第7期文化審議会文化政策部会第1回議事録

1    日時
平成21年5月14日(木) 13:30〜15:30
2    場所
文部科学省東館3F2特別会議室
3    出席者
(委員)
池野委員 唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 パルバース委員
三林委員 宮田委員 山脇委員 吉本委員 米屋委員 山内委員
(事務局)
青木文化庁長官 関長官官房審議官 清水芸術文化課長 他
(欠席委員)
堤委員 宮田委員
議題
  1. (1) 部会長等の選任
  2. (2) 文化政策部会における検討の進め方
  3. (3) 関係機関からのヒアリング
  4. (4) その他
【清水芸術文化課長】
 ただいまから第7期文化審議会文化政策部会第1回を開催いたします。本日は,ご多忙のところ,委員の皆様方ご出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 私は文化庁文化部芸術文化課長の清水でございます。本日は委員改選後初めての会合ということでございますので,後ほど部会長をお選びいただくことになりますけれども,部会長が選任されるまで,私が議事を進行させていただきます。
 それでは,初めに文化政策部会の委員の先生方をご紹介させていただきたいと思います。資料の中で資料1「文化政策部会委員名簿」という資料があるかと思いますが,こちらをごらんいただければと思います。

<座席順(あいうえお順)に紹介>

 山脇委員におかれましては,今回新任でお願いしたところでございます。
 なお,そのほか,委員といたしましては,宮田慶子委員,それから,今回新任でお願いいたしました堤剛委員,お2人は本日ご欠席ということでございます。
 続きまして本日の会議に出席しております文化庁の関係者を紹介させていただきます。

 <青木文化庁長官,関長官官房審議官>

 それでは,会議に先立ちまして,お手元の配付資料の確認をさせていただきたいと思います。

 <配布資料の確認>

【清水芸術文化課長】
 それでは,部会長の選任に移りますけれども,部会長の選任方法につきましては,お手元の資料10の5ページ目に定めてございますが,部会に属する委員の互選により選任するということとなっております。どなたかご推薦をいただけますでしょうか。
【田村(孝)委員】
 ぜひ続いて宮田学長さんにお願いいたしたいと思いますので,推薦いたします。
【清水芸術文化課長】
 今,宮田亮平委員をという推薦がございましたけれども,皆さんいかがでしょうか。
【清水芸術文化課長】
 それでは,ご異議ないということでございますので,宮田委員が部会長に就任されました。宮田委員,恐縮ですけれども部会長席へお移り願いたいと思います。
 それでは,今後の議事進行は宮田部会長にお願いいたします。
【宮田部会長】
 すみません,図らずも,先生方のご協力の下でいい審議を進めさせていただきたいと,かように思っていますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,今までいろいろと議論を積んでまいりましたけれども,より深めていくために部会長の代理をここでご指名させていただきたいと思いますが,これは審議会の第6条第5項で,私が指名をさせていただくということですので,ご指名させてください。
 それで,私などよりもより専門的で高度にご経験を積んでおられます田村孝子委員にぜひお願いをしたいと思いまですが,皆様方いかがなものでしょうか。 田村先生,いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。
 では,席をこちらのほうにお願い申し上げます。
 一言お願いします。
【田村(孝)部会長代理】
 とても力不足で,皆様ご専門の方が多い中でございますけれども,日本の国が文化的に豊かになればということだけは人一倍強く思っておりますので,皆様方とご一緒にこの役目を果たせればと思っております。よろしくお願いいたします。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,次に進めさせていただきたいと思います。よろしくご審議お願いします。
 傍聴は可能ですが,どなたかいらっしゃいましたら。
【宮田部会長】
 それでは,初めに青木長官からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
【青木長官】
 本日は大変忙しいところをご出席いただきまして,誠にありがとうございます。第7期文化政策部会の第1回の開催に当たりまして,一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 初めに,皆様方におかれましては,文化政策部会の委員をお引き受けくださいまして,厚く御礼を申し上げたいと思います。今後の審議をどうぞよろしくお願いいたします。
 前期の文化政策部会におきましては,本年1月に,「実演芸術家等に関する人材の育成及び活用について」の審議経過報告をとりまとめていただきました。文化庁では,この審議経過報告を各都道府県や文化芸術団体,大学,文化施設等に配付したほか,ホームページや各種会議などにおいてその内容について周知したところでございます。改めて審議経過報告のとりまとめにご尽力をいただきました委員の皆様に御礼申し上げます。
 今期の文化政策部会におきましては,文化の振興に関する基本的な政策の形成にかかわる重要事項に関し,日本文化芸術の継承,発展,創造を担う人材の育成などについてご検討いただきたいと存じます。私といたしましては,文化政策部会におけるご議論を十分踏まえ,今後の文化芸術振興施策の一層の充実に力を尽くしてまいりたいと考えておりますので,委員の皆様におかれましては,自由闊達なご議論をいただきますよう,よろしくお願い申し上げます。
 どうもありがとうございます。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,次に進めさせていただきたいと思います。本日の進行でございます。今期の文化政策部会の検討の進め方についてご議論をいただいた後に,これまでの文化政策部会においてとりまとめた「実演芸術家等」と「アートマネジメント人材等」との2つの審議経過報告に関して,関係機関からヒアリングを行いたいと思っております。
 それでは,まず事務局から配付資料のご説明をお願いいたします。
【清水芸術文化課長】
 ご説明いたします。それでは,資料1が委員名簿でございますので,資料2,資料3を中心にご説明をさせていただきたいと思います。
 資料2が今後の「文化政策部会の検討の進め方について(案)」でございます。趣旨でございますが,第2次基本方針,平成19年2月に定められました文化芸術の振興に関する基本的な方針におきまして,重点6分野の1つといたしまして,「日本の文化芸術の継承,発展,創造を担う人材の育成」が提言をされたところでございます。それを踏まえて,文化政策部会におきましては,人材育成に絞って審議をしようということで,平成19年度,アートマネジメント人材等,平成20年度に実演芸術家等,それぞれ1年ずつご検討いただき,それぞれについて審議計画報告をとりまとめていただいたといった経過でございます。
 今期第7期におきましては,前期と前々期に審議経過報告をとりまとめていただいたものに,関係からの意見聴取,ヒアリングなどを踏まえ,両者を併せて舞台芸術人材の育成及び活用という形で最終的な報告をとりまとめていただければと思っていす。検討の内容といたしましては,前回,前々回で検討いただいたもの,審議経過としてまとめていただいたものを,両方をとりまとめて「舞台芸術人材の育成及び活用について」という形でまとめていただければと思っています。
 開催の形式についてでございますが,審議経過報告につきまして既にご意見等もいただいているところでありますけれども,特に関係の深い文化芸術の団体,大学等から,今後2回ヒアリングを行いまして,そのヒアリングを基に委員の間で意見交換を行っていただき,さらにそれを踏まえて意見の追加,修正などを行い,報告書をとりまとめていただくという形を考えているところでございます。
 開催のスケジュールといたしましては5月に2回と,本日,第1回,そして5月29日に第2回で,それぞれ関係機関からのヒアリングと,それを基にした意見交換を行っていただきまして,それを基に6月には最終報告案の素案の審議をし,7月には最終報告案の審議をし,報告をとりまとめていただくといったスケジュールでお願いできればと思います。
 そして,ヒアリングの対象団体等でございますが,資料3をごらんいただきたいと思います。関係の団体の日程等ございまして,本日につきましては社団法人オーケストラ連盟,社団法人日本バレエ協会,社団法人現代舞踊協会,財団法人新国立劇場運営財団,そして,5月29日におきましては東京藝術大学音楽学部,日本大学藝術学部,日本オペラ連盟,社団法人日本劇団協議会,社団法人全国公立文化施設協会からという形でお願いをしようかと思っております。
 関係機関といたしましては,今回の人材育成,特に舞台芸術を中心にこの2年検討いただいたということがございますので,分野といたしましては,音楽,舞踊,演劇分野の統括団体からご意見を伺おうと考えたところでございます。また,人材ということでありますと芸術系の大学が担っておりますし,新国立劇場では3分野について研修所を設けるという形で人材育成を進めていただいております。それから,最後の施設の関係では,公立の劇場,音楽堂等の公立文化施設が人材の活用の場であり,また人材がそこで育っていくという場でもございますので,そういった施設の関係からも意見もお聞きしたらどうかということで,こういった団体からヒアリングをしたらどうかということで考えたところでございます。
 以下,資料としまして,資料4と5が実演芸術家等に関する審議経過報告と,それに対する意見,そしてその後,アートマネジメントについての審議経過報告と,それに対する意見募集の結果ということでございますので,ヒアリングの中でこれらの審議経過報告に関してご意見等をいただけるものと考えているところでございます。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 まず,文化政策部会の検討の進め方でございます。ただいま資料2に基づいて説明がございました。
 そういうことで,アートマネジメントの人材等の育成並びに活用ということも併せて2つを報告書としてとりまとめることになっております。
 また,資料3でございますが,これまでの文化政策部会においてとりまとめた2つの審議経過報告について,関係機関からヒアリングを行うということにしておりますが,いかがでしょうか。今ご説明のあったとおりのことをやってきて,今後,関係機関からのヒアリングをいただきたいというふうなことで進行を考えておりますが,いかがなものでしょうか。
 特段に意見がないようでしたら,進めさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。もしご意見等々ございましたら,その後,修正を加えるということで進めさせていただきたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,本日はこの文化政策部会においてとりまとめました2つの審議経過報告について,お招きをした関係機関の方々からご意見を伺いたいと思っております。その後に皆様方との意見交換を通じて審議を深めたいと思っておりますので,よろしくお願いします。

 <関係機関紹介>

 それではまず,支倉さんからお願い申し上げます。
【支倉常務理事】
 本日は先生方本当にありがとうございます。本日は意見を申し上げるというよりも,いわば応援のメッセージをお贈りすると思っていただければと存じます。
 審議経過には,「計画的・系統的に育成を推進する。能力を最大限発揮できる環境を整備する,これが重要な政策課題である」と掲げられ,以下縷々具体的に述べられているんですが,それらを簡単に整理すれば,実演芸術家等に関しての人材の育成は,第1に,個人としての芸術家をどのように育成するのか。第2に,その人をソリスト,個人アーティストとして活躍する,またはオーケストラ,舞踊団,劇団などに入って活躍するよう,どう育成していくのか。そして第3に,そのオーケストラ,舞踊団,劇団などの実演団体自体をさらに発展させるためにはどう育成するか,支援するのか,全体を総合的かつ有機的に考える必要があるのだろうと思っています。
 個人としての芸術家の育成,これは教育機関,学校において研修を積むということを基本にせざるを得ない。その中でどう才能を見いだし,どう育成するかということですが,この中身については今回の趣旨ではないでしょうし,私にもわからないことですが,一つ,学校の研修は集団アンサンブルということを基本にみっちりとやっていただく,ソリストとしての研修はそれ以外の個人レッスンなどで別にやっていただくことが必要だと私は思っています。あとは,経過報告にもあるとおり,専門ばかにならぬよう,また,真の芸術性が身についたものになるよう,広い視野に立った多面的な知識も学ばせる必要はあろうかと思います。
 そして,その人がソリスト,個人アーティストとして活躍できる才能があると見いだされたとき,また,その人がプロのオーケストラや舞踊団,劇団に採用されたとき,その人やその実演団体をさらに向上するよう育成しなければならない,また,支援しなければならない。そして,社会においてどう活用することができるのかということを次に考えなければならないと思います。
 ソリストや個人アーティスト,また,実演団体に入った人たちが生活していける環境に置くことが第一に非常に肝要なことと思います。しかし,生活していける環境といっても全く関係のない職種のアルバイトをやってしのげばよいということでないのは当然でして,芸術性をさらに磨く,さらに昇華できる環境ということでなければならないわけでございます。生活していけること,芸術性を磨けること,その両立が必要なわけです。
 実演家たちが生活していくことができて,なおかつ芸術を磨けるというのは,それは実際に舞台,ステージに立つということに尽きるわけで,その機会がどれだけ多くあるか,どれだけ場数を踏ませることができるかが一番であり,極めて重要と言えると思います。1回ごとの賃金がたとえ少額でも,回数をこなすことが経済的な潤いになるとともに,発表の場となり,それが芸術性の鍛練の場になるわけです。このような環境をつくるには,経過報告にもあるとおり,劇場,ホール,とりわけ公共ホール,施設との連携が極めて重要なことになると思います。
 その過程でこれも大変重要になる,また,必要とするのが有能なアートマネジメントの人材でございます。まず,地域に必要とする有能な実演芸術家,あるいは実演団体を見いだす必要がある。それをどう売り出していくか,有効に活用できるのか,経済性とのバランスをどう図るのか,実は課題も多いとは思います。しかし,このような連携ができれば,個人を育成できる,その人が所属した実演団体が活躍できる場を確保できる。そうした環境が整えば,その連携した劇場,ホール,施設は本拠として活用され,劇場,ホール,施設の活性化につながる。
 そして,その劇場,ホール,施設が地元,地域の人々に可能な限り低料金で鑑賞の場をたくさんつくる。このことによって聴衆や観客の育成にもなり,聴衆・観客の拡大にもなる。こうしたことをやるには,やはりアートマネジメントの素養,能力のある人材を配するのが必然となると思います。こうした実演芸術家,実演団体,劇場やホールなどの施設,アートマネジメント,そして地域の聴衆,観客の連鎖の行動をつくることができれば,人材の育成とともにそれを活用できるという好循環を生むことになるでしょう。具体的にやるべきこと,あるべき姿をバラバラに列挙するのではなく,まずはこのように連鎖し有機的に作用させるというストーリーにして,その上で個々の問題点などを出すというふうにおまとめいただければ大変ありがたく,理解できるのかなというふうに思います。
 ただいま申し上げましたことに具体的に役立つと思ったことがあります。それは今回の補正予算,真水で15兆円ですか,文化庁が案として提案した地域文化芸術振興プランでございます。各都道府県に1億円を上限に配付して,企画は都道府県がやって,地域の芸術文化団体や芸術家を活用することに使ってもらおうというものですが,このようなことこそがぜひ必要なことと思うのであります。今年度限りの補正予算ではなくて,もう少しブラッシュアップをして,毎年継続する事業にぜひともしていただきたいと思います。
 国は黙って予算を出す,各都道府県はそれを受けて地元地域における必要度に応じた文化芸術に使う。これが軌道に乗れば,先に申し上げた実演芸術家や実演団体の育成にもなり,その活用にもなりますし,企画や実施の過程において,アートマネジメントの人材,素養が必要とされますので,その育成・活用にもなります。劇場,ホールなどの施設の活性化にもなり,聴衆,観客の拡大にもなる,まさしく一石何鳥かになるのではないでしょうか。ぜひともよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 継続ということでございますね。各都道府県に対する1億円ということでございます。ありがとうございました。きょうの新聞にも,それがしっかりと載っておりましたですね。その辺のことです。
 支倉様,ありがとうございました。
 4人の先生方の発表後に意見交換とさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いします。岡本様,よろしくお願い申し上げます。
【岡本副会長】
 私は,宿題としましていただいた19年度,20年度のアートマネジメント,それから育成,それを読ませていただいたら,随分私が思っていることを取り上げてやってくださりつつあるのかなというふうに思っておりますが,現在,クラシックバレエは,本当にコンクールというのが物すごい数,日本で増えてまいりまして,それに出演するダンサーの数も増えていますね。それで体力,体型,それからけいこ方法,やはり私たちの時代とは違い大分考えられてきたので,皆さんすばらしい才能のダンサーたちがいっぱい出てきているんですが,やはりその芸術家たちが,このコンクールの後に行くところはどこなんだろうかということをまず考えて,働く場所がないということで,先ほど支倉さんがおっしゃったように,劇場とか色々なかかわりあいがありますが,働く場所をつくることが私たちの責任ではないかと思いますが,やはり個人の集団でやるのには限界があり,いろいろな方たちがカンパニーと称しますが,そのカンパニーのあり方も外国とは全く違います。働く場所ではない。踊る場所ではあるかもしれないが,それで生活していく場所がないということと,それから,これはオーケストラとか演劇の方はそうでしょうが,やはりどんな職業でも検定試験とか認定試験とかがあるんですが,バレエというものは,早い話が3日やって営業能力のある方はすごい学校を開いてしまったり,やはりその免許というんでしょうか,この認定というものをもう少し考えていかなければいけないのではないかなということ。今,何千人も出てくるコンクールの人たちはどこへ行ってしまうんだろうか。いい才能は外国へ行ってしまうのだろうか。でも,外国でも今かなり厳しい経済状況のところが多くて,やはりいい才能は日本で働いてもらいたい。そういうことと免許のことなんかは,我々バレエ協会とか,文化庁の方々と考えていきたいと思っております。
 私が言いたいことはその2点です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 人材が今後どのように展開していくかということだと思います。
 続きまして若松様,お願いいたします。
【若松理事長】
 若松美黄と申します。現代舞踊協会を代表してということなんですが,そのように舞踊はつながっていますので,何が現代舞踊で,何がバレエで,何がコンテンポラリーで,何が日本舞踊というのは必ずしも明確な基準はないのですが,人材育成ということから話があるとするとすれば,人材育成の問題については,西川流は,歌舞伎で地方を巡業していたときに同時にその地域の名流,お嬢様とか奥様とかが習って,歌舞伎を学習といいますか,そういうようなのがついて回っているわけです。だから,ダンスそのものと教習,舞台活動と教習というのは,日本の場合には歴史の最初からくっついているということであります。
 ご存じのように,歌舞伎ということをいうと,最初に旗みたいなものができたと。要するに商社です。歌舞伎というのは一つの商社ですから,丁稚もあれば,その商社のいろいろな慣例をとったわけです。そのとった中にあるのが,要するに,のれんを長く持っている人が次の支店を開くような格好になっていると。その歌舞伎の中で,朝日新聞の中では,「日本舞踊」という言葉は使っていなくて,「歌舞伎舞踊」という言葉を使っているようですが,ともかく歌舞伎から出た日本における教習システムが一つの日本舞踊という組織になっていて,洋舞の,つまり1920年代あたりから外国に行き,日本でも何かそういうことを行おうとした石井漠先生 などがおられます。それと同時に,教習ということに日本の場合にはウエートが非常にかかってきて,よくも悪くも教習する,教習所で立ち居振る舞いといいますか,そういう身体表現を,ダンスを習うことによって特に女性が美しく姿を見せることができるというようなシステムに発展して,それが定着していた日本舞踊を相手にしながら,いわゆる洋舞といいますか,バレエか何かやってきたときに,一番生活をするのが,公演芸術でお客さんをそう集めるのは難しい時代には教習というふうになったんです。
 その教習の根底にあるのは商社と同じようなもので,いわゆるお中元とかお歳暮だとか,そういうふうなものを含む一つの文化体系といいますか,欧米よりも新しくできたシステムだからニューシステムといいますか,日本型システムというので,諸外国のバレエ団が倒産寸前なのに,案外日本のバレエ団はお金があるというのは,舞踊学校を開いてそこで収益があるという単純な説明で,諸外国ではそういうシステムが全然セパレートしていますから,日本的な状況とはちょっと違う状況である。
 ところが,そういうやり方の中で,特に一つの分け目が1970年の万博で,それ以前と以後とで若い人たちの生活の仕方が決定的に変わってきました。その以前まではお金ということが表面にそれほど強く出てきませんが,日本では1970年のあたりから小劇場運動と,それから大きな舞台も行う。僕らの世代で言えば土方の舞踏だとか,それからコンテンポラリー系統の小劇場運動というのが起こってきました。小劇場運動というのはその時代に,現代舞踊協会のほうは70年代の半ばぐらいまで大勢の人たちが舞台でバレエに負けないように,たくさんの人が集まり,たくさんの観衆が集まり,そういうような公演が助成金の対象になると思ったのか,あるいはそれがカッコいいと思ったのか,そういうシステムをずっと持ってきたのに,70年代に入ってコンテンポラリー系,あるいは舞踏,そういう名称はまだなかったのですが,前衛風な小劇場運動が起り,小劇場の人たちというのは,それほど教習そのものに目がない。変な格好をして,裸になって町を走り回るというような人に,うちの娘を習わせたいという人は決して多くない。非常にシンプルな象徴的な言い方ですが,そういう意味でコンテンポラリーの人たちは何かワークショップとか,そういうようなことで生活を考えるというふうになります。
 それの次世代のコンテンポラリー,もう70年ですから一昔前ですよね。その人たちはどういう人たちが出てきたかというと,70年の真ん中ぐらいにコンペティション,コンクールが,さっき岡本さんが言っていたように,色々な種類のコンクールがあります。そのコンクールのときに出てきた,大学で育った人たちが当然その中にいて,それがいわゆる従来の舞踊でない舞踊みたいなものを,学部に行ったらこういうことをやっている,日本ではこういうことをやっていると,その差異が明らかになって,その人たちは急に大劇場で公演をやるというわけにはいかないんですが,小劇場運動というのは自然に発達した。
 片方のほうで教習所はないと。2つ目の方向で,仲間内で,つまり70年代前だとある人が公演をやりたければ先生のところでお願いして,照明とかスタッフを全部頼んでもらわないと,若い人がそういう先生方のようには公演できなかった。しかし,70年代以後になると,若い世代の人たちが同じ大学の中で照明だとか,それからデザインとか,そういう友だち同士ができるようになることのほかに,よその大学,外国の大学とも非常に容易につながるので,日本で公演するばかりでなくて,外国へも行くようになるという新しい何か形ができてきます。
 その形は次の時代につなげる,つまり一番初めに話したような,日本舞踊が持っているような教習システムとはまた違うシステムになってきて,それが70年代から結構いい仕事をする若手も出てきまして,小劇場から,それとまた映像なども加わる,それからマルチメディアの要素が加わるなど,少し違う分野の人たちも加わったのですが,教習システムとしてはワークショップを重ねる程度で,技術の向上というのは余りそこの中では見られなく,それは行き詰まってくるわけですが,今,結局,私もコンテンポラリーだと言っているので,案外バレエのプリマクラスの人が熱心にやっていて,昔はもっと下手でやっているものが,時代が変わってきていますが,教習システム等はつながっていないというところがよくも悪くも一つの現状で,今ここの池野さんが書いている中でコミュニティダンスと,名称は最近コミュニティダンスと。初めから,一番最初は多分ラバーセンターで30年ぐらい前にコミュニティダンスをやっていて,日本の創作みたいなことをやっていると言って,その時代に日本人は余り関心がなかったというか,いつもやっているようなことみたいだったんですが,最近ご存じのように英国で40億の多大な助成金をもらっているでしょう。だから,コミュニティダンス側のほうの助成金からもらっているパフォーマンスがどうも有利になってきていまして,私も少し前までロンドンにインビテーションされていたんですが,何か財源のシフトが,政府の側でも英国あたりは変わってきていまして,コミュニティダンスというのには助成金を出すのが一般庶民のほうに直接よい影響があればいいというふうに考えたどうかわかりませんが,30年の歴史の積み重なりから英国のほうあたりはコミュニティダンスが。
 しかし,それは日本ではもっと昔のお祭から全部コミュニティをつくってやっていた,今だって北海道だとよさこいソーラン,あれは北大の学生が全部企画して,今は衆議院解散みたいに,立候補するんだよね。というふうに非常に組織的にマネジメントを考えた人が今,日本中のもう一つの新しいダンスの文化をつくっている。
 現代舞踊協会という石井漠先生から営々とつながってくる組織と同時に,1つは地域の人たちと結びつくさいの要素を持った人のグループ,それから時代とともにコンテンポラリーと言われている中小劇団から生れたグループ。そして,さらに悩ましいところは,地域がどんどん独立してきて,その地域によっては国民文化祭に予算をかけていたり,何かした立派な公演になっていて,そういうものとどうやってドッキングするか。つまり,現代舞踊のほうではパフォーマンスとして従来のような形態を持つと同時に,広い視野で現代の動いている動態的な状態をどうやって把握するかということが一つの課題で,いろいろな試みをしています。
 例えば,東京から離れたところの劇場で今まで東京でやってきた公演をどんどん打っていっちゃうとかいうふうな具体的なことをやっています。それから,地域の会報も出しておりますし,ここ1年ぐらいにはやりますが,必ずコミュニティで活躍していらっしゃる,コミュニティでの活躍というのは,小学校の子どもを遊ばせて,その夜はみんなパフォーマンスをして,祭みたいなものをやっているようなグループの紹介記事を毎回書いております。
 それがこの1年ぐらい変わってきて,みんなの意識もちょうどいいことにというか,悪いことにと言えばいいのか,今,公益法人の組織替えがありまして,あれは芸術団体には最初はとても迷惑なんですが,場合によっては公益法人に脅しをかけて組織を替えてしまうということもできるので,何か一つ違いを持つ方法を考えていかなければいけないという以外にチョゾクしているので,このパフォーマンスについては,今言ったような広範な動き方を把握しながら世界と協調させていくというのが一つだと思います。
 それから,2つ目のマネジメントというのは,たまたま文化振興基金の委員をやっていましたけれども,文化経済学会というのを立ち上げた一人で,それも余り感心なかったんですが,そのときにシンポジウムに出席したまたま引っ張り出されたので,そのメンバーになって今日まできておりますが,アートマネジメントという前に,やっぱり僕らとしてはプロフェッショナルとアマチュアという境界線が,さっきの教習所という話ですが,教習所のすごくうまい,日本舞踊というのは年に9回ぐらい公演をやるわけです。年に9回ぐらいやるために最高に精練された芸を披露するわけです。プロだと年に少なくとも,アジアの舞踊団のプロフェッショナルでは大体90,フィリ交替で90日ですかね。120から90ぐらいの年間公演を打っているわけですね。そうすると,プロフェッショナルというのはあるレベルを落としてはいけないというような意味も同時にあるわけですね。技術が高いというよりも,1年間もつ人がプロなわけですからね。それから見ると,日本舞踊のシステムというのは1年に1回限り,つまり,日本の芸能というのは本質的に,リプレゼンテーションではなくて,プレゼンテーションですね。プレゼンテーションの要素を持っている公演を,日本では日本舞踊のすごくその日,1年にたった1回のためにほとんど1年間,リハーサル,リハーサルとかけていくようなシステムと,そういう一般の人たちでコマーシャルベースと言うと語弊がありますが,コマーシャルに近い形のマネジメントの格差は舞踊の場合どうやって調整するかというのが大変難しく,今でもこれは難問題で,現代舞踊協会のほうでもマネジメントというあれをつくり,それからプロフェッショナルな人たちをその都度招聘したりなんかするのですが,成果が余り上がっていないですね。つまり,観客をおもしろがらせるようなものをまずつくらなくては,そんなマネジメントだけ幾らつくったってだめだという,その本質のところを,みんなをおもろしがらせるようなもの,見れば腹を抱えて笑うような,あるいは,みんな「ワーッ」というようなものというのが仮にあったとして,どうやってそれはみんなにわかってもらうのか。そうするとマネジメントなんですが。
 つまり,マネジメントを介してそういう理論のまだ前段階でしているのが問題点で,一応バレエ協会もそうだし,現代舞踊協会もそうですが,ある役職の方が必ず発生していまして,その人たちがマネジメントについて,チラシ1枚にしても本当に時間かけて行うのですが,でも外側から見て,これは何のチラシかわからない。現代舞踊と書いてあって,現代舞踊って何だかわからない人にこれを見てわかるのかといつも言っていますが,その基本的なところからまだまだマネジメントという,広報と言えばいいのか,日本の文化と言えばいいのか,日本人のパフォーマンスに対する体質と言えばいいのか。
 外国で公演していますと,みんな楽屋の出口が酒場になっていますから,「おまえさっき踊っていたね」なんていうようなことから普通に話ししていて,何だかその人と話していると,ちっとも舞台とか踊りとかわかっている人ではなくて,全くその辺のおじさんなんですが,その人が「何だかさっぱりわからなかったけど,また来年来るよ。いつ来るの」って。これは日本人から聞けない言葉ですね。日本人は「すばらしかった。あそこはすばらしかったから,また今度いつ来るの」と言いますが,つまらないから,つまらないということをさかなに酒を飲むという習慣は日本にはまだないので,本当にマネジメントの根のところの観客というもので,みんな役はつくり,そういう人たちもいるんですが,動態的に動くためには,やっぱりその辺の文化をみんなで考えていかなければいけないなというような現状に立ちすくんでいるという状態です。
 ありがとうございました。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 現状としての現在のお話をいただきまして,ありがとうございました。
 それでは,角田さん,お願いいたします。
【角田常務理事】
 私の話は,かなり実務的過ぎるかもしれません。事前に配られました文化政策部会の「『実演芸術家等に関する人材の育成及び活用について』審議経過報告」というのがございますが,これを読ませていただいて,その中の9ページですけれども「新国立劇場に求められる役割と取組」ということで整理していただいています。この点について,私どものコメントというものを申し上げたいということでございまして,一言で言えば,まさに我々が求められている役割というのはほとんど全部盛り込まれているということでして,要するにこれをいかにして実現していただけるのか。予算をつけるとか,あるいはそのほか,どうやってご支援いただけるのかなというのが最大の問題であろうかというふうに思っております。9ページの真ん中辺の?)に,役割と取組ということで,ここに「新人育成だけではなくて,現職者研修においても人材育成への積極的な貢献が求められる」ということが書いてございます。これについては芸団協でございます。社団法人日本芸能実演家団体協議会というところですが,ここが現役の俳優のためのリフレッシュコースというのを行っておりまして,新国劇場としてもこのコースの運営に協力するという形でご協力してということでございまして,去年は7月,それから,ことしの3月にもやはりそういうコースを行っておりますということです。
 それから,新国立劇場が持つ3つの研修所につきまして,いろいろ課題が書いてございます。まず,オペラ研修所については,「研修生の高齢化への対応を検討することが求められる」というふうに書いてございますが,この辺はちょっと意味がよくわからないというか,新国立劇場のオペラ研修所は音楽関係の大学並びに大学院程度の実力を持つ人たちをさらに教育をするということで教育しており,例えばことしの4月に入りました12期生では,23歳から28歳ぐらいの研修生が入ってきております。そういうことで,特に高齢化への対応というほどのものでもないのではないかなという気がしております。
 それから2番目のバレエ研修所ですけれども,これにつきましても,「新国立劇場のバレエ団員の育成だけではなくて,日本のバレエ全体のものとなるよう工夫する」というふうに書いてございますが,これはどういうふうに工夫すればいいのかというのがよくわからないところでございまして,新国立劇場のバレエ団員になるためにも,研修生であってもストレートに入れるというわけではなく,一度オーディションを受けて,それに受からないと入れないというシステムになっておりますので,そういう人たちはほかのバレエ団にも行っていいわけですから,特に新国立劇場のバレエ団だけのためにやっているということではないということでございます。
 それから,17歳からの募集ではなくて,十五,六歳から始める,あるいは研修期間を2年から3年に延ばすといった提案がございます。これについては,既に試験的に実施しておりまして,21年度,今年度から15歳並びに16歳を対象とする研修予科生の講習を始めまして,女性5名,男性1名,6名が入って,既に教育を受けております。入所式というのがありますが,そこでこういう予科生と本科生を見ますと,やはり随分体格も違うし印象が全部違いますね。やはり予科生,15歳とか16歳という,若いころから訓練すると,それだけ効果も大きいのかなというふうに考えております。一応,予科生の研修期間というのは2年ということになっておりますけれども,牧芸術監督は,特待生として1年間で例えば本科に入れるといったようなことも考えたいというふうに言っております。ですから,そういう意味で研修期間が2年ということではなくて,あるいは3年もしくは4年ということもあり得るということでございます。
 それから,3番目の演劇研修所につきまして,「演出家養成コースの設置,あるいは,スタッフコースの併設を検討する必要がある」というふうに書かれております。これについては既に検討しているところですが,いずれにせよ予算というか,お金のかかる話でして,我々が試算しますと,例えば演出家コース1つつくるのに,やはり年間1,500万円ぐらいかかる支出をしなくてはいけないというような試算も出ておりますので,こうしたものをどうやって行っていくのかと。それから,欧米では特に演出プランのコンペを募集して,そういうものを採用するというようなシステムをとっているところもあるということなので,そうした点についてもぜひ今後,検討してまいりたいというふうに思っております。
 それで,特にこの場を借りて申し上げたいのは,研修施設の充実という点でございまして,去年の9月に第5回部会のメンバーの方々に演劇研修所の施設をごらんいただいたんですが,それでごらんいただいた方はよくわかると思いますが,元幼稚園の宿舎を使っています。ですから,トイレとか椅子もそうですが,みんな小さい。何かガリバーが小人の国へ行ったような感じの非常に妙な施設です。それで,我々としては海外からもぜひ見たいというお客さんが見えたときも,そこを見てもらうのは恥ずかしいなというぐらいのものです。それでもコストとしては年間1,500万円ぐらいかかり,演劇研修予算全体の2割ぐらいはそれに消えているという状態なので,もう少し恥ずかしくないような施設を得られればというふうに強く感じているところでございます。
 それから,各研修所間の交流促進という点では,我々は意識してそれを進めていまして,特にオペラとかバレエの公演について,演劇研修生が司会あるいは進行という形で参加するということを積極的に行っております。
 それから最後ですけれども,修了生の俳優活動の支援ということが非常に重要な問題でして,演劇研修生は第1期生が20年3月に終わって出てきたわけですけれども,そういった15名の生徒たちの俳優活動を支援するということで,NNTアクターズというものをつくりまして,卒業生の中でも5名を選んで登録をして,そうした人たちを各劇団等へ売り込むといったような努力をしているところでございます。
 それから,アジアの実演芸術家等も対象として招聘することを検討する必要があると書いてございますけれども,研修生の中にも韓国人がおります。それがまた非常に優秀です。驚くぐらい優秀で,また非常に将来性があるというふうに考えておりますし,新聞等でも掲載されましたけれども,「焼き肉ドラゴン」という日韓合同の作品等が非常に人気を呼んで注目されたということで,今後とも新国立劇場としてはこうした努力を進めていきたいというふうに考えております。
 そのほか,子どもの鑑賞機会の充実,それから各地域での鑑賞機会を充実させるといったことにつきましては,子どものためのオペラ劇場,あるいは高校生のためのオペラ鑑賞教室,バレエ教室等々を行いまして,その普及に努めていく。それから地方公演につきましても,富山,松本あるいは大坂等で公演をしていくというふうな努力を行っております。
 大体,新国立劇場の活動に関連してはそういうことでございますけれども,8ページのところで文化庁の新進芸術家海外研修制度についてということで,下から2番目のポツに書いてございますが,「研修期間中に一時期国は認められないとする条件については,見直す必要があると考えられる」ということですが,まさにそのとおりだと思います。新国立劇場からも2人この制度でイタリアに行っておりますが,別の人はこういう条件があるので申請をしなかったという例もございます。ぜひその辺も考え直していただきたいということでございます。
 以上でございます。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。新国立劇場の実態も含めて,ご報告をいただきました。
 今の4人の先生方も含めて,いろいろフリートークをしていただきたいと思っております。田村委員,いかがですか。
【田村(孝)部会長代理】
 支倉さんがおっしゃった有機的にというお話ですけれども,これは本当に私もそう思っておりまして,私は公立の文化施設にいますものですから,実はアマチュアのオーケストラが多いところというのは,プロのオーケストラがいないそうです。それが正確なのかどうかわからないですが,データ的にそうではないかと言われておりまして,静岡なども非常にアマチュアが,全国で4番目ぐらい盛んなオーケストラの数がたくさんあるところなのでございますけれども,やはり本当にいいものに触れる機会が非常に地方は少ないと,どの分野もそうでございますけれども,それがやっぱり一番,プロとして活動の場がとおっしゃいましたけれども,そういう意味で先ほどありました文化庁の1億円が有効に使われたら,それは私もきょうは伺おうと思っていたのですが,どこにそれは配付されるのかというのが気になっていますが,それが有効に,特に地方は本当に大変でございますので,こういうことが継続的にあったら各芸術団体,新国立劇場の公演を買うにしても結構大変なのでございます。東京だったら簡単なことなのでございますけれども,地方は大変というのは事実でございますので,これは本当におっしゃったように続けていただきたいと思いますし,もう一つお伺いできれば,オーケストラ団体が今非常に大変でいらっしゃいます。それで,要するにオーケストラをマネジメントするということが日本の中できちんとどういうことかという,専門家っているんでしょうか。
【支倉常務理事】
 そこら辺は,実はアートマネジメントについてもお話ししなくてはいけなかったのかもしれないですけれども,オーケストラができた経緯が,日本の場合は楽員が自分たちでオーケストラをつくって,その後で事務局ができてというのが多いいです。だから,私がいた新日本フィルというところも,そこで30年やってきましたけれども,そこができたとき事務局に私1人という,そこから始まって今日があるわけですけれども,だから,確かに専門的にマネジメントをやっているというようなところはなかなかなくて,経験則になります。ですから,おっしゃるとおりなんで,勉強させるかというと,今は事務局は忙しい。忙しくて少ないから,そういうことかできないというのが正直言って現状です。その中で,そうは言っても競争というか,勝てなくてはいけない。勝つ負けというのはおかしいけれども,とってみればみんな日本オーケストラ連盟の中で30団体が今は加盟していますけれども,こうやって会議するときは仲よくやっていますけれども,一歩外へ出ればみんな競争相手でございまして,いろいろそこで自分だけは何とか頭一つ抜け出さなくてはならないという必死の努力はしているんだけれども,そういうものは確かに先生がおっしゃるように専門家というのは,いわゆる学問的にきちっと勉強している人はいないでしょうね。だけども,そこでは先ほど言ったように経験的なこだわりでやっているんだけれども,それが,だから何らかの形でもうちょっとそれが勉強できる,再教育というか,それも今,課題には出ていますでしょうけれども,そういうようなことができていければもうちょっと変わるのかなという気はします。
 それから,我々は例えばシカゴであるとか,そういうでかいオーケストラが日本に来ていますから,来たときにできるだけ事務局長をつかまえて,懇談会をやって色々お話を聞くんですが,それはもうご存じのように桁が,0が幾つ違うんだというぐらい違うし,自分たちで集めている。それから驚くのは,これは直接関係ないけれども女性パワーというか,シカゴのクリーブランドか,どこだったか,要するに女性の事務局長というのが結構多くて,それがすごいやり手で,たくさん金を集めているというのがもう世界的になってきているというところがあるので,日本で事務局長を女性がやっているところがオーケストラであるかといったら,ないんです。ご存じのように楽員で今,女性のほうがどんどん多くなっているという,一方であるんだけれども,みんなそんなことで,ちょっととりとめがないんですけれども,要するに先生おっしゃるようなマネジメントという専門的なあれを持っているというのは,なかなかいないというのが現状ではないかなと。
【宮田部会長】
 経験値もありますね。ご自身の中の経験値から踏まえていって現在があるということで。
【支倉常務理事】
 そうですね。もちろん,それしかなかったからやってきているというところがあるんだけれども,それがやはりいけないとは思います。
【宮田部会長】
 アートマネジメントという言葉自身がまだなかった時代からスタートしているわけですからね。
【支倉常務理事】
 そうです,全然なかったというか。
【宮田部会長】
 定着していなかった。
【支倉常務理事】
 オーケストラといったら,欧米では当然のことながら,別に何も説明しなくとも,もちろん優秀な楽員は七,八十人,最低でもいて,それからきちっとした事務局があって,その中にきちっとしたマネジメントをする人がいて,それでライブラリアンもいて,ステージマネージャーがいて,それからホールがあって,そこで練習も演奏会もやっているという,そこまでは何も説明しなくたってオーケストラというのはそういうことだったはずですけれども,そのころの日本といったら,練習場を持っているオーケストラがどれだけあったかといったら,ほとんどないぐらいな状況でございますから,これから,僕もちゃんと申し上げなかったんだけれども,オーケストラだけでいうと,やっぱり各ホールのフランチャイズというのは,今後の生命線を分ける一つの大きなあれになるのかなという気はしているんですけれども。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 山脇委員,どうぞ。
【山脇委員】
 私は新任ですので,今まで議論されてきたかどうかわからないので重複しましたら申しわけないと思いますが,今のお話にもありましたように,人材を育成することの一番大切なことは,働く場所があるかどうかだとやはり思います。場所がなければ,プロフェッショナルとして仕事ができない。私も音楽やバレエなど,これまで深くかかわってきたこともありますのでよく知っておりますが,働く場所がない,舞台がないということは,仕事は本当に,先ほどもありましたように,リハーサルであるということが多くて,人を教えるというようなことで生計を立てているという方がほとんどだと思います。
 その働く場所がないこと,それがどうしてかと,海外のことなども見てみますと,今お話がありましたが,常打ちの小屋がないということだと思います。日本でやはり歌舞伎と宝塚は,毎日のように公演を常打ちの小屋を持ってやっているということで,あの方たちは,色々な収入の格差はあるとは思いますけれども,プロフェッショナルとしてやっていける。そのほかの舞台芸術も,新国立劇場ができましたけれども,基本的には常打ちの小屋がないというのが日本の舞台芸術の特徴で,そうしますと,常打ちの小屋がないということは公演をするのに小屋をいちいち借りる。高いですし,それは1年に数回しか借りられない。そうすると,仕事として舞台に立つということで成り立たない。そうなると,必然的に人材も育たないわけですね。仕事として成り立たないことを,なかなか目指せないということもあると思います。
 ですので,教育機関さえあればいいかということではなくて,本当に根本的なところから考える。今までの議論をもしかしたら覆してしまうのかもしれないんですが,根本的なことを考えないと人材というのは育ちにくい。先ほどお話がありました日本舞踊みたいな,自分からお金を出して舞台に出るというような形が,日本の舞台芸術のベースにあったものですから,それで今まで成り立ってきてしまいましたけれども,そういった意味で仕事を通して成り立つためにはフランチャイズという方法もあると思いますが,常打ちの小屋をつくって毎日のようにそこで踊れる,演奏できる,芝居ができるというようなことがないとだめなのかというようなことを思っております。
 それからもう一つ,新国立劇場の方にお聞きしたいんですが,ただ,それでも日本は非常に民間活力で頑張ってきたと思いますが,民間活力で頑張ってきたところに税金を使って年に数人の方を研修するということの意味合いというのがどういうことなのかというのを,今さらながらなんですけれども教えていただきたいと思っております。
【角田常務理事】
 非常に難しい質問で答えにくいところですけれども,民間活力で頑張ってきたとおっしゃいましたけれども,民間資金は全体の予算の中の2割弱です。逆に割弱しかない,政府資金が大体5割ぐらいです。これは新国立劇場の運営全体についてということですね。
【山脇委員】
 民間活力の質問ではないです。
【角田常務理事】
 それで,その予算全体を配分して,そして研修に幾ら,そして政策に幾らというふうに使っているわけです。それで,研修につきましては,まさに新国立劇場の役割というのがあると思います。つまり,いわゆるオペラシンガーとか演劇のアクターとか,そうした非常に優秀な人たちを育てるというのは,非常に重要な新国立劇場の役割だというふうに思っています。そのために予算を割り当てなくてはいけない。割り当てる予算は,国費は5割,民間の資金が2割ということになっておると。違いますか。
【山脇委員】
 私の言っている民間活力はそういうことではなくて,例えば岡本さんなんかが行っていらっしゃるバレエ団とかいろいろなバレエスタジオ,そういったところの民間が人材育成をやっていることがほとんどですよね。これまでの。その中で年間数人,10人以下の人たちをピックアップして税金で育てるということの意味合いがどういうことなのかということを申し上げているんです。
 私は海外のバレエ団とかオペラのことも少しは知っておりますけれども,例えばパリのオペラ座バレエ学校というのは,10歳ぐらいから国立でずっと育てている,ボリショイもそうです。特に西洋のバレエ団,オペラもみんなそうだと思いますが,そういう人材育成とは違って,ほぼでき上がったところを,ほんの年に10人ぐらいの研修生を税金で教えることの意味合いというのがどういうことかというふうにお聞きしているんです。
【角田常務理事】
 トップレベルの人材育成を行うためには,ある程度基礎的な条件がないと,なかなかそれ以上に育ちにくいということがあると思います。例えば,バレリーナにつきましても,今,15歳ぐらいから予科というのを設けて,もっと小さい中学卒業見込の女性から育てていこうということをしているわけですが,それも確かに5名とか6名程度です。ただ,そういう段階から育てていって初めて世界に通用するというか,そうしたバレリーナを育成することができるのであって,また,オペラについてもそうですね。オペラにつきましても,ある程度基礎がないと。
 例えば10代のオペラシンガーを訓練するというのだと,非常にその成果が期待できないというふうに先生方は言っております。それは,イタリアとかフランスの先生方も,やはりそういう形で,10代の人たちを教育するというのは非常に危険だという言い方をしています。それで,新国立劇場としては,オペラの場合にはある程度基礎のできたシンガーを育てるということで,音楽大学卒業並びに大学院の学生程度の人たちに対して教育していくということです。本当は人数としてもっと増やせればいいですけれども,それは予算とのかねあいでそれほど増やせないということだろうと思います。
【山脇委員】
 つまり,とても中途半端な研修の仕方ではないか。角田さんを責めているわけでは全然なくて,バレエにしても本当に10歳ぐらいからやらないと駄目です。途中まで育ったところを,15歳にしても16歳にしても,やっても駄目だと思います。
【宮田部会長】
 基本的な話をなさっているわけですよね。そこに税金とか何とかと絡むものだから不思議な言い方に聞こえてしまいますけれども,多分違うと思います。教育制度そのもの,人材育成そのものの話をするときの話の中の一つの例として,その年齢でいいかどうかというふうな部分だってある。
【山脇委員】
 それで,年齢だけではなくてですね。
【宮田部会長】
 経験値も含めてね。
【山脇委員】
 はい,人数も含めて,それで,それはまたその後の働く場所がどこかということも含めて根本的に考えないと,今までの議論があるかと。
【宮田部会長】
 それは常打ちの話からずっとつながっていることだったんです。いわゆる人材育成の根本論のお話を山脇委員はなさってくださっていると。よくわかります。
【高萩委員】
 この4人の方に来ていただいてお話をおききしました。もちろん,すばらしい人選で又,興味深い人選になっていると思います。人選というのは,お人柄だけではなくて団体なんですけれども,つまり,コンサートというか交響楽団の団体というのは,唯一,日本ではプロフェッショナルなんですね。さっき大変だと支倉さんはおっしゃっていましたけれども,プロの事務局員がいて,プロとして団員を抱えていらっしゃる。バレエとモダンダンスに関しては,これは頑張っていらっしゃるけれども,プロフェッショナルという形では存在されてないわけですね。新国立劇場というのは,唯一,日本で現代芸術に関してのハードとして存在している。つまりそれを今後どう組み合わされていくかというのが多分一番の問題で,今回の審議会に関しては,かなり具体的な話をしてくれというので,突っ込んだ話をそこへ入れてあるんですね。それに対して各分野の方から比較的温かい言葉をいただいたんですけれども,「これではまだだめなんじゃないか」というような言葉のほうがもっと実はいただきたかったかなという気がしています。なぜかというと,各分野ごとにやはり今後5年10年というんですか,本当にこれで次の才能が育つのかということについては多分,皆さんのほうが一番心配されていると思いますので。
 つまり,この10年,15年というのは,1990年以降のこの19年,実は日本の芸術界はその前と比べるとものすごくよくなったわけですね。前を知っている方たち,我々にとってはすでに今は,何かすごくよくなりつつあるのではないかという気がするんですけれども,今実際にこれから花開こうとしている,才能を持っている人たちにとって,決して今,欧米と比べたときに,日本はそれほどいい状況ではないというのは確かだと思います。これから彼らは,海外の人たちと競わなくてはいけない。グローバル化というのは物すごい勢いで進んでいますから。そう思うと欧米と比べるとやはり日本の条件というのは非常によくないと思いますね。
 新国は頑張っているかもしれませんけれども,まだ全然だめだろうという気がするのです。
つまり,はっきり言ってバレエはこれじゃプロにはなれないだろうと思います。このぐらいの生ぬるい答申ではですね。僕は何回かバレエについては,本当に日本の中に北方国立バレエ団,九州国立バレエ団とか,4つぐらいつくるぐらいの気概がないとだめだろうと思うのです。それくらいのことがもし本当に5年,10年後に,あればいいなと思います。今の日本の多分たくさんあるアマチュア,それから非常に才能がある人たち,さっき岡本さんがやはり生活できないとか教えているというようなことを言っていましたが,本気でバレエの芸術というのをきわめるため彼らがというか,若い人たちがああいうふうになってみたいというふうになるためには,今何をしたらいいのかというのをもっと強く言っていただければと思います。
 モダンダンスについては,若松さんは,それはずっとベテランでやっていらっしゃるので,コンテンポラリーダンスとどういうふうに組んでいくのかとか。それから,新国立劇場とかほかの公共劇場に対して,何か注文がないのか,我々のところでは新潟の金森さんのヒアリングをしまして,すばらしかったわけですよね。ああいう1団体,コンテンポラリーダンスですけれども,地方の劇場がフランチャイズというか,レジデンスのカンパニーを抱えたという例を聞きまして。ただ,これが1例だけないというのはなぜなのかというのがよくわからなかったですね。そんなにすばらしいのでしたら,もっと増えてもいいはずなのに,もう5年ぐらいたっているかと思いますが,1つしか起こらない。それに続くものが起こらないのはなぜなのかということですね。
 新国立劇場については,もちろん頑張られていると思うんですけれども,つまり新国立劇場が舞台芸術業界から褒められない理由というのは何なのかということが,もう少し角田さんあたりから指摘が欲しいです。頑張っているけれども,やはり頑張ってないんですよ。日本の公共劇場の中から完全に浮いてしまっている。つまり日本の公共劇場,それから日本の芸術家団体たちが新国立劇場でやりたいと,新国立劇場と組みたいんだというふうになっていかない状況というのはなぜなのかということについて角田さんがわかっていないとだめだと思います。一人で頑張っていますというのでは,新国立劇場は済まない状況だと思います。
 単なる民間劇団だったら全然構わないですよ,一人で頑張っていればいいのですが,やはり日本を代表する劇場として存在する新国立劇場が,文化庁がこうしてくれれば,こんなにできるとか,何か色々な理由があるのだろうと思いますが,そこをぜひここで言ってほしいなと思うので,ここだけは言っておきたいというのをぜひ言っていただければ,それを我々としても答申に書いて,「長官,ぜひやってください」というのを言っていきたいなと思っておりますので,いかがでしょうか。
【宮田部会長】
 山脇委員がいいきっかけづくりをしてつながってきました。ぜひこういうチャンスに本当に専門分野の方々,背負って四方においでいただいたので,今のようなお話を含めて,時間は大丈夫でございますので,どなたでも結構でございますが,先陣を切っていただけたらと思います。
 ここは討議をして,そして次の未来に託すためのこの書類をつくる,そしてそれが伝わっていくようにという場所でございますので。
【角田常務理事】
 そういう意味では,2つ申し上げたんです。1つは,今,演劇研修所がある花伝舎ですけれども,それは新国立劇場から歩いて20分ぐらいかかります。演劇の研修生たちはやっぱり劇場の中で働けるというつもりで入ってくるわけです。ところが,そこで今教育を受けているのは,まさに幼稚園生のためのトイレだとか机だとか椅子だとか,そうしたものを使いながら教育を受けているわけです。これはまさに予算,お金だけの話ですので,もう少しまともなところに行きたい,もう少し近いところに施設を構えたいというのが我々の強い願いです。それが1つ。
 それからもう一つ,先ほど演出家コースというお話がございましたし,これもぜひ検討すべきだというふうに書いてございますが,これもやはり予算の話なんです。演出家コースをつくるためには,我々の試算したところでは,まず1,000から2,000万円ぐらいは余分にかかるわけですね。こうしたお金がつけば演出家を育成し,そして舞台芸術を振興させるための材料となり得るというふうに思っています。
【宮田部会長】
 私は東京藝大ですけれども,昨年1回だけ大劇場を使わせていただいて,稽古をさせていただいたんですね。それが物すごい波及効果があったということは,まずありがとうございましたということと同時に,この後,やっぱりそのぐらいの場所だなということをつくづく若者たちが感じていました。そうすると,日本人はよく,危険なのは,すばらしい場所があると,そこにいる人間はどうしても形を守ろうとして,新しいものを導入しようとする意気込みが,今のお話ですと大変揚げ足をとるようで大変恐縮ですが,予算がないからできないんだというふうにしかとらえられないような発言だと,書きにくいんだよね。もっとこれだけあるので,これだけの期待感を持ちたいと思うというふうなあたりのドラスティックなお話なども,ぜひ課の中でしてもらえるとうれしいんですけれどもというような感じがします。
【角田常務理事】
 確かにおっしゃるとおり,最も重要なのは予算ですから,金,金と言っているわけですが,例えば地方公演をもっと積極的にやるべきだというご意見を書いてくれたんですけれども,我々自身の中で提案しているんですが,新国立劇場の企画に合わせて構想をつくってしまう。そうしますと,地方に持っていくと入らない。それを小さくするためにまたコストがかかるというような状態になっているんですね。こういうのを続けていったら,いつまでたっても地方でやるということはできないのではないかと。つまり,最初からもう新国立劇場のスペックではなくて,もう少し小さめなものを運んでいくということを前提につくるということも必要なのではないかというようなことも検討はしています。
【宮田部会長】
 唐津委員,どうぞ。
【唐津委員】
 私も先ほどから,新国立劇場のつくられている作品というのは,やはり東京だけではなく地方でも鑑賞できるようにするべきではないかということが非常に気になっていたのですけれども,私は愛知県の県の劇場に勤めておりまして,もちろん,いい作品があれば何か一緒に共同でやることはできないかなということを考えてはいるのです。けれども,国でつくられているものを,先ほどちょっと田村委員からも,新国立劇場の作品を買うのはなかなか難しいですという話がありましたように,現実的には新国立劇場の作品も,民間劇場との作品の場合のようにつくられたものを買う,というようなやりとりになっているのではないかなと思います。 国と地方公共団体というのが買う,それを買わせてもらうというような関係ではなく,最初から共催などという関係で,もう少しタイアップするような仕組みづくりをできないでしょうか。例えば,新国立劇場で作品を創作する時の経費をなるべく浮かせていただいて,地方に売るのではなく,新国立劇場がリーダーシップをもって,地方公共団体との共催などで自主的に公演を行うことによって,そこで浮かせたお金は地方で還元するような形に持っていければ,新国立劇場が東京だけでなく,国の劇場であるという認識も広がると思います。さらに,東京の新国立劇場で創作して発表するだけではなくて,そこから地方公共団体の劇場で作品を発表する機会ということも併せて考えれば,当然,つくられた方にとってもたくさんの場所で発表する機会にもつながっていきますし,地方でも新国立劇場の作品を観ることができますので,双方にとっていい関係ができてくると思います。そういった工夫というのも,逆に新国立劇場さんの中で考えいただけないかなと思います。
【角田常務理事】
 それはおっしゃるとおりだと思いますし,我々は舞台をつくったりするのは美術部というところでつくっているわけですけれども,そうした人間に対してはディスカッションの場で,最初からそうやって考えてやるべきだというようなことは言っております。また,そういう議論もしています。
【宮田部会長】
 米屋委員。
【米屋委員】
 新国立劇場に花伝舎を使っていただいている立場の日本芸能実演家団体協議会から。研修所の方々と交流があるものですから,私の知る範囲ですけれども,色々なことが聞こえてまいります。その中で,先ほどの山脇委員のご質問の回答になっているかどうかはわかりませんけれども,多分,民間の自助努力でやるだけよりは良い研修が行われているというのが実状で,皆さん今のままで,教えていらっしゃる先生や事務局の方も今がベストだとは全然思っていないと思います。
 色々な制約の中でやれる最大限のことを,講師の先生方も本当に不安定な立場で,安い講師料で,それでも熱心に,それがあるから皆さん教えていらっしゃるというような中で進めていますし,空間に関しましても,先ほど角田さんがおっしゃっていたように,演劇に関しては幼稚園等で,それがやはり何といっても天井が低くて,それと防音設備が十分でないということがとてもかわいそうですね。外からの音が入ってくるし,大きな音を出せないという制約がありますので,そこはやはり初台のけいこ場とは全然環境が違うと,そこはかわいそうだなと思います。
 ちなみに,机は高校生用ですので,幼稚園のではありませんが,そういう中でベターなことはなされている。それは民間よりも優れていると言えるかというと,多分,それはどっちが優劣ということではなくて,今まで民間では単独でできなくて,やりたくてもやれなかったものを付加することができ始めているということだと思います。これをやはり,もっと充実させていってほしいですし,補正予算で建て直してほしいと思ったりもしますのですけれども,むしろハードの環境の面もありますが,先生方が熱意だけで続けられるというところを,限界を超えないように,それからスペース的にもまだ足りないと思いますので,そういったことを考えていただきたいんですけれども,ただ一点申し上げたいのが,予算を割り振るという発想が多分違うと思うんですね。というのは,新国立劇場にはファンドレイズ専門の事務局がいらっしゃいます。でも,支倉さんのところのように日本で唯一プロとして活動している芸術団体の方でさえ,ファンドレイズ専門の事務局員のいるオーケストラは日本にありません。そういうことを考えますと,やりたいことのために資金をちゃんと調達してくるとか,何を実現したいのかという発想から変えていっていただきたいと思っています。
【宮田部会長】
 その辺になりますと,私も本当に,あれだけ抱えておりますと大変なんですよ。まず税制,寄付行為云々あたりからの話をしなければいけなくなってくるんですけれども,そういう事実もあるということでございますが。
 あと吉本委員と,それから貴重な時間ですので先生方,ぜひ皆さんにご発言いただいて,4人の先生方と意見交換していただけたらと思っています。
【吉本委員】
 2つだけ発言させていただきたいと思います。新国立劇場のことが再三出ているので,審議経過報告の10ページ目の上から2つ目のところに,「人材育成機能の抜本的な強化を図り,我が国の象徴的な教育機関として」云々とありますが,これは前期の議論のときに,諸外国の人材育成の機関と比べると,新国立劇場の研修所というのは余りにも規模も小さく貧弱でないかというようなことで,国の政策としてはそこを抜本的に強化するのがいいのではないかという意見が取り入れられた結果だったと思います。
 ですから,幼稚園のトイレに案内するのは確かに恥ずかしいと思いますけれども,そういうことではなくてもっと,例えばオペラの研修所は今5人で,バレエが10人弱ですか,演劇はもっと多かったと思いますけれども,理想像にはほど遠いと思います。ですから,何か国の舞台芸術の人材育成としては本来こうあるべきだという,理想像を描いて,それには幾らぐらい予算がかかってというようなことを,具体的にこういう答申の中で書いて,あしたにでもこれに取り組むべきとしないと,いつまでたっても将来の絵に描いた餅で終るのではないかというように私は思います。
 ですから,角田さんが今日来てくださって,現場でいろいろご苦労されながらやっていらっしゃるので,その中からのご意見だったと思いますけれども,審議会としてはもっと大きなビジョンを出すようなことをぜひやったらいいのではないかというふうに思います。それは山脇委員がおっしゃっていたこととも関係すると思います。
 それから2点目は,きょうの4人のゲストの方々のお話を伺ってやはりと思ったことがあります。例えば支倉さんは,人材育成をして,ソリストでいくかオケに入るか選択肢があって,その後,どうやってそこでちゃんと公演をやって,芸術家として生計を立てられるかというのが重要だとおっしゃっていましたし,岡本さんからは,コンクールで何千人も出演するけれども,この子たちはどこへ行くのだろうというのが問題だとおっしゃっていたので,やはり人材育成の先の雇用に触れるべきだと思います。それは第2次の基本的な方針をまとめるときにも散々議論になって,人材育成も重要だけれども,その先の雇用が重要だという意見が多くの委員から出たにもかかわらず,そのことがなかなか書き込めなかったということがあると思います。ですから,人材育成については,アートマネジメントも実演家も,この審議のとりまとめで7月にある種の答えを出すということになっていますので,その中にぜひ,人材育成だけではなくて,その先の仕事の場所をどういうふうにつくっていくかということが重要だということも含めて,人材育成の中にぜひ書き込んでいくべきではないかなというふうに思っています。
 以上,2点です。
【宮田部会長】
 それはイコールであるということですよね,共通認識の中にあると。
 池野委員,お願いします。
【池野委員】
 今,お話を伺っていて,幾つか前から思っていたこともあるんですけれども,特に若松先生のお話について率直に申し上げますと,日本の伝統芸能から生じた教習制度に基づいたシステムが,洋舞が入ってきたときにもそれがそのまま続いてきたというところで,過去のそういったシステムというものから現在に至るまで,新しいシステムに対応できてこなかったというのがまずあるかと思います。それと同時に,今日配付させていただきました私の資料の中で,コミュニティダンスという,プロフェッショナルではなくて一般の人とダンスをつなぐ,普通の人もダンスを経験することによってプラスになっていくものがあるという,そういう発想から発生してきたコミュニティダンスということについても今お話がありましたけれども,最近,3月ですけれども,ブリティッシュ・カウンシルのほうで,まさに英国のコミュニティダンスの団体を招きまして,そこでセミナーと,あと実演というのがありました。私は最後の実演のほうは拝見できなかったんですけれども,その運営している方の話を聞きましたときに,本当になぜこういう違いがあるのかと思ったことは,まず運営されている方々は,舞踊家ではありません。私たちのグループはスタッフが少なくてカンパニーとして本当に恥ずかしいんだけれどとおっしゃったんですけれども,運営していらっしゃる方は大体10人いないくらいかと思いますが,基本的にマネジメントの仕事なんですね。その活動はもう何年にもなりますけれども,つい最近になって,私たちはパーマネントのダンサーを雇うことに決めましたというふうにおっしゃっていたんです。
 日本で舞踊家として活動していらっしゃる方からすると恐らくそれは,外部の私から見ても非常に衝撃的な発言であったのは,舞踊家が事務局員を雇うという発想ではなくて,まずカンパニーという団体というものがあって,そこで特に印象的だったのは年間予算に対する考え方というのが売上と支出で示されました。この考え方は民間の,一般企業の考え方と全く同じで,助成金が投入されているということはあるんですけれども,ではその助成金は年間予算の何パーセントですかとお聞きしましたところ,それは半分だとおっしゃっていました。それ以外の半分というのは公演することによって得られる収入と,それからその他の民間からの個人の寄付,そういったもので成り立っているとおっしゃっていました。そして,経済的にそれが安定していったときに初めて舞踊家を雇うという,そういう言い方をされていました。
 あとはその内容なんですけれども,内容のほか,いわゆる本当にプロフェッショナルなダンサーなのかどうかということが,本当にそれだけが重要なことなのかといいますと,それ以上に重要なことというのは,各地で公演を行う時に,それぞれの地域に求められた,それぞれの地域の方々が満足するような公演としてのその内容をどうやって高めていくかということに非常に苦心しておられる。すばらしい舞踊家でいさえすればその公演は本当にすばらしいのかということにつながると思いますけれども,確かに舞踊家としての技術というのは最低限必要だとは思いますけれども,観客が何に感動して次にまた来たいかということを考えたときに,技術だけを見せればいいということではない。全体としてその公演の内容の質そのものを高めていく。カンパニーというのは,実際に実演される方だけで成り立っていくわけではなく,むしろそういった人たちをどうやって生かしていくか,公演の内容を色々なスタッフ,キャストを組み合わせながら質の高いものをつくっていくかということを考える,そういった人がまず運営者として必要なことだというふうに感じました。
【宮田部会長】
 4人の先生が来ているので,その先生を踏まえた状態の部分を少し重点にしていただければと思います。
【池野委員】
 皆さんのお話を伺って私が感じたことというのは,これまでそういった舞踊界の中だけで完結されてきたのではないかと。もう少し,もちろん舞踏家出身の方でもよろしいのですが,それ以外のどちらかというと観客に近い立場の方々を巻き込んで,色々な才能,色々なことを考えられる人と出会っていなかったことによる不幸というものもあるのではないかいうことを感じました。
 ですから,これから必要なことは,専門的な人材育成というのはもちろん,それ以上に自分は実演芸術家ではないけれども,ぜひそういった仕事に携わりたいという意欲を持った人といかに出会うかという,その出会いの場というものをつくっていくという考え方も必要なのではないかと感じました。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 4人の先生方,何かございますでしょうか。
【若松理事長】
 とてもいい話で,ありがとうございました。また,高萩さんのところも,夏にADFというアメリカのあれが来ますので,劇場ばかりではなくて,日大の講堂も使って,あそこは前にも使わせていただいています。つまり,今の時代,劇場の中にこもるというふうに考えていなくて,ワークショップとシンポジウムとパフォーマンス,これ3つを1つに考えないと,つまりワークショップに参加して体を動かす人が,「案外おもしろいじゃない」と言って残って見る確率が非常に高い。シンポジウムも同様に,舞踊家というのは大体,言葉がうまく言えない人は言葉が嫌だからダンスをやっているのですが,そういう人が多いですが,でも,ともかくその三位一体に考えると。
 人材育成ということで一つもし書き加えていただけるなら,二世の問題をどうするのか。親がバレリーナで,お嬢さんがやっている。これは非常に多いです。というのは,ハードがもう,会場があるからそこを使えるというようなこともあって,それも一つ考えなければいけない,ですが,議論されたことはかつてないような気がするので,何か提案の中で一つ考えていただければと思います。
 それと似ているのは,振付師は教えないというのはどこの国へ行っても当たり前な常識ですが,日本では近藤良平でも教えているからだめで,お互いにそれは非常に不幸なことで,ダンサーは振付師に,振付師は逆にダンサーの欠陥を知ることで何とかしてあげたいというふうなのは本当にいい作品には結びつかないので,私は教えるのは余りうまくないのでよいですが,振付師は教えないというシステムは,現代舞踊とか世界の舞踊団に行ってみるとみんなわかりますが,本当に小さい舞踊団でも振付師は徹底して教えないというシステムで,日本は逆に先生が教えるというような,その2点が少し公開された中でないということと,それから,もうお客さんが芸術家だと思っていますから,踊る人はみんな大したことなく自分が一番うまいと思っているお客さんがたくさんいます。
 というのは,トイレになんかに行ってみると,「すごく回るね」と言うと,隣の人は「何だ,おれはもっと回れるような気がする」と,高校生が男子トイレで会話してますよ。つまり,意識としては,みんなアーティストなんですよ。だから,芸術的な生活そのものにメスを入れていかなければ,舞台芸術というのはそれと連動しているわけだから,何かもっとクリエイティブな生活というものに入っていかなければいけないというので,私としては「クリエイティブ,クリエイティブ」と,1年間に何万回も言っています。クリエイティブなもので切り込んでいかないと今はやっていけない時代に来ているという意識をみんなに持ってもらうのに,公益法人をうまく役立てて。大体,公益性はあるの,どこが公益性なのという話と結びつくと思います。
 ありがとうございました。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 岡本先生,何かまだございましたら。
【岡本副会長】
 私もいろいろ,どういう会議だというのをよくわからないで参加させていただきましたけれども,私のきょうの立場は日本バレエ協会というので,必ずしも公演団体ではなくて,バレエ全体を考えるという立場もありますので,それで就職先とともにバレエの先生としての認定証というのでしょうか,料理家でも美容師でも何でも国家試験があるのに,だれでもやれるということとか,何かそういったことも考えなければいけないと思っておりますが,でも,私も新国立劇場にとても本当は期待していまして,もっとコンクールで出るような子たちを探しに来てほしいなというふうに思っております。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 パルバースさん,どうですか。
【パルバース委員】
 いや。
【宮田部会長】
 よろしいでしょうか。
 田村委員。
【田村(和)委員】
 簡単ですけれども,ちょっと岡本先生にお話を聞きたいんですけれども,前者でたくさんの人が将来あぶれてしまうみたいなお話をされて,その後に免許の話をされましたが,それは教師の側の話というのは何かそこの脈絡と関係がある話なんですか。そこのところが少しわからなかったので。
【岡本副会長】
 大きな意味であれは関係があって,だれでも営業が上手ならば,できるのは当たり前かもしれませんが,そういう声がとても高くて,この様なことを,どこかでやらなければいけないので,認定証みたいなことをつくったほうがいいのではないかという考え方をしております。
【田村(和)委員】
 教える側のほうを強化していくと。
【岡本副会長】
 はい。そのコンクールの中には,もちろんそういう時代に来ているんですが,生徒もなくて,ビデオで見て出てくる人もいるわけですね。そういうことも考えなければいけないこともあると思うので,素材はよくてもやはり教育がまともになっていないというふうに思ったりもします。ですので,新国立劇場に学校ができればというふうに思います。
【田村(和)委員】
 そこへもどるわけですね。わかりました,どうも。
【三林委員】
 私は,山脇さんがおっしゃったのと全く,いつも言っていることですから,年齢層を低くしてください。お願いいたします。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 4人の先生方,支倉様,岡本様,若松様,角田様,本当に本日はありがとうございました。大変中身の濃いものになったと思います。それを踏まえまして答申させていただきたいと思っております。ありがとうございました。
 それでは,事務局から次の日程について,お話し願います。
【事務局】
 それでは,事務局のほうから次回の日程についてご説明申し上げたいと思います。

<清水芸術文化課長から次回以降の日程等について説明>

【宮田部会長】
   本日はありがとうございました。

15:41 閉会

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