文化審議会第8期文化政策部会(第9回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,青柳委員,後藤委員,佐々木委員,里中委員, 高萩委員,坪能委員,富山委員,浜野委員,山内委員,山脇委員,平田内閣官房参与

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【宮田部会長】ただいまから第9回の文化政策部会を開催したいと思います。本日はお忙しいところをありがとうございました。久しぶりのうるおいの雨でございますが,いい会議になりますことを期待しております。 本日は,小田,加藤,酒井,鈴木,堤,西村,増田,吉本の8名の先生方が欠席しております。会議の始まる前に,事務局より,人事異動がございましたので,ご紹介いただきたいと思っております。よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】それでは,事務局のほうで異動がございましたので,その紹介をさせていただきます。玉井前文化庁長官の後任といたしまして,このたび就任しました近藤文化庁長官でございます。それから,合田前文化庁次長の後任といたしまして,吉田文化庁次長でございます。それから,本日欠席をしていますが,戸渡前長官官房審議官の後任として,シバタ長官官房審議官が就任をしております。続きまして,清木前文化部長の後任といたしまして,小松文化部長でございます。以上でございます。よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】ありがとうございました。それでは,冒頭に近藤長官より一言ごあいさつをお願い申し上げます。

【近藤文化庁長官】ご紹介いただきました近藤誠一でございます。7月30日付けで玉井長官の後任として文化庁長官を拝命いたしました。38年間,外務省で暮らしておりまして,ちょうどその半分が日本,半分が外国ということでございまして,東京あるいは外国を含めて通産省に3年,IEAという国際機関の事務局に3年,それから,OECDという国際機関の事務次長として4年,合計10年,いわば外のめしを食ったと言いましょうか,外から客観的に外務省あるいは霞が関,あるいは日本国を見る機会がございました。今回4回目の外のめしということになりますが。
 そういう経験から感じましたこと,日本の国の在り方,どこがもっと改善すべきかということを私なりに客観的に見てまいりました。その中で一番強く思っておりましたのは,これは世界的な傾向でございますが,人間の本来の目的である,豊かな心,人を敬う気持ち,寛容さ,そういったものを追求するべき人生で,安全で繁栄していると,物質的に豊かであるということは,それを追求する条件整備に過ぎない。にもかかわらず,その2つが自己目的化してしまっているのではないか。したがって,この20年間,経済成長という目標というか,その条件整備を相当達成したにもかかわらず,それを目標と思ってしまったがために,この20年間,日本人は本来の目的を忘れて閉塞感に陥っている,そんな気が年を増して強まってまいりました。
 そういう中で,これからは文化芸術を通じて人間性というものを,もう一度それが目的であるということを見直していく,引き続き安全保障と経済発展も大事ですが,それはあくまで条件整備であると,そこをもう一度思い直すべきだという確信を持っておりましたところ,今回のような新しいお仕事をいただきまして,微力ながら私が一番信じておりますことを自分なりにできるポストをいただいたと思って非常に感謝をしております。
 それから,最初でございますので,あと一,二分。そういう気持ちで文化庁に参りまして,30日に文化庁の幹部に訓示をせよということでございましたので,そこで申し上げましたことは,我々全員280人常に初心に戻ってくれと。我々は,政府のために,国のために,国民のために働く,そのために霞が関に来たはずであると。それが,たまたま何とか省何とか局という部局に配置になって,5年10年たつうちに国のために働くという目的よりも,省のため,庁のため,局のためという方向に流されてしまったのではないか,常にそれは反省をして,毎朝,自分はお国のために,国民のために働く,そのために自分があるんだということを思い起こしてくれと。それによって壁を取り払い,必要があれば過去の慣行,制度,必要があれば法律も変えてもいい,目的のために邪魔になるのであれば法律も変える,目的のために必要であれば新しい法律もつくる,そういう意気込みでやってほしいということを申し上げた次第でございます。
 それから,もう一つは開かれた文化庁にしようと。私自身も個人的にホームページでなるべくパーソナルなタッチで発信をしておりますが,こういった審議会のご意見を伺った上で,それを十分に耳を傾け実施をしていくという姿勢が大事であるというふうに思っております。6月にいただきました「審議経過報告」,私も真っ先に読ませていただきまして,私の信ずるところと方向性が一致している,非常に心強いご審議をこれまでいただいたということを知って非常にうれしく思いました。私もこれからはソフト,そして,人,ネットワーク,そういったものを中心に日本の文化政策を建て直していくべきであるというふうに考えております。
 最後に,文化行政をやるには一人ひとりが文化が好きでなければいけない。したがって,みんな何か趣味を持てと。忙しいのはわかっているが,何か1つ趣味を持って,年末にはみんなで文化庁学芸会をやろうというふうに言っております。
 長くなりましたが,私のいわば所信表明の簡略版ということで,皆様にお知りいただければと思います。どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。

【宮田部会長】ありがとうございました。外から内を見たときの非常に客観的なものというふうなこと,つたないですが,私もそういう経験をさせていただきました。そのときに非常に冷静に日本国を見ることができますよね。いいお言葉をいただきました。よろしくお願い申し上げます。できるだけ全力でサポートをさせていただきたいと,かように思っております。
 さて,それでは議題に先立ちまして,今,長官からもお話がございましたが,本部会の議事の公開を,具体的にテレビカメラ等も入るということでお諮りしたいということでございます,経緯も含めまして事務局からお話しください。

【滝波企画調整官】それでは,参考資料2をごらんいただきたいんですが,参考資料2はこの文化政策部会の議事の公開についてという資料でございます。この部会が始まったとき,2月10日の日に決定をしていただいたものでございます。この中で,会議の公開であるとか,会議の傍聴といったことについての手続等が記載されてございます。
 この中で4番のところに少し書いていますが,「前項の登録を受けた者(登録傍聴人)は,部会長が許可した場合を除き,会議の開始後に入場し,又は会議を撮影し,録画し,若しくは録音してはならない」というくだりがございます。ここの取扱いにつきまして,実は文部科学省の広報室というセクションがございますが,こちらのほうに記者クラブとしての申し入れというのがございまして,テレビカメラについて,会議が公開だと言っているが,カメラで写してはいけないというふうな運用になっているのはおかしいではないか,議事に支障のない範囲でテレビカメラも含めて公開するようにというふうな申し入れがございました。
 それを受けまして,各審議会等におきまして個々に判断をしていくということになっておりまして,今回,ここでご説明申し上げたいのは,「部会長が許可した場合を除き」というふうなくだりが,今申し上げたとおりございますが,特段の事情,支障がなければ,部会長が許可しているんだという前提で議事を進めていってはどうかと思っておりまして,そのことについてのご理解というかご協力がいただけたらありがたいなということで,今回ご説明をさせていただいた次第でございます。
 なお,この取扱いは当面こんな形でやらせていただきたいと思いますが,現在の期が終った後,来期に移るときには改めてこの部会決定の取扱いについて決定していく必要があるというふうに考えております。以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】いかがでしょうか,今の滝波さんのご説明ですが。全く問題ないと僕は思うんですが。公開をするというのはむしろこういう文化の議論を真摯に行っているものを多くの方にご理解いただくことから味方が多く増えていくのでないかと思いますが。大木さん,どうぞ。

【大木政策課長】今回問題になっておりますのがテレビカメラの扱いでございまして,私の何年か実務的にこの手のことをこなしている経験から申しますと,一般的に会議を聴いていただくことは問題なかろうということでもって,オープンにしてから随分年月がたつわけでございますが,テレビカメラに関しましては,それとともに光が当たったりとかいろいろなことがあるものですから,例えば冒頭のあいさつ部分だけの頭撮りということでもって許可をしていただいているというのが普通のやり方でございます。ただ,今回,時代の流れもございまして,そうとばかりはということで,一応,文部科学記者クラブのほうからそういうお話があったということで,全省的に各審議会で検討をという要請があったものですから,今回こういうふうにお諮りしているという状況でございます。
 もちろん,非常にデリケートな内容をやることもございましょうし,それから,白熱してきたときに画像だけが先走りするというようなこともあるわけでございますので,一般的にすべてというやり方もございましょうし,それから,個別にきちっと議事の流れを見極めていただいた上でもって部会長に判断していただくという運用でもよろしかろうと思いますが,一般論としてはこういうことでいかがかと,こういうことでございます。

【宮田部会長】ご理解いただけますか。よろしゅうございますか。 ありがとうございました。
 要するに円滑な議事が進行する,それが妨げられるようなことがあった場合,部会長から一言,いかがなものということを言わせていただくと。しかし,それ以外に関しては先生方のご議論をきちっと世に知っていただくということの意味では,許可をするということは問題ないのではないかというふうに思います。ありがとうございました。それでは,そのようにさせていただきます。では,これから本日の議事に入ります。
 6月の「審議経過報告」を取りまとめて以来開催しておりますが,パブリックコメントを実施したところでございます。事務局では来年度の概算要求作業に頑張っていただいたんですが,それらの結果を加えて,「審議経過報告」において,今後の検討結果として第2次基本方針の実施状況の評価を議題としております。お手元の議事次第の記載のとおり,時間配分の目安でございますが,議題1,概算要求等への反映状況について約30分程度,議題2で意見募集の結果について30分程度,第3の第2次基本方針のフォローアップについて約30分程度,そして,その他,今後の進め方ということで15分程度を予定しております。大体の目安でございますが,よろしくご協力ください。
 それでは,議題1に入らせてもらいます。概算要求への反映状況でございますが,2月の文部科学大臣の諮問を受けて,可能なものから来年度の概算要求に反映させるべく,夏前のタイミングで「審議経過報告」を取りまとめました。それで,6つの重点戦略に対応する平成23年度の概算要求等への反映状況について,事務局よりご説明をいただきたいと思います。
 さくっとやってください。

【滝波企画調整官】それでは,私のほうから資料の説明をさせていただきたいと存じます。
 まず,先ほどご紹介した机上参考資料として「平成23年度文化庁概算要求の概要」というペーパーが,上で2ヵ所とじたものがございます。それから,そのすぐ後ろには「平成23年度概算要求主要事項説明資料 文化庁」と書いた,左側で2ヵ所でとじたカラーの絵も入った資料がございます。このあたりを少し広げていただきながらご紹介をしていきたいと思います。
 まず,今回の文化芸術関係の概算要求についてでございますが,今回の「審議経過報告」を受けまして,その中で新たな「文化芸術立国」の実現ということを目指しまして,6つの重点戦略ということを打ち出していただいたということでございました。これを強力に進めるということから,3つの柱を立てておりまして,1つが豊かな文化芸術の創造と人材育成ということ,2つ目としては我が国のかけがえのない文化財の保存・活用・継承等,それから,3つ目としては我が国の優れた文化芸術の発信・国際文化交流の推進ということでございまして,これらを合わせまして総額で1,052億円ということで,前年度に比べまして32億円増の要求を今回行っているところでございます。
 今回の予算の中では要望額というのがございまして,「文化芸術による元気な日本復活プラン」というネーミングで,こちらについて3つの柱をこの中に織り込んでおります。1つが文化芸術による次世代人材育成プロジェクトというもの,2つ目に文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業,それから,3つ目としてクリエイティブ日本発信プロジェクト。この3つの事柄を柱として,先ほどの1,052億円の中の内数になりますが,158億円という額を要望しているということになります。
 こういったものが全体像になっておりまして,こういった全体像の中で今回の「審議経過報告」を受けて,どういうふうな対応をしてきたかということについて,資料1の中でまとめたところでございます。これについて少しご紹介をしていきたいと思いますが,時間も限られておりますので,主な部分に限りましてご説明したいと存じます。
 資料1をお開きいただきたいんですが,幾つか印をつけておりまして,予算関係については○印で,税制の関係については▽印,条約や法令等の関係は◇,その他が□印ということで,それぞれ対応方針の欄に記入をしてございます。 まず,戦略1から見てまいりますと,「文化芸術活動に対する支援の在り方の抜本的な見直し」という部分です。
 1つ目の文化芸術への新たな支援の仕組みの導入ですが,これは先ほど申し上げた予算の中の新規の部分で,「舞台芸術創造力向上・発信プラン」というふうなネーミングで打ち出している部分がございます。この中で,文化芸術団体への支援方法を抜本的に見直して,インセンティブが働く支援制度を導入しようということを打ち出しております。
 それから,次の◆では,「新しい公共」による活動支援というような形で,税制にかかわる事柄を提言いただいておりますが,これに関連いたしましては,2つの税制改正要望事項を上げております。1つは個人からの寄附に対する税額控除の導入ということ。2つ目に能楽堂や劇場・音楽堂等の文化芸術の公演のための施設における減免措置を拡充していこうというような内容でございます。それから,3つ目に「日本版のアーツカウンシル」の導入に向けた検討を提言いただいておりますが,これについても試行的な導入ということで新規に予算を計上してございます。
 それから,次の提言事項として,地域の文化芸術への支援拡充及びその法的基盤の整備検討についてでございます。これについても,先ほど申し上げた「舞台芸術創造力向上・発信プラン」の中の一部として,劇場・音楽堂からの創造発信への支援ということを概算要求の中に盛り込んでいるとでございます。
 それから,一番下の美術品の国家補償制度の導入ですが,これについては,従来から検討してきております法案「美術品国家補償法案(仮称)」,これを早ければこの秋の臨時国会又は次期通常国会に提出すべく検討・準備をしているところでございます。
 2ページにまいりまして,重点戦略の最後の◆ですが,国立文化施設等の運営の見直しということがございました。これにつきましては,また後ほどご説明したいと思いますが,資料6に少し資料が出ておりますが,新たに「国立文化施設等に関する検討会」というものを設けまして,専門的見地から検討してまいる予定にしておりまして,今月中に第1回の会議を開催する予定でございます。
 続いて,戦略2の「文化芸術を創造し,支える人材の充実」でございます。
 1つ目の若手をはじめとする芸術家の育成支援の充実でございますが,ここにつきましては,《元気な日本復活特別枠》の部分を活用しまして,新規で次代の文化を創造する新進芸術家育成事業という形で概算要求に盛り込んでいるところでございます。
 それから,2つ目の文化芸術を支える専門的人材の育成・活用に関する支援ですが,額としては小さいですが,新規で,2つ目のところ,博物館の管理・運営に関する研修というものを新たに盛り込んでいるところでございます。
 それから,3つ目の◆,文化財の伝承者に対する支援充実でございます。上から4つ目の○のところで,これも新規で,《元気な日本復活特別枠》を活用しまして,文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業を85億で計上しているところでございます。
 それから,ページが飛びまして3ページでございますが,重点戦略の3番,「子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実」でございます。
 1つ目の◆,多彩な優れた芸術の鑑賞機会,伝統文化等に親しむ機会の充実でございます。
 1つ目の○は,同じく《元気な日本復活特別枠》を活用しまして,次代を担う子どもの文化芸術体験授業を新規で要求しております。
 それから,すぐ下のところ,これも新規で,伝統音楽等の普及促進支援事業を盛り込んでいるところでございます。
 それから,重点戦略の4番「文化芸術の次世代への確実な継承」でございます。
 1つ目の◆では,文化財の修理・防災対策の計画的推進ですが,ここの中では,幾つかございますが,上から3つ目の○で,美術工芸品に係る緊急防犯対策ということで新規に予算を盛り込んでいるところでございます。
 それから,4ページに移りますが,文化財の公開・活用の促進に関する提言がございました。これにつきましても,幾つか新規事項を盛り込んでおりまして,上から5つ目の○で,NPO等による文化財建造物の管理活用の推進事業を新たに計上しております。
 また,その2つ下,「歴史文化基本構想」普及促進事業として新規に盛り込んでおります。
 また,そこの最後の◆のところは,文化財の公開促進のための寄託優遇税制の創設というものを新たに税制改正要望をしているところでございます。
 それから,2つ目の◆提言で,アーカイブの構築の推進等でございますが,これにつきましても,2つ目の○のところ,文化関係資料のアーカイブ構築に関する調査研究を新たに始めるべく,予算を盛り込んでいるところでございます。
 それから,次のページ,5ページでございます。戦略5として,「文化芸術の観光振興・地域振興等への活用」でございます。
 この中では,2つ目,3つ目の◆のところ,創造都市関連の部分でございますが,2つ目の○で,文化芸術の海外発信拠点形成事業として,新規で《元気な日本復活特別枠》を活用しまして,新たに予算を盛り込んでいるところでございます。
 それから,戦略の6番,「文化発信・国際文化交流の充実」でございます。
 ここでは,最後の◆,中核的国際芸術祭の国際開催等についての提言がございました。これに関しましても,《元気な日本復活特別枠》を活用いたしまして,新たに国際技術フェスティバルへの支援事業の予算を盛り込んでいるところでございます。
 最後の6ページでございますが,最初の◆で,文化発信・交流拠点としての博物館等の充実でございます。上から2つ目のところ,アジアの博物館・美術館交流事業を新たに計上しているところでございます。
 それから,一番最後の◆,東アジアにおける文化芸術活動の推進でございます。これにつきましても《元気な日本復活特別枠》を活用いたしまして,東アジア文化芸術会議の開催というものを新たにスタートすべく予算を盛り込んでいるところでございます。
 このほかにも説明しきれない点が多々ございますが,このたびの「審議経過報告」を受けまして,今回の概算要求,税制改正要望等々への反映について,6月以降の作業の中でできる限りの対応をしてきたつもりでございます。そのものを今回このような形でまとめさせていただきましたので,ご説明をさせていただきました。
 以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】 ありがとうございました。
 予算が○,税制で▽,条約等々で◇,指導・通知で□ということで,1,052億,32億増ということで概算要求をなさっています。いかがでしょうか,先生方。戦略の中でこう書かれていること,この辺はいかがなものか等々ございましたら,忌憚のないご意見をいただきたいと思っておりますが,いかがでしょうか。
 どうぞ。

【後藤委員】 質問なんですが,一番上のところで「インセンティブが働く支援制度を導入[というふうになっていて,先ほど意見でたくさん上がってきていたのが,「赤字補填はやめてくれ」というのが要望として,意見として上がってきているようで,それに対して今度はインセンティブが働く支援制度を導入というふうになったのかなというふうにも思うんですが,どこが今までと違う仕組みとしてこれを上げていらっしゃるのか,具体的にどういうふうにインセンティブが働く仕組みになるのかというのをご説明していただきたいということ。
 それから,2番目のところで寄附金額の40%を税額控除と,非常に大きな控除になるわけで,例えば100万円寄附をすると40万円分は国が負担をするということになるわけですよね。そうすると,そこの部分は全部,国のコストになっていくから,補助金を出しているのと同じことになるんですが,その対象となる団体というのが日本芸術文化振興会の芸術文化振興基金が助成する「新しい公共」を担う文化芸術団体の事業となっているんですが,例えば幾つぐらいこういう対象になるところがあって,どういうところに対して個人が寄附をすると,そのコストの4割を国が出すということになるのか,ちょっと教えていただきたい。
 その2点です。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 いかがでしょうか。どうぞ。

【山崎芸術文化課長】まず,一点目のインセンティブが働く支援制度でございますが,従来のいわゆる重点事業,重点支援の事業についてはご指摘のとおり赤字補填ということで,例えば公演当日本番にかかった経費の中で3分の1なんですが,入場料収入を引いた,いわゆる団体の自己負担分について支援をするということでしたが,結果として,芸術団体のほうで努力されて,入場料収入を上げたり,あるいは,寄付金を多く得たとしても,逆にその分,国からの支援が圧縮されてしまうという結果になって,つまり経営努力に対するインセンティブが働いていないのではないかというご指摘があったところでございます。
 それで,今度の概算要求で計上しているこの事業につきましては,いわゆる赤字補填をやめまして,従来と発想を変えまして,公演当日とそれに至るけいこの部分を分けまして,公演当日は支援の対象としないと。そのかわり公演に至るまでのけいこの部分,つまり芸術創造活動の部分について支援をしていこうということに変えております。公演当日については入場料収入等ございますので,大体とんとんになるのではないかという前提の下に,それまでに至るけいこの部分での人件費,それまでに当然大道具であるとか文芸費であるとかもろもろの経費がかかってくるわけですが,そこを支援の対象として限定して支援をしていくと。その結果として,当日公演の際の入場料が上がればそれは団体側の収益として,その分支援金が減るということにはならないと。結果としてインセンティブが働くようになる仕組みを導入するということでございます。

【宮田部会長】よろしゅうございますか。

【後藤委員】公演に全くシェアをしないというふうになって,チケット価格が上がるというようなことは想定されませんか。

【山崎芸術文化課長】公演当日も文化庁で全然見ないということではなくて,実際に公演をするという大前提の下に支援するわけですから,実際にどの程度の入場料が入ってきたかということを見つつ,全体の中で,先ほど言ったように公演に至る部分の経費を切り分けて支援をしていきます。入場料が上がるかどうかというのは,全体のお客さんの入り等にかかわってくるので,全体のほうで適切にこれまでの値段設定等も踏まえながら決めていただけるものだというふうには考えております。

【近藤文化庁長官】税額控除の件は……。

【滝波企画調整官】税額控除の件でございますが,申しわけありません,対象団体が幾つあるのかというところについてのデータは今持ち合わせておりませんが,趣旨としては,机上参考資料の中にございます今回の23年度文科省税制改正要望事項のペーパーの5ページのところに中身が書いてございますが,芸文振の基金のほうで助成をしておりますが,「新しい公共」を担う文化芸術団体の事業へ個人が寄附をするという場合について,新たに寄附金額の40%を税額控除しようということで,「新しい公共」の担い手としての活動を支援していこうということでございまして。従来でしたら,社団法人,財団法人,学校法人というふうに,ある程度限定された主体でなければ税額控除の対象になってこなかったんですが,もう少し幅広く活動を行っている団体についても対象とできないかということで,今回このような要望をさせていただいているところでございます。
 少しデータについて調べておきたいと思います。

【宮田部会長】それと,美術品の国家補償に関しては,確か山脇委員のほうからもぜひぜひというようなお話がございましたが,いかがですか。よろしいですか。

【山脇委員】これは本当にすごく長い間議論をしていましたので,やっとここまできたかと感慨深いものがあります。あとは,どのようにきちんと制度を整えるかということが大切になりますが,本当によかったと思っております。ありがとうございます。

【宮田部会長】あとどうですか,先生方。《元気な日本復活特別枠》の使い方については,結構いいところをねらっているなという感じが私はしたんですが,先生方,ご意見どうぞ。
 よろしゅうございますか,この件に関しては。平田先生,どうぞ。

【平田内閣官房参与】関連してご説明をさせていただきます。
 昨日,官邸で「新しい公共」円卓会議に関しての説明会がございまして,この《元気な日本復活特別枠》が設定されております。これはもう新聞等でご存じかと思いますが。あまり内容を触れられていないんですが,3つ項目があるんです。1つがデフレ脱却を含めた経済成長の実現,もう1つが国民生活の安定・安全,もう1つが「新しい公共」の推進と。この3つに触れるものに関して《元気な日本復活特別枠》に入ると。私たちがかかわる文化の部分に関しては経済成長は観光が多少関係あるかなと。あとはほとんどが「新しい公共」になるかと思います。
 昨日,内閣府副大臣からご説明があったんですが,特にきょうご説明いただきました優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業,芸術創造都市の推進,それから,税制,固定資産税,不動産取得税等の減免については,文言として読み上げていただきました。これは100以上ここに項目があるんですが,その中でも10ぐらいが特徴的な政策として読み上げていただいたので,「新しい公共」のほうでも内閣府のほうでも評価はしていただいているかなと思っておりますので,いい政策を文化庁としては出していただいているのではないかなと,ここで押していただければ予算獲得につながるのではないかなと思っております。それから,税制のほうはちょっと厳しいという話も聞いておりますが,これはネゴシエーションの世界なのだと思います。
 特にこの審議会との絡みで言いますと,優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業を「新しい公共」として入れていただいたというのは,政策的にも非常に大きな意味があるのではないかと思います。一般の市民,国民の感覚から言えば,劇場・音楽ホール,あるいは,美術館というのは,演劇を見に行く場所,音楽を聴きに行く場所,美術を見に行く場所という存在だったものが,今後は地域社会における芸術文化活動の責任を担うと。要するに,総合病院が地域の健康に対しての責任を担い,高等教育機関が地域の教育について責任を担うのと同じように,「新しい公共」の一つの施設として公共文化施設が様々な責務を担うんだということを打ち出していくことが私たちにとって重要だし,それが具体的には予算としてあらわれるのではないかと思っておりますので,ぜひそこら辺のところを強くアピールをしていただけるといいのではないかと思います。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 非常にわかりやすい,攻め口はここだということをご説明いただきました。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょう。特に今の高等教育,病院,それから,文化施設といったときには,前の去年,一昨年と続けた文化政策部会での地域の在り方,劇場の在り方等々で構築したものが,ここへきて一つの文章になったのかなという自負心もございます。ほかにいかがでしょうか。
 それでは,この辺でこれを進めていただくということで頑張っていただきたいと,かように思っておりますが,それはこちら側任せではなくて両方で,みんなで頑張っていくということでやっていきたいと。
 どうぞ,もう一つ。

【平田内閣官房参与】もう皆さん新聞紙上でご存じかと思いますが,この予算枠についてはパブリックコメントを求めるという方向になっていますので,ぜひ皆さんの関係者の方にも応援コメントを内閣府のほうに出していただくようにしていただきたいと思います。

【宮田部会長】パブリックコメントと言えば,これ自身に関しても最初の1ヵ月は私も本当にひやひやしましたが,一気に増えまして。最初は100ぐらいしかなかったんですね。それが700を超えるというふうになりました。平田先生,大丈夫です。この勢いでみんなで。やっぱり声というのは大きな力になりますので,この波を消さないようにしていきたい,かように思っておりますので,よろしくお願いします。
 それでは,この件に関しては,もしまたございましたら,後で復活しても結構でございますが,次に進めさせていただきたいと思っておりますが,よろしゅうございますね。
 それでは,議題2に入らせていただきます。「審議経過報告」について,私から6月7日の文化審議会総会に報告をした後に,6月8日から7月23日までの1ヵ月半にわたり,今も話がございましたように多くの国民の皆さんからの意見を募集しました。その意見を今後の審議の参考にするため,事務局から意見募集の結果(概要)をご説明していただき,その後に皆様方からのご意見をいただきたいと思います。
 よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】それでは,資料の2番でございます。文化政策部会「審議経過報告」に対する意見募集の結果でございます。これは,今ご説明ございましたように,「審議経過報告」を出しました折りに多くの国民,広く国民から意見を募るようにということでございましたので,それを受ける形で6月8日から1ヵ月半にわたりまして広く意見募集をしたものでございます。
 資料2の1枚目のところに書いていますように,総数でいいますと,ご意見としていただきましたのが735件ということで,大変多い数になったのかなと思っております。内訳を見てみますと,16の団体から62件,290の個人の方々から673件ということで,トータル735件でございます。属性については,ここの表のところにございますが,団体の職員の方だったり,芸術家の方,団体役員の方が多くなっていますが,それ以外にも個人のお立場でいろいろな方々から意見が寄せられたところでございます。
 3番のところ,寄せられた意見の概要の(1)概況でございます。今回,「審議経過報告」では6つの戦略として打ち出したわけですが,各戦略ごとにどんな意見があったかということを数で見ますと,表に記載のとおりでございますが,戦略1の「支援の在り方の抜本的見直し」という部分については,やはり一番多く意見が寄せられているところでございました。また,その次には,戦略3としての「子ども・若者向け施策の充実」に関する意見が多くなっております。ほかに,人材の充実あるいは基本理念に関することといったような事柄のご意見が多く寄せられたところでございました。
 2ページに移りまして,一番上の表ですが,幾つのキーワードに着目して,どんな意見があったかということで並べてみましたところ,この表のような感じになっております。言葉として多いのは「文化芸術拠点」というふうなフレーズ,これについての意見が67ございましたし,アーツカウンシルという部分に関してのご意見が49ございました。また,指定管理者制度に関する事柄が48件,また,アーカイブに関しても22件,等々の意見が寄せられているとでございます。
 (2)以下のところでは,各意見を,少し長くなるんですが,項目ごとにどのような意見がなされたかということを,私ども事務局の責任におきまして編集・作成したものでございます。全部ご紹介する時間はございませんが,主なものだけピックアップしてご紹介したいと思います。
 2ページの前半のところでございますが,4つのところでは,文化予算の拡充であるとか,支援の在り方の抜本的な見直し,人材育成の施策が着実に実行されることを期待するというふうなご意見がありました。
 また,3ページの基本理念に関しましては,1つ目の○で,3次方針においては文化芸術が国づくり・地域づくり等の根幹だということで,関係省庁との協働を図る文化省の設置,文化予算の確保,地方の施策の充実,民間資金の活用といったところで,国の主導的な役割の発揮について強調する必要があるんだというご意見。
 また,その2つ下のところ,基本的なスタンスとして「攻守」バランスのとれた文化政策と捉えるべきだと。「攻守」の目指すところについて,例えば,「攻め」は対外的な文化発信による日本の認知度の向上,あるいは,文化に付随する経済産業の成長,「守り」としては日本人のアイデンティティの維持や次世代への伝承というふうなぐあいに設定できるのではないかというようなご意見でございます。
 また,4ページに移りますと,上から6つ目のところ,「経済と文化は」で始まる部分ですが,これは「国力」を支える両輪であるにもかかわらず,これまで国の方向性を決める人々は経済と文化のバランスを考えなかったんだと。基本法が全く機能していないからこそ,今改めて「文化芸術の振興を国の政策の根幹に据えて,これまでの政策を抜本的に見直して,文化芸術振興策の強化・拡充を図らなければいけないんだ」という認識で答申をまとめて,確実に実行に移すべきであるというふうなこと。
 それから,その下の○は,2つ続いていますが,先ほどの関連ですが,「文化は国家なり」の理念を示すため,新たな「文化芸術立国」の実現を目指すために,「文化省」創設の早急な実現を求める。
 それから,その下は最も重要,喫緊に対応しなければいけないのは「関係省庁が<協働の姿勢>をもってより一層連携を強化していかなければならない」という点にある。縦割り行政の弊害を乗り越え,関係省庁のみならず関係機関を含めた横断的な改革を望みますということでございます。
 それから,文化予算に関しては,1つ目のところ,先進諸外国に比べて,日本の文化予算は低水準であるとはいえ,やみくもに予算を拡大すればよいということではない。やはり「目的」「必要性」が第一義である。行政と民間の力をうまく活用して透明性が高く,広がりのある事業展開をしてほしいということがございました。
 また,5ページでございます。ここからは各論になりますが,文化芸術活動に対する支援の抜本的な見直しでございます。1つ目の○では,経済的情勢の悪化によって地方自治体,民間からの支援が削減されて,安定した文化の追求ができる状況にないというのが今の実情だと。文化芸術の担い手の生活を保障することが文化存続・発展の基盤だと。団体の経営努力は当然だが,安定的な収入確保の仕組みを構築するのが不可欠だと。国,地方,民間の分担の在り方について言及して,その上で「文化政策は短期的なコスト削減・効率重視といったものであってはならない」,そういう点を強調する必要があるということ。
 それから,その下の○ですが,現行助成制度の赤字補填という考え方を改善する方向性を打ち出したことに賛同すると。文化芸術団体や劇場・音楽堂等の実情と,その経営実態を踏まえた新たな助成制度の構築が必要だと。2011年度から速やかに実現するべきだということでございます。
 それから,次に寄附税制,「新しい公共」に関しては,1つ目の○で,NPO法人等「新しい公共」による文化芸術活動を支援するためにも脆弱な財政基盤,人材不足といった現状の課題に則した支援の在り方が必要だと。複数年度を前提とした委託事業,補助事業の制度設計,現場の予算執行に裁量権を持たせた運用を願うということ。
 その下の○は,「企業等の民間・個人からの文化芸術に対する投資を促すとともに,NPO法人等の「新しい公共」による文化芸術を支援する」とあるが,投資する側,支援される側を限定しすぎないで,幅広い主体の多様な参画を検討すべきだということでございます。
 それから,5ページの最後のところから,「日本版アーツカウンシル」の導入についてでございます。6ページの上から3つ目ですが,「日本版アーツカウンシル」の導入について,文化庁,芸文振の基金部の助成事業の経験,実績,その評価を踏まえて,基金部の充実,独立を視野に入れて,助成制度の見直しと対応させて2011年度に着手して,13年度には専門的な助成機関を確立するような工程スケジュールを示してほしいということ。
 そのすぐ下には,文化政策は基本的に地方分権に基づくべきだと。アーツカウンシルの導入は望ましいが,あくまでも地域ごとの自主性を重んじることが重要なんだと。すべての地域を一律に中央組織で統括していくことに加えて,一定の地域ごとに複数の機関を分権的に設置することが望ましい。評価も全国一律ではなくて,地域の実情にあった評価をすることが肝心だというふうな意見でございます。
 次は,地域の核となる文化芸術拠点への支援の拡充等ですが,7ページに飛びまして,上から3つ目でございますが,整備要件を一律に規定するのではなく,小さな施設であっても取り組み方によっては拠点として認められるような多様かつ柔軟な設定とすべきだと。その場合に,地域の範囲の捉え方に柔軟性をもたせるとか,専門家の配置要件も一律ではなく代替措置も可能とする等々によって,多くの文化施設がその気になれば拠点として認められるような設定とすべきだと。全国2,200ある公立の文化施設の活性化に寄与する仕組みにぜひしてほしいということでございます。
 また,そのすぐ下の○は,これまでの公共投資によって全国に2,000ヵ所以上の文化施設が整備されているが,慢性的な事業資金不足になっているため文化芸術活動の展開が困難になっている。国民が等しく良質な文化芸術を享受できる環境確保の観点から,収益性の見込めない文化施設への支援が大切だ。これらの文化施設に対する支援制度を確立するためにも法的な基盤の整備が求められているんだというふうなご意見です。
 次の項目,指定管理者制度でございます。1つ目の○,公立文化施設においても指定管理者制度が導入されたことによって,短期的な経済性と効率性が求められ,長期展望に基づく文化政策を行うことが難しくなっている。また,県からの文化予算も非常に厳しいということで,本来重視されるべき事業内容の充実,専門性を必要とする職員の育成等が軽視されている。一定期間毎に指定管理者が代われば,地道な連携が必要となる地域と一体となった取組も困難となってくる。こうした現状を踏まえて,公立文化施設に対する指定管理者制度の在り方について再検討を求めたいというふうなご意見でございます。
 次に,8ページに飛びまして,美術品の国家補償制度でございます。1つ目の○,美術品の国家補償制度の創設に当たっては,適用対象が設置主体によって限定されることなく,国公私立を問わず適用されることを要望するというふうなご意見でございます。
 次の項目,文化芸術を創造し,支える人材の充実でございます。3つ目の○で,これも先ほどの指定管理者と同様ですが,指定管理者の導入によって,優秀なプロパー職員にとっても雇用が不安定だと,長期的な展望を持った劇場運営への意欲がそがれている。そうした背景が影響して劇場,音楽事務所等の人事異動は,組織から組織への「転職」ではなくて,「同じ組織内の担当異動」にたとえられるほどになってしまった。こうした現状を踏まえて,アートマネジメント人材のための全国規模の非営利な人材バンクを設立してほしいというようなご意見でございます。
 それから,9ページに飛びまして,最初の○ですが,新進芸術家の海外研修制度・国内研修は,研修後に長期的なレビューを実施することによって,研修成果の定着度を測定し,研修者に責任と自覚を促すべきであるというふうなご意見です。
 それから,9ページの真ん中あたりですが,2つ並んでいまして,1つが「実演家の養成・研修に関して」というところ,新国立劇場演劇研修所を我が国におけるトップレベルの人材育成の中核的拠点と位置づけて予算を充実するとともに,その存在の周知を図るべきであるというご意見がある一方で,そのすぐ下,舞台芸術分野における人材育成の中核的拠点の役割を新国立劇場のみが担うことに反対である。ただ1つの施設のみに人材育成の役割を課すのは非常に危険である。複数の施設を設置して,様々な選択肢を持つ方が健全ではないのかというふうなご意見もございました。
 それから,10ページに飛びまして,最初の○ですが,大学に舞踊学科,演劇学科が少ないことは,我が国実演芸術の人材の層が薄いと言われる原因の1つなんだと。芸術大学だけではなく総合大学においても芸術分野を充実させてほしいというご意見でございます。
 次の項目,子どもや若者を対象とした文化芸術の振興です。2つ目の○ですが,本物の芸術に触れるための経済的余裕のない家庭も多い。そのような家庭に生まれた子どもでも優れた芸十分に触れられる機会を設ける必要があるというふうなご意見。
 その3つ下,学校における鑑賞教室も重要であるが,舞台芸術の魅力を知って更なる感動とマナーを身につけるためには,文化施設で質の高い鑑賞教室を行うことが求められているというご意見でございます。
 その2つ下でございますが,鑑賞教室については,予算措置も重要だが,鑑賞作品の選定方法,質の向上に関する十分な配慮が必要なんだと。そのためには,選定する側の専門知識とともに,実際の鑑賞状況の把握と鑑賞した子どもの反応も評価の対象とする必要があるんだというふうなご意見でございます。
 11ページに飛びますが,文化芸術の次世代への確実な継承でございます。4つ目の○のところですが,アーカイブの整備については,内容への関わりが少ないため,国が政策誘導を行っても自律性を害する問題が少ない分野なので,国がイニシアティブをとって強力に推進することが望まれるというご意見でございます。
 その2つ下ですが,特に貴重な作品や急を要する資料については,散逸や劣化を防ぐために,所有者や管理者に対してデータベースの整備,保管場所の整備等を側面的に支援する仕組みが必要ではないかというご意見でございます。
 12ページに飛びまして,今の項目の最後のところですが,我が国博物館の目録化率は50%前後と先進国の博物館と比較すればまったく恥ずかしい限りである。これがウェブサイトの博物館関連情報が貧弱な要因でもある。国として,例えば博物館の評価基準に目録化率を向上させることを織り込むとか,全国の博物館の目録化率の悉皆調査を行って,そのデータを公表するなど刺激・推進していくような具体的な検討を進めていくべきではないかというご意見でございます。
 それから,次の項目は文化芸術の観光振興,地域振興への活用です。1つ目の○では,歌舞伎等の伝統芸術にとどまらず,文化芸術は広く観光資源としての可能性を秘めながら,その可能性を生かしきれていない状況である。海外からの観光客や在留外国人が文化芸術に触れやすい状況を作ることは,外貨獲得だけではなく,日本ファンを増やすことになって,国際環境における日本の地位向上にもつながるんだというご意見。
 それから,次の○は,「地域の文化芸術資源の発掘・活用」について,過疎化や少子高齢化,地域コミュニティの希薄化による地域社会の衰退等の課題に取り組んで,地域の文化芸術資源を活用している活動や,その地域拠点(既存のホール・劇場や美術館だけではなく,廃校や商店街の空き店舗・倉庫等をリノベーションした文化拠点)の運営も奨励することが必要ではないかというふうなご意見でございます。
 13ページに飛びまして,次の項目,文化発信・国際文化交流の充実でございます。5つ目の○ですが,中核的国際芸術フェスティバルの国内開催,海外フェスティバルへの参加は,独自のすばらしい文化を所有する日本人が世界に果たすべき役割なのだと。日本人が自国に誇りを持てるようになる絶好の機会だと考える。戦略的に国が支援することが必要だというご意見です。
 その下の○,フェスティバルを世界水準の文化資源として育てていくことが,文化芸術や観光の振興,雇用の創出,地域の活性化をもたらして,ひいては,国の成長につながるんだと。国際的な文化芸術フェスティバルを国,都などの大都市,民間が協働して取り組む仕組みが必要だというご意見です。
 そのページ最後の○ですが,海外での日本文化受容の実態を,外務省・国際交流基金や経産省・JETRO等と共有した上で,メディア芸術分野では具体的にどのような日本文化の発信を行うかを議論する必要があるというご意見です。
 それから,14ページですが,今の項目の最後のところ,「東アジア芸術創造都市(仮称)」の取組が政府主導ではなく,市民レベル主導であることを期待したい。大学間の交流だけではなくて,都市や地域間の交流,あるいは,市民レベル(芸術家個人やアートNPO・NGO)での交流の活性化こそが必要なのだというご意見でございます。
 次の項目,舞台芸術でございます。1つ目の○,舞台芸術を振興する意義のうち社会的な効用について,産業的な観点に偏っている感じを受ける。劇場を拠点とした舞台芸術の創造,参加,享受は,「ゆるやかなネットワーク社会によるコミュニティの再生」に役立つのではないかというご意見でございます。
 次の項目,メディア芸術の2つ目の○,日本のメディア産業は,就労環境悪化のため崖っぷちにあると感じている。現場のクリエイターからヒアリングをするなど実態調査を行うとともに,現場の制作者が,著作権をはじめ正当な権利とチャンスを受けられるシステムの構築が必要ではないかというご意見でございます。
 次の項目,映画でございます。3つ目の○,非商業的作品の振興のためには,様々な手法,様々な資金調達方法が考えられる。放送局,インターネットプロバイダー等に映画振興のための投資を義務付けたり,特定目的課税として文化振興税を課したりするなど,財源面の工夫と合わせ踏み込んだ検討を行う必要があるのではないかというご意見でございます。
 次の項目は美術でございます。1つ目の○,博物館は単に社会教育施設あるいは文化施設であるにとどまらず,地域の生涯学習活動,国際交流活動,ボランティア活動や観光等の拠点ともなる多くのポテンシャルを有した施設である。これらの機能を強化するためには,国立や首長部局所管の博物館が除外されている博物館登録制度の見直しを中心に,博物館法を早期に改正して,これを軸に博物館政策を展開していく必要があるのではないかというふうなご意見でございます。
 飛びまして,17ページの最初の○ですが,日本の美術館は企画展が中心になっている感があるが,ミュージアムの基本はあくまでもコレクションであり,一過性の企画展だけではなくて,地域住民のそして国民の資産となるコレクションの充実にもっと力を入れるべきではないか。例えば,地方の美術館が作品を購入するための助成制度や,国立博物館のコレクションの貸出し・巡回展の充実を検討するべきではないのかというご意見でございます。
 また,その下の○は,博物館の管理運営を充実させるため,博物館における専門職(ミュージアム・アドミニストレーター,コンサベーター,レジストラー,エデュケーター,アーキビスト)等の人材育成や博物館での配置促進が提示されている。しかしながら,これら人材の博物館での勤務へつなげる具体的な施策がないことが問題なのだと。博物館における脆弱な雇用体系と組織力,学芸以外の職種的な専門分化と分業の欠如は目に余るものがあり,早急な改善が必要ではないかというふうなご意見でございます。
 次の18ページの項目はくらしの文化でございます。最初の○は,日本の「くらしの文化」の美しさは,ヨーロッパ文化に対峙する日本文化の特徴である。欧米に流出した「くらしの文化」や,現代の衣食住や趣味,生活用具の中に見られる「くらしの文化」にも目を向けつつ,また他の文化芸術分野も考慮に入れつつ,一層議論を深めて,具体的施策を反映してほしい。包括的な施策の実行が,国民を「クリエイティブ・クラス」にして,ひいては「創造都市」を発展させる原動力になっていくのではないかというご意見です。
 また,その4つ下の○ですが,「パーセント・フォー・アート」の導入を切に望む。一時的な町おこしのアートイベントを奨励するだけではなく,また,美術館の中における芸術の蓄積だけでなく,公に開かれた文化・アートネットワークの蓄積にいかに取り組むか,それが日本全体の文化レベルの向上につながっていくのではないかというご意見でございます。
 最後,19ページですが,文化財の項目に関しては,2つ目の○ですが,文化財の修理・修復に関する寄附に係る税制上の優遇措置の確立を求めたい。国,県,市が税金から補助金を出すシステムから,個々の市民が社会を豊かにするために寄附をし,国が税制上の優遇措置を設けるシステムに移行すべき時期にきているのではないかというご意見です。
 それから,最後の項目は今後の検討課題についてでございます。1つ目の○は,第2次基本方針の評価をはじめとして,現時点での文化庁の文化政策が何を達成し何が課題なのか,現状分析と評価(自己評価及び第三者評価)を明らかにすることを望みたいというご意見。
 その2つ下の○ですが,設定可能な施策の達成目標や工程スケジュールの明示が必要ではないかというご意見。
 そして,最後の○ですが,今後の検討課題として,行き過ぎた著作権保護論に係る検討を深めてほしい。日本の文化政策を考える上で,表現の自由等を守る体制をつくり,自主的な新しい創造を活性化させていくことこそが財政などの支援よりもはるかに重要な根幹部分なのではないかと思うといったようなご意見でございます。
 すべてを紹介しきれませんが,主なものだけピックアップしてご紹介させていただきました。よろしくお願いします。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 735件のご意見,大変ありがたく拝聴いたしました。同時に,今まで委員の先生方がご議論いただいたものが重複もしておりますし,現場からの生の意見というふうな感じで読ませていただいたものもございますが,いかがでしょうか,先生方,大変貴重なご意見をいただいておりますが,拝見しまして,先生方の中からお話ございましたら,お伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
 ちょっと気になったのは,冒頭に広報がちゃんとしているというのはいいことだと私は申しましたが,例えば生の声で,これは僕がしゃべっているなというのが伝わっているようで,根幹で伝わっていないなという感じがあったりとか。これは大変大事なことだなと思ったので,ぜひ向こう側にいらっしゃる人,よくちゃんと伝えてあげていただきたい,いろいろなことを。それは応援団であるという気持ちで私はおりますので,よろしくお願い申し上げます。
 議論の中では「パーセント・フォー・アーツ」の話とか,「くらしの文化」の中では今までなかったので入っているというふうなこととか,文化芸術が観光の振興や地域振興にも連携しているということで,横断的にいくならば外務省や国際交流基金,経産省・JETRO等々とタッグを組めたらいいなという感じがしているというあたりも印象的ですね。大学がと言われるとドキッとするんですが,これも何とかしたいと思うんですが,なかなか厳しいところがございまして。「攻守」のバランスというあたりもなかなかおもしろいですよね。
 はい,どうぞ。

【田村部会長代理】最後に,今後の検討課題というところにも現状分析と評価というのが入っておりますが,いつも申し上げて居りますが,地域の実態が皆様あまり実感しておられない,マスコミを含めてここで話されることはどうしても中央からの目線になってしまうということ。指定管理者制度が導入されておりますので,地方は非常に大変です。前にも申し上げましたが,専門家はほとんどやめてしまっております。優秀な専門家は効率を求められるとやめざるを得なくなってしまうわけです。そういう実態をもう少し見極めていただきたい。地域の文化活動という名の下にどういうことが行われているかということも含めて,芸術団体の方も文化施設の方も関係者も含めて,マスコミも含めてですが,きちんと捉えて,議論というのがされるべきではないかというふうに思います。

【宮田部会長】この委員会の中でも指定管理者制度の話は随分出ましたですよね。田村先生からも地域の中での大変な思いというふうなことも確実にこの言葉の中には訴えられている,再検討を求めたいというふうなこともございましたね。
 あと,先生方よろしゅうございますでしょうか。ここら辺をしっかりと踏まえながら今後進めていくというのは大変大事なことかと思っておりますが,よろしゅうございますか。
 ありがとうございました。この件に関しましては,また積み上げていくということで,本当に貴重なご意見をいただいたということで,部会長としてもありがたく存じております。これがやっぱり味方になりますから,大事にしていきたいと思います。
 はい,どうぞ。

【高萩委員】今のパブリックコメントは,きょう我々いただいているんですが,個別のやつもいただいているんですが,公開はされるんですか。どこら辺までのものが公開されるんですか。きょうマスコミの方もいらっしゃいますが,今のはどんな感じの……。

【滝波企画調整官】資料としては,きょうは資料2という形で概要をまとめたわけですが,生のものは先生方のお机の上に分厚い「政策部会『審議経過報告』に対する意見募集の結果」ということで,文字サイズが非常に小さくなってしまったんですが,全部で94ページにわたります,これが735件のご意見すべてでございまして,これにつきましても,基本的には私どものホームページにすべて公開をしていきたいと思っております。

【宮田部会長】高萩先生,ありがとうございます。公開しております。
 それでは,時間の関係もありますので,次に進めさせていただきたいと思います。
 議題の3,第2次基本方針のフォローアップでございます。深掘りしていきたいということでございますが,「審議経過報告」では今後の検討課題の一つとされておりますので,事務局よりちょっと説明させていただきたいと思います。
 よろしくどうぞ。

【滝波企画調整官】第2次方針のフォローアップですが,これ自体は先ほどの「審議経過報告」の中でも,現行の方針の評価をしっかり行う必要があるということがうたわれておりますので,その点で,19年の2月に現行の基本方針が閣議決定をされて,この間施策を講じてきたところでございますので,その実施状況につきまして,私ども事務局のほうでまとめたものでございます。それを資料3の形でお示ししたものでございます。
 第2次基本方針はやはり6本の重点事項からなっておりまして,1つには日本の文化芸術の継承,発展,創造を担う人材の育成という部分,2つ目に日本文化の発信,国際文化交流の推進というところ,3つ目に文化芸術活動の戦略的支援,4つ目に地域文化の振興,5つ目に子どもの文化芸術活動の充実,そして,6つ目に文化財の保存及び活用の充実というふうな6つの柱立てに沿って現行の第2次基本方針が推進されてきているところでございます。今回,それを19年度から年度ごとに,この間どういうふうな施策の展開がなされてきているのか,そして,どういう成果が見られて,どういう課題が残されているのかというふうなものを,少し体系的な形にまとめてみようということで整理したものがこの資料でございます。
 施策につきましては,先ほどの「審議経過報告」の概算要求等への反映状況のペーパーの中にもございました記号と基本的に同じ記号を使っておりまして,例えばこの表の中でいいますと,●印が予算関連の施策,▼印が税制関連の施策,◆につきましては条約・法令等の関連,■はその他というふうな形で,各取組を表の形でまとめたものになってございます。
 少しかいつまんで見ていきたいと思いますが,1つ目の重点事項は,日本の文化芸術の継承,発展,創造を担う人材育成でございました。ページでいいますと1ページのところですが,ここの中には小項目が4項目ございまして,1つ目に専門的人材の計画的・系統的な育成というふうな重点事項がございました。
 これにつきましては,各施策が19年度からどういうふうに推移してきているかということを矢印の形であらわしております。例えば新進芸術家の海外研修,あるいは,新進芸術家の人材育成といったような事業については,19年度から22年度にかけてずっと取り組んできているというふうな内容になってございます。それから,■印では,文化政策部会で19年度から21年度にかけての間,舞台芸術人材の育成,活用等について審議をしてきたということの経過を記載してございます。こういった形でそれぞれまとめてきております。
 この間に見られた成果については,[1]の左側のところで幾つかの項目にわたって記載をしてございます。例えば,新進芸術家海外研修制度については,平成19年度から22年度までの派遣人数が518人であったと。各種のコンクール等で受賞者を排出してきているという成果が見られているということを記載してございます。以下同様でございますが,このような形でまとめております。
 残された課題といたしましては,ここに記載のとおりでございますが,新進芸術家海外研修制度については,研修成果の還元機会を確保すること,その後のフォローアップを行うことが必要ではないかというふうな課題が残っている。それから,海外研修制度や文化芸術団体が取り組む人材育成事業については,制度とか支援の在り方を含めて,さらに効果的な方策の検討が必要だという課題が残されていると。こういった形でまとめたものでございます。
 以下,詳しい説明は省略させていただきますが,課題の部分だけ拾っていきたいと思います。
 重点事項1の2つ目の柱は文化芸術活動を支える人材,アートマネジメント担当者,舞台芸術者の育成でございます。ここにつきましても,課題としては,アートマネジメント人材等の育成,活用について,劇場・音楽堂が中心となって,地域住民や芸術関係者とともに取り組む舞台芸術の公演等に合わせて推進することが必要だと,こういう課題が残されているということでございます。
 それから,2ページに飛びまして,[3]無形文化財等の継承者養成のための環境整備でございます。ここにつきましては,順調に推移してきておりますが,課題としては,無形文化財や文化財の保存技術を確実に継承していくために,裾野を拡大した効果的な支援方策について検討が必要ではないかというふうな課題でございます。
 それから,4つ目のところは,質の高いボランティア活動を活発にするための環境整備ということで,これにつきましては,課題として残っていることとして,「新しい公共」等近時の動向も踏まえて,文化ボランティア活動も対象に含めたインセンティブの喚起等による環境の整備を検討する必要があるというふうな課題がございます。
 次の重点事項は,3ページ以下ですが,日本文化の発信及び国際文化交流の推進でございます。このあたりにつきましても,各事業とも19年度以降順調に推移してきておりますが,課題として残されている点が3つばかり記載がございます。1つ目に,我が国の文化芸術は諸外国から高く評価されているものの,日本文化全体に対する深い理解につながっているとは言い難い。伝統文化から現代の文化芸術まで幅広い分野の日本文化を多様な手段によって発信するとともに,そのための拠点の形成が必要ではないかというふうな課題。
 それから,効果的な文化発信と国際文化交流を推進するために,相手国の関心分野,鑑賞者層を的確に捉えるための方策を検討して,同時に在外公館をはじめ国際交流基金の海外事務所等と積極的に連携する必要があるのではないかというふうな課題。
 3つ目のところは,特に東アジアの国々との関係を重視して,これら諸国への発信,文化交流を意図的に展開していく枠組みの構築が必要ではないかというふうな課題が残っているということでございます。
 4ページにつきましては,「ジャパン・クール」として注目を集めるメディア芸術でございます。ここにつきましても,19年度以降それぞれの施策に取り組んできておりますが,課題といたしましては,広く国民に親しまれて,海外でも高く評価されているメディア芸術については,一層の振興を図ることが重要な課題である。そして,ソフト支援とヒューマン支援を充実していく中で,関係機関の連携・協力によるコンソーシアムの構築と,メディア芸術分野のデジタルアーカイブ化が必要だというふうな課題が残されているということでございます。
 また,[3]のところ,文化財保護の国際協力の推進でございます。ここにつきましても,各取組は順調に推移してきておりますが,残された課題としては,文化遺産国際協力に関する国民の理解増進を図るとともに,文化遺産国際協力コンソーシアムに参画する会員数を増加させて,体制の充実を図ることが必要だということ。もう一つは,「アジア太平洋地域における無形文化遺産保護のための国際研究センター(ユネスコ・カテゴリ2センター)」を23年中に設立することが課題となっているということでございます。
 それから,5ページのところは,3つ目の重点事項,文化芸術活動の戦略的支援についてでございます。これにつきましては,今回の「審議経過報告」の中でかなり取り組んできている部分ですが,19年度から22年度までの中での課題として幾つか記載をしてございます。
 1つ目に,文化芸術活動に対する支援について,現在の支援制度が芸術団体にとって自己収入の増加等のインセンティブが働かないとの指摘があるので,インセンティブが働く支援方法を検討・導入することが必要だと。今回,概算要求の中でこの対応してきている部分でございます。次の○についても同様で,「日本版アーツカウンシル」の試行的導入が必要であるということ。それから,3つ目の○では,地域の文化芸術拠点において,文化芸術が創造・発信され,地域の人々が享受できる機会を充実するために,地域の核となる文化芸術拠点への支援の拡充が必要だというふうな課題が残されているということでございます。
 飛ばしまして,6ページでございますが,4つ目の重点事項は地域文化の振興でございます。ここにつきまして,幾つかの柱立てがございましたが,各地域における様々な公演・展示であるとか,文化芸術活動の関係者の交流の機会といったようなことの柱立てになっております。
 ここにつきましても,それぞれの取組は順調に推移してきておりますが,幾つか課題として残っておりますことは,文化芸術団体の活動拠点が大都市圏に集中していて,地方における文化芸術の鑑賞機会が少ないということ。地域の文化芸術拠点において,文化芸術が創造・発信されて,地域の人々が享受できる機会を充実するために,地域の核となる文化芸術拠点への支援の拡充,法的基盤の整備の検討が必要であるということの課題が残っているということでございます。これにつきましても,先ほどの説明のとおり,「審議経過報告」を受けて,今回の概算要求の中で可能な限りの対応に取り組んでいるところでございます。
 それから,[4]地域の文化力を地域経済や観光等のまちづくりに生かすという部分でございます。これにつきましても,課題として書きましたのは,文化芸術創造都市については,各地において先駆的な取組が見られるものの,全国的な普及には至っていない,ノウハウも十分ではないということで,モデル事業を実施するとともに効果の検証を進めて,各都市の施策の推進に活用していくことが必要であるということでございます。これについても今回の概算要求の中で反映をしているところでございます。
 7ページでございます。これは子どもの文化芸術の充実でございます。これにつきましても,事業の組み替え等幾つかございましたが,基本的には順調に推移をしてきているところでございます。課題として残されている点は,子どものための優れた舞台芸術体験授業について,今後,事業の効果の評価・検証の方法を検討しつつ,充実を図っていくことが必要であるという点でございます。これについても所与の概算要求の中で反映をしているところでございます。
 次に8ページ,6つ目の重点事項は文化財の保存・活用の充実でございます。ここにつきましては,それぞれ文化財保護法に基づく取組ということで取り組んできているところでございます。成果につきましては,表の形式にしていますが,各文化財の指定件数の推移を記載してございます。それぞれ順調に保存・活用を図ってきているところでございます。残されている課題としては,国宝・重要文化財の価値を維持するために,適切な修理周期を目標とした計画的な保存修理,安全管理や防災・防犯対策の充実を図ることが必要であるといったようなことを記載してございます。
 最後,9ページになりますが,[2]番として,文化財の総合的な把握を行う手法の検討でございます。ここにつきましては,文化財分科会の企画調査会の提言を受けましてそれぞれの取組を進めてきております。残されている課題といたしましては,「歴史文化基本構想」を策定するに当たって,参考となる国の指針を提示していくこと。また,地域の多様で豊かな文化財を幅広く捉え,点としての保存活用だけでなく,線又は面として総合的な保存・活用を図る。こういったことが課題として残されているということでございます。
 それから,一番最後の[3],ユネスコ世界遺産への推薦,登録でございます。これにつきましても,毎年度,毎年度の中でユネスコ世界遺産への登録,推薦をしてきているところでございます。残されている課題といたしましては,ユネスコ世界遺産委員会における世界遺産登録に関する審査が年々厳しくなってきているということですが,その中にあっても関係地方公共団体と連携しながら,推薦・登録をこれからも進めていくことが必要である,というふうな形でまとめております。
 全貌はなかなか説明しきれませんが,主な部分と,特に課題の部分に焦点を当ててご説明をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 滝波さんね,このグラフィックなかなかいいよ。今までと比べる必要はないんだがね。そうすると,今までやった人は大変つらい思いをするから,そういうことは言いませんが。この6つの重点事項のフォローアップの書式の見方,この間いただいて改めて見て,またきょうのお話をお聞きすると,ちょっとこの辺は弱いなとか,この辺はいいこと言っているなとか,あるいは,突っ込みたいなとかいうのがわかりやすくできているので,事務局の人の苦労,ご苦労さまでございました。
 さて,先生方いかがでしょうか。後藤先生,どうぞ。

【後藤委員】すみません,いつも一番最初で申しわけないです。
 幾つかありますが,まずは3ページのところで,先ほどの概算要求のときにもちょっと気になったんですが,「東アジア」というふうにおっしゃっていて,どうして「アジア」ではないのかなと。東アジア文化圏ということになると中国,韓国ぐらいしか入ってこないんですね。あとせいぜい台湾だと思うんですが。そうすると,漢字を使っていた文化圏のところだけになってしまって,ちょっと狭いのではないかなという気がしていて。都市間連携だと東京の場合もインドのデリーも含めて交流しているような状況なので,もうちょっと広げてアジア全体を視野に入れてもいいのではないかなというのが意見としてあります。
 それから,4ページの冒頭に「『ジャパン・クール』として注目を集める」というふうに書いてあるんですが,これはちょっと恥ずかしい感じがしまして。実は私,海外へよく行くんですが,海外の人は「ジャパン・クール」とか「クール・ジャパン」とか言ってないんですよね。おもしろおかしく研究で取り上げて,学会等で発表したり,学生が修士論文で書いたのを読んで,「へええ,日本ではそういうことを言っているんですか」みたいな感じで認知はされてきているとは思うんですが,ここ,こういうふうに言わなくてもいいのではないかなと。つまり,「ジャパン・クール」とか「クール・ジャパン」とかと言っているのは日本人だけだと思うんですよね。多分外国で1回ぐらいは取り上げられたのかもしれないんですが,アメリカでもこういうことを,本当にアメリカが言っているのかということを検証した先生もいて,「言ってない」と国際学会で発表していましたので,ちょっと恥ずかしいからお取りになったほうがいいのではないかというのが私の意見です。
 それから,6番目のところの課題に,「モデル事業を実施し」というふうに,創造都市のところであるんですが,創造都市というのは,そもそも各自治体が自分のところで創造的に都市問題の解決を考えるときに,文化の視点から考えていくというふうな趣旨で,「モデル事業」というふうにしてしまうと,旧来どおりどこの都市も同じというような,何の創造的でもない都市ができてしまう可能性があるので,モデル事業としてお示しをするというよりも,もうちょっと何か違った形で考え方を示して,そこの地域独自の方法を編み出していただくというほうかいいのではないかなと思います。どうしても日本の自治体の仕組みだと,モデル事業が示されると,じゃそのとおりやればいいんだということで,何の工夫もせず何も考えずに全国各地同じようなことがそろっていくというのは全然クリエイティブではないので,創造都市の趣旨に反しますから,ちょっと「モデル事業」というのは再考していただきたいなと思います。
 以上です。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 「ジャパン・クール」,「クール・ジャパン」というのは,経産省がわあわあ言っているので。この間も産業構造審議会総会で出ていたんですが,私も出席したんですが,文化の話だとか,文化と経済がつながるとき,結構ここを前へ出していましたね。そういう意味では,後藤先生の言い方もなるほどという感じがしております。
 どうぞお願い申し上げます。

【大路長官官房国際課長】国際課の大路でございます。3ページの「東アジア」という記述に関して,狭すぎるのではないかというご意見だったかと思うんですが,東アジアと言いましても,人によっていろいろ捉え方が違っていたりするというのも事実でございまして,今の政権でも東アジアということを重視して,政府全体で東アジアとの交流の取組を進めていこうという取りまとめもなされているような状況でございまして,そのあたりのところに連動して「東アジア」という言葉を我々として使っているということは一つございます。
 それで,東アジアの範囲がどの範囲になるかというのは,繰り返しになりますが,いろいろ考え方はあると思っているんですが,私どもとしては日中韓がまず中核になってくるということは間違いないんだろうと思っておりますが,それに加えてASEAN諸国あたりも入ってくるだろうというふうに思っておりますし,場合によってはオーストラリア,ニュージーランド,さらにはインドあたりまで含めた形で東アジアというような考え方もあるようでございますが,あまり範囲を固定しないで,今まで全方位的に文化交流の施策をやっていたものを,どちらかというと東アジアに重点化して戦略的に取組を進めていこうという考え方として,東アジアという考え方を示させていただいているというふうにご理解をいただければと思っております。

【宮田部会長】私どもの大学の話をして恐縮なんですが,オーストラリア,あの辺までは東アジアと言っております。重点としてはその三国は重点でございますが。
 はい,どうぞ。

【近藤文化庁長官】今の点でございますが,私のおりました外務省でも,東アジアと言うときはあまり定義をはっきりさせない,外交的な配慮,それから,単にアジアというと,これも定義がいろいろありますが,アフガニスタン,イランまで入ることもあれば,国連のアジアグループといったときにどこまで入るか,それから,ASEMというヨーロッパとアジアの首脳が集まる会議があって,きょうから実は私はそれでポーランドへ文化大臣会合で行くのでございますが,ロシアがアジアとして入りたいと言っている。そういうこともいろいろな外交的な機微な状況がありますので,あえて「東アジア」という言葉でふわっとしておくのがとりあえず一番賢いやり方で。事実上,私どもの頭にありますのは日中韓とASEAN,それが基礎であるかなと。ASEANは決して外してはならないと思っております。
 それから,「クール・ジャパン」ですが,これもご案内のように2001年か2年にダグラス・バグレイという人が「グロース・ナショナル・クール」ということで日本の現代文化を,ポップカルチャーを非常に評価した,それが日本に輸入されて,ちょうど昔のエズラ・ヴォーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のように,賃貸していた日本がアメリカ人による評価で活気づいたということで我々が使ってきたという側面はあると思いますが,これをどこまで今後使うのがいいかはまたご審議いただくとして,そういう経緯があったことだけちょっとご紹介しておきます。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 浜野先生,どうぞ。

【浜野委員】3ページの文化の発信のところですが,長官賞ができたというのは大変うれしいと思うんですが,これは外国人にも適用されるということでしょうか。1つは。
 それからもう一つは,日本文化の総合発信ということなんですが。もちろん文化庁に期待するところはすごく大きいんですが,既にジャパン・エクスポとか,スペインのサロン・ド・マンガとか,アメリカには大体50の日本関係のポップカルチャーのイベントがあるわけですね,大小合わせると。そういうのは本当に放ったらかしになっていて,孤立無援で,我々の文化のために動いてくださる方が20年も30年も放ったらしになって活動されていたんです。それなのに,彼らの努力を無視しながら日本政府は勝手に何かやるということは,逆に怒らせることも結構あるので,そういうこともご配慮いただきたいとすごく思います。ネットワークをしていなかったと。
 これはちょっとだめ元で提案なんですが,11月18日にジャパン・エクスポの主催者3人のうちの2人,トーマ君とサイさんがいらっしゃるんですね,日本に。ジャパン・エクスポは17万人を超えてしまって,もう処理できなくなってしまって,あと2回増やすことになりました,パリで。それはチビジャパン・エクスポという名前になって,チビと呼ぶらしいんですが。そのために打合せに来られるんですが。
 スケジュール表を見たら11月22日にこの会合があれなので,5分でも彼らの意見を聞いてあげていただけないかと思うんですね。彼らは何もポップカルチャーだけではなくて,伝統文化も食事もファッションも全部含めてやっているんですが。去年から韓国政府は正規のブースを出したんです,ジャパン・エクスポの中に,なぜか。ジャパン・エクスポなのに韓国政府はブースを出しました,韓国文化はもっといいという。それなのに日本の正規ブースはないんですね。そういうことも含めて彼らの意見を発言させる……。いや,たまたま思いついたんですが,17万人もあるという日本文化の一番大きな発信源になっていますので,もしそういうことが可能であればぜひ。だめだったらプライベートにヒアリングの場をつくってあげていただくとありがたいと思います。
 以上です。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 ちょっと検討してください。
 この間,ハンガリー大使館に行ったら,ハンガリー文化大使ということで初めて日本の小林研一郎先生が選ばれたようです。ハンガリーの大使は「ハンガリーはアジアです」って言い切るんですね。それに対しての誇りを持っているというのを言い切ったときに私は心の中でぐらぐらしちゃったんです,「そうか,ショパンは友だちか」と思ってみたりもしたんですが。あえて逆に区切ったりすることもいかがなものかという気はします。
 同じようにフランス大使がよくいろんな賞を日本の人たちに上げていますよね。ちょっと乱発しているなという気がしないでもないんだが。でも,賞というのはその人たちにとってはありがたいし,フランス国に対して文化の貢献ができたというふうなことで,非常にうまくバランスよくやっているなという感じはします。
 今,浜野先生の話で韓国の話が出たりいろいろしたが,文化庁の動き,この表彰ができたのをきっかけに,またちょっと幅広い考えもお持ちになったらいかがかなというふうな気がいたしております。
 あとございますでしょうか。どうぞ。

【田村部会長代理】7ページの子どもの文化芸術活動の充実というところでございますが,第2次のときも今検討中のものでも,子どもに対するということは重点事項になっていると思います。左にありますように,今まで子どもということで本物の舞台など支援は,4つあったわけでございますね。今度,概算要求を拝見いたしますと,文化芸術による次世代人材育成プロジェクトというところに入っていて,子どもということがどこにもこの概要では出ておりません。重点事項であるはずの施策に果たしてきちんと充実が図れるのだろうかと。五十何億だったと思いますが,それは優れた芸術よりは増えていることは確かですが,今まであった4つを比べて,ちょっと正確な数字がないのでわかりませんが,これを合計して果たして本当に増えているのだろうかと思ってしまいます。子どもの文化芸術活動の充実ということを重点事項の一つにするならば,はっきりとわかるように予算の中にも組み入れていただけたらよかったなと思いました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 子どもが次の時代をつくるわけですからね。
 佐々木委員,どうぞ。

【佐々木委員】今のことに関連したことなんですが,子どもの鑑賞教育であるとか,あるいは,7ページの成果のところの一番最後の○のところにもありますが,伝統文化を計画的・継続的に体験・修得できる機会を提供する伝統文化子ども教室というふうなことは,今まで検討されてきておりますが,将来の10年,20年後の文化の応援団というものをきちんと育てるという意味で,鑑賞教育であるとか体験学習とかいうことは非常に重要なんですが,むしろ学校教育そのものの中で,つまり非常に柔軟な世代にどうすればきちんと文化芸術の系統的な知識を教育できるかという,そういう体制をつくる必要があるのではないか。端的にいえばカリキュラムの中でどういうふうに考えていくかという。そのことの検討はぜひ必要なのではないかな。つまり,これは文化庁の問題だけではなくて,文科省全体,特に初中教育の中でこういう知識をきちんと教育できるような体制をつくっていく必要があるのではないかというふうに思っております。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 まさしくそのとおりでございまして,いかに文化芸術の授業が少なくなってきているかということは,官民挙げて伝えていって,実行していかなければいけないなという感じは私も同感でございます。
 どうぞお願いいたします。

【小松文化部長】先ほど田村先生からご指摘をいただきました子どもの事業でございますが,来年度の概算要求に当たって特別要望枠に何を文化庁として計上するかというのを考えたときに,政府全体の成長戦略の中で人材というキーワードで出すしかないなと,そういう考え方がございまして,人材育成の中に子どもというものも含めて予算要求をすると,そういう形をつくったものでございます。
 お手元の資料の「概算要求の主要事項説明資料」という3ミリぐらいの厚さのものがございまして,この28ページをごらんいただきたいんですが,次世代人材育成プロジェクトということで,文化芸術の頂点の部分を高めるという,先端的やメディア芸術の人材育成と,新進芸術家の育成,それから,国民全体の裾野を広げてそこから将来の頂点が生まれるかもしれない,あるいは,将来の観客層を育成するという,そういうことを目的とした子どもの文化芸術体験事業もこの中で非常に大きなウエートを占めているという位置づけにしておりますので,決してこれまでと違って軽視をしているということではございませんので,よろしくご支援をいただければと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 ちょっとさっき褒めたんだが,少し色が多すぎる。もう全体にソフトトーンにしたほうが品格が出てきます。
 はい,どうぞ。

【白間伝統文化課長】失礼いたします,伝統文化課長でございます。今,佐々木先生からご指摘ありました学校教育での伝統文化についての充実ということについて,体系的な内容の充実については引き続き初中局等と連携をする必要があると思いますが,現実,この2回ほどの指導要領の改定の中で伝統文化に係る記述はかなり充実してきているというのは事実としてあると思っております。
 ただ,今回の予算要求と関連しまして一つご説明させていただきたいのは,今,同じようにございました「主要事項説明資料」の中で,今回,指導要領の内容としては充実しているが,実際には学校現場で伝統文化の指導ということで必ずしも充実していないという現状があり,特にそれは伝統音楽,この政策部会でもご議論がありました邦楽等については,音楽の教員だけでは,三味線が弾けるわけでもございませんし,きちんとした指導ができてないのではないかというような問題意識がございます。
 この資料の8ページの(3)の一番下にあります[7]というところをごらんいただけますでしょうか。今回も伝統音楽等の普及促進支援事業ということで新規の事業を計上しておりますが,要は三味線であったり,お琴,尺八といった邦楽関係の実演家の方にぜひ学校に指導に行っていただいて,音楽の時間等に教員と一緒になって指導していただくような仕組みづくりをできないかということで,新しい1億円の事業を要求させていただいております。学校の先生方も指導したいが,実際に演技ができるわけでもございませんから,そういった場合には,例えば富山先生のところの三曲協会といった専門家の方々にそこに行っていただいて,一緒に指導していただくということが現実的にも必要かなということで,今回そういった事業も発展させているということをご紹介させていただきたいと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 富山先生,そういうときはぜひお力をよろしくお願い申し上げます。日本の根っこにある文化でございますね,これは大事にしたいと思います。
 はい,滝波さん。

【滝波企画調整官】先ほど後藤委員のほうから文化芸術創造都市のモデル事業の関係でのご質問があったかと思いますが,予算としては確かに「モデル事業」という名前になっているんですが,金太郎飴で何でもかんでも同じようにやろうというふうなことは全く思っておりませんで,各地域でいろんなやり方があっていいと思っていますし,むしろいろんなやり方,バリエーションのあるやり方を支援していきたいと思っておりますので,特色ある取組をやりたいというところについて手を挙げていただいて,そこについて委員会のほうで選定をしていくというふうな事業のスタイルをとっておりますので,これからもさらに幅広い取組を支援していきたいなと思っております。
 以上でございます。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 ちょっと時間が押しているので,これでこの部分に関してのお話は一度閉じさせていただきたいと思いますが,よろしゅうございますか。
 それでは,今後のスケジュールを含めまして,先生方,お覚悟召されたということでございますが,大変な時間をいただきたいと思いますが,ぜひとも文化芸術のためにということでお力をいただきたいと思います。
 事務局のほうからご説明いただけますか。

【滝波企画調整官】それでは,今後の進め方等につきまして,少しご説明を申し上げたいと存じます。
 まず,資料4に今後の開催の日取りを書いたものを用意しました。本日9月8日,第9回の開催でございます。以後,第10回から,多いときで月に4回と,そんな感じになっていますが,各委員の皆様方の日程の確保の関係もございましたので,こんな形で日程組みはさせていただいております。この中で残された課題,本日ご議論いただいたような点も含めて,評価の仕組みであったり,あるいは,全般を通じての意見交換,文化芸術の各分野トータルでの意見交換ということはまだできていない部分もございますし,そういった点も含めまして,論点別にまた議論をしていきたいということで,このような日程組みをさせていただいております。もちろん場合によりましたら,日程の変更等あるのかもしれませんが,当面はこんな形で進めていきたいと思っておりますので,ご協力方お願いしたいと存じております。
 それから,資料5でございますが,これにつきましては,今の資料4の日程の第10回,第11回の中にも書いてございますとおり,来週の(月)(水)の2日に分けまして文化芸術関係団体からのヒアリングを予定してございます。これにつきましても,6月の「審議経過報告」の中で,国民からの意見募集とともに関係団体からも意見を聴くようにということで書かれております。それを受けまして,前半戦の中で十分な時間がとれませんでした関係団体のヒアリングを,9月13・15の2日間に分けまして行っていきたいと思っております。
 関係団体のほうにはご発表をぜひお願いしたいということで,事務局のほうよりお願いをしておりましたところ,なかなかご都合の合わない団体さんもございますので,全部とはならなかったんですが,ここに記載のような形で,13日には8つの団体,15日の日には7つの団体からの意見発表をお願いしているところでございます。こういった形で来週月・水と2日間にわたりましてヒアリングを行っていきたいと思っておりますので,ご協力方お願いしたいと存じます。
 それから,最後に資料6ということで,国立文化施設等に関する検討会をこれから始めたいと思っております。これにつきましても,「審議経過報告」の中で,国立の博物館や美術館,あるいは,劇場といったものの運営の見直しについての提言もいただいておりますし,機を同じくして政府全体の中での独立行政法人の見直し,あるいは,4月に行われました事業仕分けといったような動きもございましたので,こういった機会に国立の施設の在り方について専門的な検討を行っていくような場が設けられたらいいかなということで,今回,検討会という形で開催していこうということで,既に第1回の日程を9月24日という日取りで決めているところでございます。
 この資料の中に記載がございますように,本部会の部会長でございます宮田部会長にもご参画いただき,また,本日はご欠席でございますが,吉本委員にもご参画いただく形で,資料6の最後のページにございますような11名の方々をメンバーとして,9月以降の検討をしていきたいというふうに思っているところでございます。
 日程等につきましてのご説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 すごいね,これは。頑張りましょう。よろしくご協力いただきたいと思います。
 それから,今説明がございましたが,国立文化施設等に関する検討会,私のほうからも折りを見て本部会にも報告させていただきたいと,かように思っております。
 長官,いかがですか,初めて出られて。ご感想も含めましてご期待を一言。

【近藤文化庁長官】ありがとうございます。
 まず,大変有意義なご審議をいただきまして,心から感謝を申し上げます。大変お忙しい中,これまで既に8回,きょうを入れて9回のご審議をいただき,これからまた10回近いご審議を年内にいただくということで,大変なご負担をおかけする,心苦しゅうございますが,私どもとしては,先生方のご意見,そして,最終的なご報告,これが本当に頼りでございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 それから,概算要求について基本的なご支持をいただいたこと,また,重点事項のフォローアップについても一定の評価をいただいたことは大変うれしく思っておりますが,この概算要求はまだ最初の一歩でございます。とりあえず一歩かもしれませんが,今後,省内での優先度をどうするか,政策コンテスト,そして,政府原案の作成,国会での承認,それから,いよいよ予算ができたらそれを実際にどう実施するか,実施できたものをどう評価するか,さらに新しいよりよいものをつくっていくか,本当に息の長いプロセスのほんの第一歩だと思います。そういう意味では粘り強く,いい文化政策が実現するように,長い目で先生方のご支援,ご指導を賜りたいと思います。
 最後に,私はこの1ヵ月で,現場を見たいということで地方,宮崎,愛知,富山,鳥取を演劇祭を中心に見てまいりました。そこで現場の劇団の方々,住民の方々とお話をしてきましたが,クリエーター,アーティストがどこまで自分の芸を究めることに集中するか,どこまで教育普及に力を注ぐか,どこまで地域振興,つまりどうしても住民は経済効果を期待します,地域振興に力を注ぐべきか,そしてまた,国の国際的な地位の向上に貢献するか,これは相互に関連しておりまして,もちろん全部が矛盾するわけではありませんが,一体どこにどう重点を置いたらいいのかということを,地域ごとにきめ細かく見ていく。そういう形で国の関与の在り方を考え続けなければいけないなということを痛切に感じてまいりました。
 これからのご審議,最終的なご報告をそういう意味でも非常に楽しみにしておりますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。

【宮田部会長】突然申しわけございませんでした。大変いいお話をいただきました。頑張ってやっていきたいと思います。
 それから,私どもの委員会で常に私が気になっているのは,私どもがやったが,後ろを振り返ったらだれもいないということではなくて,きょうもありましたが,パブコメにあったように非常にいいご意見を国民すべての人から感じられる,そういう文化庁になっていっていただけたらと,かように思っておりますので,ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 最後に,事務局,何かございますか。

【滝波企画調整官】先ほどもご説明しましたとおり,次回は関係団体からのヒアリングということで,予定が2時間半ということで少し長くなるんですが,9月13日,(月),15:30から,会場はこの場所,東館3F1特別会議室で行いますので,またよろしくお願いしたいと思います。
 これからまた,暑い夏の後はまた熱い議論が多分あるんだろうと思っておりますので,引き続きのご協力,ご尽力をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。ありがとうございました。

【宮田部会長】それでは,本日はこれにて解散ということでよろしゅうございますね。ありがとうございます。よろしくまたご指導ください。

12:01 閉会

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