第6期文化審議会文化政策部会第9回議事録

1. 日時

平成21年1月15日(木) 10:00~12:00

2. 場所

文部科学省東館3F2特別会議室

3. 出席者

(委員)

池野委員 唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 富澤委員 パルバース委員 三林委員 宮田(慶)委員 宮田(亮)委員 米屋委員

(事務局)

青木文化庁長官 高塩次長 関審議官 清木文化部長 清水芸術文化課長 他

(欠席委員)

尾高委員 山内委員 吉本委員

4.議題

  1. (1)実演芸術家(音楽、舞踊、演劇等の分野における実演家)等に関する人材の育成及び活用について
    ・ 【審議経過報告審議】
  2. (2)その他
【宮田部会長】
 それでは,第9回の第6期文化政策部会を始めさせていただきます。
 本日は審議経過報告についてご審議をお願いしたいと思っております。
 会議に先立ちまして,事務局のほうから配布資料の確認のほうをお願い申します。
【清水芸術文化課長】
 < 配付資料の確認及び説明 >
【田村(孝)委員】
 < 議場配布資料について補足説明 >
【宮田部会長】
 大変貴重な先生方の資料をありがとうございました。
 さて,それでは議事を進めたいと思います。よろしくお願いします。
 審議の経過報告書について審議をお願いしたいと思いますので,本日は前回の部会において,素案を委員の先生方から,いろいろな意味でご意見をいただいております。それを修正したのが資料3でございます。「実演芸術家等に関する人材の育成及び活用について」の審議経過報告案及び資料4の概念図をお配りしておりますので,本日は審議経過報告(案)の審議を行う最後の部会ですので,お気づきの点などございましたら,忌憚のないご意見をお願いしたいと思います。
 では,まず事務局から資料についてのご説明をしていただいた後に,審議を進めたいというふうに思っておりますので,よろしくお願いします。
【清水芸術文化課長】
 < 審議経過報告(案)について説明 >
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 本日は盛りだくさんでございますが,今の事務局のご説明を踏まえて,概念図等の意見等もいただき,審議していただきたいと思います。
 資料3-1で,「今こそ,日本の文化力を高めていく」というような言葉が,いいいかどうかわかりませんが,スローガンのようなものをつけて,いろいろなところへ訴えていくということが大事かと,もちろんそこに付随する文章が必要でございますが,こんなことを書かせていただきました。
 それから,概念図でございますが,やはり日本のおもしろさというか,その特性でございますが,この黄色いところのおけいこごとのすそ野の広さというのは,余りほかの国にはないと思うんですが,そこから上のフィルターが非常に高く,難しいというところがございますので,この辺も大分よくなったんですけれども,もうちょっと整理すると,もっとよくなるかなという感じもして,これもまたご意見をいただきたいと思います。
 それから,当然ここへ出てくる報告書の文章について,先生方からいろいろお話をいただければというふうに思います。どなたでも結構でございます。
【田村(和)委員】
 では最初に話をさせていただきたいんですが,こういうふうな形でおまとめいただいて,ご苦労さまでございます。いろいろな要因がある中で,今日初めて修正版を拝見するんですが,非常に整理されているような気がするんですが,後半の具体的な方策というのは,私は本当にこういうことだと思うんですが,やはり基本的な考え方のところと,それからこのとんがり帽子の構図がございますね。この構図で私が気になっていますのは,たくさんの芸術家のキャンディデートあるいは志願者,志望者が出てくること,その人たちがどうにか,はい上がっていこうということと,それから「ふるい」という話の系列というのは,これは違う系列の話ではないかと感じます。今回,こういう形でおけいこごとから人材育成,下から底辺からトップまで書かれたと。このことは日本の文化行政では,これまでない大胆なお話だと思っていますので,これは大いに歓迎すべきことだし,こういうはっきりしたことを出されて,「選抜」なんて言わないで,「ふるい」でも構わないと思っているんです。ただ,問題はこの図だけ見ていますと,人材育成で一番トップに立った人から見れば,このとおりだと思いますが,下から見た場合に,逆にこういう話が,この世界に入ろうとするたくさんの人たちにとって抑制的になるのではという気がするんです。
 つまり,一番下のところでは日本の文化というのは,たくさんのジャンルがあって,物すごいたくさんの人がいて,絵を書く人も,楽器一つ扱うにしても物すごいたくさんの人がいます。そういう意味で,プロとかアマとかじゃなくて,物すごい混沌の状態にあると思うんですね。その世界から,上に行こうという世界でも,もっと混沌としていていいと思うんです。
 ところが,やはり「ふるい」というのが必要になってくるのは,上昇の過程,プロセスの中で,こういうものが必要だということなんだけれども,一番問題なのは,「ふるい」の質,あるいは,内容が日本では全くだめだったんだと私は思っているんです。ですから,たくさんの人が外国に行ったりするので,むしろ,たくさんの人が芸術文化,文化芸術に触れたい,そこに入っていきたいという世界の話と,それからもう一つ,「ふるい」がどうあるんだということは,二つの大きな流れがありまして,実はこの図のプロシーディングプロあたりで,ちょっと話の三角形の帽子のあたりがちょっと右にずれて,そこから何か「ふるい」というものの質が問われてくるという感じがしています。
 そうしませんと,国の文化行政として,こういう縦軸をすきっと出してしまうことはすばらしいことなんだけれども,同時に一番下の混沌の状態のところにたくさんの人がいて,そこが意欲を持つという話と,ある意味で背反するのではないかなという気がしていまして,そのことが非常に私としては気になるところなんです。ですから,ふるいの外側にまたふるいをつくるという話は,内側にもやはりいろいろ試みがあるんだけれども,実際にはここに文化に関する市場とかというのがあるような形で,たくさん外在的な条件もあるということなので,もうちょっとふるい,ここでは「選抜」というふうに書かれているんだけれども,選抜することの内側の条件,それから外側の条件みたいなところをもうちょっと丁寧に書けば,実際には周辺部には「けもの道」みたいなものがいっぱいあると思うんです。そのあたりの豊かさみたいなものがどうあるのかということを書かれていないと,何かこれは成功者の図式であって,下からはい上がってくる人間たちの図式ではないと感じます。実は,日本の成功者の中でもたくさんの方が「けもの道」を通って成功されているわけです。実際にたくさんの人たちが臨んでいくことが,日本の文化芸術の情熱をつくっているんだと思うので,概念図の真ん中あたりのところからずれた,伏線的な話があるというところをもう少し表現できないかなと。
 話は飛びますが,今,三林委員が朝出ておられる「だんだん」という番組がありますね。あれは実は物すごい人材養成の話なんですね。私はあそこからヒントを得たわけですけれども,やはり,どこかで振り落とされると。では振り落とされた人はどこに行くんだという話はもちろんあるんだけれども,その振り落とされるときの条件というのはやはり我が国なりの話があって,それがいいかどうかというのは物すごく重要なことだと思うんですね。
 ですから,そんなことも含めまして,この構図をもう一つ工夫したり,あるいは外側の条件みたいなもの,つまりけもの道みたいなものをもうちょっと描けないかなという感じるのですが,いかがでしょうか。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
 絵ってそうですよ。絵をかくときに,日陰でひなたをかく絵,上から見下げてかく絵,それからひなたから日陰をかく絵と,それによって作品が全然訴えるのが違ってきますので,大変貴重なご意見だと思います。
【宮田部会長】
 ちょっと,頑張りましょう。ありがとうございます。
【米屋委員】
 今の田村委員のご意見は共感できるところがとてもあるんですけれども,恐らく,この図の周囲に享受者がいるということが意識されればいいのかなと思います。トップの人をつくり出すことは,確かに今回議論していることの目標の一つなんですけれども,そのさらに先に,そういった方を通じて,国民が心豊かになるということが今回のまとめにもありますので,そこが確認されればいいという気がします。
 実際,本当に心豊かな方は素人の演奏を聞いても,子供の発表を見ても,そこから豊かな刺激を得て,いい時間を過ごすとか,いろいろな施策をするというようなことができるわけです。もちろん頂点に立つような方のほうが,とてもインパクトは一般的に強いだろうというのはあるんですけれども,何も頂点の人のパフォーマンスを見なければ心豊かになれないというわけではなくて,いろいろなところで豊かになるということはできるんだと思うんです。
 ですから,これを受けとめる人たちがどうなのかということを常に念頭に置いて,また実演家なども芸術家のほうも,自分がやりたいことをやるというのではなくて,自分の活動を通して周りにどういうことの影響を与えているのかということを自覚しつつ,活動ができるというようになるのが理想なのではないかなと思います。そのことが何か図に加味されると理想的なのかなと考えました。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
 きょうはまとめの日になりますので,それ以外の部分に関しても,もちろんこれに触れても構いませんが。はい,どうぞ。
【パルバース委員】
 この「今こそ」という文章についてのコメントですけれども,よろしいですか。
 へ理屈みたいなものを申し上げますけれども,真ん中のところに「才能を開花させることができる場所が日本にない」と。それはまさにそうだと思いますが,次のセンテンスですけれども,「天才の海外流出」というのは,好ましくない表現ではないと思うんですね。まず「天才」という単語が,よくわからないですね。これは,そういう場所が日本になければ,これは若き天才ですか,天才の卵,芸術家の卵たちですか。それとも芸術家,既にすぐれた芸術家がいて,どういうことかよくわからない。ですから,そして「流出」というのは,ちょっと何だか,古い,これは「ブレインドレイン」のそういう訳でしょうかね。海外に行って長く住むことは芸術家にとっていいことですから,そして日本に戻ったりして,何かそこで得た富,外国で得た富を持ち帰るという。だから,これとこの「我が国の文化」,これは消したほうがいいのではないかと思います。
 ちょっとネガティブ,つまりステートメントですね。だから,これがちょっとネガティブ過ぎる,そしてあいまい過ぎる,それとも,もう少し着色して,もうちょっと意味のある文章にしたほうがいいのではないかと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。これは踏み込みましょう。こういう会話が会議の途中にあったものですから,それを入れたんですけれども。
【パルバース委員】
 わかりました。
【宮田部会長】
 でも,お気持ちはよくわかりました。
【富澤部会長代理】
 私もこの前文について,ちょっと一言コメントしたいと思うんですが,これを入れていただいたことで,非常に迫力が出たし,文化に対する気迫みたいなものがはっきりしたんではないかというふうに評価したいと思います。
 我々が生まれ育った時代は冷戦抗争というのがずっと続いておって,アメリカとソ連の二極支配の中でどっちにつくかという時代がずっと続いたんですが,1980年代の後半から90年の前後にかけて,ソ連が崩壊してロシアという国になる。アメリカの一極支配がずっと,この20年間は続いてきた。
 それが今,一極支配が,まさに崩れんとしておって,ただ,アメリカという国は大変再生力のある国ですから,またオバマさんによって立ち直るかもしれませんが,それにしても,私は長い流れから見ると,アメリカの一極支配はまさに終焉を迎えつつあるんじゃないかという歴史認識を持っております。そうなると,やはり特徴を持った国が,どうやって世界の中でアピールをしていく時代に入ってくると思うんですね。
 そういう中で,しからば日本はどうするのかということが,今問われているわけでありまして,私自身はアジアの中にあって,高品質な国家を目指すべきだと思っています。「高品質」というのは具体的にはどういうことかというと,一つはハイテクとか技術とかという日本が持っている大きな力を生かしていく,あるいはそれを伸ばしていくということがありますし,それから環境というものを大事にするとか,あるいは周りの国で日本より遅れている国をもっと手助けして協調していくとかあるんですが,その柱の一つが,私は「文化」だと思うんですね。
 日本の2000年以上にわたりはぐくんできた文化をいかにアピールしていくか。それによって世界の尊敬を得る。こういうことがやはり高品質の社会を目指していくうえで,大きな力になると思います。そういう意味で「今こそ,日本の文化力を高めていくとき」という文章は非常にすばらしい。これによって,今回の政策部会の我々が審議してきたことが,はっきり冒頭に明確に示されたというふうに思います。この前文を入れたことで大変にめり張りがついたなというふうに思います。
 それからもう一つ,「天才」という言葉に一つ異論が出ましたけれども,天才という言葉は私も何かちょっとしっくりは来ないんですけれども,「才能」という表現は変えたほうがいいと思いますけれども,そういう人たちの受け皿が足りないことは確かでありますし,その受け皿をどうやってつくっていくのかということが,この12ページの辺に盛り込まれて出てきておりますが,その中の丸の2つ目に「日本で活躍する機会を与えることが必要である」と,こういうふうにあるんですが,「与える」というのは提供するにしても用意するにしても,必要なことは間違いない。これは一挙に行かないと思いますが,こういう理念を打ち出すことによって,今後,関係者及びその周囲の人たちが努力をしていくので,今後の課題として置いておくのも悪くはないと思います。ただ,一つでも多く受け皿あるいは活躍する場をつくっていくことを努力目標として,表現をもう少し工夫すべきだと思います。そういうふうにしていけば,これまで議論してきたものも報われるんじゃないかと思っております。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
 僕は先取りすることはインパクトがすごくあるというふうに,いつも思っているんですが,例えばもう30万人構想という留学生の話が浮き沈みしていますが,でも,あれだけしゃべられているわけですよね。
 そう言う意味で,今の富澤委員の「高品質」という言葉はとてもいいと思います。これはまさしく,資源の乏しい日本にとっては最高の力,資源だと思いますね。そうすると,日本の人たちだけの人材育成というふうにずっと来ましたが,プラス,アジアをも含めた,世界をも含めて,日本に来ることによって人間本来が持っている文化力を,人間力を高めていくことができるんだというぐらいの話も,この審議経過報告の中に入れ込むことによって,さらに予算が獲得できるという考え方ぐらいの力を持つというのは,私どもの中であっていいんじゃないかというふうに思うんです。
 ついでですが,これも学習力のときも,さっきも僕は遠慮していたんだけれども,舞台芸術の話でも今に近いようなことを言ったんですが,随分上品に書かれてカットされちゃったんですが,そういう力があれば十分それは可能だということは言っておいたんですけれどもね。この中にも,留学生をも含めたらどうでしょうか。
 そうすると,留学生は東京だけじゃないんですね。全国の大学も含めて,地方に非常にいい力を出してくれていて,そことの関係,変な話「小浜市」が,たったあの言葉一つであそこまで力が出てくるみたいな,きっかけはいろいろなところに僕はあると思うんですよ。そんなこともちょっと入れてみたらどうかなと感じます。いろいろな話を今からいれてもでも遅くないと思います。
【高萩委員】
 最初の文章のところなんですけれども,「文化は貴重な資源である」ということで,では何のための資源なのかというあたりがちょっと弱いのかなと思います。
 お配りしたオバマさんのこの文化芸術政策の文章では,NEAの会長の文章を引用して,「芸術教育の真の目的は,この自由な世界で成功をおさめ,実りある人生を送られるすべてを備えた人間を創造することなのです」とあります。ここが多分みそなんだと思うんです。芸術教育に再投資するんですよということの目的まで,はっきりと言っています。芸術と言った場合,芸術を愛好する人たちのための芸術になってしまいがちですう。そうじゃないんだよ。芸術教育は社会全体と関係しているんだということをここで言っているので,ぜひここで「文化は貴重な資源である。それは高品質な国家でもいいし,高品質な社会でもいいし,豊かな国民,心豊かな社会でもいい,何かそれを実現するためのものなんだよ。」というのが入っていると,いきなり文化だけの話じゃなくて,社会全体とかかわっているという話が前面に出てくるんじゃないかなと思うのです。ぜひそれをいい形で入れていただきたい。今のままだと文化の話だけなのねということになっちゃうかなと思ったので,ぜひよろしくお願いします。
【宮田部会長】
 まさしく高品質なものでは,人間もそうですが,いろいろな小さなもの,例えば半導体なんか,いろいろなことにしても,日本が最先端をとってきましたからね。
 あんまりいっぱい書かないほうがいいんですよね。何か大きなスローガンが一つ欲しいところです。ありがとうございます。まだ,でも間に合いますので,いかがでしょうか。
【三林委員】
 私は大阪で,昔から「基地をつくってほしい」とお願いしていたんですね。それは学生を受け入れる基地です。なぜかといいますと,大阪は,京都,奈良それから,熊野の世界遺産に囲まれた土地なんですよ。だから,世界遺産に囲まれながら,日本の文化というものに触れて,そこからインターネットや留学生を活用して世界に発信できる基地をつくってほしいと,ずっと言い続けているんですけれども。大阪は貧乏なので,そんなことは全く取り上げてもらえないんです。けれども,それを国で大阪にそういう基地ができるよう今お願いしておけば,未来に向けて,そういう世界の留学生を受け入れるところが日本にできればと思いますので,議題とは直接関係ないんですけれども,お願いしておきたいと思います。
【宮田部会長】
 前の部会の後半に,連ドラか何かにアートマネジメントの主役ができるといいですねという話をして,三林委員の朝ドラを時々拝見していて,相当包括的ですけれども,「いけてるな」という感じはちょっとしているんですけれどもね。
【三林委員】
 今回も孤島の医療,それから地方の産婦人科医,祇園の後継者,呉服屋さんの後継者問題に発展していきますから,大変なものです。
【宮田部会長】
 大事なんですよ。
【三林委員】
 この間お医者さんに聞いたんですけれども,NHKでインフルエンザのドラマをつくったときに医療協会が「タミフルを連呼してくれ」って頼んだんですって。そのドラマ以降タミフルがオーケーになって,今いっぱいつくってはるんでしょう。そういうことで,ドラマの影響力というのはすごくあると,私は思っています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
 月一で「中央番審」というのがあって,私はそれにも出させていただいていますけれども,そういう話をしていますと,やはりつながっていくものですね。少々風が吹くと,おけ屋っぽいところもあるんですけれども,大事なことかと思っております。ありがとうございます。
【田村(孝)委員】
 皆様がおっしゃっていらっしゃることと同じでございますが,アートマネジメントにしろ芸術家の活動にしろ,「それは何のためなのか」という視点から書いていただいたほうがよろしいかなと思いました。
 と申しますのは,芸術家側,文化側から,こういう力を持っているものだから,これを支援しなさいというのは,やはりそんなに共感は得られないと思っています。逆に,心豊かな社会をつくっていくのに力があるのではという視点から書いたほうが,皆様に共感を得ていただける。私も放送いたしますときに,芸術には力があるということに気づいてほしいと思って,あの手この手を使ってまいりましたけれど,なかなか,そうはいかない。芸術ってすばらしいものですよ,だから触れたほうがいいですよ,そのほうが教養があるんですよというようなニュアンスにならないほうがいいかなと。
 特に,文化庁だからどうなのかと思ってまいりましたけれど,アートマネジメントというのは,単に芸術界や文化施設のためのものではないと。心豊かな社会をどうやって創造していくかその一つの方策であるという視点は,この報告書の中の姿勢として必要だと思っております。
【宮田部会長】
 ここに「上質を身近に」という。これもいいですね。
【田村(孝)委員】
 それが指定管理者制度の売り文句です。指定管理者制度というのはすごい大変なことでございました。ちょっとお話違いますけれども。
【宮田部会長】
 この写真もいいですね。このビジュアルはとても大事です。
 どうでしょうか,またいろいろあるかとも思いますが,この辺にしていただいて,時間的な問題もちょっとございますので,あとはまた,私にも今までのお話にもございましたように,少し一任させていただいて……先生まだあった,ごめんなさい。
【米屋委員】
 細部について1点,11ページの方策のポイントのところに,「公演の準備から実施まで」という言葉が残っているんですけれども,5ページのところは直していただいているんですが,ここは公演の舞台作品の創造とかほかの言葉に置きかえていただかないと,けいこ場で行われていることは「準備」という言葉でくくられるよりは,もっと戦いといいますか非常に厳しい場であるので,こういうところにかかわっている方から見ると,準備と言われるとちょっと心外かなという気がしますので,言葉をかえていただければと思います。
【宮田部会長】
 清水さん,先生方からやはり,今までもお送りしてあるんですが,今日のご議論いただいて,またちょっと気づいたことなども,もしかしてあったら,少しいただいてもいいですか,そういう時間もいただいていいですか。もう今日限りとしますか,私に一任させていただくとか。
【清水芸術文化課長】
 修正した後,総会で報告をしたいと思っておりますので,今日いただければ一番ありがたいんですけれども,もしお気づきの点がありましたら,3,4日以内にいただければ。
【宮田部会長】
 わかった。2日,2日以内。
【清水芸術文化課長】
 それでいただければ。
【宮田部会長】
 今週いっぱいということで,ひとつご猶予いただけたらと思います。
【パルバース委員】
 ごめんなさいね,もう一つすごく,足らない点ですけれども,この「今こそ」の文章なんですけれども,「才能を持つ者を伸ばし」と書いてありますけれども,「才能を持つ者の能力を伸ばし」のほうが,人,ものを伸ばし,ちょっと腑に落ちない日本語だと思うんですけれども。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
 この中でもこの文章だけで,これだけ議論が出てくるというのは,やはり……
【パルバース委員】
 すごく重要なんですね。もうこれは議論して,足りないぐらいです。
【宮田部会長】
 ありがたいことです。というような感じで,ファクスをいただいたりしましょう。
【高萩委員】
 11ページの「実演芸術家等の積極的な活用」のところですが,2番目のところに「地域において劇場等を中心とした芸術拠点の形成を促進するための」と入れていただいたのはよかったんですけれども,余り上とうまくつながっていないんですよね。
 つまり,実演芸術家を積極的に活用する芸術拠点とか何か,ちょっとうまく絡めていただけないでしょうか。今のところ,実は芸術拠点では,実演芸術家を正式に契約しているところというのは,新潟等,ものすごく限られているんですね。だから,ここの「積極的な活用」の中に「芸術拠点」という方向へかじを切るんだとすれば,結構大きな話ではあるんですね。
 「芸術拠点」という言葉は,普通名詞のように見えますけれども,文化庁の中の芸術拠点形成事業と絡むような気もします。現在の表現ではあいまいですが,ぜひそこは強調してほしいなと思うんです。
【清水芸術文化課長】
 芸術拠点形成事業という助成事業がございまして,現在その助成対象に,りゅーとぴあ,あるいはアンサンブル金沢なども入っております。そういった芸術拠点の中で自分たちが芸術団体を持っているものもあれば,またフランチャイズという形でオーケストラなどを持っているところもあるということでありまして,現在のことを言いますと,芸術監督などを置くことと言ったような一定の条件は課しておりますけれども,そういった芸術団体を置くこと,あるいは必ずフランチャイズで持っていなければいけないというところまでは助成条件としておりません。
 ただ,審査の観点の中で,そういった芸術団体と密接な関係を持っているといったところについては,幾らか評価するというような形で,現在でも審査の過程において一定の評価はしているところなんであります。必ず芸術団体を置かないといけないという形になりますと,既存の芸術拠点にとっても,かなり大きい話になるのではないかと思います。けれども,芸術拠点の助成に当たって審査における加点要素として,そういったものをより重視していくというような方向性はあるのかなと思っております。
 まだ今後の方向ということで固めているわけではありませんけれども,前回の議論を踏まえて,そういった方向性もあるのではないかという趣旨で書き入れたところでございます。
【高萩委員】
 ぜひ「地域において実演芸術家を擁するような劇場等を中心とした」というように,「実演芸術家を擁するような」みたいなことをちょっと一言入れていただけると,そこにものすごくニュアンスが出てきます。是非入れていただければなと思います。
【田村(孝)委員】
 そういう意味で,この前文のところでございますが,今,高萩さんがおっしゃいましたように,「地域」ということがもうちょっと,前面に出てほしいと思います。今までと同じでなくて,地域で「上質」なものが身近になるようにしていくことは,すごく大切ではないかなと思いますので,このつけ足しのように最後にあるのが,ちょっと気になっております。
【宮田部会長】
 1月29日ですか,総会は。
【清水芸術文化課長】
 はい,そうです。
【宮田部会長】
 それまでに,一つの報告書がまとまればいいわけですからね。
【高萩委員】
 すみません,それについて申し上げます。8ページに「卓越した実演芸術家等の育成」。ここで,固有名詞として「新国立劇場」が出ていまして,僕はそれはいいことだと思うんですけれども,もし可能ならば,宮田さんのいらっしゃる東京藝術大学のこともはっきり書けないでしょうか。どこまで書くかというのは非常に難しいんだと思うんですけれども,やはり世界のアーティストとお話ししていて,日本を代表する芸術系大学が舞台芸術部門を持っていないというのは,日本が舞台芸術をそういうふうにしか評価していないかということは言われるわけです。
 いろいろな事情があることについては,もう本当に聞かされましたのでわかりますが,固有名詞を書ける状態にあるなら,ぜひ取り組んでほしいと思います。文化庁が言ったことで何もすぐならないのかもしれませんが,どうでしょうか。
【宮田部会長】
 ねえ。いや,新聞にはそういうふうに僕は言ったんですけれどもね。
 新国立劇場は,法人ではありながら国の機関でありますが,東京藝大は86大学の1大学ではあるわけですけから,そこまで踏み込んでいいかどうかというのはいかがなものですか。
 さっきの30万人構想なんかにしても,みんなインフラが整備されていないためにといって,みんな腰引いているわけですが,僕はそうじゃないと思っていますね。
 そのときに,「文化力」って結構,どうなんでしょうか。教えるというときに,すごく喜びみたいなものがありまして,私も田舎が佐渡ですが,佐渡は能楽だとかそろばんだとかいろいろなものがある経済と文化に非常にたけた不思議な島なんですけれども。小さいながらも教えるというときは,自分がそれ以上に教わっているんですよね。あの力がすごく僕は大事な力かなと思うんですよね。
 そういうことを考えると,留学生とか海外の,いわゆる日本人以外の人たちに教えることによって,彼らとの関係ができ上がったり,文化力の交流ができたりというようなことがすごくできるので,すごく大事なことだと思っているんですけれども。
 同時に,今の高萩委員の話で,学校の先生方が何であんなにモチベーションが高いのかというのは,自分を超えていくやつをつくれるというところにあると思うんですよね。そういうことを考えると。どうですか。そういう大学の固有名詞なんというのは。僕は別に構わんなと思っているんだけれども。
【高萩委員】
 具体的に言って,「東京藝術大学を頂点とする」と怒られると思うので,「東京藝術大学など芸術系総合大学における舞踊演劇の人材育成など」,学校教育じゃない,「高等教育において優れた才能を持つ専門人材の育成を推進する」という言葉にかえることは可能でしょうか。つまり,芸術総合大学にないのが問題だと思うんですね。
【宮田部会長】
 わかった。じゃあ,今すぐ答えるのは無理にしても,「東京」という言葉じゃなくて「芸術系大学」ぐらいまで,はっきり踏み込んだらどうでしょうか。それだったら全然構わないと思うんですけれども。
【髙塩次長】
 私の理解ですと,芸術系大学というのは,基本的には専門家養成ではなくて,教員養成として置かれているというのがスタンスでございまして,なぜ音楽と美術が多いかというのは,小・中・高等学校に音楽と美術の授業科目があるからというのが一つの淵源になっておりまして,今,高校多様化で演劇とか舞踊もありますけれども,やはり教員という形での採用というのがほとんどないということがございます。なかなか日本の大学というのは,結果としてプロになる人もいますけれども,どちらかというと教師養成というところが,日本の大学のなりわいとして今日に至っているだろうということを理解しております。また,大学でそういった学科をつくるということについては,国立大学も含めてですけれども,それはあくまで,大学の判断というのが,我が国における形になっておりまして,いずれにしろ,東京藝術大学が専門大学であり国立大学では間違いございませんけれども,それだけ言及して書くことについて,なかなか省内的なコンセンサスは恐らく得られないだろうと。これについてもちょっと省内で今照会をかけてやっておりますけれども,そういうような状況だと思います。
【三林委員】
 また,教科書の問題になるんですけれども,音楽と美術の授業があるから教員を育てるために,大学にその学科があると今おっしゃったんですけれども,それは,戦後の教育だと思うんですけれども,例えば日本の古典ですね,そういう音楽の授業はほとんどないわけですよね。もちろん,演劇の授業もないわけで,舞踊の授業もないわけですよね。それを見直していただくということは不可能なものなんでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 学校教育のカリキュラムということになりますと,初等中等教育局で教育課程を考えていくことになるわけですけれども,例えば音楽の中で邦楽の重視といったことは,今回の改定でもそういった方向では進められておりますので,これは学校において,そういう楽器等を整備するとかいったような環境整備とともに,教員養成等においても新しい学習指導要領で教えるということを踏まえて,西洋の音楽だけではなくて,日本の音楽も教えられるような教員を育てるというような方向で変わってきているかとは思います。
【三林委員】
 今邦楽部があるのは東京藝大だけでしょう。
【宮田部会長】
 いや,そうでもないです。
【三林委員】
 そうでもないですか。でも,ほんの少しの大学ですよね。
【清水芸術文化課長】
 東京藝大に関しては,学校の教員の養成というのが,多くのそういった芸術系の大学において,教員養成につながる教育が行われているというのがあるんですけれども,東京藝大に関しては必ずしもそうではなく,実際にかなりの実演家を育てているというところもありますので,今私のほうが申しましたのは,芸大のカリキュラムでということではなくて教員養成といったようなことを考えている芸術系の大学だけではなく教育系の大学なども含めて,邦楽の指導もできるようにといったことを考えたカリキュラム等が進められていくだろうということであります。確かに芸術系の大学で邦楽を教えているというところが,余り多くないといったことは確かかとは思いますが,学校教育の関係でいいますと,従来よりは邦楽の重視といった方向が進められているということで紹介をさせていただきました。
 それから,演劇の関係でありますけれども,確かに国語の指導の中で,演劇,戯曲といったもののその位置づけというのは,どのくらい大きいのがいいのかというのは難しいところなんですけれども,先日のご質問がございましたので,学校の教科書等を見てみますと,幾つか戯曲といったものが教科書の教材として取り上げているところは確かに今でもあるところでございます。
 話があちこちに飛んでしまいましたが,「東京藝大」という名前を入れることに関して,事務局としてまとめてきた立場でいいますと,仕組みとしまして,新国立劇場は独立行政法人の芸術文化振興会が持っている施設であり,独立行政法人の場合には,国とのつながりが国立大学法人よりは,かなり強いところでもございますし,また国立の劇場という形での国の政策とのつながりも強いということで入れているところなんでありますが,東京藝術大学は,確かに芸術系の国立大学としては一つだというのはあるんですけれども,形態として国立大学法人の実勢といったことで考えますと,国,文化庁の中で藝大の名前を出していくということに関しては,国立大学法人制度の観点からしてもどうなのかという意見が,やはりその制度を持っている省内の関係のところからも出てくるのではないのかなと考えておりまして,表現としては,今の中でも芸術系の大学における舞踊,演劇の人材育成といったことを方策のポイントにも述べ,文章としてはより具体的には,10ページのところで大学に舞踊学科,演劇学科が非常に少ないということで,芸術系の大学でそういう舞踊系,演劇系の人材育成を進めることが期待されるという中で,国立それから公私立もありますけれども,国立では東京藝大が一番中心でありますので,ここの表現の中で含めていくというところでいかがかと,事務局としては思っているところでございます。
【宮田部会長】
 長官,どうですか。
【青木長官】
 宮田会長の序文は非常にいいと思いますけれども,確かにもっと言っていただいてもいいですよね。それから,バラク・オバマ,バイデンのこれを読むと非常にポイントがさっと入っていますね。「グローバル経済」というでしょう。その中で,クリエイティビティ,革新性,それが芸術教育に結びつく,それで子供の教育が必要だと。これはもう,滑らかに全部入っていますね。
 これは,オバマの演説なんかであんまり文化について出てこなかったのはどうしてかと思ったら,ちゃんと文化外交まで触れて完璧なものだと思いますね。しかも,アメリカ人を鼓舞するようなメッセージが随所にこもっていて,しかも完璧に問題を押さえていますよね。これはちょっとやられたという感じがして,僕はオバマ支持とか,だれ支持とかいう特定の立場ではなくて,ただこれを読んだときに,一国の指導者がこういうことを言うというのは大変なことだと思いました。
 だから,選挙演説をやっていた過程の分析をだれか政治学者がやるかと思ったら,だれもやらないんだけれども,もう最近のアメリカから見るとあれは一種の最高のアートだと思うんですけれどもね。
 ただ,昨日のBSを見ていたら,ヒラリー・クリントンが国務長官就任のための資格審査の上院の公聴会,そこでもちゃんと「文化」ということを言っていましたね。そういうのは,やはりなかなかアメリカも「スマート・パワー」というだけじゃなくて,文化をちゃんと入れていましたからね,やはりなかなかしたたかだなと思ったんですけれどもね。
 ですから,今日の議論非常にいいと思う。先ほど宮田先生も,それから富澤先生もおっしゃったような文化をもっと,やはり文化の価値というか,それから文化が持つ力というのは,もっと強調してもいいと思いますね。
それから,アジアの人材に関して日本が日本人だけじゃなくてアジアの人材のプールになる,そういう役目を持っているということを訴えることが,世界に対しても,世間に対しても非常に意味があると思いました。
 東京藝術大学は特別に入れなくていいんじゃないでしょうか。ほかにも大学はたくさんあるから。新国立劇場については,オペラハウスは確かにほかにありませんからね。琵琶湖はどうかとか言われると,問題なんですけれども。ただ,できたばかりだということもありますし。
 このオバマ氏のマニュフェストを見ていて思ったのは,芸大の人材養成といえば,最高の人材の一人がソニーの会長をやっていらっしゃった大賀典雄さんでしょう。ああいう人が,やはり藝大から出てきたというのは,やはりこれはもっと分析して入れるべきだと思います。日本の今の産業には,ああいう藝大から育った感性を持っているような実業家というか,あるいは創造力を持つ実業家が必要だけれども,そういうものがやはり日本の高度成長の一時代をつくったわけですね。だから,それをもっと分析して入れる必要があると改めて思いますね。
 ただ,ここでの議論は実演芸術家ですから,それは「実演」というのが入っているわけで,特別に限定されているわけですけれども,同時に,先ほどからの議論の中で言えば,ああいう大賀さんみたいな才能を発掘し伸ばす,そういう環境は必要だと思いました。そうすると,もっと芸術教育の持つ意味が,明らかになるんじゃないでしょうか。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
【高萩委員】
 おっしゃっていることはわかりました。では,これではどうですか。「芸術系総合大学における舞踊や演劇の人材育成など,高等教育または大学教育において優れた才能を持つ専門人材の育成を推進する。」
 つまり今のままだと,既に日大など大学でも確かに幾つかはあるわけですよね。そのことを言っているのかなと思われてしまう。芸術系総合大学の中というのは,確かに舞台芸術の部門は余り置いてないんですね。そこがポイントとして打ち出せるかなということなんですけれども。
【宮田部会長】
 文化部長,どうぞ。
【清木文化部長】
 むしろ,芸術系の大学といったほうが幅広く対象になるので。というのは,芸術系総合大学と限定してしまうと,また私学の中で外れる大学も出ると,じゃあそこはいいのかという話にもなります。
 さきほどの関係で補足いたしますと,国立大学も含めて,やはり大学の自主的な意思があって進めるべきことですから,それを頭越しに文化庁が固有名詞を言ってしまうというのは,ちょっと難しいと思います。むしろ「芸術系の大学」と書いておけば,一方で国立大学も私学と違いますので,ある意味で国の政策実現を担うという部分もありますから,芸術系大学での人材育成という,いわば文化庁の政策を芸大としても受けとめて,実現するために組織を整備しようというほうが自然だと思いますし,それから総合大学と書かないほうが私学も含めて幅が残るので,芸術系大学としたほうがむしろいいんじゃないのかなと思いますが。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。それは私も思います。
 というのは,暮れに韓国へ東京藝大だけではなくて国公立の先生方みんな呼んで,韓国でホームカミングデーをやって,日本に留学した人たちが向こうで活躍している人たちの同門会というのをつくって,大きな展覧会とシンポジウム,それから交流会をやったんですね。これはすごく成功しました。そういうようなことがありますので,そういう意味では東京藝大だけに限ることではなくて,いわゆる高等教育の場所というのは,日本全国を一緒になって束になって,日本というものを売りたいという気持ちで私も動いておりますので,今年は中国にそれを進出していこうかというふうに思っていますから。
 話が少しずれちゃいますが,留学生というのは,第二の母国になって帰るか敵国になって帰るか,どっちかというのがあるんですよ。非常に厳しい選択肢が彼らの中にありますので,その辺はすごく気をつけなきゃいけないところです。むしろそういう点では一番喜んでくれているのは,文化力の部分,あるいは地方へ行ったときのそこの芸能に触れたとか,それが自分の国の音とすごくよく似ていたと。そこから,ああルーツがあったんだとかということで,信頼関係ができるというような事実がいっぱい見受けられたし,懇談会のときにはそんな話がいっぱい出たというような事実もございますので,今の文化部長のような話ぐらいのところで,高萩委員のお気持ちも含めたところで,文章をちょっと考えてください。
 だけれども,やはりこれを見ると,ちょっと選挙演説っぽいんだけれども,うまいよね。
【青木長官】
 非常にわかりやすい。
【宮田部会長】
 わかりやすいんだね。私どももわかりやすくいきましょう。
【三林委員】
 吉本さんのご意見のところに,「英国でも小・中学校で週5時間の芸術教育」と書いてありますので,オバマさんはそれをモデルにしていると書いてありますので,もう一回言っておきます。早くすそ野を広げるために,ゆとり教育のようなクオリティーのない時間を設けるんじゃなくて,小・中学校でちゃんとしたクオリティーの芸術の時間をいち早くつくっていただきたいと思います。
【宮田部会長】
 力強い。
【三林委員】
 ずっと言うててんけど,なかなか初等教育,みんな言ってくれはらないから。
【宮田部会長】
 はい。
 まだ,広げましょう。いかがでしょうか。
【田村(和)委員】
 今議論されていることというのは,大体この6ページまでに,いろいろな言葉を変えて入っているんです。ところが,私はちょっと読んでいてずっと気になっているのは,非常に客観的なところです。そういうふうに審議された話を,経過を説明されていることが多いので,むしろ人を育てるということは,これは本当に戦略的に大切なことだから,もうちょっと先生の前書き,メッセージの次に,今おっしゃっているような話を明解に書いていくことができないのかなという気がするんですけれどもね。
 この「はじめに」にしてもそうなんだけれども,「あるとおりである」とか,審議経過報告を取りまとめたというようなことで,何か前のものに頼ってこういう話がレゾンデートルがあるみたいな理論を書いておられるんだけれども,もうちょっと何かこのあたり,もう少しシンプルに,課題は課題それから目標は目標ということで,これはこういう形でお書きになったのは非常に大変なことだと思うんだけれども,もう少し明解に書いていけば,今の高萩委員のお話なんかも入ってくるんじゃないかなという気はしているんですけれどもね。これもぜいたくな話かもしれませんけれども。
【宮田部会長】
 結構それは大事かもしれないな。
 余談ですが,「学長と語ろうコンサート」などというのを,春,秋にやらせていただいているんですが,長官のお話じゃないですけれども,大賀さんをお呼びしてお話をいろいろ伺っていたんですけれども。母校なんですが,藝大嫌いでね。でも,強引に呼んでいろいろな話をしているうちに,最後に「藝大に経済学部をつくれ」といって帰っていったんですけれども,なるほどなあと思いましてね。
 いわゆる,長官の話にもあったように,ご自身の感性と経済というのは非常にある部分で共通したところがあるんだというような話があって……
【青木長官】
 今はいろいろな面で,大賀さん的な才能は必要なんですよ,実業家においても,もちろん官界においても学会においても,社会のあらゆる面でね。あれはちょっと分析して,どうして可能になったか。それは盛田さんとか,ああいう飛び立った人がいるんだけれども,両方できる人じゃないとね,そういう感性が何か一番,21世紀的ですよね。だから,大賀典雄研究というのはちょっとやりたいなと思うくらい。その功罪はもちろんあるでしょうけれどもね。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
【田村(孝)委員】
 お配りした情報誌「G」の最後のほうに,平田オリザさんに,県の公立文化施設協議会の集まりのときに講演をお願いしたのですが,これからの地域の競争力のために,センスを磨くということがすごく大切だと。そして子供たちのセンスを磨くには,上質な,良質な,芸術文化をシャワーを浴びせるがごとくに与え続けることだと言っていらっしゃいます。センスという言葉は,日本語に,ある意味訳しにくいのですが,経済活動も政治活動も,すべてセンスがどうかということではないか思いまして,平田さんの講演を参考にとご紹介しました。
【宮田部会長】
 オリザさんもなかなかいいですよね。非常に興味深い方ですね。
 大岡先生はお元気でしたか,いきなりですが。
【田村(孝)委員】
 はい。
【宮田部会長】
 そうですか。
【田村(孝)委員】
 沼津に大岡先生の「ことば館」というのが今年の10月にできます。
【宮田部会長】
 俳句にしても何にしても,あれだけ短いところで,季節から何からすべてを訴えられる日本の文化力というのは大したものですからね。詩にしても俳句にしても何にしても。言葉の強さというのはありますから。
【高萩委員】
 先ほどから宮田さんがおっしゃっている,アジアの中の日本を意識した施策というのは,基本的には書かれていないんです。
 実は数年前まで,海外からの新進芸術家の留学生みたいなものを文化庁でもお出しになっていたんですけれども,いろいろな理由でおやめになったんだと思うんですよね。ここでおっしゃっているのは,多分そのことを意識されているのかなとも思います。
 今,基本的には日本におけるアーティスト育成ということに焦点が絞られています。それはそれで僕もいいと思うんですが,ちょっとグローバルに行こうよということであれば,目出しぐらいはどこかに,ちょっと入れたほうがいいのかなという気がします。
 具体例でいいますと,10年ほど前に,イギリスから日本の歌舞伎を勉強しに来た演出家で,エドワード・ホールという方がいたのですけれども,本国に帰って,男優ばかりのシェイクスピア作品をつくって,日本で勉強したことがすごく役に立っているというのを書いてあるのを読みました。
 それはイギリスからなんですけれども,これから東南アジアとか中国とか,いろいろな形で留学生保護というか,大学ではやっていると思うんですけれども,文化庁は今なくなっていますよね。
【清水芸術文化課長】
 今はありません。
【高萩委員】
 そういう方法をもし書いておくなら,多分2番目……,8ページのどこかに入れたほうがいいのかなと思います。今回は国内にとどめるということだったら,触れないでいけばいいと思いますが,少しそういうグローバルな視点も入れて,日本の文化政策自体が,日本のアーティストそれぞれじゃなくて,日本文化に触れさせる,アジアとかほかの外国の方も含めて行くんだよということであれば,触れていただければなと思います。
【宮田部会長】
 結局,それをやることは,結果的には日本の文化力を高めることなんですよ。これは大きなことだと思いますね。
【青木長官】
 みんな外国人が入ってきて,それで何をするかわからない,みんなそうでしょう。音楽だってそうですね。
【宮田部会長】
 そうです。これは,ですから政策というよりも大事な,もうずっと流れていることで必要なこと,切っちゃいけないですよ。
【青木長官】
 実は昨年の12月24日から26日まで,韓国の済州島で日中韓の文化大臣フォーラムというのがございました。それは第2回だったのですが,第1回は一昨年の9月に中国の南通市で行われました。
 これは文化行政の責任者が集まり,三国における文化芸術の振興,文化交流,協同的な政策,あるいは著作権・知的所有権の保護などいろいろな文化産業の育成を一緒に協力する事を目的に,第1回では「南通宣言」それから今回は「済州宣言」を行いました。
 歴史的に見てもこんなことは初めてでして,非常に重要だと思うんですが,確かに今,中国も韓国も,国が文化行政あるいは文化振興に物すごい力を入れていることは予算などでもわかるわけですけれども,ただ,いろいろと話をしておりますと,中国の文化部長,日本では文化大臣に当たる方ですけれども,この方は今年から新しく就任された方でしたけれども,日本に対して非常に関心が強いんです。東京で地下鉄に乗っていろいろなところに行ったとか,何かというとすぐ日本の話題が出てきて,非常におもしろかったです。仲よくなって,見ている映画も同じような映画を見ていたり,トニー・レオンが大好きだとか,おもしろかったんです。
 それから韓国の場合は政権が変わりましたので,新しいユ・インチヨンさんというのは,就任される前は1年ほど日本で,日大の芸術学部の客員教授をされており,髙塩次長のところにも面会に来られて,いろいろと文化政策についておっしゃったと言われていましたけれども,ただこの方も日本が大好きで,東京で上野から六本木まで6時間半で歩くとか何とか,そういうのが大好きだという話で打ち解けた話でよかったんですけれども。
 確かに中国も韓国も,今猛烈に文化にお金をかけてやろうとしています。例えば中国は国策でアニメ教育をやっています。そういうことも含めまして,やはり日本が大きなモデルとなっています。これはいろいろな点でひしひしと感じて,もう芸術教育から何から,日本というのはある点ではお手本としては重要だという認識はあったと思いますね。
 だから,やはり先ほどからの議論もいただいたように,そういう我々の蓄積を,この人材養成においても,広くアジアだけじゃなく,世界に知らせる必要はあると思いました。
 いろいろな面で日本,日本と出てくるものですからね,もっと日本を軽視するような傾向かなと思ったけれども,逆だったんですね。お二人とも非常に日本ファンで,それから日本文化あるいは日本の伝統文化と現代文化の関係とか,いろいろな面で参考になるということをおっしゃっておりました。そういう点でも,やはり我々はもっと頑張らないとと思います。近代において150年やってきたことは,非常に重要なことがいっぱいあるわけです。そのことを忘れて,すぐヨーロッパだとかアメリカだとかいうのは,ちょっとおかしいなと思います。
 そういう点では,もっと我々のノウハウも,蓄積も,アジアの新しい才能に向けても開かれた形で示す必要もあるし,そういう人たちが日本で育てば,それはもう一種,日本で育った芸術ですから,それも一種の日本文化の一部としても取り扱うことができるのではないかと思います。
 ピカソ,ゴッホ,それからもちろんシャガールにしても,これはフランスの芸術でもあるわけですよね。今アジアのほかの国と比べると,やはり日本だけがそういう可能性があると思うんですけれども,いかがでしょうか。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
 「今こそ,アジア」,「今こそ,日本」というような発進力が必要なことかなと。ところが,意外と,中にいる日本人同士がつぶし合っているという現実があって,それから認識不足であるという部分はとても感じますね。私もそれはよくわかります。
 大変議論が深い,提言にまでいっているような感じがします。そんなことで,この後は今週いっぱいということと同時に,その次のまとめのところは事務局と同時に私のほうで,少しまとめさせていただきたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。1月29日,(木)の開催の文化審議会の総会において,それをご報告させていただきたいと思います。
 第6期の文化審議会の文化政策部会は,本日が最後ということでございますので,ありがとうございます。大変いいご意見を先生方からいただきました。第7期の文化政策部会の見通しについては,事務局のほうからご説明をいただけたら幸いです。
【清水芸術文化課長】
 <今後の予定等について説明> 
【宮田部会長】
 ありがとうございます。
【青木長官】
 <閉会挨拶>
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 先生方のおかげで,一つ形が見えてきているような気がします。同時にこれが伝わって,それが足かせではなくて,踏み台として大きく,文化が伸びていく,それから日本力が伸びていくというふうになってくれたらなと思っております。
 これにて閉会させていただきます。ありがとうございました。
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