第7期文化審議会文化政策部会第3回議事録
- 1 日時
- 平成21年6月29日(月)
- 2 場所
- 文部科学省16F特別会議室
- 3 出席者
- (委員)
- 池野委員 唐津委員 高萩委員 田村(和)委員 田村(孝)委員 堤委員 宮田委員 山脇委員 米屋委員
- (事務局)
- 青木文化庁長官 高塩文化庁次長 関長官官房審議官 清木文化部長 清水芸術文化課長
- (欠席委員)
- パルバース委員 宮田(慶)委員 三林委員 山内委員 吉本委員
- 議題
-
- (1) 舞台芸術人材の育成及び活用について
【文化審議会文化政策部会報告書素案審議】
- (2) その他
- 【宮田部会長】
- 第7期の文化政策部会(第3回)を開始します。
本日はご多忙のところ大変ありがとうございました。まことに感謝申し上げます。
会議に先立ちまして,事務局のほうから配付資料のご確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
- 【清水芸術文化課長】
- <配布資料の確認>
- 【宮田部会長】
- ありがとうございました。先生方のところにはもうこれは事前に配られていますよね,清水課長。
- 【清水芸術文化課長】
- はい。
- 【宮田部会長】
- そうですね。私も目を通させていただきましたが,約1時間ちょっとかけて,この素案につきまして,先生方のほうから忌憚のないご意見をいただいて中身の濃いものにしていきたいと思っております。
先生方のほうで,どなたからでも結構でございますので,自由にご発言をいただければと思っております。
- 【田村(和)委員】
- 早速忌憚のない意見を言わせていただきたいのですが,非常に2回の取りまとめと,それからこの間のヒアリングを含めまして丁寧にまとめられていることは事実なのですが,やはり読んでみていまして,この人材ということが古来の,昔からの人材のとらえ方ではなくて,新しい時代の新しい見方が人材のところにどのように反映されてきたかという迫力が欠けていますね。ですから,そういう意味では,文化力を高めるというところがスタートポイントで,やはり人材の見方と施策が変わっていくのだということをはっきり打ち出していただきたいなとすごく感じます。
例えて言いますと,アートマネジメントということを非常に重視されている。これは実演芸術家だけではなくて,アートマネージングに携わる人,舞台技術者も含めまして,そういう裏方というんですか,そういうところを一体化して人材として非常に強く打ち出していくんだというあたりは,今回やはりはっきり明確に出されたことだと思いますので,そういうことを単に議事の経緯だけではなくて明確に出されていかないと,別々に2つのパートを議論したわけですから,それはつながっているんだということをはっきり最初に出していただきたいということを感じます。
そういう意味では,やはり人材育成の今日的な必要性みたいなものを明確に2つのパートから,それは有機的につながっているということがまさに我々の見方だということですね。そのあたりを打ち出していただきたいことが第1点目です。
それから,入れたことを何か色々言うのは恐縮なのですが,やはり文章表現というのが非常に叙述的過ぎるというのか,例えて言いますと,同じことを違う方向から2回繰り返されているのが非常に多いですね。ですから,もう少し項目の整理というのか,見方のところを,我々は,計画をつくる場合にそれをプログラムカテゴリーというのですが,そのあたりをもう少し配慮していただかないと,ただ議事を進めてきた並び方,それから非常に古い枠組みでお書きになっているなというのを非常に強く感じます。そういう意味では,まず戦略をもっと強調していただきたいということで,色々なところに気配りされているのはよくわかるし,人材の問題,特に本当にトップから末広まで含めまして,あらゆるところに配慮されるのはわかるんですけれども,やはり今大切なことが何なのかということが見えるようにしていただきたいということですね。
そういうことからさらに言いますと,課題の問題と,課題の中で特に指摘もある話があるんですが,指摘もあるというのは非常に主体のない話で,私は,はっきり課題があるということをここで議論しているわけですから,それが問題なので切っていただいていいと思います。それから,もう一つは,提言ですが,目玉商品とお勧め品とをはっきり分けていただいたほうがいいと思います。目玉商品というのは,やはりこの文化政策部会が今回,今の時代に議論したことというのは何だったのかということと,それから,非常にもっともっと後ろにある多くのの問題がありますから,これはお勧め品として色々検討が必要であるとか,それから期待をすべきだという話があっていいのですが,それが一緒になっているものですから,我々が何を言ったのかということが見えないですね。これはメッセージ文章だし,メディアですから,少なくともそのあたりをもう少しはっきりと明快に出していただきたいと思います。
あと,表現の問題は色々ありますけれども,ぜひそのあたりを今回のレポートに生かしていただけないかなというのが,あくまでも読み手としての私の意見です。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。
ほかに,先生方,いかがですか。堤先生,いかがでしょうか。
- 【堤委員】
- すみません,私,今までお休みさせていただき,なかなかスケジュールが合いませんでしたので大変失礼いたしました。色々と読ませていただいておりますけれども,現状といたしましては,どちらかというとまだ私としては勉強させていただいているというときなのですが,また細かい意見等は後ほど述べさせていただきますけれども,多分私の役割というのは,私の場合は,長い間外国に住んでいまして,外国で色々と見聞しておりますし,そして現在は桐朋学園の学長という教育の場にあり,同時に今サントリーホールの館長ということで,その現場,そして私の家内が戯曲家ということで舞台にも関係があるますので,多分そういうマルチメディア的な面からお役に立てると思いますけれども,今のところ具体的には申し上げられません。
- 【宮田部会長】
- 清水さん,戦略的にやはりこの間のときには日本の文化力を高めよう,今こそみたいな感じの1ページの前のところに表題があったように,今回も当然訴えられる何かというのが出てきていいと思うんですが,今の田村委員のようなお話のことの中にもあると思いますが,さっきの中で気になったのは,やはり同じ言葉が繰り返されているのは,これは明らかに文章としてはおかしいので,これは切りましょうというのが皆さんの意見ですが。
基本的に稽古ごとはものすごくよくできているのですが,その後海外に逃げていったり,それから本当にプロになり得ていなかったりというのをちゃんと日本の中で受けとめて,日本発信していくという考え方というのは必要になってくるかと,その辺の部分がどなたも異口同音にずっとお話していた,ご発言いただいたような気がする。どうぞ。
- 【山脇委員】
- 少し期待されているようですので。
舞踊,バレエ分野で一番欠けているのは,子どものころからのきちんとした体系立った舞踊教育,バレエ教育機関がないということだと思います。民間で色々な稽古場があったりしても,いい稽古場もあれば悪い稽古場もある。あそこできちんとやるということが大切だという教育機関がないということが一番の問題だと思います。
新国立劇場の方にこの間来ていただいて,何だかかみついて申しわけなかったのですが,やはり非常に中途半端な組織で,17,18歳で募集しても何の意味がないと。ここでは少し低年齢化といって15歳と書いてありますけれども,15歳でも全然だめで,10歳ぐらいからのきちんとした教育機関を,国立バレエ学校をつくるぐらいのことをここで提案できたらいいのではないかと思います。
それから,もう少し小さいころからの教育をという皆さんの意見があったのを,「小・中学校から舞踊の基礎を取り入れて」なんていう何かお茶を濁したような感じがあって,別に小・中学校からそういうことをやらなくても私はいいと思います。それよりきちんとした教育機関をつくるということが大切ではないかと思いますが,いかがでございましょうか。
- 【宮田部会長】
- 少し踏み込みますが,それは一貫教育的なことをお考えになられているのですか。
- 【山脇委員】
- そう思います。実は,スイスのローザンヌ国際バレエコンクールというのを皆様ご存じかもしれませんが,そこは非常に教育的なコンクールと言われています。若い才能を見つけ出すということが目的のコンクールで,例えば舞台の上で転んだりしても,才能があると思えばその人を入賞させて,ご褒美はスカラシップ,各国の有名,ほとんどが国立のバレエ学校への奨学金,留学する奨学金を与えるという,そういうコンクールです。その創設者に昔取材をいたしましたら,一つの意味合いは,悪い先生から離すことであると。民間で習っていても,いい才能が悪い先生によって色々な癖がついたり,正しい訓練をされなかったりする,そういうのを14,15歳で見つけて,その先生から引き離して,それできちんとした教育機関で学ばせること,これが目的の一つだということを聞いたことがございます。つまり海外でも色々な稽古場というのがあって,きちんと教育されていないところも多くあるわけで,それをきちんとした,主に国立バレエ学校が多いですが,そういったところに留学をさせることが必要だと。日本はやはりそういう教育機関がございませんので,そういった意味ではできればそういうところで,学ばせたい。バレエというのはバレエだけやっていればいいわけではなくて,民族舞踊やモダンダンス,音楽の授業も必要なわけで,そういった総合的なものができるのがやはり理想であろうと思うのです。せっかくこういうチャンスなので,何だかお茶を濁したようなことだともったいないという気はいたしました。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。
以前,アジアから文化発信というテーマで青木長官からお話しいただいて,今の山脇委員のお話ですと,日本とヨーロッパという印象が強かったんですけれども,私はアジアと,アジアから今度は逆にヨーロッパというグローバルな地球的な考え方を持つことも,今後これからの若者を育てる上には大事なこと思います。
高萩委員,どうぞ。
- 【高萩委員】
- 重要なのは最後の具体的な方策のところだと思います。そこのところの語尾が「期待される。」「重要である。」「有益である。」「必要がある。」「求められる。」となっていますが,ここをどのように書くと具体的にすすめるべきとなるんですか。
- 【清水芸術文化課長】
- それぞれの文脈もありますけれども,一般的には国,あるいは施策として,施策の主体として国,文化庁が行うというものもございますし,あるいは助成金等色々な手段を通じて行っていくものもありますし,また国立の大学あるいは国公私立の大学,地方自治体に期待するというのでしょうか,そちらのほうで対応いただきたいということを提言していくという部分もございますので,主として,この審議会が文化庁に置かれておりますので,文化庁に対しては必要であるとかいった形の文脈,その形で言っていただく場合が多いかと思いますけれども,大学あるいは地方公共団体ということですと,間接的になることもございまして,期待されるといったような形で言っているところがあるかと思います。あとは,やはり具体的に直ちに実施できるものに関して必要であるといった形で行っていることに対して,課題は指摘しているわけですけれども,直ちに施策が出てきていないといったことで,重要である,あるいは有益であるといったような語尾になっているところもあるかと思います。
- 【宮田部会長】
- もう少しはっきりと言う言い方ってないのですか。毎回私も同じことを感じているのですが。
- 【高萩委員】
- 今のお話からすると,「有益である。」「重要である。」だと何もしないだろう。「必要である。」と書いてあれば何かをする可能性があるということになりますか?「必要である。」よりもう一歩先にいくのはないのですか。
- 【田村(和)委員】
- 努めるとか。
- 【宮田部会長】
- お役所言葉があると思いますけれどもね。
- 【高萩委員】
- そう思うとすごくわかりやすいですね。「必要がある。」を一歩進めるというのはあるのですか。
11ページの「具体的な方策」のところを見ているのですが,フェローシップ制度の充実に関しては「厳格な競争に基づいて選抜を行うフェローシップ制度の創設を検討する必要がある。」となっているわけですよね。現場からいうと,結局帰ってきて機会がない人をわざわざ海外へやるのは無理だと思います。機会がないんですから。だから,逆に本当に実効性があることで言えば,やはり引く手あまたというのは変ですけれども,才能があると,かなり期待できる人を海外に出し,その人に成果を発表してもらっていくというんですか,そういう一貫した何かをここでうまく言えないかなと思うのですが。
- 【宮田部会長】
- これは,私も大変気になっているところですが,例えば文化交流使の方々が海外に向け大変ご活躍いただいて,その後お帰りになってから,何人かの文化交流使の方々にご提言の書類を持って私のところおいでいただくんですが,それはそうだよね,そうだよねと言うんだけれども,ここからどこへ持っていっていいかわからないのです。それがすごく残念なことが多くあります。今年も何人かの方がおいでいただいているというような,もったいないな,すばらしいことをやってきたのに。例えばニュージーランドへ行ってきて,そこで木の文化というものに対して日本のすばらしさを切々と伝えて,それが大学の中でも非常に受け入れられて,うちと何か交流しましょうと言ったら,次にもう一つ踏まえたときに,例えば清水課長のところで,どうしようと行けるようなそういう窓があっても私はいいと思います。その窓もないので,どこへ行っていいかわからなくなります。そこは少しもったいないと思います。すばらしい人材をあれだけ出しているのにもかかわらず,その辺も例えば今それはもうある熟成した方々なんですが,もっと前の高萩委員のお話をするような,これからの子たちに対しては,もっともっと受け入れが必要になってくるでしょうね。
ほかにどうぞ。はい,堤委員,どうぞ。
- 【堤委員】
- 少しこれから外れるかもしれませんが,3つだけ私が考えましたポイントを言わせていただきたいんですけれども,もちろん日本から文化発信するというのを受け入れ,やはり私が一番有効にそれができる,そして生かされる,それはもちろん自分から行うのですが,他国,アジア,ヨーロッパ,北米,南米どこでもいいんですけれども,世界の人々と一緒になって何かを行い,一緒になって新しいものをつくっていく。ですから,向こうの方も日本のすばらしさを受け入れてくれてそれに刺激される。そして,その見返りというかあれに関して,今度我々も日本の歴史がそのものだったと思うんですね。必ず外から出てきて,色々な文化,色々なものを受け入れて自分のものにして,日本のレベルの地位が非常に精神的にも豊かになりましたし,そういうことで私は自分の一つの考え方として,やはり日本はこれからすべての面において世界の国家の一つである。ですから,世界国家の一つとしてほかの世界国家の一つと色々一緒になって何かを行っていく。一緒になって新しいものをつくっていく,そういう私はこれから考え方を進める。そして,土台になるのは,今,非常に自然環境保護,ナチュラルエンバイロンメントということを非常に強く言われておりますけれども,私がやはり強調したいのは,ヒューマンエンバイロンメント,いわゆる人間環境の整備,そして改善充実,それを考えたときに,やはり大きな意味でのグローバルな考え方をするようにしたほうがいいのではないかと思っています。
実は今夕,そしてあしたの晩,カサルショーが載っておりましたけれども,それでソウル・スプリング・フェスティバル・イン・トウキョウというのが行われます。これは,ソウルで毎年行われております音楽祭をどうしても日本で公演したい,東京で公演したい,そういう気持ちで韓国のそれこそ一流の音楽家がいらしているわけですけれども,もちろんそれには日本からの音楽家も参加して一緒になって行っていく。そういう形でアジアともちろん韓国だけでなく中国,台湾のすばらしい音楽の分野でも伸びておりますが,そういう手を携えて一緒に何かをつくっていく。やはり土台は同じだと思いますので,それが私の基本的な考え方でございます。
それから,もう一つ,先ほど少しございました教育の環境の整備でございますけれども,例えばバレエにしてもオペラにしても,日本は欧米諸国に比べると確かに少し弱いところがあるというところがございますが,それには,例えば学校卒業しての活躍の場,例えばオペラカンパニーであるとかバレエ団,世界に誇る,例えばカナダのウィニペグであるとか,イギリスのロンドンではすばらしいバレエの学校を持っています。その理由は,ウィニぺグなり例えばロンドン,ほかにももちろんモスクワ,サンクトペテルブルクもそういうすばらしい舞踏団があるから,そこで一生懸命やればああいうところで舞台を踏めると,小さいうちからそういう環境があるわけです。ですから,すばらしい教育をするのは,もちろんこれは当たり前ですけれども,そういう子供のうちから,それこそ10歳でも何歳でもいいのですが,そういう子供に夢を持たせる,そういう何かターゲット,目的があると私はもっともっと新国立劇場がそういうオペラの分野では,それからバレエの分野ではそういう,それから舞踏の分野では,舞台の分野では,そういうことを担う立場にあるのかもございませんけれども,やはりそういうふうな何か,このように努力したらこういうふうに自分は何かできて自分を表現できる。私はやはり一番大事なのは,その一人一人が自分のベストを尽くせる,それが音楽であれ何であれ,写真であれ絵画でも何でもいいと思います。そういう場があるということが,私はすごく大事なのではないかと思います。
それから,音楽もそうなんですが,私は桐朋学園ですが,いわゆるクラシック音楽を行っておりましたけれども,今音楽は非常に幅が広がっております。色々な意味で,例えばバレエにしてもいわゆるクラシックバレエからモダンバレエ,そして色々なバレエがございます。ですから,これからもし何か新しいカリキュラムになる,学校をつくるとしたら,そのような幅広い,それこそ,日本ではこういう新しい動きがあるのだと,そういうものができてこそ,日本のいわゆる教育力であるとか,それからそういう発表の力,そういう文化の力,そういうのが本当に出てきますし,ですから,例えば全く端的な話ですけれども,バイオリンのマキイタ,海外のコンクールで優勝した,それも一つですけれども,これからはそれだけでは済まないで,やはりオールラウンドな音楽家で,日本でこういう教育を受けたからこういう音楽がつくれる,それをもってそれぞれアジアに出てもいいと思いますし,ヨーロッパ,アメリカ大陸へ行ってもいいと思います。そういうバックグラウンドを与えるというか,それに力をつけてあげるのが我々の役目だと思います。僣越で申しわけございませんでした。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございました。土壌をつくっていくということですね,受け皿と同時に。プラス発信ということですね。ありがとうございます。
今,堤委員のように新提案も基本的なこの辺の部分ではある程度網羅されてはいるとは思うんですけれども,先生方,具体的なもので結構です。それからまた,最後まで夢をあるいは具現化したいということでも,両方で結構です。攻め口は自由でございますので,この1行に関していかがなものか,そこからスタートでも結構です。
- 【田村(和)委員】
- この人材の話を語るときに,我々がずっと思ってきたのは,やはり文化のスーペオリティーというんですかね,卓越した人を支えるということに対する伝統的なコンプレックスだったと私は思うんですね。ですから,非常に日本というのは文化・芸術に関連する人が多いですし,これは文化が不毛だといいながらやはり関連者が非常に多いですし,東京だけという意味でも,劇団にしても音楽関係者でも多くおられますよね。そういうすそ野に対して目を開いていかなければいけないという話と,それから,トップレベルの人だけを支えるのは何か非常に問題があるという何かコンプレックスがあったように思います。ところが,今の堤先生のお話も含めてなんですが,トップレベルという言い方ではなくて,やはり今の人材というのは,非常にグローバルで活躍したり評価ができる人であり,ナショナルな表現というのを,伝統とかそういうものを表現できる人たち,それから,あちこちに出てくるんですけれども,やはりビジョンというものを支えられる人たちの中で非常に卓越した人たちだと私は思うんですね。ですから,そういう意味で言いますと,トップレベルだけを,何も国際的に活躍する人を支えるということではなくて,むしろ人材というのはトップレベルの人材がいれは,中にもありますけれども,中堅の方もおりますし,後継者の方もおられます。それを支えていくのは非常に教示者としてのはっきり言って市場だと思うんですけれど,そういう世界がそれを支えていくという話だと思うんですね。
そのあたりで,やはり今人材と我々が呼んでいるのは一体何なのかということをもう少し明確に出していく必要があると思います。ただただ文化に関連している人たちは多くいて,こっちを支えてしまうとこっちが抜けるのではないかというような言い方ではなくて,どうもそのあたりに何か我々がいつも陥っている一つのコンプレックスみたいなものがあると思います。コンプレックスというか,施策化するときに必ず色々な地方自治体というか公共団体なんかで話していても,何でトップの人だけを支えるのかと,そこに公共投資するというような言い方がありますが,私はそうではなくて,それがリーディングファクターだということを言うわけですよね。確かに,すそ野を広げる,大衆的な世界をサポートするというのは大切なのですが,今日的というのは,やはりここで時代によって文化の質というのが突出していく質というのは,クオリティーが変わってくると思うんですね。まさに今その変わっていくところでそういう人材が必要だというところにもう少し射程を置くと,今人材という言葉を非常に大切に定義していっていいと思います。
そういう言い方をすると,このレポートそのものが最初から焦点を絞れていけると思います。そこのあたりからスタートすれば,私はこの中でところどころ奥歯に何かつっかえたような言い方で,こっちにも配慮しなければいけないけれども,こういうこともするというような言い方が,余りしなくていいようなところが多く出てきている感じがしていまして,今日的,つまり第7期のこういう政策部会が提案するのは,まさに文化の質を保っていける人たちというか,それを表現できる人たちを我々はどう支えるということが目標だということをもう少し,これも全く乱暴な言い方ですけれども,そういうところでの人材というものをもう少しかたく定義してみてもいいかという気は,これを全体に読んでいまして非常にするのですが,いかがなものでしょうか。
- 【宮田部会長】
- そこが難しいところなんですけれども,たまたま私なんかがある高等機関の4年から10年ぐらいの学生を対象にしていますので常に言い切れるんですね。ただ,このフィールドそのものが非常に難しい部分で,先ほどの山脇委員のお話ですと,10歳ではもうというぐらいのそこからスタートしなければいけないという話があり,今,田村委員のお話ですと,あるレベルにいったときのその上の連中をより強固に育てることによって文化力が全体に波及して高まっていくという考え方もあるというあたりもありますけれども。
- 【唐津委員】
- 今の田村委員のご意見に対しては,もっともだと感じています。人材について,多分一つ一つ切っていくと,中堅はとか底辺とかトップレベルはと一つ一つについて語っていかなければならなくなってしまうので,全体について共通するどういう人材を育成すべきなのかというところを最初に明確にし,先ほど堤委員のほうからも,結局目標設定という話がありましたように,日本の文化を支えるために,世界へ行ってどのように通用していく人材を育てるのかということを最初に語った上で,個別の議論に入っていくと,もう少し見やすくなってくると思います。
前回の各論のときにも一度申し上げて,図式を入れていただいたと思います。図や,あるいはもう少し短い文章で,例えばA4,1枚で全体像がわかるような,もう少し見やすいものを最初に書いていただいて,そこから個別の議論に入っていくような見せ方というのも非常に重要だと思います。
前回のときも少しお話ししましたが,でき上がったものを色々なところに持っていって読んでくださいと言うと,1,2ページめくってその後は読まないというのがほとんどです。今回,提言ということなのですが,その提言がつくることが目的になってしまうと,せっかくこれだけの議論を行ってきて,非常にもったいないことになってしまうので,それを読んだ方がどこか何か自分の中で生かしていけるようなものを見つけていただきたいと思います。多分,このままいくと,ああ,そうだよな,必要だよね,うん,確かに重要だよねというところで何もきっと動かないのではないか。
そのために,かなり危険かもしれないですけれども,思い切ってこの際目玉商品というものを何かつくっていただきたい。前回の時から,先ほど山脇委員が言われたように,舞踊の教育機関を例えば「検討する」というぐらいではなく,「作っていくことを目的にこれから議論を進めます」というような話を例えば入れていただくとか,宮田委員がお困りになるかもしれませんが,やはり「東京芸術大学に舞踊学科を作っていただく」というのをここから議論をスタートしますぐらいの勢いで,ここで何か目玉商品を出していただくというのは,何か皆さんがこれを見ることのきっかけにもなっていくのではないかと思います。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。この前は,1枚ポンチ絵をかきましたね。
是非もう一つつくりませんか,清水さん。その1枚をまず持っていきながら,こっちを持っていくというような。
- 【清水芸術文化課長】
- はい。
- 【宮田部会長】
- 提言する場所は財務省でしょうね。そちらに向かっている。そのぐらいの勢いであればできると思いますが。
要求は,個人的には恐縮ですが,学内からも十分その話は出ておりまして,私はこの中のメンバーであるということで,格好いいものを持ってこいということを言われていながら来ているんですけれども,ただなかなかつらいところもありまして。
- 【田村(孝)部会長代理】
- 先ほど堤委員のお話にありました3点が私は一番多分大事だと思っております。今どちらかというと実演芸術家のお話に限っていますか。
- 【宮田部会長】
- ニュートラルで。
- 【田村(孝)部会長代理】
- 舞台芸術の振興が芸術家のためだけのものではないと,社会にとってどうなのかということの視点がこちら側にないと,とても狭い視野のものになってしまうかなと,グローバルな考えが必要というのは,芸術家の保護とか文化財の保護とか,そのような視点で長い間来た日本の文化政策を変えなくてはならない。その視点がやはりこの中には必要ではないかと思います。それから,先ほどのお話のように,活用の場というのは,雇用の場がなくては変わっていかないと思います。場を得たときに,初めてすばらしいものが創造されます。実は,昨年も外国のオーケストラを招聘しました。今年も招聘しました。外国のオーケストラを招聘したときに,東京より安価に聞けると言いますと,手を抜いて演奏するでしょうと言われてしまいます。でも,今年はハノーファーのオーケストラで大植英次さんの指揮だったのですが,本当に心をこめて演奏してくださいました。大植さんの演奏はすばらしかったです。これは,静岡だけではなく大阪でも素晴らしかったそうで,そのことが評判になり,東京ではレコーディングと結びついたと伺っています。ですので,私は,招聘元に感謝しました。そういうものを地方で行ってくださるということが,結果的に芸術家の活躍の場がふえていくと思います。そういうチャンスを得たときにどういう姿勢で芸術を届けてくださるかということが先に結びついていくということだとは思いました。
それともう一つ幅広い視野が必要というのは,私も本当にそう思っています。私はどちらかというと,クラシックだけではなくて,幅広いジャンルの音楽を仕事としてまいりましたので,いい音楽とそうでない音楽とはあると。クラシックだからというふうには思わない人間,どちらかというとそういう人間でございますけれども,ただ,多くの皆様がエンターテインメントというものといわゆるアートというものを区別していないということ。エンターテインメントというある意味商売で成り立つものを公共が提供していく必要があるのかどうかということは説明しなくてはいけないと思います。地域の方々は,お客様も入るし,どうしてそんな何億の無駄をするんだというような話になってしまうのです。でも,やはりそのことはきちんと届けなくてはいけないと思います。ブロードウエーはいわゆる投資の対象でございます。しかし,メトロポリタンは違います。その違いを日本では残念ながら区別していない方が多いのかもしれません。
ですから,そういう意味でオールラウンドな教育というのは私も本当に大切だと思うのと同時に,そこをどうやって気づいていっていただくかということが必要かと思っております。よく海外の児童演劇携わっている方が言っておられますけれど,小さいときに劇場で感動できるすばらしいものを体験させたら,その人はいったん離れても大きくなったら必ず劇場に足を運ぶようになると話されています。先日もお話ししたかもしれませんが,ロイヤル・コンセルトヘボウのブラスクインテッドの公演をいたしましたときも,実は皆さんは,オランダではこんな小さい子を相手に行ったことはないと話されていました。私どもは視覚障害者の学校で公演いたしましたので,本当に小さいお子さんもいらしていました。これはすばらしいことだと彼らは言ってくださいました。いったん彼らが違うものを好むときもあるかもしれない。しかし,絶対戻ってくると言ってくださいまして,私もそれを信じて行っております。提供する側にその視点がないと,いつまでたっても変わらないかなと思います。
それと人材育成について研修というものも国立劇場にございますけれども,例えば雅楽であったら完全に中学卒業のときにオーディションで選抜されますよね。朝7:00から毎日親元を離れて口伝で教育されるわけでございます。それと一緒に学校にも通っておられる。でも彼らは宮中楽部の公務員になるわけでございますよね,将来的に。それはある意味ではよほどのことがない限りは保障されているのです。しかし,残念ながら,国立劇場には専属劇団がありません。現在,歌舞伎界の大部分のわき役の方も,大部分の鳴り物の方も国立劇場で教育された方が活躍しておられます。もし国立劇場に歌舞伎劇団があったならば,笑也さんのような方はもっとたくさん輩出されたのではないかと思います。将来的な展望が開けたら頑張りがいがあるということはあるのではないかなと思います。文化芸術を大切に思う素地がないという意味では,本当に良質なものを,上質なものを子供に見る機会を多く提供するということが,まず日本は最も大切にしなくてはいけないことかもしれません。それと同時に,文化財保護的な芸術家の育成とか活用というのはもう変えてもいいのではないかなと思います。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。文化庁で文化財保護系のものと人材系のものと大きく2つがございます。人材はあくまでも生き物は生き物で行ってもらいたいなという感じがします。それと,やはり今先生が話されたように,本物を本物として教育させる空間が必要です。だから,本物は多くありますが,それを伝える教育者とか,かみ砕いて伝える,その辺のファジーな部分が意外と育っていないなという感じが僕らの中にするのはもったいないなという気がします。ほかに先生方。
どうぞ,池野先生。
- 【池野委員】
- この会議に先立って資料を送っていただきまして,それを読んだときに,最初の感想としては,非常に多くの発言が割とストレートに反映されていて,非常にてんこ盛りという感じがしました。先ほどから皆さんのお話の中に,もう少しこれを要約して,すっきりとしたら,とありました。中身はすごく充実しているんですけれども,これを読む側になると,非常に多くて,結局何が必要なのかというところで,訴えたいことが薄まってしまうような気がいたしました。
それと,今さらのようで申しわけなく思うんですけれども,11ページの「具体的な方策」のiというところに「フェローシップ制度の充実」ということが書かれています。これは具体的な方策の第1番目ということで,ある意味思い切った言葉のように思いました。「登竜門となる国際的なコンクールを目指す才能を有する者を対象として,」フェローシップ制度の創設を検討するというような,これはジャンルで言いますと,音楽を想定して書かれたことかと思います。演劇や舞踊にもコンクールはありますが,だからといって,選抜を行ってフェローシップをつくって,それでどうなるのか,という印象があります。読んだときに少し違和感を感じ,これは分野別の具体方策というところに入ることではないのかなと思いました。それが最初に感じたことです。
それからもし時間があれば少しお話ししたいのは,先日海外のフェスティバルに行きましたときに感じたことが幾つかありまして,そのひとつに,日本はある意味文化的に非常に豊かだと思いました。どういうことかというと,余りグローバルな視点で語られることのない日本の伝統文化や,あるいは音楽にしろ,舞踊にしろ,稽古ごとということがありますけれども,それ自体が日本の文化の豊かさを示していると感じました。
芸術がどういう発展の仕方をするかというのは,本当にそれぞれの国によって違いますので,必ず海外のこういうやり方でなくてはいけないということではなくて,それぞれ固有の社会のあり方の中で発展していくものですから,それを無理やりに変えていくために必要なことはどこにあるのかということをはっきりさせることが重要で,例えば日本の舞踊に関して言えば,音楽もそうかもしれないのですが,稽古ごとからステップアップをして,そこから職業につなげていく,ここが非常に脆弱なんです。ですから,そういった非常に弱い部分をどうやって補強していくかということが一番重要になってくるのではないかと思います。
国際フェスティバルでそのほかに感じたことは,例えば大道芸のような屋外でのサーカスもヨーロッパのフェスティバルでは,それも舞台芸術の一つととらえられています。何が良質な芸術なのかということは,本当に日常的に舞台に接していく中で見出されていくことなんですけれども,何に価値を求めるかということも,時代によって変わっていくことのように思います。先ほど堤委員が話された新しい考え方を打ち出していく,それを考えていく必要性というのは確かにあると思いました。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。やはり目次を見ていても,ああ,並べてあるなという印象が少し強いので,その辺の起承転結があってもいいかもしれませんね。ありがとうございます。
米屋委員,どうぞ。
- 【米屋委員】
-
読んでみたところでのひっかかりを2点大きく申し上げたいと思います。
一つ象徴的なのは,10ページの「演劇は,各国の文化,言語等と密接に関係しており,」というここの一つの段落を読んで感じたのですが,冒頭にも国際競争力という言葉がありまして,これは非常にわかりやすいんですけれども,何かここで推奨しているのが国際的なコンクールで優勝する人材だけをプッシュしようとしているのかと,何かとても短絡的にとられるような気がして,その背景となるのが,ここで「欧米先進諸国に学ぶべきものがある。」というこのワンフレーズでして,演劇は別に欧米だけではなくて,アジアの国,アフリカの演劇,そういったものからも多く学ぶべきところがあるかと思いますので,何かマーケットバリューのあるショービジネスの世界で成功することであるとか,コンクールなどで成功することというのを何かすぐれたものの象徴のように使うのはわかりやすいですが,それを目指すのではないのではないかというひっかかりがあります。
多分,池野委員のお話に似ているのかなと思うんですけれども,その国の文化というのは,そこの国にどれだけ定着しているか,根づいているかということのほうが何かもっと価値があるのかと。ローカルにしっかりと根をおろしていることが結果的にグローバルな普遍性というものにつながるということがあるので,このあたりの何か背景となる考え方が,少し誤解を与えないかなというような点を感じました。
具体的にどこをどう直していいかというようなところまで今回詰め切れていないので,文言の直し方については,後ほど事務局の方にご提案したいと思いますけれども,それが1点目です。
もう一つは,アートマネジメントの概念に関してなんですが,これは基本的に昨年,一昨年の議論のまとめを土台にしているので,そのときもこういう出され方をしていたとはいえ,これを読むと芸術団体の現場の人間は何か違和感を感じるだろうなという気がしました。というのは,確かにアートマネジメントというのは芸術と社会をつなぐ役割だというような定義のされ方をして,それで広まってきたところはありますけれども,そういった理念的な部分はもちろんありますが,もっと現実的に芸術団体として色々な価値の中から何を優先して何をバランスをとっていったらいいかということを予算面も含めまして,バランスをとっていく経営の実学なわけですね。だから,経営の観点というのがとても弱いなという気がします。ですので,何か理念的な部分だけでしたら,もちろん行政にもアートマネジメントというのにかかわる部分があると言われてもいいのかもしれませんけれども,行政が経営をするのかというと,少し違うかと。ですので,アートマネジメントで核となる思想ですとか文化政策への考え方,理念というものは広く共有されなければならないけれども,アートマネジメントを担う人材というのは,もう少し現実的なところの経営力というのを求められているのかなという気がします。
それを考えますと腑に落ちるんですけれども,商学部とか経済学部を出た人がいきなり企業の経営者になれるわけはなくて,それと同じで,アートマネジメント学科を出ましたという学部生,院生がいきなり芸術団体の経営者になれるわけはないので,その辺のことの何か根本的な位置づけというのが違っているかなという気がします。
それを考えますと,アートマネジメントとは,何かすごく大きな概念なんですけれども,それがまだ現場の感覚であったり,あるいは関係者の間でも共通して何かこういうものですねというのがコンセンサスになっていないのではないかなと。理念的な部分に関しては,ここに書かれているような言葉でいいのですが,それだけだと思われると,やはり現場はそれだけでは動かないよというようなところのリアクションになってきますし,理念だけがわかっている人間が来ても,やはり現実的にはもっときれいごとではない,細かな雑用が多くあるというところに当たってしまいますので,それに対して資格制度云々というあたりもやはり少し違和感があるなというところは感じられます。
大きく言うとその2点ですけれども,あと舞踊に関しては,かなり具体的に問題点の指摘があって,それはそれでいいと思いますが,それがもっと前進した具体的な目玉の施策となって文言に落とし込まれていくといいと思います。才能の海外への流出は舞踊だけではなく,音楽もそうですし,そういったところで,あるいは公立文化施設に附属する芸術団体というのは舞踊だけが少ないのではなくて全般的に少ない,まだ数え上げられるぐらいしか,演劇,音楽も含めてほとんどないに等しいわけですから,そこが舞踊だけ少ないというような言い回しになっているのは少しどうかなというようなところはございます。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。今,米屋委員の最後の海外に流出しまうという言葉は色々なときに出てくるけども,どうも私はそれには違和感があって,それはすごい小さな日本の島国根性という印象が強いんです。うちのいい連中ってどんどん行っていて,向こうへ行って日本をすごく宣伝して帰ってくる。山脇委員,どうぞ。
- 【山脇委員】
- 先ほど堤委員も少し触れられていましたけれども,プロフェッショナルとして活躍する場,例えば劇場,常打ちの劇場とかそういうものがほとんどないということが問題だと思います。ですから,人材育成で一番大切なのは働く場所を確保することがまず先決かなという気がしています。働く場がないから海外に行くわけですよね。海外に行くのもいいのですが,日本ではプロとして,プロフェッショナルとして活躍するところが少ないということなのだと思うのですが,いかがでございましょうか。
- 【堤委員】
- 私,2つのポイントを少し述べさせていただきたい。
1つは,2週間か3週間前だと思いますが,ピアニストの内田光子さんがデイムという称号を与えられた。これは大変なことなんですね。もうこれはもちろん男性でしたらナイトになるわけですけれども,私はそれについてすごくうらやましく思いました。というのは,イギリスというのは今でこそかつての7つの海を支配した大帝国というあれはないかもしれないけれども,そういう寛容性とか許容力,いいものはいいんだ,それが外人だろうがイギリス人だろうが,そういうものは称号を与える。これはすばらしい考え方だなと思って,振り返って日本のほうを見ますと,そのように外国の方を顕彰する,あそこは日本の東京でこういうものをもらったから,それこそ全世界に通用する,そういうものがまだやはりない。これもやはり全体的な考え方の一つかなと思いますし,本当にデイムだとナイト,サー,デイムと言われたら,これはもう世界中に通用いたしますし,やはりそういうことを認める社会,私はすばらしいなと思いました。
それから,今海外に出る,先ほど部会長代理のお話にも,日本にはいわゆるアーティスティックなものとエンターテインメントの差がはっきりしていないと話されて,私なりに考えていることがございまして,私,プロフェッショナルというか,いわゆるアーチストと呼ばれる人の仕事というのはどういうことかというと,ひょっとしたら受け入れられないかもしれない,反対意見が起こるかもしれない,もうそれこそ商業ベースに乗らないかもしれない,でも自分はこれが自分の思うアートだ,これが芸術だ,音楽だ,何でもいいです,バレエでも。そういうものをもう人間として突き詰めるところまで詰めて,そしてその人がそれを輝いたときに周りの人がそれを見て,ああ,これはすばらしい,これが芸術だ,そういう大変かもしれないけれども,自己をあくまで鍛練し磨き上げていくものが私はアーチストの根源的な仕事だと思っております。
エンターテインメント,もちろんすばらしいです,ブロードウエーのミュージカルにしてもすばらしいものはたくさんありますし,最近,劇団四季と色々なところですばらしいものを行っていますし,ただ,私はエンターテインメントというのはどういうことか,アーチストとどういうところが違うかというと,エンターテインメントというのはある意味で製品をつくって売るのと同じで,いつもカスタマーというかオーディエンスというか聴衆がどういうものを求めていて,どういうものが必要とされているか,そういう逆に人々が求めているものを持っていくのがエンターテインメントだと思います。ですから,そういうマーケットリサーチにしても,内容にしても,ディズニーにしてもそうですが,うまくいけば絶対売れると思います。
その辺が私にとっての違いなんですが,どうしても先ほどのお話に戻りまして,海外に残りたい,どうしてみんな残りたいと思うのかなというのは,ウィーンであり,パリであり,ロンドンであり,ベルリンであり,そこにいたらその人は自分が求める最高の究極点に磨き上げられる,ここにいたら自分が成長できる,そういう気持ちがあるから残りたいと思うのではないかと。ですから,逆に言えば,もし日本という場でそういう気持ちをアーチスト,ペインター,何でもいいですけれども,そういう気持ちを起こさせる要素があれば,どんどん日本でそういう方がふえていくだろうし,また逆に,同時に外国からも日本に行って自分を磨きたい,磨き上げたいという人が出てくるのではないかと私は思います。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。どうですか,長官。
- 【青木長官】
- 人というものは才能で生きるので,これはスポーツ選手もそうですけれども,やはり才能を持っている人は一番その才能が発揮しやすい場所で働きたいので,そこに向かうのは当然ですね。ですから,イチローはメジャーリーグとか,それから日本の大植さんがハノーファーへ行き,今は日本に帰ったけれども,堤先生もアメリカで大活躍をされていたわけですから,そういうものを逃げるとかそのようにとらえる必要はないと思います。だから,例えばヨーロッパではベルリンフィルというのはドイツにしかないので,例えばサイモンラトルもイギリスから引き抜かれるでしょう。アバドもイタリア人だけれども,ウィーンへ行ったりベルリンフィルへ行ったりする。そういうことは当たり前だと思いますけれども。
ただ,問題は,そういう一番大事なのは,日本もやはり来たがるようなそういう場所をつくることですね。それは先ほどのお話のように,地方も中央も含めて,つまり芸術家がここでやりたいという場所をつくることが今回の報告の本当の意味だと思います。そうしたら,日本の才能も日本で,外国の才能もすばらしいのが堤先生のお話のように日本でやりたいとなってきます。アジアの才能が集まってくると,世界的な場になると,それをどうやってつくったらいいかというのが現段階の一番大きな問題だと思います。そこには例えばアートマネジャーとか人材育成といっても,例えば伝統芸能の世界ではもう確立されたものがあるわけで,歌舞伎とか能とか。これは別に先ほど演劇のことをだれかが話されたけれども,欧米に学ぶ必要は全然ないわけです。もう日本で非常に確立された最高の伝統芸能育成というか,もうなっているわけで。
ですから,そこで出てくるのは,やはり近代的な芸術というものと,それから日本という一つの場所というものの関係が出てくるわけで,これは欧米とは違って,特にヨーロッパ,西ヨーロッパと違って,それから日本では近代というのは外から来ましたから,夏目漱石による外発的発展というものですから,その後遺症が残っていることは事実なんで,ただ21世紀の芸術というものはそういう後遺症だけでは行っていけないから,やはりこういう積極的な場所をつくっていき,それで自国だけではなく世界の人材を呼び合わせて行っていく。そのためにはオーディエンスを育成しなくてはいけないし,それからアートマネジャーもそういう観点において人材育成というのを考える必要がある。
それからもう一つ,日本の芸術というものも西洋のクラシック音楽の基礎は共有しながら日本的な音楽がそこに製出するかどうかというのは大きな問題だと思います。ただ,私はそういう趣旨の一つの段階でこういう報告書は今できてきたと思いますので,これに色々と専門家の皆さんのご意見がこれからまた反映されると思われますけれども。
ただ,すごい世界に冠たるものを持っているんですよね。ただ,世界に冠たる場所があるかどうかは,パフォーマンスをやる場所が整備されているかどうかは,さらなるオーディエンスがいるかどうかというのは,また少し別の問題です。ですから,オーディエンスの養成,育成が私は非常に重要だと思います。先ほど田村さんのお話のようにハノーファーが来て,静岡で本気になって行ってみたらみんなやはり感動するでしょう。私は前大阪のサントリーホールより先にできたやつがありますよね。あそこでクリーブランドオーケストラが来て,それで「新世紀」の公演をしました。もう心が震えるような大感動で,ああいう大名曲というものはCDで聞いても退屈でだれも聞かないですけれども,ライブで聞くと本当にすばらしいですね。クリーブランドオーケストラは昔から定評があるわけですけれども,だから,そういう体験を持っていくと,やはりクラシックというのは素晴らしいとなってくるし,それを日本のオーケストラが行えば,日本式でもと思うので,やはりそういう三つどもえでプレーヤーの養成,それからそれを実現可能にするアートマネジメント,それとオーディエンスと場所ですね。だから,そういうことでつないで考えなくては,今度のせっかくのあれがないとは,発展がないとは思います。
ただ,私はアートマネジャーに関しては,やはり皆様の色々なご意見をこれまで拝聴してきましたが,どのようなアートマネジメントが,マネジャーが非常に成功した優秀な人なのか,その条件が何かというのを例えば具体的な人物を挙げていってくださるとすぐわかると思います。メトロポリタン歌劇場で有名なアートマネジャーがいまして,先年引退されて世界中からオマージュがささげられたけれども,ああいう人の資格というのは何をやったのか。別にアートマネジメントの学校で学位を取っているわけでも何でもないですし,日本にも色々な劇場でそういうことをやって成功された例があると思うんで,そういうのを具体的なことが出てきて,それはここに一々名前なんか書けませんから,こういうタイプが必要だというような議論も本当は欲しい。これまで出てこなかったんだ。というわけで,色々とすばらしいご意見を拝聴していてありがたいと思いますけれども,一歩一歩行くという感じは少しずつ出てきました。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。戦略的にメリハリのついた言葉がやはり提言の中に確実に盛り込まれているということが大変必要なことですね。
先ほど堤委員の中にありましたけれども,メディアでふっと思いだしたら,漫画のベルばらの池田さん,たまたま友人なのですが,フランスの文化勲章,レジオン・ドヌールを頂いて,最初来てくださいって,うまいですよ,公邸で簡単に催すのですが,大人だなという,まさしくそれ自身がアートマネジメントを皆さんができていて,導入部分からお帰りになるところまでの持っていき方がにくいなあと。これ1個のバッジだけですが,みんなが何かうーんというようなえらい気分でよく帰っていくことができた。そういう演出効果というのは日本人本来おもてなしの気持ちというのは,茶の心にしろ何にしても一番私は上手であったはずなのですが。そこが押しなべてみんな中途半端な共産主義みたいになったものだから,全然そのらしさが出てこなくなったという感じがするんで,どうですか,皆さんの気持ちの中に少しドラスチックとまでいかなくてもいいけれども,もう一つシンプルにしてこうあるべきだというようなところまで,語尾の話も含めて,余り数なしでいいから,ここというようなところまで持ち込むようなものをですね。
- 【青木長官】
- 先ほど,デイムと言えば,サーとデイムは,今世界で肩書としてともかく何よりも優先されるというか尊重されるのは,イギリス国家が発行しているサーとデイムだけですよ。だから,サーになればみんな,サーというのは名前にもなるわけです。サー保とか,サー亮平とかなるわけですから,家にもなるわけです。名前に,サー・サイモンとかね。今度はデイム光子になるわけですけれども,それ1回きりですけれどもね。だけど,あれはアメリカへ行ってもどこへ行ってもサーになったら途端に全部サーになりますからね,肩書が。あれはすごいと,国家の威信が,そこに文化の威信がかかっているというのはすごいと思いましたね。本当でしたら日本はイギリスより古い王国というか天皇制の国ですから,もっと権威のあるそういうものを国際的に発行してもいい国ですよね,本当はね。非常に説得力があると思うんですよね,やはり天皇制のある国が天皇のもとで文化の称号を出すというのは。だけども残念ながらない。
- 【田村(孝)部会長代理】
- 日本芸能実演家団体協議会でも全国公立文化施設協会でも今討論されています。名称はどうなるかはわかりませんが,やはり劇場法というような法整備が必要と思います。私どもでも,文化政策を勉強した学生を採用しておりますが,やはり劇場で働くものとして最低線の知識は持っていてほしいと思います。文化財団を受験するならば,生の舞台芸術にふれる経験があって欲しいです。教育の中には,歌舞伎も日本の伝統芸能も含めて見るということをぜひ藝術大学の学生さんにはして欲しいと思います。音学大学でも「運命」を全楽章聞いたことはないという学生もいると聞いてびっくりした経験がございます。そういう意味でアートマネジメントを学ぶ者には,色々なもの,色々な芸術に絶対触れているということも教育の中に取り入れていただきたいと思います。資格認定云々とどこかに書いてありましたけれども,司書科を出た人が全員司書になっているわけではありません。学芸員の資格を受けた人が全員美術館に勤めているわけではないわけで,だからつくらなくていいということはないので,やはり劇場の専門家というものは必要です。それは技術者も含めてです。例えばクラシックにはこのマイクがいいと言っても,それを指定して買うということは公共の文化施設ではできにくいです。よほど強く言わないと。それに時間もかかります。委託業者の言うとおりにすると,1社のものが4種類並んでいたりするわけでございます。でも先日私どもの施設では強く言う者がおりましたので,それはスピーカーでしたが,何社かのものを全部大ホールにつるして全員で視聴しました。そして決めました。そういうことをやろうと思えば,こちらに専門家がいればできるのです。ですから,劇場には,いわゆる最低限の知識を持つ舞台技術者が必要です。3,000あるホールすべてがそうである必要はないと思いますけれど,少なくともそういうところにしか文化庁は支援しないとかいうように積極的な劇場の支援を行っていくようにしない限りは,いつまでたっても3,000が同じ日本のよくいう悪平等というようになっていってしまうと思います。全国にそんなに多く劇団員を抱えているところが必要とは思いまんが,例えば1県に1つあればと思います。静岡でもオーケストラ活動で成り立っている本当の意味でのプロのオーケストラはいません。そして東京から招聘したら3倍近いお金がかかります。これが現実でございます。東京だったら何百万でできるところが一千何百万かかるわけです。もっと遠いところでしたらもっとかかります。ですから,劇場というところはどういうところで,どういう専門知識を持って判断できる,そういう意味で,アートマネジャーそのもののキャパシティーは広くあってほしいと思います。少なくとも価値判断出来る人がその劇場にいない限りは,驚くようなことも起き得ます。劇場にいるべき専門家,技術者と両方でございますけれども,必ずいるという状況をつくらなければ現状では変わらないと思います。
- 【宮田部会長】
- 必ず例えば物品購入なんかにしても,そのフィルターが来るんですが,今先生がお話のように,強く言うと,でも大丈夫ですね。
- 【田村(孝)部会長代理】
- 時間はかかります。
- 【宮田部会長】
- 時間は大丈夫ですよ。それはもう訓練だね。
- 【田村(孝)部会長代理】
- 必要ですね。
- 【宮田部会長】
- でもそれを,まぜこぜにするのがあの人たちの得意な分野ですからね。そうしないようにするというのが私らの仕事かもしれませんね。
はい,どうぞ。
- 【唐津委員】
- 先ほど,環境をつくるということが話題になっていたと思いますが,それに関して,2週間ぐらい前に,昨年ヒアリングをいたしました,りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館舞踊部門芸術監督の金森さんと話をする機会がありまして,そのときにかなり興味深いことを言われていたので,こちらに関連してご紹介したいのですが。新潟でもう2期目になって何年かプロのカンパニーをつくられたということなのですが,プロの活動としてお給料をもらいながら仕事ができるという一つ大きな魅力があるんですが,それ以上におもしろい波及効果が起きているみたいです。1日中結局レッスンをして,作品をつくるということに専念することができますので,プロのカンパニーとしていい作品をつくることと同時にいいダンサーが育っているということがあります。しかし,そのダンサーたちが結局ある程度育ったら,違う場を求めてまた出ていくという現象が起きてしまうのです。それは一つ日本にりゅーとぴあしかないということで,海外に行かれる方や,またフリーになられる方がいますけれども,金森さんがおっしゃるには,自分のノイズムというカンパニーがある種バレエダンサーの養成機関になってしまっているということを話されておりました。
人を育てるには,環境,育てる場所がすごく重要であって,そこに1年なり2年なりしっかり腰を落ちつけてやることということが大前提だということが非常に象徴的だと思いました。
私がその話をしたのは,この11,12ページのところですが,フェローシップの制度がやはり一番に来ているんですが,これは何か外で学んできなさいということを推奨しているような感じがしてしまうので,もちろんそれはそれで,より充実する必要はありますが,それよりもむしろ,日本国内で場所をつくるとか環境をつくるということのほうをぜひ強調していただいたほうがよいのではないかなと思います。
それから,それに関連して新国立劇場の役割というところ,これは多分今までの議論の中でもかなり強く私も申し上げてきましたし,この前も山脇委員が申し上げているようなところがあることに比べると,少し比重が低いかと。特に,研修所について非常に具体的な年齢のことが書いてあったりという,何かレベルが低い感じになってしまっていて,もう新国立劇場でそれこそバレエダンサー,どの分野もだと思いますが,しっかりと育て,そしてそれを仕事につなげていくという理想のモデルをつくるというようなことを,語っていただきたい。
今回の素案では,アートマネジメントと実演芸術家の人材育成というところが完全にセパレートされている形なのです。新国立劇場の役割というのが一応芸術家の人材育成のところにしか出てきていないんですね。そうではなくて,そこで当然芸術家も育てるし,そこで彼らを使った企画を通してマネジメント能力とかプロデュース能力というのも上げていくし,それによっていい企画を立てる。そこでできたものが,これも前回申し上げたと思うんですが,地方と連携していくという必要が非常に強くて,それによってつくった作品を何度も上演することで人材も育っていきますし,逆に予算をかけるのではなくて,少しずつ割って色々な地域で行えるような素地をつくっていくということにつなげていくということで,もう少しトータルに先ほどの実演芸術家の育成と,それからマネジメントということを新国立劇場という劇場の中を通して,一つ立体的に何か浮かび上がってくるような書き方がどうにかできないものなのかなということを感じます。
- 【宮田部会長】
- 12ページなんかもう非常に具体的にその役割云々ということを書いてありますが,その割には薄いですよね。
どうぞ。
- 【田村(和)委員】
- 確かに,国立劇場の話が非常に唐突な感じがしますね。やはり今のお話のとおり,位置づけをもっとはっきりして,リーディングシアターなのだという話で,分けて書いてありますね,2カ所出てきて両方に出てきますが,しかも研修のプログラムの話は多く出てきますが,そうではなくて,これは非常に大きな場だという位置づけをもっと,これは前回の委員会の,たしか国立の施設に関してどうだというような話があったのですが,もう少しこれ本当に立体的に総合的な場所だという入れ方をしてほしいなという感じがしました。
- 【宮田部会長】
- 先ほどの長官の話にしてもそうです。この間行きました新国立劇場の研修所。また自分の話をして恐縮ですが,千住にある小学校の廃校を,区のお力をおかりして,私どもが音楽環境創造科というのをつくったのですが,私は,それをイメージしてあそこへ行って,これは違う場所だと思いました。全然もう申しわけないんだけれども話にならないという環境でしたので。ノスタルジックな部分は残しましたよ,階段とかそういうところに,昔の小学校跡地ですから。しかし,内容というか設備,施設,それから学生の動ける環境というのですか,設計図を書いて区の人にお願いしたら区が全部行ってくれたのですが,まだあれは幼稚園のまま間借りしているという感じしかしなかったのでビックリしましたが,そういうのはどうなのですか。少なくともこの中にもう少しその辺も,これもさっきの中途半端な,なあなあ主義になっているものだから突っ込めないんで,ここ新国立劇場を少なくとも,もう少し設備も人材も充実させるというところからいくと,ここの先生方にも問題が出てくると。だけど,新しく高等機関で高等教育の場にもそういうものを提言するというようなところまで持っていっても構わないと思いますが。
- 【山脇委員】
- 新国立劇場は,現実に山のような問題を抱えていると思いますが。それで,ここに置けばいいような話ではない,新国立劇場で1つ委員会ができる,やってもいいようなほど,つまり本当に税金を使っているわけですから,その割には色々な問題を抱えている。ですので,教育内容は大変すばらしいと何か唐突にここにも書いてありますけれども,本当に中途半端だと思います。それでいて,今のお話のように,リーディングカンパニーだからどうのこうのといって,それで済ましてもいいかどうかということも問題だと思いますので,これは考えるべきかと思いますが,いかがでしょう。
- 【宮田部会長】
- 行ったり来たりがまたいいのではないでしょうか。
- 【高萩委員】
- 語尾の話ばかりして申しわけないんですけれども,24ページを見て下さい。アートマネジメントの具体策のところです。24ページの真ん中の(3)のi)「国における方策の点検等」のところで,この文の最後が「拠点となる劇場・音楽堂等や文化芸術団体などに重点的に支援を実施し,それを他にも波及していくような支援方策を行うべきである。」この「べきである。」というのはここだけだと思います。「べきである。」がここにあったおかげで,今年度予算にはアートマネジメントの人材育成の予算がとれているんですね。これは結構重要かと私は思いまして,この「べきである。」を必ず今年の具体的な方策のところに1個ずつ,つまり卓越した実演家の育成のところでは必ず1個「べきである。」を入れる。次の実演家の積極的な活用のところでも必ず「べきである。」を入れるというようにできればと思います。
- 【田村(和)委員】
- 1節に1つね。
- 【高萩委員】
- できれば1節に1ついきたいと思います。
フェローシップですが,これはやっているときから私も何回か言ったかと思いますけれども,新進芸術家海外研修制度というのは文化庁の施策の中で本当に成功した例だと思います。日本の現役のアーチストのうち,かなりの部分が研修制度によって海外に出て帰ってきて活躍しています。パーセンテージでもかなり大きいと思いますし,この制度をもっと拡充するべきであると思います。
文化庁は数年前に国内留学制度をやめています。色々な理由があって取りやめられました。ここでもう一回フェローシップという言い方をして,つまり海外研修制度とは別にフェローシップ,つまり国内留学,うまく才能のある人間に奨学金的なものを与えてでも,とにかく英才教育をしようみたいな形を持ってきているのはすごくすばらしいと思います。それから,文化交流使の話がありましたけれども,つまりフェローシップ系のものをとにかくもう一回検討して,新たな方策を2年以内に新たな形でフェローシップ制度として提案すべきであるとかというような形にならないですか。もしこの部分について今度の二十何日までに絶対に行わなければいけないというのでしたら,分科会か何かつくってでもここの部分だけを書き直すとかいうことはやって,ぜひ「べきである。」に載せたいと。
それから,さっき出ていた新国立劇場なんですが,自民党がおやりになった「棚卸しの構想」の中で,新国立劇場の運営財団と日本芸術文化振興協会と統一すべきだみたいなのが出ていて,少し不安定な状態になっていると思います。政権がどうなるかわからないですが,この部分もこんな研修制度云々のところだけでなく取り上げるべきかもしれないんです。これは,人材育成から話が来ているので,人材育成面からだけに関してだけ何か言ってよいならば,ここに関してだけはさっき清水さんのお話で言うと,「求められる」になっていて,これは自分ではないんだぞと,言っているような雰囲気なんですけれども,やはり新国立劇場というのは文化庁の施策が一番反映されているところで,さっきの海外研修制度と比べて成功した例とは言い切れないと思いますが,頑張っているところだとは思うんです。予算も出ていますから,ここを成功例に持っていくために,人材育成に絡めて新国立劇場に期待すべきことをもう少し集中論議して,言うべきことは言っておくという感じにできないですか。
- 【山脇委員】
- 記憶違いかもしれないのですが,新国立劇場ができるときは,人材育成しないとかなんとかありませんでしたか。
- 【高萩委員】
- 人材育成部会はありまして,アートマネジメント系の委員会があって,地方の財団,劇場から1年から3年という制度で人を受け入れて,研修をして返すという制度を提案して,結構これはうまくいきそうだったんですけれども,直前にやめることになりました。マネジメント制度,それから実演家のほうの制度も含めて途中までは育成制度の準備はしていました。
- 【山脇委員】
- 何でやめたんですか。
- 【高萩委員】
- 何でやめたかはわからないですけれども。
- 【清水芸術文化課長】
- 詳しいところはなんですが,経過としては,拝聴した段階では,研修所というのは一緒にはできずに,その後オペラができて,バレエができて,演劇ができてという形で一つ一つかなり時間を追ってできてきたというような経過ではあります。
- 【高萩委員】
- できる前のところでは。
- 【清水芸術文化課長】
- 新国立劇場,そのとき二国と言っていましたが,二国の人材育成制度を考える委員会みたいなのは存在していました。
- 【宮田部会長】
- 人材に特化して新国立劇場に対して我が部会は物申すということでいけば,非常に明快かと思います。
- 【高萩委員】
- つまり,一番問題なのは,とにかく人事交流をしてくれないんですね。公共劇場という枠組の中で人事交流に弱い。今度退職される方も決して公共文化施設への転職ではないでしょう。行ってくださるといいんですけれども,人材が回る感じになるので。
- 【宮田部会長】
- 新国立劇場,私は専門ではないんですが,期待するものは多大にあると思いますので,人材に関してと清水さん,少し特化しますか。
それと同時に,どうなんですか,フェローシップという言葉ですが私は好ましくないと思い,海外研修と言ったら,内地留学とか。
- 【高萩委員】
- 国内留学。
- 【宮田部会長】
- いきなり国内なのに片仮名になってきて,海外に出て何とかかんとかという感じになっていて,何だか妙だなという感じがします。実は,その内地留学という制度が以前私どものところにもありまして,中学校の先生とか高等学校の先生,小学校の先生を1年間ぐらい色々な学校へ来て研修して帰るという制度がありました。最近なくなりましたね。この制度はあれすごくよかったと思って見ていたんですけれども,本物の場所,うちが本物かどうかは横に置いておいて,本物の場所で色々な実演をするというのはとても彼らにとって,帰ってから子供たちに対していい影響がありますので,人材に関しては,実演芸術家ということだけであれですが,私は美術の人間としては,芸術と持っていったときには,本当に美術なんかは特にギジュツテンションの部分があったりするので,見方だとか,色々な部分があるんで,感性の磨き方とかあるわけですから。
- 【宮田部会長】
- 国内研修制度。そのような何かはっきりとつけさせていただいたらというような感じがします。
次長,いかがですか。
- 【高塩次長】
- いずれにせよ,もうそろそろまとめていただかないと,7月という時期はご承知のように,概算要求前でございまして,これをベースに来年度の概算要求をするということで,さまざまなご意見はございまして,戦略的に書き直すとはあるんですけれども,私も具体的なご提案をいただいて,それを予算という形で。基本的には,法律も無論ありますけれども,反映すると。そのための政策部会という形で考えてまいりまして,実演芸術家と,アートマネジメントはどちらかというと昨年ほとんど議論は終わったとは言いませんけれども,今年になってからは実演芸術家のほうで集中的にご議論いただいたということでございます。確かにここに書いてあるものは,文化庁の現在の施策を前提に,そういうものを少し充実する方向性をお願いしたいということでございまして,先ほど出た国内研修というのもございましたけれども,この11ページの下にある今文化団体人材育成の支援にこれを特化したという,まとめたという経緯があります。これまでは,各分野の統括団体が行うものについて認めていたのをもう少し幅広く個別の劇団などでもできるようにするというような要請や,必ずしも国内研修制度がうまくいっていなかったという反省も踏まえて,今,芸術団体人材育成事業という形で約10億円の事業を,これは調査研究とか,人材以外のこともできるような仕組みですけれども,そういった若干予算の編成はございますけれども,その辺を特化してまた書くというか,ビビッドにしていくことは可能でございます。
それから,新国立劇場については,色々と話題を提供しておりますけれども,確かに今回の政策部会は人材育成部会でございますので,そこに特化した形で今ご提言をいただいていることをどう整理をするかということだろうと思っております。
それから,冒頭山脇さんが言われた,いわゆるバレエ学校等のいわば本当の小からの人材育成ですね,国立でつくるということについては,さまざまな団体からも色々な要望をいただいているわけですけれども,今回,学校教育における育成推進とか歯がゆいものになっておりまして,これですらありていに言いまして学習指導要領との関係で本当にできるのかというようなことも実際問題としてはあるわけでございますけれども,この政策部会としての考え方,またそういった将来的に特化した国立の専門機関の養成ということを提言していただくということは当然あり得るとは思いますけれども,実現には少し中長期的な展望はあろうかという気はいたしますけれども,いずれにしろ,これまでのご議論を,ヒアリングをまとめたというペーパーでございますので,今日のご意見は非常に貴重なご意見として承りたいと思いますけれども,ぜひ宮田部会長におかれましては,まとめる方向でお願いいたします。この議論は終わりというわけではございませんけれども,夏にこういった提言を,報告書をまとめていただくというのは,概算要求との絡みで私どももございまして,さまざまな色々なご提言を具体的に予算化していくところでは,ご相談しながらですけれども,行政的に可能なことを踏まえて,やはり概算要求をしていくという手だてをとりたいと思っております。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございました。少なくとも,昨年度の実績というところでは,先ほどの次長の話ではないですが,アートマネジメントに対して予算がつくということはやはり一歩前進でございますので,今年度に関しても,この辺のご提言の中からどこかで特化した部分をつくり,人材に対しての資金提供をお願いするというように持っていきたいと思っております。
そういう意味では,8番の一番下にあるようなことで,質の高い芸術家が育っていくためには,環境だとか子供たちが本物の文化,芸術に触れ,豊かな人間性を育むと。極めて重要であると書いてございますが,この辺も含めてやっていくことと同時に,この間も青木長官と話していた中にあったんですが,中央教育審議会に文化芸術を話せる人がいないんだという,本当にそんな感じがして,社会の人,数学の人,科学の人,経済の人,色々な人がいるかもしれない。分化芸術を話せる人ってあの中にいるのかなという感じが。やはり本当に教育の制度の中にそういうことをご提言するような環境,それから,待てと言える人間というのは必要なのではないかななんて感じも少ししていますが,ここに書ける話ではないのかもしれませんけれども,そんなところも先生方のご意見が直接国に伝わるような環境にしていくことも私どもの役目かなと思っております。
どうぞ。
- 【高萩委員】
- 絞るならばフェローシップでいくのがよいと思います。新国立劇場は絞りにくいと思うので。フェローシップを直す。それから芸術家の働く場所というのですね。実演芸術家の受け皿の整備というのがよいと思います。金森穣さんのところにヒアリングしたりとかして,なぜあれが1個しか起こらないのかというのは非常に疑問です。だから,「新潟うらやましい」とほかが思えば,日本のどこかで新潟に続くところが出てもいいはずなのに出てこない。どこか地方公共団体で「新潟だけが優遇されているのではないか」,「文化庁どうしているんだ」ぐらいのことが起こってもいいと思うのです。そのぐらいの何か実演家の受け皿のような整備を始めたら,文化庁としてもそこを援助するよ,というような何か提案ができないかと思うのですが。
- 【宮田部会長】
- 特化して援助するような環境があっていいかもしれないですね。金森さんが来たとき,やはり結構やるなという印象が強く残っています。ああいうようなもの,だからといって,市長の篠田さんがそんなに芸術に詳しいと私は全く思えないんだけれども,でも彼はファンになったものですから,すっかり。あれはやはり虜にさせる麻薬みたいなものが必要かもしれませんね。それを援助するのは文化庁の仕事だということかもしれません。どうぞ。
- 【米屋委員】
- 今のことで言いますと,13ページの「劇場・音楽堂等における活動機会の提供」というあたりを,2つ丸がありますけれども,これが本当に自治体が進めやすいように文化庁が後押しするということが明確になるような表現に変えていただいて,ぜひ実演芸術団体がフランチャイズでいるとか,レジデントカンパニーとしているというようなところが確実にふえるということを明確にしていっていただけたらいいなと思います。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。どうぞ。
- 【高萩委員】
- 今,埼玉で,蜷川さんが55歳以上のゴールドシアターをつくって,それからことしの秋から若い二十歳前後の若者の劇団をつくると言っていて,方向はできつつあると思います。少し後押しをしてくれれば続々とできるのではないかと。交響楽団のほうでもアンサンブル金沢があったり,地方でそういうアーチストが劇場にいるとかということを後押しすることが行われてくるとよいのですが。それこそ私は本当にバレエで,北方バレエ団札幌,九州バレエ団など国立のバレエ団がいくつかあるというだけで,かなり動きが変わってくると思いますね。
- 【宮田部会長】
- それはいいですね,いい意味でね。
- 【高萩委員】
- その辺をもしかして文化庁だけでできないというのでしたら,マッチンググラントにする。地方側が3分の1集めたら,3分の1文化庁が出してくれる,それも額が少し小額でなくて,少し多目に支出すみたいな,そういう提案ができないかなと思うのです。北海道に1つ目立つバレエ団があったりするだけでかなり違う。どうやったらバレエ団をつくる気になるというのは聞いてみたいぐらいですけれどもね。
- 【宮田部会長】
- それと同時に,観光と産業と高等機関と,何かそういうのを抱き合わせで持っていくようなとらえ方をしていったらいいのかと。そうすると,皆さんツアーを組んで行くという,できないかな,できると思うのだが。そのためにはやはり軸がないと。
- 【高萩委員】
- 愛知がなぜ芸術団体をつくらないのか,やはり市,県あたりはそういう意識がないのですか?
- 【唐津委員】
- やはり愛知の場合は,多分ほかの施設とは違うと思いますが,財団ではないんですね。だから,財団ではなく県が直営でやっているので,その辺動きにくいということがあるのと,やはりそこにいる人間が本当にどんなに長くても3年ぐらいで人事異動になり替わりますので,問題を感じたころにはもういないというような,そういったことがあります。
- 【米屋委員】
- 新しくつくらなくても,例えば日本芸能実演家団体協議会の傘下にあるプロのバレエ団に例えばどこかの地方の都市で,年間べったりではなくても,半年間ずっとそこで活動するとか数カ月間活動するというような条件で,何か密な関係をつくるなんてオファーがあったらどうと言ったら,行く,行くと言っていましたので,やはり現状あるものを年間通してでなくても数カ月間でもそうやって活動できる基盤として提供して,かつ活動の中身のメニューをふやしていくということができれば,色々なことが起きると思いますので,手段は色々考えられると思いますから,文化庁の施策はそれを後押しするような形になっていっていただけるといいと思います。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございます。後押しというのが私はすごく大事だと思います。みんな国からくれないからやらないだというのではなくて,やはり自己発生があって,それを国が認めているというような何か流れがあると,非常に大人の流れが大きな運動体になると思うんですよね。そういうところには特化して資金援助しようとか,そういうものがいいのかなんていうような気もいたします。
どうぞ。
- 【高萩委員】
- アーチストが公共ホールなどにレジデンスすると,結局アーチストはやはり世間常識からずれている人なので,やはり変わったことを言いますから,それを何とか運営の中でつなげなければいけない。運営の中のわかりやすい言葉にしなくてはいけない。そのためにマネジメントの人も絶対必要になるんで,両方,つまり去年こちらで提案したアートマネジメントの人材が必要だとなります。つまり3年でかわっていくような人たちがアーチストに接しようとしても,わからないからうまくいかないんですね。単なるわがままを言っているだけではないかみたいな感じになる。アーチストが何を表現しようとしているのか,何に不満なのかということをうまく伝えられるということで,マネジメントの人材も必要になります。アーチストが運営に入っていく,運営とかかわっていくことで,やはり新しい考え方というのが生まれてくると思います。
今のところ,ホールの運営ではやはりどちらかというと,役所の論理というのが,管理的な論理がまかり通っているというのが現状です。さっき田村さんのお話みたいに,物を買うのでもアーチストがこっちがいいと言ったらやはりそっちを買うように努力せざるを得ないんですけれども,行政的な感じでこっちがいいと言っても,なかなかそれがうまくいかない。去年アートマネジメントの人材育成をやって,今年アーチストの人材育成をやったことが,マッチングするように提案をしていただければなと思います。
- 【宮田部会長】
- わかりました。ありがとうございます。
- 【田村(孝)部会長代理】
- 文化庁にお伺いしたいのですが,これから例えば何という名称にするかは別として,例えば,劇場法というような法整備の機運が出ていると思うのですが,それを成立させるというか,提案していくということは不可能なことなのですか。
- 【高塩次長】
- 結論からいうと,内容によるかと思いますが,今,芸団協の米屋さんもおられますけれども,この提案は,どちらかというと,国がマル適の認定制度をつくる,芸術監督やそれから経営管理者ですか,芸術監督,それから安全管理者というか技術監督者ですね,そういうものを置いてあるようなところを認定していき,そういうところに集中的に投資するというか支援をしていくと。それは確かに芸術術拠点形成事業という形で,そういった法律はありませんけれども,予算上そういう工夫をしておりますけれども,それを整備するというのは非常に理想形としてはいいのですが,現実に2,000なりホールを持っている劇場を国がマル適マークで認定するということについて,地方公共団体や地方の団体ですとか,さまざまな関係者が既存のものに対して網をかけていくという施策が今うまくできるかどうかというところを検討中ですけれども,私どもとしては,いい機会ですので,いい提言を持っておりますから,また基本方針でも劇場の法的な整備ということは一次方針からうたっていますので,何とかしないといけないということで,内容を少し検討しようと思っておりますけれども,劇場法自身は,基本法が通った平成13年,14年からは問題意識としては長い間持ってきている状況でございます。
- 【田村(孝)部会長代理】
- 法律ができないと,地方自治体の行政は動かないというところがあります。だから,どんなに頑張ってもなかなか難しいというところがあるのです。例えば図書館を例に出して,司書がいても図書館はだめじゃないという話があるのですが,いわゆる浦安市の図書館のように,20年以上前に公募して40人のきちんとした司書を雇用して運営しているところがあります。そこでは,読み聞かせはお母様方やボランティアにはさせていません。司書が行っています。図書館がやる読み聞かせは司書がやるべきだと。ただ,お母様方やボランティアに研修をすることはありますという。それが地域の図書館の役割,情報の拠点としての役割をきちんと果たしているということだと思います。そういう意味で,美術館,図書館に法整備されていても専門家がいても駄目というのではなくて,きちんとしていく本来の役割を果たしていくように持っていくというふうにしていただければ大変ありがたいなと思います。「科学技術基本法」には120の個別法があるそうです。だから科学技術は発展していると言われています。個別法がないのがやはり一番つらい。図書館ですら個別法が少ないのが,日本の図書館が充実しない理由と言われています。例えば本当はすべての学校に図書の充実をといって予算がおりているにもかかわらず,それは使われていないという現実がありますので,是非法整備をと思います。
- 【宮田部会長】
- ありがとうございました。非常に熱が入ってまいりましたが,焦点をそろそろ絞って,プラス細かいことは削り,焦点を絞ってここだというのに特化したところで持っていきたいと思っております。またお知恵を下さい。ありがとうございました。最後に次回の日程についてお願いいたします。
- 【清水芸術文化課長】
- <今後の予定等について説明>
- 【宮田部会長】
- 先生方,ありがとうございました。本日はこれで終了させていただきます。