第6期文化審議会文化政策部会第8回議事録

1. 日時

平成20年12月1日(月) 9:30~11:30

2. 場所

文部科学省東館3F2特別会議室

3. 出席者

(委員)

池野委員 唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 富澤委員 三林委員 宮田(亮)委員 吉本委員 米屋委員

(事務局)

青木文化庁長官 高塩次長 関審議官 清木文化部長 苅谷鑑査官 清水芸術文化課長 他

(欠席委員)

尾高委員 宮田(慶)委員 山内委員 パルバース委員

4.議題

  1. (1)実演芸術家(音楽,舞踊,演劇等の分野における実演家)等に関する人材の育成及び活用について
    ・【審議経過報告素案審議】
  2. (2)その他
【宮田部会長】
 それでは,第6期の第8回文化政策部会議事を進めていきますので,よろしくお願いいたします。
 経過報告の後,素案について審議をして,より深めていきたいと思っておりますので,よろしくお願い申し上げます。
 会議に先立ちまして,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【清水芸術文化課長】
 <配付資料の確認>
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 これまでの審議内容を踏まえて資料3でございますが,「実演芸能家等に関する人材の育成及び活用について」ということ,並びに審議で,この間のご議論の中にありました概念図について深めていきたいというふうに思っておりますので,よろしくお願いを申し上げます。
【清水芸術文化課長】
 <配布資料の説明>
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 今までずっと積み重ねてきました,それが1冊のこの素案としてございます。同時に資料4のほうで訴えるときに1枚のペーパーというふうなときの図式でございますが,いかがでしょうか。先生方のほうにはもはや事前にお配りしてあると思いますが,ご議論をいただき,より深いものにしていきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【三林委員】
 前に,国語の教科書に戯曲を入れてくださいというお願いをしたと思うんですけれども,それが例えば初等教育は無理でも,高等教育でそれをやるということは難しいんでしょうか。ここにはそれがもう全部書いていないんです。もう全く取り上げられてないんですけれども。そういう具体的なことというのは,これには書いてはいけないんですか。
【宮田部会長】
 そうですね。あのときのご議論が,その後の連携で,もう一つ踏み込まなかったものだから,そのままずれちゃったような感じですね。
【三林委員】
 ええ,初等教育まで踏み込むのは大変だということで,何かうやむやになったままなんですけれども,本当はそこからやったほうがいいと思うんですけれども,それが無理なら,せめて高等教育の国語の教科書に戯曲を入れるということは不可能でしょうか。音楽の教育があるわけですから,そういう国語のどこか一部にでもそれを組み込めないかなと思うんですけれども。
【宮田部会長】
 どうですか。
【清水芸術文化課長】
 今の制度で言いますと,小中高等学校につきましては,仕組みとしては学習指導要領を文部科学省がつくり,それに基づいて民間の教科書会社が教科書をつくるという形になっておるわけであります。ちょうど学習指導要領については,国語の重視とかいう観点から,ちょうど改訂がなされこれから準備していくという段階でありますので,学習指導要領に関してこの時期に変更するというの難しいということがあるのではないかとは思います。
 ただ,学校の現場において,今でも一定の,そういった小説だけではなくてさまざまな教材が取り上げられているかと思いますので,運用においてそういう劇の要素を取り入れていくということはあり得るのではないかと思うんですが,制度的な問題として指導要領ということが1つあります。それから,教科書にどういう題材を載せるのかということは,また今度は教科書会社の判断という形になるものですから,国の側でこういう教材を載せなさいとかいうことを,学習指導要領という大枠以上に強制はしにくいということがあります。
 そういった制約の中で,演劇教育の重要性といったようなことであれば1つのお考えだと思いまして,具体性には欠けたかと思いますけれども,学校における演劇の,今回の場合,特に人材育成でありますので,演劇に関する人材の学校教育における活用というような観点からは少し盛り込んだつもりでございます。きちんと整理できなくて申し訳ありませんが,教材に何を盛り込むかという点についてはそういう制度的な問題とともに,今回の報告が人材育成という観点なものですから,人材の活用という観点から,そういう演劇人材を学校の現場で活用していくというような,そういう観点で盛り込ませていただいたということでございます。
【三林委員】
 それはよくわかります。今,指導要領を変えるわけにはいかないということですけれども,例えば今この案をお願いして,何年か後にまた改訂されるときに考えていただくとか,何か文化庁のほうからこういう意見が出ているということを申し上げることもだめなんでしょうか。全く別個でやっていらっしゃるんですか。
【清木文化部長】
 ちょっと補足しますと,清水課長が説明しましたように,指導要領に何を盛り込むか,あるいはそれに基づいて教科書をどうつくるかというのは,比較的かっちりした制度ができてしまっているものですから,具体的に指導要領にこれを入れてくれ,あるいは教科書にこれを書いてくれというふうな言い方になると,文部科学省全体の……
【三林委員】
 いえ,そういう意味で言っているんじゃないんです。
【清木文化部長】
 観点から,ちょっと言い過ぎではないかということになる可能性もありますが,例えば小中教育で,あるいは高等教育で,こういう教育内容を充実する,重視するというふうな,ややふわっとしたような言い方であれば,書くことはできるかなと思います。今も若干抽象的には書いてあるんですけれども,もう少し具体性を持たせながらふわっと書くという余地はあろうかと思いますので,検討させていただければと思います。
【三林委員】
 お願いいたします。
【清木文化部長】
 大学につきましても,大学の教育内容は大学自身が決めるということもありますので,大学でこういう内容を教えなさいよというのは難しい面がありますし,そもそもは大学には決まった教科書というのは制度としてはありませんので,そこもなかなか断定的な言い方は難しい面があると思いますけれども,小中教育と同じようにややふわっとしたような言い方の可能性をちょっと検討させていただきたいと思います。
【宮田部会長】
 文化部長,その「ふわっと」という言葉はやめてもらいたい。根本的に違うと思うんです。やはり文化はもちろん強制はする必要もないんですが,これはそうだと思い込むような1つの刷り込みのような部分というのは,僕はすごく大事なことだと思うし,これ人材育成そのものが,言ってみれば,すさんだ今の日本をも変える大きな力にもなるという部分というのは,僕らみんな持っているつもりでございますので,三林先生のお話というのは,直接は執行力はないにしても,この中に文化力という,人材育成の中にはすごく大事なことですというふうに言い切るぐらいの部分もあっていいのかなという1行をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
【清木文化部長】
 その両者の兼ね合いで,どこまで書けるのかということを考えさせていただきたいと思います。
【宮田部会長】
 よろしくお願いします。
 ほかにどうぞ。
【高萩委員】
 審議経過報告案が次の回で出されて,その後の段取がどうなって最終的にどういうふうになっていくのかを,説明をしていただけるとありがたいです。
【宮田部会長】
 そうですね。その辺をやっぱり私どもも,この何回かやったのがどういうふうに影響されるのかなというのがとても関心の高いところだと思うんですけれども,ひとついかがでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 次回以降の日程ということで,直接は,次回1月15日にもう一度この部会を開きまして,審議経過報告案を,今日の意見,また今後のご意見を踏まえてまとめまして,ちょうど1月で文化審議会の任期ということもございますので,その後に開かれる総会にこの部会としての審議経過報告をまず報告していただくということを考えております。
 そして少しヒアリング等が増えて押しておりましたので,審議経過報告という形になりましたけれども,その後,昨年同様に審議経過報告として出していただきましたアートマネージメントの審議経過報告と,今回の芸能,実演芸術家の審議経過報告を合わせた形で,芸術関係の人材育成ということで取りまとめを次期の文化政策部会でしていきたいと思っておりまして,今回,審議経過報告という形で総会も含めてオープンにいたしますので,芸術,その他関係の団体からもご意見をいただきたいと思いますけれども,最終的にこのアートマネージメントと実演芸術家を合わせて報告にする前に,正式なパブリックコメントという形で外部の方のご意見を伺う機会を設ける予定です。それらの手続を経た後に最終的な報告書としてまとめたいと思っています。
 それから,報告の受け手となる文化庁が国がとしてやるべきことに関しましては,正式な報告の時期にかかわらず,内部的な検討をいたしまして,予算,あるいは運用上で出きるものはできるだけ早く,逐次実施に移していきたいと考えているところであります。予算としては次の概算要求等につなげていきたいと考えているところであります。
【宮田部会長】
 やっぱり最後は予算と運用でしょう。それによって人間の活力が出てくるでしょうからね。そのためには総会に先生方のご意見,提言を事務局でまとめていただき提言させていただくと。言ってみればアートマネージメントも,それから実演芸術家のほうも,今までの中で少しまだ未熟の部分,成熟しきれない部分がありました。量的な問題ではなくて,世の中の人たちの認知度が少し少ないということを,より強く持っていきたいというのが私どもの中にある大きな部分でございます。この文章も含めて,今日は議論にとげがあっていいと思いますので,お互いにどんどん言い合っていただきたいと思います。
【米屋委員】
 細かいことはたくさんあるんですけれども,細部に入る前に一番大きなことで,ふるいのイメージですが,この図も書いていただいて,基本的にはこの三角形だと思いますが,このふるいの部分に,「ふるいとは国内外の有名な各賞,評論家による評価など」というような言葉があるんですけれども,ふるうのは評論家ではなくてプロデューサーであったり,主催者なんだと思うんです。出演の機会を与えられるということが最大のふるいで,しかもその後,ちゃんと芸術活動に専念できる条件を与えられるということがやはり最大のふるいなのではないかなと。ですので,この下のほうのふるいに関しては,そこまでいかないのかもしれませんけれども,トッププロが日本で芸術創造重点事業と言われているようなところでも,現在本当に何かスズメの涙のような,交通費程度の出演料でやっている人たちってまだまだいるんです。それはやはり支援制度がおかしい部分があるからだと思うので,そのふるいは何か権威のある評論家が中央で選ぶということではなくて,一つ一つの現場で,きちんとしたお客さんがいるようなところに出演できるかというようなことを考えていただき,むしろ評論家というのは,そういった機能がちゃんと機能しているかどうかということをチェックするような立場じゃないかなと思います。
【宮田部会長】
 ふるいが2つございますが,下のふるいは私も何となくこれかなと思ったんですけれども,上のふるいの部分というのは全く下とは違うというイメージね。
【米屋委員】
 そうですね,はい。
【宮田部会長】
 特にこの中の吹き出しに関しては,ちょっと一考しないといけないですね。
【米屋委員】
 はい。
【宮田部会長】
 わかりました。はい。
 何となく,でも世の中ってこういう2行でくくっちゃうんだよね。
 もう一つ何かないでしょうか。
【高萩委員】
 この図は,実はこういう風にきれいな三角形になっていたらいいんです。この形なら芸術家の行く末に関しては非常にうまくいっているんだと思う。しかし今,実は,日本は鏡もちみたいに下の裾野がもっと広いんです。非常にお稽古ごとは盛んです。それが,中学受験ぐらいのところで急速に狭まって,その後ものすごく細くなっちゃうんです。トップに有名人が少しだけいるんです。海外で活躍している人等がいて,このあたりのところがうまくつながっていっていないというところが問題です。何かこういうふうにうまくふるいにかけられていけば,こういうふうに絞られていっていくんだとなれば非常にうまいんだと思うんですけれども,それがうまくいっていない。そこを論議しているので,もし概念図を書くのだったら,どこが詰まっているかということをはっきりわかるようにしたほうがいいかなと思いました。
【宮田部会長】
 人口分布図などですか。
 どうぞ。
【田村(和)委員】
 今回まとめていただいたのは,いろんな視野を広げていただいたので,そこは立派に整理されていると思います。
 ただ,この前お話ししましたように,人材育成という話は,これは社会の中でソフトとしての文化資本だという気がしております。そういう意味で,今回の人材を育成するという話は,文化行政の提案の中では非常にクリティカルなテーマだと思うんです。ですから,これをもっと,ここで閉鎖的に書き上げるのもいいんだけれども,もっとプリミックというのか,議論触発的に持っていけるように,先ほどの三林委員のお話なんかもありましたように,そういう話をどんどん私は入れていくべきだと思うんです。そういう意味では,もっとこれからパブリックコメントなんかもあるでしょうけれども,たくさんの人がやっぱりこの話に乗っていかないと,これは支えられない話だろうと思います。
 特に今回のレポートの前提として気になりますのは,やはり文化と言いながら舞台芸術を中心にされていますね。しかも,割合に近代的な世界。もちろん演劇・舞踊なんかは違いますけれども。なぜこういうところを取り上げたかとういことをきちんと書いておくべきかなという気はします。そうしませんと,やはりほかに膨大な領域がありますから,そういう中でこういう話がやっぱりきっかけになるんだということの意味,そういうことが1つです。
 それと,私これを読ませていただいて,2ページのところに非常にすばらしいことが書いてあるのがあるんですが,なぜ舞台芸術に公費で支援をしなければいけないかということです。コストとパフォーマンスの差があるんだということを,非常に明確に書いてあります。何かこのあたりの話は余り隠さないで,国の文化政策として,政策原則みたいな形で幾つかお書きになって,きちんと整理されたらどうかなと思うんです。なぜ,やはりこういう舞台芸術に公費で支援していかなきゃいけないのか。比較的多額の経費を要するんだけれども,1回の上演で鑑賞し得る観客数等に限界があるため,コスト割れしちゃうんだというようなことがあります。
 それから,全体に読んでいまして,人材に関することというのは,個人を問題にするのではなくて,むしろ先ほどの高萩委員のお話にもありましたように,ああいうおもち型になってしまうというのは,アクセスして選択しやすい政策アイテムが余りにもなさ過ぎるということだと思うんです。ですから,そういう話だと,この特に2ページの(2)のところにある話は全部について,そのとおりだと思うんだけれども,この文章では非常にやわらかくて,率直に言いますと,何か非常に厳しい現実をぼかしているみたいな感じがあるんですけれども,この中の一行一行の中に,全部はっきり言い切っていいような言葉がたくさんあるような気がするのです。
 ですから例えば,「産業や経済活動において新たな付加価値を生み出す源泉ともなる」というのはまさにそのとおりなので,そういうことを目指すべきだということを,やっぱり今回のお話の中では出すべきだろうと思いますし,この第一線の芸術家をこうするんだというようなこと,天才という言葉を使えるかどうかわかりませんけれども,そういうことをしなければ,この文化をつくっていく,人材を育てていく弁証法というのは成立しないんだということをはっきりお書きになったほうが私はいいと思うんです。
 何かここの,2ページのところから,全体を通しますと,今回我々が議論していく原則みたいなもの,つまり国の文化政策が,この時代にとり得るんだという話が幾つかあることがはっきり見えるような気がするんです。それが何かやわらかく書いてあるので,とげのあるお話とおっしゃいましたけれども,国のレポートですから難しいと思うんですけれども,もうちょっと無頼なレポートであって,提案であっていいような気がしています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。だんだんいい感じになってきました。
 特になぜという部分,これは大きいと思います。この時期非常に,何か金融的に疲弊しているときこそむしろこういう話は明快に,わかりやすい,皆さんも注目しやすいという感じがするので,チャンスかなという感じがします。コストはかかるんだけれども,なぜこれは文化力になるのかというふうなことも含めての話,ありがとうございます。
【田村(和)委員】
 それから,今のつけ加えですが,特に私なんかまちづくりのほうから見ていますと,自治体にもっともっとはっきり物を言っていいと思うんです。あれだけ施設をつくっていながら何をやっているんだという感じがします。ですから,自治体が実際に何かをするかという問題はありますけれども,そういう意味でも,もっとそういう施設を持っているところ,あるいはこれを資本と考えるならば,そういうものを生かす方法を考えろということをはっきりおっしゃっていいんだと思います。
【宮田部会長】
 つくったはいいが困っちゃったみたいな言い方をするんじゃなくて,つくったんだから大いに使えという言い方ですよね。
【田村(和)委員】
 そうです。
【富澤部会長代理】
 今回の素案のご説明を伺って,私はこれまでの議論の中で委員の皆様から,やっぱり国民に対するメッセージを大きく,強く出すべきだという議論が随分ございましたですよね。そういう意味では,国の文化行政はこういうふうにいくんだということが前段のほうに,構成的にも持ってきていただいてはっきりしたと思うんです。これによって国,文化庁の気迫というんですか,心構えが,私は十分示されてきたのではないかという意味でこれを評価するんですが。
 それからもう1点,地域が芸術家を育て,あるいは活性化するという文章がいろんなところに出てくるのは,これは非常にいいことだと思いまして,実は先週の(金)に,大阪の京橋というところがあるんですが,ここに京橋花月というのが新たにオープンしまして,これは吉本興業の劇場なんです。京阪電鉄がつくったビルの5階に新しい劇場がオープンしまして,500席ぐらいのそんなに大きくない劇場ですけれども,吉本と京阪電車の合作みたいな劇場です。
 一方で,近鉄が劇場を閉めたり,厳しい経済不況ですから,だんだんそういうものがなくなっていく中で,非常に楽しくなるようなうれしいニュースだと思うんですけれども,吉本興業が芸術と言えるかどうかわかりませんけれども,吉本興行の芸人がテレビに出て,テレビ文化をつくっていることは間違いないので,大阪という一種独特な土壌に根ざした文化であろうというふうに思います。
 ここでオープニングのときに笑福亭仁鶴さんがこういうあいさつをしたんです。我々芸人は舞台で育っており,非常に環境が大事なんだと協調しておりました。吉本はそれまで梅田に劇場を持っており,そちらを閉鎖して,今度は京阪が新しい線路を引いたので,そっちへ移ってきたという経過があります。そのうえで,梅田の劇場では多くのスターが生まれたと。彼流の言い方で,私がその代表ですと,言っておりましたけれども,大事なのは,今度京阪に京橋花月という劇場ができて,ここから多くのスターが育ってほしいと,そういうアピールをされた。多くの芸人がそこから生まれてほしいという期待を表明されたんです。
 これが非常に私は大事なことだと思っていまして,こういう厳しい経済状況の中で,そういうふうに,一方では庶民の力で,あるいは企業の力でそういうものが育っていくということが大事なんだろうというふうな意味で,感心もし,目新しい感じを非常に持ったんです。そういう意味でやっぱり地域が芸術家を,同じように文化人を育て,芸術家を育てていくということが,今回の素案の中でも強調されてしかるべきだろうというふうに思うわけであります。
 それから,ちょっとここは足りないなと思うところは,3ページの上のほうに,国際的なコンクールや何かで好成績を修める日本人も少なくないんだけれども,それをまた十分活用しきれる受け皿が乏しいという表現がございます。まさにそのとおりなので,ここのところをどうするかということを,もう少し書き込んだほうがいいんじゃないかと感じます。これこそまさに国の役割,文化庁の役割だと思いますし,これをどういうふうに実現するか,これから予算編成ですから,予算の中でそれを反映していただくということだと思いますが,予算自体も乏しいわけですから予算の使い方がこういう理念を実現するための呼び水となるような予算の使い方をぜひ示していただきたいなと思います。そして国民であるとか地域がその気になるような,インセンティブになるようなことをやっていただければ,だんだんいいほうに誘導されていくのではないかと思います。
 そういう意味でもうちょっと,予算もそうですけれども,具体的な方針を示し,受け皿をどうやって増やしていくかというような施策を,もう少し議論をして具体的に書き込んでいったほうがいいんじゃないかなと思います。そうすればもうちょっと迫力も出てくるんではないかなというような気がしております。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。特に3ページの最後にお話したところ,乏しいだけで終わらないというところですね。これは大きいですね。
 どうでしょうか,ほかに,先生方。
 ちょっと僕が心配しているのは,先ほどの高萩先生のときに指摘のあった部分と,プロシーディングプロからトッププロを育成するときに文化庁は,あるいは国は,この少ないパイの中で,今回はここに重点するんだというふうな部分がはっきりしているほうが,何かここだけは1つ大きく訴えているというふうなあたりが文化力の中に必要なんじゃないかと思うんです。そのときに,ちょうどこの図式がいいターゲットになるのかなと。
 「やっぱりここ。」という部分だってあっていいのかなと。それこそ文化力になってきて,その人たちが大きくまた次に影響力が出てきて,日本というおもしろさが出てくる,結果的には観光や産業にも結びつくとかというところまであっていいのかなと思いますが,その辺まで持っていくのは難しいでしょう。
【清木文化部長】
 会長がおっしゃるのは,満遍なくということではなくて,例えばこのあたりを特に重点にというのをもう少し明確に出そうということでしょうか。
【宮田部会長】
 例えば3年度計画とか5年度計画とかという。例えばですけれども。
【清木文化部長】
 この会議でも,ここは大事だというご意見もあれば,いやいや,やっぱりここだけじゃなく,やっぱりこっちも大事ですよという両方の意見があったと思うんですけれども,そこは両方必要にしても,今回は特にここですよというふうに,この会議で方向性を議論していただけるのであれば,またそこを強調することは可能かなとは思いますが。
【宮田部会長】
 日本がこれだけ,特にこのお稽古ごとの部分というのはほかの国に考えられないぐらい皆さん熱心ですよね。その日本の特徴を生かすこともすごく大事かと思うんですけれども。
【田村(孝)委員】
 私はどこで区切れるかなというのは非常に難しいのかなと思っております。たまたまですが,静岡には国際オペラコンクールというのがございます。これまで一度も日本人が優勝したことはありませんでした。今年初めて日本人が優勝しました。それも昭和音大卒の方が優勝しました。学校を卒業されて,在外研修で2年間ミラノに行っていらした方なのですが,チューリッヒ歌劇場の芸術総監督がいらしたときにオーディションをなさって,連れて帰られて,チューリッヒ歌劇場の研修生となって2年間というか,3年目に入っているのですが,勉強中の方です。
 彼女をずっと見ていらした伊藤京子先生が,ミラノ留学頃よりもチューリッヒに行って見違える様に成長したと,こんなに変わったとは,本当に信じられないことだとおっしゃっていました。私も決勝のときには行っておりましたが,今年は6人中5人が韓国人だったんのす。ああ,また韓国の方が優勝するのかなというふうに思っておりましたら,登場しただけで,「あ,すばらしい。」日本人が登場してくるから,例年どおりかなと思っていましたら,その登場する姿がすばらしかったのです。歌ってなもすばらしかったです。歌劇場での研修ですから,実際に子どものためのオペラなど歌っていらっしゃるそうですが,やはり競争の中に入って甘いことを言っていられない。どうやってその中で自分を出していくかということを学ばれたそうです。歌そのものもすばらしくなられたそうですが,驚きましたのは,日本人なのにドレスを着て登場したときに何できれいだったのかなと思ったのです。チューリッヒか劇場の研修でバレエの授業があると伺い納得しました。
 日本のバレエ界の第一線の方は皆さん海外の学校で勉強して,そして海外で活躍するような世界レベルの方が育っているという事実がございます。オペラ界も大体海外でというか,日本の第一線で活躍するような方は海外の歌劇場で活躍していらっしゃいます。日本の中に歴史のあるものでないということはございますが,オペラもバレエと同じようになったかなというのが,今回本当に正直なところでございました。
 ですから,どこに焦点を当てるかというのは非常に難しいかなと。特に地方に行きますと,例えば子どものための音楽会,鑑賞教室と言うとよくないのですけれども,静岡あたりで自前でプロのオーケストラを招へいしようとしますと東京の3倍費用がかかります。そうなりますと,どうしても地域の芸術家の地域の芸術活動を支援しなくてはいけないという名のもとに,なかなか難しいということが現実問題として起きてしまうというのです。先程のオペラ歌手の方がすばらしくなったように,競争のないところではやはり切磋琢磨していく場がないわけでございますので,ある種のふるいはない状況です。
 だからそういう意味では,芸術拠点形成事業を充実していただいたほうが,いいような気がしております。今オペラ共同制作の支援や重点支援は,みな,芸術団体のほうから支援を求められるようになっております。そういたしますと,大体きちんとした芸術団体というのは東京に,首都圏にあるわけでございます。ということは,地方は何も手を挙げられない。それを全部調整して何かをつくろうとするのは非常に大変なことで,東京でやるのに比べて,経費も労力もすべて本当に3倍ぐらいかかると思っていただきたいと思います。そういう思いをして皆様多分なさっていらっしゃるというのは,私も取材をしていましたからわかっていましたけれども,実際やってみてそれは実感いたします。
【宮田部会長】
 りゅーとぴあの金森さんなんかの論理はやっぱりそうですね。競争することです。いろんな環境の中で自分を切磋琢磨するという。あれだけ新潟でやっぱり1つの発信ができているわけですからね。
【富澤部会長代理】
 私は今の田村さんの意見,非常に重要なことを言っておられると思うんです。さっき予算編成の話をしましたけれども,やっぱりそういう地域が実演芸術家を育成するというキーワードが1つあって,それからもう一つは受け皿が少ないんだと,こういうことですから,そこをうまく結びつけて,今,田村さん拠点形成と言いましたけれども,その拠点を1つでも増やしていく。そういうために予算も重点的につけるし,いろんな支援もしていくということをやっていけば,だんだんうまく歯車が回ってくるのではないかと。それだけじゃありませんけれども,それも1つの大きな重要な柱になるんじゃないかなと思います。
【宮田部会長】
 吉本先生。
【吉本委員】
 具体的な方策のところで(1)(2)(3)というふうに整理されていまして,恐らく今までの議論で出たことは本当に網羅的によく整理されていると思うんですが,これを全部読んでも何をやるんだかよくわからないという印象がするんです。どこに重点が置かれているんだかよくわからないという印象がするので,例えば,これは本当にこれをざっと読んだ時点で私が今個人的に思ったアイデアに過ぎないんですけれども,(1)番の卓越した実演芸術家等の育成の中では,文化庁としては,新国立劇場の研修所を抜本的に強化しますとか,あるいは(2)番の実演芸術家等の積極的な活用のところでは,先ほど田村委員がおっしゃったような芸術拠点制度をさらに拡充させて人材育成にもつなげますとか,それから(3)番では,処遇の改善ということを書かれているというのはすごく重要だと思うので,実演芸術家の処遇の改善を特に強化しますという,3つの項目に対して何を最重視するのかということを1つずつ出して,そのほかにこういうことも目配りをしながら全体をやっていきますというような出し方ができないかなと思いました。
 また,8ページに,新国立劇場に求められる役割と取り組みということで,4項目に出ているんですけれども,非常にマイナーチェンジが細かく記載されているけれども,一体何が変わるのかよくわからないというのが私の印象です。とりわけ,具体的な方策のところに,舞踊についてはバレエしか出てこなくて,例えば現代舞踊のことが全く出ていなかったりするので,一番やっぱりわかりやすいのは前々回にもイギリスのメニューインスクールなどの話をしましたけれども,国立劇場に国としての実演芸術家等を育成する非常にシンボルとなるような研修所がちゃんとありますと。そこをとにかく強化するのが,この人材育成のトップレベルを高める上で非常にわかりやすく,なおかつ実行力があるんじゃないかと思います。項目としては入っているんですけれども,その訴え方の工夫が必要かなと思いました。
 あと1つ2つあるんですけれども,これは細かなことなんですが,「ふるい」という言葉に関して,この部会に出ている,我々は金森さんの話を初め,よくわかっているんですけれども,国の文書にいきなり「ふるい」と出てくると,国がふるいをかけるのかというようなことに取られる危険性があるんじゃないかと思うんです。なので,本文中では4ページに初めて「ふるい」という言葉が出てくるんですけれども,ここは例えば,優れた芸術家というのはオーディションを経たり,さまざまな研修を経たり,あるいは出演者として採択されたり,そういういろんなプロセスを経てトップレベルの人になっていくと。そういったいわばふるいのようなものとか,ちょっとこの「ふるい」の言葉を丁寧に解説しておかないと,何か国がふるいにかけるのかみたいなことで,違う意味のネガティブなメッセージになるのはよくないかなと。その辺はちょっと配慮をしたほうがいいかなというふうに思いました。
【宮田部会長】
 ふるいというのは,言ってみれば競争原理であるということだと思うんですけれどもね。
 今の吉本委員の話で,8ページの,いわゆる国の機関ということに対しての人材育成を重点視するということになるのか。何かシンボル的な国の機関がやっぱりカチッとあったほうがいいんだと,もう少ししっかりしたほうがいいんだというふうに考えてよろしいですね。
【吉本委員】
 そうですね。もちろん大学等でも人材育成は行われているわけですけれども,やっぱり文化庁が所管している国立劇場でそういうものがしっかりとあるというのが,国の文化政策としての出し方としてはわかりやすいし,例えば芸術団体の人材育成に対して助成金を出すしくみがあっても,もちろんその芸術団体がさまざまな人材育成の事業をやってくださるかもしれませんが,直接はできないわけですよね。でも,新国立劇場であれば財団になっていますけれども,そこに対して国の政策として明確に出せるんじゃないかと思って,それは私のアイデアですので,ほかの委員の皆様に別のご意見があれば,ほかの部分を強調して出すということもいいと思うんですけれども,私はそれがわかりやすいかなという印象を持って申し上げた次第です。
【宮田部会長】
 1つの事例ですが,うちのオペラ科の学生が新国立劇場の大劇場で1日だけなんですが,オペラの練習をさせていただいたんです。その後に大学へ帰って,演奏会場でやったとき,もう信じられないぐらい変わるんです。静岡のお話じゃないですけれども,本当にこんなに変わるのかというぐらい学生たちのオペラがすばらしかったということがあるので,もっともっと縦割りではない部分でうまく利活用のできる環境があれば,大学にも頑張って入ろうという気持ちもあるだろうし,研修所にも頑張って行こうと考えると思います。それから,各地方のいろんな団体からも,ぜひいつかは新国の研修所へ行きなさいというような支援もできるようなとか,そういうことにつながっていけるような,みんなが求める位置点,視点,場所,場,道場みたいなものがきっちりあるというような関係があるのも,1つの力になるのかなという気がするんですが。たった1回だったんだけれどもこんなに変わっちゃうんだというぐらいのよさというのは,人間の力ってすごい能力があるものを感じたので,それはスポーツだとか,いろんなものがあるかもしれませんが,この芸術力というのはそういう力ってすごいものが,変化があるのを目の当たりに見たものですから,この辺にも何かいい交流関係が入ったらいいのかなと感じましたね。
【田村(和)委員】
 いや,先ほどちょっと気になったのは,例の「ふるい」という言葉なんです。これは吉本委員がおっしゃったとおりなので,少しこういうところに使うときに本当にネガティブに取られないようにしたいんだけれども,問題はやっぱり「ふるい」と言っていることというのは,逆にもう一つ言うと,「ふいご」だと思うんですよね。下からぐっとあおいで上げていって,それでどこかでふるいをつくるという,「ふいご」と「ふるい」政策みたいなものが本当は必要なので,こういう話がやっぱり社会システムの中にいるんだということではいいと思うんです。この「ふるい」という言葉を直接使ってしまうと,ちょっと冷淡な感じがするかなという感じはしますね。でもこういうことをやっぱりはっきり言う話って初めてですから,さっきおっしゃった競争原理みたいなことはやっぱり,何らかの形で言うといいんじゃないかと。
 それともう一つ気になったのは,この具体的な方策の中に,ぜひ前半に議論したアートマネージメントの話を入れていただきたいなと思うんです。人材の話ですね。あれは独立にあそこだけ取り出しますと何だか余り形がわからないんだけれども,ここに入ってきますと,やっぱりもっとアートマネージメントの意味というのをきちんと位置づけていって,やはり大切なところにはそれを配置していくぐらいの気持ちで入れていただきたいなというのが前半の話とのつながりで,もちろんあれは独立のレポートになるかもしれませんけれども,そういう位置づけをしていかなきゃいけないかなと思っています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
【唐津委員】
 今先生方のお話を伺っていまして,ちょっと気がついたんですけれども,こちら育成の方法として海外のフェローシップということと,新国立劇場で育てていくということは,ベクトルとしては反対方向なんですよね。当たり前のことなんですが,海外に育てることをお任せしてしまうという方向性なのか,日本でちゃんと育成して認めてあげましょうかと,どちらの方策を国が打ち出すのかということは,やはり並列に並べるのではなくて強く打ち出すべきじゃないかということを感じました。
 新国立劇場が国のリーダーシップを取るんだということで,新国立劇場を抜本的に強めていただいて,そして逆に地方の拠点に対して,じゃあそちらについてこいというぐらいのリーダーシップを持っていただけるような仕組みをつくる,という書き方ができるのであれば,先ほどお話に挙がっていた地域の拠点ということと,それから国が自分のところで人材を育成していくんだという,双方の意見というのが結びついてくるのではないかなと考えました。
 それから,今,田村委員がおっしゃったんですけれども,当然そこには拠点でそういったアーティストを育てる役割を果たすマネージメント力というものも必要になってきますし,そういった前回の議論,昨年度の議論と今年度の議論というものを別々に出していきながらも,やはりそこに当然深くかかわるというか,それはお互い持ちつ持たれつの関係であると思いますので,その辺の部分というのもやはり組み込んでいただくような,それこそこの概念図の中にマネージメントの要素というのも入れていって,2組セットというような形での最終的なご提言ということができたらすばらしいのではないかなというふうに思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。どうぞ。
【高萩委員】
 3ページのところの,3つ目のところですけれども,「文化芸術団体の多くは東京やその周辺部に集中し」となっていて,東京集中が比較的ネガティブに書かれています。。そうすると必ずこの反対としては,地方へもっとお金を出しなさいみたいな話になってしまいます。東京に集まっていることもある意味いいことなんで,それで国際的になっている部分はあるし,ただそのときに,地方はハード的には文化芸術に関しての施設整備を終えたところだから,これからソフトを得て発展するんだみたいな,何かちょっとポジティブかな書き方ができないかなと思います。
 そのための方策として文化庁が,こことここにうまく何か刺激を与えると,こんなにうまくいくというような。例としてはりゅーとぴあの金森さんというのは,本当にいいと思うんです。レジデント・カンパニー制度とかがもっとよくなり,しかもあれに続くところが出てくるようなふうになればいいんだと思います。
 それから,さっきから出ている新国立劇場の役割で,やはり文化庁の施策を実現するのは新国立劇場だと思うんです。ただ,新国立劇場は1個しかないですし,東京にしかないということで,地理的,分野的にどうしてもできかねるところがあると思います。そこをどう分担していくのかという論議をしたほうがいいんじゃないかな,それがさっき田村さんがおっしゃったような拠点形成を担っていくこと,どこかが新国立劇場でできないところを地域的な役割分担,それから分野的役割分担というのをしていくことで,日本の全体がよくなるんだというふうに書ければなと思います。
 どうしても地方の文化芸術政策に関して言うとネガティブな感じになるんですけれども,これから地方に住んでいる人,実際に芸術に観客として携わっていく人,それから,議員さんと首長さんが重用になってくると思うんです。そのあたりの人に,文芸術の重要性をアピールしていくアドボカシーというのが絶対必要なんだと思います。これからの21世紀,豊かに生きていくために,芸術のある生活という新しい可能性を開いていくんだということをうまく訴えられるような書き方をしてください。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
 ちょっとずれるかもしれないんですが,相撲では,本場所があって,巡業があって,それから地方場所がありますよね。相撲の本場所が両国ならば,舞台芸術の本場書は新国立劇場のある初台という考え方を持ったときに,地方に非常に箱はいっぱいあるわけですから,そういう地方場所みたいなものを持っていくような,考え方とか。
 私がいつも驚くのは,立派なピアノがいっぱいあるんだけれども,ただ邪魔扱いになっていて,そこで名手が弾いたときにこんなにすばらしい空間になるのかというのは,いろんなところで体験させてもらっているんですけれども。皆さん多分,地域の方がその箱のすばらしさを活用する喜びみたいなものが,余り感動していないものだから廃れているような感じがするんですけれどもね。かといって新国の人たちにどういうふうに,何とかしろとかというのは難しいのかもしれませんが,文化庁自身がどのぐらいのコントロール力を新国立劇場に求めているのかもちょっと定かではないなといんですけれども。ぜひお聞かせください。
【清水芸術文化課長】
 新国立劇場の公演の演目等について,基本的には新国立劇場が芸術監督のもと,公演の計画を立てて実施をしているというところなのでありますけれども,文化庁としては,独立行政法人日本芸術文化振興会を通じて,予算的には支援はしておりますけれども,使い道に関しては基本的に新国立劇場に任されているところでございます。ただ,独立行政法人の制度の仕組み上,評価という仕組みがございますので,実際に新国立劇場が行った公演,あるいは地方との連携などにつきまして,評価委員会でもって評価をしているところでございます。
 そういう意味では,地方との連携といったことを,そういった評価委員会の評価ということですから,文化庁自身というよりも専門家の意見を踏まえてということではありますけれども,ここ何年かの評価においても,地方との連携等について,より努めてほしいといった部分は出ていたかと思います。
 そして支援といたしましては,そういう運営費交付金という形で自主的に使ってもらう支援のほか,文化庁の一般的な仕組みの中で舞台芸術の魅力発見事業といった,これは新国立劇場だけでなく,東京の芸術団体が地方で公演をする際にその移動費等を支援するものなどがございますが,新国立劇場のバレエあるいは演劇の公演を地方で行うという際に,ほかの芸術団体との横並びで,審査を経て支援をしているというものがございます。ですから,今年,たしか新国のバレエの新潟公演とか,あるいは演劇においても演劇研修所の公演等で地方で行っているものがございますけれども,そういったものに関して個別でありますけれども,文化庁が支援するという形で地方展開を促している部分はあろうかと思います。
【宮田部会長】
 そんなにやっている割にはそういう話が1つも出てこないので,やっていないのかなって思わず錯覚しちゃうような部分もありますよね。当然評価の中にはありますよね。私どもの大学も,私になってから,社会に出ろというので一気に年間170ぐらいかな,音楽の技術,映像を合わせて,社会との関係というのをつくってから,もうガラッと見方,それから考え方,行動の仕方が変わってきていますけれどもね。そういうものというのは,今清水課長さんがおっしゃっていただいたんですけれども,そうか,あると言えばあるなぐらいの感じだとするといかがなものかという感じもするんだけれども。
【清水芸術文化課長】
 いえ,ですから全く地方公演などをやっていないわけではないんですけれども,やはり評価の中でももう少し地域との連携を深めてほしいという意見がありましたように,まだまだそういう量的な面でそれほど多くはないということで,知られていないということはあるのかと思います。
 それから,実際に舞台装置などについて,新国でやっているものをそのまま持っていくというのは大変難しくなりますので,地方の公演をするということになれば,それを考えて準備をしていかないといけないということはあるかと思います。ですから,小さい舞台でもできるように,あるいは移動するのが簡便なような装置をつくるとかいったようなところから考えていかなきゃいけないということがありますので,そのあたりは,ただ地方公演をしてくださいということでそれだけ支援するということではなくて,その構想の段階から新国立劇場において考えてもらわないと,数として増やしていくというのはすぐには進まないというところはあろうかと思います。
【田村(和)委員】
 地方の公演は年間どのぐらいをやっているんですか。
【清水芸術文化課長】
 非常に限られているというのは確かだと思います。今ちょっと手元にありませんけれども,大きな舞台としての公演は,バレエは新潟で1回だと思いますし,それから演劇に関しては幾らかの,演劇研修所も含めて地方公演があったかと思いますが,オペラはやはり舞台装置の関係上,新国でやっているオペラを地方でという形はなかなかできていないかと思います。それから,バレエに関しては来年,少し子ども向けの作品白雪姫をつくると聞いておりますので幾らか移動しやすくなるような作品も,これからつくっていこうというような方向は聞いております。
【宮田部会長】
 やっぱり少ないよね。地方場所プラス巡業まで持っていかなきゃいかんと思うんだよな。
【米屋委員】
 新国立劇場の評価の文章そのものを見たわけではないので,ちょっと正確ではないかもしれませんけれども,評価軸の中に入場者率みたいなことが大きく取りざたされていて,それを上げるために公演数そのものが何か縮小しているような傾向があるんじゃないかというのがあるんです。ですから,新国立劇場だけの問題ではないんですけれども,国の政策としては,やっぱりパイを大きくしていくというか,鑑賞者の絶対数を増やしていくという目標をやっぱり掲げるべきなんだと思いますので,全体のボリュームを増やしていくという,1つのベクトルをやはり明確に出すべきなのではないのかなと。
 その中でもやはり新国立劇場というのは象徴的な部分ですので,東京近県だけでも十分とは言えないかもしれませんし,それを地方にも広げていくという,そういったことがないと,片方で新国立劇場は,国に完全にコントロールがされているわけではないけれども,やっぱり国の予算カットの影響をとても受けていて,なかなか拡大していこうという意欲が生かされない状況になっているのではないかなと思います。そういったところのボリュームということを考えなきゃいけないのではないかなと。
 9ページの(2)の実演芸術家等の積極的な活用というのは,先ほど来委員の皆さんのご意見を受けますと,やはり競争原理が働くようなということとか,今申し上げた,全体の規模を大きくしていくというようなことに資するような活用の仕方ということをうたい込んで,もうちょっと書き方を積極的にしてほしいなというふうに思います。
【唐津委員】
 ちょっと先ほどのお話の中で気になったんですが,新国立劇場が地方に対してリーダーシップを取っていただきたいという思いはありますが,地方は地方でその地方のオリジナリティーというものを重要視しているところがありますので,新国立劇場でつくった作品を地方に巡回するという考え方では,成立しなくなっているという事実もあると思います。いかに地方とうまく連携を組んで,地方の意図というか,やりたいことということも組み入れた上で1つの公演をつくっていくという考え方でないと,いいものをつくりましたから,はい,じゃあ地方でもやらせてあげますよという感覚では,なかなか地方はもう乗りにくい段階になってきているということを感じます。
 金森さんの新潟で行っているりゅーとぴあの例が,ひとつの例なんですけれども,なかなか地方で,それに次ぐ団体が出てこないということを考えてみましても,これもやはり非常に似たようなところがありまして,ほかで行われていることを,じゃあまたうちもそれを手を挙げましょうということにはなかなかなりにくいということがあります。
 地方による差異,つまり独自性を出していきたいという部分が大きくあると思いますので,これをまねしてくださいというような形,先ほどリーダーシップと言っておきながら非常に矛盾することではあるんですけれども,根本的な理念というものは追随してほしいんですけれども,ただその内容的なものというのはやはり地方に合わせる,その地方ならではの取り組み,オリジナリティーというものを尊重するという部分がないと,単純に,地方が中央に従いましょうという形にはなっていきにくいと思います。
【宮田部会長】
 聞き方が悪いのかもしれませんが,少し矛盾している部分が僕の中に入るんだけれども。大きくトップからつなげていきたいと言いながらも,地方は地方の個性があるからという部分と,さっきの図式にもそうなんだけれども,この辺のところの難しさみたいなことを唐津先生はおっしゃってくださっているんだと思うんですけれども。
【唐津委員】
 地方分権というんでしょうか,どこの地方も,最近では自分のところでしかできないことを考えているようなところがあります。
【宮田部会長】
 自分のところでしかできないのをずっとやっていて,だもので結局はぽつんとしちゃっているんじゃないのというようなところに,新しい血を入れたいというふうなことの論法で持っていったらいかがでしょうか。そうすることによって,より個性化が,よりそこに競争原理が働くことによって,うちのほうのはもっといいんだということを,それぞれの各地が感じられるというふうな良法もあるのかなと,思ったんですけれども。
【唐津委員】
 そうですね。例えばその地域での文化というものが枯渇したり,形骸化してきてしまっているところもあると思いますので,もっと高いところに目標を設定できるような理念を打ち出すことも必要じゃないかと思います。
【宮田部会長】
 池野委員,どうぞ。
【池野委員】
 まず,新国立劇場に関して私がちょっと注目していることがあって,地方との連携というのは,何も新国立劇場の団体が地方へ行くということだけではなくて,例えばこれまでにもあったようなんですけれども,地方からの団体を,地域団体を招聘して公演しているということもあります。それからまた今年度の4月ごろだったかと思いますが,現代舞踊のほうでオーディションを地方でも実施をして,そういうところから選ばれた若い舞踊家の卵が東京の初台で公演に参加したということがありました。その辺は相互交流というのが,本当に少しずつではあるんですけれども,できつつあるのではないかなと私は思います。それはすごく評価したいと思います。
 そういった事業に対して,いろいろ唐津さんのほうからハードルが高いというご指摘がありましたけれども,とにかくできることから参加したいという自治体といいますか,拠点というのもあるわけです。ですから,そういったところをこれからどんどん開拓していくことが必要になってくると思います。
 それから,先ほど米屋委員からボリュームを増やしていくというお話があって,公演数を全体的に上げていくということは本当に必要だと思います。ただ,その評価委員による評価について,きちんとした文章を読んでのことではなく,実際にそういった方にお話を聞いたときに,ちょっと危険性をはらんでいるなと思ったのは,入場者の数を上げるために,内容に関する評価から離れてしまっている考え方があるような気がしました。それは早い話が,どういうことかというと,たくさんの観客を動員できる団体をもっと積極的に活用していくべきじゃないかという考え方の委員の方というのも実際にいらっしゃって,そのすべてを否定するわけではないんですけれども,考え方として危険じゃないかなと思うところがあります。
 つまり,観客数をアップさせていく,それから公演数を増やしていくときにに,内容も充実させていくということを必ずしっかり持っていないと,団体動員という考え方のみに走ってしまう危険性があるということを,ちょっと訴えておきたいと思います。
 それから,私自身はこの人材の活用ということに関しては,やはりこれからは以前から話し合われているように,地域の拠点というのが非常に重要なものになっていくと思います。ただ,ちょっと現状を見てみますと,実はついこの週末に地方のそういった拠点ではないんですけれども,すばらしい劇場に行きまして,その指定管理の運営会社の方とお話してきました。その劇場に関して言えば,明らかにその劇場の管理運営ということだけに予算が使われるということで中身,例えば公演を実施するために必要な事業費というものに関して言えば,ゼロであるということをお聞きしました。これは,こういう会館,市民会館とか,そういった劇場を運営管理するということがまず第一義にあるというところから発していますから,そこで何かを創造していくという考え方には,現状では本当につながっていないところのほうが多いんだなということを認識いたしました。
 その劇場は機能として本当に優れているんです。運営の組織というのが非常にしっかりはしているんですけれども,結果としては,市民のための場であると。なので,市民が活用してくださいということで,リーダーシップは必ずしもその拠点にはないんです。そこでやはり,そういった拠点事業というのは管理運営も大切なんですけれども,それ以上にこれからはソフトを充実させていくのに予算を獲得していく,あるいは予算を使っていくという方向に,何とか市長や決定権のある組織の考え方を変えていけるように,それに対して何か提言していくということが必要なのではないかと思いました。
【三林委員】
 夢物語かもしれないんですけれども,例えば,毎年,芸術祭参加作品というのがございますよね。それで賞を取りますよね。その公演を見ていれば,ああいうものだったというのがわかるんですけれども,後になって賞を取ってすばらしいといっても,ほとんどそれはもう見られないんですよ。映画とかテレビの再放送とかじゃない限り実演というものは。それで「ああ,そうだったんだ」ということで終わってしまうんですけれども,例えばそういう,ふるいというものに当てはまるかどうかはわからないんですけれども,そうなったときに最優秀のものを東京で,新国立劇場でも上演し,またそれを地方の劇場がやりたいという希望があれば,それに対して補助をして,例えば出演料とか交通費とか宿泊料みたいなものは全部出しますと。それであとやりたいところはそれをやってもうけなさいみたいな,何かそんなシステムづくりみたいなことができると,みんな必死になってそれを見るし,いいものを取ってこようとするしという,何かそういうおもしろいシステムができないかなというふうに感じたものですから,申し上げておきます。
【宮田部会長】
 経済効果がついてくるというか,結果的にはね。
【三林委員】
 はい。
【宮田部会長】
 これ,最後12ページにもそういうこと,「おわりに」のところに書いてありますけれどもね。  長官はいかがですか。
【青木長官】
 実は先週,シンガポールで文化庁のメディア芸術祭を開催しました。これは非常に好評で,しかもアーティストも日本から行きまして,その公開シンポジウムも開き,日本のキャラクターグッズをつくっているようなアーティストとか,テクノロジーと芸術を一緒にやっているテクノアーティスト,そういう方の公開シンポジウムもありまして,非常に盛況でした。オープニングの来賓にお招きしたシンガポールの大臣がともかくやたらアニメとか漫画に詳しい人で,しかもコスプレ,コスプレって連発されて,シンガポールの若い女の子が髪染めたりしているんです。
 日本の現代文化に対する関心が非常に強い。やっぱり日本は天然資源はほとんどないわけですから,文化は非常に大きな資源ですね。それは,今皆様がおっしゃったように人材育成にかかっているわけで,しかも日本にはすごい人材がいると思います。例えばフィギュアスケートなんかでも,浅田真央さんとか出てくるでしょう。もちろんあれも芸術とスポーツの合成みたいなところに特徴があるものだし,ただ問題は,浅田真央さんなんかでも,コーチはロシア人とかアメリカ人なんです。やっぱり人材はすごくいるんだけれども,それを,先ほどもいろんな人がおっしゃいましたけれども,人材をきちんと養成する機関が貧しいことは事実なんでしょう。
 こういう議論をお聞きしていると,やはり思い出されるのは,いわゆるかってソビエト方式ってありました。旧ソビエト時代は,旧ソビエトは共産主義,社会主義なのに,専ら世界中にモスクワバレエとかボリショイバレエとかレニングラードフィルとかを文化使節として派遣して,そこで見せたり聴かせたりするのはロマノフ王朝時代の文化中心です。それを世界中に売り出して,それで巨大な外貨を稼いでいたわけだし,モスクワは西ヨーロッパやアメリカから見れば孤立した場所でしたけれども,リヒテルとかいろんな名人を生み出すような芸術環境がありました。ヨーロッパやアメリカからも一目置かれていた。
 チャイコフスキーなどから始まってこういういろんな作曲家がいて演奏家もいる。西洋クラシック音楽だけれども明らかにロシア文化が生み出したロシア音楽だというのがあるから一目置かれるわけで,それに付随していい教師が,モスクワ音楽院へ行けば世界一流の講師がいて,リヒテルはじめみんな育てる。それから,同時に育った人は世界のトップアーティストとして世界中に売れるという,そういう文化芸術展開システムがあった。やっぱりこれはどう考えても単に制度的な問題じゃなくて,作曲家とかそういうクリエーターも含めた複合物として考えなくちゃいけないなは思います。
 それから,日本のアニメとかそういう現代文化などは日本の資源,そういう認識がもっと強く出てもいいかなと思います。文化は資源である,それはやっぱり国の認識としても必要だと思います。
 ただ,もう一つ今日のお話で,何か基本的には非常に特進的なコース,エリートコースが日本に欠けているという話です,結局のところ。だからそれはやはり,旧ソビエトなんかはすごい文化芸術教育の方式を創っていたわけです。シンガポールなども結構そういうことをやる可能性があるのですね。シンガポール・メディア芸術祭がシンガポールの近代美術館で行われたんですが,そのときにその関係者の方と話していて,メディア芸術に対し大変関心がある,だから日本で,本当は日本に巨大な世界中の人が来るようなメディア芸術センターをつくりたいと僕は言っているんだけれども,今はそうもいかないのでシンガポールがつくったらどうかと言ったら,そうしたら次の日に会ったらちゃんとそれを覚えていて,あの話にすごく興味があると言っていました。前に中国の社会科学院に行とき,僕は巨大な文化交流の研究所が欲しいと言っていたら,そうしたら,それを所長と話したのだけれども,次の日に会ったら,あれも明日からでもつくると言うんです。これはちょっとかなわない感じですけれども,大変文化に対して積極的な印象です。
 皆様のご意見を拝聴していて刺激されましたけれども,やはり新国立劇場に関しては,個人的な感想ですけれども,これはまさにそういう文化芸術のメッカにならなくてはならないですね。それには本当にお金もつぎ込まなくてはならないし,本当に権威ある文化の殿堂に仕上げるような方向で,国も援助しなければならないと思うんですけれど。
 大分具体的なことが今日の議論で出てきたのですが,やはりこういう文化芸術はそんなに簡単にはすぐ成果は上がりませんから,もっと長い目で見る必要がありますが,といって余り長い目で見てもいつまでも先送りになってしまうので,やはり具体的にどうするかというのはここで出してほしいと思います。すぐ文化庁がそれをできるかどうかはわかりませんが,具体的なプランがないとなかなか予算もつけがたいということですし,確かに地方公演の費用は国も大きく負担するべきでしょうね。いろいろまだとありますが,これくらいで。どうも失礼しました。
【宮田部会長】
 非常に明快でございました。ほとんど同じように皆さん考えていたことで,それを形態にしてくれてありがとうございました。
 基本的に日本は,資源がないものを資源でつくるのは人間しかいないんだというのでここまできているわけですからね。
【青木長官】
 本来的にいえば何もない。
【宮田部会長】
 そうそう,特にまた江戸のころなんて,しかもプラス鎖国しているわけだから,その中で。
【青木長官】
 しかも人材はすばらしいのがいっぱいいるわけです。
【宮田部会長】
 そうそう,そうなんですよ。それをまた外へ逃がして,もったいないですよね,なるものかという感じがしますけれども。と言いながら中途半端な共産圏なんだよね。
【青木長官】
 今日はなかなか冴えているな。(笑)
【宮田部会長】
 似たようなものですけれども。これは何とかしたいですから。だからといって拘束力があるわけでもないんだけれども,だからこそ言いたい放題言えるじゃないかという部分だってあっていいと思うんですよね。そんなことを感じましたので。
【三林委員】
 今のとちょっと関係ないんですけれども,先ほど切磋琢磨とか競争原理とかっていう話があったんですけれども,高校の演劇部ですが,昔はあそこの演劇部うまいよとか,すごいよという表現だったんですけれども,今はあそこの演劇部強いよってなっているんです。だから,全国大会へ出るとか,県大会で優勝するとかということが目標なものですから,それで強いよというのでショックを受けているんですけれども,やっぱり何かちょっとこれはいかがなものかなというふうにも思いますので,一言ちょっと言わせていただきました。
【宮田部会長】
 はい。
【田村(孝)委員】
 今,兵庫県立芸術文化センターが今非常に元気でございますよね。やっぱりあそこには顔となるような芸術監督がいらっしゃるということと,それからきちんとしたプロデューサーがいらっしゃる。そして,行政側の立場から参加している方がきちんとした文化政策をお持ちであるという,この3つが非常に大切です。だから新国立劇場でもできないような公演回数をオペラで実現していらっしゃるわけです。
 私も先日定期演奏会を拝見してまいりましたけれども,普通の演奏会が(金)の昼間に満杯でございます。それもオーケストラはきちんとオーディションしていらっしゃる。半分は外国人,半分は日本人です。大体地方の場合に非常に難しいのは,地域の方をということがございますが,やはりそれを見る目というのが非常に必要だなというふうに思っております。そういう方の人材が配置されるということがどこも必要ではないかなと思います。
【宮田部会長】
 そうですね。
【吉本委員】
 先ほどの長官の日本の資源は人材しかないというご意見には,賛同するんですけれども,そういうことを強くアピールするために,例えばこのレポートを「宮田・青木レポート」のような感じにして,頭にそういうメッセージをガーンと出すとか,何かそういうアピールの仕方を工夫する余地があるんじゃないかなと思いました。
 それが1点なんですけれども,あともう一つ,先ほど池野委員と唐津委員がおっしゃっていた国立劇場と地方の劇場という,やっぱり地方の劇場は今,指定管理者ですごく大変なことになっていて,事業の予算を全く削られて,管理しかできなくなっているわけですよね。なので,今日のペーパーで言うと,9ページのところに実演芸術家等の積極的な活用というふうに出ているんですが,これを東京とか国立劇場だけじゃなくて,各地の劇場でも推進するためにも,やはり芸術拠点形成のようなことで各地に強い核を幾つかつくっていって,そういうところの人材育成と国の人材育成も何か相互に連携するような,そういう仕組みを打ち出せないかなというふうに思いました。
 ちょっと余談なんですけれども,昨日若い現代舞踊のグループの人たちとちょっと話をしていたんですが,彼らは最近新国立劇場で公演をしたらしいんです。そうすると,驚いたと言うんですよ。何を驚いたかというと,こんな広い稽古場があるんだと。なぜか慣れていないものだから,みんなで隅のほうに荷物を置いて,しかもそこで2週間も稽古できるというのはすごい恵まれた環境なんだけれども,逆に普段の公演ではものすごい短い期間で準備をして,狭いところで稽古をしてやっているから,間延びしちゃって,本番が必ずしも成功しないと,仲間内で言っているとかいうような話を聞いたんです。それはひいて言えば,いろんなところとの格差がやっぱりあって,本来は新国立劇場のようなちゃんとした環境を整えられるべきだと思うんですね。もちろん,新国立劇場ももっと充実してほしいと思う一方で,そこだけが充実し過ぎて,いろんな地域の創造環境が置き去りにされちゃうのは問題ですから,新国立劇場を充実するのと同時に,地域のいろんな劇場でも同じような創造環境の改善が行われて,全体で底上げされてこないと,結果的に全体的な人材育成に結びつかないかなということを,先ほどの意見を伺いながら思いました。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
【青木長官】
 ちょっともう一つ,気がついたので。シンガポールへ行ったときの話ですけれども,僕の親友である国立シンガポール大学の教授が言うには,産油国で,日本も石油を買っているブルネイのことです。ブルネイは王様が中心にやっていて,国民に税金もない国ですよね。だけれども,今ブルネイの国王が,石油がなくなった場合のことも考えて,将来に手を打つために,まず国立大学をてこ入れして世界的なものにしたいと言って,そこに援助すると。親友の教授が実は副学長なんかで来てくれないかと。シンガポール国立大学の何倍かの給料でどうと言っていたけれど,というのです。いま産油国のひとつアブダビがそうでしょう。パリのルーブル美術館と組んで美術館を建てる計画があり,ニューヨークのグッゲンハイム美術館にも分館を建てるよう要請をしたり,アブダビが盛んにやはりポスト資源への手を打っているわけです。欧米の一流大学の招致も計画的にしていいます。やっぱりブルネイの王様もそういうことを考えているらしい。だから日本から,文化のアドバイザーや文化創造のノウハウを伝えていくことも重要でしょう。博物館も美術館も,アートマネージャーみたいな人が行っていろいろとアドバイスしてゆくという役割もあると思います。
 そういうノウハウは日本にはあるんですよ,文化的な蓄積が。だから,ここにこれだけの専門家の方がいらっしゃっているので,そういうアジアでの活動の可能性も視野に入れたいと思います。
【宮田部会長】
 そうですね。
【青木長官】
 ええ。シンガポールにエスプラネードという,オペラハウスとコンサートホールがあります。オペラハウスも2,000の客席ですからね。そこでも出し物を考えると,やはりローカルになってしまっている。時々ロンドンシンフォニーなども来るんですけれどもね。やっぱり日本の新国のハウスプロダクションみたいなものを持っていく,あるいは共同で制作するとか,また北京の国家大劇院だって。そういう日本発の文化交流を積極的にしたら新しい面も拓けるかもしれません。
 高萩さんなんかが行ってきてまず話をつけて。実際国際的に広く仕事を平気でやれるのは,日本では建築家の方々でしょう。それが芸術文化に及んでほしいと思うのですが,それだけ国際的な競争力を持っている人が他の分野には余りいないので,そういう人材を育てることも必要ですね。ちょっと話がずれてしまいましたけれども,やっぱり基本はそういうところにあるんじゃないかなと思いました。
【宮田部会長】
 いわゆる世界発信,日本国ここにありという意味で文化と,文化の発信ですからね。それは大事なことだと思うんです。
【青木長官】
 文化資源国ですから。
【宮田部会長】
 そうそう。そんなことを言うんだったら,新国立劇場と同時に国立新美術館ができているんだよね。だけれども,そこと全く交流ないでしょう。あれ,違うものだと思っちゃだめなんだよね。それもさっきの発想と同じように,あそこの前の空間の中で,何であそこオペラできないんだろうと。オープニングのときにうちの連中が,管楽器が行ったときですが,もうとってもいいオープニングセレモニーの音楽がとてもすばらしくて感動したというふうなのがあったりしますので,いろんな場が国の中に,国立というところの国の中にいっぱいあるものも再確認して,お互いに融合することがすごく大事なことだと思うんです。その勇気もこれから私どもは必要なんじゃないでしょうかね。そんな感じがします。場がいっぱいあるということも含めて。外にも発信,内側にも発信と。それは地方だけではなくて,いろんな場の違いを融合させることによって,新しい文化力ができるということを提言することも必要なのかなという感じがしました。
 ありがとうございました。
 時間が来ました。事務局から次回の日程の説明をお願いします。
【清水芸術文化課長】
 <次回の日程説明>
【宮田部会長】
 本日はありがとうございました。
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