資料5

資料5

第6期文化政策部会におけるこれまでの主な意見の概要

 本資料は,実演芸術家(音楽,舞踊,演劇等の分野における実演家)等に関する人材の育成及び活用について,これまでの文化政策部会(第1回~第4回)における主な意見の概要を整理したもの。

1.分野ごとの状況

【音楽】

○音楽については,音楽大学を修了し,プロをめざすが,なかなか実現しないため,教授業をしながら,コンサート,個人リサイタルをひらいていく人が多い。

○演奏家を育成する前に,聴衆が育っていないので,聴衆の育成が必要である。高齢化が進んでいる

○演奏する際に,公共施設があまり利用されていない。オーディションなどで実演できる場所を与えてはどうか。演奏技術はあるのに,活躍する人は少ない。

○日本人の国民性か思ったことを自由に表現することができない人が多い。

○声楽では変声期があるため,オペラ歌手は小さい頃から教育できない。

【舞踊】

○舞踊(バレエ)については,バレエ団に所属しつつ,出演しながら,教授業など行う。高校途中から,海外へ行く場合は,通信教育などで高校卒業資格を得るなど対応できればいいのではないか。

○地方自治体の劇場を活用してバレエカンパニーを作るなら,国は半分支援するという提言を出せば,地方公共団体はバレエカンパニーを作るかもしれないのではないか。

○ダンサーは劇場で育つため,劇場つきのバレエ団がふえてくるほうがいい。

○ヨーロッパは劇場文化があり,国を代表する海外のバレエ団は必ず劇場に付随している。劇場に付随しているバレエ団がさらに研修所を持っている。日本も劇場を中心とした考え方というものに,ある程度シフトしていく時期ではないか。

○演劇とバレエの決定的な違いは,観客層の大きさにある。バレエは,踊り手にきちんと出演料を支払いができる公演を行えない観客層の小ささがある。

○学校教育の中で芸術といわれるものは,長らく音楽と美術だけであった。舞踊は体育の中の一部に含まれるだけであった。舞踊については,日本の中で芸術であるという認識ができあがっていない。教育で芸術として教える制度が全く出来上がっていない。

【演劇】

○演劇については,大人になってから俳優をめざすことが多いため,劇団での養成が一般的になっており,日本で演劇教育ができる人間が非常に少ない。

○演劇については,対外的な評価や教えるにあたっても,どういう資格を持っているといったシステムが一切ない。

○演劇について,日本はライセンス制やきちんとした教育制度がないまま,皆独学で,育ってきた演劇人ばかりであり,演出家・劇作家とは二足のわらじの人が多い。

○最近の役者養成の傾向としては,舞台表現にのせた場合,まったく表現技術,発音技術が追いついていない人が多い。戯曲を読ませても台本に取り組んでも読解力がなく,どういうふうに取り組んでいいかわからない生徒が多い。

○演劇の海外での活躍については,ネイティブの語学が必要なため,音楽やダンスなど他の分野に比べ,壁が厚い。

○脚本家養成については,自分たちである程度人気を得て,ある程度動員できるようになって,たとえば新国立劇場でピックアップされて脚本を書いてみないかという話になる。自分たちで売り込むというシステムがない。

○脚本家,劇作家について,英米の場合は,周りからいろんな意見をもらい,プロダクションを大きく変えていく。日本の場合は個人負担によるところがあり,大きくしようにも,おおきな負担を強いているから脚本を手渡せない。
演劇界,舞台芸術界というふうに視野を広げたところで連携しあえる関係づくりが必要である。

○劇団の養成所は,基本的に自分の劇団の新人を育てるのが目的。実技の時間が多い。また,それによって,劇団,プロダクションの性質が傾向としてあらわれがち。

2.現在の文化庁における施策の見直し

○芸術団体人材育成支援事業について,統括団体のみの取扱いから個別団体を対象することとなり,どんな団体でも申請が可能となった。それにより,企画が小粒,目先のものが多く申請されるようになり,人材育成支援事業の目的があいまいになってきている。

○新進芸術家海外留学制度(旧芸術家在外研修員制度)で,実のある国際交流がなされておらず,研修生が海外から日本にかえってきても,還元することができずにいる。

○新進芸術家海外留学制度(旧芸術家在外研修員制度)については,人数が多いので150人を100人にして助成金をアップしてはどうか。

○劇作家の養成にあたって,戯曲作品を上演することは大切であり,文化庁事業の舞台芸術創作奨励賞を復活させていただきたい。

○新国立劇場研修所に対する要望
バレエについて,小さいころから養成するということで幼児コースがあってもいいのではないか。
演劇について,演劇教育を取り入れるため,サマーセミナーという形で中学生のコースができてもいいのではないか。
演劇研修所にオペラ,バレエにも対応できる演出家養成コースが設置できればいい。
将来的にはスタッフコースも併設できればいい。そこで育った人が,全国の教育機関に教師として輩出できるシステムができればいいと思う。

3.学校教育への要望等

○日本は,サウンドエンジニアがとても遅れており,大学にサウンドエンジニア科ができて,サウンドエンジニア文化が定着すれば,マイクの音がもっと良くなるのではないか。

○ギターは楽器として確立しているのに,国立の芸術大学にギター科がないのは,おかしいのではないか。

○国立の芸術大学に舞踊科,演劇科がないことに実演家は不満をもっているのではないか。

○舞踊や演劇は大学という枠組みにこだわらず,コンセルヴァトワールのような専門的な高等教育機関も検討のポイントになるのではないか。

○若い頃から他の分野と交流することが必要であり,芸術大学の充実が必要ではないか。

○昨今,学芸会も減ってきており,指導する教員も少なくなってきているため,演劇の実演家を派遣して,学校で演劇の授業を取り入れてはどうか。

○演劇の指導者の養成について,サマーセミナーの形でいいから,演劇部の顧問の先生をあつめて講習会を行ってはどうか。

○舞踊に接する機会を増やすため,小学校から,体育などでバレエの基礎を取り入れた授業を行ってはどうか。

○子供のころから舞踊の教育ができるような施設を作るという発想のほうが,東京芸術大学に舞踊科を作るというより早いのではないだろうか。

○今の教育では知識を得る教育はするが,感覚に関する教育は欠落している。感覚に関する教育を取り入れた方がいい。

○歌い手になる教育ばかり受けても,つぶしがきかないので,歌い手になろうと勉強する人が減ってしまう。もっと音楽大学の中で音楽を生かした別の職業についての教育をしなければならないのではないか。

○日本の音楽教育は洋楽中心であったため,日本古来の伝統音楽に触れる機会がない。

○声楽などで,博士課程までいくと年齢が30歳近くになり,活躍の期間が短くなるので,大学等で飛び級の制度などつくってはどうか。

4.その他

○最近は海外の演劇,バレエ,舞踊関係の海外カンパニーの来日は減っている。第一線の公演に触れる機会を確保すべきである。

○つぶしのきかないジャンルは目指す人が少なく,途中で諦めて全く違った分野にいってしまうのが残念である。

○実演芸術家層のトップを支える中堅がちゃんと仕事をしていける,そういう構造をどうつくるかが結果的にトップを押し上げる。

○実演芸術家の人材育成は幅広く,分野ごとに違った事情を抱えており,それ全部に対応するのは難しいので,どういう優先順位で考えていくのか課題である。

○日本では,バレエ,現代舞踊,日本舞踊はお稽古事からはいってきて,先生がトップになっていて,発表会形式で公演をしている。先生がどんといる形なので,バレエでも,日本舞踊でも,新陳代謝がなかなかできない。スターが固定するのが今の舞踊の問題である。

○日本人が審査員として,海外でコンクール審査を要請された場合,渡航費をカバーする意味で,審査員に対する助成も役に立つのではないか。

○ミュージカルの脚本家がいない。今は,起用される演出家がほとんど一部の売れっ子の演出家で,若手の演出家が起用されるケースは少ない。
今まで演出家の育つケースは,それぞれの劇団で演出助手,舞台監督などをやりながら,演出家を志望していくケースが多い。

○日本には劇場を中心とした考え方がなく,個人が好きなことをやっているという考え方があった。文化的なことは,すべて好きでやっていることなので,税金を使う必要があるかという点については,お金はだせないという考え方の人が多い。

○日本の文化支援自体は,個人の支援に始まり,作品支援になり,場所の支援になり,トータルに考えなければいけない時期に来ているのではないか。

○アーティストというものを大量に養成したとき,一握りの人しか場が与えられていないので,機会を与えるべきではないか。

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