文化審議会第8期文化政策部会(第7回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,加藤委員,後藤委員,佐々木委員,里中委員,高萩委員,堤委員,坪能委員,富山委員,浜野委員,増田委員,山内委員,吉本委員,平田内閣官房参与

(事務局)

中川副大臣,玉井文化庁長官,清水文部科学審議官,合田文化庁次長,戸渡審議官,清木文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【宮田部会長】第7回の文化政策部会を開催いたします。お忙しいところ本当にありがとうございます。今日は,青柳,小田,酒井,鈴木,西村,山脇の先生方はご欠席ということですが, 青柳委員がペーパーを出してくれているということですので,後で意見交換のときに使いたいと思います。それから,副大臣がお出でになりましたら,お話をお願いさせていただきます。
 前回,19日の部会に続きまして平田内閣官房参与にご出席いただいております。またきょうもよろしくお願い申し上げます。

議 題
 文化政策部会「審議経過報告」(素案)について

【宮田部会長】それでは,「審議経過報告」の素案について,改め審議を深めていきたいと思っておりますので,事務局から前回の骨子からの修正点を中心に配付資料の説明をお願いします。

【大木政策課長】それでは,お手元の資料1から,青柳先生からいただいた意見も含めまして,7までが中身にかかわる資料でございます。うち,資料1は毎回出させていただいておりますが,本日,アンダーラインを引いてございますように,5月24日の第7回の政策部会でございます。予定では6月2日に何とかおまとめいただくということでお願いをいたしているところでございますので,ひとつよろしくお願いいたしたいと存じます。
 お手元の資料2が素案の本体でございますが,前回からの経緯を振り返っていただく必要があろうかと思いますので,順番が逆転いたしますが,まず資料4をごらんいただければと思います。前回のご議論を踏まえまして,宮田部会長とご相談させていただきながら,事務局のほうで素案をとりまとめさせていただいたわけでございますが,直した基本的な視点が幾つかございますので,まず最初にそれをご報告しておきたいと存じます。
 第1,第2,四角で囲ったやつが4つございますが,上の3つがいわば構造論にかかわる部分でございまして,まず1点目でございますが,文化芸術振興の基本理念につきましては,前回の部会で,原案の記述内容は生かしつつも,国の文化行政の組織の在り方等も含めまして,宮田部会長という,委員のしかるべき方からというご発言があったわけでございますが,その後,田村部会長代理とご相談させていただき,宮田部会長に今回執筆いただいたものをお配りいたすとともに,素案の中に既に溶け込まさせていただいております。
 それから,一番大きな議論がございましたのが,2番目の文化芸術振興の重点施策の「1.重点施策の方向性」,すなわち(重点戦略)と括弧書きで書いてある部分につきまして,構造論といたしましては,整理の仕方があまりよくなかったのと。もう一つは,後に出てまいります3つ目の四角の「具体的施策」,これはワーキングの報告を末尾に参考資料として最後はつけるんですが,そのワーキングの報告の中の重点を各ワーキングの縦割りごとに並べたやつが「具体的施策」のほう,その「具体的施策」の中でもって横断的に横串を入れて重点戦略だと位置付けたものを,2番目の四角のところの「重点戦略」として掲げるという趣旨でもって整理したわけでございますが,一つは項目立て,横串のとり方が若干まずいのではなかろうかということと,もう一つは,書いてある内容が具体性を欠き,言い切っていなかったものですから,端的でないというようなご指摘があったということを踏まえて,今回修正をいたしてございます。
 3つめの四角,先ほど少し触れましたが,これは,ワーキングから出されたものを,ワーキングの縦割りごとに整理し直したというか,重要なものだけ抽出したものでございますが,この部分については修正は行っておりません。そういう整理にさせていただいております。
 それから,上の3つにかかわりまして,各委員からいろんなご意見をいただいておりますが,それは構造論にかかわるもの,それから,個別の内容にかかわるものもございましたが,それは適宜修正を加えさせていただいているところでございます。
 そこで,資料2をごらんいただくとともに,資料3も併せてご説明をさせていただきますが資料2で整理された目次は1枚目にあるとおりでございます。基本理念の3本立ては,宮田部会長に整理いただいた内容に即してございます。
 それから,重点戦略といたしましては,第2の1のところでございますが,これにつきましては,吉本委員から具体的なご提案がございまして,そういうことも含めまして,どういう横串で整理をしたらいいのかということで事務局のほうで検討させていただきました。今回ご提示させていただきますのは7本の項目でございます。
 1つは,7本の中でも総論的でございますが,国家戦略として文化芸術立国の実現を目指すという部分でございます。予算の問題等がこの中に入ってございます。それから,支援手法にかかわりまして,(2)でございますが,文化芸術を支援する手法を抜本的に見直す。3点目が創造し,支える人材を充実する。そして,4点目が,たくさんご議論をいただき,ご意見もございました,子どもを対象とした文化芸術振興策の充実でございます。5点目といたしまして,文化芸術を確実に次世代へ継承する。6点目といたしまして,文化芸術により我が国の成長を促す。7点目が文化発信・国際交流の視点ということでございます。
 2番目は,先ほど申し上げましたように,ワーキングの縦割りによる整理でございますので,この点は前回と変えてございません。
 それから,その後に今後の検討課題。今回は前回の議論を踏まえて若干書き加えさせていただいております。後ほどご紹介させていただきます。
 そして,先ほど申し上げましたように,参考資料といたしまして,本日は紙の省略のためつけてございませんが,最終的なこの夏のレポートでは各ワーキングの意見のまとめを参考資料としてつけさせていただくと,こういう構成にしてございます。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 今,配付資料,それから,いろんな意味でのこれからの審議のことで全体像をご説明いただきました。ありがとうございました。
 ちょっと全体の流れがイレギュラーになりますが,大変お忙しい中,中川副大臣がお出でいただいたので,ごあいさつをお願いしてよろしゅうございますでしょうか。

挨 拶

【中川副大臣】遅参をしまして申しわけありません。改め心からお礼を申し上げたいということで,ごあいさつを申し上げます。
 委員の皆様におかれては,本当に精力的に……。

【宮田部会長】どうぞお座りになって……。

【中川副大臣】ちゃんと力が入りませんので(笑)。
 議論をいただいておりまして,本当にありがとうございます。だんだん白熱した議論になってきているということをお聞きしておりまして,ここから新しい方向性が生まれてくるということを期待しながら,中身についてしっかり受けとめさせていただきたいと思っています。
 5月12日の4回の部会に出席させていただいて,各ワーキンググループからご報告をいただいたということでありますが,そのとりまとめ,それから,ほぼ1週間に1回というペースで重ねていただいたということでありまして,中身についても日々報告を受けておりまして,しっかり受けとめさせていただきたいと思います。
 また,19日の部会においては,来年度の概算要求を見据えた形で,具体的な重点付けということについてもご議論をいただいたようでありまして,これについてもしっかり参考にさせていただきながら,また政治的に,それぞれ関係部署に対しても今度は私たちが説得をしていかなければならないという立場に立っていきますので,その根本的な理論付けといいますか,そういうものを十分に期待させていただきたいと思っております。
 いずれにしましても,引き続き活発な議論をしていただきまして,さらなる発展に向けて文化立国,こういう志の下にひとつよろしくご議論いただきますように,お願いを申し上げたいと思います。
 以上,ごあいさつにさせていただきます。ありがとうございました。

【宮田部会長】どうもありがとうございました。
 文化立国ということを肝に銘じてやらせていただきます。

【中川副大臣】はい,よろしくお願いします。

議 題
 文化政策部会「審議経過報告」骨子(案)(続き)

【宮田部会長】それでは,意見交換をよろしくお願い申し上げます。
 はい,どうぞ。

【大木政策課長】もう少しだけ,すみませんが,いきなりまた各論に戻って恐縮でございますが,少し補足説明をさせていただきたいと存じます。
 構造論は先ほど申し上げたとおりでございますが,資料3をごらんいただきますと,前回活発にご議論いただいた中身をごくごくエッセンスだけ述べさせていただいております。ざっと復習の形でごらんいただきますと,「はじめに」,あるいは,今回,整理して,一部,公共政策にかかわる部分は溶け込ませておりますが,総論部分でございますが,全体的に少し強く書けないか,言い切りにできないか。それから,文化政策を総合的に推進する機関,例えば「文化省」のような事柄の設置について書けない,それから,「文化芸術立国を目指す」など,タイトルを工夫してはどうかと。それから,先ほど申し上げましたように,説得力のある文章を委員に書いていただいてはどうか。
 それから,今回の整理の中でなくなっておりますが,注釈などちょっと事務的でございましたが,これはないほうがいいということでありますとか,文化との関係で,その下の○でございますが,経済のみならず,外交政策的なものの例示を加えたらどうかと。「また」以下のところは今回の整理でなくなっております。その次の○も,意見の列挙の部分は整理しておりますので,もうございません。それから,「田園都市構想」につきまして,事柄を挙げずに一般化して,書き改めております。
 それから,問題の重点施策でございますが,これにつきましては,具体的な施策を明確に打ち出すべきなんだということ。それから,予算編成では選択と集中,競争と淘汰,階層化,工程表等がポイントである,横串的な重点事項と個別分野の施策との仕切りを明確にすべきではないか,少し込み入っていたものを明確にすべきではないか。今回,意図してこれは整理させていただいたつもりでございます。
 そうはいっても,重点を打ち出すのは即効性ということはなかなか難しいこともあるよというのが,次の指摘でございます。それから,工程表というご指摘がございました。工程表まではなかなかいっておりませんが,今回,重点戦略を打ち出す中で,概算要求とか,それと同時に進むであろう作業をある程度念頭に置きながら,なるべくやるんだという方向が明確になるように書き改めたつもりでございます。それから,順位付けが必要であるというご指摘。
 裏にまいりまして,文化と観光との関連付けの弱さ。そして,先ほどご説明し,結果として今現在7項目に原案として出させていただいております整理・分類の視点,横串の視点でございます。それから,「新しい公共」と国の文化力との関係,「新しい公共」という文言を使いながら書いている部分が一部ございます。それから,文化予算の中で先進国フランス並みにというふうな,「フランス」という言葉がございましたが,そこまでいかなくても,外国との比較を意識した表現にしたつもりでございます。
 それから,青柳委員から学術振興会,これはアーツカウンシルを念頭に置かれてご発言なさったんだろうと思いますが,そういう提案。それから,文化省のことがここでも出,それから,トリエンナーレのような新しい文化芸術に対する支援を打ち出せないか,「劇場法」や「アーツカウンシル」についても具体的に書くべき。それから,「支える人材」でございましたが,「支える」だけではなくて「創造する」ということも必要ではないか。それから,たくさん出ました初等教育,「子どものころから」という視点でございます。その次がアーカイブ。それから,先ほども出ておりますが,文化と経済,あるいは,外交との関係というのが大まかな意見の概略でございます。
 それを踏まえまして,後ほど朗読も一部させていただきますが,また資料2に戻ってごらんいただきまして,2ページ目のところは後ほど朗読させていただきます。一番問題になっておりましたのが,3ページ,4ページのところでございまして,簡潔にポイントがわかるような形で整理させていただいたつもりでございます。
 まず(1)をごらんいただきますと,国家戦略として「文化芸術立国」の実現を目指すということで,一番最初の►は,浜野先生のご意見等も念頭に置きながら,それから,いろんなワーキングで出ていたそのほかのご議論も念頭に置きながら,国民が文化芸術に触れる機会を格段に増加して,理解をしてもらうということが大事なんだということを,まずもって先頭に掲げてございます。それから,先ほど「外国と比較して圧倒的に少ない」という形容詞をつけて我が国の文化予算を大幅に拡充する。その次が「新しい公共」の視点でございます。
 そして,(2)文化芸術を支援する手法ということで,新たな支援制度も含め,文化芸術団体への支援制度を抜本的に見直す。その次が,「日本版アーツカウンシル」の導入を検討する。そして,地域の核となる文化芸術拠点への支援を拡充する。その法的基盤の整備について早急に具体的な検討を行う。それから,美術品の国家補償制度を導入する。
 そして,人材のところでございますが,1点目が若手をはじめとする芸術家の育成に関する支援。そして,文化芸術や施設の運営を支える専門的人材,個別具体にはたくさんございますが,一くくりで専門的人材としてございます。これの支援を充実する。それから,無形文化財や文化財を支える技術の関係ですが,特に伝承者に対する支援という,文化財の側面からのポイントを上げてございます。それから,これはワーキングの中で,メディアとかあるいは,美術の関係で専門的人材といいますと大学なんですが,宮田部会長と事後にご相談をさせていただく中で,宮田部会長からもお許しをいただきまして,ここに上げてございますが,文化芸術振興にあたりまして,大学等の関係機関との連携を強化するということで,大学ということを意識した書きぶりにしてございます。
 それから,子どもの関係は簡潔に2点。1点目は鑑賞機会,伝統文化や文化財に親しむ機会ということで,いわば触れる機会でございます。そして,2点目がコミュニケーション教育の充実に資するという視点でございます。
 それから,文化芸術を確実に次世代へ継承するということで,文化財ワーキングでご議論いただいておりまして,文化財の部分と,それに加えてアーカイブの構築を整理・分類上ここに入れているところでございます。
 それから,成長の観点ということで,観光振興。それから,NPO,市民等の参加を促した雇用創出。そして,アーティスト・イン・レジデンスでありますとか,地方芸術祭,創造都市による地域文化の振興。そして,関係省庁の連携による文化芸術活動の成果を創造産業に結びつける取組。そして,「くらしの文化」という新しい一つの切り口への参画ということでございます。
 最後が発信と国際交流の観点でございますが,舞台芸術の海外公演,国際共同制作等へ支援の充実。それから,先ほどトリエンナーレというのがご意見の中でございましたが,それを一般化し,「中核的国際芸術フェスティバル」というような文言にしてございます。国内開催や海外出展に対して戦略的に支援するとともに,メディアに関しては,メディア芸術祭を世界的なフェスティバルににするんだということを,ここでうたってございます。それから,文化発信・交流の拠点としての,これは観光にもかかわってまいりますが,博物館・美術館の活動内容の充実。それから,文化財分野における専門的知見からの国際交流。こういう玉込めにさせていただいております。
 以上が資料2の関係でございます。
 最後になりますが,先ほど来お話が出ておりますが,青柳先生から昨日資料7をいただいております。事務局でもう少しよく確認できればよかったんですが,海外出張に行かれてしまいまして,十分な確認ができていないわけでございますが,中身といたしましては,美術館を中心とした独立行政法人,特に文化関係の独立行政法人の持つ問題点ということに特化いたしまして,経営努力がきちっと認められる仕組みにすべきだということをはじめ何点かにつきまして,子細なご提案をいただいているところでございます。
 以上が主だった資料についてのご説明でございます。

【宮田部会長】どうもありがとうございました。
 ちょっと盛りだくさんですが,頭の中を整理していただきまして,進めさせましょう。
 それでは,まず全体構想について,次に,週末にバタバタで書いたもので今いちなんですが,私が全体の流れの中で提言したいなということも,まだ未消化でございますが,書いてありましたので,これにご意見をいただくと。それから,重点施策の方向性,その戦略について40分ばかり皆さんのご意見をいただく。最後に,今後の検討課題とその他,全体を通して意見等々で20分を目安にしていきたいということでございます。
 なお,本日の「審議経過報告」の素案については,審議についての審議となりますので,ご意見をいただく際は,それに対する裏付けをちゃんとつくっておいてくださいね。そうしませんと,また散らかしたことになってはいけませんので。その旨でご議論をいただきたいと思っておりますので,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,全体構想についてです。事務局から説明がございましたように,前回の審議を踏まえて,第1については,私のほうで執筆します。
 第2の1においては,分野の横断的重要施策を7項目に再整理をしているわけですね。この辺のところで,全体としてご質問等々ありましたら伺って,進めていきたいと思っておりますが,いかがでしょうか。
 皮切りにちょっとよろしゅうございますか。昨年のまとめたもので私は唐の漢詩を書かせていただいて,名馬がいても指導者がいなければいけないし,指導者を育てるためには環境をつくらなければいけないという話の部分で,いかに文化政策が大切であるかというようなお話をさせていただいたような気がしておりますが,ことしはもうちょっとドラスティックにいこうかと思ったんですが,資料2(別紙)で書かせてもらったものについて,先生方にご意見をいただきたいと思っております。
 最初は,「文化は国家なり」という言葉でスタートしようと思ったんですが,それは最後の段に私見を示すということでちょっと書かせてもらっております。昔,「鉄は国家なり」という言葉がございましたが,鉄を制することによって国を制するというふうなことがあります。今,アニメーションが鉄鋼を超える大きな輸出産業になっている。これはまさしく文化政策そのものだと思っておりますが,にもかかわらず人間形成は非常に貧しい状況になっていると,「産業のコメ」になっていないというふうなあたり,その辺を少し考えなければいけないのではないかということでございます。
 それから,「文化力は国の力である」というふうに書きたかったんですが,一番最初の会議のときに,「文化」という言葉に「力」をつけるのはおかしいのではないかというある先生のご意見がありましたので,「文化は国の力である」という言葉にさせていただいたと。それから,先ほど大木政策課長のお話の中にもありましたが,産業やいろんなもののベースに文化というものがきちっとあるんだということ。それによって国際協力並びに日本の力が出てくるのではないか。経済力,外交力を高める意味でのベースに文化というのがきちっとなっていると,そういう位置付けをちゃんとしていく認識が必要ではないかというふうなことを書かせてもらっております。
 大体こんな感じで書いておりますので,先生方,ちょっと目を通していただければ。その前に申し上げますが,私は物書きではございませんので,つたないところが随分ありますので,ぜひとも赤を入れていただきたいと。どっちにしても基本理念というのは人間の姿勢そのものにあるのではないかという感じがしておりましたので,その辺のところを書かせてもらいました。いかがでしょうか。目の前ですと,なかなか赤をいうのは言いにくいでしょうから,後で赤を入れていただいても結構でございますので,数日おかせていただいても結構です。
 それでは,この部分においても継続させていただくということにさせていただいてよろしゅうございますか。
 平田先生,どうですか。

【平田内閣官房参与】文章のほうは大変すばらしいものをお書きいただいて,ありがとうございます。これを基にしてやっていただければいいのではないかと思います。
 その次の項目についてでもよろしいですか。

【宮田部会長】そうですね。

【平田内閣官房参与】幾つかございますが,1つは,前回ちょっと舌足らずになってしまいましたが,20日に鳩山総理がアジアフォーラムで,「東アジア共同体における芸術創造都市」,要するにEUにおける欧州文化首都のようなものを提言したいと。これに関しては,日本国政府は強い支援をする用意があるということをおっしゃってくださいました。せっかくおっしゃっていただいたわけですから,このことはぜひ最後の部分に入れていただいて。総理としては,欧州ほどの半年とか1年ほどではなくても,1~2カ月の集中的な芸術祭をアジア各国持ち回りでやるようなことができないかということをお考えのようです。それを将来的な東アジア共同体の基礎につなげたいというのがご意向のようですので,ぜひこれをひとつ入れていただきたいということ。
 それから,あとは後段の各分野における重点施策にもそれぞれ別には入っているんですか,国立の劇場,美術館・博物館と地域の芸術施設の役割分担,あるいは,フェスティバル,それから,国際美術展,国直轄とは言わないまでも,例えば私の専門分野ですと演劇になるわけですが,沖縄ではキジミナーフェスティバルという子ども向けの国際的にも非常に評価の高いフェスティバルをやっております。フェスティバル東京は,どちらかというと国際見本市的な,非常に最先端のものを紹介する,非常にいいフェスティバルになっております。ことしから京都で,これはどちらかというとフリンジー参加の若手中心のフェスティバルになるかと思います。
 そういったような機能分担をきちんとして,それぞれの機能に対して,きちんと国が戦略を持って支援をするということが大事かと思います。これは美術展も同じではないかと思いますので,そこのところは第2の1,重点施策の方向性のところにも,こういったものに国が戦略的に支援をするということをお書きいただくといいのではないかと感じました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 ほかに,先生方いかがでしょうか。重要なことでございます。それはぜひ出しておくべきではないかと思います。
 話は前後しても構いませんので。
 浜野先生,どうぞ。

【浜野委員】今ごろこういうことを聞いていいかどうかよくわからないんですが,大学の専門書では,「舞台芸術」と言わないで,最近,「実演芸術」とよく言うんですね。我々の専門分野にとってそれがすごく便利なのは,メディア芸術とか映画というのは複製芸術ですから,実演芸術と対比するのにすごくやりやすいので,私もその言葉を使っているんですが,言葉というのは大変長い歴史とかあれがあるので,「舞台芸術」がいいんだったら,それでいいんですが。これは平田先生のご専門のあれなので。

【宮田部会長】どうですか。

【平田内閣官房参与】どちらにしても,完全な捕捉はできないと思うんですね。メディアアートの中では,今,インスタレーション的なものが非常に多くなっておりますので,複製芸術とは限らない。メディアアートを「メディア芸術」と文化庁では呼んでいる習慣があって,これも非常に不満があるんですが,メディアアートというのはもうちょっと海外では先端的な,リンツのアルスなんかでやっているようなものをメディアアートと言うと私は認識しておりますので,どうやってもうまく全部がカテゴライズできるわけではないと思います。
 私たちは「舞台芸術」という言い方になれ親しんでおりますので,一般の方というか,社会常識がわかりませんので,ご判断はどなたかに委ねたいところです。

【宮田部会長】そうですね,難しいですよね,表現が時代とともに動いていきますので。単語はそのまま残されていきますので,難しいところであると思います。
 浜野先生,どうですか,それはもう。

【浜野委員】いや,ご専門の方が思い入れのある言葉が一番いいので。わかりました。すみませんです。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 また前後しますが,それは全く構いませんので,ご自由にご発言いただいていいんですが。意見交換のほうで,「文化芸術振興の基本理念について」でございますが,前回の審議を踏まえて,骨子(案)における必須の要素で盛り込みつつ,なるべくインパクトを出せるようにしたいということで,一案作成してみたわけです。
 ちょっと朗読してみますか。どうする,さっきのあれですが。

【滝波企画調整官】はい,わかりました。
 それでは,改めまして,資料2(別紙)ということで,宮田部会長にご執筆賜りました資料をきょう配付してございます。それにつきまして,事務局のほうで朗読をさせていただきたいと存じます。
 では,以下,朗読いたします。

文化芸術振興
基本理念に基本姿勢ありき

宮田亮平

文化は国の力であり,文化芸術とわが国の経済は密接に関連している。これは文化芸術振興の基本理念を支える柱となっている。ここに改め文化芸術振興の基本的な考え方を整理し,今後の方向性について私見を付すことにした。

文化は国の力である
 文化芸術は,過去から未来へと受け継がれ,人々に大きな喜びや感動,心の豊かさややすらぎをもたらす心の資産であり,文化芸術は,国境を越えて様々な価値観を共有する基盤となるものである。グローバル化が進展する今日にあって,他国に誇る自国の文化芸術を持つことは,わたしたち一人ひとりにとって何物にも代え難い心の拠り所となるのである。また,あらゆる領域で創造性が重視される国際社会において,文化芸術活動は持続的な経済発展や国際協力の円滑化の基盤となるため,文化は経済力,外交力を高めるものとして位置付けておかなければならない。

文化芸術とわが国の経済は密接に関連している
 わが国は自らの責任において自国の文化芸術を振興しなければならない。そして,このことは他国政府の積極的な文化発信政策を見るにつけても明らかであり,経済面での国際競争の陰に隠れ,文化発信面で国際社会に遅れを取ってはならず,関係省庁による協働の姿勢をもって連携し,文化芸術を総合的に振興する体制を整えねばならない。振り返れば,わが国では,戦後の高度経済成長の後,二度にわたる石油危機の経験を経て,環境の質,生活の質,心の豊かさが求められるようになった。わたしたちはいま一度そのことを想起し,文化芸術の振興を国の政策の根幹に据えて,これまでの政策を抜本的に見直し,文化芸術の振興策の強化・拡充を図らなければならないのである。

文化は国家なり
 「鉄は国家なり」とは,鉄を確保することが国家戦略的にも重要な位置付けにあった頃の言葉である。確かに日本産業の中心として経済を支えてきたのは鉄であり,「鉄を制するものは国を制す」とまでいわれた。そして,今は,日本の分明を大きく発展させた鉄に代わり,アニメーション関連の輸出額はその数倍にまで成長した。ところが,その実態は必ずしも明らかではないものの,若い人材が極端に減っているという。また,その制作現場からすれば,とても「産業のコメ」とはいえない環境である。はたして,文化芸術振興を目的に,優秀な人材の育成が図られたとして,どれだけの若者がこの国に留まろうとするだろうか。文化芸術の振興を図るうえで,その新たな人材の育成は必須の条件であるが,文化政策は短期的なコスト削減・効率重視とったものであってはならない。国家と文明の時代から,新たな文化芸術の時代を迎えるためには,文化政策部会が自ら率先し,アートマネジメントを行うのも一案ではあるまいか。
 以上でございます。

【宮田部会長】耳で聞くとあまり流れはよくないね。そういう感じもちょっとするんですが。意味は,先ほどもちらっと申し上げたんですが,もう少し整理してみたいと思います。基本的に本当に国が文化芸術政策,振興ということをちゃんとやってなかったら,若者さえも日本からいなくなっちゃいますよというような,危機感をも覚えているということを伝えたかったものですから。それから,この前の議論の中にあったそうですが,役所的な言葉でないほうがいいというふうなことを聞いていたものですから,少しやわらかな感じで書いてみたんですが,ちょっとまだもう少しだな。
 さて,この辺について,先ほど申しましたが,注意点等ございましたら,ぜひぜひ赤を入れていただきたいと思っております。ありがとうございます。
 それでは,総論的な位置付けで記載するということでございますので,タイトルまたはサブタイトルを付して強調すべきというのが前の会議であったそうでございます。この辺はいかがでしょうか。先生方の中で何か……。ドーンと伝えるお題目のような,お念仏のようなものというんですかね,ございましたら。先ほど私ちょっと言いましたが,「鉄は国家なり」ではなくて,「文化は国家なり」とつけたかったんですが,ちょっとやりすぎかなというふうに思ったんですが,何かそういう大きなタイトルがございましたら,ここで……。
 前の前の内閣の話をすると,政権が替わったものだからちょっと言いにくいんですが,私,首相官邸でアジアゲートウェイ戦略会議というのをやらせていただいて,そのときに文化の部分を担当させていただいたんですが,「報告書の表紙があまりカッコよくないので,ちょっとやらせていただいていいですか」と,つい調子に乗って言ってしまって,それ以来,いろんな報告書というと,次またしゃべるようになったんですが,どうですか。これももし何でしたら表紙を。「表紙を飾る」という言葉があるが,表紙をかいてもいいかしら。サブタイトルの代わりに。忙しいのにまた自分で仕事をつくってしまいましたが,いかがでしょうか。そんなふうにして報告書をつくってみたいと思うんですが。あと,プラスアルファの,表題に入れる文字,文言等は先生方からぜひいただけたらと思うんですが,いかがでしょうか。
 はい,どうぞ,高萩先生。

【高萩委員】前回のときも出ていたと思うんですが,「文化省」の件については,今回の一番最初の文化政策部会のときに何人かの方がおっしゃって,前回のときもどこかに書いておいたほうがというのが,落ちていると思います。ぜひ前文のどこかに,「文化省」という言葉自体,結構大きなことだと思いますので,うまく入れていただければと思います。

【宮田部会長】 そうですね。必ず出てきますよね。私はあのときに「文化財産省」という言葉をつくったんですね,観光からいろんなものを入れているというふうなことでつけたんですが。文化庁だけでは非常に枠が小そうございますので。省から庁にするには大変な力,それから,周りの環境が組み込まないとなかなかできないものがあるでしょうからね。
 あと,ございますでしょうか。はい,田村先生,どうぞお願いします。

【田村部会長代理】 重点施策の方向性というのが7つございますが,文化芸術立国の実現を目指す「文化省」にするというのは,外に出ていて,そのための人材育成であったりということになるのかなと思うのですが,いかがなものでございましょうか。マッチンググラントなどは支援の抜本的に見直すというところに入って,税制もそちらに入ってもいいのではないでしょうか。文化芸術立国を目指すために何をするかという重点施策であってもいいかなと思いますが。

【宮田部会長】そうですね。
 では,加藤先生。

【加藤委員】この基本理念に,副題というのでしょうか,キャッチコピーですか,大変積極的な,格調が出てきてよかったのではないかと思うのですが,さらにあえて付け加えるとすると,文化芸術と経済の密接な関連について,あるいは,外交的な,国際的な力になりうるという点については書いていただいたんですが,文化芸術それ自体に大変な価値があるんですが,今日の世の中の特に「新しい公共」というか,新しい市民社会の在り方というようなことから言うと,環境とか福祉とか,都市の創造,地域の振興,その他防災と芸術文化というような課題すら今日は課題に上がっているぐらいですから。そうした多方面にわたって文化芸術が非常に大きな役割を果たしていることは事実なので,あるいは,果たしつつあることは事実だろうと思うので,そういう点から考えると,すべての国の政策に深くかかわっていくし,すべての政策の中の基本的なものの一つなのではないかという点まで踏み込んで表現していただくと,「文化立国」等のキャッチコピーにさらに価値が増すというんでしょうか,リアリティーが出てくるのかなということを思います。この点が一つです。
 もう一つ,重点施策の中に「あらゆる機会をとらえ,国民が文化芸術に触れる機会を格段に増加するとともに,その理解を増進する」とか,経済とのかかわりとか言っていただいて,文化芸術の創造において大学等との関係の強化のようなことはあるのですが,企業をどうするのかということについて全く触れられていないのは,企業の立場からいうともったいないのではないかなと。つまり,国の政策ですから,企業の在り方まであまり口出しをされることはかえって迷惑というふうにも思いますが,しかしながら,企業には企業の文化の振興に関する考え方,また,大きな実績があるという点は自負をしているので,そういう点からいうと,それらの力を借りるということは国にとって非常にプラスになるのではないかと。そういう意味で連携についても一言触れておかれるほうがいいのかなと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 ほかにございますか。佐々木委員,どうぞ。あ,すみません,佐々木先生,後にお願いします。

【堤委員】今,企業ということが出ましたので。確かにここに触れられていない点で,メセナ活動というのが非常に盛んで,いろんな企業がいろんなことをやっておりますよね。それもここに一度入っているとより幅が広くなるのではないかなと思いましたので,ちょっと付け加えさせていただきました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 では,佐々木先生。

【佐々木委員】きょうの資料の中で,資料7で青柳委員から意見を提出されておりますが,この件についてはもう少し後でのほうがよろしゅうございますか。

【宮田部会長】ええ,ちゃんと考えております。

【佐々木委員】そうですか。では,後で。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 それとも,今やっちゃいますか。せっかく佐々木先生からお話がきたので。青柳先生のお話に関して。後でにしましょうか。

【大木政策課長】どちらでも。

【宮田部会長】では,話が出たからすぐいきましょう。申しわけない。
 はい,吉本委員,どうぞ。

【吉本委員】その前に,企業のことについて意見が出たので。具体的に入れるとすると,3ページ目の(1)の3つの箇条書きに「寄附税制の拡充やマッチンググラントなど「新しい公共」」とあるんですが,寄附税制の拡充やマッチンググラントだけが「新しい公共」ではないと思うので。この「寄附税制の拡充やマッチンググラント」というのは「支援する仕組み」にかかっている言葉だと思うんですが,「新しい公共」というのはお金のことだけではないと思いますから,ここに企業とかNPOとか公益法人などというようなことを入れたらどうかなと思うんです。「国だけではなく,地方公共団体,民間企業,NPO,公益法人など新しい公共による文化立国を目指すために必要な施策を講じる」とか,そういうことでいいような気がします。

【宮田部会長】そこのほうが自然だと……。

【吉本委員】「寄附税制」というのは具体的なんですが,お金の話だけになっちゃっているなと思いましたので。そこにいれてはどうかなと思いました。

【宮田部会長】後藤先生,どうぞ。

【後藤委員】3つほどあるんですが,1つは,先ほど加藤委員が言われた文化政策の位置付けですが,私もそういうふうに思います。環境政策というと全部の省庁にかかわる政策で,環境の視点を全部に入れていくということになりますので,それと並ぶような位置付けとして,環境立国であると同時に文化立国であると。環境と並ぶ位置付けなのだということぐらいまで言ってもいいのかなというような気がいたします。
 それから,2番目ですが,今,吉本委員が言われたことと関係するんですが,「寄附税制の拡充」などは次の手法のところに入るのかという気がするんですね。2番目の手法のところを見ると「抜本的に見直す」とあるんですが,その「抜本的」の中身が,何が抜本的に変わるのかというのがちょっとわかりにくいかなという気がしていまして。手法ですから,ここには補助金と税制と法制度がかかわるはずなんですね。
 そうすると,文化庁は著作権制度も管轄していまして,この著作権の契約の在り方によってアニメーターが食べていける,あるいは,クリエーターが食べていける食べていけないという,著作権の収益配分の話を私は一度したことがあると思うんですが,そういうこともかかわってきますので,ここの2番目のところで,補助金のことなのか,税制のことなのか,あるいは,規制のことなのか,著作権のことなのかというのをきちっと,全部政策手段として位置付けた上で,何をどう変えていくのかということの整理が必要ではないかなと。補助金について言うと,ふやすということなんですが,税制については,寄附税制はずっと拡充をし続けていて,所得の40%まではというふうなことまできているんですが,税制を拡充した割には個人の部分などについては寄附がふえていないと。ですから,それは税制だけの問題ではないというふうに思います。ということが一つ。
 それから,文化にかかわる税制というのは寄附だけはなくて,ほかにも様々な税制で,例えば相続税の物納というような例も申し上げましたし,あるいは,企業が美術品を買って公共に見せる場合には控除されるとか,様々なものがありますよということを紹介させていただいたんですが,ほかの税制というのは「抜本的」の中に入らないのかどうかというようなこと。それから,仕組みとしては,アーツカウンシルというのが出ていますが,「文化芸術団体の支援制度を抜本的に見直す」といっている,この中身が一体何なのかいうあたりをもう少し議論する必要があるのではないかなという気がいたします。
 もう一度繰り返すと,手法ですから,補助金,税制,法制度とあるので,その3つについて,何を抜本的にどういうふうに変えるのかという整理が必要ではないかということです。その際に,税制というと寄附税制だけではありませんので,ほかの税制については考えないのかということ。それから,著作権についても,著作権制度を持っているのは非常に強みなので,それがクリエイティブ産業とか,宮田先生がお書きになったクリエーターとして食べていけないという問題にもかかわりますので,その辺は検討しなくいいのかという問題提起です。それが2番目です。
 3番目は,子どもを対象としたという(4)のところなんですが,この子どもの年齢をどう考えるかということなんです。子どもというと,普通,小学生,中学生ぐらいまでしかイメージしないかもしれないんですが,実は0歳から舞台芸術は見れますし,北欧などでは文化政策が対象としているのはユースという,青年あるいは若者というジャンルがありまして,18歳から25歳の人たちのところに対して政策をするというふうなこともありますので,子どもの年齢をどう考えるかということで,若者というところを考えませんかというのが提案なんです。
 それと,舞台芸術の鑑賞機会はあるんですが,美術については書いてないということで,全体を通して何となく舞台芸術はいっぱい出てくるんですが,その割にちょっと美術の分野が少ないかなという気がしていて,子どもに鑑賞機会というのは,舞台芸術もいいですが,美術も必要なので,美術を入れたほうがいいのではないかというふうに思います。
 以上3点です。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 ほかにございますか。はい,どうぞ。

【平田内閣官房参与】今,後藤先生がおっしゃられたことで,前回も,私も申し上げたんですが,何が今問題だから抜本的な改正をしなければいけないのかの問題点がないのでわかりにくいんだと思うんですね。それから,一般的に官僚の方が書きますと,現在までの行政の在り方をあまり悪く書かない傾向がありますので。しかし,これは新政権なので基本的に書いていただいて構わないので,現状がこうで,ここを変えなければいけないんだということをきちんと書いていただいたほうがいいかなと。
 それからもう一つ,作文の仕方の問題なんですが,読んでいて何がおかしいのかなと思ったんですが,(1),(2),(3),(4)で,実現を目指すとか,抜本的に見直すとか,人材を充実すると,これは当たり前のことで,これは,文章にするのではなくて,本来は体言止めにするべきものであって,「文化芸術立国の実現」とか項目の名前ですよね。項目の名前にすべきであって,次の大きな【があって,ここで重複してしまっていて,これは大きな【ではなくて前文ですよね,「国際社会における我が国の魅力や存在感を高めるため,国家戦略として文化芸術立国の実現を目指すために,以下の施策を行う」ということですよね。そして,その下の3つの施策のほうが活字としても大きくならなければいけないはずで,だからインパクトが弱いのではないかと思うんですね。これはちょっと書き方自体が間違っていると思うので,書き方自体を変えていただいたほうがいいのではないかなと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 そのほうがわかりやすいですね。

【平田内閣官房参与】 要するに具体的な施策が大事なので,お題目は要らないと思うんです。

【宮田部会長】そうですね。
 ほかに。高萩先生。

【高萩委員】 さっき田村委員が全体7つのうち1番を抜き出せばというふうにおっしゃったと思うんですが,6番の文化芸術による成長促進というのもほかとはかけ離れています。1番,6番を何らかの格好で抜き出して,重点戦略をなぜ定めなければいけないということなんだよとします。そして,実際の施策が2,3,4,5,7になるのではないかと思うので,そういう整理はいかがかなと思って提案します。

【宮田部会長】まとめにいきだすと,いろいろと見えるところともっと強調しなきゃいけないというところが出てきましたね。ありがとうございます。
 それから,先ほど佐々木先生からお話のありました,青柳先生からのご報告について,そろそろご説明もいただきながら,また動かしていこうかと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。

【佐々木委員】 ありがとうございます。
 青柳委員から資料7で意見の提出がございます。これに関連しまして,私も少し意見を述べさせていただきたいと思うんですが。
 この政策部会はいわゆる基本的な政策を議論するという場でありましたので,国立の施設プロパーの問題にはどちらかというとあまり触れてこなかったわけであります。ただ,青柳先生の意見書にも出ておりますように,先日の事業仕分けで,青柳先生と私も出ましたが,その結果が,例えば国立文化財機構であるとか,国立美術館の特に購入事業,事業に関する拡大を目指すべきというふうな結論を得ているわけであります。ただし,拡大といいましても,これは国の国費を使うのではなくて,それを増さずに,自助努力で拡大をしなさいというのが基本的な結論であります。
 そうなりますと,国立の各施設は自助努力をして自己収入を上げてということになりますが,現実には精いっぱいのことをやっておりまして,それでもなお,青柳先生が幾つか問題点として挙げていらっしゃいますが,例えば自己収入の超過した分が果して自由に使えるかというと,経営努力の認定という基準がございまして,かなり細かい基準がございまして,現実にはほとんどそれは使えないというふうな状況であります。
 それから,青柳先生のペーパーにもありますように,例えば(3)では総人件費改革,業務経費効率化の適用除外を希望するという意味のことが書かれておりますが,年に運営費交付金が3%以上削られていくというふうなことがありまして,自助努力をするにもかかわらず,それが報われにくいというシステムになっているということがありますので,私も青柳先生のご意見に賛同するわけでありますが,国の現在の独立行政法人の制度,あるいは,その運用に関して,改善をする必要があるのではないかと,そういう要求はしていただきたいというのが,我々の立場から切なるお願いであります。
 ただ,そういうことをこういう中でどういうふうに書き込んでいただけるのか,それは私にも今のところよくわかりませんが,国立施設の立場といたしましては,文化芸術の継承・発展を願う極めて基盤的な仕事を国立の施設がやっておりますので,そういう立場からいたしましても,制度の改善,運用の改善というものは何とかしていただいて,より自助努力が報われるというふうな形にしていただければということを願っているわけであります。青柳先生の趣旨も多分そういう趣旨だろうと思いますので。

【宮田部会長】青柳先生の趣旨と全く変わりません。ありがとうございます。
 一生懸命やったのに一生懸命にならない,非常に簡単な話ですが,そういうご意見を上野の機関の人たち皆言っておりまして,いかがなものかということでございます。こういうことをこの中にどういうふうに盛り込むかというのは,ちょっと考えさせていただきたいと思います。

【佐々木委員】よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】自己収入が自由にならないというのはおかしな話ですよねと言いたいんですが,何かがあるのかな。その辺はちょっと切り込みたいですね。
 いかがでしょうか,お気づきの点等。後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】今の佐々木先生のご発言に質問なんですが,何を変えたらよくなるというふうに,何がネックになっているのかということをお聞きしたいということと,美術品の収集に関しては,世界的に財政が厳しくなってくる中で,補助金で買うというだけではなくて,税制を使って企業とかに買っていただくとか,相続税の替わりに物納していただくとかいうのが,ヨーロッパなどでもすごく進んできているので,そのことも併せてぜひ検討をしたらどうかと思いますし。それから,一度購入した作品を売ってしまって新しい作品を買うということが,制度的にできない国もあるんですが,日本の国立美術館の場合はそれができるのかどうか。これも質問なんですが,3点ほどです。

【佐々木委員】 作品等を寄附いただくというのは,現在も国立美術館・博物館ではもちろんやっております,作品の寄附を受けるという。ただ,寄附をする側の税制的なメリットというのが確立しないと,これはなかなか進まないのではないかと。作品を寄贈することによってどういうメリットが寄贈する側に出てくるのかと,その辺が制度的に明確にならないと,これは大きく転換しないのではないかなという気がいたしております。ですから,これは広い意味の税制改革の中でも検討されるべき問題ではないかなと思っております。
 それから,2番目は何でしたっけ,失礼……。

【後藤委員】1番目は何を変えたらよくなるんですか。

【佐々木委員】はい,そうですね。
 今の自己収入が自由に使えないというのは,例えば非常に細かな規定がありまして,前年度の自己収入をオーバーしないと自己収入の認定をされないという制度になっておりまして,前年度の収入をオーバーするということは,うまくいく年といかない年ともちろんあるわけですね。ですから,右上がりに常に収入を上げていくということが必ずしもうまくいかないわけでありまして,これは自己収入の経営努力の在り方を根本から見直していただきたい。つまり,必ずしも前年度の収入をオーバーしなくても,ある一定のノルマを超えればそれは自由に使えるんだというふうな,そういう在り方が使いやすいんだろうと思います。
 それから,例えば作品購入をするという場合も,基本的には基金がないと購入できないわけですね。だから,自己収入で余剰金ができた場合に基金に振り込めるとか,基金が蓄積できるというふうな制度が確立していけば,購入に際しても機動的に活用できるのではないかと思います。
 それからもう一つ,我々が一番苦しいのは,運営費交付金が年々3%,あるいは,3%以上だと思いますが,削減されていると。これがずっと続いていきますと,我々博物館・美術館は水没してしまうのではないかと思うような危機感を持っておりまして,削減をどこでとめていただくかという,ある時期にはある程度とめていただかないとなかなか経営していけないだろうと思っております。
 よろしかったですかね。

【後藤委員】すみません,一度買った作品を売却するという……。

【佐々木委員】そうですね,これは大臣の承認が要るわけです。確かそうですね,大臣の承認を得た上では可能なんですが,それはなかなか難しいだろうと思いますし,今までの例はほとんどないと思います。

【宮田部会長】ないのではないですかね。
 後藤先生,博物館・美術館法の中で具体的なところまでいったので,そのぐらいにしておいていただけたらありがたいんですが。
 事務局のほうで,青柳先生からいただいたもので何かコメント付け加えることはございますか。よろしいですか。

【大木政策課長】全体的にどういう入り方ができるのかということはちょっと検討してみます。

【宮田部会長】そうですね。

【大木政策課長】青柳先生の書かれているペーパーにつきましては,中身は青柳先生からいただいたご意見でございますので。青柳先生は,先ほど申し上げましたように,今,海外に行かれているということもございまして,もう少し補足的に確認をさせていただいた上で,全体修正する中でどういう入れ方ができるかどうかは,事務局のほうで確認させていただきたいと思っております。

【宮田部会長】わかりました。では,そのような路線で動いていただきましょう。
 吉本委員。

【吉本委員】全体的なことに関してなんですが,第2のところで,項目はすごく整理をしていただいて,何をやらなければいけないのかというのが非常に具体的に出ていると思うんですが,前回,工程表というような話もありましたが,例えば拡充するとか,導入するとか,充実するとか,すべてそうなっていて,次のステップとして具体的にどういうことをやるかということについて,果してこれに書き込めるのかどうかわかりませんが,もう少し具体的なイメージがあってもいいような気がしました。
 例えば3ページの(1)に文化予算を大幅に拡充するというのがありますが,ここは,例えば5年間で倍増を目指すとか,そういうふうな目標を出してみたり。あるいは,(2)の「アーツカウンシル」のところがありますが,導入を検討するんですが,これは舞台芸術のワーキングでもかなり議論されたところで,例えば導入を検討するために必要な制度に関する調査を行うとか,あるいは,来年度の助成制度の一つを使って具体的に制度運用を試行してみるとか,そういうふうなことがあったり。
 あるいは,その下の(3)の一番上の「若手をはじめとする支援の充実」のところ,これは従来からやっている在外研修等あるわけですが,それもかなり充実はされていると思いますが,さらにそうしたフェローシップを充実するとか。すべてこの方向で全部推進されればいいと思うんですが,次にどういう感じで打ち出すかというような具体的な施策を,特に早急に取り組むべきものについてはこの中に書くことができないのかなというふうに思います。
 そういう点でいうと,例えば4ページの(5)に「アーカイブ」とあるんですが,アーカイブなんていうのは5年10年,あるいはもっと長いスパンで取り組まなければいけない事業だと思うんですね。例えばアメリカの議会図書館などは,元核シェルターにすべの映像資料とかすべての楽譜の手書き譜とか,そういうものを全部移して,電子データ化し,本館とネットワークをつないで検索できるようにするといったを進めているんですね。それはものすごいお金とものすごい時間がかかると思うんですが。
 アーカイブについては,分野によってすごいいっぱいありますから,何をどうやればいいかという調査を始めるところからやらなければいけないと思うので,そういうものは5年10年かかると思うんですが。前回までの議論で再三出ているように,これに基づいて来年度予算の拡充を視野に入れているとすれば,次のステップで踏み出せることを書くべきではないかと。具体的にどう書けばいいのかというのは私もすぐアイデアはないんですが,もうちょっと盛り込めないかなというふうに思いました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 坪能先生,どうぞ。

【坪能委員】理念のほうと重点施策のほうと両方から感じたことを2つの角度から申し上げます。
 1つは予算で,来年度予算をふやしていただくというようであればすばらしいことだと思っています。お金があれば,だれでも,いつでも,どこでも,どんな企画でもできると思います。国の役割としては,資金が不足したり,予算縮小・カットのときに,どういうふうにしたら生き延びるかということを地方に国が示すべきだと思うんです。
 もう一つの角度からというのは,重点施策のほうを見ますと,「人材育成」という文言が見え隠れしているんです。その中にまた学校教育に頼ろうかというようなお話があるんですが,人材の育成,あるいは子ども,その「子ども」という言葉ももちろん規定していかなければいけないんですが,義務教育といたしましても,子どものうちから人材育成の環境がある,あるいは,考える,触れる,つくれるという時間も含めて,芸術に触れる時間をもう一ワク増やしてとかいったら,大変なことになってしまって,なかなかやってもらえないわけですね。
 文書の中では「人材育成をするためには学校に頼ろう」という文言があるんですが,それでしたらば,理念の中にはっきり人材育成に徹底的に投資する,と記し,それによって海外への発信もできれば,文化財を守ってくれる,その意味もわかってくるような子が育つ,美術のほうも同じです。そのキーワードが,何となく全部散らばっていると見づらくなっている。
 次年度はここに書いてあるようなことが全部できるということを前提に大いに予算を獲得していただきたい。しかし,予算がなくなってくるとみんな事業もカットになってやらなくなっちゃう。人のセイなんですよ,みんな。だが,国というのは持っているお金の中,少なくともこういうことだったらできると,それを示す必要があるのは人材育成の手立てだと思っていますので,そこはもっとしっかり書いたほうがいいのではないかと思っています。
 以上です。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 教育の現場の中にいると今のようなお言葉をもっといっぱい言ってくれるとありがたい。結果的には国がよくなることなんですね。人間がつくるわけですから,国そのものを。

【坪能委員】先生,音楽に限らず,学校で文化芸術をどうして教える必要があるんだというのを,社会的に結構立派な方でも,平気でそういうことをおっしゃるのが日本の現状なんですよ。

【宮田部会長】僕に怒らないでください(笑)。

【坪能委員】いえいえ,はっきり申し上げて……。

【宮田部会長】 僕も常に思って言っていることです。本当にそのとおりだと思います。

【坪能委員】 ですので,そこはみんなで声を大にして言わないと,学校に入るなんていうこと,学校の協力を得るということができないと思いますので。

【宮田部会長】 ありがとうございます。

【坪能委員】失礼しました。

【宮田部会長】いえいえ,ありがとうございます。
 まだご発言のない先生方いらっしゃいますが,よろしゅうございますか。
 では,加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】例えば国際フェスティバルのようなものについて,今後拡充をしていくというような,従来,文化庁としてあまり取り組んでいないことについては,比較的すんなりと書いてあるんですが,例えば(2)の「文化芸術を支援する手法を抜本的に見直し」と,これは一見踏み込んだように書かれていて,その結果が新たな審査・評価の仕組みの導入をするのかと思ったら,検討するという段階にとどまっていて。どうしてこういう表現になるかというと,庶民の文化芸術,庶民のというか,一般の世の中の人たちの文化芸術を,実際に携わっている人たちから一番訴えられ,悲鳴のように聞こえてきているのは,支援の制度が非常にいびつだということなわけですね。
 つまり,これまで,例えば赤字の補てんだとか,赤字のうちの2分の1だとか,3分の1を上限として支援するんだというようなやり方では,もはやもたないよということが強く言われていて,そもそもその辺の制度を変えなくてはならない。したがって,アーツカウンシルのような制度づくりが必要なのではないかという積極的な提案になってきているわけですが,そうしたところで,現状置かれている課題というものについて,変革,抜本的見直しに対する熱意という,あるいは,問題意識というか,課題意識,危機感というものがまだこういう点では不十分なのではないかなと。ここはもっとスピードを上げて,アーツカウンシルのような既に芸術文化振興基金はあるわけですから,そうしたものをその方向でどうして改組できないのかというようなことを含めて,変えていくということは緊急課題だろうと思います。
 その辺を変えるだけでも,文化芸術に携わっている人々から,「文化庁,変わったな」というところは,ものすごく明確にメッセージとしてあらわれると思います。そのあたりをもっと積極的にここで,今年度の新しい提案としてはもっと踏み込んで。現状の課題についてもうちょっと整理をした上でぜひ踏み込んで,少なくともこれは緊急の提案として,積極的にいろいろなところに提案していただいている点は高く評価しますが,関係者から言えば悲願とも言えるべきものを,手をつけないとは言っていませんが,非常にゆっくりとした,スピードの遅い表現ではいかがなものかなというふうに思います。

【宮田部会長】この会議が始まる最初の会議のときですか,何しろ踏み込もうと,変わったぞという意識の下に先生方にご意見をいただきたいというところで動いていたのを改め確認をしました。

【加藤委員】もう一つ,すみません。言い出したついでで,とまらなくなったので言うんですが(笑)。先ほどの青柳先生のご意見の中に提案されている,国のこれまでの文化振興のための施設の在り方について,これも幾つも課題を抱えていると思うんですが,私は青柳先生,佐々木先生のこれまで進めてこられたことを高く評価しておりますから,より拡充する方向でぜひ進めてほしい。これは一つ言えることです。
 ただし,その中で例えば美術館について言えば,美術のワーキンググループでも議論をいたしましたし,それは「独法の在り方,国立美術館・博物館全体の在り方の中で整理する」という文言で引き取られたんだが,国立新美術館の在り方については,役割について再検討したほうがいいのではないか。今のコレクションを持たないで美術館と名乗っているやり方がいいのか。方向は2つですから。1つは真の美術館に改組していくのか,それとも,それをやめて別のものにするのか,どちらか整理をする必要があると思うんですね。
 そうしたことを含めて,本来美術館・博物館が何をなすべきなのかという根本のところをもっときちんと押さえて,今のような様々な,余計な仕事とまでは言いませんが,いろいろな事業を多彩にやっていくことに果して意味があるのかどうかということは,再度,独立行政法人でやっていくことに意味があるのかどうかも含めて,ぜひ検討していっていただきたいなと思います。方向性についてはまだまだ議論が必要だろうと思うので,結論を押しつけたいと思いませんが,ぜひあるべき姿を少なくとも検討するということは考えていたがないと。特に地方自治体がつくっている文化施設の在り方を考えていく上で,悪しき見本としての役割を果たしている可能性があるということです。新国立劇場の在り方を含めてそのことは本来国がなすべきことがもっとあったはずなので,そういうことに邁進していくという方向で,ぜひ再検討をお願いしたいなと思います。

【宮田部会長】ちょっと具体的な話になりますが,加藤先生,(3)の美術分野の中で,書ける量というのは,大体量がありますよね。ワーキングの中でご議論いただいていると思いますが,私も専門の部分なので,どうなんですか,そもそも論の話をこの中にぶつけたほうがいいんですか。
 どうぞ。

【平田内閣官房参与】一番最初に申し上げましたように,重点施策のほうに,加藤さんもおっしゃられたように,国立の文化施設の在り方全体を見直すという項目を入れて,それを早ければ今年度中から着手したほうがいいと思うんですが,少なくとも来年度には調査検討,拡充ということですから。

【宮田部会長】そうだよね,拡充ということだから,それに対して書かなければね。

【平田内閣官房参与】特に新国立の場合には1個しかないわけですよね,現代劇の劇場が。それでいいのかとか,そういった抜本的な議論をする場所を必ず設置してくださいということを,ここに盛り込んだほうがいいと僕は思います。

【宮田部会長】議論が具体ということになるわけです。
 あとございますでしょうか。浜野先生。

【浜野委員】基本理念のところなんですが,一番最後に分明と文化を対比していただいて大変よかったと思います。明治維新以降,日本は文明,要するに科学技術振興で文化はないがしろにしてきたということが端的に書かれているんですが,国だ国だと書いているので。文化というのは多様性だし,漢字文化もあれば,江戸前文化もあれば,関西もあるというので,国家がリーダーシップを発揮されるという強い意思が出ているのでいいんですが,では地域はどうするのということ,地方の方が読まれると「また中央主権かよ」みたいな印象もないわけではないので。文化は本当に多様で多元的なので,そういうことを考えると地域も支援して「一緒にやろうぜ」みたいなのがちょこっとでいいからあるといいかなと。これは感想なんですが。

【宮田部会長】今回のですごく気をつけているのは,何でもかんでもごった煮になると,結局何もやらないことと等しくなるので,どこかで一つの大きなカラーを出さなければ,旗を振らなければいけないなというのがあるところで動いてはいるんですが。国家というと地方は,地方というと,では……。まあ,いいや。そういうふうな感じになってきますよね。
 はい,どうぞ。

【高萩委員】2点あります。子ども向けの施策のところで,さっき後藤さんがおっしゃったことで言うと,「成長期に合わせた」というような,「子どもの成長に合わせたきめ細かい鑑賞機会の提供」というのを入れていただければなと思います。
 もう一つ,さっき平田さんがおっしゃったのに勇気付けられて言うんですが,最後の戦略,7の文化発信・交流の充実で,東アジアの文化首都みたいなことが入れられるなら入れても良いのではと思います。アジアの文化首都のようなものがあったほうが私もいいとは思いますので。その場合,国民文化祭,どうされるのかなということがちょっと気になるところで,スクラップ・アンド・ビルドみたいなこともありますし,国民文化祭の役割について今どういうふうにお考えになっているのか。
 粛々と今やられているし,もう用意をされているところもあると思うんですが,このままあと10年20年おやりになるのかどうか。それをアジア版的に見直して,国民文化祭とアジアのどこかが,連携する。ある年,日本の中ではここがアジア文化首都日本版的な,そこがやる。アジアの中のどこの都市と日本の中の2つの都市でやるみたいな,国際的な,アジア的な視野の中で見直すというのもあるのかなと思いました。ただ,書き込めるかどうか,ちょっとこれはわからないんですが。

【宮田部会長】今回,国民文化祭については触れませんでしたものね。東アジアといえば,平田先生ね,我田引水で恐縮なんですが,東京芸大はとっくの昔からずっと文化芸術に関してアジア,特に韓国,中国とパイプを太くして,毎回サミットをやったり,宣言を出したりして,留学生交換をしたりというのをやっているんですね。ですから,大学教育の中で,特に文化芸術関係に関してはむしろ国よりも先行しておりますので,こういうところでの意見交換とか情報交換とか,いろんなことはぜひやりたいなと思っております。
 非常に小さい話で恐縮なんですが,結構大きな流れになっておりまして,特に留学生問題に対しては非常に大きく動いております。
 はい,どうぞ,里中先生。

【里中委員】基本理念の「文化は国家なり」というところで,ちょっとだけ気になったのが,アニメーション業界のことが書いてあるんですが,ここでこういう具体的,かつ,どこかから突っ込まれそうなことは書かないほうがいいかなとちらっと思いました。なぜならば,若い人材が極端に減っているというのも,これも見方によるんですよ。アニメにかかわりたい若者はふえているんです。あと,制作現場が見返りが少ないというのは大昔からそうなので,近年急にそうなったわけではない,もともと貧しくても好きだからやっていると。それがいいとは言いませんが,そういう業界なんですね。
 ただ,問題は優秀な人材が減っている。なぜかというと,仕方がありません,こういうのも商業としてやっているので,商業アニメは,アニメーションという動画の絵を描く部分をかなり昔から海外に,企業が海外に工場を持ちますよね,それと同じでまず韓国にアニメーターたちを求めた,ひたすら人件費なんですよ。まず韓国に求めた。ところが,韓国で人件費が上がってきて,また韓国も現場のアニメーター,動画を描く人たちが力をつけてきて,自前でどんどんつくる。昔からもつくっているんですが。そうなると,今度は中国にアニメ制作工場といっていいんですかね,現場を持っていくということがあって。
 産業の空洞化と同じで,日本国内できちんと原画から動画に起こせる,絵を描ける,監督のような上手な,名前で仕事がとれるアニメーターが本当に少ないんですよ。なぜなら,育つ過程というのを全部,海外の土地に持っていかれちゃったんですね。最初,韓国,次,中国,今,ベトナムとかインドネシアとか。そういうところでひたすらただ人件費のためにやっております。ところが,動画を描いていって力をつけて,ちゃんと名を成したアニメーターになっていけるんですが,訓練の過程がないものですから,かつて日本国内で動画を一生懸命描いていた時代に力をつけた,腕のいいアニメーターのところに仕事が集中するわけです。ですから,きちと描けるアニメーターの方たちは収入もありますが,空洞化が起きていますので,年齢的にも上がってきている。だから,本来は跡継ぎとして育ってこなければいけなかった年代が空白になっているわけですね。
 これは,たまたまですが,アニメーション関連の問題だけではなくて,ほかのいろんな日本国内の様々な企業にかかわる問題であると思うんです。ほかの企業,ここで文化とか芸術に含まれない工芸に近いような技術の分野とか,そういうものでももうそうなってきているんですね。ですから,人を育てるというのは長いスパンで見ないと大変だというのはこういうところにも言えるんですが。ただし,ここに出していただいて緊迫感を煽るというのは大変いいと思うんですが,例として「アニメーション関連の輸出額がその数倍にまで成長したが,制作現場への見返りと人材育成には不安な面がある」とか,そういうぼかした書き方のほうがいいかなと,ふと思いました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 私もここはちょっと気になっていたところなんです。ただ,非常に具体性があったものですから。この部会の中でもメディア,アニメの話が随分出たので,例題として出すのはとてもいいのかなというのと,それから,ついこの間,NHKで現場の若い人たちの悲惨な状況が非常に詳しくドキュメンタリーされていましたので,私も衝撃的というか,現実というのは大変なんだなと。だけど,これでは若者たちが飛散してしまうという現実があったものですから,例題に書かせてもらいました。参考になりました。ありがとうございます。ちょっと修正させてもらいます。
 どうぞ,田村委員。

【田村部会長代理】先ほど後藤先生からもお話がございましたが,私は「子どもを対象とした」というところは,「できるだけ小さいうちから」という言葉にしていただくのがいいかなと。と申しますのは,静岡というのは劇団も持っています。ですから,文化政策は国でもできないことをしています。でも,多彩な芸術,優れた芸術に子どもたちが触れられるかというと,全く触れられないのが現状なんですね。それは中山間地域もございますし,伊豆半島の先などは全く触れたことがないというのが現実でございます。
 「子どもを対象とした優れた」とありますので,これがあまりよくない舞台芸術というふうには読み取れませんが,「できるだけ小さいうちから多彩で優れた」ということが必要だと思います。それと,「舞台芸術」ではなくて「文化芸術」になさればよろしいのかなと思います。コミュニケーション教育といった場合,皆様は何を連想なさっていらっしゃるでしょうか。というのは,小さいうちだったら,演劇を通じてというよりは,ダンスと音楽だと思います。それがコミュニケーション能力を育むと思いますし,年齢に応じたということがございます。
 それともう一つこのような活動について,新たなる仕事の場というふうに考えないで,芸術家がそれにどう向き合うかということがいろんな場で,一番問われていると思います。事業仕分けというのはかかわる者の姿勢が問われていると思っておりますので,そこが何らかわかるように。芸術家も文化芸術立国を目指す,要するに周りの者だけではないという,芸術家自身もその立場を担う者であるという意識は必要ではないかなと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 16:10になりましたが,今後の検討課題も含めて。はい。

【大木政策課長】今度の検討課題に入る前に一つだけ。今,ご議論を伺っておりまして,次回が予定されている上では部会として最終回だということに一応なってございます。もちろん,議論が尽くせない場合には別の選択肢もあろうかと思いますが。今,個別具体のお話,それから,方向性についてのお話,いろいろありました中で,2つほどご確認と意思の統一をさせていただきたいと思うんですが。
 まず構造論にかかわりまして,重点施策の方向性,すなわち重点戦略の中で,田村先生から(1)の文化芸術立国にかかわる部分,もう一つは,高萩先生から(6)の成長にかかわる部分。これについて個別具体の玉を並べていく,ここの(1),(2)の横並びではなくて,前に出したほうがよろしいのではなかろうかというようなお話があったと理解しております。当然(1)の中にも(6)の中にも総論的なものと個別具体のものとがありまして,個別具体のものは(2),(3)の並びで残していくんだろうと思いつつも,総論的にという部分は感じとしては,第2の1の重点施策の方向性の重点戦略の下のリード文みたいな感じになるんでしょうか,それとも理念の中に入れ込んでしまうと,そんな感じのイメージでございましょうか。

【高萩委員】私はどっちかというとリード的なことを考えていました。

【大木政策課長】田村先生,よろしゅうございますか。

【田村部会長代理】はい,そうです。

【大木政策課長】それからもう一つ,何名かの先生方から,平田参与,吉本委員,坪能委員,加藤委員,いずれも,ご発言された方はともかくといたしまして,要素が2つございまして。重点戦略を書くにあたって,まず一つ,いわゆる現状の問題認識の切実感を伴うような記述のようなものがないではないだろうかということと,もう一つは,個別具体の施策を並べる際に,吉本委員から特に「5年で倍増」というような言葉もあるように少し計画観を持った,それから,加藤委員からは「検討する」という文言について弱さというか,肯定感が弱いような印象を持たれたような発言があったわけでございますが,限られた時間の中で,部会長,部会長代理ともご相談させていただきながら,事務局で整理をさせていただき,直しを全体的に入れてみようかと思います。
 一つは,今後の課題のところで説明があろうかと思いますが,少し先を見越したような形で何年間かを見通した形では,最終の答申に向けてスケジュール観,達成目標と工程のスケジュールを明確にしたらどうかというような提案をさせていただく予定にしておりました。順番が逆になりますが,今回,概算要求ということで,今こうした議論が進みながら,今後,予算に向けて短期間でかなりの作業が進みながら,来年度の概算要求,枠組みがどうなるのかというのもわからないながらに,ドタバタと進んでいくのが単年度の概算要求です。
 その中で,我々としても,どんな形であれ何とか一歩でも二歩でも踏み出せるのかというものを,漏れなくこの中におきたいなという気持ちはあるんですが,その程度というのが,吉本先生から調査費で云々という話がありましたが,調査費でいくのか,具体的に事業化できるのかということも含めて,率直にいって,作業をしながら,走りながらでないと見極めつかないようなところもあるんです,単年度,来年の夏ということに限定した場合に。そうした事情の中でもなるべく具体的に書けるように努力をしてみたいと思います。ただ,皆さんご納得いけるようなところまで書き切ることができるのかどうかというのは,作業をさせていただいて,またごらんいただいてご判断をいただければというふうに思っているのが一点ございます。
 それから,これも前後しましたが,課題意識を明確にということに関しましては,ワーキングの報告の中に,これはワーキンググループによっても違いますが,現状の課題が書かれて部分もございます。そうしたものと重複しないように,感じとしては(1)とか(2)のリード文のようなところで課題意識を,それこそ切実感を持ってある程度入れ込みながら,その上で,平田参与のご発言にありましたように,個別の玉込めと軽重がリード文のほうとで優劣が逆転してしまってはいけませんので,個別の玉を込めている,今,►で記述している部分をちょっと目立つような記述にするなり何なり,見映えと表現ぶりの調整をさせていただくというような感じになるのかなという印象を私は持っているんですが,そういう作業の進め方で,あと1回という中で大丈夫かどうかという,そこのところなんですが。

【宮田部会長】今までのきょうの議論を含めてまとめの中で,事務局からお話がございましたが,それで大分印象は変わってくると期待したいんですが,いかがでしょうか。

【坪能委員】先ほど宮田先生おっしゃったサブタイトルにしても,キャッチといいますか,一言で,我々はこれを高貴なといいますか,非常に優れたものだとわかるんですが,隣のおじさんやおばさんたちにもわかる言葉というのも必要かなと思うんですね。つまり,エリートの人たちというか,こういう専門的な人たちは理解する。これによって動くんだというが,他人事に思えるんですよね。だから,目玉のロゴが一つあると「ああ,そうか」と思うんですが,それに関しては,宮田先生,いかがですか。

【宮田部会長】本当ですね,念仏を3回唱えれば天国に行ける,極楽浄土へ行けるという,何かがございますが。行けるかどうは別としても,行けるために今,僕らが労をしているわけでございますが,どうでしょうか。私はここ3日間ぐらいごちゃごちゃ頭を悩ましていたときに,のっけに書こうと思ったのは「文化は国家なり」という言葉なんですが,結果的に書かずに下のほうへ持っていっちゃったんですが。
 キャッチとしてはそのぐらいの強さを持って,国そのものを文化が支えているんだよ,みんなわかってよというのと,ちゃんと国も変化したんだから,意識をきちっと,こちらに風を向かせてくださいということを提言するような強さが必要だと僕は思うんですね。
 はい,どうぞ。

【堤委員】工程だとか具体的に,それから,予算をどういうふうにふやしていくとか,そういう話が出ておりますが,ある意味で北朝鮮のまねをするわけではないですが,例えば5カ年計画とか,そういうような長い流れのスパンで,5年の中でこういうふうにやっていくんだ,10年でやっていくんだ,そういうような政策のつくり方をするのも一つのやり方かなと思います。

【宮田部会長】はい。どうぞ。

【増田委員】前回から申し上げているんですが,国がいろんなところに主体性をもって活動する中に,経済界に切り込むというんですか,経済界に近づくというんですか,文化庁が経済界との定期懇談会を持って何とかするというような,重点施策の1番のところで,「寄附税制の拡充やマッチンググラント」のところで,「新しい公共」に関することで,委員からも企業,NPOなどの活動をということがありましたが,企業とかいう単発のものではなくて,実業界というか経済界というか,そういうのに国が積極的に近づいて,そこの力を引き出すんだと,そういう文言があれば新鮮ではないかなと,私はつくづくそういう力を欲しいと思っていますので,感じるんですが,いかがでしょうか。

【宮田部会長】ちょっと考えます。これはまた宿題にさせてください。宿題といってももうけつに火がついているんですが。最後の踏ん張りで何とかなると思います。
 吉本先生,どうぞ。

【吉本委員】先ほど大木課長にご説明いただいて,今後の作業のイメージが見えたんですが,きょうの資料2の一番最後に今後の検討課題として,ここには達成目標及び工程スケジュールという項目が上がっていますよね。これは今回の答申をまとめた後の課題として記載されていることだと思うんですが,6月2日までというと本当に日がないので,これができるかどうかわかりませんが,粗ら粗らでも検討したものに基づいて文章を記述されたりするといいかなと思ったんですが,この辺はいかがなんでしょうか。

【宮田部会長】大木さん,どうぞ。

【大木政策課長】ここで今後の検討課題というふうに上げておりますのは,よく中間報告を出して答申までの間に議論ができないものが当然あるわけで,それについて答申までの間にこれをやりますよということを見せるために,この手のものを置くということでございます。したがいまして,これを6月2日までにとかいうわけでは全くなくて,全然議論してない話ばかりでございますので,先ほど堤先生からもお話ございましたように,この答申が出ると,この答申が第3次基本方針に全部つながってまいります。
 そして,大臣からご説明したスケジュール感というのが,夏の概算要求までに粗ら粗らのものをというのと,それから,どういう文言の使い方をしたか今正確にはあれですが,大体この年度内ぐらい,ですから来年の3月ぐらいまでの間に最後の答申までいくんだという方向性をお話の中で示しているはずでございます。したがいまして,来年の3月に向けての作業の中でこうしたところを補充していただいて,工程観も明確にしていただくと,それが閣議決定に結びつくような第3次基本方針に結びついていくと,こういうイメージでここの今後の検討課題というのは書いてございます。
 ですから,今後の検討課題は,これだけでよろしいかどうかというご議論はあろうかと思いますが,中間報告を終って何が積み残っているのかということをこのあたりで明確にしていただくと,それを中間報告の末尾につけていただくと。こういうことになろうかと考えております。

【宮田部会長】はい。
 まだ少し残っていますが,今週いっぱいぐらいでぜひ先生方いろいろお出しいただけたら,まとめることができるかなと思っておりますが。
 高萩先生,どうぞ。

【高萩委員】現実的には,さっき吉本委員がおっしゃったような5年で倍増とか,来年度予算で準備予算をつけるとか,そういう書き方は可能なんですか。

【宮田部会長】どうぞ。

【大木政策課長】この中間報告が出るのが6月の時点です。その後,役所のほうは概算要求の検討を始めて,概算要求を提出するのが8月の末になります。ですから,7月,8月はまさに鉄火場の状態でやっていくわけなんです。その中では,政府どこの役所もそうですが,いろんな情報が入ってきて,枠があるのないのとか,ここはこうだとかあそこはああだとか,これはこれだけ削れとか,そんな話がガチャガチャある中でとにかく作業をしていかなければならないと。
 しかも,審議会のご議論とまた別途に役所の中でラインがございまして,政務三役につながるようなラインで現実的に判断していかなければならないというところで,どこまで書けるのかということは,先ほど申し上げましたようにぎりぎりのところまでやってみたいと思います。ですが,これも概算要求と並行して進んでいくわけではなくて,こっちの方が先行するものですから,どこまでいけるのかというのはやってみないとわからない部分がございます。

【高萩委員】それでしたら,5番の文化芸術を確実に次世代へ継承というところで,文化財の修理や防災対策を計画的に進めると,進めたほうがいいなということについてはわかるんですが,文化財予算,防災対策予算については何年で倍増とか,幾つか書けそうなところについてはこちらのほうで,各ワーキンググループで話をしていると思いますので,ここは工程観を持って書きましょうというところを選んで少し積極的に書いておくのはどうでしょう。論議をしていないというよりは,ワーキンググループ的には多分論議をしているだろうと思いますので,それをぜひ拾って書ければと思うんです。

【大木政策課長】ワーキングの担当の課と,ワーキングでの議論をもう一回精査してみまして,それに限らず,とにかく書けるものは書くような形でもって,ぎりぎりのところをちょっとやってみたいと思っております。

【宮田部会長】せっかくの議論が空論にならないようにということでございます。
 あとございますか。浜野先生。

【浜野委員】最初の議論に戻るんですが,委員の方々の了解は「文化省」だと思うんですが,それはどうなったんですか。これでもし文化省ができるんだったらものすごく大きな成果で,これにかかわった意義があったと思うぐらいすごいと思うんですが,結果書き込むことになったんでしたっけ。

【宮田部会長】どうでしたっけ。

【高萩委員】宮田部会長がお書きになるではないですか?

【宮田部会長】おれは書きたいなと思っているんだが,勇気も少々要るんだが。それを念願してはいるんですがね。
 どうですか。

【里中委員】私,テクニック的なことはわかりませんが,一応「文化省」と書いてしまったほうが,さっきおっしゃった隣のおじさんおばさんも,「ああ,これは変わるんだ」ということがすごくわかりやすいと思うんですよ(笑)。国が本気で文化に力を入れるんだなということが,たった3文字でバンと伝わると思うんです。だから,大抵のことはしても,大丈夫とは言わないですが。
 ただ,難しいのは,こういうことを言い出したときに,お役所的にあるいは政府的に,一たんその言葉を出しちゃった場合に,付いて回る根拠とか責任問題とかいろいろ出てくると思うんですが,審議会というか委員会が勝手にそういうことをいっちゃったということで投げ飛ばしちゃうことはできないんですか。どうなんですか。すみません,とっ散らかして。

【宮田部会長】それもまた何とも虚しい話だね。せっかく委員会の先生方がこれだけいて,こうしましょうよというお話があるならば。
 加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】この審議会の一番最初の部会の冒頭で申し上げたことが2つあるんです。1つは,ここで出た意見については,できるできないにかかわらず,役所としては積極的に検討はしてほしいと。ともかくできる方向で,何が課題,何が難しいだろうかという結論はいろいろあろうかと思うんですが,検討してほしいと。それから,報告書というか答申の書き方の中で,表現はいろいろあるでしょうが,役所の従来の考えから言えばこれは無理だから表現したくないというようなことはやめてほしいと。出た意見についてはできるだけ可能な方向で表現はしておいて,記録は残しておいてほしいということ申し上げたと思うんです。表現の仕方についていろいろとテクニカルな問題はあるでしょうが。それが一つ。
 さはさりながら,余りにも何も実現しそうにもないことを虚しく書いておくというのも変なものですから,そこは多少のバラバラということがあるんでしょうが,従来よりは,実現性ということよりも,それはぜひ担保してほしいが,100%すべてに担保できない場合であってもこういう方向で我々は議論したと,ぜひこういうことを実現してほしいと。来年度実現することを最も期待しているが,無理ならば,数年かけてでも世論を盛り上げてそういう方向へ実現してほしいということは,絶対に記載を残してほしい。それが中間報告ですべて網羅されるかどうかはまた別な話なんですが,少なくとも文化省の話を除けば。
 それともう一つ,先ほど出ていたアジア文化首都のような構想について以外は,ほぼ網羅されて。国の施設の在り方もまだ記載されていない。その他あるかと思うんですが。そうしたものを入れ込めば,その部分については網羅されていると思うので,それはいいと思うんですが。あとはスピードをどのように,つまり工程表的な部分を入れ込めるものはぜひ入れ込んで,主張はしてほしいなと思います。

【宮田部会長】はい,平田先生。

【平田内閣官房参与】「文化省」のことに関しては,文化庁がどうこう言える問題ではなくて,もう少し高い次元の問題ですので,逆に,里中先生がおっしゃられたように,文言としてとにかく入れておくことは大事だと思います。皆さんご承知のように,例えば公明党の文化政策には「文化省」ということは入っておりますので,私たちがそういうことは全く違和感はないと思いますし。
 政界再編とか他省庁の再編ということは長期政権になると確実に起こるので,その中で玉突き状に,要するに今,「文化省」だけがいきなりできるということは現実政治ではないんですが,厚労省の解体のほうが急務で,厚労省を解体して,民主党としては「子ども・家庭省」というのを提言していて,子ども・家庭省になって,文科省の大きな部分がそこに移ると文化庁は浮いてしまうので,当然その中で文化省というものも浮上してくると。浮上してきた際に,ここで言っておくことはものすごく意味があると思いますので,少なくともそういったことが将来検討されるべきであろうというような文言はぜひ入れておいていただきたいと思います。

【宮田部会長】ありがとうございました。

 全員が力のある私どもの文化芸術を支えるところとしては,大きな支えのある場所でありたいということにおいては,異議は全くないわけでございますので,具体の部分になったときに所々諸々はあるでしょうが,これは記載するということでいきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 さて,結論が大きな結論と具体の結論といろいろと出ておりますが,定刻になってしまいましたが,先ほども言いましたが,少しの時間ですが,最後の第4コーナーを回ったというところでございますので,議論がございましたら,事務局のほうにお寄せいただきたいということでございます。
 次,どうしましょうか。事務局のほうでぜひ。調整官,お願いします。

【滝波企画調整官】ただいまの議論の中でも一通りの意見交換がいただけたものと思っております。
 先ほど説明ございましたとおり,次回が6月2日の(水),14:00から16:00にかけまして,第8回部会の開催を予定してございます。ここの中で「審議経過報告」のきょうの議論を踏まえた修正案について審議をお願いできたらと思っております。場所につきましては,同じくこの場所,東館3階,特別会議室のほうで開催を予定してございます。
 以上でございます。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 どんどん煮詰まってくると,具体の部分,それから理想の部分とか出てきますが,もうひと踏ん張りしたいと思います。よろしくご審議ください。
 本日はありがとうございました。

16:32 閉会

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