文化審議会第8期文化政策部会(第14回)議事録

1.出 席 者

(委員)

宮田部会長,田村部会長代理,後藤委員,佐々木委員,里中委員,高萩委員,坪能委員,富山委員,西村委員,浜野委員,増田委員,山内委員,吉本委員

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,小松文化部長,関文化財部長,松村文化財鑑査官,大木政策課長,滝波企画調整官,他

2.議事内容

【宮田部会長】それでは,第14回の文化政策部会を開かせていただきます。
 リミットは17:00をめどにして頑張りたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。
 本日は,青柳,小田,加藤,酒井,鈴木,堤,山脇の7名の先生がご欠席でございますが,会を進めていきたいと思います。
 議事に入ります。9月以降,答申に向けた論点別の審議を行ってまいりました。その中で,戦略目標,評価の進め方・指標や留意すべき事項を含めて,重点戦略の在り方を中心に審議するとともに,前回11月8日に新たに基本的施策の在り方を議題に加えたところでございます。いよいよ今回からまとめに向けた審議に入らせていただきたいと思います。全体像としまして「これまでの意見の整理(素案)」として事務局に作成していただいております。
 本日はまず,前回11月8日に十分な審議時間を確保できなかったと聞いておりますので,基本的施策の部分と前回の部会審議を受けての修正点について審議し,続いて基本理念の部分,最後に重点戦略の工程表の在り方を含め,全体的にご意見をいただきたいと思っております。
 お手元の議事次第記載のとおり,時間配分でございますが,重点施策,基本的施策の在り方が約45分程度で,基本理念につきまして45分程度,工程表の在り方を含め,全体を通して約20分程度を予定させていただいております。ご協力ください。
 それでは早速,本日の議題,まずは基本的施策の構成,重点施策部分を含め,前回からの修正点を中心に,事務局よりご説明をください。お願いいたします。

【滝波企画調整官】それでは,まず資料に基づきまして説明させていただきたいと存じます。
 資料1でございますけれども,これはいつものとおりの資料でございまして,本日ご審議いただきたいと思っておりますのは,答申・第3次基本方針(案)の真ん中の部分ですけれども,この赤の点線で囲った部分,すなわち第1,第2,第3,トータルで本日ご審議いただきたいということ,それから別添と書いたところの重点戦略の戦略目標,評価の進め方・指標(例)という部分と,先ほど部会長からお話がありましたように,重点戦略の工程表(およその見通し)といった部分までトータルで本日はご審議いただきたいと思っております。
 資料2でございますけれども,前回は基本的施策という部分を初めて議論することといたしましたけれども,十分時間がとれなかったということで,本日もその引き続きの議論をお願いしたいと思いますけれども,その前に第2のところ,文化芸術振興に関する重点施策の部分に関しても若干のご議論をいただきまして,一部前回の議論を踏まえて修正も加えております。その点で,まずそのあたりのご説明をさせていただきたいと思います。資料2の5ページ以下が第2の重点施策の部分でございます。
 5ページでございますけれども,主な変更点について,資料の中でアンダーラインを引いております。その部分を中心に少しご説明したいと思います。まず重点戦略1,文化芸術活動に対する効果的な支援の箱書きの中ですけれども,1つ目の◆,ここの点について前回の審議の中で少しご意見があったことを踏まえまして,今回の資料の中では,「文化芸術団体の創造性の発揮や継続的な発展に資するよう,事業収支が支援額に影響しない仕組みなど」云々ということと,「1事業ごとの審査の積み重ね」ということで,「公演」とありましたのを「事業」に書きかえるという修正を加えております。
 それから,2つ目の◆でございますが,ここの点についても若干意見があったかと思います。それを踏まえて今回の文案では,「寄附税制の拡充や文化芸術資源の活用を促進する税制等の検討を通じて,企業等の民間や個人が文化芸術活動に対して行う支援活動を促進するとともに」云々という書きぶりに改めたところでございます。
 それから,次のページ,6ページでございますが,最初の◆のところでは,アーツカウンシルの機能に関しての意見があったかと思いますので,「専門的な審査・評価,調査研究等を実施し」ということで,「調査研究等」を加えてございます。そのような修正をこのページで加えております。
 それから,少し飛びまして7ページでございますが,これは重点戦略3,子どもや若者を対象とした文化芸術振興策の充実の部分ですが,2つ目の◆の中で,コミュニケーション教育の部分に関してもう少し具体的なものをということでしたので,「文化芸術に関する体験型ワークショップを通じた」という形で具体例を差し入れたところでございます。
 それから,重点戦略4,文化芸術の次世代への確実な継承の中では,箱書きの中で3つ目の◆を今回新たに追加してございます。この点については,「審議経過報告」がまとまるまでの間にも幾つかのご意見があったかとも思いますし,前回のご議論も踏まえて,少しこのあたりをもう一度整理し直しまして,新たに◆を追加しております。少し読み上げます。「「歴史文化基本構想」等により,周辺環境を含めた地域の文化財の総合的な保存・活用を推進し,多様な地域文化の継承を図る」という文案でございます。
 それから,また少し飛びまして,今度は最後のページ,8ページになりますけれども,重点戦略6の2つ目の◆でございます。ここについては,1つ前の重点戦略5の文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用のところとも少し関連があったかと思いますけれども,いわゆるアーティスト・イン・レジデンスを初めとして,そういった活動が地域の活性化に役立つだけではなくて,国際的な視点も大事なんだといった話があったかと思います。その点を踏まえまして,重点戦略6の2つ目の◆のところにアンダーラインを引いております。「中核的国際芸術フェスティバルの国内開催や海外フェスティバルへの参加」の後ろに「各地域における特色ある国際文化交流の取組に対して」という形で追加しております。このような重点戦略の部分に関して修正を加えているところでございます。
 それから,その続きのところ,2.重点戦略を推進するに当たって留意すべき事項,これは9ページのところですけれども,このあたりも少し整理し直しまして,新たにアンダーラインを引いたところがございます。
 まず,(1)横断的かつ総合的な施策の実施というところです。このあたりは特に意見があったというわけではなかったと思いますけれども,事務局のほうでもう一回文章を読み直しまして,前後の流れを少し滑らかにしたいということで,第2段落のところですが,「また,もとより文化芸術が広く社会への波及力を有することを考慮すれば」云々という形の文章に改めております。
 それから,(2)PDCAサイクルの確立等のところでございますけれども,評価の仕方の関連で,「年度によって選択的に軽重を付した評価を行うことも検討する」といった表現,それから最後のところは,「及び中長期的な影響・効果の測定手法など各種調査研究の充実を図る」といった形で,評価の進め方に関しての留意事項を新たに記載しております。このようなところを重点戦略の中で新たに加えたということでございます。
 それから,続けてになりますけれども,基本的施策は10ページ以下でございます。ここの部分については,前回十分なご審議をいただける時間がとれなかったので,きょう改めてごらんいただきたいと思いますけれども,その中でアンダーラインを引いた何カ所かございます。
 10ページの冒頭のところを少し直しておりますけれども,これは文章の整理でございますので,割愛させていただきます。
 それから,飛ばしまして13ページのところでございますが,2.地域における文化芸術振興のところの3つ目の印のところにアンダーラインを引いております。これは,先ほどご説明しました重点戦略5の修正との関連の中で,少し文章の整理をし直した部分でございます。
 次は14ページに飛びますけれども,3.国際交流等の推進の2つ目の印のところも,先ほどの重点戦略5あるいは6との関係の中で少し文章の整理をした部分でございます。
 それから,少し飛ばしまして,18ページの(3)青少年の文化芸術活動の充実の部分でございます。ここに関しましては,青少年活動に伝統文化や文化財に触れる機会という部分が集約されたということで,ややそこの文章が不十分ではないのかといったご指摘もあったかと思いますので,ここでそこの文意が十分読み取れるように,アンダーラインのところ,「芸術,伝統文化や文化財に親しむ機会を充実する」という形で文章を再整理したところでございます。
 基本的施策に関しては,以上のような修正を加えたところでございます。
 それから,今の基本的施策に関しましては,前回と同様の資料になりますけれども,資料3ということで,対比表の形で,現在動いている第2次基本方針と今回審議いただいている答申・第3次基本方針案との対比表の資料を改めてご用意しております。
 それから,資料4としまして,重点戦略の戦略目標,評価の進め方・指標(例)の部分ですけれども,これについても前回と基本的なつくりは一緒ですけれども,前回のご審議を踏まえて,先ほど申し述べたような重点的に取り組むべき施策のところの修正を加えますとともに,一番右側の欄の評価の進め方・指標(例)の部分につきまして,少し整理し直したものをお示ししたものでございます。主な変更点は,ここの赤い字で書いた部分が新たに修正を加えた部分でございます。少し各論に入ってくると時間がかかりますので,説明は省略しますけれども,評価の進め方の部分が一番右側の列の上の段に,それから具体的な指標に相当するような部分については一番右側の列の下段に,それぞれ項目に分けて書いてあるものになっております。
 まず,重点施策及び基本的施策に関する資料の説明は以上でございます。よろしくご審議いただきますようにお願いいたします。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 資料5までの間でございますが,フリートークをさせてください。この中で議論が行き届いていないことに対してのカバリングあるいは文字の訂正等もややあるかと思いますが,アンダーラインのあるところに関してはより強調はされております。いかがでしょうか。約30分ぐらい時間をちょうだいしております。
 ちょっと皮切りでいいでしょうか,滝波さん。たまたま私は学校にいるというのもあるものですから,資料2の中の,例えば11ページの上から4番目に,「大学や製作現場等と連携しながら」,いわゆるメディア芸術の話ですね。その「大学」という言葉とか,15ページに芸術家の養成・確保のあたりの下から2つ目の矢印のところにも「大学等」とあるのですが,その「大学」という言葉の裏づけがちょっとばかり弱いかなという。最初のほうは,例えば芸術系大学のとか,逆に15ページに関しては,広く高等教育の人たちにとかと区別したほうがいいかもしれませんね。そこにいわゆる次世代の大事な若者たちを考えたときに,その辺の違いをつくっておいたほうがいいのかなと感じました。
 こんな感じで,先生方,いかがでしょうか。いろいろございますでしょうが,この前の会議から随分中身をきめ細かくつくってくれていると思いますけれども。ごめんなさい。増田先生,どうぞ。

【増田委員】基本理念の文章については,意見は今は……。

【滝波企画調整官】基本理念に関しましては,また後ほどしっかりと時間をとって,その中でお願いできたらと思っております。

【宮田部会長】次のバージョンで,よろしくお願いいたします。
 後藤先生,どうぞ。

【後藤委員】すみません,資料4は今発言してもいいですか。資料4の1枚目のところなんですけれども,「地域の核となる文化芸術拠点への支援を拡充する」というところで,評価の進め方のところを見ますと,下の段落のところで,「運営体制,スタッフの育成状況,自主公演数,稼働状況,地域住民からの評価等」とあるのですけれども,ここは重点支援をするような非常に発信力の強い劇場・音楽堂について書かれているところと考えるとすれば,評価が地域住民だけからの評価ではなくて,むしろ海外からの評価とか,それから日本じゅうから客が来るぐらいの発信力がないと困ると思うので,少し評価をいただく対象を地域住民だけではなくて,海外,国内,広く全般的に評価をいただくほうがいいのではないかと思うんです。特に海外からどう見られているか,あるいは海外に対しても発信力があるかどうかということがここは多分重要になってくると思うので,海外からの評価というのはぜひ入れていただきたいと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 僕もいいですか。この日経の文化でも編集委員の内田さんが書いてくれているのですが,私は余り片仮名が好きじゃなくて,特に一番最初に出てくる文化の私どもの発信の中で,新しい言葉があるじゃないですか,今回ここに出ている「アーツカウンシル」,括弧して芸術評議会とあえて言っている。これを芸術評議会と言ったほうがいいかどうかは別としても,せっかくつくるのだったら,新語をつくりたいなという,日本の新語をつくりたいなと。そうすることによって「日本版」などという言葉を使わなくて済む。それはこの文化庁の仕事かななどという気がちょっとしたので,いかがなものでしょうか。
 そうすると,これは吉本先生も随分いいお話をしてくれているんですけれども,いわゆるイギリスの云々というのはあくまでもベースであって,日本のという意識を持たせる。そんなことはいかがなのかなというのは,今すぐは僕は出てこないんですけれども,宿題にしたいと思います。いい評価をしないといけませんので。
 坪能先生,どうぞ。

【坪能委員】この資料2の中を拝見して,社会を挙げての文化芸術振興というのがありまして,国においては,あるいは地方公共団体においては,それぞれ書かれていると思うんですけれども,中で細かく見ていきますと,これは国がやっていただける領域なのか,あるいは地方がやらなければいけないのか,ちょっと判断がよくわからないところがあります。特に学校教育における文化芸術活動の充実,その辺は,この特殊な印の3つ目などは,「教員と協力して,指導を行う取組」というのはだれがやるのだろうかとか,その下の「伝統的な音楽に関する教育が適切に実施されるよう配慮する」というのは,ここは教育審議会ではないと思うんですが,それは音楽あるいは文化芸術に対するかなり大きな意見がここでまとまると言えるのか。こういうことを学校でやっていただきたいと国がお願いするのか,それとも,ここは教育ですけれども,地方の取組として主にこういうものを挙げて,地域の文化施設でもやってほしいと思っていらっしゃるのかという判断がちょっとわからないんですが,これは授業においてと書いてあるところなどは,これは結構危ないことだと,私は明確にしておいたほうがいいように思います。
 その手前の青少年の文化芸術活動のところもそうなんですが,「青少年に対する指導や助言を行う指導者の養成及び確保を促進する」というのは,これも国がやっていただけるのか,それぞれの地域でこういうことを実施して展開していけということなのかというのが,いろいろなところでちょっとあるので,たまたま私は例を一つ,二つ出したのですけれども,それぞれの職務区分といいますか,役割分担というのが,非常にきちんと書かれてはいるんですが,そこのだれがとかというところがよくわからないんですが,ちょっとご説明いただけるとありがたいんです。

【宮田部会長】どうですか。苦しいところかな。

【滝波企画調整官】今,坪能委員のほうでご指摘いただいたのは,資料2で言いましたらば,例えば18ページのあたりとかという,青少年の文化芸術活動……。

【坪能委員】例えば,そこに絞って,(3)と(4)に絞って……。

【滝波企画調整官】(3)の青少年の文化芸術活動の充実あるいは19ページの(4)の学校教育における文化芸術活動の充実といったところについてのご指摘かと思いますけれども,少しこのページの前のほうに戻っていただきますと,10ページのところにこの基本的施策の最初のところが出ております。ここの第3,文化芸術振興に関する基本的施策のすぐ下のところに少し書いていますように,「基本法の第3章に掲げる「文化芸術の振興に関する基本的施策」について,上記「第1 文化芸術振興の基本理念」の下,国は,以下のような施策を講ずる」ということになってございまして,基本的には,国としてこのような取組を講ずる必要があるということを書いていくというのがこの第3の書き方になっているということでございます。

【宮田部会長】「国が講ずる」とまず言い切っているわけですね。そうすると,例えば,富山先生,いわゆる日本の芸能なども小学校とかでもやるようになりましたよね,数は別としても。

【富山委員】そうですね。例えば,体験的に1学期間やらせるとか,そのような形ではやっていますけれども,結局,邦楽,伝統音楽に関して言いますと,専門的に教えられるような方というのは今教員にはほとんどいらっしゃらないわけです。ですから,そこの中で,例えばボランティアみたいな方にお願いして多少それをやっていただくといった一時しのぎでしかないと思いますけれども,ただ,それは継続的に何年もやるという形ではないので,ですからその中から好きになっておやりになる方が出てくれないかなということで,我々も一生懸命努力はしていますけれども,実際問題としては続かないということのほうが多いようでございます。

【宮田部会長】滝波さん,ちょっとこの文章が前へ行ったり後ろへ行ったりしているので,その辺は坪能先生がご心配なさっていると思いますので,そこをちょっとつなげていただければ,少し明快に伝わるのかなという感じもしていますので,ちょっと努力してください。
 佐々木先生,どうぞ。では,まず佐々木先生から。

【佐々木委員】この重点施策,それから基本的施策,それぞれ多分これから文化政策としてやっていくことをかなり細かく,いわば必要なことはほとんどカバーされていると思うんですけれども,つまり,そういうやるべきことがだんだん細分化して細かくなればなるほど逆に,これもちょっと前回私が触れたことがあるんですけれども,戦いにくいのではないかと。つまり,もう少し収れんして,細項目というものはよくわかるのだけれども,それを一度視点を引いてみて,そして全体がどのようになるかということをもう少し認識しておく必要があるのではないかなと。これは,私はここで基本方針でそれをどうこうということではなくて,こういうものを見たときに,細項目がたくさんある中で,これをずっと収れんさせていくとどういうことになるのか,そういう視点も必要ではないのかなと思うわけです。
 それは具体的にはどういうことかといいますと,例えば,これはまた後で触れられることでしょうけれども,基本理念で,文化というのは,伝統文化とか文化財という極めて伝統的なものから現代文化芸術活動へという大きな一種の二重構造になっている。その全体を含めて文化と仮に言うとすると,現代の文化芸術活動というのはある意味では私は間接支援であるべきだろうと。つまり,文化芸術振興基本法でもうたわれておりますように,自律性あるいは自主性ということを尊重しなければいけないということになると,それは自然と支援としては直接支援というよりは間接支援ということに重点を置くべきだろう。そうなると,結局は間接支援の一番の土台は何かというと,法整備とか制度の整備とかということに多分尽きていくのだろうと思うんです。それでずっと議論されてきている,例えばアーツカウンシルにしましても,あるいは劇場法にしても,あるいは地域の文化施設の格差にしても,あらゆるものがそういう制度なり法なりの整備ということをきちんとすることによってほぼ基本ができてくるのではないかなと思うわけです。それに対して伝統文化とか文化財というのは,例えば建物が壊れそうだったら補修しなければいけないとか,物が海外に流れそうだというと,それを食いとめなければいけないとか,直接にどんどん支援していかなければいけないという直接支援の部分と,それから間接支援の部分とがあるだろう。特に間接支援の場合には,法整備,それから制度の整備ということを念頭に置いて,その中で,例えば優先順位であるとか,あるいはどういうものはだんごにできるかとか,そういうことを考えていくべきだろう。その両方の根っこの部分,つまり,伝統とか伝統文化とか文化財とかというものと現代芸術文化活動というものの両方にかかわるものとして人材というものが存在している。この人材というものをどのように育て支援していくか。視点を引いて見れば,多分この3つぐらいにだんごにできるのではないかなと,私はちょっとこれを見て思うわけです。
 そのような視点を持ってこの細かい細目というものをもう一度見直しておくということは必要で,これはすぐにこの基本方針に反映させなければいけないという意味ではなくて,見方として,理解の仕方として,そういうことを念頭に置きながら何か考えられないかなという気がちょっとするわけです。これは非常に概略的な感想にすぎませんけれども,ちょっと申し上げます。

【宮田部会長】佐々木先生,ありがとうございます。まとめようとするときにはどうしても視点が狭くなりますので,時々そういう気持ちを持って,全体の流れから,それから方針,大きな旗というもの,その連携というのはよく関係をつくっておかないといけないと思います。それで,おっしゃったとおり,本来,文化とくくるのはとても乱暴な話なんです。いわゆる遺跡から,生まれたばかりの赤ちゃんからという両方の中から動いていかなければならないところがございますので,よくわかりました。ありがとうございます。
 それでは,ちょっとこのまま進めさせていただきます。では浜野先生,それから西村先生にお願いします。

【浜野委員】9ページの2の(2)ですが,宮田先生のご発言と同じです。PDCAというのは,日本人の一般の人々にこなれた言葉だったらいいのですが,これだけが一般名詞ではない。文中に出てくるのはいいにしても,こなれた日本語にかえていただきたい。
 もう1点は,その上です。多分,(1)の最後の文章は,文化省をつくろうということが委員からいっぱい出てきたけれども,書けないからこうなったということですね,関係団体,連携というのは。ただ,世界に日本が文化をすごく大事にしているとか,知財で頑張るんだとか,その発信とか,ここの精神を生かすのだったら,文化省をつくることぐらい世界に強いメッセージを出すことはないわけですから,そういう議論があったということを書いていただきたいというのと,書けないのだったら,私は何度でも議事録に残すように発言します。こういった婉曲的な表現ではわからないと思います。もちろん大変難しいことだということはわかりますし,これは我々の意見を酌んでくださって婉曲的な文章になったのだろうと,我々はわかりますが,逆に意図が消えてしまっているという思いもあるので,もし再検討していただけるのだったら,「文化省」というワードをどこかに入れていただけるとありがたいと思います。
 以上です。

【宮田部会長】ありがとうございます。それは夢でございますので,それはぜひともと思うわけでございますけれども,庁から省に上げるというのは,それなりの国レベル,議員レベル,いろいろなレベルからも最大の応援をいただいて,一気に持っていかなければいけないと思いますので,そのための議論というのはもっともっとすべきであるとは思いますが,少なくとも先生方の中ではすべてがその気持ちはお持ちであるということの確信は得ておりますので。
 西村先生,どうぞ。

【西村委員】2つですが,1つは,今,浜野先生がおっしゃったことと同じことを言おうと思っておりました。環境庁が環境省になって,国際的なプレゼンスは上がったと思うんです。予算もふえましたし,人もプロパーが育っていますから,ぜひともそういうことが必要だなと思いますので,私も議事録に残すようにしつこく言いたいと思います。
 もう1点は,ちょっと細かいことなんですけれども,同じ資料2の7ページ,重点戦略4なんですけれども,歴史文化基本構想のことを取り上げてくださって,こういう面的な総合的な地域文化の継承ということを入れてくださったのは,本当にありがたいと思います。もう1点,文化財に関して言わせていただくと,文化財には,比較的新しいんですけれども,登録制度というのを国が設けて,文化財のすそ野を広げるということをずっとやってこられているわけです。そういう努力,いい文化財を守る,大事なものを守るというのは書いてあるけれども,すそ野を広げるというのは非常に重要だと思うんです。今のところ,建造物では8,000ぐらいあるけれども,記念物とか,ほかのところは数十だと思うんです。ですから,余り登録制度が完全に生かされているとは言えない状況なんです。もちろん,建造物のほうが登録制度の歴史が長いというのはありますけれども,ほかの登録制度もできてから6,7年たっていると思いますので,もうちょっとすそ野を広げて,建造物のことを考えると,身の回りに国に登録されている文化財がふえてきているということで,文化財を感じる感覚というのが非常に広がってきていると思うんです。今までは特別なもので,これは本当に国が大事だと思ったものという感じだったのが,身の回りに非常に大事なものがたくさんあるのではないかと,文化に関する感覚が非常に広がってきているので,ぜひこういうものを広げていく。ですから,大事なものを守るだけではなくて,すそ野が広がれば山も高くなるわけなので,そうしたすそ野を広げるような文言がどこかに入るといいなと思いますので,ぜひとも考えていただけるとありがたいと思います。
 以上です。

【宮田部会長】ありがとうございます。ぜひぜひ,その文章はお願い申し上げます。
 後藤先生,どうぞ。

【後藤委員】2つほどあるのですけれども,まず,先ほど佐々木先生がおっしゃったことですけれども,直接支援,間接支援ということで,直接支援の場合は補助金などを使ってということになりますし,間接支援は税制を使ってということになるかと思うんです。それについて佐々木先生は,文化財などは直接支援で,それから,どちらかというと現代アートは間接支援でとおっしゃられたのかなと思うんですけれども,実は文化財のほうでも税制を使った支援というのはあり得るのです。例えば,作品が海外に流出しそうになったときには,フランスなどでは,企業のほうが国の予算よりもはるかに機動力があって早く買えますから,企業が買って公開する場合には税制優遇をするといった形で,文化財のほうにも税制が使われていたりということがふえてきていますので,そう簡単には政策手段と対象とを二分して,文化財が直接で,現代アートが間接とは分けられないかなと思ってお聞きしていました。もうちょっとそこは,政策手段との関係というのは整理が必要なのかなと思います。それが第1点です。
 それから第2点目なんですけれども,文化財のところで,今回ユネスコのほうで結城紬と沖縄の組踊が無形文化遺産として登録されるという大変喜ばしいことがあったのですけれども,ここに書いてある文化財は,どちらかというと有形文化財,建物とか,そういうものが割と強く出てきているような気がするんです。それで,例えば7ページの重点戦略5,文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用のところでも,◆で出てきているのは「文化財建造物,史跡,博物館」と,どちらかというと目に見える形になったハードのものを産業振興とか地域振興,観光に生かしなさいといった書き方になってしまっているのですが,実は私は,日本の最もすぐれた文化財政策の一つは,無形文化財のところで,技芸というのですか,技能というのですか,そういうものを継承するということをユネスコに先駆けて何十年も前からやってきて,あるいは戦前からもそうだと思うんですけれども,芸能だけではなくて,手仕事というか,職人さんの仕事などもそういう技芸ということで継承してきている。そのために,京都市というのは最もそういう職人さんの仕事が残っているところですけれども,そういう職人さんの手仕事,技芸と言われるようなものが実は現代産業の美術に,プリントとか,染色とか,さまざまに発展し得る余地があるというところが日本の強みだと私は思っております。ですから,重点戦略5のところにはぜひ,それから4もそうかもしれないんですけれども,無形文化財のことを少し入れていただいて,技芸とか技術とかに着目した書き方も盛り込んでいただきたいなと思います。

【宮田部会長】いわゆる無形文化財というか,人間を含めた,あるいはまさしく人間そのものがやるという流れのようなもの,あれは日本独特のつながりを持っていますものね。完璧に継承してはいませんけれども,もう実際にいい関係で動いているものですから,その辺は文章化はそれほど難しい問題ではないと思いますので,ぜひ……。ありがとうございます。
 あとはございませんでしょうか。増田先生,どうぞ。

【増田委員】先ほど西村先生がおっしゃったことと関連するのですけれども,ページにすると20ページになるのでしょうか。(2)美術館,博物館,図書館等の充実というところの文言を読ませていただきますと,「優れた文化芸術の創造,交流,発信の拠点のみならず,地域の生涯学習活動,国際交流活動,ボランティア活動や観光等の拠点としても積極的に」ということが書かれています。これは,こういうことができるのは,美術館,博物館,図書館等が文化の代表たるいろいろな品々を既にたくさん抱えて保存しているという,貯蔵庫というか,ダムというか,確かに大きな蔵であるわけで,その蔵の内容をもっと充実させようというのは,我々はいつもいつも念願としているところですけれども,美術館,博物館,図書館等がそういう活動をする一番の基本は,そういうものを保存するというのが第一義で,保存していなければいろいろな活動ができませんので,そこのところ,文化の貯蔵庫というのでしょうか,何と表現したらいいか,私はわかりませんけれども,そういうところがまず基本的にあるということをこの中に入れていただきたいなと思いました。余り私たちがこうやって,ここが足りない,あそこが足りないというと,どこが重点かということがわかりにくくなるかもしれませんけれども,この文言の中に入れることに関しては,図書館等の基本機能ですので,入れていただければという感じがいたしました。
 以上です。

【宮田部会長】大変かもしれないんですけれども,滝波さん,例えば大きな数字,それから両括弧,ポツといろいろあるではないですか。そこの前に,先ほど佐々木先生が,ふっと離れて見たときにと言われたように,表題のようなものが,これはちょっと紋切りというか,ちょっと伝わりにくいですね。その辺は結構私もいろいろな提言をするときに,うたい文句というのか,キャッチというのか,すごく大事にして,迷いに迷って,よし,これでいくぞといった感じでやっているんですけれども,全部にそれを入れることはできない。すべてが充実なんだろうけれども,その中の大きなところにちょっと入れていくと,今の先生方のお話というのは,すっきりしていくかもしれませんね。例えば,文字ポツの下あたりにちょっと黒の文字で1行入れておくとかということで,両括弧まで入れ出したら大変なことになるので。
 では,高萩先生をラストにして,次へ移りますが,またこの件に関して先生方の中でございましたら,リターンしても結構です。では,高萩先生,お願いします。

【高萩委員】重点施策1のところなんですけれども,6ページの上から2つ目の◆ですけれども,「地域の核となる文化芸術拠点への支援を拡充する。また,その法的基盤の整備について早急に具体的な検討を行う」というところです。「法的基盤の整備」と具体的と書いてあるので,いいかなと思ったんですけれども,資料4のほうを見ますと,具体的施策というのが「劇場・音楽堂からの創造発信への支援」になっていて,評価はヒアリングを行うということになってしまっています。「その法的基盤の整備について早急に具体的な検討を行う」といった場合には,当然具体的な施策としては法案の検討といったことになるかなと思いきや,そうなっていないんです。その辺は書き方の問題もあるのかもしれないんですけれども,もし書けるならば,上のほうの日本版アーツカウンシルのほうが,「調査研究を行うとともに,可能なところから試行的な取組を実施する」となっていて,何となく,これはいくのだろうなという感じになっています。「法的基盤の整備について,個別法の整備に向けた取組を実施する」そのくらいは書き込んだりはできませんかね。さっき佐々木さんもおっしゃったように,アーツカウンシルの話とか,劇場法の話とか,そういう言葉が結構飛び交っているんですけれども,飛び交っている割には具体的なところが後退しているかなという感が否めないんですが,どうでしょうか。

【山﨑芸術文化課長】すみません,おくれて来て。

【宮田部会長】山﨑さん,ではちょっと休憩して聞いていて。田村先生,どうぞ。

【田村部会長代理】すみません,私も同じくでございます。「法的基盤の整備」というのは前から言われていることで,それなのに全然変わっていないというのが事実でございますので,今回は「法的基盤の整備」でない言葉にぜひ。そうしませんと,次の重点戦略2のところに「人材の育成・活用に関する支援を充実する」とありますけれども,これも,雇用の場が創出されない限りは,幾ら人材が育成されても活用されないというのが現実ではないかと思います。

【宮田部会長】どうですか。

【山﨑芸術文化課長】すみません,書きぶりについては,ちょっと検討させていただきたいと思います。
 状況をちょっとご説明いたしますと,近々このいわゆる劇場法の検討のための検討会を立ち上げたいと思っております。芸団協さん等からご提案のある内容等も含めて,具体的な課題,論点等について実務的に検討する検討会を立ち上げて,一応の目安としては,3月ごろをめどとして中間的なまとめをして,さらにその間にいろいろ関係団体のご意見もヒアリング等で聞きながら検討を進めて,中間的なまとめをして,さらに広く国民一般の方々のご意見も踏まえて,内容等について詰めていきたいと考えております。最終的にいわゆる議員立法になるのか,政府提出の閣法になるのかといったことについては,政務三役ともご相談しながらご指示を仰ぎながら検討を進めていきたいということで,書きぶりはともかく,内容的には進めておりますので,ご理解をお願いしたいと思います。

【宮田部会長】書きぶりが大事なんで,(笑)世の中を騒がしている人の何とかかんとかなどというのではなくて,しっかりと書いていただきたいと思います。
 さて,大変いいお話を皆様からいただきましたが,ちょっと次へ,一歩進めさせてください。先ほども申しましたが,戻っても結構でございます。
 では,基本理念。増田先生は先ほどちょっとおっしゃっておりましたけれども,この部分を審議したいと思います。
 素案は事務局より事前に送付していただいておりますが,文書形式の審議は「審議経過報告」以来となりますので,原案作成に当たっての考え方と要点について,事務局のほうからご説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【滝波企画調整官】それでは説明させていただきますが,今回ご審議いただいておりますのは第3次の文化芸術振興基本方針の策定に向けてということでございますけれども,これまでの間に主に重点戦略の部分,それから前回,今回と基本的施策という部分の審議を中心にお願いしてきたところですけれども,その全体を総括するといいましょうか,全体を俯瞰して,文化芸術振興の基本理念といったところを基本方針としては書いていく必要があるだろうと思っております。ここの部分について,これまで2月に諮問があって以降ずっと審議を重ねてきましたので,その間にさまざまな基本理念に関する貴重なご意見がたくさんあったと思います。そのために,さらでご審議いただいてもいいかと思うんですけれども,何か取っかかりになる文案があったほうが審議がしやすいかなと思いましたので,基本的には,これまで出されてきたさまざまなご意見というものと,それから今まさに第2次の基本方針というものが動いている最中ですので,そこで現在書かれている第2次方針の中での記述ぶりといったことも十分に参考にしながら,どのような文案が考えられるだろうかということをとりあえず事務局のほうで整理したものを,今回資料2の1ページから4ページまでの4ページにわたりまして書いてみたというのが,この資料でございます。今申し上げましたように,基本的には第2次方針の中で普遍的な文化芸術振興の理念に関することは現に書かれております。したがって,現在の第2次方針から大きく変わるということはそれほどないのだろうとは思いつつも,しかしながら2月以降の審議の中で大変貴重な意見がたくさんありますので,その辺の意見というものを適宜織り込みながら文章化していったというのが,この資料でございます。少しそういった視点でごらんいただけたらと思います。
 まず1ページのところですけれども,基本理念に関しましては,主なつくり,構成としては,第2次基本方針のときの構成を基本的には踏襲しております。1.として,文化芸術振興の意義と書いてあります。ここは第2次方針と同様の構成になっております。
 最初のパラグラフについては,基本的に第2次方針の文案をそのまま書いております。また,第2パラグラフにつきましても,基本的には第2次方針の記述ぶりをそのまま生かしていますけれども,少し部会の中でいろいろな意見がありまして,第2次方針の記述ぶりをもう少し補強したほうがいいかなと思った点を,アンダーラインのところですけれども,[1],[2],[3],[4],[5],それぞれのところで少し書き足すような形につくったものになってございます。このあたりは,文化芸術の定義といいましょうか,「最も広義の「文化」ととらえれば」ということで,文化の定義に関することを書いた部分になっております。
 それから,その下の「このような」で始まる段落については,6月の「審議経過報告」のときにも少し文章として書いてあったところですけれども,「個人としての,また様々なコミュニティの構成員としての誇りやアイデンティティを形成する,何物にも代え難い心のよりどころとなるものであって」というくだりを「審議経過報告」の中で使っておりましたので,その文章を生かしながら新たに書き込んでいるところでございます。
 次のパラグラフでございますけれども,このあたりも基本的には「審議経過報告」で書いた文章を生かしながら織り込んだものになっております。その中にこれまで部会の中で出されたキーワードで,「ソフトパワー」というキーワードがあったと思いますし,あるいは「我が国の国力を高めるものとして位置付け」といったキーワードもあったと思いますので,それを文章の中に織り込んで構成しております。
 そして,1.の最後の段落,「我が国は」で始まる段落ですけれども,これも「審議経過報告」の考え方の中に既にありましたけれども,「文化芸術の振興を国の政策の根幹に据え,今こそ新たな「文化芸術立国」を目指すべきである」ということで,「審議経過報告」のくだりをそのまま生かして,文章化しております。この部分が1.文化芸術振興の意義に関する部分でございます。
 それから,2.として,文化芸術振興に当たっての基本的視点となっております。2.の立て方も,基本的に第2次方針と同じ立て方になっております。
 最初のパラグラフは,基本法の8つの基本理念を引用した部分でございまして,ここの引用の仕方も第2次方針と同様でございます。
 そして,2.のリード文に相当する部分の最後のところで,少し説明的に書いた部分がございます。「また」以下です。「また,上記1.の意義を十分に踏まえ,文化芸術振興施策を総合的に策定し,実施する。その際,下記(1)に示す時代認識の下,特に(2)の基本的視点に立つこととする」ということで,位置づけを明確化するためにこの文章を書き込んでございます。
 そのような書き方にした上で,(1)文化芸術を取り巻く諸情勢の変化というくだりでございます。この(1)の構成についても,第2次方針と基本的に同じでございます。この間のさまざまな諸情勢の変化について振り返ってみて,どのような変化があったかということを書いた部分でございます。2つ目のパラグラフ,「国内では」で始まるところの最初に,「「国から地方へ」,「官から民へ」の流れの下」というくだりを書き込んでいます。これは,この審議のスタートとなっております諮問文の中にもこのくだりがございまして,こういった状況認識のもとでこの議論をしてきたということを書いております。
 また,その下のパラグラフ,「他方で」で始まるところ,「人口減少社会が到来し,特に地方においては」過疎化や少子高齢化といった状況にあるということの説明を加えております。それから,中ほどのところですが,「昨今の経済情勢や,厳しさを増す地方の財政」という認識を書き加えますとともに,末尾のところ,「地域の文化芸術を支える基盤の脆弱化に対する危機感が広がっている」というくだりは,このあたりもこの部会の中でたくさんの意見があった点だと思っておりますので,新たに書き込んでございます。
 それから,その次のパラグラフは,国際的な視点でございます。この段落の第2文のところは,新たに書きおろしております。読み上げますと,「東アジア地域では,経済社会面で各国間の連携・協力が進む中,文化芸術面での交流の深化も期待される。それと同時に,中国,韓国をはじめ周辺国の経済・文化両面における発展が著しく,我が国の国際的地位の相対的な低下が懸念されつつある」ということで,このあたりの状況認識についてもこの部会の中でたくさんの意見が出されたと思いますので,そのあたりを新たに書き起こしております。
 その下のパラグラフ,いわゆる情報通信技術の関連ですけれども,ここのところでは,「人々の生活に大きな利便性をもたらす一方で,新たな社会的課題を惹起している」ということの引用を新たにつけ加えております。その中で,「違法配信等による著作権侵害の深刻化といった問題も生じている」ということで,近年とみに顕在化しているような状況というものを書き加えてございます。
 それから,(2)が基本的視点ということになっております。基本的視点というところまでは一緒なんですけれども,その下,[1]とあって,さらに[1]の下に[2],[3]とくるのですけれども,ここの立て方は,第1次方針,第2次方針とそれぞれ各基本方針ごとに特色を出していくという形になっております。前回の第2次方針のときには,基本的視点としては3つ挙げておりまして,1つが「文化力の時代を拓(ひら)く」というのがまずございました。それから2つ目の基本的視点としては,「文化力で地域から日本を元気にする」という視点が示されておりました。また3つ目の視点として,現行の第2次方針では,国,地方,民間相互の連携といった視点が提示されていたわけでございます。そこで,今回の第3次方針としてどのような基本的視点というものが考えられるかということを少し整理し直しまして新しく書き起こしたのが,ここの[1]以下のところでございます。
 まず[1]でございます。ここは,とりあえず仮置きでタイトルが「成熟社会における成長の源泉」と書いてみました。恐らくここの文章は,後ろの第2で出てくる重点戦略で言いましたら,恐らく重点戦略1を主に念頭に置いている。もちろんそれ以外にも大きく関連があると思いますけれども,主に関連するとしたら,重点戦略1が強いのかなと思いましたけれども,そのようなあたりを少し意識しながら,「成熟社会における成長の源泉」として少し書いてみました。
 まず,[1]の最初のパラグラフでございます。これは状況認識を書いたところですけれども,少しキーワード的に拾っていきますと,まず「人口減少期」を今迎えているということ。それから,「いまや我が国は成熟社会として歩み始めつつある」という状況認識。それから,「人材こそが資源であり,「ハード」の整備から「ソフト」と「ヒューマン」の支援に重点を移す」ということ。このくだりは実は諮問文の中にも書いてあったわけですけれども,このあたりを引用しております。その上で,2ページの最後のところからですが,「人々の活力や創造力の源泉である文化芸術振興が求められる」としております。
 次のパラグラフでは,少し経済学的な視点を書き加えたものでございます。このあたりは,前半戦の議論の中で後藤委員のほうからも少し知見をいただいたところだったと思いますけれども,経済学的な視点で見るとこのようなことが言えるだろうということで,「公的支援による資源配分を必要とする。同時に,文化芸術は,国家への威信付与,周辺ビジネスへの波及効果,将来世代への遺贈価値,コミュニティへの教育価値といった社会的便益(外部性)を有する公共財である」ということを打ち出しております。
 その次のパラグラフでは,文化芸術は,いろいろな人たちの社会参加の機会をひらく社会的基盤なのだということで,「昨今,そのような社会包摂の機能も注視されつつある」ということで,これは恐らく平田参与のご意見が多かったかと思いますけれども,そのあたりの意見を反映した形の文章にしてございます。
 次のパラグラフは,[1]の視点のところの総括に当たるような部分かと思います。少し読み上げますと,「このような認識の下,従来,社会的費用としてとらえる向きもあった文化芸術への公的支援について,社会的必要性に基づく戦略的な投資ととらえ直し,成熟社会における新たな成長分野として潜在力を喚起するとともに,社会関係資本の増大を図る観点から公共政策としての位置付けを明確化する必要がある」ということで,公共政策としての文化芸術ということはもともと諮問文の中でも打ち出しておりまして,そこについての審議をということでしたので,その部分を明確に書いたということと,これまでの間,いろいろな部会の中での意見の中で,支援の在り方を転換するのだということの打ち出しがあったと思いますので,それをこの文章の中に込めた形にしてございます。言ってみればパラダイムシフトがここにあるんだということかと思っております。
 最後の段落では,これは従来の第2次方針にあったようなくだりを基本的に生かしておりますけれども,文化芸術は,短期的な経済的効率性を一律に求めるのではなくて,長期的な視点に立って施策を講ずる必要があるということの引用をしているところでございます。
 以上のところが[1]として「成熟社会における成長の源泉」ということで書き起こした部分でございます。
 次の2つ目の視点でございます。ここでは,とりあえず仮置きでタイトルとして「文化芸術振興の波及力」と書いてみました。ここのくだりは,もちろん第2の重点戦略のそれぞれに関連があると思いますけれども,主に関連が深いとすれば,重点戦略5とか6あるいは2といったあたりに大きく影響があるのかなと思って書いたところでございます。このあたりも,全く新しく書き起こした部分でございますので,また少しキーワードを拾いながらご紹介していきたいと思います。
 1つ目の段落でございます。まず,「文化芸術は,もとより広く社会への波及力を有しており」,「幅広い分野との関連性が意識されてきたが,国家戦略として「文化芸術立国」を実現するためには,それら周辺領域への波及効果を視野に入れた文化芸術振興施策の展開がより一層求められる」という認識を示しております。
 「特に」という2つ目の段落では,近年脚光を浴びている創造都市の取組の事例を少し紹介する形で書いております。「また,英国やシンガポールをはじめとして創造産業の発展に注力する国も現れている」ということの引用もしてございます。
 次のパラグラフにつきましては,少し発信ということをイメージしまして新たに書き起こした部分でございます。少しキーワード的に拾ってみますと,「我が国としても,特に東アジアにおける文化的存在感を高める観点」から施策を講じていくということ,それから「自国の強みを活かした戦略的な施策の展開を図る必要がある」というくだり,それから「文化芸術は,これら創造性を核とする取組に大きく寄与する」ということ,そして「伝統文化からメディア芸術やデザイン,ファッションまで多彩な日本文化を積極的に発信するとともに,その価値を生み出す創造的人材の育成・集積を図るべきである」と結んでおります。
 それから,次の4ページに移りますけれども,今の[2]の視点の最後のパラグラフとして,「文化的アイデンティティを保持するとともに,国内外の文化的多様性を促進する観点も重要である」と締めくくっております。
 次の視点として,[3]「社会を挙げての文化芸術振興」と,これも仮置きですけれども,このようなタイトルをつけてみました。[3]につきましては,現行の第2次方針において,先ほど申し述べましたように,国,地方,民間相互の連携といったことが書かれておりまして,大きく意味するところはそんなに変わっていないと思っておりまして,この部会審議の中で出てきたような意見をその中に少しちりばめながら書いた部分でございます。
 [3]の最初のパラグラフは,少し前提条件を書いた部分でございます。「文化芸術は,人間の精神活動及びその現れであることから,まずもって活動主体の自発性と自主性が尊重されなければならず,その上で,活動主体や地域の特性に応じたきめ細かい施策が大切である」ということで,これは文化芸術振興基本法の第2条第1項のところに書かれている基本的な理念に相当する部分の記述を持ってきたような書きぶりにしてございます。
 それ以下は,基本的には現行の第2次方針のつくり方を踏襲しながら書いておりまして,その中に少しキーワードをちりばめる形にしております。例えば,第3段落でいいましたら,真ん中のあたりに「「新しい公共」の担い手」というキーワードを入れております。
 また,その次の「国においては」で始まるパラグラフにつきましては,「国においては,大局的な観点から文化芸術振興の展望を示す」ということ,それから「必要な文化的基盤及び諸条件を整備することが基本的役割となる」という認識を示しております。
 それから,「また」で始まるパラグラフにつきましては,同様に「「新しい公共」の担い手」ということを書き加えますとともに,最後のところ,「地域において文化芸術を享受する機会等の偏在を是正するよう努める必要がある」ということで,都市と地方との文化芸術を享受する機会の偏在を是正するという取組の重要性を書き起こしております。ただ,この関連の記述は,現行の第2次方針の中にも「機会の格差の改善」といった形で書かれておりますので,文章の書き方を少し改めたという形になっております。
 その上で最後のパラグラフ,「そのためにも,文化芸術振興の意義に対する国民の理解の上に,個人,企業,NPO・NGOを含む民間団体,地方公共団体,国など各主体が各々の役割を明確化しつつ,相互の連携強化を図り,社会を挙げて文化芸術振興を図る必要がある」と締めくくるという形で書いてみたものでございます。
 何分にも十分こなれていない点も多々ありますし,これまでの部会における意見の意を十分尽くさない形で書いてしまっておりますので,不十分な点は多々あろうかと思いますので,この点についてどうか忌憚のないご意見をいただきまして,よりよい文章となりますように,積極的なご意見をいただけたらまことにありがたく存じます。どうぞよろしくお願いします。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 私は,今までの議論を非常によくまとめてくれているなという第一感想でございます。特にこの視点は6つの重点戦略と合わせて第3次の基本方針の特徴を打ち出す部分でございますので,「審議経過報告」以来,キャッチフレーズなどもよく,先ほどもちょっとほかのところで私は申しましたけれども,これから項目の持っていき方,このフレーズの持っていき方等々をちょっとお考えいただいて,先生方からアイデア等をいただければ,よりここに書かれている言葉が強みを増すのではないかなという感じがいたしております。一個一個はとてもいいんですけれども,どうしてもこのようにくくりたくなってくるので,ここが何か一つのワードになれたらいいのかななどという気がするんですけれども,先生方からアイデアをいただけたらと思いますが,いかがでしょうか。妙案等ございましたら。余りいいことがいっぱい書いてあると結局わからなくなってしまうという欠点が出てきますので,先ほど佐々木先生からもお話があったように,この中でもこれというあたりがちょっと出てくるといいかもしれません。それも含め,高萩先生,どうぞ。

【高萩委員】3ページの2の基本的視点の[1]成熟社会における成長の源泉のところの4つ目のパラグラフです。先ほど滝波さんのほうがパラダイムシフトとおっしゃったので,多分ここはかなりキーワードだと思うんです。一文になっていてものすごく長くなってしまっているので,切り離せませんでしょうか。「このような認識の下,従来,社会的費用としてとらえる向きもあった文化芸術への公的支援について,以下のように」,本当は「パラダイムシフトする」なんですけれども,「パラダイムシフト」というカタカナ言葉は多分よくないと思いますので,「以下のように考え直す」とか,何かそういう強い言葉を入れて一度切ってください。次を段落に分けて,「社会的必要性に基づく戦略的な投資としてとらえ直す。成熟社会における新たな成長分野として潜在力を喚起する。社会関係資本の増大を図る観点から公共政策としての位置付けを明確化する」とすると,ここがかなり強く出てくるので,それこそ読んでいったときにどこか強いところがあると要約を作る際など取りやすいかなという気がします。ちょうど「パラダイムシフト」とおっしゃったので,ここをぜひ強調していただきたいなと思います。

【宮田部会長】大変ありがとうございます。読んでいて,まさしくそのとおりですね。そういう感じでどうですか。滝波さんを助けてやってください。
 どうぞ。

【近藤文化庁長官】先生方のご意見を伺いたいんですが,今の部分ですが,今の政権は雇用というのが大変なキーワードになっていますので,今のこの新たな成長分野のちょうどパラダイムシフトということで高萩さんがおっしゃったところで,雇用の増大とかというのを入れると,政治的なインパクトがあるかなというのが一つと,[1]の成熟社会における云々というのは,まさに先進西欧諸国が既にそういうことに気づき始めていること。次の[2]で出てはきますけれども,成熟した社会,民主主義社会における共通の課題で,既に欧米は5年,10年,15年前からこのパラダイムシフトをやって,進みつつあるのだということを書いたほうがいいのか,それとも「また外国のまねか」ということで逆の効果になるのか,ちょっとその辺,先生方のご意見を伺えればと思います。

【宮田部会長】ありがとうございます。文化芸術は文化芸術のためにあるのではなくて人間のためにあるわけですから,当然そこには雇用の問題やいろいろなものも含まれているという考え方でいくべきであると思いますので,引用として海外の引用を使うことは決して問題ではないと私は思っていますが,具体例として出やすい,知覚しやすい言葉でございますので。

【高萩委員】もう一個,2ページのちょうど真ん中ぐらいのところなんですけれども,「国際的には,グローバル化の進展に」から始まるところです。これはつまり諸情勢の変化ということだと思うので,「東アジア地域では,経済社会面で各国間の連携・協力が進む中」とすっと流れていってしまうんですけれども,実際問題としてはかなり緊張関係も存在しています。どこまで書くかはちょっと難しいんですけれども,「進む中,緊張関係もあり」とかと書くか,(笑)逆にはっきりここは,我々の中でも,東アジアとやるのは大変だけれども,やらねばならないんだなということで国際文化交流事業といったものはかなり増えてきています。日本との間は,韓国,中国,ロシアもですか,絶対に何らかの文化芸術面での交流の深化が期待されていると思うので,うまく書いたほうが多方面へのインパクトがあるかなと思います。

【宮田部会長】それは,私,すごく感じます。つい先々週,ベルリンでの日独150周年の会議があったんですけれども,隣国と言われたときに,ドイツが言う隣国というのが友好国だったり,ちょっとすき間があったりというのと,日本がというのでは,同じ国を論じたときに微妙に違うんです。これはおもしろいものだなと思ったので,むしろそのぐらいの話があってもより緊張感,いい意味での緊張感になるのではないかという気がしますし,先週か,奈良で日中韓3国の文化交流フォーラムを薬師寺でやってきたんですけれども,その3国,特に2国の隣国の人たちも,そのことは触れたほうがむしろより深まるといったお話をしておりましたので,構わないのではないでしょうか。そういうことを言わないでいいところだけ攻めようとすると,結果的には全然つまらないものになりますので,私は賛成します。
 どうぞ。

【増田委員】ただいまの2ページの基本的視点のちょっと上の段落,「また,インターネット等の情報通信技術の急速な発展と普及は」というところですけれども,「人々の知的コンテンツ利用の在り方に係る変化に伴い,違法配信等による著作権侵害の深刻化といった問題も生じている」こともそうなんですけれども,私が感じているのは,何かコンテンツ利用のテクニックだけ若い人たちにたくさん普及していて,コンテンツをつくるほうの創造の部分がかなり利用ということばかりに偏っているのではないかなという感じがして,コンテンツをつくるほうの力が衰えているのではないかなという感じもするんですけれども。

【宮田部会長】なるほど。
 吉本先生。

【吉本委員】さっきの高萩さんのご意見のところで,緊張関係というのは書けるのかなと思ったので,中庸をいくとすると,「各国間のより一層の連携・協力が求められる中」という案もあるかなと思いました。
 それから,今の増田先生のご指摘のインターネットのところは,確かにコンテンツ利用だけではなくて,つくるというのもあると思うんですけれども,もう一つあるとすると,バーチャルな世界がどんどん進展して,人対人のコミュニケーションとか,そういうのがすごく薄くなっているといったことも社会的課題の一つとして挙げておいて,そういった側面を解消するためにも文化芸術は重要だというニュアンスを出せないかなと思いました。
 それから,その前に長官から投げかけのあった質問にだれも答えがないので,私の意見を申し上げますと,雇用というのはぜひ入れたほうがいいのではないかと思います。

【宮田部会長】あれ,言ったつもりだったんだけれども。(笑)

【吉本委員】それから,「成熟社会における」云々のところで,欧米諸国ではということなんですが,そこは私はあえて入れなくてもいいのかなという気がいたしました。

【宮田部会長】ありがとうございます。

 私は,「緊張にもかかわらず」とか「微動だにせず」とかというぐらいのほうが……。

【近藤文化庁長官】「凛として」とか。

【宮田部会長】「凛として」。(笑)
 僕は今のようなやりとりがとてもいいと思います。ぜひどうぞ。西村先生,どうぞ。

【西村委員】3ページの[2]の波及力のところにかかわるかと思うんですけれども,文化芸術での政策というのは,例えば,私は都市の問題をやっているんですけれども,都市の中心市街地の活性化といったことになると,都市の中心は文化とか芸術の発信基地なんです。つまり,シャッター街とか,いろいろ言われていますけれども,お祭りがあったり,食文化とか,さまざまなものを含めて,重要なものは都市の中心部から発信されているという意味でいうと,周辺領域としてもそういうのも非常に重要だろうと思うんです。都市にとっても非常に重要な課題であるし,それは本当に都市の再生といったことにかかわってくる。それからもう一つは,創造的なアートが,今は創造都市ということで書かれていますが,創造都市だけではなくて,例えば最近だと瀬戸内国際芸術祭とか妻有トリエンナーレのように,田舎に芸術家が入ったり芸術が行くことによって,それぞれまた魅力的になったり,地域が元気になったり,観光客がふえたりするということがあるので,こうしたクリエイティブなものというのはもっと広く力を持っている,雇用の力も持っているという意味で,私も雇用というところはいいと思うんですが,そのような波及があるということをもうちょっと強く言えるのではないかなと思うんです。
 それともう一つは,ちょっと言葉の問題ですけれども,それぞれのタイトルがもう少しインパクトがある……。例えば,前の基本的視点では,「文化力は時代を拓(ひら)く」とか,文章になっていて,その3つの文章で何が言いたいかというのが感じられるんですけれども,それから見ると,これはまだ仮置きかもしれないけれども,3つの丸はどれも何となく役所の作文という感じが,申しわけないけれども,するんです。何かもう少しインパクトがあるような言い方を工夫してもらうといいのかなと。それは我々が考えないといけないのかもしれませんけれども……。

【宮田部会長】そうです。(笑)
 どうぞ,坪能先生。

【坪能委員】ワーキンググループのときからずっとキーワードになっているのは,一つは人材育成だったと思います。この理念のほうにも入っておりますし,それからその後の重点の中にもみんな入っているんですが,余りにも当たり前にずっと流れてしまうと,どこにも人材育成があって,当然のことなんだけれども,だから弱く見えてしまうというところがあるんです。今の基本のところでも,文化芸術を支える基盤というのは人であってということがあるにもかかわらず,下のほうで「人材こそが資源であり」と言って,文章がずっと先へ行ってしまわないで,人材こそが資源なんだ,その資源のために子どもの時代からいい芸術を与えるんだ,それによって活性化されて文化力になっていって雇用までいくんだとかと,きちんとそこで一つくくって,人材育成にこれだけ頑張ってきたのですから,子どものことも含めて,そういう子どもを育てる先生方もいるんですけれども,古典芸能にしても後継者とかという話があるんですが,みんな結局人材不足だと言われているのはそういうところで,我々は次世代も含めて育てるんだということがまずあって,それでこういうことが必要なんだと,そこのところをはっきり一言言わないと,みんな文章として流れていってしまって,ただただ感動していってしまうんですけれども,そこのところをちょっとまとめていただければと思いました。

【宮田部会長】ありがとうございます。
 ほかの違う省庁では,これは速記の人たちは書かなくていいんですけれども,100のアクションプランというのを出していまして,それを一生懸命読んだのですけれども,人材のことが書いてあったのは5,6個でしたね。これもまた悲しいなという感じがした。今度は逆に,今,坪能先生のお話にあったように,人材,人材と言い過ぎたことによってそれがぼけてしまうということもある。経済であろうが,すべてのことはすべて人材の中から,人そのものから生まれるわけですので,人材という言葉に対しての持っていき方というのはちょっと気をつけて,本当によく考えて,キーポイントとしてやらなければいけないですね。
 ごめんなさい。どうぞ。

【吉本委員】先ほど重点施策のところで文化省の話が出て,それで「審議経過報告」では理念のところに「「文化省」の創設をも念頭に置きつつ」というワーディングが入っていますけれども,こちらには入っていないわけです。それで,恐らくいろいろなことを推しはかるに,これが閣議決定される文書になるということが前提であると,「文化省」という言葉を書くのは相当ハードルが高いんだろうとは思うんですが,委員の先生方は皆さんそのことについてすごく意見を言われているので,それが書けるのか,書けないのかということをここで一度ざっくばらんに議論しておいたほうがいいかなと思いました。

【宮田部会長】さっきもちらっと浜野先生からその話が出ましたけれども,閣議決定へ持っていくにはまだハードルの高いところがあるのかもしれませんね。ただ,先ほど私が申しましたけれども,先生方すべてにその思いというのは確実にあるわけでございますので,どうでしょうか,しばらく私と事務局でその辺はまた対決をして,(笑)練って,背中に背負ってやってみたいと思いますが,よろしいでしょうか。全員がわーっとしゃべり出すと,何か鶏のけんかみたいになってしまうので,それはやめたいと思いますので,ちょっと頑張ってみます。それできょうは少ない時間ですので,基本理念に集中したいと思います。でも,吉本先生,ありがとうございます。浜野先生,それから西村先生,あとの先生方の固有名詞はあえて出しませんが,その気持ちは十分ありますので,よくわかります。
 さて,また理念についてのパラグラム等々も含めて,戻っても結構でございますので……。先生,どうも失礼しました。

【高萩委員】すみません,2ページの文化芸術を取り巻く諸情勢の変化なんですけれども,変化したのが指定管理者制度だと思います。これは,今の書きぶりだと,「指定管理者制度の導入等の影響も指摘される中」となっていて,よい影響だったのか,悪い影響だったのかわからないような書き方になっているんですけれども,前回のを見ますと,非常に明るい展望も書いてあるんです。資料2の途中のところの最初のほうですけれども,「公立文化施設に対しては,指定管理者制度の導入により,民間の新たな発想や方法による効果的かつ効率的な運営が期待される一方で,これまで地域で培われてきた文化芸術活動の安定的かつ継続的な展開が困難になるとの懸念も現場から指摘されている」。これがちょうど第2次方針のころの基本的視点だったと思うんですけれども,今現在では,公立文化施設への指定管理者制度に関しては,比較的悪影響しかなかったなという感じ。つまり,効率化を求められること,それから安定的に制度が運営されないということで,多分そこも踏まえて「影響も」というのが「悪」という言葉をちょっと落として書かれたんだと思うんですけれども,その辺がはっきり書かれるならば,「指定管理者制度の導入により,効率化のみ優先されるなど」,「される中」とかと,ちょっとはっきり,悪いんだということを書いたほうがいいかなと思います。多分これは,ご意見があるようだったら,皆さんの意見を聞いて,3年たつと,指定管理者制度については,期待があったのが,大分薄くなっているなという感じの情勢の変化かなと思いますけれども。

【宮田部会長】どうですか,それは。多分,先生方は同じじゃないかな。では,大木さん,どうぞ。

【大木政策課長】ちょっと検討します。

【宮田部会長】増田先生,どうぞ。

【増田委員】指定管理者制度のいい点というのは,例えば,どこかの文化財がまとまっているので,それを保存したいんだけれども,役所ではとても人手も予算もとれない。そのときに,NPOが立ち上がると,NPOを指定管理者にしてくれると,一応法律の範囲内ですぐその体制を立ち上げることができるという利点は聞いているんですけれども。それは,今回行った静岡県あるいは三重県などでもそういうことを聞いているんですけれども。

【宮田部会長】どうぞ。

【大木政策課長】ちょっと今もごもご言いかけて,そこまで言えなかったことなんですけれども,指定管理者制度という制度が悪いのか,ほとんどの自治体において運用が悪いのか,9対1であっても,上手に運用すればいいこともあるのか,そういうところをきちんと評価なりなんなりというのをした上でもって何か書くという感じだといいんですけれども,その辺のところがどうなのかなと。大抵のところはしくじっているということはよくわかります。それで,だから制度がよくないということになるのか,制度は全く中立であっても,その運用がどうしても自治体の財政難とかいろいろなこともあってまずくなってしまうのか,その見きわめがどうなのかなというところ。これはすべて,各省折衝にかかわってきますと,その制度を持っているところはこれは別でございますので,いろいろな話になるだろうなということを考えながら,私もちょっとどんなものなのかなという感じなんですけれども。

【増田委員】少なくとも欠陥はあると思うんです。皆さん感じておられるところでは,短期契約ということによる欠陥というのはみんな共通して指摘しておりますので,そこのところは欠陥と言ってもいいと思うんですけれども,欠陥のある制度は欠陥を改良しなくてはいけないということは言うべきではないかなと思います。

【吉本委員】制度自体の欠陥も確かにあるでしょうし,特に,有期ということに伴う問題が多いと思うんですが,ただ,運用の仕方で問題が起こっていることのほうが多いんじゃないかと私は思います。特に,この制度の目標は住民サービスの向上と経費の縮減とか効率化と両方うたわれているんですけれども,住民サービスの向上を抜きにして経費の縮減と効率化だけに走ってしまっているというところが一番の問題の原因だと思うので,書くとすれば,ちょっと丁寧に書かないと,制度そのものが問題と言ってしまうのはどうかと思います。例えばすごく旧態依然として役所以上に役所っぽくなっていた委託財団などもあるわけです。そういうところに競争の原理が導入されてすごく活力が出たところもありますから,制度全体が悪いと言ってしまうのは,丁寧に書かないと危険かなという気がします。

【宮田部会長】どうぞ。

【田村部会長代理】一番の問題は,要するに文化施設がどういうものかという法制度が確立されていないのに指定管理者制度が導入されるということだと思います。文化施設を担っている立場では,これが一番問題なのです。そういう意味で法整備は早くあるべきだと思います。

【宮田部会長】ずっとおっしゃっていますよね,そのことを。現場にいるとわかりますが,何かその話を聞いていると,我が社の法人化の話とよく似ていて,スタートしたはいいが,何だよという感じがややしてはいるんですけれども。
 どうぞ。

【浜野委員】2ページのグローバル化とITの件なんですが,ネガティブなことも書き込んだほうがいいと思います。フランスは,自国のテレビ番組は放送時間の4割以上だし,EUの番組を入れても6割で,EUでもそれが努力目標になっています。韓国にしても,世界じゅうの国でスクリーンクオータで自国の映画の上映率を決めています。日本ほど自由に海外のコンテンツを入れている国はないわけです。中国ではゴールデンアワーに日本のアニメーションを上映できませんし,海外の映画の上映本数も強い規制をかけており,日本映画は年に1本上映できるかできないです。そういう形でどんどんグローバル化に対抗する防御的な態勢をとっているわけですから,「問題」だけではなくて,「あつれき」とか,具体的には書けないにしても示唆しておいたほうがいい。本当に日本ほど海外のコンテンツに開いた国はないわけで,自由にコンテンツのやりとりができるのは多分アメリカと日本ぐらいです。ですから,もうちょっとわかるように書かないと,グローバル化で文化の交流も本当に自由に行われているという誤解を与える可能性がここにあると思うので,配慮していただけたらと思います。

【宮田部会長】日本とアメリカぐらいですかね。

【浜野委員】スクリーンクオータを持たず,時刻のテレビ番組の放映時間の規制がないのは,日本とアメリカくらいです。

【宮田部会長】ちょっとその辺を加えてみてください。
 今度は工程表の在り方を含めて,全体にやりたいと思いますが,よろしいでしょうか。重点戦略はだんだん固まってきておりますけれども,議題2としての重点戦略の工程表の在り方,この辺を審議したいと思うので,ちょっと事務局,お願いいたします。

【滝波企画調整官】それでは,工程表ということで,資料は5でございます。重点戦略に関しては,先ほどからもご説明がありましたとおり,資料2とか4とかという形で,これまでも重点的なご審議をいただいておりましたけれども,「審議経過報告」の中では,各重点戦略の項目に関して工程表を検討するようにということが最後の検討課題のところで書かれておりまして,これをやらなければいけないというのがいわば宿題のような形になっていたわけでございます。おおむね重点戦略の項目も固まってきつつあると思いますので,ここでひとつこの工程表の案というものをお示ししてご審議いただこうということで,まずは事務方のほうでこの工程表に相当するものをつくろうということでチャレンジしてみたものがこの資料5でございます。
 ただし,表題にありますように,「重点戦略の工程表」の後ろに「(およその見通し)」という括弧書きがついております。さらに加えて,その後ろには「【イメージ試案】」ということで,少し事務局の自信のなさがここにあらわれているものでございます。それで,工程表というからには,ちゃんと年度ごとに,23年度以降,この新しい第3次方針というものを動かしていこうというつもりでいるわけですけれども,一応5年間をこの新しい第3次の基本方針の期間としてとらえているということがございますので,23年度から27年度までの間に相当するだろうということで,事務方で書いてみようと思ったのですけれども,ちょっとできが悪くて,23年度は一応書いてみたのですが,24年度から後ろはなかなか十分書き切れていないというのが現状でございます。そうはいっても何かお示ししなければということで,工程表というよりはおよその見通しぐらいのイメージでまず書いてみようということで少し書いてみたのがこれでございます。
 今,予算編成の途中でございますけれども,23年度のコアとなるような事業をそれぞれ,具体的施策を書いた上で,その後,24年度以降どのような流れになっていくのかということを書ける範囲で書いていったというものでございます。大体書いてみると,おわかりのとおり,矢印がずっと27年度のところまで伸びていくという感じで書いてございまして,現時点においてこの年度にこんなことをやるぞということが書ければいいのですけれども,なかなか書きにくいというのが現状でございます。その点は本当に反省している点です。とはいっても,何かしらお示しした上でご審議いただきたいなということで,今回この資料5のようなものをつくってみたところでございます。
 23年度の欄につきましては,先ほどご審議いただきました重点戦略の戦略目標とか評価の進め方のところで,具体的には資料4のところで重点的に取り組むべき施策ごとにそれぞれ具体的施策を書いたものがございますので,それを参考にしながら,それぞれの施策というものをどのように今後展開していくかということで書き連ねていったものでございますので,個別の施策の紹介まではいたしませんけれども,一応このような形で書いてみたということでございますので,これについて忌憚のない意見をいただけたらありがたいなと思っております。
 説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】イメージということでございますが,23,24,25,26,27と5カ年計画のような感じなんですけれども,今この中で見ると,23年度のところでいっぱいいっぱいできているという感じですが,その中でもこれだけは例えば3年計画ぐらいで持っていきたいとか,そんなことも含めて,ちょっとここで先生方のご意見等をいただきたいと思います。これも含め,基本理念等の部分も含めて,お時間を少しいただきたいと思います。約12~13分でございますが,いかがでしょうか。どうぞ,吉本先生。

【吉本委員】およその見通しのイメージ,さらにその試案ということなので,これから充実されると思うんですけれども,1点確認なんですが,これは閣議決定される文書の中に入るということではないんですね。

【滝波企画調整官】これにつきましては,資料5が工程表,見通しです。それから,資料4が先ほどご説明しました評価の進め方・指標というところです。これは,資料1をもう一回ごらんいただきたいと思うんですけれども,資料1は「答申・第3次基本方針の構成(案)」という資料でございます。もう何回も見なれた資料ですが,資料1の真ん中が今回ご審議いただいている答申と第3次基本方針ですけれども,ここのところで黒い太線で囲ったところが,答申の本体かつ閣議決定をしていただきたいと思っている部分でございます。その下に点線書きで別添として,「戦略目標,評価の進め方・指標(例)」,それから「重点戦略の工程表(およその見通し)」,それから「各ワーキンググループにおける意見のまとめ」と書いてあります。ここは,答申本体に別添としてくっつけておこうというものでございますけれども,黒い太線はその上のところでちょん切れておりますので,閣議決定されるのはこの太線の黒枠になるというイメージでございます。

【吉本委員】そうであれば,多少夢をここに書き込んだほうがいいんじゃないかという気が私はします。確かに,具体的に書こうとすると,矢印が引っ張られていて,「施策の検証と検証を踏まえた事業の改善」と,まさしくこのとおりだと思うんですけれども,何かもうちょっと書けないかなと。例えば,アーツカウンシルのところなどを見ますと,試行的取組ということで予算要求がされているわけですが,例えば日経新聞の記事ですら,芸術文化振興基金に専門スタッフを置いて,音楽・舞踊の2分野から始めて,将来的には組織の独立と書かれていますから,日経新聞の記事のほうが詳しいですよね。だから,例えば23年度,試験的な取組を2分野で始めて,翌年度の頭に検証して,ほかの分野に広げて,それで5年後には独立行政法人のことが今別途国立文化施設で進んでいますが,そこからの独立も視野に入れて検討するとか,独立すると書いてしまうと難しいかもしれないけれども,せめてそれがイメージできるようなことを記載しないと,23年度が始まってずるずるっと検証しながらいくというだけではどうかと。実際は検証しながら改善していくということにはなると思うんですが,もうちょっと具体的に書けないかなというのが素朴な印象としてあります。

【宮田部会長】ありがとうございます。先生,そうしますと,全員同じような気持ちだと思いますので,この項目の中で全部それを右側のほうへガーッと書き込むのではなくて,先ほどの佐々木先生の話などをちょっと引用するならば,その中のより特筆したいものといったものをこの中で先生方のご意見によって選んでいくようにしたらいかがなものでしょうか。全部,ところてんやくし刺しのようにぐさっと持っていくのはやめたほうがいいと思います。そのあたりでご意見はいかがでしょうか。どうぞ皆さんも,吉田次長や小松部長などもぜひこういうところではどんどんお話をいただけたらと思いますが。どうぞ。

【田村部会長代理】とても全然細かいことでございますけれど,全部を通して「劇場・音楽堂」と書いてあります。それは,基本法にそうあるということが大もとになっているのだろうと思いますけれど,「音楽堂」という言葉は全く使われないと思います。ですから,「劇場・音楽堂」を一くくりにした言葉にどこかで変えていただくかしないと,これだけが常に歩いていくという,芸大にある「奏楽堂」というものは全く固有名詞ですけれども,「音楽堂」とは絶対言わないですよね。

【高萩委員】神奈川は「音楽堂」と言っています。

【田村部会長代理】「神奈川県立音楽堂」と言っているだけですよね。でも,それは固有名称であって,普通は一般には「音楽堂」とは言わないと思います。

【大木政策課長】法律用語だということです。(笑)よくわかっているんですけれども,法律用語では一応「劇場,音楽堂」になっているということです。

【田村部会長代理】というのは基本法ということでございますね。

【大木政策課長】基本法と,それから基本法が多分引っ張られたのは,これは法律ではないんですけれども,文部科学省組織令の中の芸術文化課の所掌事務の中に「音楽堂」というのが昔から入っていると。要らないことで,申しわけありませんが。

【田村部会長代理】でも,それは直していっていただきたいと思います。

【浜野委員】その関連でちょっとお聞きしたいんですが,今気づいたんですけれども,句読点がカンマになっていて,これは古いのを見たら,昭和41年から全部カンマです。文章の句読点が,最後は「。」でピリオドではないんですけれども,句読点が「,」でなくて「,」に全部なっているんです,昭和41年から。文化庁がなぜこういうことをしているのかというのは,これも法律なんですか。(笑)いや,日本の学会論文の投稿規定ではこうなっているのが多いんですけれども。

【大木政策課長】この界隈の役所の公文書のルールで,あるときからそうなりました。私も個人的には思うところはありますけれども,従っております。

【浜野委員】文化庁だけはちゃんと句読点を使っていただいたほうが,縦書きは全部そうなっているんですけれども,古いのも全部そうなっているので,あれっと思って,これは本当に希望なんですけれども。

【宮田部会長】文化審議会の会長さんは国語の会長さんですからね。そうですか,「音楽堂」ですか。「奏楽堂」でしたね。「音楽堂」とやると,ほかのことができないんです,逆に。

【田村部会長代理】そういう意味でも,特に地方の文化施設というのは複合文化施設でございますから,「劇場・音楽堂等への支援」ということだけでひとり歩きしてしまうと,それに確か最初のうちは「地方の中核拠点」となっていたと思うのですが,いつの間にか「劇場・音楽堂等地域の拠点」となっているのです。そうしますと,それだけになってしまうというのが……。

【宮田部会長】ほかのことができないんですね。

【田村部会長代理】はい。大部分のところはもっと複合でございます,大きいところも含めて。

【宮田部会長】どうぞ。

【大木政策課長】「劇場・音楽堂」のところにつきましては,「音楽堂」という言葉が使われずに,それは「音楽ホール」であろうと,そういうレベルのものではなくて,いわゆる多目的のようなものも含めて,実態としてあるんだと。それが読めるようにというご趣旨はよくわかりました。別に「音楽堂」という言葉にこだわるものでは全くございませんので,そこはちょっと工夫してみたいと思います。
 したがって,ここの進め方の指標のところと,それから工程表につきましては,それとさらに言えば前書きなんですけれども,これらは非常に自由な世界だということになるわけでございますけれども,この工程表に関しましては,年次を追って,23年度から24年度,それから25年度~27年度とこのように「検証を踏まえた事業の改善」などと非常に横並びで年次を意識して書こうとすると,必ず表現になってしまうというところもちょっとございますので,それぞれの項目について先生方にいつごろまでに何をしたらいいのかというご示唆をたくさんいただきたいのとあわせまして,これは見ばえの問題として,このように年度を追って書くとこうなるというところもございますので,その見ばえはまたちょっと工夫させていただきたいと思います。

【増田委員】今,平城宮跡については,新しい建物ができて,大変な観光資源になっているところですけれども,あれも整備計画があって,逐次建物をふやしていくわけです。それから,佐々木館長のおられる京都国立博物館は,まさに今新しく建物を建てかえる準備が着々と整っているんですけれども,その旧館の後ろにある文化財保存施設は,いろいろな種類の工房が入っている建物なんですけれども,建物としてはだんだん不備が目立ってきて,余り使い勝手がいい建物ではないということもあるんです。そういう具体的な計画をここのところでもうちょっと何年度計画というので,まさに館長は今チャンスですので,ここでお金を下さいとかと言ってしまったらいかがでしょうかと思うんですけれども。(笑)

【宮田部会長】どうぞ。

【大木政策課長】個別の施設整備計画に関しましてはちょっとご勘弁いただくといたしまして,(笑)その工程は私らの責任で文化財機構のほうとよく詰めさせていただきたいと思います。

【宮田部会長】一応,閣議決定ということが頭にございますので,ちょっと,お気持ちはよくわかりますけれども。ほかにはいがでしょうか。佐々木先生,どうぞ。

【佐々木委員】この重点戦略1のところですが,これは大体ほぼ何らかの形で法なり制度なりの整備に深くかかわっている項目だろうと思うんです。この中で例えば「美術品政府補償制度の導入」,これはもう既に検討に入っているわけですね。それから,「国立文化施設等について,柔軟かつ効果的な運営の仕組み」,これも検討が既にスタートしているわけです。その下から3つ目の「法的基盤の整備」,これは多分,地域の核となる文化芸術拠点への支援をどのようにするか,そのための法的整備という意味ですね,ここは。違うんですか。

【大木政策課長】劇場法の話です。

【佐々木委員】劇場法の話ですか。わかりました。ちょっと私,誤解をしておりました。
 地域の核となる文化芸術拠点への支援をどのようにするかということは,地域の活性化という意味でも非常に重要なことで,これをどのように活性化するか,そのための法的整備が必要なのか,あるいは制度が必要なのか,そのあたりは早く検討のスタートにつく必要があるんじゃないかなと思うんですけれども,ちょっとこれは今は余談ですけれども。

【宮田部会長】なるほど。
 高萩先生。

【高萩委員】やはり工程表をつくってみるといろいろなことがわかってくるなと思いました。重点戦略1の1番目のところなどは,「創造発信への支援」ということで「新たな支援の仕組みの導入」になっていて,改善していくとなっていますけれども,実際は,日本版アーツカウンシルができれば,そこの部分を包括するのだろうなと思うと,この辺は結構,重点支援では2つに大きく分かれているんですけれども,どこかでは統一していくのかなというのがわかってくるのがすごくいいなと思いました。
 それで,全部についてやるわけにはいかないにしても,皆さんが自分の専門分野のところだけでもきちんと27年度まで一回書き込んでみる。今すぐにだといろいろちょっと齟齬があるので,1週間後の次回に提案させていただいて,書き込むと,もう一回重点支援のこれは言葉が違うなというのが出てくるかもしれないので,そこで少し直させていただけると非常に助かるかと思います。大きくは変えるつもりはありませんので,ぜひよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】いやいや,高萩先生,ありがとうございました。まさしくそのとおりだと思います。各専門の先生方がいらっしゃいますので,ぜひ,こうやってつなげて書くことによって振り返ると,いかがなものかということが必ず出てくると思います。ありがとうございました。滝波さん,すばらしい方向に行くよう,夢が出たような気がしますので,ちょっとその辺は,先生方には大変恐縮ですが,宿題とさせていただくということにしましょう。
 ありがとうございました。いろいろなご意見並びに宿題等々もお願いしておりますが,全体的な整理をちょっとやっていきたいと思っております。それから,先ほどのお話にありましたが,現場へ持っていくにはきちんと整備されたものでなければ文章としては持っていけませんので,その辺も検討していきたいと思っております。
 さて……。失礼しました。どうぞ。

【里中委員】全体を通してちょっと気になったんですけれども,日本語の表現能力というのを,言葉を間違えてはいけないという余り,説得力が少なくなっているとは思いましたが,仕方がないなと思っております。練りに練ってこのようになったと。ただ,いかんせん,よくわからない外来語というのは余り使わないほうが,日本型ということが前に出るんじゃないかなと思います。先ほどからずっとこれは,工程表にも「日本版アーツカウンシル」と書いてあるんですけれども,書けば書くほど,これが定着すると嫌だなという気があります。「日本版」とつけると,二番煎じという感じがしますよね。日本は日本なりのやり方,オリジナリティーというのはどこかで出てくるべきでもあるし,出てきて自然だと思うんです。ですから,日経新聞のほうがもっと丁寧で,「(芸術評議会)」と日本語で書いてあるので,だから「文化芸術評議会」あるいは「芸術文化評議会」でもいいんですけれども,日本語で言ってしまうと,それはいろいろな手続が必要なのかもしれませんが,何でも早目に日本語で表現するように持っていたほうが,一般の方の理解も早まるんじゃないかなとふと思いました。一応それだけです。失礼しました。

【宮田部会長】ありがとうございます。まさしくそのとおりではないでしょうか。「日本版」などというのは変だよね,基本的に。これはもう書かなくても結構なんですが,前にも言ったかもしれませんが,ある横審の委員会の中で,やたら「ガバナンス」と言ったら,あるメンバーが「えっ,カバがナス食っているって,それは何だ」といった話になってしまいまして,本当に冗談で言っていたんですけれども,なるべくすてきな日本語をつくりたいと思います。ありがとうございました,里中先生。特に先生は吹き出しで苦労なさっているから,よくわかります。

【里中委員】ですから,本来でしたら,許されるものならば,この基本理念のところでも,確かにこのとおりなんですけれども,2の(1)などは,「情勢の変化に取り残されていいのか」とか,そういう感じで見出しを書くと,はっとするんです。(笑)

【宮田部会長】ちょっと吹き出しっぽくやりましょうよ。(笑)ありがとうございます。後半へ来て……。
 長官,どうぞお願いします。

【近藤文化庁長官】ちょっと時間を過ぎて恐縮でございますが,資料2だったかな,重点戦略,7ページから8ページ。1つは,西村先生にご質問なんですが,すそ野を広げるということとおっしゃいましたが,それは文化財そのものの数をふやすというか,潜在的な価値のあるものをもっと掘り起こして,指定といいましょうか,ある意味では指定……。

【西村委員】登録制度がありますから,それをちゃんと活用して……。

【近藤文化庁長官】登録制度ということですね。あまねくその認識を広めるのではなくて,文化財……。

【西村委員】両方です。

【近藤文化庁長官】両方ですね。では,その文化財をふやすというのがここにないということですね。それをつけ加える。

【西村委員】登録制度を使うということです。

【近藤文化庁長官】わかりました。
 それから,すみません,2つ目は,8ページですが,これは後藤先生のおっしゃったところで,私も同感で,この「文化財建造物,史跡,博物館や伝統芸能,工芸等,各地に所在する有形無形の文化芸術資源」とすればいいのかなと思うのと,ついでにその1つ下で,「創造都市」云々で,「アーティスト・イン・レジデンス」が地域文化の振興というところに出てきますが,むしろ国際発信のほうがアーティスト・イン・レジデンスの本来の効果があるんじゃないかなと。だから,「アーティスト・イン・レジデンス」という言葉はむしろその下の重点戦略6に入れたほうが私の認識ではいいような気がするんですが,どうでしょうか,この辺は。

【宮田部会長】どうぞ。

【高萩委員】これは国内アーティストのことも入っているんだと思うんです。日本では,「アーティスト・イン・レジデンス」というと,確かに英語なので,海外から来る人を想定しますけれども,東京に集中している日本のアーティストに少し各地に行ってもらって何カ月か滞在してもらうということも考えているんだと思いますと,こっちに入ったほうがいいのかなと思います。ただ,その場合,「アーティスト・イン・レジデンス」という言葉がいいのかどうかという問題にもなってくるとは思いますが。(笑)

【近藤文化庁長官】また片仮名ですね。わかりました。

【宮田部会長】特にレジデンスは,散ったほうがいいですね。東京に集中しても余り意味がない。

【近藤文化庁長官】そうですね。

【宮田部会長】ありがとうございました。
 では,すみません,少し時間も過ぎましたので,次回についてお願いします,滝波さん。

【滝波企画調整官】次回ですけれども,資料6にございますとおり,第15回部会は12月1日(水)16:00,場所はこの3F1特別会議室で,本日の議論の続きということで,これまでの意見の整理の第2回ということでお願いしたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

【宮田部会長】それでは,これにて解散でよろしいのかな。
 どうもありがとうございました。

ページの先頭に移動