文化審議会第9期文化政策部会(第2回)議事録

1.出 席 者

(委員)

青柳委員,秋元委員,伊藤委員,太下委員,岡本委員,奥山委員,加藤委員,後藤委員, 佐々木委員,里中委員,高萩委員,坪能委員,富山委員,西村委員,浜野委員,宮田委員,吉本委員,渡辺委員

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,小松文化部長,関文化財部長,大和文化財監査官,大木政策課長

2.議事内容

【宮田部会長】 ただいまより文化審議会の第9期文化政策部会の第2回を開催いたします。御多忙のところ皆様,ありがとうございます。今,滝波さんからお話がございましたように,クールビズでやりませんかと言いながら,ついさっきまでセレモニーがあったものですからネクタイまで締めちゃったのですが,でも長官はずっといつもそうですね。大したものです。

【宮田部会長】  本日は大変恐縮でございますが,中身の濃い,時間の短い会議にしたいと思いまして,1時間半を予定しておりますので,御協力をお願い申し上げます。
 開会に当たりまして,前回の御欠席の岡本委員,奥山委員,本日御出席でございますので御紹介したいと思いますが,岡本委員からお一言御紹介頂きます。

【岡本委員】  桐蔭横浜大学の岡本真佐子と申します。前回欠席してしまいまして申し訳ございません。文化人類学でスリランカとかトルコの研究をしてきて,その後,文化政策の研究をしてきた者です。何らかの形で貢献ができればと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。それでは奥山委員,お願い申し上げます。

【奥山委員】  仙台市から参りました奥山でございます。前回は欠席となりまして大変申し訳ございませんでした。3月11日の発災から3か月ということですが,仙台の方は幸いにも全国からいろいろな御支援を頂きまして,今少しずつ町も落ち着きを取り戻しつつあり,また被災された方々も,今月末ぐらいを目途に,応急仮設住宅やそのほかのところにおおむね落ち着かれるのかなということでございます。
 このたびの震災の中で,様々な文化に関する活動もございましたので,今日はお手元の方に簡単な資料ということで提出をさせていただきました。やはりハード面の復興ももちろんですが,心の復興,そしてそれには文化というのが大きな力を持っているということを改めて感じている昨今でございます。これからもこの委員会でも努力ができればと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
それでは議事次第にありますとおり,議題1,東日本大震災への対応等について,議題2,第3次基本方針に基づく施策の進捗状況について,それぞれ御報告並びに御意見を交換していただきたいと思っております。
 議事に先立ちまして,運営規則等について確認事項がございますので,事務局の方から簡潔に御説明をください。

【滝波企画調整官】  それでは手短に御紹介したいと思いますが,参考資料3を御覧頂けたらと思います。
 参考資料3は文化審議会の運営規則でございます。この規則は,この審議会の会議の運営の仕方,手続を定めた,ルールを定めた規則でございますが,去る6月1日に開催されました文化審議会の総会におきまして,一部改正がございました。その紹介がございます。
 参考資料3の運営規則の第2条の第2項でございますが,これが追加になっておりまして,これは「前項の場合において」ということで,「会長は,審議会の会議を開く暇がなく,合議によらないことをもって審議会の運営に特段の支障を生ずるおそれがないと認めるときその他正当な理由があると認めるときは,持ち回り審議とすることができる」といったような規定を新たに設けたものなのですが,こういった改正があって,6月1日付でこの規則が改まったということでございます。
 それで参考資料4をお開き頂きますと,これは文化政策部会,この会議の運営規則でございます。この規則については第1条から第3条まであるのですが,柱書きが最初のところにありまして,「文化審議会運営規則第何条第何項の規定に基づき」というようなことで規定があるのですが,ここのところの文化審議会運営規則の引用している部分の日付が改正になったということで,その形式改正のことがありますということの御紹介でございます。
 加えまして,この運営規則でございますが,これまで毎回会議が期が改まりますたびに制定をするというようなことで運用してきたところでございますが,今般総会の方で,期が改まるごとにその都度制定するのもどうかということも御議論がありましたので,1回作ったものは特段変更がない限りは期をまたいでその効力を生ずる,有効になるということの意思決定がなされました。この部会におきましてもそのような運用,取り計らいにしていきたいと存じておりますので,その点の御紹介でございます。
 簡単ですが,以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございます。規則というものはややともすると足かせになりますが,生きた規則ということで前向きな御発言でございましたので,ありがとうございました。この件に関していかがでしょうか。よろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは議事に入りたいと思います。大震災について,その対応でございますが,前回の部会で,多数の先生方から大変貴重な御意見をそれぞれのお立場から,取組事例なども含めまして,1日でも早い復興と,そして文化芸術が担うべき役割など,活発な御意見を頂きましてありがとうございました。後ほど佐々木委員,文化財分科会長様からもう少し補足していただきたいと思いますが,いろいろな経緯を踏まえまして,文化審議会として意見書をまとめました。去る6月1日の総会の場で西原会長より御提起頂いたところでございますが,本日13:30からでございましたが,西原会長から近藤長官,吉田次長を含めて,私と佐々木文化財分科会長からということで,意見書をお渡しいたしました。私は審議会の会長代理も兼ねておりますので,ちょっとその意見書に関して御報告させていただきたいと思います。
 復興に向けて,意見書ということでございますが,このたびの東日本大震災から3か月が経過した今なお,物心両面を通じて復旧・復興のための努力が続けられていると。そうした中で,文化芸術活動が被災地の方々に心の安らぎや勇気を与えております。文化庁を含め関係者の御尽力により,文化財や美術品の救出,応急措置などがなされておりますが,これらは土地の記憶を物語り,地域のきずなを強める貴重な地域の資産であります。これは一度失われては元に戻りません。文化は人々の明日への希望を与えると同時に,復興への歩みを進める人々の心の滋養となるものです。
 政府においては,東日本大震災復興構想会議を設けて,復興構想の策定に向けた議論を進めており,今月末にも第1次提言が取りまとめられるものと承知しておりますが,復興構想こそが,策定に当たっては単なる復旧ではなくて,未来に向けた創造的復興を目指すことが重要であり,そのためにどうしても文化芸術の役割ということが重要性があるので十分に認識し,その視点を取り入れることが極めて重要であると。政府においては,このような視点を踏まえて,復興構想の具体化に際し,以下のような施策を講ずるように要望しているということでございます。
 4つの要望を出しております。被災した文化財の保全について,救援・復旧・修理等を通じて万全を期すことを願う。2番目,自治体等による復興・再生事業に当たり,文化財の専門家等の意見を十分に取り入れるとともに,必要な支援を行うこと。3番目として,文化芸術活動による力強い復興を実現,地域コミュニティの核となる文化施設の整備,地域のアイデンティティを守るために必要な施策を講じること。4番目として,被災地の創造的復興を支える専門的人材の確保,創造的人材の育成に必要な支援を行うことということでございます。
 最後に,文化審議会としては,これらの取組が社会を挙げて行われることを通じて,被災地をはじめ日本全国の創造的復興が早期に実現することを切望するということで結んであります。
 先ほど,このようなことを含めた書類を意見書として近藤長官にお渡ししておきました。佐々木委員,何か加えることがございましたら。

【佐々木委員】  先ほどの宮田部会長のお話以上に,私から特にはございませんのですが,この意見書をまとめて文化庁の方に是非お渡ししたいという思いは,様々な文化財の調査,研究に携わっていらっしゃる委員の方々の強い思いでございまして,こういう大きな災害に際しましては,目に見えるはっきりしたものに対する救済というのはもちろん,やりやすいという言い方はおかしいですが,非常にはっきりはしているわけなのですが,これから更に,そういう復興のための様々な工事が行われるに際しまして,失われていくものが多いんじゃないかと。やはりもっときめ細かな対応というのが必要なんじゃないかということを皆さん御心配される方が多いわけでございまして,それと同時に,一方では復興計画,復興構想というのがどんどん進んでいく。そういう中で,先ほども本文にありましたような,いわばアイデンティティの核になるような地域の文化,あるいは文化財というものが復興計画の中から落ちてしまうということが非常に怖いと。
 ですから,その辺の危惧がございますので,こういう意見をまとめさせていただいて,文化庁の方に是非万全の手当て,処置をお願いしたいということで取りまとめられたわけであります。本当にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございました。この件に関して,意見書で,事務局の方から何かございますでしょうか。

【滝波企画調整官】  今,部会長や佐々木委員の方から御説明のあったとおりでございます。文化庁におきましては,前回の第1回部会の際にも少し対応の状況のペーパーを御用意して御説明したところですが,本日も資料2及び資料3ということで,主な被害状況,それから主な対応について今日時点でのまとめということで資料としてまとめておりますので,若干それについて触れておきたいと思いますが,資料2につきましては前回の資料の時点修正ということで,少し被害状況が拡大しておるということがデータ上明らかになっているということの紹介です。
 それから,資料3の方は主な対応状況ですが,これについても前回,第1回のときにお配りしたものを時点修正したものになってございます。それぞれ文化財調査官の派遣の実績が増えているだとか,埋蔵文化財調査の弾力的な運用等についての通知を改めて発出するであるとか,文化財レスキュー事業に加えて文化財ドクター派遣事業といったものを新しくスタートしておるといったこと,文化施設の復旧についても,今般の第1次補正予算の中で措置をしておるといったこと,それから,次代を担う子供の文化芸術体験事業(派遣事業)というものが,この震災対応ということで6月7日から既に公募が開始されておるといったようなことが新しく追加してございます。
 それから参考資料6,7,8に関しましては,東日本大震災復興構想会議が4月から立ち上がっておりまして,5月29日に「これまでの審議過程において出された主な意見」というもののまとめた資料が出ておりますことに加えまして,去る6月11日に開かれた復興構想会議におきましては,議長代理の提出資料ということで「復興への提言」骨子(たたき台)という資料が新たに示されております。
 この会議は報道等にもございますように,今月中を目途に第1次提言の取りまとめをなされると承っておりますが,その骨子が6月11日の会議で示されておるということがございます。参考資料8でございますが,この中の6ページ下の方をお開き頂きますと,各分野に復興への提言がかなり網羅的な形で記述がなされておりますが,6ページの下の方につきましては,地域における文化の復興ということで柱立てがなされておりまして,地域の伝統的文化・文化財の再生,あるいは復興を通じた文化の創造といった事柄について,この提言に盛り込むべく,今,復興構想会議の方で議論がなされているところだと承知しております。
 簡単ですが,以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。それでは,質疑や意見交換等に移りたいと思いますが,本日まさに先頭に立って,被災地の復旧や復興に御尽力されております奥山委員においでいただいておりますので,また関連の資料なども御用意頂いているところでございます。その辺も御紹介を兼ねまして,ここで御発言をお願いしたいと思いますが,よろしゅうございますでしょうか。

【奥山委員】  それでは座って話をさせていただきます。お手元の方に提出資料ということで資料を,1枚物で恐縮ですが準備させていただきました。
 まず,私ども仙台の被害状況ということで,一番文化にとって大きな影響がありましたのは,文化庁の方でもおまとめ頂いておりますただいまの資料の中に,ホールの破損の各県別数字というのが出てございましたが,それを見ていただきますとお分かりのとおり,宮城県,福島県は大変,35とか6とかという多くのホールが被災をしている状況でございます。仙台市で申しますと,あらかた使えるようなホールはすべて壊れたと言ってもいいと思います。
 仙台市のビルそのものは耐震上はとてもしっかりしていて,建築基準法が以前の宮城県沖地震で大きな被災があった後改正されましたので,その後につくられた建物は建物の構造としてはすべて生き残った,大変建築の基準はすばらしかったと思うのですが,一方,基準の盲点というのが今回明らかになったのですが,それが大変幅員の広い天井が次々に落下するということで,建築担当の話によると,天井というのは内装の一部で構造ではないということで,強度に関する基準がないということで,それぞれ設計主の美観との兼ね合いというようなことで造られているので,今回ショッピングセンターの天井も落ちましたと。あと,遊技場のようなところの天井も落ちましたと。公共施設のホールの天井も落ちました,学校の体育館の天井も落ちましたということで,ありとあらゆる天井が軒並み落ちたのが今回の被害の1つの特徴でございました。
 それでどういう困難が生じたかというと,私どもの仙台フィルのようなプロ楽団が入場料を取って演奏できる会場が,仙台市内からすべて無くなったということでございます。これが一番プロの音楽家にとって今大変なこと,また民間の方々にとっても予定していたコンサートとか発表の場がすべて無くなったということですので,それが今,全体として大きな課題になっております。やはり,プロの場合は演奏できないことには食べていけないということになるわけでございます。今,鋭意予算を頂きながらホールの復旧に全力を挙げているところですが,この天井というのがなかなか難しいものでございまして,足場を組まないと天井に取りかかれないということで,ほかの壁や何かよりもはるかに時間がかかってしまう,弱点が大きいものだということも改めて分かってございました。
 今後は,プロの人たちがこういう震災のときに早くプロとしての活動をできるために,どういうようなホールの安全の確保をするか,またホールとして,1つは安全の確保なのですが,もう1つは復旧しやすいという観点からホールを造る考え方ももうちょっとあっても良かったんじゃないかなと。どうも復旧しにくいというのが,ホールの特徴のように今思っているところでございます。
 そういうことで,メーンのホールがなくなった仙台フィルなのですが,やはりこれまでたくさんの市民の方とか県民の方に支えられてプロの楽団としての活動をしてまいりましたので,今回も,自分たちの収入を得ることはかなり先にならないとできないのですが,音楽の力で皆さんを励ましていきたいということで,いろいろ地元のアーティストの方とか,また東京の方からもたくさんの音楽家の方,これまで仙台フィルでソロとして共演頂いた皆様も含め,大変多くの方がおいでくださって,避難所のコンサートですとか,その他のコンサートをやってまいりました。駅であるとか,コンコースであるとか,あと例えば学校の体育館であるとか,いろいろなところでやってきまして,大変これは皆さんに好評でございました。特に今回の震災の特徴として,子供たちもかなり津波の恐怖を味わったわけですが,音楽というものの特性として,多分言葉がないことが逆に良かったのかもしれないというようなことを感じているところでございます。子供たちも本当に真剣に聞いてくれたという報告を聞いております。
 あと,また2番目としては,仙台は劇都仙台ということで,町の中で演劇をする,演劇,劇団が市内に20団体ぐらいあるのですが,それらの人たちも当分劇団のお芝居でチケットを売るという状況ではなくなったこともあるのですが,こういうときこそ芝居の力を何らかの形で還元できないかということで,これまたいろいろトラックを借りたりしながら活動して,大変喜ばれております。これからむしろ復興してくる途中で,芝居というものが持つ,子供たちのなかなか表には出しにくい気持ちを表現していくことについては,お芝居もまた大きな力を発揮するのではないかと私たちは思っていまして,できるだけこれを息長くやっていく方法があれば良いなと思ってございます。
 今は大変支援のお気持ちが広がっておりまして,こうした事例1や事例2の活動について,いろいろな企業からも協賛を頂いております。これがいつまで続くのかという心配も彼らにはあるわけなので,細くてもいいから長く続いてほしいということを地元は切に願っているところでございます。
 あとは事例3の方で,せんだいメディアテークという文化施設がございますが,ここの7階の展示は見事に落ちてしまったのですが,やはり地元の文化施設として,地元で起こる様々なプロセスを記録したり,またこれまでのいろいろな活動を記録していくことを中心に,大変長い名前ですが,「3がつ11にちをわすれないためにセンター」というような活動も今少しずつ,これこそまさにしこしこという感じでやってございます。神戸芸術文化会議からたくさん協賛金を頂きまして,それらを資源として被災地の文化事業への支援事業などもやっていきたいというようなことを考えております。
 先ほどからの御挨拶にもございましたとおり,物理的な回復というのは目に見えやすいものですが,なかなか心の回復というのは目に見えないもので難しいと思ってございます。しかしながら,私どもの図書館が震災以来ずっと閉館していたのですが,5月3日に40日ぶりに開きましたところ,ものすごい人が図書館に来てくださって,図書館職員が開館以来こんなにカウンターの前で皆さんが並んで本を借りるということ,こんなに喜んでくれたことはなかったということですので,やはり文化とか,いろいろなそういうものを求める気持ちというのは,震災が激烈であれば,またそれだけ強いのだと思っておりまして,是非そういうようなことで,私たちも被災地としては沿岸地域の方は更に大変でございますので,それらを支援していけるようになりたいと思っております。
 自治体の首長として,もう1点だけ,1分だけ付け加えさせていただきますと,被災自治体はこれからものすごい貧乏になります。今,国でいろいろな補助を,かつてない比率で,国庫補助9割とか10割とかと言っていただいているものもあるのですが,しかしそれにもかかわらず,自治体の持ち出しは多分べらぼうな金額になると思います。例えば年間予算が4,800億ぐらいの仙台市で,今回の被災額が公共施設だけとっても3,800億でございますので,その比率というのはもうちょっと規模の小さい自治体になると100%を超えることは確実でございますので,とっても貧乏になると。そして,とっても貧乏になったときに,誠に申し訳ないことながら,削られていくものは文化・イベント費であり,図書館の図書資料購入費でありというようなことになりそうだと,私が言っていいのかどうか分からないのですが,おおむねなることはかなり確実でございますので,そういう貧乏になった自治体における文化を支える仕組みはどうしていったらいいのかということも,また考えていかなければいかない課題なのかなと思ってございます。
 いろいろ文化財の復旧や調査に関して,文化庁としてたくさん御支援を頂いて,仙台市も本当にありがとうございました。以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。生の現地からの御報告でございます。
 今の奥山委員のお話も含めまして,少し震災に関して御意見等,あるいは意見書に対しても御意見等ございましたら,また同時にこの後何件かやらなきゃいけない文書がありますので,後からでも構いませんので,今,1つ2つ。後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】  すいません。2つほど申し上げたいと思います。1つは,今の奥山委員の御発言とも関連するのですが,目に見えないものは,何が壊れ,何がどう復興するのかというのが一番見えにくいと思うのですが,文化に関することなので,目に見えない部分をどういうふうに考えていくかというのがとても大事だと思うのです。それで,文化財レスキューの方なのですが,これは建造物よりも動産が主に入っていて,有形のものに対するレスキューというのが前面に出ているのですが,実は人がもう一度被災地に戻ってその町を復興させていこうとするときには,無形の文化財というか,無形のものが人のきずなを保ち,復興していく力になるのではないかなと思っていまして,無形文化財政策は日本の,世界の中では最も優れた政策だったと私は前から申し上げているのですが,そういう面もありますので,是非レスキューの方に無形の視点を入れていただきたいなということがまず第1点です。
 それからもう1つは,被災地が復興していくときには,未来を担っていく子供たちが復興していくんだと思うので。何か物が復興していくわけではなくて,やはり人が復興させていくということになるので,子供の教育という文部科学省全体の視野の中に,この今回の問題を是非入れていただきたいなというのが2点目です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。まさしく人ですね。
 ほかにございますか。またこの件に関しては,いつでも手を挙げていただいて結構でございますので,では,ちょっと1つ,一歩進めさせていただきたいと思います。
 第3次基本方針に基づく施策の進捗状況でございますが,やはりその辺についてのことを確認した上で,すばらしいものを作っていきたいと思っておりますので,事務局からこの件に関して御説明いただけますか。

【滝波企画調整官】  それでは次の議題ということで,第3次方針に基づく施策の進捗状況等ということでございますが,資料4の方を御覧を頂けたらと思います。資料4は,第9期文化政策部会の主な審議事項についてということで,今期のこの部会における主な審議事項を記載したペーパーですが,このペーパー自体は,去る6月1日に開催されました文化審議会総会で,宮田部会長から総会の方に御報告頂いた際のペーパーのエッセンスを抜いたものになってございます。1ポツの設置要領のところで政策部会のミッションが書かれておって,2ポツとして主な審議事項ということで,今期具体的にどんなことをやっていくのかということを文字に書き表したものでございます。
 今期の部会では,3次方針を踏まえまして,重点戦略に関するPDCAサイクルの確立を目指して,その適切な進行管理を図ろうと考えておりまして,2つございまして,1つが重点戦略に掲げられた各施策の進捗状況についてでございます。重点戦略の中に6つの重点戦略があるわけですが,それぞれに掲げられた各施策の進捗状況を点検するとともに,不断の改善を図るため,今後の文化政策について検討しようと考えております。それからもう1点が,進捗状況の点検の一環としましては,この後御説明がまたありますが,文化芸術活動への助成に係る審査・評価の仕組みの在り方,劇場・音楽堂等の制度的な在り方,あるいは国立文化施設の運営の在り方といったような事柄について,別途の有識者の会議における検討がなされていますので,それも踏まえながらこの部会として検討していきたいと思っております。
 2点目は,重点戦略に掲げられた各施策のうちの主なものに関する評価指標を確立しようという内容でございます。この点についても3次方針の中に掲げられていますとおり,PDCAサイクルの確立を図るためには,的確な「検証」に必要となる評価手法を確立することが必要となりますので,文化庁の方での調査研究等を踏まえながら,先ほどの進捗状況の点検とあわせて,この点についての検討を深めていきたいと考えております。こういったことを今期主にこの部会として取り組んでいきたいと考えておるわけですが,それが資料4です。
 資料5,6,7に関しましては,それの補足的な資料ということになりますが,資料5でございます。これは,今回の第3次基本方針を23年度予算にどのように反映しておるかという反映状況をまとめたペーパーでございます。6つの重点戦略をそれぞれ具体的な施策に落とし込んでいきまして,具体的にどういう対応を今,しておるのかを表にまとめたものが資料5でございます。
 それから資料6でございます。資料6は重点戦略の戦略目標,評価の進め方・指標(例)ということでございます。これも,前期の政策部会の中で御熱心に御議論頂いた上でこういった形でまとめておる資料でございますが,それぞれ重点戦略に掲げられている各施策について,具体的にどういう事業が該当し,どういう形で評価を進めていったらいいのか,あるいはその際に指標となる指標は何なのかといったことを表にまとめたものになってございます。こういった事柄について具体的な施策を進めるに当たって,評価の進め方,あるいは指標として考えておく必要があるということでございます。
 それから資料7でございます。これは重点戦略の工程表ということで,23年度から27年度までの5年間が3次方針の対象期間となるわけですが,大まかに各年度の中でどういった取組をしていくのかということを,ある程度年度別に分かるような形で表にまとめたものになってございます。これは飽くまでおよその見通しですので,進めていく中で更に精緻なものにしていく必要があるのかなと思っております。
 こういった事柄について,今期の部会の中では取り組んでいきたいと思っておりますので,冒頭の説明とさせていただきます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。今期の大きな指針というか,進め方ということで御説明いただきました。大量の文書でございますので,即ここで今御質問と言われてもなかなか難しい部分があると思いますが,これはあくまでも大きな柱でございますので,ここはこうした方が良い等々の肉づけ等ございましたら,遠慮なくいろんな意味での御提言を頂きたい,御意見も頂けたらと思っております。それに関しては滝波さんの方が窓口になるのかな。例えばメールを頂いても結構ですし,いろんな意味で生きた御意見を頂きたいと,かように思っておりますので,委員の方々,よろしくお願い申し上げます。
 それでは,もう一歩進めさせていただきたいと思います。文化芸術の助成に関する新たな審査・評価の仕組みの在り方,いわゆる日本版という言い方をしていいのでしょうか,アーツカウンシルですね。吉本委員には随分御活躍頂いたのですが,もう一踏ん張りお願いしたいと思っております。2番目に文化政策の評価の手法,この2点を取り上げる予定で頑張っていきたいと思っております。
 さて,1つ目のアーツカウンシルについてでございますが,前回の部会で英国の実地調査を吉本委員から御紹介していただきました。日本版のアーツカウンシル――日本版という言い方が本当に良いかどうか,これから議論しましょう。試行的導入でございますが,日本芸術文化振興会に設置された調査研究会において検討が進められて,去る6月10日に報告書がまとめられております。まず,調査研究会の検討結果,試行的導入に向けた段階的取組等について事務局より説明を頂いて,同時に調査研究会のメンバーでございます山﨑芸術文化課長からもお話を頂きたいと思っております。じゃ,よろしくどうぞ。

【山﨑芸術文化課長】  芸術文化課長でございます。今,部会長からお話がありましたいわゆる日本版アーツカウンシルでございます。お手元の資料8,それから資料8(別添)という1枚物があろうかと思います。
 資料8の方は,先週の(金)6月10日に,独立行政法人日本芸術文化振興会(以下,芸文振)に置かれた調査研究会でまとめられた報告書でございます。時間の関係もありますので,資料8(別添)という1枚物に沿って御説明したいと思います。
 今御紹介がありました,いわゆる日本版アーツカウンシルですが,今年の2月に閣議決定頂いた第3次基本方針の中にも提言がございます。それに先立って文化審議会,あるいは当文化政策部会においてそのような議論がありまして,それを踏まえて,昨年の概算要求にいわゆる日本版アーツカウンシルの試行的導入ということで予算要求をして,今年度5,200万円の予算措置がなされているところでございます。また同時に,芸文振におきまして,これの導入のための研究会を設けまして,今年の1月から検討を行ってまいりました。これまでに9回の会合を重ねて,その間,文化芸術団体からのヒアリング等を行いながら,この導入の具体的な在り方について議論を行ってきたわけでございます。
 報告の内容としましては,今後,日本における文化芸術活動への助成をより有効に機能させるために,芸文振の審査,あるいは評価の機能をより強化する。そのためにプログラムディレクターであるとか,プログラムオフィサーと呼ばれる専門家を置いて,その人たちを中心に審査基準を明確化するとか,あるいは事後評価を行うということ,それから調査研究機能を充実するといった取組をしていくということでございます。予算上のこの取組については,23年度は試行的導入という位置付けで,23年度におきましては,まず音楽と舞踊の2分野においてプログラムディレクター,通称PD,それからプログラムオフィサー,略してPOと言っておりますが,置くこととしております。
 報告の中では,このPD,POを中心とした仕事としまして,助成事業の成果や課題について調査分析をするとか,あるいはこの事業に係る基本的な方向性を作成したりして戦略的な助成ができるようにする,それから助成した事業についての事後評価を実施して,それを活用することによって審査・評価の仕組みを強化していく,また助成事業の成果や課題を分析した結果をもとに,更にこの助成事業の改善に向けた提言もしていただくというようなPD,POについての役割であるとか,どういった人材が求められるかといったことについて議論をしておまとめいただきました。 先週の(金)に芸文振の方で取りまとめをしていただきまして,一番下の4のスケジュールに書いてございますが,この報告書を受けて今後PDとPOの選定に入る予定でございます。6月中旬から7月上旬と書いておりますが,既に芸文振の方で手続を進めておりまして,準備が整えば今日にでも芸文振のホームページにPDの選考について,公募を行うわけですが,載せる予定であると聞いております。PDを公募いたしまして,その後POを公募していくという段取りになっております。音楽,舞踊それぞれの分野においてPDを1名,そしてその下にPOを3名という予定にしております。このPD,POを中心に,来年度,25年度の事業の採択に向けて8月から準備を進めていくという段取りになっております。
 簡単でございますが,以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。高萩委員もこの研究会の座長代理で御参画頂いておりますが,一言お願いできませんでしょうか。

【高萩委員】  抽象的議論ではなくて実戦部隊が変わっていかなきゃいけないということは確かなのですが,実戦部隊が自らの組織の組み替えを考えるのは非常に難しいんだなということが,9回やってみると改めて分かりました。目の前の助成金をどう申請を受け付けて,どう審査基準を作っていくかということがもう控えているので,具体的になかなか新しい組織を導入したときに,そこをどうそぐわせていくかと考えるのが難しい。一番目の前のことをこなそうとする体質がどうしても出てくるんだなということがよく分かりました。
 改革していくときにスピードはやっぱりすごく大事だと思います。立体的,複線的に試行を検証していくような,それで分野の拡大とか本格的導入に向けた何らかの戦略を立てる仕組みが必要だろうと思います。新しい仕組みをどういうふうに作るかで,実戦部隊の中に置くのはかなり難しいんだなということは分かりました。皆さん本当に一生懸命やっているとは思うんだけど,やはり人数が少ないんだなと。新しいことを始めようとしたときに,人数枠の問題というのは大きな問題です。多分そのことで戦っていると戦い切れないと思うので,そこをどうしていくかというのについては,外から抽象的な意見を言える部分と,実戦部隊との間でやり取りをしていくことが大事だなと思いました。
 今,工程表の中で見ていただくと,資料の6番でしたっけ。さっきちょっと改めて見ましたら,工程表7のところで,ちょうど最初のページのところに出ているのですが,2番目のところですが,試行的な取組を開始して,23年,24年度でやって,25年度には検証結果を踏まえ,本格的導入と書いてあるのですが,ここまで行くためには,やっぱり時間軸に沿って試行的に始め,成果を検証とやっていたら10年かかってしまうなという感じでした。是非新しい検証のやり方,それから提案できるような組織を作っていただければと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございます。結構試行錯誤がいっぱい出てくるでしょうけどね。
 余談ですが,ついこの間,東京都の芸術文化評議会でございますが,吉本委員とか高萩委員なんか御一緒ですけど,そこでもアーツカウンシルを是非是非すぐ,何しろピストルを撃とうというふうなことを言っていますので。
 この件に関してどうでしょうか,先生方。後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】  質問と意見と兼ねているのですが,PDとかPOという人の位置付けをどういうふうに考えるかということなのですが,長期的に芸術文化の戦略を考えることは必要なので,そこの部分の人が1年とか2年で交代というのは望ましくないと思うのですが,POとかPDとかでどのプロジェクトに助成をするかという意思決定をする人が,固定化されてずっと10年も20年もやるということになると,その人たちの眼鏡にかなわないプロジェクトはいつも採択されないということが起こりかねないので,これは学術振興会などの助成金の採択も,2年ごとに審査委員が入れ代わってピアレビューでやっているということもありますので,やはりどの作品,あるいはどのプロジェクトにお金を配るかということを決める機能と,それから長期的に戦略を考えていくという機能をPD,POのところでどういうふうに位置付けておられるのか,ちょっとお聞きしたいと思いました。

【宮田部会長】  これは山﨑さんにお願いしようかな。

【山﨑芸術文化課長】  まず,1点御説明いたしますと,PD,POは選考の決定権限はございません。具体的に芸術団体の情報を収集したり,現地で公演を見たり,そういった情報と分析をした情報を審査の場で審査委員に助言したり,情報提供をすると。そういう意味では,実質上関与はするわけですが,正式にどの活動に助成をするかというものは審査委員会でお決めいただくので,芸文振の中では運営委員会,その下に部会,その下に専門委員会がございますが,そういったところで正式に決定するということになっております。
 御指摘のように,余り短期間で代わると戦略的なことは提言もできませんので,ある程度の期間はやっていただく必要があろうかと思います。そういった議論もございました。報告書の中では明示はしておりませんが,数年はやっていただいて,その間に戦略的な提言をしていただくようになるのかと思います。ただ,予算上まだ試行ということで,芸文振に置かれる非常勤という位置付けになっておりますので,当面はこれから選定するPD,POについては,形式的には年度内の任期で,またそれを更新していくということを考えております。簡単ですが以上です。

【伊藤委員】  今の関連で。

【宮田部会長】  どうぞ。

【伊藤委員】  今の御質問,御意見にほとんど関連するのですが,アーツカウンシルという場合に,私はもっと戦略的な視点がないと,なかなかつかめないのですね。今回の報告書を読んでみても,最初からでかいことは言えないので,ある程度気持ちは分かるのですが,部分的な試行から入ってきているのですが,余りにも戦術的といいますか,極端な言い方をしちゃいますと,従来の選考委員会の下に更に非常勤の下部の委員会ができていくという感じが否めないのです。
 したがって,従来とは確かに違って事後検査,評価が入ってまいりますから,単に審査しっ放しではないという意味で蓄積はされていくんではないかと思うのですが,将来的なアーツカウンシルに向けての青写真がどうももう一つ見えてこない。そのために,半歩前進であるんだが,これが5年後どのような形になってくるのかがちょっとつかめなくて,意見を言いようがないという感じが結構しているのです。そういう意味で,どのような将来ビジョンを議論されているのかということを可能な範囲でお話し頂ければと思います。

【山﨑芸術文化課長】  まず私の方から。芸文振に置かれたこの報告書を出した調査研究会は,23年度,今年度の試行についての導入のために,具体的にどういう仕方でやるかということを一義的には議論いただきました。その関連で,試行とはいっても,将来のビジョンがどうかによってまた試行のやり方も変わりますので,その限りにおいて将来の在り方についても御議論頂いたということで,報告書の12ページに,最後のところなのですが,「将来における審査・評価等の仕組みの在り方について」というところに少しではありますが,将来像についても書いてございます。ですので,ウェイトとしては今年度のことが比重がございましたので,将来のことについてはここでは余り深くは議論しなかったわけでございます。
 ただ,今回試行をして,それをしっかり検証して,検証の場をどうするかというのはまた今後要検討なのですが,しっかり検証した上でより良いものに改善していくと。御指摘があったように,現在の芸文振に置かれている運営委員会,部会,専門委員会といった審査組織の在り方,あるいは今の芸文振の基金部の体制等についても,必要に応じて今後検討していくことも見据えて検討していく必要があるという議論はございました。

【宮田部会長】  よろしいですか。

【高萩委員】  さっき山﨑さんの後にすぐ意見を言ったのは,つまり今,現在的に動いている組織が,自分のことを変えるのはかなり難しいんだということです。現在動いている最中に変える限度としてはこの程度だったのかなという気がしますね。それはいろいろ組織に関わっていらっしゃる方は多分一番よくお分かりだと思いますので,新たなものを導入する場合について,やっぱり実戦部隊が変わらなきゃいけないのですが,変えるやり方というのについては戦略をもうちょっと考えないと難しいんだなと思いました。

【吉本委員】  私も,5月30日,最後から2回目の会議を傍聴させていただきました。というのは会議に出た委員の方から,高萩さんがとにかく孤軍奮闘されて,大きな変革をと訴えても,なかなか事務局側と意見が合わないというようなことを聞いたものですから。
 今の高萩さんの御意見は,芸文振のお立場からすると,今年度公募して助成をして審査をしてという業務に責任をもって対応しようとすると,その責任の範囲内でできることをというふうになってしまうのはやむを得ないと思うのですね。ただ,高萩さんがさっきから控えめにおっしゃっているのですが,私はこのアーツカウンシル検討の研究会は芸文振が事務局になってやっている限り,大規模な,大幅な改革というのはできないんじゃないかというのが一番のポイントではないかという気がいたします。
 これはなかなか申し上げにくいのですが,さっき伊藤さんもおっしゃっていましたように,この報告書にはごく一部のことは書いてあって,それは審査・評価のことで,この審議会でアーツカウンシルをつくろうというのは,そこが弱いからアーツカウンシルをつくろうということになったわけですが,審査・評価というのはアーツカウンシルの機能のごく一部ですから,それを踏まえて助成のプログラムがどうあるべきかということを見直していくのが一番の大きな目的だと思うのです。
 この報告書にはそういうこともやるべきだと書いてあるのですが,それがどういう方向を目指すべきかということが書かれていない。例えば先週ですか,パブコメをやっていたときに私の知り合いのアートNPOの方とかが読むと,何か余計に審査や評価が強化されるだけのような印象を受けると。つまり,審査・評価をちゃんとやるということは,その先にプログラムを改善していくというゴールがあるのに,そのことが全く描かれていないことに非常に懸念を表明されていました。ですから,この後この報告書がどうなっていくのか私は把握をしていないのですが,やっぱりアーツカウンシルとか芸術文化振興会がどういうふうになっていくのかという,もっと大きなビジョンが描ける会議なり何かを,現場の方には当然御意見を伺わなきゃいけないと思いますが,別建てで作る工夫をしないと,せっかくのアーツカウンシルが矮小化(わいしょうか)されたものになってしまうんじゃないかというのを懸念しましたので,発言させてもらいました。

【宮田部会長】  ありがとうございます。先ほど後藤委員がおっしゃった大きな長期のビジョンというのと,それから審査する人たちがずっと凝り固まっているとカラーが1個になっちゃう。じゃ,どっちが良いのかというのと同じような議論に今ちょうどなっているような気がして,やはり進めなければいけない,やらなきゃいけないという論法は,この前の部会で僕らは一致したような気がします。だから,最後に吉本委員がおっしゃったような,何かもう一つ大きなものがないと,例えば伊藤委員のお話になることと非常に似ているような気がします。吉本委員,どうぞ。

【吉本委員】  1点言い忘れたのですが,音楽と舞踊ということでこれは始まっているわけですが,音楽と舞踊のPD,POが採用されても,演劇とかその他の分野はないわけですよね。その状態で音楽と舞踊だけ試行的にやっていたのでは,ほかの分野はどうなのかという問題がおのずと生じてくると思います。音楽,舞踊から試行的に今年立ち上げるのであれば,ほかの分野も来年度すぐに試行的に立ち上げるような予算措置をしないと,すごく演劇界の人から見ると,何で僕たちは置いていかれているんだろうという疑問は素朴に出てくると思うのです。ですから,それを含めて,アーツカウンシル全体をどういうタイムテーブルで,どういうふうに諸外国のアーツカウンシルに似た仕組みに組み立てていくのかということの,まさしく工程表というか,進め方自体をきっちりと描かないと,このままでやっていくと,本当に審査・評価のための専門委員が増えるだけみたいになっちゃうんじゃないかなと思います。

【宮田部会長】  さて,どうぞ。

【近藤文化庁長官】  アーツカウンシルはイギリスを中心にいろいろな事例があるわけで,それを念頭に置きながら,日本での文化芸術の評価・審査基準を大きく変えようという部会からの強い,四つの重点政策の1つとして御提言を受けて作業を始めたわけですが,非常に大がかりな思い切った改革をしたいという気持ちと,試行的に,ともかくすぐに今年度から始めなければいけないという2つの,場合によっては相入れないかもしれないことを同時にやらざるを得なかったという状況があったがゆえに,中長期的な大きなビジョンを持った方にとってみれば極めて物足りないものになってしまったのは事実だと思います。
 他方,現場で現実に,ともかく目の前のものを動かすために,大がかりな中長期的な枠の変更を議論しているゆとりがなかったのもまた事実で,私の今の感じでは,ともかく試行をやってみる,2つの分野でやる。非常につらいのは,次の予算要求が7月,8月,それまでには正直言って何の成果も出ないわけですね。これで良かった,だから来年度もやるんだ,あるいは分野を拡大するんだとか,もっと人員を増やすんだなどということも言ってはいきますが,なかなかこれだけの短期間でのこの報告だけで,財務省が極めて財政状況が厳しい中にどこまで認めてくれるか,この辺が今一番頭の痛いところで,私どもも努力しますが,引き続き委員の方々の強い応援が必要になってくると思います。
 先週この報告書がまとまりますときに,文化庁長官コメントという半ページぐらいのものが出ましたが,そこで,最後の1行だけ読ませていただきますと,文化庁としても今後の文化政策の重要な戦略の1つとして早期に本格的導入が実現するよう全力で取り組んでいくと。非常に抽象的な表現ではありますが,ここにある重要戦略と位置付ける,早期に本格的導入をする,そのために全力を挙げるという言葉には私の強い意志と情熱がこもっている。それをどういう形で今後の検討に,前進に翻訳していくかというのはまたいろんな戦略があると思いますが,先ほど来出ている2,3人の方々の御示唆も非常によく分かるところでございます。今,原発の問題で保安院と何とかを分離すべきだとかいう議論がありますが,自分で自分の評価をしてもしようがないんだというような,それも1つの時代の流れだろうと思います。
 ただ今回,非常に良い議論ができたと聞いております。本当に現場にも根差した議論ができたので,これはこれで1つの成果として踏まえた上で,今後大きな飛躍を遂げていくような仕組みというものを,また組織改編も含めてやっていきたいと考えております。という私の決意表明です。

【宮田部会長】  ありがとうございます。どこかで決意をしなければいけないと思いますので,良いタイミングで頂きました。高萩委員,どうぞ。

【高萩委員】  全体の話の中で,2人から結構大きな意見があったと思うので報告しておきます。それはヒアリングをしている最中に,音楽系の方だったと思うのですが,助成金に関しての審査制度についてきっちり作ってくれるならば,実際の助成額とかが少し減るのはやむを得ないのではないかみたいな意見が出ました。多分本当に初めてだと思うのですね。芸術界から,自分のところに来るお金を減らしてもいいから制度をきちんと作ってくれということについては。
 それから,最後の回のときに,委員の方で1人,ここまで議論した上で最後だから言うんだがということで,助成金の額が減るとしても,制度を今きっちり作り直すこと,それが芸術界としてほかの分野に対して説明がつくことなんじゃないかという御意見が出ました。これは本当に,今まで芸術界は,どうしても口をあけて,とにかくお金が欲しい欲しいと言い続けているという感じがしていたと思うのですが,自ら制度をきっちり作っていこう,審査,それから評価の基準を作っていくんだ,それによって日本の社会の中でどう自分たちが役割を担っていくかを作っていくという意見が出ていたので,報告します。予算要求のときに参考にしていただければと思いましたので,よろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  大変勇気のあるお言葉を頂いて,最後に金は少なくて良いというだけを覚えないようにしないといけないと思いますので,よろしくお願い申し上げます。
 ちょっと余談ですが,私は国大協の理事もやっているのですが,そこで日本のあるべき姿,教育のあるべき姿という大きな文章を作っているのですが,最後になって,どうも立派な文章なんだけど,すごくかさかさしているのですね。よく読んだら文化芸術という単語が1つも入っていない。これは駄目だというので入れたのです。
 そうしたらある理事の先生が,宮田さん,それを入れると今度は医療だ,科学だ,スポーツだとみんな入れなきゃならないと言い出したのですね。だから全否定しました。文化芸術というのは,科学や数学やいろんなものを全部包括したベースの中にきっちりと根差したものなんだということを忘れないようにしないと,次世代を作る私どもの文章にはならないんじゃないかという話をさせていただいたので,それを言った上で,今の話を聞いていると,あっちも欲しい,こっちも欲しいというのじゃなくて,芸術のこの世界は,今,高萩委員がおっしゃったような感じで,一つ引いても新しい土俵を作っていこうというふうな結論にしたいと思いますが,長官,いかがでしょうか。

【近藤文化庁長官】  はい。

【宮田部会長】  くれぐれも言いますが,予算が少なくていいということではございませんので。
 それでは次に移らせていただきます。恐縮でございます。予定よりも少し過ぎておりますが,良いお話を頂いておりました。さて,いろんな評価の問題でございますが,岡本委員,ありがとうございました。

【岡本委員】  頑張ります。

【宮田部会長】  文化庁の検討状況について,事務局より御説明していただけますでしょうか。

【滝波企画調整官】  それでは,文化政策の評価手法という事柄についてでございますが,先ほども少し御説明しましたように,今期の政策部会の主な審議事項の中で,重点戦略に掲げられた施策のうち,主なものに関する評価手法を確立するということを大きなテーマに据えておるわけでございます。それに関しましては,先ほども少し御紹介した資料6で,3次方針の重点戦略の各戦略目標についての評価の進め方,あるいは指標といったものの例を,3次方針の取りまとめに当たりまして,この部会の方で議論し,一応資料6のような形で作成をしたところなわけでございます。
 例えば,資料6の1枚目の最初のダイヤ印でいいましたら,これは文化芸術団体への支援方法を抜本的に見直しをし,インセンティブ(意欲)が働く支援制度を導入しようという施策があるわけですが,こういった事柄についてどういう形で評価を進めていくのかということについては,新たな支援の仕組みの有効性を把握・検証するということで評価を進めていこうじゃないかと。で,その具体的な指標となり得るものは何なのかということを考えると,例えば創造的な活動のための取組の状況であるとか,入場者数,寄附金収入の確保のための取組の状況といったような事柄が指標になり得るのではないかということをこういった形でまとめていったものが資料6だったわけです。
 前期の部会の中ではここまでが一応できたところだったわけですが,今期この部会の中で,どういう形でこのことについて御審議頂こうかということなのですが,今回資料9ということで資料を御用意してございます。資料9は,「文化政策の評価手法に関する調査研究事業(仮称)」の枠組み(案)ということでございます。先ほど申し上げたようなことで,今回の第3次方針の中では文化芸術振興施策の着実かつ継続的な実施を図るということと,説明責任の向上ということから,重点戦略に関してのPDCAサイクルの確立をしようということを考えているわけです。そのためには有効な評価手法の確立が大事になってくるということだと思っております。その点で,こういった方針を踏まえまして,文化政策の評価に必要な指標の開発などに関する調査研究を実施しようと考えておるものでございます。
 2のところ,内容でございますが,1つには,我が国の文化政策,この中で言いますのは第3次方針に基づく重要な施策のうち特に重要だと思われる幾つかについてですが,その効果を把握するために必要な視点,あるいは指標を設定しようということとともに,実用的な様式例を考案しようということです。様式例としましては,アンケート調査票であるとか,個別の取組事例に関する基礎的なデータとか,効果の測定様式といったこと,あるいは施策全体を評価する様式といったものが考えられると思いますが,こういったものの考案をしていこうということです。2つ目に,文化政策の評価に関する先進事例の紹介とか,有効な評価手法の確立に向けての提言を頂くということと,3つ目に,研究成果の報告をまとめていただくということが必要になってくると思っております。
 先ほど申し上げた文化政策の具体的な指定するものとしましては,3ポツの[1]から[7]に掲げたような事柄をイメージしておりまして,それぞれ重要だと思われるようなものをピックアップして,[1]トップレベルの舞台芸術創造事業,以下7本の施策を対象にしようと考えております。
 こういったものを進めていくに当たっての留意点ということで幾つか挙げておりますが,1つには,視点あるいは指標の設定とか様式を考案することに関してですが,各施策の特性とか趣旨・目的を十分に踏まえることが必要だと思っていますし,各施策の効果を的確に把握するためには,定量的な面と定性的な側面,両方あるということ,アウトプット・アウトカム・インパクト,それぞれどういうふうに区分を設定するのかということ,それから文化的,経済的,その他社会的観点をどういうふうに組み合わせていくと良いのかということ,こういった点を考える必要があるということです。それから様式例を先ほど申しましたが,こういったものを考案するに当たりましては,対象施策ごとに幾つかの複数の具体例を取り上げて有効性を検証する必要があるだろうと思っております。こういった調査研究を進める際には,当然ですが,具体的な実務,事業を実施していく文化庁側との綿密な打合せといったことが必要になってくるだろうと思っております。
 といったような事柄の調査研究をこれからしていきたいと思っていますが,何分にも細かな部分にわたりますので,その辺の実務については,文化庁側からそういった調査研究の能力を有する団体等に委託するような形を考えておりまして,そういった形の中で具体的な調査研究を進めていき,先ほど資料4の中でも御紹介しましたように,政策部会の中でその進捗の状況について適宜意見交換をしていただいて,アドバイスを頂くといった形で進めていきたいなと思っております。
 今回の評価手法の確立の調査研究の大枠については以上のようなことでございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】  枠組み等について御説明を頂きました。この枠組みにも限らず,評価手法全般,あるいは第3次基本方針に基づく施策の進行管理の在り方まで,どのようなことでも結構でございますが,御質問等ございますでしょうか。そのための時間を少し取りたいと思います。 吉本委員,どうぞ。

【吉本委員】  質問なのですが,今御説明頂いた評価手法に関する調査研究事業について,振興会のPD,POの方々というのはこれには関わらないんでしょうか。

【宮田部会長】  いかがですか。

【滝波企画調整官】  今時点で具体的な,どういうところに調査研究をお願いするかというところまではまだ考えが及んでいませんが,関連性は深い部分はあるかと思いますので,実際具体的に調査研究を委託する団体を募集するに当たって,どういうことができるか考えていきたいと思います。

【宮田部会長】  よろしゅうございますか。あと委員の先生方,いかがでしょうか。
 先ほどの震災の方に戻っても結構でございます。10分ぐらい持ちたいと思います。どうぞ,西村委員。

【西村委員】  震災の方に少し戻らせていただいて,資料2で文化芸術分野の被災状況とありますが,先ほど後藤委員から無形文化財が重要だという話,私もそうだと思いますが,ただ,ここに書いてある有形の数字がありますが,有形文化財が万全かというと,そうでもないところもあるので,少しその辺をコメントしたいと思うのです。
 一番問題なのは,例えばこの資料の最初に被害件数がありまして,これは国指定等文化財ということで,国の指定,選定,それか恐らく登録のものが載っていると思うのです。結局リストに載っているものはうまく守られるし,その後の調査も行き届く,またサポートも行くのですが,例えば登録文化財になっていないようなもの,ある地域は熱心な人がいてそれが進んでいるけど,ほかの地域で同じくらい価値があるが,たまたまそういう登録が進んでいないということはたくさんあるのですね。そういうものが,ある意味被災されると被害を受けるので,逆に,そういう情報もなかなか集まりませんので,被害があると壊す方に,例えば補助金が出たりすると,これを機会に無くなってしまうということが結構あるのです。阪神・淡路のとき非常に大きな問題になったわけなのですが,その意味で,登録されているところと登録されていないところと大きく対応に差ができてしまって,ぎりぎりのところのものがなかなか救われないという問題がある。
 ですから,日ごろから候補群を挙げておくとか,実際に被災調査をやるときに,そうしたものが壊されないようにきちんとチェックするとか,もちろん登録文化財を早めに広く登録しておいてカバーしておくとか,また動産文化財の場合だったらどういうところにどういった資料があるかというのを研究者の方がきちんと把握して,被災があったらすぐケアできるようにするとか,裾野のところをきちんとケアするということが非常に重要になってくると思うのです。
 そのこともあるので,必ずしも有形文化財が万全であるというわけではないので,その意味で言うと,登録の制度をもっともっとうまく有効に使っていただいて,広げておいてあらかじめカバーしておくというのが非常に重要な課題になってくると思いますので,是非そのことも指摘させていただきたいと思います。

【宮田部会長】  大変ありがとうございます。意見書の中で6月1日に出そうと思った意見書がストップして,もっともう少し内容を深めようよというお話にさせていただいたのですね。今日お渡ししたということでございますが,その中に今,西村委員がおっしゃったようなことと同時に,例えばその小さな町がなくなることによって,方言までなくなっちゃうということがあるという,いわゆる形のないものなのですが,方言の中には大きな歴史が隠されているんではないかということも含めて,文化財,いわゆる文化庁の仕事というのは,心にしっかりと残るものを今こそきちっと受けとめておかなければならないのかなという気がします。
 そのためには,3つの大きな丸があったのですが,最後にもう1個付けていただいたのは,そういうことすべて動かすにも,残すも膨らませるのも人であるというふうなことの1行を私は付け加えさせていただいたわけでございます。青柳委員どうぞ。

【青柳部会長代理】  今の西村委員の御指摘は非常に重要で,今度の3・11で,今のままでの文化財保護が良いのかということを文化財部会の企画のところできちっと考える必要があるんじゃないかと思っています。というのは,世界の文化財保護政策では大きく分けて2つあって,1つは日本のような指定主義,もう1つはヨーロッパが中心にやっているカタログ主義,登録をもっと広げたようなものですね。どちらも一長一短あるのですが,普通一般的に言えるのは,指定主義というのは国が貧しいようなときに,一罰百戒の逆で,パイロットプランみたいにしてやって,文化財の重要さをみんなに理解してもらおうということで始まった制度なのです。これはこれで,だけど大変効率的で良いところがあって,ヨーロッパでも徐々に実質的には指定主義に流れているところもある。
 しかしやっぱり指定では限度があって,今,西村委員がおっしゃったように,文化財でも地方では非常に大切で,国宝以上に大切なものがある場合もあって,ですから,今回のような漏れ落ちるものがなるべく出ないように,カタログ主義というものをそろそろ日本も考えていかなくちゃいけないんじゃないか。だけど,これは大変な手間暇がかかるので,国が主導はするが,NPOとか何かを立ち上げることをエンカレッジしていくような形でカタログ主義というものを重ねて,そのことによって,より環境でよく言われるレジリアンスな状況を文化財にもきちっと作っていかない限り,3・11の教訓がどこにあったのかということになるのではないかと思います。
 それから今,宮田部会長がおっしゃった方言のことなのですが,これはこの間の総会でも言おうと思ったのですが,実はユネスコの大きな役割というのはクリアリングハウスを作ることで,そのクリアリングハウスの中に実は言語も入っていて,エンデンジャードランゲージということで,日本は今8つの言語がエンデンジャードになりつつあると書いてあるのです。そういうこともちょうど今のあれと同じように,拾われていない文化財,あるいは拾われていない方言というようなことで,もう海外が指摘しているのです。そういう意味で,我々は棚卸しみたいなものをもうちょっときちっとやることが,文化行政の一番の基盤,基礎ではないかなという気がしているのですが。

【宮田部会長】  ありがとうございます。どうぞ。

【伊藤委員】  2つありまして,1つは震災の方については今出た意見とほとんど似ているのですが,私としては人も重要なのですが,その人が生きていくための仕組み,これは特に無形のものにとって重要になってくるんじゃないかと思うわけです。特に民俗芸能等々に関しましては,ただでさえ今,後継者がいなくなってきて,それの伝承というものが苦しくなってきている。今回の震災によって,例えば集落が崩壊して,コミュニティが崩壊すれば,人の問題も当然あるのですが,それを生かしてきたルールだとか役割分担とかいったような共同体が培ってきた習わしが消えていく可能性があるわけです。
 たまたま富山で研究素材で取り上げた例として,世界遺産に成りました合掌造りの茅葺き(かやぶき)の技法というものが,ずっと結いの方式で進められてきたわけですが,逆に,保存するために助成金を渡すと,極端な言い方をしちゃうと,領収書がないと助成金が下りない。そうすると業者に発注する。業者に発注すると結いが壊れるというような形で,保存するための施策がかえって本来その文化財を守ってきた仕組みを壊してしまっているというようなジレンマが起こっているわけですね。このようなことが今回ないようにしていただきたいなということが第1点です。これは方言なんかとも非常に関わってくるんじゃないかと思っています。
 そちらの方にも関係があるのですが,評価の話の方に戻しますと,この辺の細かいところをきちんとまだ読んでいないので,直感的な疑問といいますか,意見なのですが,例えば資料6あたりの事例,指標の例として挙げられているものを見ていきますと,やや事業評価的なものによっているような気がします。そうすると,どうしてもアウトプット評価というものがやや中心になってくるわけですが,逆に言うとアウトカムだとかインパクト評価をしようと思うと,物によっては非常に時間がかかるものが多いわけですよね。例えばこの重点の方の中でも,文化芸術の海外発信拠点の形成事業等々というのは比較的数年間で見えてくるかもしれない。しかし,例えば優れた劇場,音楽堂からの創造発信とかトップレベルの舞台芸術創造事業といったようなものは,それが見えてくるためにはかなり時間がかかってくるだろうなと思うわけです。
 したがって,かなりこの辺についてはめり張りを付けていく考え方が必要になっていくんじゃないかと思っているわけですが,ちょっと混乱しそうな話として,今日の議題の2番目にもありました,今,芸文振で行われているアーツカウンシルのためのPD,POの仕組み,これは極めて短期的な,1年間の助成の評価を行っていくという話が一方で進んでいるために,非常にそちらの方に振られてしまって,いわゆる戦術的といいますか,あるいは事業評価的なものに行きがちな感じがちょっとしているのです。
 そういう意味では,この2つの話の中の関連というもの,1の方はそれも含めた全体に関する第3次基本方針で出された重点項目が,きちんとこれから5年間,あるいは場合によっては10年間,どのような形でそういう成果を上げていくのか,あるいは成果を上げていくために,その政策の在り方も含めて検証していくことが課題であり,片方の方は芸文振でやっている基金の助成というものがきちんと有効に生かされているかどうかということに対する評価という意味で,かなりレベルが違うのですね。ここはかなりきちんとここで認識しておかないとまずいんじゃないのかなということで,意見でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。まさしくそのとおりでございます。
 さて,ちょっと時間が……。

【後藤委員】  短く。すいません。海外の人たちと交流をしていてなのですが,この文化財レスキューという文化庁でやっているのはとても興味深いので,海外から寄附できるのかと聞かれたのですね。ですから,是非英語で発信して,海外からも寄附が受けられるように作っていただけると良いなと。もうそういうふうに既になっていますでしょうか。赤十字じゃなくて,文化庁がやっているものに寄附したいという方もいるのですが。

【宮田部会長】  いいですか。どなたか。どうぞ。

【関文化財部長】  よろしゅうございますか。

【宮田部会長】  どうぞ。

【関文化財部長】  このレスキューにつきましては,資料3の別添3というところの裏の図を見ていただきたいわけでございますが,公益財団法人文化財保護・芸術研究助成財団の御支援をお願いするというスキーム(体系)にしております。文化庁としては長官からもメッセージを発しておりますが,この文化財保護・芸術研究助成財団の方にいろいろな募金をお寄せ頂ければと思っておるところでございまして,これについても文化庁長官のメッセージを英語にして発信するとか,あるいは海外からの募金の実際の受け入れスキームもこの財団の方に作っていただくとか,そういった措置を既に講じておるところでございます。

【近藤文化庁長官】  今,関の方から申し上げたとおりですが,なかなか周知徹底が難しくて,特に外国人はなかなかまだ知らないようです。私はいつもパンフレットを持ち歩いていて,何かあると配るのですね。昨日,一昨日かな,今メトロポリタンオペラが来ていますが,それのシンガーたちとの会合があったので,そこに行って配ってきましたが,一人一人が,特にこの委員の先生方にもお願いして,分かりやすいパンフレット,海外からアクセスするにはどういうアドレスかというのはございますので,それを常に持ち歩いていただいて,知らない人にはそれを渡していただくというぐらいのことで発信をしていく必要があるかなと思います。

【宮田部会長】  たまたまそこの親方やっているものですから,具体的に言うと,必ず例えばある公募団体とか,そういうふうなところで,目的意識のはっきりしたところに寄附をしたい。それは義援金ではなくて支援金である。ターゲットをしっかり持ったところにやっていただいて,その窓口は,長官も震災後すぐ私の方に来て,御協力頂きたいということで,大賛成ということで今着々と動いておりますが,もう少し頑張りましょう,皆さん。

【後藤委員】  そういうウェブページの情報とか適切な情報があれば,私どもの学会,国際,国内両方で掲示したいと思いますので,是非お知らせくださればと思います。

【宮田部会長】  今日はそういう意味で,文化審議会の意見書を先ほどこの会の前に私どもの西原会長から近藤長官にお渡ししました。私も陪席させていただいたのですが,ちょっとその辺のことを含めて,一言いかがですか。

【近藤文化庁長官】  先ほど西原会長からこの意見書を頂きました。復興支援に向けて取り組むべき基本姿勢と,それから忘れてはならない具体的な重大なポイント,先ほど言及された幾つかの追加の点,方言であるとか人であるとか,あるいは指定されていない文化財についてもとか,大事な点が加わっております。これを常に座右に置きまして,どうしてもこれから補正予算だ何だと,ばたばたと目先のことにも追われがちです。そういう中でも常にこの中長期的な視野を保っていくという意味で,私どもの復興支援の指針にしたいと思いますし,それからそのときにも申し上げましたが,これは単に東北復興支援だけのためではなくて,その後の今後の新しい日本を作っていく上での文化芸術の重要性というものをわきまえて,広げていく,我々がそれについて更に力を増していく指針にもなると思いますので,そういう長い広い観点から大いに参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。同時に,今,日本語だけだったので,4カ国語ぐらいに早速動きたいと思います。
 時間が来てしまいました。もっともっといろいろ御議論したいと思っておりますが,残念でございます。
 事務局から今後の日程等をお話しください。

【滝波企画調整官】  ありがとうございました。この政策部会ですが,今6月ということで,しばらく夏休みを頂戴して,また夏休み明け後ぐらいに開催できるような形で進めていきたいと思っております。それまで,またいろいろ御指導頂けたらと思います。ありがとうございました。

【宮田部会長】  吉本委員からの新聞の記事とか,それからいろいろな方々の,震災に向けていろいろございました。ありがとうございました。
 この間も,審議会のときかな,僕が言ったのは,芸大がやっていることで,教員の作品展なのですけども,1時間で無くなっちゃったものですから,困ったなと思っているのですが,どんどんまた皆さんから出してもらおうかなと思っております。
 本日はどうもありがとうございました。

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