文化審議会第8期文化政策部会(第11回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,青柳委員,小田委員,加藤委員,後藤委員,酒井委員,佐々木委員,里中委員,鈴木委員,高萩委員,堤委員,坪能委員,富山委員,西村委員,浜野委員,増田委員,山内委員,山脇委員,吉本委員,福田内閣官房参与

(事務局)

清水事務次官,近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【滝波企画調整官】ほとんどの委員の方々が既にお越しでございますので,まず資料の確認のほうからさせていただきたいと存じます。
 本日の資料ですけれども,議事次第の下に配付資料を幾つか用意しております。配付資料の1つ目は,答申第3次基本方針の構成案という資料でございます。それから資料の2として,答申に向けた要検討事項について,それから資料3として,A3を折り込んだ資料でございますけれども,基本方針等における重点施策の変遷というような資料でございます。それから,資料4が2種類ございまして,資料4-1,文部科学省(文化庁)における文化行政の政策評価実績評価体系,それから資料4-2として,「文化芸術による日本元気復活プラン」というふうにタイトルが書いてある資料があるかと思います。これは文部科学省における事業評価の資料の抜粋でございます。それから,資料5としまして,吉本委員のほうでご提供いただきました資料で,文化政策の評価についてという資料でございます。それから,資料の6として意見募集及び関係団体ヒアリングにおける主な意見概要の資料,それから,資料7として当面の日程及び進め方(案)がございます。そのほか参考資料として,いつものように名簿と審議経過報告の冊子,それから第二次基本方針の冊子,それから机上参考資料の3つ目に,先ほどの資料5番,吉本委員のご発表の資料に関連する資料がクリップどめしたものがあろうかと思いますので,これについてもあわせてごらんいただきたいというふうに思っております。
 資料の過不足等,もしございましたらば申しつけをいただけたらというふうに思います。特にないようでしたらば,委員の方々は既にお見えでございますので,部会長のほうで進行をお願いしたいと思います。お願いします。

【宮田部会長】ありがとうございました。資料のほうはよろしゅうございますね。
 それでは進めさせていただきたいと思います。文化審議会,政策部会第11回でございます。ご多忙のところをありがとうございました。本日は,酒井,鈴木,西村,増田,山内の5名の先生はご欠席でございますが,会は成立しております。
 ちょっとここで最初にご紹介をさせていただきたいと思います。このたび文部科学省参与に就任されました福原株式会社資生堂名誉会長に本日はご出席いただいております。ご紹介申し上げます。一言,先生。

【福原文部科学省参与】きょうはオブザーバーですから。

【宮田部会長】そうでございますか。ありがとうございます。よろしくどうぞお願い申し上げます。
 それでは,本日の議題に入ります。前回までに文化芸術関係団体からのヒアリングを終えました。ありがとうございました。いよいよ答申に向けた審議を進めていきたいと,かように思っております。本日の議題にもありますとおりに,答申の第3次基本方針の全体構想について,共通認識を形成した上で重点戦略の在り方,政策目的,達成目標の在り方等々についてご意見をいただきたいと考えておりますので,よろしくお願いします。
 全体の時間配分をちょっと最初に申し上げておきたいと思いますが,よろしくご協力ください。議題の1は,答申第3次基本方針の構成等については約30分,議題2,重点戦略の在り方については約45分,第3の政策目的,達成目標の在り方について40分程度を予定しておりますので,ご協力をお願い申し上げます。
 それでは,議題1に移らせていただきます。
 今後答申に向けて審議を進めるに当たりましては,その全体構成と検討を要する事項について確認的に議論しておきたいと思います。まず配付資料について事務局からご説明を願いたいと思います。よろしくどうぞ。

【滝波企画調整官】それでは,資料の1番と2番をごらんいただきたいというふうに思います。
 資料の1ですけれども,答申第3次基本方針の構成案ということでございます。この6月に審議経過報告をおまとめをいただきましたけれども,その際の全体の柱立てが一番左の箱の中に書いたような柱立てで構成をしておったわけでございます。
一方で,現在の第2次基本方針というものが一番右側に書いているような柱立ての構成になっているということでございます。こういったことを踏まえながら最終形としての答申及び第3次基本方針というものの最終形の姿を考えていく必要があるだろうというふうに思っております。それぞれ審議経過報告や第2次基本方針からどのような形で答申,第3次基本方針をまとめていくかということを考えてみたものがこの矢印で書いたようなものでございます。ここで案としてお示しさせていただいておりますのは,第1としては,文化芸術振興の基本理念,これは基本的に審議経過報告のときの柱に沿った形につくってございます。
 それから,第2の文化芸術の振興のための重点施策という部分につきましても,基本的には審議経過報告の際の6つの重点戦略の事項がございましたけれども,この事柄をそのままここには掲載をしております。
 その下,6つの重点戦略に関連して,配慮事項ということで,第2の2番ということで置いております。ここの部分についても今後議論をしていく必要があるのかなということで,箱を用意をしております。その下,第3として文化芸術振興に関する基本的施策ということで,重点施策に入り切らない部分も含めて,文化芸術全般にわたる文化芸術振興基本法の法体系にのっとった形で基本的施策というものを示していく必要があるのかなということで,この部分につきましては,現行の第2次基本方針の第2の部分を基本的には引き継ぐ形になるのかなというふうに思っておりますけれども,そのような形の第3を書いていく必要があるのかなというふうに思っております。
 全体構成はこのような形で考えておりまして,資料の2でございますけれども,答申に向けた要検討事項という部分でございます。この中で3つほどポイントを示しております。まず1つ目に答申と第3次基本方針閣議決定との関係ということでございます。ここに記載しておりますように,1次方針,2次方針と同様に,答申とその最終形としての第3次基本方針というものを同一のものとすることでよいのかどうかということについてご検討いただく必要があるのではないかなというふうに思っております。この際の考えるべき点としては,同一のものとすることによって答申が最大限に尊重されるということがあろうかというふうに思っております。
 一方で,事務的には,最終的に閣議決定をしていく必要がありますので,その点で関係の省庁との協議ということもこれから事務的には考えていく必要があるというふうに思っております。その点を踏まえたご検討をいただく必要があるのかなというふうに思っております。
 それから,2つ目の項目ですけれども,答申本体,それから第3次基本方針の全体構成についてでございます。これについては,ここに(1)から(4)まで記載したような事柄についてご検討いただく必要があるというふうに思っておりますけれども,本日その中でご議論いただけたらありがたいというふうに思っております点は,(2)番の重点戦略の在り方という部分でございます。ここにつきましては,夏の審議経過報告の中で6つの重点戦略ということで,提言事項としては24本の項目を挙げたところでございました。この構成をそのまま踏襲することでよいかどうかという点。それから,第3次基本方針というものを最終的にまとめるに当たりまして,対象期間をどのように考えていくかということがございますし,ここで書いたようなおおむね5年間ということでよろしいかどうかということがございますし,その場合にその表現振りというものをどのように見直しを図っていく必要があるのかということも考える必要があるのではないかというふうに思っております。
 その他(3)として配慮事項,(4)として基本的施策という部分についても,後日ご審議いただく必要があるというふうに思っております。 それから,3つ目の点は,達成目標,評価指標と工程表の在り方の関係でございます。基本方針の性格を考えまして,重点戦略に盛り込む施策を対象として,答申の本体の別添の形でこのような達成目標とか,評価指標あるいは工程表といったものを考えていく必要があるのではないかというように思っております。その点,そのような形でよろしいかどうかという点についてのご検討をいただきたいというふうに思っております。
 なお,今申し上げた本日ご審議いただく点,それから後日ご審議いただく点というものの全体像につきましては,資料の7が当面の日程及び進め方ということになっておりますけれども,少し資料7のほうに中身が見えるような形で書いてみました。本日は,議題にございますように,重点戦略の在り方及び達成目標,評価指標の部分についてのご検討をいただきたいというふうに思っておりますけれども,次回以降,それぞれの論点についてご検討,ご審議をいただきたいというふうに思っております。
 このような形でこれからの審議を進めていただきたいというふうに事務局として考えておりますので,その点も含めましてご審議をいただけたら幸いでございます。
 以上でございます。

【宮田部会長】どうもありがとうございました。
 資料7が全体の12回から16回までの流れが書いてございますので,その辺もバランスよくお考えになりながら順次進めていきたいと,かように思っておりますが,今のご説明で資料1から2まで含めて,やはり(2)の中にございますが,6つの重点戦略,24本の構成を設置するか,あるいは対象期間,この辺はこれでよいかというふうなあたりも含めまして,先生方,ご意見がございましたらよろしくお願いします。いかがでしょうか。
 基本的には,この会議,文化政策部会は,強い文化政策部会でずっとあり続けたいと思っておりますので,揺るぎのないところに持っていくには,この辺のところをきちっと進めていきたいというふうに思っております。いかがでしょうか。今回の流れとしては,進め方が5つの柱で,舞台,メディア,美術,暮らし,文化というふうにして,それぞれのワーキングをつくりましたので,それからスタートして煙突がきちっとでき上がっておりますので,わかりやすい状況になるのではないかというふうに思っております。
 ただ,ちょっと誤解しないようにしていただきたいのですが,6つの戦略というのと具体的な施策が数字が違っているのがちょっと気になるかなというぐらいですけれども,あそこは大丈夫だよね。重点戦略が6つあるでしょう。ところが,ワーキングは5つじゃないですか。そこが柱を立てて,くしでさらったんだけれども,後半へ来てどうして線が乱れたのというふうに思われないようにしなきゃいけない。私どもは確実に把握しているのですが,知らない人が見たときに。その辺がちょっと私は気になるぐらいですけれども,よろしゅうございますでしょうか。
 前後しても構いませんので,またお気づきの点等々がございましたらば,次へ進んでも,後半になってお話ししていただいても結構でございますので,検討に移りたいと思いますが,よろしゅうございますか。
 どうぞ。

【山脇委員】先ほど資料2に答申と第3次基本方針との関係というのがありまして,それによって,またその中身ももしかしたら違ってくるのかと思うのですが,私自身は同じものとしてずっと考えてまいりましたけれども,それを同じにすることのメリットとデメリットと,今ちょっと閣議決定があるので,関係省庁ともどうのこうのというお話がありましたけれども,決定的な違いとその分けたほうがいい意味,一緒にしたほうがいい意味というのをきちんとお話しいただきたいと思います。

【大木政策課長】これは基本法に基づいて基本的方針というものが制度的にあるわけでございまして,それを意識してやっぱり議論をせざるを得ないと思います。それで,メリットといたしましては,ここでの議論がまさに基本方針をつくる上での実質的なものでなければいけないと思いますので,それを最終のでき上がりである閣議決定に最も忠実に反映させるためには,答申イコール閣議決定というような形にしなければいけないというふうに思っております。それでその場合にどういう工程かと言いますと,ちょっとこれは各省,閣議決定は,基本的には答申までというのが審議会の任務・権限でございますので,審議会の中でかっ達なご議論をしていただいてでき上がるものということになります。それで,閣議決定と同じという場合に,閣議決定部分は今度は答申をいただいて役所の責務になってくる部分でございまして,同じということであってもそういう役割分担がどうしても出てくると。要は整合性をどういうふうに保つかと言いますると,それは多分,この審議をしている間に,並行してもう各省折衝を始めるということで,審議会のこういう場においても,あるいはこういう場が先生方のご都合でもって設定できずに,臨機応変にちょっとご判断いただくときには,もうファックスなり,メールでもって送付しながら,ご意見を伺いながらやっていくという手続の煩雑さは確かにあろうかというふうに思っております。ですけれども,ここでのご議論を最も直接的に,完成形であるところの閣議決定,最後は閣議決定の勝負でございますので,ここに反映させるためには答申イコール閣議決定ということを念頭に置いて作業を進めたほうがよかろうというのが事務局の原案でございます。

【山脇委員】では,例えば,文化庁,文科省にとってはこれは一番よいと思われても,別の省庁にとってこれはいかがなものかというようなことがあったら,それは変えられるというような可能性もあるということですか。

【大木政策課長】当然そういうことになります。閣議決定を念頭に置く以上,それは同一であるという前提に立った途端に,答申のほうもある程度率直にご報告をして,ご議論をいただいた上でもって変えていくという作業になってくるかなというふうに思っています。ちょっと視点を変えますと,閣議決定はもう役所にすべて任せるということであれば,もうそこは答申でもっていろいろなことを当然書いていただいて,あとは役所同士の今度は受け取った側の問題として整理させていただくというやり方ももちろんございます。ただ,そうしますと,当然のことながら実質的にご議論をいただいた中身と各省折衝後の姿というのが,随分変わってきちゃう可能性も当然ありますので,ただ,そのリスクを取るのか,それとも多少手間がかかろうが,もたもたしようが,とにかくご報告しながら閣議決定と同じという前提でちょっと審議をしていただくのかという,この二者択一だと思いますね。中間系は多分あり得ないんだろうというふうに思っています。

【高萩委員】具体的に言うと,映画産業的な部分と,アニメーションとかいろいろありますけれども,そこら辺の部分とか,総務省とつまり地方の公共劇場の在り方みたいなあたりが引っかかるんですか。それともどこか,僕が考えられないようなところで引っかかる場所があるのかしら。

【大木政策課長】思いつく限りで全部申し上げますと,総務省でもって言いますと,地域創造の資料が,後ほど吉本委員からあると思いますけれども,地域創造は公立文化施設を持っております。それから,地域の文化的なことに関しまして,いわゆる地方自治の制度を持つ制度官庁として総務省はかかわってくる権限を持っているところでございます。それから,あと財務省は当然のことながら予算という側面からチェックを入れてくると。それから,外務省は文化の国際交流でございます。それから,経済産業省はいわゆる芸術関連のもろもろの産業,メディアもそうでしょうし,映画もそうでしょうし,それから舞台芸術にしても何にしても,産業的な観点からすれば業所管をしているのは経済産業省でございますので,経済産業省もいろいろ言ってくるだろうと。それから,国土交通省に関しましては,観光振興,それから文化財といった点がかかわってまいりますし,農水省は農村の文化的景観といえば農水省のマターでございます。これはいろいろありまして,ほぼ全省庁にかかわってくるんじゃなかろうかと思われます。

【宮田部会長】会計検査院というのはどこに所管が……。

【大木政策課長】それは関係ないと思います。

【宮田部会長】いや,大ありでね,今私のところは全く頭にきているんですけれどもね。全く文化を何だと思っているんだと思って,大げんかしているんですけれども。話は横に置いておいて。

【山脇委員】ただ,あれですよね,煩雑なのかもしれないし,あれですけれども,私たちが机上の空論だけまとめて,それでそれが政策に生かされないことをこんな延々何時間もやるなんていうのはばかばかしい話ではあると私は思いますが。ですから,答申イコール基本方針ですか─というほうにしていただくべきかなとは思いますが。

【宮田部会長】おっしゃるとおりでございます。冒頭に私は「強い文化政策部会」ということを申しましたが,やはりこれだけの先生方にこれだけの時間を割いていただいたということは,本当に今危機的な状態ですので,ぜひぜひ長官を初めとして,一緒になって頑張ってやっていってもらいたい。私どもも一生懸命やるというスクラムを組んでやっていきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。 
 さて,どうでしょうか。いや,でも大木さんね,本当に部署が違うと共通言語が全くないという部分が時々あるものですから,ご苦労なさっているのはよくわかるんですけれども,そこは私どもがちゃんと伝えていかないといかんのかななんていうふうに理解しております。 
 いかがでしょうか。では,次に進めさせてもらいます。
 議題2のほうでございますが,また再度申し上げますが,前の部分に戻っても結構でございます。重点戦略の在り方,この辺をちょっと審議したいと思います。
ご承知のとおりの審議経過報告では,23年度の概算要求に掲げることが念頭に当たっているということでございますので,重点戦略の中にはいささか近視眼的な表現という箇所もあります。これは,きょうの話の中でもそうですが,即重要であるということになると,近いもの,遠いものということが当然出てくると思います。この点で,先ほどの資料2にも記載してありますが,答申に向けては第3次基本方針の対象期間,見通し,表現振りに改める必要があると思いますので,中長期的な観点からのその重点戦略,先ほど申しました24の構成を世襲するのでよいかなというふうに思うんですが,どうでしょうか。この辺ちょっと,私もさっき冒頭に申しましたが,ちょっとこの辺が先生方の中でご心配な部分がございますので,近いもの,それから中長期のものということで,ちょっとその辺を踏まえながらご議論をいただいたらいいと思いますので,事務局のほうからちょっとそこのところを含めてご説明ください。よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】それでは,資料3を少しごらんいただけたらと思うんですけれども,資料3,ちょっと大きな紙になってしまったんですけれども,各基本方針などにおけるこれまでの重点施策と呼ばれているものの中身を少し並べて,比較できるような形にしてみました。一番右側の審議経過報告がこの部会の中でご議論いただいて,6月にまとめていただいた審議経過報告でございます。ここの中で,赤字で書いている部分につきましては,過去に関連の提言事項がないものだというふうに思っている部分で,この部分は赤字で書いてございます。
 それから,(2)は今回第3次基本方針に向けてご議論いただいているわけですけれども,第1次の基本方針が14年12月に決定されておりますし,第2次の基本方針につきましては19年2月に決定をされております。こういった変遷がございますし,それからもっとさかのぼりますと,文化審議会が発足する以前ですけれども,これは文化庁の中で策定をいたしました文化振興マスタープランというのがございました。これは平成10年ですけれども,こういったものもございまして,そういった中で関連の記述がどんなような記述があったのかというのを少し見ていったのがこの比較表でございます。過去にも関連の重点施策と呼ばれているものがそれぞれここの文化振興マスタープラン,1次基本方針,2次基本方針,それぞれにアンダーラインで少し引いた部分が今回の審議経過報告の6つの重点戦略の提言事項と関連する部分でございます。そんなような形で過去の状況を少し見ていたものでございます。
 これは,今,部会長からもお話がございましたとおり,この夏に審議経過報告としておまとめをいただきましたけれども,その際の念頭にあった点としては,やはり23年度の概算要求にぶつけていこうということがまずもっての課題だったというふうに思っておりまして,その点でやや概算要求,あるいは23年度の施策ということを意識した記述になっている部分がさまざまあるのかなというふうに思っております。その点につきまして,今回策定をしようとしている第3次の基本方針というものがもう少し長い期間見通した方針であるということを考えますと,その辺からの内容の見直しということは図っていく必要があるのではないかなというふうに思っております。
 これが資料3の説明でございます。ページは4ページまでありますけれども,それぞれ6つの重点戦略に関する記述と,それに関連して過去の基本方針の中でどのような関連の記述があったかということをまとめたものでございます。これを一つ参考にしていただきながらご検討をいただきたいというふうに思っております。
 それから,もう1つ,資料の6番を,ほとんど参考資料に近いんですけれども,ごらんいただきたいというふうに思っております。資料6は,9月8日に部会を行った際に,夏の間に審議経過報告に対する国民からの意見募集の経過をご報告をさせていただきましたけれども,その際の資料に,その後行いました関係団体ヒアリングで出されてきた意見を反映した形で,少しもう一度整理し直した資料としてまとめたものでございます。ここの中でもやはり重点施策として盛り込むべき事項はこんなことがあるのではないかということをそれぞれ多くの国民の方々あるいは関係団体から意見を寄せていただきましたので,その点も材料にしながらご審議をいただきたいというふうに思っているものでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。

【宮田部会長】ちょっと紙が大きくなったけれども,見やすくなりましたね。ご苦労さまでした。
 この資料は事前に先生方には配付,現在配付,どちら。

【滝波企画調整官】きょうこの場で初めて。

【宮田部会長】そうですか,それじゃ少しお時間をいただきましょうかね。先生方,ほとんど大体もうお目通しされているとは思いますが,こうやってきちっと6つでレイアウトされているとお気づきの点が出てくるかと思いますので,どうぞごらんください。
 美術品の国家補償制度の閣議決定というのは,どの辺まで動いているのか,ちょっと教えていただけないか。

【大木政策課長】美術品の国家補償制度に関しましては,最近,ここ一月ほどの間に新聞にも出ておりまして,個々の数字とかそういうのはともかくといたしまして,流れといたしましては,大体朝日新聞に書かれたようなことと同じなんですけれども,結局工程的には,私の個人的な感触でもって申し上げますと,技術的にあの制度をつくるということに関して,何か大きな支障があるとか,そういうことはもう全然政府の中,他省庁も含めて,これは私は余りないんじゃないかなという感じでもって私自身はおります。問題は,あれが,我々ずっと念頭に置いてきていましたのが平成23年4月から施行するということでもってずっと考えてきておりまして,ちょっと普通の予算関連の法案と違いますのが,直接予算を幾ら幾らと毎年計上するんじゃなくて,予算書の総則というところに,国家補償制度をつくるので,何か具体的に被害が生じた際には,予備費なり,それから補正予算なり,いろいろ手だてはあろうかと思いますけれども,そういうのを使ってやりますよと宣言的なことを書かなきゃいかんということなんですね。ですから,個別の金額は入らないと。金額が入らないというのは,幾ら幾らと毎年の要求額は出てこないと。ところが,枠としてそういう枠取りは一応文章的なものを中心にそこに書くということになるものですから,これが一つ予算関連の法案なのかどうかという割と差し迫った議論がございまして,そういうことも含めて,ちょっとどういう工程で来年の4月1日に施行することを前提に,どのタイミングでもってお出しするのが適当なのかどうかという,こういうところまできております。ですから,最後は判断の問題で,施行時期は,これは4月1日に施行しなければ,もうそもそも制度自体が空中分解してしまうという,よく日切れ法案というのがあるんですけれども,そういうのとはちょっと違いますけれども,それでも予算に実際にかかわってくる法案という位置づけでございますので,そう極端にずれ込んだりとかということは,国会審議にこれはもちろんよることでもって,出してしまったらもう国会のご判断になってしまいますけれども,役所的には何とかその辺はご配慮いただけるのかなという期待は持っておるんですけれども。

【宮田部会長】福原先生もこの間会議がまた持たれましたけれども,美術館とか,博物館の会議でございました。あの辺のところでも,やはり皆さんは一番国家補償の問題というのは大変大事な部分になってまいりますよね。それによって……

【福原文部科学省参与】そうです。国立文化施設等に関する検討会というもう一つの部会のほうでも,当然項目としては取り上げるべき問題だと思っています。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 共通認識という意識ですね,こちらの部会と。

【福原文部科学省参与】そうですね。

【宮田部会長】あと赤の文字になっておりますが,その辺はいかがでしょうか。
 後藤先生。

【後藤委員】すいません,質問なんですけれども,文化振興マスタープラン,平成10年の分から並べていただいたので,すごくよく流れがわかるんですけれども,これを見ると,平成10年にマスタープランができて,14年に1次基本方針で,19年に基本方針で,今度平成22年ということで,これは5年おきに立てていくという理解でいいですか。そういうふうなことではないですか。

【大木政策課長】文化振興基本法の中に5年で見直すべしということは書いていないわけでございますけれども,この審議会で答申をいただく際に,大体5年めどというのを答申の文書の中に,これは閣議決定には残りませんけれども,冒頭部分か何かになるんですかね。

【--】 残ります。

【大木政策課長】残るの。閣議決定に,すいません,残るそうです。それで書いてあるということでございます。したがいまして,ここの審議会での決めがベースになっているということです。

【後藤委員】今までは予算要求というか,そういうのに結びつけて,来年度の予算に割と引きつけた形で議論をしてきたと思うんですけれども,じゃそれとちょっとかぶるところもあるけれども,もうちょっと長いスパンで5年間を見通して,もうちょっとここの重点戦略のところを練り直さなきゃいけないという理解でよろしいでしょうか。そうすると,ことしの優先要件に入っていないけれども,5年間では既に入れてもいいのではないかと,だから少し長い目で私たちも考え直さなきゃいけないという理解でよろしいでしょうか。
 そうしたら,その次の質問は,そうすると文化振興マスタープランができて,14年のところで,過去にどういうことが見直され,第2次の19年で,5年ごとですから,それぞれどういうことが成果として出てきて,あるいはやってみたけれども,不十分だからさらに補強するというのですかね,続けるか,もうちょっと補充をするというようなことで,どういうふうに何が新しく,この赤字の部分は新しいというのはわかるんですけれども,じゃずっと書かれていることというのは全く一緒なのかというと,そういうこともないと思うんですが,やはり5年ごとに何が変わり,何を新しく立ててきて,点数で何が一体不足なのか。それは関係団体にヒアリングしたときにもう結構そういう意見が出ていたと思うんですけれども,その点はどういうふうにそれぞれの5年を評価するというか,何が成果として上がってきて,何が不十分で,さらに新しい政策が追加されたというふうに考えたらいいでしょうか。

【大木政策課長】これは吉本委員等からもこの審議会が検討を開始した際に,あるいは合同委員会でもございましたように,率直に言って評価の部分,どこまでできて,どこまでできなかったのか,あるいはその辺に立脚して,工程管理的な要素も入れながら,どういうふうに今後進めていくのかという視点が不足していたというのは,これは率直に我々としても,関係団体からもご指摘をいただければ,これは「申しわけありませんでした」と言わざるを得ない部分だろうと思いますので,今回はその反省に立って,ある程度評価を加えながらということで,関連の資料もきょう出させていただいておりますので,2次から3次へ移る際には,そこのプロセスはきっちり入れようと。それから,またいい加減になってしまってはいけませんので,工程管理的な要素もその中に入れていこうという,こういうことで考えておるわけでございます。
 それで,どこができていてと,率直に言って文章表現に関しましては,そのときの審議会の構成メンバーも全部変わっておりますと,ご承知のように,中間報告をまとめたときも,やはり皆様からいただいた意見をあれもこれも考慮しながらわあわあいじっていきますので,そうすると,どうしても文章のうねりが出てきてしまって,どこがどうにという,ミクロのレベルでの突合はできませんけれども,政策の玉のレベルでは,こういうところが変遷してきている分だということはある程度アンダーラインとか,色を付しながらちょっとやってみているということでございます。もし,もう少し仔細にミクロのところでもってやるということになりますと,ちょっとそれなりの作業をしなきゃいかんかなというような感じなんですが。

【後藤委員】そういうミクロなというよりも,やはり大きな考え方としてどういうふうに変遷してきたかということを整理しておいたほうがいいのかなという気がするんですよね。つまり平成10年に立てたときと,社会状況,経済状況も変わってきていますし,だからこのときに何を目指し,それで5年たったところでどういうふうに大きな考え方として転換があり,第2次ではどういうところが大きく展開しと,そういう大きなところでいいと思うんですけれども,やはり今回は恐らく細かいところは別なんですけれども,より文化庁というようなことが議論されたりとかして,ほかの省庁との連携をより深めないとできない政策というのはたくさん提起されていたりとかというところが特徴なのかなというふうにも思ったり,それは人それぞれに見方があるとは思うんですけれども,やはり大きな観点から少し流れを整理してみるということも必要なのかなというふうに思います。

【大木政策課長】すみません,ちょっと誤解をいたしまして。ミクロのレベルじゃなくて,逆にマクロのレベルでもって,要はどういう考え方の変遷が生じてきているのかと,大きな流れとしてどうなのかということに関しましては,これは実は重点施策について,だから個別の政策なんです。重点ではあっても個別の政策だまについてやっておりますので,むしろそれの前の基本的な考え方なり,方針なりというものがどういうふうに変わってきているのかという,そこの部分の整理じゃないかなと思われますので,次回の委員会でもってちょっと一覧性のあるような資料をつくらせていただいて,そのときどきのコンセプト,大きな考え方なり,特徴なり,多分外向けにそのときに広報していた,要は基本的な考え方みたいなやつというのが,それぞれ変遷がわかるような形にちょっと並べかえてみたいと思います。

【吉本委員】今の議論に関連して,2次基本方針を策定するときも,基本法に基づいて策定するので,個々の政策の柱立ては基本的に後半に出ているのは全部同じなんですね。でも,1次の方針と何が違うのかということを明確に出すために重点施策,重点戦略を打ち出しましょうという議論が出てきていますので,この重点のところを比較して見ていけば,大きな枠組みがどう変わっているかということももちろんあるんですけれども,文化庁の政策の目玉というか,重点がどこに置かれているかというのは,大きな流れは把握できるんではないかなというふうに思います。

【関文化財部長】若干大木課長の説明に補足させていただきますと,本日の説明資料の資料1をごらんいただきたいんですけれども,後藤先生からご指摘いただきましたのは,この資料1でご説明させていただきますと,1番右に第2次基本方針がございますけれども,そこの第1の2というところで「基本的視点」という部分があるわけでございます。第2次基本方針のときには基本的視点として「文化力の時代を拓く」ということから始めて,3つの柱ということをここで立てているわけでございます。したがいまして,ここのところ,真ん中の欄ではPとなっておりますけれども,こういった部分について今後ご審議いただくのかなというふうに思っております。

【宮田部会長】よろしゅうございますか。大変大事なお話ですので,ちょうど串刺しの関係ができ上がらないといけないと。
 浜野先生。

【浜野委員】重点施策の変遷というのを見ますと,基本的には,アメリカ型の文化政策に大きく舵を切ったというふうに理解していいのでしょうか。もちろん日本政府はお金がないというのはよくわかっているわけですが,もしそうだとしたら大変危惧します。私のように寄附をもらいに回る立場からすると,福原先生が大変努力されているのは重々知っておりますが,私の関係の企業で言えば,必ず言われるのは,ビジネスで社会貢献をするし,株主への説明責任からしても寄附はできないと言われることがほとんどです。つい最近カナダのバンクーバーに行きましたが,本当に小さい国際映画祭の事務局が自前のオフィスを持っています。バンクーバー市内では大型開発するときは,芸術振興などの公共施設を併設しないと許可が出ないということです。そういった規制とか法律によって芸術の振興がはかられている面も大きい。善意ととか公共意識を前提に方策を立てても,経済状態は好転しない限り,うまくいくのかなと危惧します。アメリカ型に舵を切ると宣言をしているように私には読めるのですが,そういう認識でいいのでしょうか。

【大木政策課長】先生方にご議論をいただいても,役所の書く文章でございますので,なかなかアメリカ型に舵を切るというような,そういう端的な表現でもって言ってしまっていいのかどうかというのはあるのですけれども,パッケージとしてアメリカ型という意味合いが寄附税制の拡充とか,そういうところにあるとすると,これは「NPO法人等『新しい公共』による芸術活動を支援する」という,ここまでしか書いていないわけですが,実は裏で,昨年来,これは寄附税制に関しては,要は所得控除から税額控除に変えるような形での動きが,新政権の中でもって随分ありますので,その税制を変えるという基盤ができますと,一番多分恩恵をこうむるのが文化とか,スポーツとか,福祉とか,多分教育とか,そういう部分,税制の場合にはですね─あろうかと思いますので,全然見込みがなくて旗だけ振っているというわけではなくて,制度上のそういう大きな変遷,変化というのも出てきておりますので,この点はひとつご理解をいただければと思っています。

【宮田部会長】どうぞ高萩委員。

【高萩委員】対象期間の話なんですけれども,今までおおむね5年でやってきたということはわかるんですけれども,今回3年ということは考えられませんか?政権交代とかありまして,それから去年の事業仕分けのことなんかも絡んで,施策の軽重というんですかね,重点をどこに置くかということが非常に重要になってきていると考えます。来年11年に答申を出した場合,5年ですと16年まで,3年ですと14年までだと思います。このままの状況で言いますと,多分13年に選挙があると思いますので,逆に3年でいったほうがいいのではないのか。つまり3年の中でこうやりましょうという話をしちゃったほうがはっきりします。5年後どうなるかわからないし,もし政権交代ということになりまして,もう一回第3次を見直して第4次をやりますよということになるかもしれない。つまり5年後に成果を問うというような状況でない中でまた評価をしなきゃいけないと,非常にはっきりしないことが起こる。3年間でできることをしっかり書くというようなことではいかがですか。

【大木政策課長】具体的には工程表というものが仮につくにして,そこまで閣議決定しちゃうのか,それとも工程表は答申の別添資料としてつけるのかという,そのテクニカルな問題も一つございますし,3年というサイクルについて申しますと,実は私の経験した話で,独立行政法人の評価サイクルが今5年のところと3年のところとあるんですけれども,私が担当した某独立行政法人に関しては3年というサイクルだったんですね。この3年というサイクルで,一連の評価,計画を立てて,それを実行して,評価するというのがいかにちょっと大変かというのが,計画ができ上がって,これがだからゼロ年度の末ですよね。そうすると,1年度目にとにかくやってみましょうと。それで実際次の計画をじゃどこから立て始めるかというと,もうその次の年から着手しないと,まあ1年でもって,今回も1年ぐらいでやろうとしていますけれども,これも1年で本当にいいのか。前はもう少し丁寧に時間をかけてやっていたものですから,そういうことを考えるとちょっとほとんどやっている時間が1年ぐらいしかないと。それでまたそれを評価して,新しいのを立てるということになると,その忙しさはまず1つはデメリットとしてはあるんじゃないかなと。ただ,どういう工程でやるのかということについては,全体を3年にする,5年にするという議論とともに,個別具体の政策の工程管理的な資料をつけるとして,それを審議会としてどういうお考えでやるのかということに関しては,これはまた別のことだろうと思いますので,それは全体のスパンの話と一つ別に考えていただいて,個々の政策ごとに,これは1年だとか,2年だとかというのは十分あり得るんじゃないかなというふうには思います。

【宮田部会長】私どものところも6年で一区切りで,3年で中期目標,中期計画というのがあるのですが,計画ばかり立てている感じがするんです。これはちょっときついですけれども。
 どうぞ,山脇先生。

【山脇委員】非常におもしろいお話だなと思いつつ,青くさい議論ではあるんですが,文化こそ余り政権の交代や何かにちょっと左右されたくないという気はしていて,具体的なものは短期間で見られると思いますけれども,本当の文化についてきちんと考えると,やはりそれは3年とか,実は5年とかということではないんじゃないのかという気はしております。

【宮田部会長】ありがとうございます。
東京藝大も,本当に国の単なる一大学の中に一つにあると,とても今,ほかのいわゆる普通のという言葉を使うと変ですが,特殊な学校なので,非常に法人の中で苦しんでおりますが,やはり文化が強まらないんですね,それから構築できない。そういう辛さをとても私は日々感じているので,そういう意味で,政権の話等々もございますが,大変おもしろい視点だなとは思うんですけれども,やっぱり朗々としていきたいというような気分はあるんです。だけど,ちゃんと先も見る,わきも見るというところで,王道はきちっとやっていきたいなというのは,私なんか部会長の言う話じゃないかもしれませんが,そういうふうにやってもらいたいという気はいたしておりますが,後藤先生,どうぞ。

【後藤委員】すみません,私も全く賛成でして,せっかく扱う資料の話も出ているわけですから,これを何のためにつくるかというと,やはりそういう権力とか,政治家から一歩距離を置いたところに文化を位置づけるという意味があって,つくればいいというものではないと思うんですよね。なぜつくるかと言ったら,やはり政治とは距離を置くということが考え方としてあるので,やはり左右されないほうが正しいやり方ではないかなというふうに思います。
 それから,もう一つは,先ほどの浜野先生のお話ですけれども,アメリカ型に舵を切るんですかということなんですが,実はアメリカで寄附が多いのは,企業よりも個人の寄附が多いわけですよね。だから,企業寄附とか,個人の寄附を当てにしてということで危惧されているのかもしれないんですけれども,個人の寄附というのは全く未開拓の分野に近いので,これをどうしていくかというのは非常に大きなことになってくると思うんですね。企業寄附については企業メセナ協議会で既に実績があるわけですけれども,個人の場合には,余り日本では今まではやってきていないということで,50%の税額控除というふうなことが議論されて,それ自体は私はちょっとやり過ぎだと思うんですけれども,いずれにしても,その分政府のコストになるわけなので,決して予算というか,政府から出るお金が減るわけではないですよね。個人の寄附がたくさん集まれば,その半分は政府が負担するということが税額控除ですから,結構本気で寄附する人たちがいっぱい出てきたら,相当政府も負担をしなければいけないということになっていくのかなというふうに思うんですが,問題は,やはり文化団体のほうが本気で寄附を集める気があるかどうかというところが非常に大事で,それは,この間,私は2回目のヒアリングしか出ていないんですが,団体のヒアリングを聞いた感じでは余り観客開拓等,そんなに熱心にやっておられなくて,ただひたすら困っているというか,観客もふえないんですよねというふうにおっしゃっていたというのが非常に強く印象に残ったものですから,やっぱりそこの考え方を変えて,観客開拓をしながら寄附もしてもらえるようにしていくというのは,文化団体にとっては非常に考え方を180度変えるような出来事になると思いますので,ここにはお金の面しか書いていませんけれども,やはり市民のほうを向いて,観客開拓も含めて,市民のための文化団体であり,文化施設なんだということをもう一回考え直すというようなことが文化団体にとっての課題になっていくのかなというふうに思います。
 それで,東京都でヒアリングをしたときに,個人寄附を集めている,ネット上でやっているNPOの方にお話を聞いたら,日本の個人寄附が最も集まりやすいのは3Kだとたしかおっしゃったと思うんですけれども,子供と危機とキャットですというふうにおっしゃっていて,子供と言うと割と集まりやすいし,危機のときには災害があったら集まりやすい,あとはペットなんですよねとたしか言っていたような気がして,文化というのは非常にそんなに集まらない,現状では。それから,企業についても文化に寄附したいんだけどという潜在的な企業はあるんだけれども,株主に説明ができないということで,だから東京都さん,文化に寄附をするということは非常に公益性が高いということをもっと言ってくださいと。そうしたら,企業ももっと寄附するかもしれないからというふうなたしかヒアリングがあったと思います。ですから,アメリカ型に舵を切ると言ってもそんなに簡単なことではないし,実際に寄附が集まれば,その分政府のコストになるということで,政府のコストは決して減るわけではないというふうに思います。

【宮田部会長】加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】文化の振興の基本的な考え方みたいなのがそんなに簡単にころころ変わるわけはないので,まだ第3次の基本方針の中の基本理念の部分が第2次の基本方針の基本理念に比べて,まだ十分ここは議論し尽くしていないのかなというふうに思うので,またこれは改めて後日ということなので,ぜひここをもう少し議論していくと,その継続性と変化というのはより鮮明に見えてくるんじゃないかなと思うんですが,したがって,その大きな考え方についてもやっぱり変えるべきところは変えたほうがいいとは思うんですけれども,その辺はこれからの議論ではないかなと思います。
 今回非常に大きく変わっているのは,実は重点施策の6つの重点戦略の部分で,これは今までのマスタープランや基本方針と相当変わってきているというふうに思いますので,それはヒアリングの際にも,今,ヒアリングの2日目がやや低調であったというご指摘があって,私も同じような感想を持ったんですが,初日のほうはもうちょっと提案的な非常に積極的,具体的,ポジティブな提案が多かったように思いますが,いずれにしても,異口同音におっしゃっておられたのは,もう何度も何度も言い尽してきたことを具体的に実現するか,しないかだけの話じゃないかと。結局政策というのは具体的な施策の実現の積み重ね以外にないわけですから,そうした意味で相当具体的に踏み込んだ表現になっていると。これは理由があって,来年度の概算要求にとりあえず反映しろということで今まで具体的に議論してきたという面があるかと思うんですけれども,相当具体的に議論してきた。今後はこれをまさに大変大木さんを含めてご努力してこられたので,中間の部分は非常にうまくいったと思うのですが,その上でこれから工程表は,まさにこれも大木さんのおっしゃっているとおりだと思うんですけれども,工程表を相当きちんとつくっていけば,ある程度短期及び中期の課題解決の方向というのは明確になるだろうと思うんです。そういう意味で,重点施策に来年度の概算要求以上に,さらにもうちょっと2年,3年かけて,場合によっては5年かけてやるような事柄についても書き込んでいく必要があるだろうと思いますし,その点はまだ十分我々も議論し尽くしていないので,もう少しここは整理をしていく必要があるのかなと。
 その上で,今回の重点戦略の中の1番目の文化芸術活動に対する支援の在り方の抜本的見直しという,この表現は私も大賛成で,抜本的に見直さなきゃもうだめだと何度も言い続けていますが,ちょっと何か対処療法的な表現で,もうちょっとここは制度づくりのような,戦略的な新しい制度をつくっていくんだというような,何かもう少しポジティブな表現に変えたほうが,より鮮明になるのではないかなというふうに思いましたが,そういうところを含めて少し議論をしていくといいのではないかなと。そういう意味で,今確かに経済情勢が悪いので,寄附の問題,その他いろいろなご心配があるのですが,この中で今回言っていることは,決して文化庁というか,行政サイド,国サイドが文化の振興を民間に肩代わりさせようという方向性を打ち出しているものではないと。少なくともそうあったらまともに困るので,もしそういう方向が打ち出されつつあるとしたら,それは抵抗しますが,そうではないだろうという理解をいるので,その辺は余り心配がないんじゃないのかなと。ただ,もう少し議論をポジティブに深めていく必要があるのではないかなというふうに思います。

【宮田部会長】大変ありがとうございます。
 ちょっとその辺は私も感じておりましたので,滝波さん,その辺ちょっとチェックを入れておいてください。ありがとうございました。
 小田先生。

【小田委員】いろいろと議論を展開をしていただきまして,大所高所から,あるいは時代の変遷といった経過でご審議をいただいていると思いますが,私は文化というのは暮らしそのもの,我々の生活そのものだと,こういう基本的な考え方を申し上げていますようにと思っております。そういった中で,いろいろ生ぐさいお話も出ておりましたけれども,やはり我々はこうあるべきだということを基本方針として整理すべきだと。その中で当面の具体的な工程表という表現がなされましたけれども,それが実施計画であるのか,行動計画であるのか,ともかくとしまして,その中に具体化をしていくと,こういうことが非常に当面重要な点ではないかというふうに思っております。
 今,ちょうど景気,経済対策と,こういうことで大きな金額の補正が出ておりますけれども,そういった面で当面今年度分だけでもこういったものが文化の振興でかかわりがあるのか,ないのか,もしわかれば教えていただければ。
 そして,いよいよ平成23年度の編成の中で,こういった基本的な方針がどう生かされていくのかと,こういうことが非常に私は当面大きな関心を持たせていただいていますし,期待もいたしております。
 先般,ことしの7月ですか,暑い時分にパブリックコメントをされたと。七百数十件のご意見が出ておりましたけれども,やっぱり私はその中身を参酌しますと,そのキーワードは今の社会経済状況を反映して,キーワードは雇用と子どもと,こういう視点で一般のそういったパブリックコメントの意見が数多く寄せられたという認識をいたしておりますので,そういったことをどうこれから具体化して反映をしていくかということであろうというふうに思っています。工程表と計画等に期待をいたしたいというふうに思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 ちょっと時間が押しておりますので,また前後しても構いませんが,今までのお話をまとめ,また今後もぜひご意見をいただくということで,今の小田先生のお話で次に進ませていただきたいと思いますが,よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは,事務局でこの辺を含めまして進めていって,原案を作成していただきたいと,かように思っております。
 それでは,次に移らせていただきたいと思いますが,議題の3でございますが,審議計画報告では今後の検討課題として,達成目標及び工程スケジュールを明らかにすることが掲げられておるわけでございますので,去る団体ヒアリング等でも基本方針においてPDCAサイクルを確立する必要性,重要性が指摘されておるということでございます。これらを受けて,答申に向けて重点戦略を見直すのに合わせ,重点戦略に対応する政策目的,達成目標の在り方について検討したいというふうに考えます。
 本日は,事務局のほうから資料説明に続いて,文化政策における評価について3月11日の第3回部会でも若干のご意見をちょうだいしております。吉本先生から総論的な意見発表をいただいた上で皆様の意見を交換したいというふうに思っておりますが,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,事務局,そしてその後,吉本先生,お願いいたします。

【滝波企画調整官】それでは,まず事務局のほうから少し資料の説明をさせていただきます。
 資料の4-1という資料をまずごらんいただきたいと思います。資料の4-1は,文科省全体の中で政策評価を現に今取り組んでおりますけれども,そこの中で文化に関してはどのような達成目標が掲げられておって,どういうものが今,評価指標に据えて評価を行ってきているのかというものを少しまとめてみたものでございます。文化に関しましては,表面と裏面で全部で4項目ございまして,1つ目に芸術文化の振興,2つ目が文化財の保存及び活用の充実,3つ目が日本文化の発信及び国際文化交流の推進,そして4つ目に文化芸術の振興のための基盤の充実という,この4つの項目のことについて政策評価の体系を構築をしております。それぞれに達成目標を据えておりまして,例えば1つ目の芸術文化の振興でございましたらば,ややブレークダウンした達成目標として3つばかり,1つには芸術文化の振興を図るためすぐれた芸術文化への支援を継続して,芸術文化創造活動を活性化させるというふうな達成目標を言っているわけですけれども,これの達成度をはかるための指標として右側の欄に記載がありますけれども,1つには,主要芸術団体の自主公演数であるとか,文化庁のメディア芸術祭への応募数とか,あるいは文化庁のメディア芸術祭への来場者数といったようなものを評価指標に一応据えた形で評価をしていこうというふうなことが今,近々に文科省の中で行っている政策評価の体系でございます。これが全体の体系でございます。これが先ほど申し上げた芸術文化,文化財,文化の発信,基盤の充実という4つの事柄についてそれぞれ体系的に評価の体系を構築しているというものでございます。
 もう1つの資料,4-2ですけれども,こちらにつきましては,今申し上げた4-1が実績評価というものなんですけれども,どれだけ達成されたかということを実績で見ていくための評価なんですけれども,4-2につきましては,逆に事前評価ということで,これから事業を推進していく上で事前に評価をしていくというスタイルのものでございます。これにつきましては,少し抜粋の形にしていますけれども,9月8日に概算要求の概要についても少しご説明申し上げましたけれども,その中でも少し記載がございましたが,いわゆる元気な日本復活特別枠のほうに計上を現にしております文化芸術による日本元気復活プランというものを今回要望枠を使いまして要望しているところですけれども,それを要望するに当たりまして,事前評価というものを文科省の中で行っております。その際の資料がこの4-2でございます。ここの中では9月8日にも少しご紹介しましたけれども,文化芸術による次世代人材育成プロジェクトであるとか,文化遺産を生かした観光振興,地域活性化事業,それから3つ目としてクリエイティブ日本発信プロジェクトという,この3つの事柄をこの要望枠の中で要望しているところですけれども,それぞれの事業についてそれぞれ目標を進行管理するための指標というものを掲載をしております。具体的には3ページのところに4として指標と目標というふうに書いた部分がございます。今申し上げた3つの事業につきまして,それぞれどんなことを指標に据えて最終的にどういう目標を据えるかということを文科省の中で事務的にまとめたものでございますけれども,記載をしてございます。
 例えば,1つ目のところで言いますと,文化芸術による次世代人材育成プロジェクトというふうな事業でございますけれども,これについては指標として,例えば育成されたクリエイターとか,エンジニアの人数,あるいは発表や懸賞の機会を得た新進芸術家の人数,あるいは目標の巡回公演数とか,派遣事業実施箇所数に対する達成状況,そしてこの事業を通じて豊かな感性とか,創造性を育んだ子どもの割合がどのように変化してきているかと,こういったものを指標に据えてみてはどうかということをここで言っているわけです。それに対して,最終的な目標としては,それぞれ「目標」というふうに記載したところの中に書いていますけれども,例えば先端的メディア芸術競争力強化事業のところで言いますと,2020年度までに長編の3DCGの映像作品が年間5本作成されることを目指すんだと,それで2014年度までにその制作の工程に必要な人材を750人育成をしようといったことを最終的な目標に据えて,この事業に取り組んでいこうということを掲げまして,この事業を進めていこうということで行っているわけですけれども,最終的にこういった事業について,文科省の中の政策評価の会議の中で認められまして,先般の概算要求の中にこの事柄を盛り込んでいったというふうな内容になってございます。これは文科省の中で取り組んでいる全体的な政策評価の体系のご紹介でございます。
 それから,後ほどこの後ご説明いただきますのが資料の5番,これは吉本委員のほうから後ほどご発表いただきますけれども,文化政策の評価についてのレジュメがございます。
 それから,関連で,資料6番,これは先ほどもご紹介しましたけれども,先般の審議経過報告に対する国民からの意見募集,それから関係団体のヒアリング,こういった中でもやはり政策の進行の管理をしっかりしていく必要がある,達成目標を据えて実施状況を点検していく,こういったことが大切だというふうなご指摘がそれぞれ寄せられているということでございます。
 例えば,資料6の中で言いますと,1ページ目の全般というふうに書いた部分の5つ目あたりのところでは,基本方針の進行管理のことで,毎年基本方針に基づく施策の実施状況や目標達成度合い,達成されていないものについてはその原因,改善策等について検証すべきではないかというふうな意見が寄せられているといったことが記載をされているところでございます。こういったものも参考にしながらこの後の意見交換に入っていただきたいというふうに思っております。
 事務局からの説明は以上でございます。

【宮田部会長】どうもありがとうございました。
 資料6について,それから5についてもちょっとお話しいただきました。
それでは,資料5に基づきまして,文化政策の評価についてということで,吉本先生,お願いいたします。

【吉本委員】何回目かの会議で,2次方針の評価がちゃんとできていないんじゃないかという発言をしたものですから,じゃ説明しろというふうに事務局から言われまして,大変な大役を仰せつかってしまいました。資料としまして,レジュメとそれから参考資料ということで,1から4番まで別とじになっているものを用意させていただきました。ご出席の委員の皆様はもう当たり前だと思うこともあるかと思いますが,評価について総括的な説明をするようにというのが事務局からの依頼でございましたので,それにそってご説明したいと思います。
 まず1番目,評価を何のために行うかという目的ですけれども,これは政策評価を導入されたときによくあったことなんですが,何か評価を出す,つまり政策を行って実際にそれがよくできたかどうか,Aか,Bか,Cかみたいな評価の結果を出すということが目的化をしてしまう危険性というのが往々にしてあります。私も,文科省系の独立行政法人ではないんですが,ことし評価委員会のお手伝いをする機会があったんですけれども,例えば独立行政法人の評価というのもすごく丁寧に行われてんですが,最後に評定で中期目標に沿った成果があったかどうか,というのを判断するだけで終わってしまっているということがあって,ちょっともったいないなというふうに思いました。
評価の目的は,私は2つあると思っておりまして,評価をすることによって,政策や施策,プログラムの課題を見つけて,その改善策を講じていくということです。これはいわゆるPDCAサイクルの確立になるわけですけれども,この基本方針に関して言いますと,先ほど期間の話は出ましたが,5年スパンでPDCAを確立していくというような評価を組み立てていく必要があるかと思います。
 それから,もう1つの目的はアカウンタビリティ,説明責任ということで,基本は国民に対して税金をこういうことに投入して,こういう成果がありましたということを説明するわけですが,昨今,事業仕分け等いろいろありますので,政府内で文化というものがいかに重要かということ,文化政策の重要性をアピールしていくためにもこういうことは必要であろうかと思います。ひいてはそうした取り組みを通して文化芸術,あるいは文化政策が日本にとって,あるいは国際社会にとってなぜ必要かという,そういうコンセンサスを形成していくというようなことが評価の大きな目標ではないかと思います。
じゃ具体的に評価をどのように行うかということですけれども,政策と評価というのは実は表裏一体の関係にあります。評価の方式としては,大きく戦略マネジメント方式というものとバランススコアカード方式というものがあるというふうに言われております。例えば国会図書館などはバランススコアカード方式というものを援用した評価を取り入れているというふうに伺いましたけれども,戦略マネジメント方式と呼ばれる評価のほうが文化政策などには親和性が高いのではないかと思います。その基本的なしくみは,その次の行にございますミッション,戦略目標,戦略指標という体系をつくりまして,それに基づいて評価をしていくということです。使命というのは,だれのためにどのような事業を行うことによって何を達成したいのかという社会的な役割,長期的なビジョンをわかりやすい表現で示したもの。戦略目標というのは,使命を達成するために必要とされる優先度の高い目標,戦略というのは使命及び戦略目標を達成させるための方策や手段,つまり具体的な施策とか事業と同じようなものだと思ってくださって結構です。指標というのは,目標の達成度を測定,検証できるように設定したもので,定量的指標と定性的指標があるというふうに言われております。
 この政策の評価体系を考えるということは,実は政策の体系を考えるということと表裏一体でありまして,この政策目標を評価するためにどういう指標を考えるかということが政策の目標を考えることにもつながってくるということでございます。
では,具体的にどういうふうな手法で行うかということなんですが,評価の目的というか,考え方としましては,政府が文化に対して行った投資の成果をいかに測定するかということで,ここで重要なのは文化芸術そのものの評価ではなくて,政策やプログラムの有効性を評価するという視点です。大きくはデータとか,数値で評価するものと最近よく言われるエピソード評価というものがありまして,数値で行う評価は先ほどの文化庁の説明にもありましたけれども,さまざまなデータですね,これは統計データであったり,事業や施策のデータに基づいたアウトプットを評価すると言われているものです。そこに数値目標と数値評価に関する課題が書いてありますけれども,ちょっと1つ書き忘れたことがございます。このデータ,例えば入場者数とか,そういったものに基づいた評価に偏重すると,ポピュリズムに陥る危険性があるという点です。例えばわかりやすい例で言いますと,新国立劇場で行う事業,入場者数が多ければ多いほどいい,あるいは事業収支が高ければ高いほどいいといった方向に流れますと,人気のあるオペラだけやっていればいいんだとなって,日本のオペラ振興とか,そういうものは,お客さんは少ないかもしれないけれども,やらなきゃいけないという本来のミッションを失う危険性があると。それがデータ評価の大きな課題です。
 もう1つは,文化に関する基礎的な統計データというのがなかなかないという現状がありまして,評価を裏づけるデータを集めるのが非常に難しいということがございます。その下に「Not everything ……」と書いておりますが,これは実はアインシュタインの言葉だそうでして,イギリスのアーツカウンシルの評価を行っておりますBOPコンサルティングのジョセフィン・バーンズさんという方に教えていただいたんですが, 数値の評価に関して重要なものすべてが計測できるわけではないし,計測できるものがすべて重要なわけではないと。数値は重要なんだけれども,それに偏ってはいけないということがあります。
 それから2つ目が,エピソード評価,これはセゾン文化財団の片山さんがかねてから,数値評価の偏りに警鐘を鳴らしておっしゃっていることで,人数が何人入ったかということよりも,その事業でどういうことが具体的に起こったかということを評価するほうが重要であろうと。最近ではエビデンスというような言葉も言われるようになっておりまして,その場合,データも含めて言われることが多いんですけれども,こうしたエビデンスに基づいた政策,エビデンス・ベースト・ポリシーというのがイギリスなどでは政策の主流になっているというふうに伺います。ただしこれはやろうとすると,さまざまな調査を行ったり,専門家による観察を行ったりして,アウトカムですね,データにあらわれない成果を引き出すわけですけれども,それなりに人的にも費用的にもコストがかかると。これをどのぐらい投入するのかというのは難しい判断になるところです。
 それから,その次の視点としまして,評価のタイミングということがあるわけですけれども,先ほどの事務局のご説明でも,政策をやるべきかどうかということを判断するための評価,これは事前評価ですね。助成金の助成先を決めるというのも事前の評価だと思います。それから,期中に行うものは事業がそのとおり進んでいるかどうかなど,モニタリングとして行うもの,それから事後に行うものとあります。事後の評価も実は終わってすぐやるものと,何年かたってやるものというのが必要でして,例えば文化庁さんの政策で言いますと,在外研修というのがありますけれども,在外研修が終わった後,直後には,例えば大変勉強になりましたとか,そういうことが言えると思うんですけれども,5年ぐらいたって,そのアーティストのキャリア育成にとって,あのときの1年間はどういう意味を持っていたかというのは振り返って初めて評価できるということもあるんですね。ですので,期間の問題はありますが,事後というのも直後だけではないという点が重要かと思います。
 それともう1つは,評価者でございます。これは事業,施策を行う上で当然自己点検,自己評価というものが行われるわけですけれども,それだけではやはり不十分でして,客観的な視点を入れるために,外部の専門家が入った評価というものが行われる必要があるのだと思います。そのときに評価の体系とか,指標というのをあらかじめ決めなきゃいけないわけですけれども,それを議論するときから評価者というのは入っていないといけないというところが重要なポイントではないかと思います。
 それから,最後に評価の視点という項目を挙げさせていただいたんですけれども,文化芸術の振興ということで言えば,当然文化芸術がどのように振興されたかということを評価をするのがメインになるかと思うんですが,もう少し幅広い視点ですね。他の政策分野に対してどういうインパクトがあったのかということも評価の視点として取り入れられる範囲で取り入れられたらどうかというものでございます。ここに列記しておりますけれども,例えば教育で言いますと,昨今文科省がやっておりますコミュニケーション教育というのがございますけれども,芸術の体験型ワークショップをやった子どもたちのほうが教科科目の成績も上がったとか,そういう成果があったり,あるいは不登校が改善されたとか,教育上の課題改善に役立つようなことが文化で実現するとか。あるいは高齢者,障害者等の場合は,精神的・身体的な元気回復につながって,その結果医療費が減ったとか,極端な話ですけれども。あるいは経済面でも,文化はお金を使うだけではなくて,雇用創出とか,経済波及効果を生み出している。社会的な効果と言いますと,ソーシャルインクルージョンとか,多文化共生とか,社会の仕組みそのものを変えるような効果もあるというようなことが言われておりますので,そういった視点を評価にどう取り入れていくのかということも課題ではないかと思います。ただ,この視点が余りに前面に出て行きますと,文化芸術が他の分野の政策に役立つツールとしてのみとらわれる。これはインストゥルメンタライゼーション,道具として使われるというふうに言われているわけですけれども,教育に役立つために文化を振興する,経済に役立つために文化を振興するという,本末転倒の話になるので,そこは注意が必要ですけれども,文化芸術が必要だということをアピールするためにも,こうした視点を評価の中にどう取り入れていくのかというのが一つの考え方ではないかと思います。
 それで,参考事例として,別とじになっておりますものを具体例ということで簡単にご説明したいんですけれども,最初に緑の冊子のものがこういうのでとじられたものの中に入っていると思います。吉本発表関連資料というのが上についているものですけれども,この緑の冊子は財団法人地域創造が,地方の公立文化施設の評価,特に劇場,ホール系なんですけれども─に関する評価指針というものを作成したものです。これを作成した背景というのは,指定管理者制度が導入されて,行き過ぎた効率化,行き過ぎた予算削減,要するに効率的にやればいい,あるいは市場に任せればいいということが行き過ぎているんではないかというふうな問題意識がございます。
 7ページをちょっとごらんいただきたいんですけれども,折り込みになっていまして,これが大きな評価の流れなんですけれども,PDCAというのは7ページの左から3分の1ぐらいのところから始まりまして,ミッションの確認,評価体系の構築というものがあって,それに基づいてさまざまな調査等も行い,評価を行う。評価の結果を,右にございますけれども,まとめて,それに基づいて改善計画を策定して,もう一度頭のところに戻って,果たして目標やミッションは正しかったのかということを再設定していくと。こういうサイクルの中で評価が行われているというイメージでございます。
 この指針の中で体系というものをつくったので,それも参考までにご紹介しますと,10ページをごらんいただけますでしょうか。この体系を10ページから13ページにかけて整理をされておりまして,大きな評価の柱立てが3つございます。10ページから12ページの頭にかけてのAというものは,これは文化施設の場合ですけれども,その目標が書かれておりまして,例えば鑑賞系事業であれば,「国内外の舞台芸術の鑑賞と交流の機会を提供します」というような言い方になっております。一番左側が先ほどご説明しました戦略目標,それを少しブレークダウンして,3つだったり,4つだったりになっておりますが,それが戦略。それで11ページにありますのが具体的な評価指標です。この右側に「段階」の「段」,「データ」の「デ」,「調査」の「調」とありますけれども,「段階」というのは,指標をブレークダウンしてどの段階にあるかということを自己点検できるような評価指標,「データ」というのは運営の中で得られるデータで評価するもの,「調査」というのはいろいろ調べなければいけないものということになっております。
 12ページをめくっていただきますと,Bというのがあるんですけれども,これは運営がちゃんと行われているかということに関する評価指標,それからCというのが経営に関する評価指標です。指定管理者制度の場合は,どうしてもCの3,経営努力,効率的にできたかどうか,ここだけが重視されている傾向があるわけですけれども,それは公立文化施設の場合の評価のごく一部であって,本来はそのミッションであるAで,ここでは8項目に整理していますけれども,それが達成されたかどうかのほうを重視すべきであるというような評価体系,指針というものを策定しております。これは公立文化施設もいろいろなバリエーションがありますので,これを参考にそれぞれの文化施設でそれぞれに合った評価体系をつくってくださいということでつくられたものです。
 それから,2番目が,ちょっと今から回覧をいたしますけれども,表紙だけ入っていると思うんですが,イギリスのアーツカウンシルがアニュアルレビューというのを毎年発表しております。ちょっとぱらぱらとごらんいただきますと,最初のほうにどういう目標に沿ってどういう施策,事業をやったかということが書かれておりまして,その途中からメインターゲットというか,重要な戦略に関してデータで評価される項目があります。ここでちょっと回覧しますので,このブルーの付せんが入ったところがそれになります。実はその後ろにアーツカウンシルのトップクラスの方というか,責任者の方々の何か報酬とか,それからペンションですから,これは年金ですよね,幾ら払ったかというのが全部出ているんですね。ここまでやるのかと思うぐらい公開されているということもあります。
 それで,今申し上げました評価なんですけれども,アーツカウンシルは3年ごとの評価になっておりまして,2008年から2011年にかけてDCMA,文化・メディア・スポーツ省というアーツカウンシルを管轄する省庁との間で,ファンディング・アグリーメント,つまり国の予算をアーツカウンシルにおろすための合意文書が交わされていまして,その3年間では5つの重要なストラテジック・オブゼクティブ,つまり戦略目標というのが定められております。
 5つというのは,1つ目はエクセレンス,これは芸術の質ですね。2つ目はリーチ,これはできるだけ多くの人々に芸術を届けるということ。3つ目がエンゲージメント,これはただ鑑賞するだけではなくて,もっと深く参画するようなこと。4つ目がダイバーシティ,これはイギリスの現代の文化の多様性を反映させていくということ。5つ目がイノベーション,これはアーティストなどに表現の自由を与えて,新しい革新的な表現を生み出せるかどうか。この5つの戦略目標が立てられていまして,じゃエクセレンスをどうやって数字で評価するのかということなんですけれども,この場合は,1つ,アーティスティッククオリティということが評価になっていまして,アーツカウンシルの場合はレギュラーファウンディングと言って,3年間,定期助成をする団体があるんですが,そこの団体の調査によって,そこが行った公演だったり,展覧会,いろいろあると思うんでけれども,それがメット・ストロングス,非常にクオリティが高かったか,あるいはメット・アウトスタンディング,もう極めてすばらしかったかというようなレビューがされているかどうか,その割合を見ています。この資料によりますと,2006年から2007年度,それが62.3%だったものが,2007年から2008年度は70.1%になったということで,この目標に対してプラスの評価が行われています。ただ,これをやるために,アニュアル・アセスメント・オブ・レギュラリー・ファンディド・オーガナイゼーションというのが毎年行われているんですね。ですから,助成を受けた団体も評価に協力する調査を行い,その結果をちゃんと提供するという作業が行われています。
 それから,ハイクオリティ・アーツ・エクスペアリエレンスというのもエクセレンスの1つなんですけれども,これは逆に聴衆が最後に鑑賞したものがハイクオリティと思ったかどうかの割合というのを調べています。これもテイキング・パート・サーベイという,要するに観客聴衆調査というのをやっておりまして,2007年から2008年度の割合が57.1%,2008年から2009年度は,今データを分析中ですというような表示が出ています。
 以上のように5つ申し上げましたそれぞれの戦略目標に対して,それを数字で裏づけるための指標というものを,非常に典型的なものですね─を設定して評価をするというようなことが行われております。この評価のためにはかなりの調査が行われているだろうと思います。
 それから,もう1つ参考資料としてこういうものをお配りしていると思います。これはちょっとデータが古くて申しわけないんですが,芸術助成に対する評価のレポートです。評価レポート本体はこういう冊子になっていまして,もっと詳しいものなんですけれども,これは評価の結果を広く公表するために,多分半折りのパンフレットのようなものにして配ったものだと思います。要約ですね。これをちょっとめくっていただきますと,最初のページの右側の上半分が実績でございます。幾ら使って,何団体に助成したか。「Grants for the arts」というのは,regular fundingと違って,公募によって行う助成システムのほうです。この上の段の4つ目のポツを見ますと,「We exceeded our targets」と書いてあるんですが,要するに助成の審査ということを効率的にやりましょうという目標があったのだと思われるんですけれども,それを十分に上回る成果が出ましたと。つまり5,000ポンド以下の助成に対しては,5週間以内に助成決定をし,5,000ポンド以上の申請に対しても10週間以内に助成の決定をしたと。「Grants for the arts」というのは通年受け付けなんですね。ですので,いつでも申請をして,5週間以内で結果が出て,すぐ助成が出ると。そういう機動力というものを重視しているので,そういう評価が行われているということです。
 その下には目的が書かれていまして,次のページをめくっていただきますと,それを評価するためにどういうことを行ったかというのがあるのですが,この「Annabel Jackson Associates」というのは,これは評価を行った専門機関だと思います。200人のアーツカウンシルのスタッフにインタビューを行い,それから130の成功例,32の失敗例を調べ,それから15の中間支援組織を調査し,それから統計データを調べましたというようなことが書かれています。その次のページをめくっていただきますと,「Key finding」というのがございまして,簡素化に成功したということが書いてあるんですが,例えば2つ目の箇条書きは,78%の申請者が申請のプロセスが非常に簡単であったと回答しています。文化庁とか,芸術文化振興基金の助成に関して芸術団体からよく寄せられる要望が,もうとにかく申請が煩雑だというのがすごくあるんですね。ですから,そういうことを見直してこれはやっているんだと思うんですけれども,それがどういう成果だったかということをこういう数字で裏づけると。つまりこれは政策目標の評価というよりは,むしろ制度とか,仕組みを評価するということで行われているんだと思うんですが,そういうことが詳しくいろいろなことがあって,さらにその次のページをめくっていただきますと,「What next?」というふうにあるんですが,この調査結果を踏まえて,さらによりよいものにするために検討していることが書かれております。この本体のほうも回覧しますけれども,こちらにはもっと詳しい評価結果が出ております。最後のほうにはどういうアンケートを行ったかというようなこと,それからアンケートの単純集計等も出ております。
 それからもう1つ,4つ目はシンガポールのアーツカウンシルの資料なんですけれども,これは単純にデータがぱらぱらとあるものなんですが,実はシンガポールはご存じの方も多いと思うんですけれども,2000年にルネッサンスシティプランというのをつくりまして,それまで通商貿易都市として栄えてきた都市を国際的な文化ハブ都市にするという政策を打ち出しました。以降,次のルネッサンスシティプラン2というのが2005年に出まして,それからルネッサンスシティプラン3というのが2008年に出ております。その過程で文化政策を少しずつ進化させていっていまして,一言で言うと,ルネッサンスシティプラン1というのは文化活動の量的な拡大とか,質的な向上,アウトリーチプログラムの開発,この3つが目標になっていたんですけれども,ルネッサンスシティプラン2というのでは,文化の経済的な側面,あるいはクリエイティブ産業というのに焦点が当てられ,ルネッサンスシティプラン3では,さらに独自コンテンツの開発とか,政府だけではなく,民間と共同になった文化振興の体系をつくるとか,コミュニティにより参画してもらうというような目標が掲げられています。これを調査したときに,どうやって評価するんだということを担当の方にお尋ねしたら,もう全部データでやっているとおっしゃったんですね。今からお回ししますけれども,シンガポール・カルチュアル・スタティスティックス,2003年から2007年というのがありまして,観客数だとか,いろいろなことがデータで立証されていまして,そのエッセンスをお手元にお配りをしております。こういう資料です。これを見ていただくと,公演がどれぐらいの回数が行われたかということに始まり,97年と2007年ですね,比較がずっとありまして,例えば一番最後のページというか,何ページ目かな,数字で言うと6というのがあるんですけれども,ここでは「Arts and the economy」というので,経済的な効果についての評価指標が出ておりまして,雇用者数,それからオペレーティング,運営収入ですね。それから経済波及効果,Value Addedというようなものまで数字で示そうとしています。ここまでいけるのかというのは正直ありまして,ご存じのように,シンガポールは非常に政府が強い,計画的に何事も進める国ですから,こういうデータになっているんだと思うんですけれども,逆にここまでデータでやり過ぎると,こぼれ落ちるものがいろいろあるだろうということを感じました。
 説明は以上なんですけれども,この評価というのは確かに重要ですし,これからやらなきゃいけないと思いますが,あえて最後にちょっと逆説的なことを申し上げたいと思います。精緻な評価というのを幾らやっても,完璧なものは多分ないだろうということですね。また,余り精緻な評価をやり過ぎると,政策とか,事業というのは,その評価を受けやすいほうに流れてしまう危険性があるということがあるという点にも注意が必要です。だから,そこを十分踏まえた上でいかに丁寧に評価をしていくかということがすごく重要だと思います。
 きょうは参与としてご同席いただいていますが,先日横浜で創造都市の政策セミナーがありまして,そのとき資生堂の福原会長のご講演の中で,私は大変印象に残っておりますのは,フランスの文化政策で,アンドレ・マルローが「過去の才能を生き返らせ,今日の才能に生命を与え,世界の才能を受け入れる 」という大きな強いビジョンを出して進められたということです。調べていないので正確にはわからないんですが,フランスはこんなことはやっていないと思うんですね,緻密な評価のようなものは。でも,緻密な評価をやらないで出た成果と,緻密に評価をやって出た成果というのは,どちらが成果として評価できるかというのは,わからないという,評価に関する根本的な問題があります。評価は避けて通れないし,丁寧にやらなきゃいけないと思いますけれども,そこに偏り過ぎてはいけないということをあえて最後に申し上げたいと思います。
 以上です。

【宮田部会長】いや大変ありがたい発表をありがとうございました。わかりやすく,やっぱり最後の部分が大変印象深いと思います。3年目でございますので,これは評価対象になりやすいなというふうな文章になりかけると本末転倒するというものになりますので,非常に難しいところでございますね。

今のところで福原先生のお名前が出ましたが,ちょっと一言いかがでしょうか。

【福原文部科学省参与】恐れ入ります。確かにそういうことを引き合いに出してお話ししたんですが,私の今の考えは,今僕たちがやっていることは100年後に一体どう評価されるのかという,そして現在の文化活動は古典とルネッサンスの束縛から離れて,もう全員がクリエイター,全員が参加者みたいな形で,しかも参加者が多いほど評価がいいみたいなことをやって,みんな生き生きとして喜んでいると言うんですが,それは過渡期であって,次の時代は,今私たちがやっていることは,100年後,200年後にあの連中は何をやっていたのかと言われるんじゃないかと思っておりまして,それが心配なので,評価もその考え方で評価を使うときに考えなきゃいけないと思っています。余計なことを。

【宮田部会長】いえいえ,大変ありがたい言葉です。
 青柳先生,どうぞ。

【青柳委員】我々大学にいた者は評価というものにかなり惑わされてきたんです。今から大体15年ぐらい前ですか,大学も評価をしなくちゃいけないということで,私どもはプランをつくりました。そのときにまず自己点検,それから自己評価,それから外部点検,そして外部評価をしようということでやって,今でもまだ外部評価までいっていない大学はたくさんありますけれども,形式的には大体自己点検,自己評価までは日本の大学はほとんどやったと思います。
 その結果どうなったかというと,外部評価をきちっとやったところでさえ,やっぱり論文の数とかということで,非常に1本で書けばいいのを,それを二,三本にしてみたり,その評価の結果,大学の成果物がみんな川下化しています。以前は川の中流とか,川の上流であって,だからそれが研究成果として出てくると,非常にいろいろなものに応用できたんですね。それが本当は大学の成果物なんですけれども,今,成果としては出てくるけれども,それ以上の応用のやり方がないものがどんどん出ています。東大でさえそうです。そういう意味で,今,吉本さんがおっしゃったように,評価によって,実態のほうが評価に身をすり寄せてきてしまっているんですね。特に文化政策などに関しての評価というのは,これはもう大学の研究成果等の評価あるいは教育の評価よりもはるかに難しいものなんです。ですから,もし評価というものを取り入れるという方向をつくるのであれば,この評価に関するワーキンググループなり,委員会なりが別に必要なぐらいの大変重要なことだと思います。
 それから,文化に関するもので,例えば指標あるいはそういうものになったときに,一番の例は,テレビの視聴率がいかにテレビを悪くしてしまったかと。恐らく今,日本のテレビ,NHKは6,500億ぐらいですから,民放全部入れると2兆円の文化産業です。2兆円の文化作業でこれほど劣悪なものを垂れ流している産業がほかにあるか。日本に来るさまざまな,例えばことしの春も,小澤さんがあれだったので,僕の友だちのリカルド・ムーティという指揮者が来たんですけれども,それで飯を食っていたら,言うには,イタリアのテレビもひどいけど,日本のテレビがこれほどひどいとは思わなかったので,自信がわいたと言っているんですね。まさにそういうものなんです。ですから,数を使うということが本当に文化にとっては致命傷になり得る可能性もあるんですね。
ですから,今ここで示された,例えばイギリスのアーツカウンシルのものとか,シンガポールはこれはちょっと小さなところで,一つの町みたいなものだから,横に置いておいていいと思うんですけれども,例えばシンガポールに比較するのだったら,金沢市は今,市予算の6%を文化に使っています。これは恐らく世界トップでしょうね。そういうところはあるんですから,むしろ日本のそういうところのものでどのような効果をあらわしているかというのを調べたほうがはるかに我々の今こうやっている文化政策に関して具体性があると思いますね。
 それから,英国カウンシルの場合は長い歴史があって,それでプロ集団がいるんですね。日本のは非常に平坦で,プロ集団と素人集団の差がそれほど大きくないんです。ですから,そういう中で評価をやろうとすると,一方が評価をする側,一方が評価される側でも,ほとんどフラットな,ホモジニアスな社会の中でどれだけそれの効果があるかと。だから,やっぱり我々のやり方での評価法をつくり上げていかなくちゃいけない。そうすると,そのためには大変な時間がかかる。
 それから,もう1つは,先ほど吉本さんも最後に,それから一番最初におっしゃっていましたけれども,この文化政策の一番最初の基本理念のところに意義とか何とかあるけれども,基本理念自体をやっぱり第1章の一番最初の始めなりのところにやっぱり持ってくる必要があると思いますね。そこの,ほかの方もおっしゃっていましたけれども,その理念をどれだけ具体的というか,きちっと提示するかによって評価の指標というものも決まってくるわけですね。特に今,例えば国際化,グローバル化が進んでいて,そしてその中でいろいろなものが平準化し,平坦化しつつある中で,やっぱりそれぞれの地域や国の文化というものが,3年前,5年前,10年前よりもはるかに重要性を増しているわけですね。しかし一方で,文化のアイデンティティだけをねらってしまうと,これはナショナリズムに偏りますし,ですから充実さを求めていって,そのいった先,充実したところである一定のアイデンティティが形成されるというのが文化政策の最も望ましい形だと思うんですね。ですから,その辺をきちっと一番最初の理念として掲げると。そうすれば,全体の構築性も出てくるし,それから評価に対応できる政策にもなっていくんじゃないかと思うんですけれどもね。

【宮田部会長】評価そのものが,今の青柳先生の分にプラスするんですが,全く違うところからふるい分けをされるというところにやっぱり間違いが出てくるような気がしますね。やはり私どもが,この文化政策部会が立てた大きな形,その理念,その哲学をきちっと評価してもらいたいんだけれども,違うふるいで評価されるときにとても間違いが出てくるような感じがするので,きょうの吉本委員の発表は改めて基本に戻りたいと,大変私ども自身の考え方にもいいコメントをいただいたと思っております。ありがとうございます。
 だって不思議ですけれどもね,ちょっとお待ちください。数値というのは大変怖いものでございまして,私もたまたま……,これは書かなくても結構なんですけれども,NHKの番組審議委員会の副委員長をやっていたんですけれども,1本の電話は100万人で勘定するんですよね。怖いですね。横綱審議委員会もやっているものですから,それで放送しませんでしたよね。視聴者の声を優先しましたと言うのですが,その数字はそれでおわかりになると思うんですが,何本来ているかどうかというのは。だから,評価というか,数値というのは大変怖いものでございまして,例えば先ほど小田先生がおっしゃっていたパブコメの話なんかでは,僕は大変それは自慢したいのですが,最初は余り来ないのでちょっとひやひやしたんですけれども,七百二十数件参りましたね。ああいうことからいっても,いかに私どもがやっていることが世の中の人たちからして……,掛ける100万にしてください。そのぐらいの気持ちで僕はいいんじゃないかという気がしております。吉本先生,ありがとうございました。
 この件に関して,まだどなたか。加藤先生,どうぞ。

【加藤委員】ょっとエピソード評価の事例をせっかくなのでご紹介したいんですけれども,実はきのうまで私は,今,瀬戸内で開催されている瀬戸内芸術祭に行ってまいりまして,(月)に男木島というところに行こうとしたら,その前日の夕方18:00過ぎに男木島で火災が発生しまして,それで作品が1点全焼してしまったという案件がありました。その日のうちに,(月)に入島,島に入ることはできないと。作品見学は男木島に関しては中止をするという決定がなされて,非常に私はこの話を聞いて心配したのは,島民の人たちがこのことによって,この芸術祭に対するリアクションが大きく起きるのではないのかなということを心配したのですが,実は(月)に副知事とディレクターとそれから地元の町内会長さんを含めて三者で相談をされた結果,(火)から再開をすると。その理由は,せっかくこれだけ大勢の方がお見えになっているのの楽しみを阻害するわけにはいかないと。ぜひ我々としては歓迎したいと。島を挙げて頑張るから,ともかく1日だけ休んで,そのあくる日から再開をしようではないかという,こういう決定に至ったのだと。むしろ町内会長さんが大変申しわけないことをしたというふうにおっしゃったというお話があって,もしこれが準備中だったらそうではないリアクションがあり得たんじゃないかなと。やはりここまで会期が進んできて,それだけ地域の方々の理解度が進んでいたということを物語っているのではないかなというふうに思って,そういう意味では,地域の方々の理解度ということは当初の評価項目にあったろうと思いますが,それをどうやってはかるかというと,なかなかいい手法がないにもかかわらず,このエピソード一つで,我々はこの瀬戸内芸術祭が相当成功しているという理解ができるのではないのかなと。まさに瀬戸内から,この前,福原会長が横浜に見えて,横浜はまだ風を吹かせておらんじゃないかということをおっしゃっておられたので,それは横浜としては課題にすべきだろうと思いますが,瀬戸内から明らかに文化芸術振興の風が吹いているというふうに私は理解をしました。一つご紹介まで。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 あのニュースが流れたときに,ちょっと心配しましたけれどもね,立ち直りが早かったですね。ありがとうございました。
 ちょっと時間がきてしまったのですが,後半また大変有意義なお話をいろいろといただきまして,ありがとうございました。
 次回を含めて検討していきたいと,論点ごとに審議をしていきたいというふうに思っておりますが,皆様のご意見,具体的なことについて,事務局とも相談しながらやっていきたいと思いますが,どうですか,長官,少し今までのお話を聞きながら一言いただけませんか。突然で申しわけないですが。

【近藤文化庁長官】この2時間,大変中身の濃い議論で本当に勉強になりました。特に評価については,これも話し出すときりがない。私も2003年ですか,外務省の文化交流部長をやっていますときに国際交流基金が独法化をして,一体どういう評価をしたらいいのか,何年ごとにやったらいいのか,ものすごい時間を費やして,それが今どうなっているか知りませんけれども,それ以来,文化とか,あるいは外交とか,ODAとか,きょうのお金がすぐあした,道路と違って,結果にならないものをどう評価するのか,これはずっと悩み続けてきました。きょうの吉本委員の非常にすばらしい整理の仕方で大分頭がクリアになったような気がいたします。さすが文化審議会の政策部会のクオリティの高さ,改めて感服をいたしました。ぜひ世の中に文化の重要性が評価されるにはどういう手法,手段がいいのか,評価をしてもらうための客観的ないし説得力のあるメッセージ,どういったものを送ったらいいのか,数字とエピソードとそれ以外何かあるのか,そういったことについて引き続き私としても考えていきたいと思います。ありがとうございました。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 先生方でまだご発言のない方もいらっしゃいますが,恐縮ですが,時間がきてしまいましたので,また次回のときにぜひご発言をいただきたいと思っておりますので,よろしくお願いします。
 事務局,どうですか,ちょっと次回の日程確認等々,それからいろいろ含めてご発言ください。

【滝波企画調整官】ありがとうございました。
 本日の議論を踏まえまして,また次回の会議に臨んでまいりたいと思います。次回ですけれども,資料7,先ほども少しごらんいただきましたけれども─にございますとおり,第12回ということで,10月20日の(水),16:00,場所がこの建物の16階の特別会議室という部屋でございます。議題は本日の続きというか,本日を踏まえた議論をまたお願いしたいというふうに思っております。
 以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】よろしゅうございますでしょうか。次回の日程の確認を終わります。
 それ以外で,その他何かございますでしょうか。
 どうぞ。

【小田委員】えらい恐縮です。時間が押しておりますのに。私のほうからちょっと参酌,参考に。と申し上げますのは,今京都のほうで「古典の日」制定と,こういう動きが出ております。11月1日と。昨年,源氏物語千年紀と,こういうことで展開がされたところでございます。そういったことで,そういった制定の動きが出ておりますので,少しお含みをいただきまして,ある意味ではまたご支援,ご協力をいただくとありがたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】すいません,時間がきていますので,手短になんですけれども,議題の中に,次回であれば重点戦略の在り方について,それから政策目的,達成目標の在り方についてと,配慮事項等についてというふうに題があるんですけれども,これが一体何を意味しているのかというのをもう少し詳しく事前に教えていただけると,もうちょっと会議のために準備がしてこれると思うんですね。それで,ことしの予算要求とは違って,5年スパンでもうちょっと長いことを考えるので,もうちょっとここに補強していくこととか,あるいはパブリックコメントを踏まえて入れ込むべきこととかということをもうちょっと考えましょうということであれば,そういうふうな準備がしてこれますし,それから2番目の政策目的,達成目標の在り方についてにしても,一体何を議論するのかなというのがちょっとこれを見ただけではわからないので,やはりせっかくの機会ですから,準備をしたり,心づもりをしたりして,何を審議するのかということをあらかじめイメージを持った上で参加したいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。

【宮田部会長】どうぞ。

【大木政策課長】後でご指摘の点を踏まえまして,もう少しブレークダウンした紙にいたしまして,何らかの形で各委員にお送りいたすようにいたしたいと思います。

【宮田部会長】後藤先生,ありがとうございました。大変大事なことだと思います。
 小田先生,源氏物語は東京藝大が完全復元模写をもうすぐ全巻完成しますので,触ってもいいというぐらいの。うちしかできませんので。そういうものを評価しないで……,いやいや,愚痴をまた言い出して……,ぜひご協力させてください。
 本日はどうもありがとうございました。

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