芸術の多様性,そしてその類似性,あるいはその同義性を身体的に養う事が出来ます。
2-世代別/目的別カンパニーの可能性(観客の育成)
〈キリアンのNDT2に於いて経験した事〉
イリ・キリアンが25年間芸術監督を務めたネザーランド・ダンス・シアター(以下NDT)には3つのカンパニーがありました(現在は1と2のみ)。NDT1(22歳~40歳)とNDT2(17歳~22歳),そして2年前に残念ながら無くなってしまったNDT3(40歳~60歳)。この世代別カンパニーシステムは,舞踊家活動の可能性のみならず,社会に於ける舞踊芸術の,公演活動の多様性を開示しています。
3-劇場専属舞踊団の価値(劇場文化の育成)
〈新潟市民芸術文化会館ー専属舞踊団Noism〉
2004年に新潟市の公的援助を受けて誕生したダンス・カンパニーNoismは,新潟市民芸術文化会館専属の舞踊団です。公的資金により建てられた劇場,そして公的資金により運営される舞踊団の社会的有用性は,互いの存在を抜きにしては語れないものであります。