文化審議会第9期文化政策部会(第1回)議事録

1.出 席 者

(委員)

青柳委員,秋元委員,伊藤委員,太下委員,加藤委員,後藤委員,佐々木委員,里中委員,高萩委員,坪能委員,富山委員,西村委員,浜野委員,宮川委員,宮田委員,吉本委員,渡辺委員

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,関文化財部長,大和文化財監査官,大木政策課長

2.議事内容

【滝波調整官】
 これから文化審議会第9期文化政策部会第1回を開催したいと存じます。  本日は大変御多忙のところ,多数御出席頂きましてありがとうございます。私は文化庁の政策課で企画調整官をやっております滝波と申します。本日は初会合でございますので,後ほど部会長の選出を頂く必要がございますが,それまでの間,私の方で議事の進行をさせていただきます。よろしくお願いします。
それでは,まず,資料1に,この審議会の名簿を用意してございますので,この名簿に沿いまして,本日御出席頂いております委員の方々を御紹介させていただきたいと存じます。

《委員紹介》

続きまして,本日会議に出席しております文部科学省の関係者を御紹介させていただきます。

《文部科学省幹部紹介》

【滝波調整官】
 それでは,第9期の文化政策部会の部会長及び部会長代理を選任頂きたいと存じます。人事に関する案件は,非公開とさせていただきたいと存じます。まことに恐縮ではございますが,一般傍聴者の方々は一度御退出をお願いいたします。

(傍聴者 退出)

※ 部会長に宮田委員,部会長代理に青柳委員が選ばれた。

(傍聴者 入室)

【宮田部会長】
 それでは公開としますので,一般の方どうも御苦労さまでございます。いい宣伝をしてくださいね。よろしくお願いいたします。
 それでは事務局から資料4,運営規則,資料5の会議の公開について,ここはもういいのかな。
【滝波調整官】
 それでは,少し説明をさせていただきます。この審議会の概要と運営規則,会議の公開についてお諮りしたいと存じます。まず資料2は,おさらいの意味で用意しておりますが,この文化審議会の文化政策部会の位置付けでございます。文化審議会のもとには4つの分科会が常設されておりますほか,必要に応じて審議会,又は分科会に部会を置くことができることになっておりまして,資料3にございますように,去る2月28日に開催されました文化審議会総会におきまして,文化政策部会の設置が決定をされ,本日第1回の会議を迎えているというものでございます。この文化政策部会につきましては,資料3,2.調査審議事項の(1)にございますとおり,文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項について御審議頂くものでございます。
 次に,運営規則について御説明申し上げます。資料4を御覧頂きたいと存じます。資料4は,この政策部会の運営規則の(案)でございまして,ここにお諮りするものでございます。先ほども少し御説明しましたように,この審議会の議事の手続や部会の運営に関して必要な事項は,文化審議会令,それから,文化審議運営規則に基本的なことが定められておりますが,その他,この規則の定めるところによって運営をしていくものでございます。第2条のところで会議の公開が規定されております。原則として公開で行うこと。それから,特別の事情がある場合にはこの限りでないこと。それから,第2項のところで,会議の公開に関して必要な事項は,別に部会長が部会に諮って定めることを規定してございます。その他,第3条で部会の議事の手続その他部会の運営に関し必要な事項は,部会長が部会に諮って定めることになっております。これが運営規則の(案)でございます。
 続きまして,資料5をお開きください。これは,会議の公開についての(案)でございます。ただいま申し上げました運営規則のところにもありましたように,会議の公開の手続について別途定めるものでございます。資料5の1番,2番のあたりは,会議の公開について,原則として公開することの規定が書いてございます。ただし,人事に関する案件等の場合には,例外的に非公開とすることができるということでございます。
 それから,3,4,5,6,7のあたりは会議の傍聴に関する手続を定めております。会議を傍聴しようとする者は,登録を受けていただくことと,それから,登録を受けた傍聴人は,部会長の許可を受けて,会議の撮影,録画,録音ができますこと。その際には,事務局の指示に従っていただくこと。それから,会議の進行を妨げる行為はしてはいけないこと。また,それに反する行為があったような場合は,傍聴人に対して退場を命ずることがあることを規定してございます。
 それから,会議の資料の公開について8番目の項目で記載してございます。原則として公開。ただし,著しい支障のあるケースについては,非公開とできること。それから,議事録の公開として9番,議事録は原則公開とすること。これについても例外規定で非公開とすることもできること。ただし,非公開とする場合については,議事要旨を作成して,これを公開することが別途記載されております。このような事柄について,会議の公開について(案)としてお諮りするものでございます。
 資料4,資料5については,この場におきまして御決定頂けますようお願いしたいと存じます。
 以上でございます。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。公開という部分でございますので,資料4,資料5,御説明ございましたが,いかがでしょうか。よろしゅうございますね。
 はい。それでは,決定をいたします。以上のようなことで決定したいと思います。
 ここで,長官,おいでいただいております。近藤文化庁長官より一言御挨拶をお願い申し上げたいと思います。
【近藤長官】
 改めまして,近藤誠一でございます。この第9期の文化政策部会,最初の開会に当たりまして,一言御挨拶を申し上げます。
 まずは,委員の先生方,いろいろお忙しい毎日が続いておられると思いますが,そうした中でこの委員をお引き受け頂きまして,誠にありがとうございます。引き続き委員をお願いしている先生方,それから,今回新しく第9期に委員になっていただいた方々もいらっしゃいますが,後者の方々も,これまでいろいろな分野で文化庁,あるいは文部科学省,あるいは政府全体でお世話になっている方々と承知しております。どうか引き続き御指導のほどをよろしくお願いいたします。
 この第9期の文化政策部会は,前期に宮田学長のリーダーシップの下で頂きました答申,これは2月に閣議決定をされましたが,そこにございます六つの重点戦略,そこに24の重点施策がございます。そういったことを対象に,5年間の対象期間においてPDCAサイクルの確立を目指していただく,それが基本的なこの部会の役目だと了解しております。しかしながら,3.11の大震災,これまで全く予想もできなかった極めて新しい事態に直面をしております。今後,どういう形で日本全体が,あるいは世界がこれに対応していくのか,大変重要なポイントであろうと思います。特に単なるもとに戻す復旧ではなくて,この機会に思い切って21世紀型の新しい国作りをしていく,それの端緒にするといいましょうか,そういう意味で非常にクリエーティブな発想が当初から必要になってくると思います。クリエーティビティという点では文化芸術に勝るものはないと確信をしております。そういう意味で,先生方のこの部会での,あるいはそれぞれのお仕事分野での御活躍,御貢献,心から期待をしている次第でございます。
本日既に何人かの先生方からは,震災対応に関する資料,御提言等も頂いております。大変有り難く思っております。文化庁としましても,これまでの仕事の単なる延長としてではなくて,新しい国作りへの貢献という意味でできるだけクリエーティブに対応し,新しい政策を打ち出していきたい。このように考えておりまして,幾つかのこれまで行いました事業について,参考資料として配らせていただいております。この資料につきましても,いろいろ御批判,御提言を頂ければ幸いでございます。
 長くなりましたが,これから大変厳しいスケジュールで大きな問題について御審議を頂くことになろうかと思いますが,どうぞよろしくお願いをいたします。
 以上をもちまして,開会の御挨拶とさせていただきます。
【宮田部会長】
 どうもありがとうございました。今,長官からも御挨拶の中にございましたが,東日本大震災の後の初めての開催でございますので,やはり第3次基本方針の進行管理にも係る議題のところですね。やはりこの問題についてしっかりとした対応策,我々部会としては何ができるかということの意見交換もきちっとやった上で新しい対応,並びに過去のものに対する偉大な尊厳をもって進んでいきたいと,かように思っております。
 まず,そんな意味で文化庁さんから震災に対しての対応についての事務局から御説明を頂けたら幸いです。よろしくお願いいたします。
【滝波調整官】
 それでは,資料6を御覧頂きたいと思います。資料6は,東日本大震災に伴う文化芸術分野の主な被害状況についてという資料でございます。今回の震災を受けまして,様々な場面で被害が出ておりますが,文化芸術分野でも多くの被害が生じております。まず,1ポツのところ,国指定等文化財の被害状況のところでございますが,記載のとおり,現時点までにおいて,被害件数として把握しております件数としては521件ございます。内訳としましては,ここの表の中にありますように,国宝が5件,重要文化財が144件等の被害が生じておるところでございます。主な被害を受けた文化財の具体例を少し挙げておりますが,例えば一番上が国宝の瑞巌寺(ずいがんじ)の庫裏及び廊下ということで,これについては漆喰(しっくい)壁に一部崩落があったり,亀裂が生じたりというふうな被害が生じておることがございます。以下,記載のような形で多くの被害が生じております。被害が生じている地域についても,非常に広い範囲にわたっておりまして,1都1道18県に及ぶ広い範囲にわたって被害が生じておるということです。
 それから,同じくこれの2ポツのところですが,文化会館等の被害状況についてということで,各都道府県・教育委員会を通じまして,文化庁の方で把握しております文化会館等の被害状況については,ここのマル1のところ,被害の報告のあった施設としては,169の施設でございます。これについても非常に広い範囲にわたっておりますが,ただし,岩手県につきましては,現時点において御報告は頂いておりませんので,実際の数はこれより多くなるのかなと思っております。また,マル2,主な被害の中身ですが,例えばホールの天井が落下してしまったとか,舞台設備が壊れてしまったといった形の被害がたくさん生じておるという現状にございます。これ以外にもたくさんの被害があろうかと思いますが,少し資料にまとめきれませんで,資料6としては,このペーパーのような形にまとめておるところでございます。
 それから,次に,資料7としまして,東日本大震災を受けた文化庁等の主な対応についてということでございます。少し長くなりますが,ホチキス留めをしてございまして,概要については,最初の1ページ,2ページで書き込んでおりまして,その後ろにそれぞれ関連の資料を別添の形で付けた形になっております。
 まず,1つ目に文化庁長官メッセージということで,これまでに2本の文化庁長官メッセージを発出してございます。別添1をお開き頂きますと,東北地方太平洋沖地震被災文化財の救援と修復に御協力をということで,下の方にございますが,文化財レスキュー事業をこのたび行うこととしたということで,被災した文化財の緊急避難に尽力をしたいということのメッセージが書かれております。また,次のページを御覧頂きますと,文化庁としても,これらの事業を進めていくために,既定予算の活用,補正予算での計上等の取組を進めていきたいということが書いてございます。このあたり,先ほど長官の御挨拶の中にもあったとおりでございます。また,こういった取組を更に充実するために,国を挙げての取組が必要ということで,寄附金や義援金を募集したいということの案内も書いてございます。
 それから,2つ目の文化庁長官メッセージについては別添2として,当面の文化芸術活動についてというメッセージを4月12日に発出しております。これについても,先ほど長官の御挨拶の中にございましたとおり,文化芸術というものは,本来私たちの心に安らぎと力を与える。そして,地域のきずなを強め,明日への希望を与えてくれるものだということで,全国各地の活発な文化芸術活動によって国民一人一人が活力を取り戻すことが,日本全体の元気を復活させるために必要なんだといったメッセージを発出するものになってございます。そういったことで,文化庁は,従来の文化芸術振興策を積極的に推進するとともに,被災地の復興と歩調を合わせながら,現地での文化芸術活動への支援など,被災された方々を勇気づける取組にも意を用いてまいりますといった趣旨を記載したものになってございます。
 資料7の1ページ目に戻りまして,次に,2つ目の項目,文化財調査官の派遣ということで,これについても,先ほど申し上げたように,たくさんの文化財の被害が生じております。これについて,各教育委員会から要請があった場合に順次職員を派遣するという対応をしてございます。その際には,被害に遭った文化財の応急措置など,緊急性が高いものから対応してきているところでございます。これについては,別添3に,これまでに派遣をしてまいりました実績を記載してございます。3月17日以降,順次各地域に出向いておりまして,これまでに131件の調査を行ってきているところでございます。
 続きまして,資料7の1ページ目に戻りまして,3つ目として,重要文化財等の滅失,毀損の場合の届け出義務の期間延長というふうな取組をしてございます。また,次の項目,4つ目,埋蔵文化財調査の弾力的な運用について。この3と4については,県の教育委員会向けに通知を発出することによって,円滑な現地での取組ができるような支援を講じているところでございます。
 次に,2ページ目のところに入りますが,5ポツの文化財レスキュー事業というものがございます。これは,別添4の裏面のところに具体的な構成図が書いておりますが,このような形で文化財の避難をするということで,東京文化財研究所を事務局としまして,被災文化財の救援委員会を組織しまして,国立文化財機構や文化財・美術関係団体,各教育委員会が協力して,緊急に保全措置を必要とする文化財の救出,応急措置,博物館などにおける一時保管を行う文化財レスキュー事業という形の事業に着手しているところでございます。
 それから,今,別途資料をお配りさせていただきたいと存じますが,ただいまの文化財レスキュー事業と並ぶ形で,文化財レスキュー事業は,動産の文化財を対象としてございますが,不動産の文化財についても,同様に支援を講ずるというための取組をこのたびすることといたしまして,その支援の事業に取り組むこととしてございます。また,資料の方を御覧頂きたいと存じます。
 それから,6つ目の項目に入りますが,国立文化施設の対応についてということですが,国立の各文化施設につきましては,公演や展覧会について,ここに記載のような形で対応しておりますし,その他にも,特に都心の施設につきましては,震災発生当日の帰宅困難者の受入れであるとか,あるいは被災地向けの支援物資の提供であるとか,あるいは被災地支援のための募金箱の設置など取組を講じております。特に展覧会・公演の予定につきましては,当初の予定が少し延期をするとか,一部中止をするというようなことの対応を余儀なくされた部分がございました一方で,被災地向けの支援ということも積極的に行っております。詳しくは別添5に記載のとおりの取組をしてございます。
 この他に机上資料8、9のところで,先日の中央教育審議会が開催された折に取り組んだ文科省全体の取組状況についてもございますので,これも適宜御参照頂きながら御審議頂けたらと存じております。
 説明は以上でございます。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。今までの中で文化財レスキュー隊も含めて積極的な,私どもが何をしたらいいかというふうなことに関しての御説明を頂きました。それから,文化庁としても,そういうことをなさっていたということでございました。
 それで,本日,御出席頂いている委員の方々からも御意見を頂いております。大変短い時間で恐縮なんですが,3分程度で御発言を頂ければと思っております。
 最初に,青柳委員からお願いできたら有り難いんですが。
【青柳部会長代理】
 今回の震災,それから,一番我々にとって気の重いのは,むしろ原発の事故だと思いますが,そういうことが起こった上で,私たちの社会というものをもう一回見直して,そして,更に柔軟性のある,あるいは耐久性のある,あるいはサスティナブルな社会をどう構築していくかということが恐らく我々に課せられていることですし,次の世代の方々に少しでも負担を取り除いておくということが世代継承の基本じゃないかと思っています。そういう意味で,是非この部会で様々な意見が出ることを期待しております。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。8名の委員の御発言をお願いしたいと思います。伊藤委員からスタートしていきたいと思いますが,暫時この並びの関係で動いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【伊藤委員】
 どうも,伊藤でございます。このたびの震災でいろいろ心を痛めておりますが,たまたま16年前の阪神・淡路大震災のときに,企業メセナ協議会を中心に大阪のコミュニティ財団と共同の形で被害調査を行ったことがございます。今日お手元にその表紙,目次,それから,その分析編についての部分だけをちょっとコピーを取らせていただきましたが,こういった形の冊子でまとめて,大体半年後ぐらいかけて報告したことがございます。
 そのときの視点の中で,今,文化庁の方から主に物的な,あるいは施設等々に関する被害状況が明らかになったのは御報告があったわけでございますが,このときの調査においては,大きく人的な被害,それから,物的,施設的な被害,それから,事業の中止,これらはもう直接な被害として捉え,それのほかに間接的な被害として,もう一度2か月,3か月,時間がたってくると見えてくる被害の中に産業基盤,市場だとか,需要ですが,そういったものが縮小していくという問題。したがって,仕事が無くなってくるというような問題ですね。あるいは文化行政自体の在り方が問われるといった問題。今回は長官名でこれから先の文化芸術活動について,萎縮せずに大いにやった方がいいんじゃないか,それこそ文化の役割じゃないかという通達が出たことは非常にほっとしたわけでございますが,なかなか萎縮してしまう現象が16年前には見られました。
 また,チャリティーが非常に増えてきて,これ自体はすばらしいことなんですが,しかし,一方で,チャリティーには常にジレンマというものが付きまとっている。こういったことを指摘して幾つかの提言を出させていただきました。今回,神戸と比べますと,非常に広域にわたるという問題,あるいは対象となるべく文化が,神戸ですと,いわゆる芸術文化というものにかなり集中していたり,あるいは奈良,京都がございましたので,文化財等々があったわけでございますが,今回の場合には,例えば伝統文化だとか,お祭り,伝統工芸,様々な,まだまだ表面に上がってこない問題もあるんじゃないかと思っています。こういう問題についてどういった形で考えていくか。前回の調査をもとに,今,私がたまたま関わっている学会,後藤会長がいらっしゃいますが,文化経済学会,あるいは文化政策学会,アートマネジメント学会,こういったところの学会共同で何か取組ができないだろうかということについて,相談を始めたというのが現状でございまして,とりあえず何かの参考になるかと思い提出させていただきました。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。それでは,太下委員,お願いします。
【太下委員】
 太下義之です。
 お手元に配付されております,「記憶のミュージアム」に関する提案という資料にのっとって御説明をさせていただきたいと思います。最初に提案の背景を書いてございます。たまたま私が今回の震災報道のテレビ番組を見ているときに,報道レポーターの方が被災地で家族のアルバムを拾われるシーンを見まして,もしもこのアルバムの所有者の方々が津波で流されてしまったら,このアルバムはどこへいくことになるのだろうかと,思いました。アルバムは単なるごみになってしまうのだろうかと。いや,ごみになってしまうのはおかしいだろうと,こういうふうに思ったところが発想の発端になります。
 ここで御提案したいと思っているこの「記憶のミュージアム」というものには,3つの大きな社会的な機能が求められるのではないかと考えております。1つは,歴史博物館のような機能,2つ目は,ヴァーチャル・ミュージアムのような機能,そして,3つ目は,フィールド・ミュージアムのような施設,こういうイメージで考えております。
 順に御説明いたしますと,まず,歴史博物館のような機能といいますのは,先ほど申し上げた家族のアルバム,ここに直結する内容でございます。地域では,既にこういったアルバム,写真等を泥の中から拾い出して洗って持ち主に返すという,「思い出探し出し隊」というボランティア活動も進んでおりますが,こういった写真の中には,引き取り手がないものも多数出てくるかと思います。こういった写真,又は非常に思い出深いような持ち物を対象に,記憶にまつわる品々を是非ミュージアムのような機能で保管していくべきではないかなと考えております。
 余り世界的にも事例はないのですが,私が調べた中では,南アフリカのケープタウンで,アパルトヘイトという歴史的背景があったわけですが,強制移住されてしまった地区の住民の記憶を残していくために「ディストリクト・シックスミュージアム」というものが作られているという記載を拝見いたしました。
 この「記憶のミュージアム」の2つ目の機能といたしましては,ヴァーチャル・ミュージアムのような機能です。東日本大震災で,直接に被災された方々の記憶だけでなく,この地域をかつて旅行した人が撮影した写真やビデオ,又はいろいろなテレビ番組や映画で,かつてのありし日の美しいこの地域の映像というのは多数残っているかと思います。こういったものをインターネット等で収集して,公開していくことも,この地域の記憶を残していく意味では非常に重要なことになってくるのではないかなと考えております。
 これについても余り似たような試みは世界にないと思いますが,イギリスの公共放送のBBCでは,かつて放送した番組について,「クリエイティブ・アーカイブ」として視聴者に公開して,視聴者がそれを自由に編集したりできるようにしているという事例もありますので,こういった仕組みを参考に,ここからまた新しいクリエーションが生まれてくるような仕組みというのもあっていいのではないかと思います。
 3つ目の機能は,フィールド・ミュージアムのような機能ということです。今回の震災と津波によって,海岸線沿いが地盤沈下して,又は水が引かない地域が多数ありまして,こうした地域については住民が安全な高台に移って復興するというプランが復興構想会議で出ているという新聞記事を拝見いたしました。こういった場合では,もともとのコミュニティがあった地区はどうするのかということになるわけですが,仮に,もしこういうことが現実にプランとして進むのであれば,このかつて人が住んでいた地区につきましては,国立公園のような地区として整備するということも一つのプランとしてあるのではないかと思います。これは実は,イタリアのシチリアで大地震があったときに,ジベリーナというコミュニティが完全に崩壊して,新しいニュータウンに移ったという事例があるようで,かつて住んでいた地区が丸々,記念公園的になっているという事例がございました。
 また,背景は全く異なりますが,地域やコミュニティに対する災厄があったということ,そして,これを語り継いでいくという施設としては,沖縄の戦跡国定公園もございますので,こういった形で地域の記憶,そして,これが人類,日本人に対して及ぼしたことを明確な記憶として継承していくという機能が何がしか必要ではないかと思います。このような考えに基づいて,ここに「記憶のミュージアム」という形で提案をさせていただきました。御検討頂ければと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。非常に具体的な過去の事例も含めまして,いい表題ですね,「記憶のミュージアム」。ありがとうございました。いい御提案を頂きました。
 それでは,加藤委員,お願いいたします。
【加藤委員】
 御報告をさせていただきます。資料は2点ございますが,A4,2枚と,その後にA4,1枚を付けさせていただいたわけですが,両方が幾分関係をしておりますので,話の流れから,2つ目の資料のA4,1枚のものをまず御覧頂きたいと思います。東日本大震災に対するAAFの取組ということで,「アートによって結ばれた仲間たちを応援するために」という題を付けて文章を書かせていただいております。たまたま私ども会社を含めた全国のアートNPO,市民の団体が共同しているフェスティバルのプロジェクトがございまして,この関連プロジェクトは,先般4月2日にあえて開催をさせていただいて,そこに近藤長官御夫妻もお運び頂きました。大変ありがとうございました。全国でやっているということはどういうことになるかというと,今回の被災地に数多く我々の仲間が含まれています。そうしたプログラムをお互いのNPO同士が支え合う仕組みをまず作りました。まだほんの僅かな金額ですが,これはそれぞれの人たちで相互に助け合うためのものです。資料の裏側を御覧頂きたいのですが,「きりこ」ワークショップの開催ということが書いてございますが,南三陸町,この最も被害が大きかった南三陸町で昨年たまたま開催をされた一つのアートフェスティバルがございます。これは,私も去年の夏,この現場へ訪れて,御一緒にこのプロジェクトをさせていただいたんですが,最後に駅に送りに来ていただいた観光課の三浦課長は今回残念ながら亡くなりました。そんなことがあって,何としてもこの人たちを悲しみに寄り添うというか,心を奮い立たせるような活動を我々として支援しなくてはならないということで,全国で「きりこ」の活動を広めようということも併せてやっていきたいという,これが一つでございます。
 もう一つは,民間で民から民へのお金の流れを作るという公益法人の改革の流れもありましたので,資料1の方でございますが,企業メセナ協議会で新たにファンドを作りました。これは義援金というものではなくて,活動への支援金を何とか応援をしたいという形でファンドを作って,この間の4月18日に第1回の支援先,まだこれもそれほど大きなファンドになっておりませんが,連休明けには幾つかの企業から振り込みをしたいというお申出を頂戴しているので,一気に連休明けぐらいからお金は増えると思うのですが,具体的な事例がないとなかなか皆さんお金が出しにくいということもあったので,早く支援先を選ばせていただいて,11件,そこに書いた支援先を選ばせていただきました。この中には重なっておりますが,先ほど紹介した南三陸のものとか,あるいは地元で開催しておられるもの,また,遠くから,ほかの地域から応援に駆けつけていただいている芸術団体への支援ということも含めて考えているわけですが,こうした支援のシステムを作って,5年程度は運用していこうと思っています。更に発展させて,幅広い芸術文化への支援のためのファンド作りとも結びつけようということも視野に入れているところですが,そうした活動を始めたということで御報告をさせていただきました。ありがとうございました。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。もう具体的な部分も含めまして,5年というのが一つの大きな区切りかもしれませんね。ありがとうございました。
 さて,それでは,高萩委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【高萩委員】
 ARC>Tと書いてある資料ですが,ちょっとめくっていただいて11ページを見てください。東京芸術劇場は3月11日公演を幾つか行っていまして,そのうちの1つで二兎社さんの永井愛さん作,演出の「シングルマザーズ」の公演をやっていたんですが,その公演が4月には東北の方での公演を予定していたんです。しばらく連絡が取れなかったので,仙台のすぐ横のえずこホールというところの劇場なんですが,公演は難しいだろうと思っていましたところ,途中で連絡が取れて,劇場としては余り損傷してないということで,是非公演に来てくれということになりました。道路も開通しましたので,一度見に行きまして,それで,公演としてはできそうだということになりました。ただ,有料で公演をするということは難しいだろうということで,会場の方とも話して無料公演をやることになりました。本当に4月12日,公演やったときの記録をちょっと御報告させていただこうと思います。
 11ページにあるような状況で無料の公演をして,避難所に来ていらっしゃる方,原発からの避難の方が多かったと言っていましたが,避難所の方たちも参加して無料で公演を行って帰ってきたところです。後ろの方に,幾つかアンケートの記述,本当に生な被災者の方の声とか,それと一緒に新聞の記事が付いています。
 それから,前の方のはえずこホールの責任者の方で,今現在,現地で活動しているのはどんな活動団体がありますかということに対して,ART REVIVAL CONNECTION TOHOKUというのと,それから,5ページに出ています子供と歩むネットワークという活動というのをしているので,こういうことを紹介してほしいということだったので,御紹介します。現地でこんなことが行われているという状況です。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。一つ一つ生の声がここから響いてくる感じがいたします。ありがとうございます。これは何と読んでいいんですが,とても素敵なんですけど。
【高萩委員】
 私もネットで送られたので,ちょっと読み方が分からないですが,アルクトジェーピーと言うのかな,ちょっと,ごめんなさい。すいません。
【吉本委員】
 アルクトと呼んでいると思います。
【宮田部会長】
 いいじゃないですか,一歩一歩歩いていくと,アルクト。ありがとうございました。
 それでは,次にいかせてもらいます。坪能委員,お願いいたします。
【坪能委員】
 実際に東日本大震災の状況を現場に行って聞き取り調査してきたこと,一部ですが,ここに書かせていただきました。大災害のときに文化芸術ってもう頭真っ白で,とても何の役にも立たないんじゃないかと言われながらも,やはり大きな力になっているということを実際に報道等でいろいろ我々は耳目にする。それから,調査できることはあると思うのですが,あの空気とあの臭いというのは現地に行かないと分かりませんで,その中で子供たちがいるので,主にそういうところから現時点のことを聞いてまいりました。
 これは時間によってどんどん変化するので,1か月ちょっとたったところの状態だと思います。建物の方は,もう資料にもございますように,かなり損傷が大きいところが多くて,これは修復に時間がかかって,それぞれ各自治体の予算も踏まえながらも修復に努力しているということです。もう一つは,そのソフトの面ですが,文化施設自体壊れてしまって,とてもそのソフトを動かすというようなところにもいかないし,また,その職員の人も,避難民の対応でとてもほかのことに手が回らないというところもございます。ただ,一生懸命やっている地域もありますし,施設もありまして,そこは文化庁のこれまでの助成企画の中で展開してきたものが地について地域で生きているなという実感をいたしました。それはボランティアの人たちと地域の文化施設,あるいは文化団体の人たちがスクラムを組んで,GDを展開しているようでした。
 発生から2,3週間ぐらいまでは,もうとてもそんな歌を歌うどころではないんですが,現在,第2期になっていたようで,それは各文化施設で子供さんたちと対面している人たちは,子供は元気に振る舞っているんですが,傷は非常に深いと。子供のケアが今一番必要であると。子供が元気になると,大人も元気になるし,日本も元気になっていくだろうと。今,ちょうど元気の共有が欲しい時期で,歩み始めていることなので,そのサポートを残されたといいますか,まだ活動ができる文化施設は一生懸命努力しております。これは教育委員会も一緒になってやっているところもあるんですが,教育委員会自体は,学校がグラウンドも含めて,もうそういうハードの方にまず充実させなきゃというようなところですので,なかなかソフトまでいかないんですが,芸術の力をもっていやす力が欲しいというのは,いろいろな町で直接望まれていることです。そういうボランティアの人も含めた種まきというのを,再度,現在一番大変なときに実施していくことが必要なのではないかと思っております。
 それで,いろいろなボランティアも一生懸命やっているんですが,会館も,ソフトでもって避難所に行ったりして励ましたりなんかしているんですが,やはりソフトといっても,ボランティアといっても限界がありますし,遠隔地の子供たちにはなかなか手が届かない。こういうところに対して,キャラバン隊でもいいんですが,こういうところのアウトリーチがなれている。ただ,行って一方通行ですばらしい芸術を聞かせるというレベルではございませんので,彼らたちの声も聞いてくれるような,そういう活動を展開できるようなことをやはり至急組んでいかなければいけないんじゃないかと。そういうようなときにどうしても少しお金が足りないので,自治体だけに任せていることもできませんので,こういうことに関した企画に対する予算は少し頂ければと,こう思っております。
 また,もう一つなんですが,それぞれの専門があると思います。私は,こういう,何というんでしょう。災害のときのケアの方の専門家じゃございませんが,そういういろいろな人たちが実際に2か月後,3か月後,あるいは半年後,1年後にどういうふうにして文化芸術と一体になって復興していくかというようなことをきちっと調査して,これは財産になると思いますので,また,その評価というものは,ここでアーツカウンシルも立ち上げていくということになりましたので,そういう母体の資料にもなると思いますので,それもお願いできればと思います。以上が直接の聞き取りの御報告です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。生々しい現場でのお話も含めまして,ありがとうございました。
 それでは,次に吉本委員,お願い申し上げます。
【吉本委員】
 私の方から2つ御紹介したいと思います。資料の[1]ですけども,これは毎年,全国アートNPOフォーラムというのを開催しておりまして,昨年度は3月18日から開催の予定でした。11日の震災の後,果たしてやるべきかどうかということが議論になって,中止すべきではないかという意見もあったんですが,こういうときだからこそ集まれる人だけでも集まって,アートやNPOで何ができるかを話し合おうということでフォーラムを開催しましたそこでの議論を受けて,4月初旬にアートNPOリンクというNPOが母体となってこのアートNPOエイドというプロジェクトといいますか,プログラムが立ち上がっております。
 お手元の資料はそのホームページの画像なので,ちょっと見にくくて恐縮なんですが,プログラムは全部で4つあります。1つは,活動支援プログラム。これはこのアートNPOエイドが寄附金を集めて,現地で様々な活動を行おうというアーティストやNPOに資金を提供し,また資金以外の様々なサポートもしようということです。資金も徐々に集まりつつあり,具体的なプロジェクトも幾つか手が挙がっておりまして,追い追いそういう具体的な活動が始まると思います。
 それから,2つ目が伝えるプログラム,資料の5ページです。これは,現地で特に芸術文化という視点から見た取材をしまして,それをホームページ上で紹介しようというものです。お時間のあるときに是非御覧頂きたいのですが,6ページ,7ページに少しサンプルを出しております。文字が小さくて恐縮なのですが,6ページは,大変な被害を受けた南三陸の話,それから,7ページは,NPOが現地に入って,避難所になっていた宮城県の山元町の役場で,小学校5年生が段ボールに書きつけた詩というのを取材したものです。ちょっと読みますと,「見わたせば何もない。そこにあるはずの風景,思い,ぜんぶない。でも,そこにあったものを取り戻すためにがんばっている。ぼくたちにはまえとちがうが必ずいいものが帰ってくるだろう」という,ちょっと泣きたくなるような,非常にたくましいメッセージを被災地の子供たちは書いているという,こういうふうな情報提供もこのサイトで積極的にしていこうということです。
 その他,表現の回復プログラム,つなぐプログラム等,現地と協力してNPOの立場から様々な活動を作り上げていこうというプロジェクトです。
 それから,もう一つの[2]の方ですが,これは,直接アートプロジェクトと関係ないかもしれませんが,興味深い取組なので,ちょっと御紹介したいと思います。御存じの方もいらっしゃるかと思いますが,音楽家の坂本龍一さんを中心に,2007年に環境問題から始まったmore treesという植林のプロジェクトがあります。そこが新たに『LIFE311』という,木造仮設住宅を被災地に届けるというプロジェクトを立ち上げております。仮設住宅は,御存じのようにプレハブでできるだけ早くたくさん供給しなきゃいけないということがあるわけですが,そうした考えとちょっと一線を画して,地元の人たちの手によって,地元の木材を使って,プレハブにはない木のぬくもりのある住宅を提供しようと。つまり,仮設住宅を造ることで,現地での雇用とか仕事が生まれ,お金も流れ,なおかつそれが現地の森林の保全,育成にもつながるというような,アーティストならではクリエイティブな発想でこういうプロジェクトが始まっているということで,御紹介させていただきました。
 それから,資料はないのですがもう1点だけ。今日は欠席されておりますが,内閣官房参与の平田オリザさんが現地にアーティストを派遣して,先ほど坪能委員の御発言にもありましたが,子供たちの心のケアをしなきゃいけないだろうということで,ネットワーク作りを始めております。今,三,四十名ですかね,現地の方はじめ,演劇関係者の方々でネットワークができつつあります。ただ難しいのは,決して押しかけ,押しつけになってはいけなくて,現地の事情を踏まえなきゃいけないということで,慎重に進めようということなんですが,そうした動きもありますので,併せて御紹介させていただきます。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 私でございますが,東京藝大としては,まず,この1ページの裏表にございますが,保存修復の日本画研究室助教授の並木さんがまずリーダーをとって,地域復興,都市計画,それから,有形文化財のレスキュー,それから,保存修復に係る協力,それぞれをまず旗を上げました。同時に,裏面でございますが,建築科の方でございますが,地域復興,都市計画,インフラの整備をどうしたらいいかというふうなことは,非常に積極的に彼らが現地へ行っていろいろやってくれています。
 ただ,ここで第3次災害が今起きています。というのはどういうことかというと,当然当事者の被災された悲惨な人たちがいるわけですが,うちの若者たち,非常に芸術を志してやっている子たちというのはすごくナイーブで,1週間ぐらい頑張るんですよ。でね,頑張れるんです。でも,1週間が限界なんですね。その後,帰るときに彼らが確実に心が痛むんですね。つまり,もう帰った日の3時間後には彼らは風呂に入れるんですよ。だけど,それまで一緒に頑張っていた現地の人たちは入れないんですね。そのギャップがあって,誰に,もうここまでやったんだけど,その次の週はあなたに頼むよ,と頼むことができてないんですね。もしそれがあれば,例えば私が今週やったと。来週青柳委員,頼みますねっていうふうな,で次は,秋元委員にお願いしますよね。それぞれ違いますよね。その違いがあっていいんだけど,タッチができる。このバトンタッチのできる環境を作ってないために,行った連中が帰ってきてから,彼らのケアをすることが今,すごく大学の中で問題になっています。皆さん勇んでいくんですけど,帰ってからは被災した人たち以上につらい思いをしていて,あっ,ここの部分はとても考えなきゃいけないなという感じがいたしました。
 ですから,今後,もっともっとそういう問題が出てくると思うのですが,大きな意味でこの文化庁さんあたりがどこかでそういうタクトをもって,もちろん私どもがそれに対して知恵を出しながら,ここからはあなた,ここからはBさん,ここはCさんというふうにもっていけるような何かができたらいいのかなと。これはまさしく生の声としてきたものに対しての発言が非常に強くありました。
 あと,具体的なその支援の問題,それから,資金の問題等々に関しては,当然もう皆さんお考えになっているものとほぼ同じようなことでございますが,そういう災害が現地ではないところで起きかけてきているという部分に対しては,まさしく文化芸術がそれをケアできることではないかなという感じがいたしております。向こうへただ持っていくだけではなくて,そういうこともちょっと考えております。
 ありがとうございました。それでは,一日も早い被災地の復興に向けて,私どものやるべきことなどについて意見交換等をしていきたいと,かように思っております。
 文化庁さんから御紹介頂いた内容でも何でも結構です。それに対しての御質問でも結構でございますが,ちょっと意見交換をしたいと思います。いかがでしょうか。後藤委員,お願いいたします。
【後藤委員】
 後藤です。資料を用意してなくて申し訳ないのですが,私は,今回の被災は非常に広域であるという点で阪神・淡路とは全然違う。私は,17年前大阪にいたので,阪神・淡路も間接的に経験しているんですけど,全然違うと思っているのと,やはり原発の問題があって,物事をより複雑というか,深刻にしている面があると思うのですね。この原発はものすごく,この問題が起きてから日本から外国人がどんどん出ていってしまうとか,それから,日本に来なくなっているとか,それから,国際会議が軒並みキャンセルというようなことで,国の在り方とか,外交と非常に深く関わっていろんな問題を提起しているように思うのです。
 それで,美術館で借りようと思っていた作品が,どこの国か,放射線に汚染されるのではないかと言って貸してくれないとか,それから,アーティストで来てくださる方もいるが,来ない人たちもいるとか。少し文化の分野でもそういう国際的な社会の中で起こっていることについて,どのように考え,どういう発信をしていくべきなのかということも,この場で少し議論したり,考えたりできないかなと思っています。
 それで,私自身,国際会議,学会を来年京都で開催するんですけど,来年の6月に京都でやる学会についてさえ,非常に私は心配していて,もう原発の事故が起きた当初から国際学会の理事とはずうっとやり取りをしてきていて,今のところ京都での開催については揺るぎない,自信を持って進めてくださっているんですが,それでも心配で,実は観光庁長官名であのレターを書いていただいたというようなことで応援を頂いたりしています。それから,文化庁さんにも応援を頂いているんですよというふうなことで,国際学会の次期会長に対してメッセージを発しているというふうなことがありますので,少し文化に関わっている分野,それから,国際的な関係の中で何か私たちができることはないのかなということを少し議論できればと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。
 先ほどの文書以外の方でいかがでしょうか。浜野委員,どうぞ。
【浜野委員】
 2点あります。太下委員の「記憶のミュージアム」は,ホロコーストミュージアムなどで使っている言葉なので,使用には注意された方がいいと思います。アメリカではワシントンD.C.とロサンゼルスにあります。それを参考にして南京の虐殺ミュージアムも作られたはずです。 それと,もう一つは,宮田委員がおっしゃったように,もちろん当事者の方が一番大変なんですが,当事者以外にも大きな影響を与えています。物理的なものは震災でひとたまりもないことを目の当たりにして,遺族など,民間で保有している文化資料を処分しようという動きが急速に起こっています。特に海外から引き合いのあった映画に関する文化的資料が大量に売られていることが起こっています。周りもちょっと配慮していただければと思います。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。西村委員,どうぞ。
【西村委員】
 西村です。復興に関して1つ心配をしているんですが,今から津波に遭ったところがこれからいろんな形で復興していくと思うのですが,復興が,大変なお金が入って,また,様々な議論がされて,公共事業がたくさん投入されると思うのですが,文化の視点でもう一回,町,例えばお祭りですとか,神社の位置とか,非常に重要なものを大事にしたような復興計画を立てるということは,我々の側で何か発言していかないと,なかなか誰も発言する人がいないんですね。特に今回の津波の場合,ちょうど神社の位置ぐらいで津波が止まっているところが結構多いんですね。そういうところに神社を造っているわけなんですが,ということは,これから先の復興に関しても,そうした昔の知恵を大事にしていくということは非常に意味があるんじゃないかというようなことをいろんな形で言うべきじゃないかというのが1点なんです。
 それから,もう一つは,工場のサプライチェーンのことを言われますが,文化財の建造物の材料みたいなものも,問題になってきているところがあって,茅(かや)ですとか,それから,一番典型的なのは,今,東京駅の復元をしておりますけど,あれの屋根材はスレートぶきなんですけど,スレート材料が雄勝町(おがつちょう)というところの石なんですけど,それが全部流されてしまって,一時JRはそのスレートの屋根材を全部海外で調達しようとしているんですね。流されたもののかなりの部分は今,ボランティアで取り戻しまして,ただ,潮がついているので,それを本当に使えるかどうかというのは,洗い流すボランティアみたいなことも今,始まっているんですね。その意味では,そうした建築材料で非常に伝統的なものは東北が供給源になっているところがありますので,そうしたものを大事にしていくということも,何かこういう場から発信していくということは非常に大事じゃないかなと思います。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。たしか,こいのぼりがね,ぱっとあの大災害の空間の中にたなびいたときに,やはり心の何か,力強さみたいなものをちょっと感じましたよね,マスコミの中にありましたけどね。ありがとうございます。
 いかがでしょうか。はい,秋元委員,お願いします。
【秋元委員】
 一つは,海外からの日本の見え方,印象の変化についてですが,情報が交錯する中で誤解が生まれないようにしていく必要がある。これは震災の問題というよりも,それによって引き起こされた原発問題が大きく影響していると思いますが,東京の外国人の多くが国外へと脱出している,あるいは関西方面へと移動している。海外から日本へビジネスあるいは観光で来日予定の人たちは,被災地以外の場所であっても日本ということでキャンセルが続いています。これまで予定していた海外との文化交流,展覧会も難しい状況になりつつあります。情報をそれぞれ関わっているところからきちんとした情報を伝えていく必要がある。
 もう一つは,被災地の文化的な面での地域再生にどういうふうに関わっていくかということ。最初は防災などに重点を置いた都市計画が再考されるでしょう。また,経済的な復興が優先されると思います。その後,コミュニティの再生や心のケアの問題等も出てくるでしょう。ハード面の整備を検討していく中で,先に挙げたようなソフト面というか,文化面をどのように入れ込んでいくかということも検討していく必要があるでしょう。NPOやボランティア活動は活発に動いていくでしょうけれど,それをどのように広域的に連携させていくかなど,いろいろ課題がありそうです。
 あと,もう一つ,現地との関わりを持っていくにしてもタイミングの問題もあるし,継続性の問題もある。いろいろ細かな動きが出てきた時,どうやって大きな都市再生計画なり,地域再生計画なりにそれらを生かしていくかといったことも考えていく必要があると思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。ちょっと私ごとで恐縮なんですけど,昨日の夜,北京から帰ってきたんですけど,清華大学の100周年の記念事業で,私は美術の方の代表で行ったんですが,行った途端に,皆さんは,ああー,震災の中,けがを押して,いや,違う違う。私のけがは自分の作品を作る勝手なけがなんですがって。全員がそう言うんですね。そのぐらい向こうの方は誤解をしています。これはしょっちゅう行かなくてはいかんなと。こちら側から遠ぼえをしているくらいじゃ駄目だな。元気なんだというふうなことと,直接的なメッセージを言うということも,これはとても大事かなということを思いながら昨日帰ってまいりました。
 さあ,それでは,いかがでしょうか,どなたか。また,宮川委員,じゃあ,ひとつお願いします。
【宮川委員】
 せっかくなんで,ちょっと発言しようかなと思いますけど。
 最近,オーケストラのことでちょっとお話ししたいんですけれど,とてもいい演奏を東京のオーケストラが最近しているみたいです。とても,何というんですか,今こそ芸術の真価が問われるというか,その内容がとても問われるところだと思うのですね。単に受けようと思ってやっている。いろんな商業的なことを第一にやってきたのか,それか,もっとこの自然災害なども包括するぐらいな大きな目で見通した何か本当の芸術というものを見渡して作ってきたかという意味では,すごく僕らは今,真価が問われていると思うのですけれど。でも,そういう中でオーケストラがとてもいい演奏をしている。何のためにブラームスはこのフレーズを書いたのか,ベートーベンは何のためこの響きを作ったのかということを,とてもリアルにという言葉はちょっと使いたくないですけど,真実みをもって感じながら演奏できているということをよく耳にします。
 つまり,こういうときは,僕ら芸術家にとってはものすごく深い考えをするきっかけを与えられているに違いないんですね。この毎日目の前に起きている事象が,事柄がもう本当に,それ以前の,平和ぼけってよく言われていましたけど,そのときと全く変わっているわけで,そのこと自体は全く,現場は大変だと思います。だけど,こうやって長い目で見て芸術を作っていく,大きな視野で芸術の中に何かを込めていくものとしてはとてもいい,とてもいいなんていう言葉もふさわしくないでしょうけれど,すごいチャンスだと思っております。
 それでね,いい話が一つだけあって,札幌交響楽団の指揮をしに行ったんです。そしたら,彼らは全然被害なかったんで,仙台フィルのことをすごく気にしていました。で,楽屋の裏で,実は仙台フィルは大変なんだという話を,僕はちょっと仙台フィルには行ったことがなかったんですけれど,それで,コンサートの最後に義援金の箱はいろいろあるけど,実は,札幌交響楽団は仙台フィルのことを本当に心配しているんだ。だから,箱が2つあるから,もうこっちの募金箱に入れ飽きた人は,こっちも入れてあげたらどうですかと言ったら,本当にたくさんの義援金が集まって,それは本当に,こうやってたくさんここにやってくれ,あれ,やってくれって文字で見るのもいいんですけれど,現場の本当に声としてね,痛みのわかる人間がこいつにちょっと今,援助を与えてくれということを言うのは,すごく効果的というか,非常に胸がすっきりするような思いがしました。ありがとうございます。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。そういえば,もうあちらこちらで義援金のお願いがありますよね。そのときに最初はもう意味なく,僕,どんどん出していましたが,そろそろこれはどこへいくんだろうという,今,宮川委員のお話じゃないですけど,これがあそこにいってくれたらとかっていう目的意識が今度は逆に出てくるというのはとても感じますね。ありがとうございました。佐々木委員,お願いします。
【佐々木委員】
 先ほど文化財レスキュー事業の話が出ておりましたが,これは,むしろ,文化庁の方から御説明をしていただいた方がいいのかもしれませんが,これに私どもの機構も深く関わっておりますので,現状を少しお話をさせていただこうかなと思っております。資料7の別添4という資料の裏側を御覧頂きますと,レスキュー事業の様子が図式化されておりますが,何はともあれ,これ,文化財をレスキューするという場合に情報が分からないことには手の出しようがありませんので,まず情報を収集するということが何といっても第一番でありまして,これは文化庁の方で,もう鋭意その情報を収集していただいて,このレスキュー事業に関しましては,もう文化庁が強力な司令塔になっていただくという以外にないだろうと思っておりまして,その指令のもとに,私どものこの国立文化財機構の中の一つであります東京文化財研究所の中に,この少し色が黒くなっておりますが,被災文化財等救援委員会というものを立ち上げまして,その中に事務局を置いております。
 実際にはもう文化庁の調査官は,先ほど御報告がありまように,どんどん現地へ行って調査をされている。情報収集されている。そして,その情報を受けまして,私どもの方の,これ,文化財研究所の研究職員も現地にもう既に行っております,入っております。ただ,この現地本部でどういうふうな仕事をしていくかというのは,これは大変なことで,これこそ本当にかなり正確な情報がないと動けないわけですが,この現地でいろんな情報を得,かつどういうふうにして,それじゃあ,文化財をレスキューしていくか。実際にはどういうふうに実施していくかという,そういう指導する,そういう要員がどうしても必要でございますので,私どもの文化財機構の中から,東京,京都,奈良,九州とございますが,各館から2人から3人ぐらい人を出せるという,そういう一種の登録をしております。そして,いざというときには,文化庁から御指示があれば,この現地に乗り込めると。そういう用意はして万全を期したいと思っております。現状はそういうことでございますので,ちょっと御報告まで。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。このレスキュー等につきましても,私も,公益財団法人の文化財保護・芸術研究助成財団のこの春から理事長をさせていただいておるわけでございますが,ここでも寄附の受入れ体制をさせていただいておりまして,長官からも力強いお言葉等々含めていただきました。はい,青柳委員どうぞ。
【青柳部会長代理】
 最初にもうちょっと具体的な話をすればよかったんですけども,2つ私,考えているのは,1つは,やはり今,この3.11が起こった後,宮城県の東北大学の歴史の先生で平川先生を中心として,宮城歴史資料ネットワークというのが構築されていて,これは阪神大震災の経験をもとに,常日頃からのネットワーク作りが重要であるということで,大学の日本史の学生たちを中心にしてネットワークができておりまして,それがいち早く活動を始めています。しかし,その宮城歴史資料ネットワークの事務局は,東北大学の元教養の建物にあって,この建物自体が壊されてしまったので,一時インターネット環境が壊れてしまったんですね。それで大変な苦労して再構築したんですけど,今,非常に活発に歴史文書のレスキューに当たっております。
 それで,このときその平川先生たちから教えていただいたのは,もう3.11が終わった次の日からいろいろな,そういう善意の人じゃない人たちが入り込んで,文化財を持っていってるようなんですね。ところが,彼らは既に以前から,平時のときから,その収集家や,あるいは所蔵家と顔つなぎができているので,非常にスムーズに入っていって,そして,善意のレスキュー隊として認知されて活動できているということで,やはり常日頃のそういうネットワーク作りというのは非常に重要なんだということです。
 このことを考えると,今,日本の大きな文化財政策というのは指定制度でございますが,もちろん登録文化財のような,もう少し広くする政策もございますが,そろそろ将来を見越してリスクマップというか,あるいはハザードマップ,これを,作成をそろそろやっておく必要があるのかなと。例えばこのハザードマップは,イタリアなどは,文化財ほとんど全部やってて,安全・少し安全・平均,それから,少し悪い・非常に悪いというランクをつけて,そして,ミラノなんかだったら,盗難には安全だけども,空気汚染があるので,そっちの方ではランクは下の方になるというような,いろいろな観点からのハザードマップを作っております。そうすると,恐らく今回の三陸のあたりでも,どこどこの神社は海抜何メートルあるから安全というふうな判定を下された。あるいは,だけども,人里から離れているから,盗難には危険であるというような,そういうものは全国的に作る必要がそろそろ,これは非常に時間もかかるし,金もかかる,忍耐もかかるあれですが,一つあるのかなと。
 それから,2つ目は,つい1週間ほど前,国会図書館の長尾館長と国立文書館の高山館長と,私で対談をしたときに,先ほど太下委員が発表なさったようなのとコンセプトは同じなんですが,ナショナルアーカイブセンターというものを作ろうと。これは,もう既に文科省の傘下にある筑波にある国立防災研究所がアーカイブ作りを始めています。それで,どこからでもいいからくださいと,写真でも何でもいいから,情報を。それをストックし始めております。こういうところでの記録を,もう少し落ちついてきたら,きちっと系統的に分類して,そして,先ほど太下委員がおっしゃっていたような思い出と,それから,ヴァーチャル・ミュージアム的なものと,それから,将来の活用に供するというようなことでできないかな。残念ながら,今日持ってこようと思ったんですが,7月にならないと活字にならないということで,資料はないんですけど。そして,できることなら,このナショナルアーカイブセンターに集まった記録が,今回の公的記録として,例えば世界記憶遺産に登録することができれば,我々のこの文化的な仕事がある目標にまできちっとロードマップとして到達点になるんじゃないかなというふうに考えています。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。私の大学も,実はそのアーカイブについてスタートし出したところだったものですから,そのお話もこの後しようかなと思っていたんですが。
【青柳部会長代理】
 ああ,失礼しました。
【宮田部会長】
 ありがとうございます。やはり記憶までなくなってしまってはもう本当に遺恨を残すことになりますので,形においても,それから,書類等々いろんなものにおいてアーカイブということはとても大事かと思っております ほかにも,まだ御発言もあるでしょうが,ちょっと先へ進ませてください。ちょっと時間が超過しておりますので,申し訳ございませんが,まあ,でも,今回に関しては,この件は少し長めにと私も思っておりましたので。
 では,第3次基本方針についてでございますが,第8期の部会では,3次の策定に向けて約1年にわたって大変委員の方々のお力を頂きまして審議を重ねました。今期の部会では,同基本方針の進行管理を使命としておりますので,本日は,まず,この同基本方針の内容をおさらいした上で少し意見交換をお願いしたいと思います。
 といいながらも,震災についてまたお話ということがございましたら,どうぞ御発言頂いても結構でございますが,ちょっとおさらいをしたいと思います。事務局お願いします。
【滝波調整官】
 それでは,文化芸術の振興の基本方針(第3次基本方針)の概要ですが,資料8を御覧ください。多くの先生方は,もう御覧頂いているかと思いますので,ごく簡単におさらいですが,昨年度の第8期の文化政策部会で御審議頂いた上で,去る2月8日に第3次基本方針ということで,閣議決定されたものの概要が資料8でございます。大きな作りとしては,第1として,文化芸術振興の基本理念を掲げ,その基本理念のもとで,今後5年間かけて重点的に取り組むべき施策を第2というところで具体的に書き込んでいくという形の内容から成っております。
 第1の基本理念につきましては,1つに,文化芸術振興の意義を表しております。人々の心豊かな生活を実現する上で不可欠なものだと。あるいは経済活動の源泉,ソフトパワーになるものだということで,国の政策の根幹に据えて,今こそ「文化芸術立国」を目指そうということだったわけでございます。また,基本的視点としては3つ掲げております。1つには,成熟社会における成長の源泉,2つ目には,芸術文化振興の波及力ということを視野に入れるということ,そして,3つ目に,社会を挙げての文化芸術振興を図ろうと。こういう3つの視点から,これから5年間かけて重点的に取り組んでいくということでございます。
 重点施策については,第2の1ポツのところ,六つの重点戦略というふうに掲げておるとおり,これから5年間かけてここに記載の六つの事柄について重点的に取り組んでいくということにしているわけでございます。それぞれひし形に記載のような事柄,全部で24の項目がございますが,これについてこれから5年間かけて重点的に取り組むということにしてございます。
 また,2ポツのところ,重点戦略を推進するに当たって留意すべき事項ということが掲げてございますが,ここの(2)でございます,計画,実行,検証,改善の(PDCA)サイクルを確立しようということがございます。ここのPDCAサイクルということを意識しながら,今期のこの文化政策部会におきましては,これらの重点戦略の内容について,適切に進行管理をしていきたいということでございます。
 次に,資料9を少しだけ御覧頂きたいと思います。今の資料8にありました重点戦略の中身をもう少し見える形で,かつ平成23年度の予算へどのような形で反映ができておるかというものを書き表したものになってございます。詳しくはまたお時間があるときに御覧頂きたいと思いますが,それぞれ重点戦略に掲げられた項目について,これまで23年度予算の中でどのような形で取組がされつつあるのかということを記載してございます。一例で申し上げましたら,上から2つ目のひし形,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みの導入というふうな重点戦略の項目がございますが,この事柄については,新たな審査・評価,調査研究等の仕組みの試行的導入ということで,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みを導入しようということを打ち出しておるわけですが,これについては備考欄に書いてございますように,予算上の措置もございますし,それから,「文化芸術活動への助成に係る審査・評価に関する調査研究会」というものが立ち上がっておりまして,具体的な制度設計をどのようにしていくかということの検討が今,着実に進められているところでございます。
 以下,このような形で23年度については取り組むこととしております。この取り組み方について,また,この部会の中で次回以降も具体的にどのような形で評価を,進捗状況を点検,評価していくのか,その際の評価の指標,あるいは評価の進め方をどのようにしていくのかということについて,今後,御検討頂くこととしたいと思っておりますが,本日は,まずはおさらいと概要についての御説明というふうにしたいと存じます。
 なお,資料10及び資料11につきましては,それぞれこの資料9の上から5つの目のひし形,美術品政府補償制度の導入に関して,先般関係法律が成立をいたしました。その概要の資料でございますし,それから,資料9の最後のひし形,国立文化施設の機能充実及び運営の見直しに関しましては,昨年の12月に別途行われておりました有識者の検討会の方での「論点整理」が出されておりますので,その概要を添付してございます。
 御説明は以上でございます。
【宮田部会長】
 どうもありがとうございました。何かちょっと懐かしいなという感じで見る雰囲気がありますが,不思議なものですが,やはり1年かけて70時間以上かけてやってみたものが,今回の震災をここに当てはめていくと,結構生きた状態で応用できるなという感じが私はしております。まさかそんなことが起きるとも,つゆとも想像だにしないところで,私ども,先生方のお力,事務方のお力を頂いて六つの柱を立てていただいたわけでございますが,それらをこれらの震災の中にはめていくと。例えば先ほど秋元委員でしたかね。海外からのうんぬんというのに対しては,国家補償があるとか,いろんなことで応用できる。やはりベースがきちっとしているものの提言をするということはとても大切なことかなという感じがいたしました。
 これ,議題も含めまして,いかがでしょうか。ちょっと吉本委員が資料をお持ち頂いているということでございますので,その件に関して御発言を頂けたら有り難いんですが,いかがでしょうか。
【吉本委員】
 第3次基本方針の六つの重点戦略の戦略1にあります諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みの導入というのは,この場でも結構時間をかけて議論したことだったかと思います。それに関連しまして,今年の1月に,イギリスのアーツカウンシルについてかなり詳しいリサーチをしてきました。お手元の机上資料のオレンジ色の冊子ですね。付せんを付けていただいておりますが,56ページ,最後のところにレポートをまとめました。詳しくは読んでいただきたいのですが,幾つかポイントを簡単に御説明したいと思います。
 皆さん御案内のとおり,イギリスは,保守・自民の連立政権が誕生しまして,予算の大幅な削除が行われています。文化政策も例外に漏れずということで,大体予算は3割削減というようなことが行われているわけです。イギリスのアーツカウンシルの情報は日本でもかなり出ているんですが,地域事務所の実態というのがよく分かっていないということで,そのことに焦点を当てノース・イーストとイーストという地方都市にもお邪魔しまして,アーツカウンシルの地域事務所の取材,それから,実際に助成を受けている団体の取材等もしてきました。
 同時に全体像を把握するため,歴史とか,組織とか,助成制度等,いろいろ全般にわたって整理をさせていただきました。まず,全体の組織というのが59ページにございまして,ちょっと図が小さくて恐縮なんですが,今,イギリスのアーツカウンシルはロンドンにあります本部事務所の他,ロンドンを入れて4つのエリアに分かれています。1つのエリアの中に2つ,ないし3つの地域事務所というのがございまして,それぞれの地域事務所が評議会,カウンシル組織という,意思決定機関を備えています。その上で,全国評議会,ナショナルカウンシルというのが総合的な,最終的な意思決定機関ということになっています。現在,この地域事務所を入れると,約500名の職員がアーツカウンシルで働いているそうです。それも人員削減で2割削減された後で500名ということですので,それぐらいの巨大な組織だということが今回の取材で分かりました。
 それで,昨年の基本方針に基づいて検討しておりますアーツカウンシルというのは,評価,審査を中心にということで,全国組織で立ち上がるわけですが,一方で,やはり地域のニーズなり,地域の実情に応じた助成なり,評価の仕組みというのが重要だろうということが当然ございまして,そういう意味でも,このイギリスのアーツカウンシルの地域事務所を含めた組織体制というのはある意味で参考になるかと思います。
 ただ,いきなりこんな巨大な組織を作ることは難しいかと思います。実は,この地域事務所も,二転三転して今の状態になっております。60年前のアーツカウンシルの創設時にあった地域事務所は,一旦廃止されたんですけど,その後,地域が独自に組織を作って,それが全国の拠点組織とつながった。それはリージョナルアーツアソシエーションという組織なんですけども,それがやがてリージョナルアーツボードという組織に変わりますが,共に地方主導で作られていたものなんですね。それが最終的に全国組織として統合されたというプロセスを経て出きていますので,今,日本国内でも,例えば東京都ですとか,あるいは私の知っているところですと,北九州市ですとか,地域でもやはりアーツカウンシルを作ろうというような動きがありますので,全国組織は全国組織で作りつつ,地域のアーツカウンシルと連携して,全国ネットワークを作るということも視野に入れて,長期的に検討していってほしいなと思います。
 それから,このアーツカウンシルは,アームズ・レンクスということがずうっと言われているわけですが,やはり60年以上の歴史というのがひしひしとこの組織の中に息づいているという感じが非常にいたしました。新しい政権が誕生して,予算3割削減,それから,たしか3年後までには運営経費は5割削れというような,もうドラスティックな改革方針が出ているんですね。でも,アーツカウンシルはアーツカウンシルで政権交代の前から今後の10年間のプランというのを検討しております。そのプランというのが,Achieving Great Art for Everyoneということで,5つのゴールを設けています。ですから,アーツカウンシルはアーツカウンシルで独自の戦略,独自のビジョンを持ちながら,新しい政権が代わって予算を削れと言えばそれに対応しながら,その中で何をどうやっていいのかということを,非常に専門家集団としてやっているということが大変よく分かりました。
 それから,もう一つ助成制度の仕組みは,従来Regular Fundingという仕組みとGrants for the Artsという仕組みがありまして,前者は公募ではなくて,全国のおよそ800団体に対して申請書を出す必要なくアーツカウンシルからお金が出る仕組みでした。ただし,毎年その団体から計画書を提出してもらい,地域事務所の専門家のスタッフとやり取りしながら戦略や計画を一緒に練り,実施した成果を一緒に評価するという関係で,助成する側,される側ということではなく,パートナーシップを結んでいる形ですね。アーツカウンシルとそれぞれの地域の芸術団体,文化施設が,パートナーとしてやっていくということになっていたようです。ところが,今度の改革でその助成制度,Regular Fundingというのも公募が原則になりまして,National Portfolio Fundingという名前に変わりました。このPortfolioという言葉は非常に象徴的だと思うのですが,つまり,ポートフォリオをいうのは投資先の資金配分の仕組みを表す言葉ですから,国の予算,宝くじの予算をどうやってどういう団体に幾ら投資するのが,結果的に国として文化振興を一番担うことができるのかという,そういう戦略をアーツカウンシル自らが組み立てているというところが大変印象に残りました。
 その他,予算のことですとか,地域事務所の働きなどの具体例を少し紹介していますので,是非御覧頂きたいと思うのですが,私が大変印象に残っております地域事務所のプロジェクトを一つだけ御紹介します。それは,イギリスのイースト,東部のプロジェクトなんですが,ここはロンドンから大変近いので,地元に大きな都市もないし,大規模な文化プロジェクトもないと。でも,アーツカウンシルの地域事務所が何かその地域に拠点的な文化施設,あるいはアートによる地域再生をやろうということで,つい先日,ロイヤルオペラハウスのワークショップ,つまり,巨大な舞台セットの工房施設がサウスエンド・オン・シーというテムズ川の河口の町にできました。これはその地域事務所が仕掛けた結果なんですね。元々その施設は,ロンドンオリンピックの敷地内にあったため,移転せざるを得なくなったときに,アーツカウンシルの東部事務所がその話を地元につなぎ,地元の団体と組んで巨大な施設をオープンさせた。つまりアーツカウンシルの地域事務所はそういうダイナミックな働きをしている訳です。
 なおかつ,そこにこれからナショナルスキルセンターと言ったと思いますが,クリエーティブな才能を育成するための専門的な国立の機関ができ,そして,そのワークショップで実際舞台作りをするための実践の場があるということで,その小さな田舎町がまさしくイギリスのクリエーティブ産業の担い手を育成する一大センターになると。そういうふうな戦略的な取組もアーツカウンシルが主導しながらやっているという感じで,昨年度は,助成をして,それをちゃんと審査して,事業仕分けにも耐えられるようにしようということで議論したわけですが,もっと何かポジティブな感じで動いているというような印象がありました。すぐにそこにいくのはなかなか難しいとは思いますが,是非今年度のこの試行的な立ち上げという範囲にとどまらず,長期的なビジョンでアーツカウンシルというものがうまく機能するように議論しながら進めていっていただきたいなと思います。以上です。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。前の会議のときにでも,アーツカウンシルに関して様々な御意見を頂いておりましたが,この資料を頂きました。また,ゆっくりとこれ,拝見させていただいて……。
【吉本委員】
 ここに紹介しきれなかったもう山のような資料がありまして,特に評価のことはここにちょっと書ききれなかったんですが,それも山のような資料があります。もし検討に活用されるということであれば提供できると思いますので,よろしくお願いします。
【宮田部会長】
 そうですね。是非また頂きたいと思います。ありがとうございました。
 ちょっと第1項目の震災の件で多くの先生方の御意見を多く頂いたものですから,その後の議事に関しては少し手狭になっておりますが,今,吉本委員,並びに事務局の方からお話を頂いたものについて,そして,今後どう攻めていくかと,この会議をどう攻めていくかと。それから,具体に確実に発信していくと。議論のための議論ではなくて,実際に北では大変なことが起きているわけでございますが,その辺も含めてどうあるべきかというふうなことも少し議論させていただけたらと思いますが,同時に,今回初めて御参加頂いた先生方が何人かいて,まだ,御発言がない先生がいらっしゃいますので,いかがでしょうか。それから,今,御発言頂いた方でも結構でございますが,全体を含めて,渡辺委員,どうぞ。
【渡辺委員】
 すいません。発言してないので,ちょっと一言ぐらいは発言しようと思います。今回から初めて参加させていただきます渡辺と申します。
 1つ,私,提案とかということではなく,ちょっと知りたいなと思っていますのが,今回結構いろんな海外から被災地へ向けた支援というのがあって,その中には食料だとか,そういった救援物資というようなものはあるんですが,時々何か新聞などである種の文化支援といいますか,そんなような動きもあるようなんですけど,まだその実態というのは十分に私の方で把握できておりません。これ,どういうふうにこのデータを集めていけばいいのかちょっと私も分からないんですが,その海外から,この文化復興とか,文化支援ということに関して,どんな今,動きが被災地に対して既に何か提案があるのかとか,あるいは起きつつあるのかというようなことをちょっとまとめたものを作成する,あるいはしていただければと思います。
 そして,また,それに対して,これは今回海外が絡んでいますと,やはり国としてのお礼ということもありまして,また,それを通していろんな関係が改善し構築されていくということがあると思いますので,とりあえず私の方としては,まず,海外からどういう提案なり,動きがあるのかということについてちょっと今後それを踏まえていろいろ議論させていただければと思います。
【宮田部会長】
 はい。では,大木さん,お願いします。
【大木課長】
 今現在ファクトとしてすべての情報が文化庁を通っているわけではございませんので,何も持っておりません。政府の中でどれだけのものがどれだけ出てくるのかということはちょっと当たってみようかとは思いますが,先生方にも是非ネタを提供していただきませんと,NPOベースの話だとか,何かいろんな話があるともう収拾がつかない状況でございまして,是非これは共同作業でよろしくお願いいたしたいと思います。
【青柳部会長代理】
 ちょっとよろしいでしょうか。
【宮田部会長】
 はい,どうぞ。
【青柳部会長代理】
 国会図書館では,今,インターネット上の震災関連の情報を全部集めているようですが,個人情報なんかが含まれているのは発表できなくなるのでというので,ハーバード大学と,それから,ロサンゼルスのインターネット何とかという会社が協力してやってくれるというので,そっちで集めているそうです。それを国会図書館では活用しながらやっていこうということを計画しているようですね。
【渡辺委員】
 ハーバードというのはあれですか。ライシャワー研究所でも,あそこで立ち上がっている日本のスリーワンワンというウェブサイトですね。
【青柳部会長代理】
 ええ,そうです。あっちの方が量は多いですよね。
【渡辺委員】
 ああ,なるほど。
【宮田部会長】
 近藤長官,どうぞ。
【近藤長官】
 海外からも含めて特に美術,あるいは芸術文化分野に是非寄附したいというオファーと,他方,こういうところでこういう被災損傷があり,こういうニーズがある。これらのマッチングというのが非常に最初から頭にございまして,ただ,なかなかその全体像を把握することは極めて難しいということで,とりあえず文化財については,宮田部会長が理事長を務める財団の方で受皿を作っていただいて,海外からもワンクリックかなんかでドネーション(寄附)ができるシステムにはなっております。これからの問題はいかにそれを周知させるかだと思います。それと,文化庁が先ほど御提示した被害状況,これは英文でも出しております。それを組み合わせれば,どれぐらいどういうところに被害がある。じゃあ,少しこの辺に寄附したい。それじゃあ,この財団にしようかとつながるようにはなりつつあります。
 それから,同じことが文化芸術振興についても言えまして,これはまだ受皿が実はできておりませんが,何らかの形で音楽にとか,そういう演劇にというのがあれば,それが受け入れられるような仕組みを今,作ろうとしておりますが,文化財のような既存の経験のある財団がない,組織がないだけに若干手間取っておりますが,それも文化庁における,先ほどの文化施設等の被害状況と併せて,じゃあ,そこを救いたければこういう口座がありますよということを近いうちに立ち上げたいと思っております。
 それから,ちょっとその次いでにもう一つ,先ほど来,その安全の問題,なかなか美術品が来ない,キュレーターが来ない,アーティストが来ないという問題がありまして,これもまた一つのメッセージですべてが解決するようなものではありませんが,少なくとも,先ほど御紹介した私のメッセージを英語にして出してありますし,それから,在京の大使館,メディアにも配ってあります。それから,いろんなチャリティーコンサート,たまたま先週でしたか,大きなチャリティーコンサートがサントリーホールでございましたので,そこに在京のG7と中国,韓国の大使を呼んで,その現場を見させるということで,盛り上がっていることを見させて,それが本国に電報かなんかで伝わる。小さい努力ではありますが,そういうことを積み重ねることで,少しずつ政府のメッセージそのものも出したいと思いますが,どうしても政府のメッセージはあんまり信用されないでしょうから,民間で盛り上がっているということを大使や外国のレポーターに見てもらうということが,完璧ではないが,必要であろうということで,先生方におかれましても,そういったそれぞれのお仕事の範囲で努力をしていただければと思います。
 ちなみに,来週,ラ・フォル・ジュルネ・オ,東京フォーラムでクラシック音楽祭がございます。これも相当たくさんのアーティストをカウンシルしましたが,それと同じぐらいのアーティストが,じゃあ,おれが行ってやろうと,私が行ってあげようというのがあったそうで,外務省に至急ビザを出してもらったアーティストが来るようです。私は,始まる前に彼らを全部招いて,来てくれてありがとうというレセプションを,これはポケットマネーでやるつもりです。そこに外国プレスを招いて,こんなにたくさん外国から来てくれるんだということを外国のプレスの目に,見てもらうというようなことを。そういった小さい話ではありますが,そういうことをとにかく積み上げていくことも,というか,それしか今はないのかなと,余りにもこの大きな怪物を相手にしているわけですから,しかし,そういったことが少しずつ積み上がっていけば,ある時点で,ある臨界点に達すれば,メディアもそういうことを伝えるようになるかもしれない。在京大使館もそういうことを報告するようになるかもしれない。そんなこともやっておりますので,是非先生方におかれましても,それぞれのお立場で御努力を頂ければと思います。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。午前中も今の長官のメッセージについて,財団で海外向けのものを含めてちょっとお願いし,まだまだ未定稿ですが,やっていきたいと思っておりました。ありがとうございました。 時間が来てしまったので,ちょうど長官のお話で何かまとまっちゃったなという感じがするんですが,高萩委員,しゃべっていましたか。
【高萩委員】
 はい。ちょっと報告だけしましたけど。
【宮田部会長】
 御報告だけでしたね。
【高萩委員】
 アーツカウンシルの件は,芸術文化振興基金の方と今,委員で進めております。一番問題になっているのは人員体制の問題です。全般的に人を常勤で増やすというのは難しいんだろうと思いますが,文化政策部会で言えることかどうか分かりませんけど,組織の在り方とか,国の在り方みたいなのを決めていくときに,やはり大きな枠の中でどうスクラップ・アンド・ビルドするかみたいなのにかかってくるんだなというのはひしひしと感じています。その中で,今年ついた予算の中でどうやれるかということを始めていますが,やはり枠が決まっている中でやるというのは結構大変なんだなということです。また,アーツカウンシル,日本的な,日本ならではのアーツカウンシルの方向についてというのは,吉本さんの報告なんかを参考にしながら,できる範囲の中での報告をしていきます。それでいいのかどうかということについてもできましたら,ここでPDCAサイクル的なチェックをしていただければと思っております。
【宮田部会長】
 ありがとうございました。何か震災前でこういうのを,先ほどちらっと事務局からお話がありましたが,私の大学の方で,文化庁長官と芸術系の大学長の25大学がおいでいただきました。国公立,私立も含め。大変な反響がございました。やはりこの,ずっと今日,私は言い続けているというか,前からそうんですが,いっぱいいろんなものがあっても,窓口がいっぱいあっても,結局それが横につながらないと力になりません。そういう意味では,今回は積極的な文化庁の皆さんのお力と長官の情熱,それから,私どもの大学は国立としては1校しかございませんので,これはもう当然旗を振るべきだということでやらせていただきます。ちょっとこれ,後でゆっくり見ていただけたら幸いかなと。で,御意見などもまた頂けたらと思っております。
 まだ,お話になりたい方,いらっしゃるかもしれませんが,ちょっと時間が過ぎました。どうでしょうか。事務局,最後,一つちょっとまとめていただけませんか。
【宮田部会長】
 それでは,本日は,これにて終了します。ありがとうございました。
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