文化審議会第9期文化政策部会(第4回)議事録

1.出 席 者

(委員)

青柳委員,秋元委員,伊藤委員,太下委員,岡本委員,加藤委員,後藤委員,佐々木委員,里中委員,高萩委員,坪能委員,中村委員,西村委員,浜野委員,宮川委員,宮田委員,吉本委員

(事務局)

福原参与,近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,芝田長官官房審議官,小松文化部長,石野文化財部長,大和文化財監査官,大木政策課長

2.議事内容

【宮田部会長】  ただいまより文化審議会の第9期文化政策部会(第4回)でございますが,開催いたしたいと思います。御多忙のところ,御出席ありがとうございました。
 開会に当たりまして,今回,中村委員が初めて御出席でございますが,一言お願いしてよろしゅうございますか。突然でございますが。

【中村委員】  どうもはじめまして。ここのところ海外に出ていたりしておりましてまだ参加しておりませんので,今日は皆様の御意見をゆっくり拝聴させていただこうと参りました。震災の後で,一番手を抜かれるのはこの文化芸術へのお金の掛け方だと思われます。人命その他が優先されますので。でも,やはり一番大切なことは,人間の心を豊かにする芸術をどうやって守っていくかというところにあると思いますので,できる限りこういった会合などで,そういった支持を国民の皆様からより多く得るような試みをしていただきたいと。及ばずながら何かお役に立てればと思って参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。大変大事な言葉を頂きました。本日は福原文部科学省参与も御出席頂いております。御紹介申し上げます。なお,奥山委員,富山委員,鷲田委員,渡辺委員の4名が御欠席となっております。
 それでは,議事次第にありますとおり,議題1「第3次基本方針平成24年度概算要求等への反映状況について」。議題2として「文化芸術への助成に係る新たな仕組みの在り方に関するワーキンググループの設置及び検討の開始について」。議題3として「独立行政法人の制度・組織改革の動向について」。それぞれの報告及び意見交換を行う予定でございますので,よろしくお願い申し上げます。参考資料2として第2回部会の配付資料,「第9期文化政策部会の主な審議事項について」をまとめたものがお手元にもございます。本日の審議内容は,主として本資料の下線部に当たる部分でございますが,その辺を御検討頂きたいというふうに思っておりますので,御理解を頂きたいと思います。
 それでは,議題の1に入りたいと思います。先ほどの参考資料2にありますとおり,今期部会では,第3次基本方針の「『六つの重点戦略』に掲げられた各施策の進捗状況を点検するとともに,不断の改善を図るため,予算や制度を含む今後の文化政策について検討する」ということとされております。また,皆様御案内のとおり,今年の夏の概算要求作業は,東日本大震災の影響があり,例年と比べて1か月ほど遅れが生じたところでございますが,9月末日をもって財務当局への概算要求が行われております。
 そこで,文化庁の概算要求内容について,六つの重点戦略に対応する平成24年度概算要求等への反映状況を中心に,事務局から御報告,説明をお願いしたいと思っておりますので,よろしくお願いします。

【滝波調整官】  今,部会長からお話のありましたとおり,この夏の概算要求につきましては少し震災の関係で遅れが生じておりましたが,9月末に財政当局に提出をしてございます。今回の第3次基本方針の中で位置付けられた六つの重点戦略に沿いまして,それぞれ来年度に向けて重点戦略に盛り込んだ内容に沿って,重要な事柄を盛り込んだ内容になっております。
 お手元の資料1を中心に御説明したいと思いますが,併せて,「平成24年度文化庁概算要求の概要」,参考資料でお配りしておりますが,これも少し関連のページを開きながら御覧頂けたらと思います。
 資料1でございますが,まず,重点戦略の1は「文化芸術活動に対する効果的な支援」という内容でございます。ここについてはたくさんの事柄が盛り込まれているわけですが,◆ごとに少しかいつまんですべて網羅的に説明する時間的余裕がございませんので,かいつまんで御説明したいと思います。
 まず,一つ目の◆で,文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入ということでございます。これにつきましては,23年度に導入しました文化芸術団体の経営努力のインセンティブが働く支援制度というものを引き続き実施しようということで,その経費を盛り込んでおります。概算要求資料の33ページをお開き頂きますと,「舞台芸術創造力向上・発信プラン」ということで,その内容のエッセンスを書いたものがございます。これも適宜,御参照頂ければと思います。今回,来年度に向けては,ここに記載のとおり,公演単位支援型の助成に加えまして,年間の公演に係る創造活動を総合的に支援するような,年間活動支援型の助成というものを実施しようということで,その経費も盛り込んでいるところでございます。
 次の◆で,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みの導入というのがございますが,この点については,先生方御案内のとおり,今年度から既に試行ということで始まっております。今年度,23年度におきましては対象分野として音楽,舞踊の分野についてPD(プログラム・ディレクター),PO(プログラム・オフィサー)をそれぞれ既に配置し,試行が始まっております。来年度に向けましては更に分野を拡大し,音楽,舞踊に加えまして演劇,伝統芸能・大衆芸能ということで拡大をしていく。それからPO・調査員というものを充実していくということの要求内容にしたいと思っています。
 このアーツカウンシルの関係につきましては,また後ほど,議題2のところで御審議をしていただければというふうに存じております。
 それから,一つ飛ばしまして,次の◆劇場,音楽堂等の法的基盤の整備についての検討でございます。これについては,これも先生方御案内のとおり,昨年の12月から文化庁の中で,劇場,音楽堂等の制度的な在り方に関する検討会を開催し,現在,検討を進めてきておるところでございます。
 次の◆ですが,美術品政府補償制度の導入及び適切な制度運用ということ。これについても,この6月にいよいよこの法律が施行されておりまして,既に去る9月には,第1号となります国家補償契約が締結されております。このうち,第1号として今週末,10月22日から国立西洋美術館で「ゴヤ展」ということで,開催が間近に迫っております。また,11月11日からは愛知県立美術館で「ポロック展」ということで,これまた政府補償契約がついたものとしての第1弾がいよいよ動き出すということになっております。
 なお,来年度の概算要求におきましても,補償契約締結の限度額を予算総則の中に記載する予定でございます。
 それから一つ飛ばしまして,最後の◆国立文化施設の機能充実及び運営見直しということです。これについても,昨年の12月に国立文化施設等に関する検討会の「論点整理」を御提出いただきましたが,それを踏まえまして,現在,政府における独立行政法人の制度・組織の見直しの議論が動きが出てきております。この点についてはまた後ほど,議題3のところで御説明したいと思いますが,そういった動きが出ているということでございます。
 次のページにまいりまして,重点戦略2は「文化芸術を創造し,支える人材の充実」ということでございます。ここもたくさんの内容が盛り込まれておりますが,主なものだけ御説明したいと思います。
 最初の◆若手をはじめ芸術家の育成支援というところでございます。上から二つ目の○で「若手芸術家等グローバル人材育成支援事業」というものを新たに計上しております。これについては,この概算要求書の46ページを御覧頂けたらと思います。
 この要求書の46ページに「若手芸術家等グローバル人材育成事業」ということで書いてございます。この内容は,資料1の一番右側に【新規】《日本再生重点化措置》というふうな記述がございます。この日本再生重点化措置というものでございますが,今回の概算要求の中で,経済社会の再生に向けた取組として歳出改革によって捻出された財源を用いて,再生に向けて効果の高い施策に予算を重点配分しようということで置かれている,いわば特別枠といったような形のものでございます。政府全体で,来年度概算要求の中では7,000億円を措置するということになっております。そこの中で様々な重点化措置の対象となる分野が掲げられておるのですが,その中の一つに地域活性化というものがございまして,そういった枠組みを用いまして要求しているものでございます。内容としましては,新進芸術家や芸術分野に優れた高校生等を海外の国際コンクールに派遣するということで,グローバルに活躍できる,そういう人材を育成しようというような内容になってございます。
 それからその下の○ですが,メディア芸術発信支援事業のうちの〈若手作家作品発表促進事業〉ということでございます。これについては,概算要求書の41ページの一番右側のところにその内容が記載されてございます。若手作家が制作した作品の発表機会を提供し,制作機会や人材の育成を促進しようというような内容になってございます。これについても日本再生重点化措置を活用したものでございます。
 それから幾つか飛ばしまして,三つ目の◆「文化財を支える技術・技能の伝承者への支援充実」のところ,四つ目の○「文化遺産を活(い)かした観光振興・地域活性化事業」でございます。これについても日本再生重点化措置を幾つか活用していまして,概算要求書の中でいいましたら47ページにその記載がございます。これは平成23年度から新規にスタートしている事業でございますが,そのうちの拡充分として,この日本再生重点化措置を活用しているものでございます。地域の文化遺産を活かした観光振興。地域の活性化を推進しようということのソフト・ハード両面からの事業ということになっております。
 続いて,重点戦略3「子供や若者を対象とした文化芸術振興策の充実」でございます。最初の◆は「芸術鑑賞機会,伝統文化等に親しむ機会の充実」でございます。ここの中にも幾つか項目が盛り込まれておりますが,最初の○「次代を担う子供の文化芸術体験事業」でございます。これについては従来取り組んでいる内容でございますが,国や地域のNPO,劇場,学校などが連携して,芸術団体や芸術家による優れた舞台芸術の鑑賞,実技指導などを実施しようというような内容でございます。これについても引き続き実施をしてまいります。
 それから次の○ナショナルセンターとしての新国立劇場を活用した現代舞台芸術の普及事業ということで,これは要求書の45ページに内容が詳しく出ております。新国立劇場の公演を鑑賞する機会を全国の高校生に提供しようということで,それによって舞台芸術の普及・発展を促そうというふうな取組でございます。これについても日本再生重点化措置の枠組みを活用した事業として要求しているものでございます。
 それから,重点戦略二つ目の◆ですが,「コミュニケーション教育をはじめ学校における芸術教育の充実」ということ。これについては,先ほど申し上げた「次代を担う子供の文化芸術体験事業」の予算の一部で実施をしようというものでございますが,児童生徒のコミュニケーション能力の育成に資する芸術表現体験というものを,その中で実施をしていくということにしてございます。
 続きまして,次のページ重点戦略4「文化芸術の次世代への確実な継承」でございます。ここにもたくさんのことが盛り込まれておりますが,最初の◆「計画的な修復,防災対策等による文化財の適切な保存・継承」でございます。ここの中でも幾つか新規の内容を盛り込んでおります。上から二つ目の○「文化財の防災施設の整備等」の中で,日本再生重点化措置を活用した事業として,要求書の48ページでございますが,「国法・重要文化財等の緊急防災対策推進事業」ということで,日本再生重点化措置を活用した事業をこの中にも盛り込んでおるところでございます。
 次の○は「美術工芸品の防災・防犯対策の推進」ということでございます。これについても幾つか新規の項目として,美術工芸品収蔵施設等における環境対策,あるいは防災の研修会といったことを盛り込んでおります。
 次の項目に▽印で税制改正の内容を盛り込んでおります。税制改正の内容につきましては,机上資料の中で2として「文部科学省税制改正要望事項」というものを用意しておりますが,ここの中で幾つか盛り込んでおります。一つには,重要有形民俗文化財を国又は地方公共団体に対して譲渡した場合に関する所得税の非課税措置というものを盛り込んでおります。
 この税制改正要望事項の資料の中で,ページをめくりまして後ろの方――ページ番号を振ってなくて恐縮ですが,「日本の宝,地域の宝の次世代への確かな継承」ということで,(1)重要有形民俗文化財の国又は地方公共団体に対して譲渡した場合の所得税の非課税というものを拡充措置の内容を盛り込んでいることと,(2)として史跡などの土地を国又は地方公共団体に対して譲渡した場合の所得税の特別控除額と法人税の損金算入限度額を拡充しようというふうな内容。この二つの税制改正要望事項を盛り込んでおります。
 次の◆ですが,「積極的な公開・活用による国民が文化財に親しむ機会の充実」ということで,ここにもたくさんの事柄を盛り込んでおりますが,一つ御紹介いたしますと,下から二つ目の○「世界遺産登録推薦等」ということ。また概算要求書に戻りまして,18ページに少し記述がございます……。すみません,ページが違いますね。16ページに記載がございます。「世界遺産戦略強化事業」ということで新規の内容を盛り込んでおります。これは,世界遺産条約40周年を記念しての取組ということで,世界遺産の戦略強化をしようというような内容を盛り込んだものでございます。
 次の◆ですが,「文化財の総合的な保存・活用,登録制度等の活用による文化財保護の裾野拡大」ということです。ここの中で,二つ目の○「産業遺産保存整備調査事業」ということで,要求書の中の15ページの上の方にその事業の内容が記載された部分がございます。これも新規で,新しく要求しているものでございます。産業遺産の保存・整備・活用手法についての調査研究を実施しようというものでございます。
 それからまた,次のページに飛びまして,重点戦略の5でございます。「文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用」でございます。上から二つ目の◆「新たな創造拠点の形成支援及び地域文化の振興奨励」というところの一つ目の○「地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ」ということでございます。これについては概算要求書の44ページにその内容を御紹介しております。これも日本再生重点化措置を活用した事業として新たに取り組もうということで要求しているものでございます。文化振興のための条例を制定し,又は制定準備を始める自治体を対象として,「新しい公共」の要素を取り入れた特色のある文化芸術振興の取組を支援していこうということで,30億円の要求をしておるものでございます。
 一つ飛ばして,次の○「メディア芸術発信支援事業」のうちの〈メディア芸術地域活性化事業〉でございます。これについても,概算要求書の41ページをお開き頂きますと,真ん中のところにその内容が御紹介してあります。国内外にメディア芸術を発信する拠点となり得る地域が実施するメディア芸術の振興に向けた取組を支援しようということで,新しく日本再生重点化措置を活用して経費を盛り込んでおります。
 続いて,重点戦略の6「文化発信・国際文化交流の充実」でございます。最初の◆「海外公演・出展,国際共同制作等への支援充実でございます。上から二つ目の○「海外における日本文化総合フェスティバルの開催」でございます。これは要求書の43ページに内容が紹介されておりますが,最高水準の現代舞台芸術の公演,伝統的な様式を持つ生活文化を組み合わせて,芸術文化を多面的に発信しようということで,総合フェスティバルを海外で開催できるための経費を盛り込んだものでございます。これについても日本再生重点化措置を活用したものになってございます。
 次の○は「メディア芸術発信支援事業」のうちの〈メディア芸術海外発信支援事業〉でございます。これは,先ほどの41ページの左側になりますが,そこに御紹介してあるとおり,海外で開催されます国際的なマンガ・アニメーション・ゲームフェスティバルなどにおきまして,我が国のメディア芸術の作品,人材の紹介・展示などを行っていくという事業でございます。これも新規に要望したものでございます。
 それから幾つか飛ばしまして,上から三つ目の◆「文化発信・交流拠点としての美術館・博物館等の充実」でございます。このうちの二つ目の○が「ミュージアム国際発信事業」でございます。これは要求書の中で49ページに内容が紹介されております。地域の美術館等が行う海外との人材交流,海外展等への支援を行いますとともに,逸失する危険性のある近現代の美術作品を買い上げて,地域の美術館等へ無償で貸与しようというふうな内容の事業でございます。
 次の◆は「文化財分野の国際協力の充実」ということで「文化財の国際協力の推進」として経費を盛り込んでおりますが,概算要求書の中の38ページに幾つかその例が記載されています。38ページの右上のところ「文化遺産保護等国際協力の推進」ということで,主なものとして「文化遺産保護国際貢献事業」あるいは「アジア太平洋地域世界遺産等文化財保護協力推進事業」ということで予算を盛り込んでおります。
 最後の◆ですが,「東アジア地域における国際文化交流の推進」ということで,一つ目の○「東アジア文化交流推進プロジェクト」。これについては概算要求書の42ページに内容を記載してございます。東アジア共生会議,あるいは日中韓3か国で東アジア共生文化都市を定めまして,様々な文化芸術活動を開催するための準備,あるいは周年事業等の展覧会・公演等を実施しようというふうな内容でございます。これについても日本再生重点化措置というものを活用して新しく経費を盛り込んだものになってございます。
 少し長くなりましたが,来年度の概算要求内容について3次方針の六つの重点戦略の事項に沿いまして内容を御説明申し上げました。以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。ただいまの御説明で御質問あるいは御意見等ございましたらと思いますが。この資料1に基づいて概算要求が詳しく書かれております。少しお時間を頂戴したいと思います。忌たんのない御意見等ございましたら,御発言ください。中村委員,どうぞ。

【中村委員】  今,伺っている中で,重点戦略2のところにあります,文化芸術を創造し支える人材の充実ということでお伺いしたいことがあるのですが。
 ごく最近,ある音楽大学の先生方と会う機会がありまして,そこで話題になったのですが,文化庁の海外派遣研修というのでしょうか,それに選ばれたピアノの生徒を我々知っていまして,その方はかつてヨーロッパに留学した経験があって,そこでせっかく一流の音楽大学に入ったにもかかわらず,全く学校に通わず退学になった前歴がある方です。
 私は,その方が文化庁の派遣に選ばれたということは全然知らなかったものですから,ほかの先生方から,一体,文化庁はどういう基準で人材を選ぶのかということを聞かれまして,私,答えに詰まりまして,じゃあ,お伺いしてまいりますと答えてきたのですが。 これは実際に実演を聞いて選ぶのでしょうか,それとも書類だけ,あるいはどなたかの御推薦か何かだけで決まるんでしょうか。

【宮田部会長】  山﨑課長,どうぞ。

【山﨑課長】  いわゆる在研といっている新進芸術家の海外研修事業のことかと思いますが,御本人から研修の目的であるとか研修計画を書面で申請頂いて,外部の有識者の先生方から成る選考の委員会で審査の上,決定しております。基本的には書類審査でやっておりますが,必要に応じてビデオ等を提出頂ければ,その中で演奏状況なんかを確認することもあります。すべてを確認しているわけではございません。
 御不明な点があれば,個別に教えていただければ,当該案件について確認はしてみたいと思います。

【中村委員】  私が言っているというのではなくて,ほかの先生方からそういう非難が出たものですから一言。どうもありがとうございました。

【宮田部会長】  若手はなかなか難しいですね。未来を感じる若手もいれば,今,花咲いてあと下り坂という場合もあるでしょうから,いろんな若手を私はいつもその周りに見ているわけでございますが,どちらにしても,少なくとも国が選んで派遣するという段階においては,すばらしい人材をお選び頂くことが大切かなと思います。ありがとうございました。 ほかにございますでしょうか。どうぞ。

【近藤長官】  遅れてまいりまして,失礼いたしました。概算要求のフォーマットというのは非常に分かりにくくできておりまして,
 一言で今回の概算要求のポイントを私なりに申し上げますと,「概算要求の概要」という分厚い資料の1枚目に数字の全体がございます。あるいは説明がもう終わったかもしれませんが。
 今の1,031億に対して,約140億近くの増額を要求しているわけです。実際には政策経費1割減という大原則がありますので,それをした上で積み増しをして,全体で140億程度のプラス。したがって,これが実現すれば,昨年の暮れに中村委員それから野村萬先生の積極的な署名活動のときに目標としていただいた数字よりははるかに低いですが,今は0.11ですが,それが0.12に上がるような数字でございます。もちろん,これがこのまま認められるとは到底思いませんが,厳しい状況の中で,ともかく第1ステップとして0.11から0.12に上げたいという思いでいろいろと積み上げをしまして,工夫をした上でこの数字になっています。
 ともかく一律10%,既存のプログラムを切った上で,俗にいう総理枠とか復興のための新しい支出プログラムというのを要求してもいいということになっておりますので,従来,継続してきたもので非常に良いと思うものであっても,ともかく1割切らなくちゃいけない。それの趣旨に合うものを別の形で,新規で要求をするというようなことで,このところずっとそういうことが続いております。
 実体的には基本的な目標,目的はもちろん技術文化の振興,若手の育成,トップクラスをサポートするということですが,具体的なプログラムの切り口が,毎年新しいものが出てくる,あるいは新しい形になるということで,多分,一番御苦労されるのは芸術団体,申請をされる側だと思います。毎年のように新しいフォーマットができたり仕組みが変わったりして,非常に申請しにくい,あるいは中長期的なプランが立てられない。3年ぐらいから5年ぐらいの先まで見据えて助成が確保できなければ,なかなか良いプログラムはできないと思います。そこは単年度主義という大原則がなかなか打ち破れなくて思うようにいかないのですが。
 そういういろんな制約の中で,何とか工夫をして0.11を0.12ぐらいには持っていきたいという私の思いを,いろいろ事務的に工夫をしてもらってこういう数字になっております。
 内訳について,比較的,財政当局とか国会で分かりやすい,説明しやすいものに今工夫をしてございますが,基本的な文化芸術の振興の方針はもちろん変わっておりませんので,是非総額の増について,もちろん,昨年の六十何万票で目指していたものよりはるかに小さいかもしれませんが,それへ向けての第一歩として,是非この総額を確保する,そのために良い内容のものを作っていくという作業に,是非委員の先生方の御支援をお願いをしたいと思います。ちょっと冒頭に一言申し上げました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。まず,10%と。しかしながら,いろんな努力によって昨年をも上回るような環境を作りたいという,長官の大変力強いお言葉を頂きました。
 といいながら,諸外国から比べたら,もう話をするのも悲しいという関係ではございますが,めげずに頑張っていきたいと思いますが。それと同時に,これは国の制度ですからしようがないのかもしれませんが,単年度というのが継続性のない……。文化芸術はまさしく継続をしなければ,振り返ったときに大きな峠を越えていた,山を越えていたというふうな関係が欲しいなとはつくづく思うわけでございますが。そういう意味で,先ほど第1番に中村委員が若者のということを言いましたが,次世代のためにもしっかりと私どもはこれを構築していきたいというふうに思っております。
 いかがでしょうか。加藤委員,どうぞ。

【加藤委員】  2点あるのですけど。一つは,先ほど中村委員のおっしゃった点なのですが,若手の支援というのはなかなか判断が難しい点があるのは事実ですし,全体的には非常に良いんでしょうが,個別には何か問題の発生するようなケースもあるんだろうと思うのです。
 そういうことを避けるためにも,審査と後の検証というのを充実させていかなくてはならない。そのために諸外国のいわゆるアーツカウンシルに匹敵するような制度導入というものを図ろうとして,ここでも答申をされたわけですけれど,そこの充実が少し,私が見るにテンポが遅いのではないか。もうちょっとこれをきちんと充実して,事前の審査及び検証というものをもっと徹底していくと,中村委員のおっしゃったような事例を極端に減らすことができるのではないか。そのためにも,是非充実を図っていただきたいというのが一つでございます。
 もう1点は,税制の問題の中で3の「日本の宝,地域の宝の次世代への確かな継承」というので,重要有形民俗文化財を国又は地方公共団体に譲渡する場合の税制の改革についての仕組みが出ておりますが,これが国,地方公共団体へ,従来は譲渡所得の2分の1課税だったものを非課税にするという。この点は非常に良い制度だろうと思うのですけど,困ったことに,国,地方公共団体に譲渡したくても,寄附なら良いのですが,有償で譲渡しようとしても,取得するべく,つまり,そうしたものを収集する資金がないというケース。若しくは極端に不足している。したがって,国,地方公共団体にこうした重要な財が集積されていくことは,ある意味で望ましいことだと思いつつ,ここのインセンティブが本当に十分機能するんだろうかという疑問がある。
 それよりも,一般的にこれまでこの手の財は,民間で,所有したいという意思をお持ちで,しかも財力をお持ちの方というのはいつの時代も必ず次々と出てくるので,むしろ民間同士の一般の有償譲渡はこれまでどおり課税とありますが,こういうところをせめて2分の1課税にするとか,そういうインセンティブを働かせて,理屈だけの問題ですが,民間の間で譲渡が繰り返されて,もし3回以上譲渡が繰り返されれば,国にとってはむしろ収入,税収が増えるわけです。
 そういう意味で,国,地方公共団体への非課税措置は非常に結構だと思うのですが,民間同士のこうした重要な財の譲渡に関しても,今後,税制の優遇というものを導入してインセンティブを付与していくということは,非常に大事じゃないかなと思います。

【宮田部会長】  ありがとうございます。特にアーツカウンシルに関しては,今,長官の大きな希望がございまして,進めております。同時に,税制問題ですね,民間との関係。大変重要なことだと思っております。ありがとうございます。
 伊藤委員,どうぞ。

【伊藤委員】  2点,質問になりますが。
 第1点は,重点項目の最初,冒頭にあります「文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入」に関してなのですが,平成23年度からの,いろいろ調べていて分からないのでお聞きしたいと思っているのですが,「文化芸術団体の経営努力のインセンティブが働く支援体制」。これは非常にすばらしいことだと思うのですが,備考のところに「『舞台芸術創造力向上・発信プラン』の一部」となっているのですが,予算表と対応して,これに当たる項目というのはどこにあるのか。具体的にはどのような形でこれを行おうとしているのか。多分,2番目の方の,アーツカウンシルだとか評価の問題とも非常に絡んでくる話だと思いますので,そちらの方で御説明あるのかもしれませんが,そこが,実際に具体的な政策としてどういうことが行われているかということがちょっとつかめないというのが1点です。
 それからもう1点は,この重点戦略とはちょっと関係がなかったので御説明はなかったのですが,50ページにあります「多文化共生社会実現」に向けての問題です。今回,新規で予算額もかなりついた形で,日本語教育というものを中心に在住外国人に対する,広い意味でのソーシャルインクルージョンというものを図っていこうという政策だと思いますが,これは極めて重要な政策であり,私自身,浜松にいたこともありまして,この課題というものは,これから先の日本の文化政策においても重要な問題じゃないかと思っているですが,これについてもう少し詳しく御説明をお願いしたいというのが2番目でございます。

【宮田部会長】  はい。いかがでしょうか。じゃあ,よろしくお願いします。

【山﨑課長】  まず1点目の御質問の,文化芸術団体への新たな仕組みの導入のところでございますが,具体的には,こちらの資料の冊子の7ページでございます。中ほどのところに「舞台芸術創造力向上・発信プラン 48億6,700万円」とありますが,この事業の中身が1,2と二つに分かれておりまして,そのうちの一つが「トップレベルの芸術団体や劇場・音楽堂」からの創造・発信でございます。さらにこの中に,トップレベルの芸術団体77団体,56件とありますのが,31億のこの部分でございます。
 大変複数の事業が重なり合ってこの資料を作っておりますので,非常に分かりづらくて恐縮なのですが,ここで言っている「インセンティブが働く支援制度」といいますのは従来行っている芸術団体向けの支援制度で,昨年度まではいわゆる赤字補てんというやり方で,全体の公演にかかる経費のうちの3分の1以内で,なおかつ,いわゆる自己負担分について支援をするというやり方でございました。
 したがって,全体の経費が多くなれば,その部分,支援額が多くなる一方で,せっかくチケットをいっぱい売ったり,あるいは寄附金を頂いて団体としての収入が増えても,その部分,自己負担分が減ってしまうと国からの支援額が減ってしまうということで,結果的に経営努力ということに対してインセンティブが働かないのではないかという御指摘がありました。
 それを今年度から改めて,いわゆる赤字補てんというやり方をやめまして,大ざっぱにいいますと,舞台芸術の公演でいえば当日の公演部分とそれまでの練習,けいこの部分を切り離して,公演部分については当日の入場料収入を当て込んで,それまでの練習やけいこにかかる経費を,経費を限定した上で支援していこうということで,結果的に団体の御努力によってチケットの売上げが増えれば,その部分,団体の収入に結びついていくという支援のやり方に改めたところでございます。

【吉田次長】  担当の者がいないものですから私の方から御説明申し上げますと,「多文化共生社会実現のための日本語教育推進体制の整備」ということにつきましては,この分厚い資料でいきますと,50ページのところにポンチ絵がございます。
 この事業を新しく立ち上げました問題意識としては,先般の大震災の関係でもいろいろと問題提起されましたが,日本に住んでいらっしゃる外国人の方が地域コミュニティとどのように溶け込んでいらっしゃるのか,必ずしも十分ではないという,そういった側面も多く見受けられました。避難ですとか,それから避難所での生活ですとか,様々な面におきまして地域社会との意思の断絶というようなものが見受けられたことがあったわけでございます。
 こういった外国人の方が日本の地域コミュニティに溶け込む際に,大きな手段としてはやはり日本語教育というものが入り口としては非常に有効なんだろうと,こういうふうに思います。文化庁ではこれまでも,生活者のための日本語教室事業などを展開してまいりましたが,日本語教育ということだけにこだわらず,もう少し拡大いたしまして,地域コミュニティの中に,ある意味ではその地域が持っている文化,そういったものに外国人の方がいかに溶け込んでいただくのか,地域社会の一員としてどのような形で生活をしていただけるのか,そういったあたり,日本語教育を一つ突破口としながらも,もう少し広がった取組が必要ではないだろうかというふうに考えたわけでございます。
 そういう中から,これからの多文化共生社会といったところにつながっていくことになるのではないかということで,今御覧頂いていますような新しいプログラムを立ち上げたいというふうに考えておりまして,これは全国で22か所程度を予定しております。全国を幾つかのブロックに分けまして,22か所に対しまして一種のモデル事業ということでこれを展開したいと思っていまして,コーディネーターを配置いたしまして,そして地域の日本語教育団体だけではなくて,もう少し幅広い,国際交流協会ですとか,あるいは社会福祉協議会,あるいは自治体,企業,そういったところとのネットワークを活用しながら,先ほど申し上げましたような,日本語教育だけにかかわらない文化面における外国人の方の地域への溶け込み,そういったものについての支援事業を行っていこうという,こういうものでございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。次に非常に重要なワーキンググループの話をしたいのですが,ちょっと待ってください。では西村委員,その後に後藤委員,お願いします。

【西村委員】  一つ質問なのですが,今度の震災で様々な文化財ですとかミュージアムが被災しましたですね。ですから,それの復旧というのは当然,この中に入っていると思うのですが,これはある種,次のステップにステップアップするような,復興的なものですね。例えば伝統技術の継承だとか,たくさんの仕事が今回発生するわけなので,それをどういうふうに戦略的にうまく継承しようとするとか,ミュージアムも,被災したところの展示をもっとレベルアップするとか,これを機会にもう少しレベルを上げるような戦略というのは,どういうふうに書かれているのか。そういう発想があるのかというあたり,お伺いしたいと思ったのですが。

【宮田部会長】  大変ありがとうございます。一つのこの震災を,より災い転じてという考え方でございますね。ありがとうございます。後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】  すみません。私は文化財に関係したところなのですけど,47ページの「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」について。これはずっとある事業で,観光振興・地域活性化に十分生かしていない状況みたいなのは,ずっと同じことが何年も書かれていると思うのです。十分に生かしていない状況というのは,具体的にどういうふうな状況と把握していらっしゃるのか。
 私が思うに,文化財をただ公開して,見に来なさいと言ってもそんなに効果はなくて,ぱっと見れば,滞在もしないで過ぎちゃうということなので,余り効果はないので,やはりそこに現代の活動が加わったりとか,あとは民俗芸能等とのコラボレーションがあったりする,そういう現代のアクティビティーがないと,なかなか文化遺産といっても生かされてこない。つまり,地域をデザインするといったような視点から生かしていくことがむしろ必要で,それは予算が多いからできるとか予算が少ないからできないとかいうことではなくて,予算の生かし方という問題だと思うのですけど,その辺についてどのようにお考えでしょうか。

【宮田部会長】  ありがとうございました。生きた予算の使い方ということですね。これに関して全部またしゃべっていると,ほとんどこれで会議が終わってしまいますので,しっかりと意見を踏まえて,次にステップアップしていっていただけたらと思います。 実際,30分ばかりオーバーしておりますが,でも,重要なことだと思いますので長くさせていただきました。
さて,議題の2に移らせていただきたいと思います。御案内のとおり,6月の総会より導入された持ち回り審議により,本部会に「文化芸術への助成に係る新たな仕組みの在り方に関するワーキンググループ」を設置したところでございます。先日はもう既に第1回のワーキンググループを開催しておりますところ,まずは事務局より,本ワーキンググループ設置の経緯,趣旨,検討内容について報告を願いたいと思います。今年度の新しい試みとしてのワーキングの設置ということでございますので,ちょっと説明をお願いします。山﨑さん,お願いします。

【山﨑課長】 その前に,大変恐縮ですが,先ほどの中村委員の御質問にちょっと訂正をさせていただきたいと思います。ピアノ等音楽につきましては,第1次審査で基本的にDVDを提出頂いて,DVDで演奏を聴いて審査しております。それから2次審査として,その中から絞り込んだ方を面接で審査をしております。また,派遣した後も定期的に活動状況の御報告をしていただいているところでございます。

【中村委員】  それにしても,今回はちょっとひどかったです。

【山﨑課長】  個別の案件については,また確認いたします。

【宮田部会長】  そもそも論として,こういうのはどういうふうに審査しているかというのは,当然,公開していい話で。審査内容は公開する必要はないですけど,どういうふうにふるいをかけているかということは,どなたでも分かるような感じが良いと思いますね。

【山﨑課長】  募集要項は公開しております。それでは,議題2でございます,「文化芸術への助成に係る新たな仕組みの在り方に関するワーキンググループの設置及び検討開始について」ということで,大変長い名前でございますが,いわゆる日本版アーツカウンシルのことでございます。
 これにつきましては,第3次基本方針におきまして独立行政法人日本芸術文化振興会(以下,芸文振),芸文振における専門家による審査,事後評価,調査研究等の機能を大幅に強化して,諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みを導入するために,必要な調査研究等試行的な取組を実施することとされたところでございますが,今年度の試行に向けて芸文振に置かれた文化芸術活動への助成に係る審査・評価に関する調査研究会が,プログラムディレクター(PD),それからプログラムオフィサー(PO)を活用した審査・評価等の仕組みの在り方について検討を行いまして,6月に報告書を取りまとめたところでございます。報告は机上資料の黄色い冊子,こちらでございますが,報告を取りまとめました。このことにつきましては,前回お集まり頂いた6月14日の本部会で御報告したところでございます。
 その後,芸文振におきまして,音楽と舞踊の2分野についてPDとPOを採用するためにそれぞれ公募を行いまして,8月1日付で音楽及び舞踊のPD各1名の発令がなされ,更に9月1日付で音楽のPO3名,そして舞踊のPO2名の発令が行われました。現在,芸文振においてこれらのPD,POと基金部の事務局が一体となって24年度の,先ほど予算のところで説明がありました,トップレベルの舞台芸術創造事業の準備を進めているところでございます。昨日18日には,音楽と舞踊の各専門委員会の審査基準等が事前に公表されたところでございます。
 このように現在進めております今年度の試行につきまして,来年度においてその結果を検証していくということが必要でございますが,一方で,並行して本格的導入に向けた今後の在り方について調査研究を行うために,配付資料2-1にありますように,本部会に文化芸術への助成に係る新たな仕組みの在り方に関するワーキンググループを設置することが,部長がおっしゃったように,去る9月20日の本部会の持ち回り審議によって決定されたところでございます。本部会からは宮田部会長のほか,太下委員,岡本委員,高萩委員,吉本委員に御参画頂いておるところでございます。
 ワーキンググループの第1回会合は9月29日に開催されまして,まず,座長に宮田委員が,互選により選出されました。会議におきましては新たな審査・評価等の仕組みについて,仕組みに係る機能やPD及びPOの体制,仕組みの対象分野など,活発な議論が行われました。各委員の主な御意見は配付資料2-2のとおりでございます。詳細な説明は省略いたしますが,例えば,助成する側と助成される側にパートナーシップの形成や信頼関係を構築することが必要であるとか,アーツカウンシルを軸とした大きなビジョンや長期的戦略を検討すべきではないか,また,文化庁の文化政策の企画・立案に生かしていくことが重要ではないか,PD,POの人員の拡充が必要でないかなどといった御意見がございました。今後,本ワーキンググループにおける検討につきましては,御意見のとりまとめが行われた段階で,また改めて本部会に御報告をしてまいりたいと考えております。
 なお,先ほどの予算のところでも説明ありましたように,今年度新規事業として予算措置されている日本版アーツカウンシルの試行的導入につきまして,来年度,24年度につきましては演劇,それから伝統芸能,大衆芸能といったほかの分野,合わせて4分野になりますが,4分野においてPDとPOを配置して体制を拡充する内容の概算要求をしたところでございます。
 簡単でございますが,報告は以上のとおりでございます。

【宮田部会長】  どうもありがとうございました。私も及ばずながらワーキンググループの一員として参加させていただいておるわけでございますが,今,山﨑課長から御説明があったように,一つの方向として持ち回りで,しかし深くワーキンググループで御審議を頂いて前進していこうという固い決意で動いております。
 当然,新しいことをするわけでございますから,その中にはいろいろな弊害もあると思いますが,日本らしい,まさしく日本の文化芸術をつかさどるところであるというふうな考え方の元に動いているわけでございます。
 委員でございます吉本委員とか高萩委員とかいらっしゃいますが,何か,この際というふうなこと。どうぞ。

【吉本委員】  ワーキング会議のこととは直接関係ないのですが,先日,オーストラリアのメルボルンで国際アーツカウンシル・文化エージェンシー協会の世界大会というのがありまして,World Summit on Arts and Cultureというものなのですが,それに参加してきましたので,ちょっとだけそのときの状況を御報告したいのですけど。

【宮田部会長】  ありがとうございます。

【吉本委員】  テーマそのものは,CreativeIntersectionということで,その内容を話し始めると長くなっちゃうので割愛しますが,結構な数の国々が参加していました。参加者数は500人以上で,オーストラリアでやったので,そのうちの三,四割はオーストラリアの方だったのですが,アジアからも大勢の方が参加していまして,中国,香港,それからシンガポール,韓国等参加しております。それらはすべてアーツカウンシルの方であったり,文化省の方であったりしました。日本からは私ともう1人,日文研の方が参加されていたのですが,この組織自体は,近藤長官もよく御存じだと思うのですけれど,日本は国際交流基金がアフィリエイトメンバーになっていて,正メンバーには,残念ながら文化庁さんも入っていないし,新しいアーツカウンシルもまだ入っていません。ただ,ほかの国々は国の文化機関を代表する方がちゃんと参加されていて,残念ながら,交流基金の方もメルボルンにはいらしていなかったのですね。
 1回目がカナダ,次いでシンガポール,イギリス,南アフリカと続いて,今回がオーストラリアでした。次回はチリで行われることが決まりました。これまでは,いわゆるコモンウェルスといいますか,ずっとイギリス連邦の国々だったわけですけど,次,チリでやるということで,南米ですから初めてそこを外れると。その次の会議は,3年ごとなので6年後にあるわけですけれど,韓国のアーツカウンシルの方に聞いたら,当然ながら手を挙げますとおっしゃっていましたし,次回のチリが決まったときも,韓国,スペインとか何カ所か手を挙げた中で決まっています。
 そういう中で日本のアーツカウンシルをこれから強化しようとしているわけですから,そういう国際的な舞台でも,ちゃんと情報発信をしてポジションを示していくというようなことも重要ではないかなというふうに思いましたので,そういうことも含めてワーキング会議で議論できればと思って,紹介させていただきました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。ほかにございませんか。高萩委員はいかがですか。

【高萩委員】  今年度から試行が始まったのはすごくスピーディーでよかったと思っています。けれども,基本的に非常勤の方をPD,POでしかとれないという定員の制約があったので,非常勤の場合にやれることとして,今回,今年度に関しまして,この状態なら審査の基準と,それから評価の基準作りだけをやってもらおうというふうな形に最終的に落ち着いたのですね。
 本来的には,やっぱりPD,POの役割ってもうちょっと違うところにあるんじゃないかという話もしたのですが,やっぱり週2日しか来ない人に余りいろんなことをしてもらうようにしても,結局できないことになってしまうのでとなりました。ちょっと変則的な形だと思うのですけど,結局,この状況を来年評価することになるので,スピーディーだったのですが,今後の段取りが難しいなとは思っています。今度,ワーキンググループを文化庁に作っていただいたので,そこと並行しながら,さっき宮田さんがおっしゃったように,日本ならではという形で芸術を助成していく,支えていくシステムというのをきちんと提案していければなと思っております。ちょっと変則的な感じになって二重になっているように見えるかもしれませんが,そこがきちんと議論できればいいなと思っております。

【宮田部会長】  ありがとうございました。岡本委員,どうですか。太下委員,先に手が上がりましたね。すみません。

【太下委員】    「日本版アーツ・カウンシル」のワーキングでも申し上げた点なのですが,2点ございます。今般のPD・POの導入については,試行という形でいち早く取り組まれた点は大変高く評価したいと思いますが,やはり試行は試行ということだと思いますので,いかに本格的にやっていかれるのかという,そういうプロセスを是非意識して進めていただきたいと思います。
 今回の「試行」は,助成金をどう配分するのかという部分に特化して,非常勤職でとりあえずポジションを作るというところに重点があったように思います。ただ文化振興はアーティストの方,クリエイターの方だけでは進みませんので,それを支える周辺の方,例えば今回のケースですとPD・POの方のような存在がどうしても必要なのだということを,文化庁さんとして是非国内に発信する,という位置付けで取り組んでいただきたいと思います。そのことが,ひいては「文化を支えることが一つの職業になり得るのだ」という,大きなメッセージにつながると良いと考えています。
 もう1点は,今回は,芸文基金さんの助成金をどうしていくのかというところから議論しておりますが,行く行くはいろんな分野に展開していくということを考えて,また更に業務量も多くなっていくということを考えますと,恐らく文化庁さん中心に一極集中でこういう仕組みを維持していくのはかなり難しいのではないかと考えています。そこで,いかに地域に同じような仕組みを展開していくのかと,こういうところまでにらんだ今後の進め方が必要ではないかと考えています。例えば,地域に作られる地域版アーツカウンシルに対してどう支援をしていくことができるのかとか,そういったところもにらんだ議論までできれば,と考えております。

【宮田部会長】  最後の地域のといえば,例えば,福原参与に今日おいでいただいておりますが,東京都なども一歩進めようということで動いておりますよね。

【福原参与】  そうです。東京都の取組はまたちょっと違っておりまして,これはアーツカウンシル東京という名前でやることになっています。それはどういうことかというと,首都大学東京というふうに,全部東京を後ろにつけることが東京のブランドイメージになるという意味なのだそうですが。実際やることは,もう試行の段階じゃなくて実践から始めようということになっていて,どちらが良いかということは私はないと思って,いろんなところでいろんなやり方をしていて,結局,あるところに落ち着くようなことになることを願っているわけです。

【宮田部会長】  そうですね。議論を100万遍やっても,実際に動いてないと,本当の意味での反省もできませんし,一つの歴史を作ることもなかなか可能ではないということで動いていただいておりますが。ありがとうございました。
 岡本委員,どうぞ。

【岡本委員】  本当に手短に。
 もう既に先生方から出ましたが,とにかく前に進めながら,しかしワーキングチームでの,グループでの議論というのはやはり全体的な構造,それから将来に向けてのしっかりとステップを踏んでという意味では,非常に大きな枠組みでの議論が出てきたと思います。
 政策をどういうふうに作るのか,PD,POが信頼というものを勝ち得るためには彼らをどのように支えていくのか,調査研究の部門をどのように拡充していくのか。そして,今,太下委員から,それが職業になるということもありましたが,そのような調査研究というものがしっかりと根づいていくことで,人材の育成というものが日本全国で支えられていくようにというところ辺も含めての議論が出てきましたので,高萩委員から出ました,試行はとにかく進めながら,しかし,かなり大きな構えで根本的にというところを是非ともこれからも進めていきたいと私も考えておりますし,是非ともそういう方向で進んでいけば良いなと思っています。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。委員以外の先生方で,何かございますでしょうか。
 ありがとうございました。
 少なくとも,まずスタートし,その中で反省点などございましたら,改革をしていきながら進めていきたいという考えでいきたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
 それではですね……。はい,どうぞ。

【近藤長官】  芸文振でやっていただいた,とりあえずどういうふうに現実的にスタートするかというあれに基づいて動き始めたわけですが,先ほど来出ておりますように,本格的な導入に向けて,対象となる助成金の範囲――もちろん,分野も今から出しますが,についても,あるいは組織の在り方についても,すべて今の制約を取り払って,どうあるのが日本の芸術文化振興のための公的資金の使用,配分の在り方かということをしっかりと議論した上で,現実につなげていくということだと思いますが,これは芸文振が独法であるということゆえの大変な制約がありますところは,東京都とは違うんだと思います。
 そういう制約の中で我々の理想の姿を追い続けていくのには,かなりのエネルギーが要ると思います。役所はどうしても人が代わりますし,なかなか今の苦しい状況の中でこれをサステインしていくことは難しいと思いますが,是非委員の先生方のお力添えを頂いて,粘り強く,このエネルギーを,このモーメントの高まりを長く維持していくことで,初めて理想を実現すると思いますので,是非末永くと言うと変ですけど,長期間にわたっての先生方の強いサポートを頂きたいと思いますし,私も今のポストにいる限りは最大の努力をしていきたいと思っています。

【宮田部会長】  ありがとうございました。基本的に公的資金……,長官がおっしゃっていましたけど,公的資金の使い方,流れ方をも変えられる新しい進め方ということも非常に大きな問題だと思いますので,それによって文化芸術がより日本的,日本らしい発展が望まれるということでございます。ありがとうございました。
 それでは,議題の3に移らせていただきます。「独立行政法人の制度・組織改革の動向」でございます。御案内の方もいらっしゃると思いますが,政府の行政刷新会議において,この9月以降,独立行政法人の制度・組織の見直しが進められております。文化関係の独法の機能充実については,第3次基本方針(重点戦略1)に盛り込むとともに,昨年開催された国立文化施設等に関する検討会にも私は参加させていただきました。折に触れて本部会にも検討状況を報告,そして議論してきたところでございます。
 そうした経緯も踏まえ,まさに現在進行中の独立行政法人の制度・組織改革の動向について,事務局より報告並びに御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【滝波調整官】  それでは,失礼します。今,部会長からもお話のございましたとおり,政府全体での独立行政法人改革の動きが少し出てきておりますので,現時点の状況ということで御報告したいと存じます。資料3-1,3-2,3-3と,それから参考資料の4-1,4-2,4-3と,ちょっとたくさんあるのですが,このあたりを少し御説明したいと思います。
 まず,参考資料4-1,これをおさらいの意味で少し眺めていただけたらと思います。カラーのやつですが。「独立行政法人改革をめぐる動き」ということで,新政権になって以降の動きがこの表の中に記載をされております。2年前からスタートしました事業仕分けというものが動いてきている。その中で独立行政法人の見直しということもされ,議論がされたということがございました。
 それを受ける形で昨年12月には,右側の下のところ,「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」というものが閣議決定をされているということがございます。そこの中で,事務・事業の見直しがなされることと同時に,今後,改革の第2段階として独法の制度・組織の見直しの検討を進めるんだということが述べられております。
 それを受ける形で,今年の9月以降に具体的な議論を進めるための独立行政法人改革の分科会というものが,行政刷新会議の下に置かれることになりました。それが参考資料4-2でございます。この独立行政法人改革の分科会の設置要綱でございます。この中に,今申し上げた,独立行政法人の制度・組織の見直しの検討を行うことが明記をされております。メンバーとしては,裏面のところのメンバーの方々。それからさらに,この分科会の下にワーキンググループというものを置きまして,大体,役所別に,どこかのワーキンググループでどこどこの省を担当するというふうな役割分担になっておりまして,文部科学省関係は第1ワーキンググループというところに属することになっております。こういった形の会が動き出しているということでございます。
 それから,参考資料4-3でございますが,今申し上げた独立行政法人改革に関する分科会とワーキンググループが9月以降,開催をしてきております。その開催経過を記載したものがこちらでございます。9月21日に分科会の初会合がございまして,それ以降,議論を重ねてまいりまして,10月4日以降はワーキンググループの議論も始まっております。主として省庁と,それから関係法人をヒアリングに招いて,制度や組織の見直しについての考え方を聴取するというスタイルで議論が進んできております。その過程の中では,今日御出席頂いておりますが,青柳委員と佐々木委員については,それぞれ国立美術館,国立文化財機構の理事長というお立場でヒアリングに御参加頂いたということもございました。
 そういった経緯があるということも踏まえまして,資料3-1を御覧頂けたらと思います。資料3-1は「独立行政法人制度改革の基本的な論点」ということで,去る10月14日に開催されました第3回の独立行政法人改革の分科会で配付された資料になっております。この中で,今後の独立行政法人改革を進めるに当たりまして,法人の類型及び規律に関する基本的な論点とその考え方を,事務局で整理をしたというふうなものでございます。
 1ページのところ,論点1としまして,事務・事業の特性に応じたガバナンスということが記載をされております。そういった法人の持っている事務・事業の特性に応じた最適なガバナンスの在り方を検討することが必要だということを述べた上で,箱書きのすぐ下のところで,「今回,すべての法人をゼロベースで見直すことによって」,「1必要性の徹底的な検証の結果,法人の必要性が認められないものは廃止する」ということ。二つ目に,「法人の必要性が認められる場合でも,自律的な経営を徹底することが適当なものは,民営化等を行う」。3として,「行政が関与して公的なサービスを提供する場合でも,徹底した事務・事業の効率化と既存の枠にとらわれない統廃合を行うとともに,次の考え方により,事務・事業の特性に応じた最適なガバナンスを構築する」。というような考え方が示されておりまして,こういった考え方の元で議論をしてきているということでございます。
 この1ページの下から二つ目の段落のところ,「この結果から」というところです。「法人の多様な事務・事業の内容を踏まえて,これまでの一律の制度を適用するという枠組みを見直し,事務・事業の目的・特性・財源等に見られる一定の共通性に基づき,最適な制度の構築について検討する必要性が認められる」ということになっております。
 こういったことで,各特性の検討をしていくということが,ここで示されております。
 2ページ目のところ,上から二つ目の●「文化振興に関する事務・事業を行う法人」というのが記載されております。今申し上げたような考え方の元で,文化の振興を担っている法人についてはどういうふうな特性があるのかというのが,ここに記載がなされております。ここに記載されている内容については,先ほど部会長から御説明のありました,昨年開催された国立文化施設等に関する検討会の論点整理で議論してきたような内容のことがここの中に盛り込まれているのではないかというふうに,私どもとしては考えております。
 特性として,文化・芸術の自主性・創造性や,長期的展望に基づく中立性・継続性,一定の自己収益性といったものがあるのだということを踏まえて,ここに記載のようなことについて,論点として考える必要があるということを述べております。
 少し飛ばしまして,ほかの類型がずっと並んでいますが,4ページの一番下,「今般,」というところを御覧頂きます。「今般,独立行政法人制度の見直しを抜本的に進める上で,こういった諸類型に見られるような法人の事務・事業の特性等から,より最適な制度設計を進める上で異なる取扱いをすべき部分があるか,その場合,各類型に共通して対応すべき内容があるかなどについて,次に示す四つの観点から検討を進める」ということになっております。
 その四つの観点のうちの一つ目が,5ページのところ,「組織規律の観点」ということになっています。ここでは,主務大臣の監督権限をどう考えるかというようなこと。現在,理事長の独任制ということになっておりますが,(2)のところ,「合議制等による意思決定の仕組みの多様化」ということで,そういったものも考えられるのかということの論点を掲げております。
 それから6ページのところ,(3)「有識者による審議機関の設置」ということが記載されていまして,この中で文化振興に関する事務・事業を行う法人について,文化振興に関する専門的な意思決定を行う観点から,「関係する有識者により構成される法人の長の諮問機関を置くことについて」どう考えるかといったことが論点として示されております。
 6ページの下のところ,論点3として,「財政規律の観点」が述べられております。「財政資金の効率的かつ効果的な活用を確保するため」どういうふうに考えるかということでございます。ここの中で,(1)は財政資金の説明責任・透明性の向上ということを言っています。
 7ページ目のところで(2)「自己収入増加のインセンティブの付与,民間資金の活用等」といったことが述べられておりまして,一つ目の●「現在の国の財政事情を踏まえると,国の財政への依存度を低下させるよう,法人の経営努力による自己収入を増加させるためにどのような措置を講じることが必要か」。二つ目の●文化振興に関する事務・事業を行う法人など,「自己収入を得ることが想定される法人については,自己収入増加のための数値目標を設定し,その達成のために努力していくことが基本となるのではないか」。次の●「例えば,こうした目標を達成した場合には,一定の額を超えた自己収入について,その一部を目的積立金として積み立てやすくするほか,次年度以降の運営費交付金の算定基準を緩和することなど,ある程度の柔軟性を与えることをどう考えるか」。最後の●「文化振興に関する事務・事業を行う法人については,自己収入の増加を基本としつつ,民間資金を活用して,収蔵品を円滑に取得する仕組みを整備することが考えられるか」といったような事柄が記載されております。
 8ページ目は,論点4として「目標・評価の改善の観点」ということで,評価の在り方,ここでは従来指摘されている,評価が二次にわたって重畳的になっている,煩雑である,評価しても結果が生かされないといったような指摘がなされているといったことが記載されております。
 9ページ目は「客観的な視点の確保」。(3)「専門性の高い実効的な学術評価」,(4)「中期目標期間終了時の法人の存廃及び管理サイクルの見直し」ということでございます。特に9ページ目の一番下の●「中期目標期間終了時の見直しにおいて,法人の存続の必要性を立証できない場合には法人を廃止することにつき,より明確に規定するか。その際,文化振興に関する事務・事業を行う法人など,一定の法人については,対外的にも継続性が重要であると考えられるか」といったことが記載をされております。
 最後,「考え方5」として,「透明性・説明責任向上」といったことも,併せて論じられております。
 こういったような内容を含んだ基本的な論点というものが,10月14日時点でこの分科会に提示されているというふうなことでございます。
 ここは主に制度面についての内容ということになっております。
 次に資料3-2を御覧頂けたらと思います。先ほど御紹介しましたが,分科会の元にワーキンググループというものを置いておるということで,今,ヒアリングが何回か開催されているところですが,そこの中で議論されてきた内容というものを,同じ10月14日に開催されたこちらの分科会に,中間報告という形でなされたときの書類の抜粋を用意しております。
 ここでは,第1ワーキングの中間報告ということで記載されております。幾つかあるのですが,主なところを抜き書きしたものを用意しましたが,その中で「文化振興を担う法人」として「文化振興を担う法人について,制度の在り方に関する意見を聴取。主なポイントは,国の財政負担を増大させない形で事業充実のための官民共同基金の設置」というようなこと。それから「組織の在り方については,国立美術館,日本芸術文化振興会,国立文化財機構,国立科学博物館のうち,性格・位置付けが異なる国立科学博物館以外の3組織の統合の可能性について引き続き検討」するんだといったようなことが,ここの中に盛り込まれております。ヒアリングの中では,制度もさることながら,むしろ組織面,特に統廃合ができないのかというような視点からのヒアリング,意見交換が主になされてきたところでございまして,現在,ヒアリングが継続的に行われている最中ということで,ここでは中間報告ということになっております。
 次に,資料3-3でございます。この内容については昨年,国立文化施設等に関する検討会の論点整理を,12月にとりまとめいただきましたが,そこでまとめられた内容を,制度改革の提案ということでエッセンスを抜き書きしたものを用意しまして,先ほど御説明した,第1ワーキンググループの方でヒアリングを行うということでございましたので,そこに提出したときの資料がこの資料3-3でございます。
 主なポイントとしては,2ページ目「改革の方向性」というふうに書いたところの箱書きの中に,(1)から(3)まで,主な改革の方向性を記載してございます。(1)国立美術館,国立文化財機構,日本芸術文化振興会といった文化振興を担う法人について,目標設定・評価の仕組みを改善しようということで,現在の独立行政法人評価委員会にかえて,文化に関する専門家からなる委員会を設置するということ。それから,中期目標は法人や委員会の意見を聴いて大臣が策定をする。その際,法人の特性に応じた内容とするということ。それから,現在の総務省による二次評価,あるいは中期目標が終わった時点での業務継続の必要性についての検討といったことを,撤廃してはどうかといったことを記載しています。
 (2)として財務会計システムの改善でございます。これについても,昨年の検討会で言われたことをそのまま書いておりますが,機動的な収蔵品の取得等に対応できるように,こういったものを原資として「官民共同基金」といったものを創設できないかということ。それから,事業費などの運営費交付金の効率化の対象から除外をできないかということ。それから,自己収入が増加できるようにインセンティブを強くしようということで,自己収入の扱いの緩和とか目的積立金の基準の緩和とかといったことができないかということの提案をしております。
 (3)組織業務の改善として,ガバナンスの適正担保の観点から,評議員会といった,理事長の諮問に応じた審議を行う機関を置いてみてはどうかということ。それから,これも大事な点ですが,長期的に法人の使命が達成できるように,総人件費改革の対象からの除外できないか。こういったような内容のことを盛り込んで提案したところでございます。
 これについては,先ほど資料3-1で御説明したとおり,向こうの事務局でまとめた基本的な論点という中に,ある程度その内容が現時点で盛り込まれる方向で議論がなされつつあるというふうに承知をしております。
 最後に,参考資料4-3に戻っていただきまして,下半分のところに参考として「分科会の進め方」というのがございます。これも独立行政法人の分科会で配付をされた資料の抜き書きになっています。今,こういう形でヒアリングがなされているということで,今後,更に議論を詰めていくということで,最終的には,ここの記載にありますとおり,12月のところ,「制度・組織の見直し案の取りまとめ」をして,行政刷新会議に報告をして決定するんだと。それを,必要な法律案の次期通常国会の提出を目指すということで,次期通常国会に関連法案を出す,そういう気持ちでこの作業をしていくということを,向こうとしては考えているというようなことでございます。
 少し長くなりましたが,説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】  はい。ありがとうございました。ちょうど国立美術館,それから文化財機構の理事長としてこの部会にも委員として御参加頂いている2人の先生がございます。青柳部会長代理並びに佐々木委員の2人,余り時間がないのですが,是非とも御発言を頂けたら幸いでございますが,よろしくお願い申し上げます。

【青柳部会長代理】  じゃあ,私から,佐々木委員の前に話をさせていただきます。
 この仕分けに出まして感じましたことは,我々は制度論の中でより効率的な,より充実した活動をどう進めていくかということを主眼に,いろいろ独立行政法人の改革に取り組んでいきたいというふうに考えております。その一方で向こう……,向こうというか分科会というか,ワーキンググループの方では組織論の方に関心があって,全体の百十幾つある法人を幾つ減らすのか,あるいは幾つ統廃合させていくのかということが主眼である。そういう意味で,余り議論がかみ合わないところがあるということを強く感じております。
 特に今回我々4法人,科博はちょっと違いますが,芸文振と,それから文化財機構,それから国立美術館というものは,ある意味で日本の文化政策を担う具体的かつ現実的な,非常に重要なインフラだと我々は認識しております。そういう部分を制度的な,既に福原参与が作っていただいた文化施設に関するワーキンググループのとりまとめにもありますように,一般的というか,文化類型に属さない独立行政法人とはかなり性格の違うものだから,様々なインセンティブを与える。それから,そういう意味での制度改革をするというようなことが既に明示されているにもかかわらず,そういうことはほとんど一切無視して,ただくっつけてしまえば良いのではないかということを,この第1ワーキンググループでは討論されてきております。
 特に私と佐々木理事長が言っているのは,文化財の方は文化財の保存,維持,継承ということが一番の目的であり,それから国立美術館の方は芸術の振興,あるいは創造力のかん養という,そういうように目的は全然違うんだということを幾ら申し上げても,余りそういうことに対しては聞く耳を持たないという形であります。
 しかも,私たち独立行政法人になってから,今2期が終わり,10年が終わり,大体,交付金は約20数%……,27%から28%減っておりますが,実は全体から作品や資料を購入する金額は余り減らしてないのですね。それから事業費の方も減らさないように,なるべく工夫している。そうすると,一般管理費に対して20数%がどかんと乗っかってくるわけです。ですから,一般管理費の削減率だけからいえば,もう5割近く減っている状況なのですね。
 それから,統合すれば本部事務が効率化されるではないかということを言っているのですが,実は,私どもの文化財も,それから国立美術館も本部事務は,例えば国立美術館の場合には東京国立近代美術館の事務が兼務をしている。それから文化財の場合には東京国立博物館の事務が兼務しているということで,純粋に本部事務を扱っている要員は全然いないのです。例えば,大学共同利用機関の中の人間文化研究機構というのがございますが,ここは5か6セクターあるのですが,そこから大学共同利用施設がピックアップして,事務関係だけで33人も本部事務の専任にできるだけの人的余裕があるのですね。ところが,我々のところにはそれが全くない。つまり,のりしろがないのですね。
 そういう状況の中で統合しろといっても,今現在,どう考えても統合のメリットがどこからも出てこないという状況で,このことを,例えばキッコーマンの元社長である,日本芸術文化振興会の理事長だった茂木理事長が,そんなばからしい統廃合をやったってしようがないじゃないか,ガバナンスから見ても全く無駄ではないかというようなことを言って,これに対してはある程度,蓮舫大臣は理解を示していましたが,しかし,全体の流れとしては統廃合――統合なのか廃合なのかというようなところに議論が集中しているのが現状である。
 そういうところでこの文化政策の中でのインフラを担っているところが,組織的にも制度的にも左右されるというのは,私自身は非常に危機感を持っております。だから,文化立国とか言っていても,あの程度のレベルの議論の中で実質的な影響をこの文化施設等が受けていくのかなというのが率直な意見で,そういう意味で,よく文化的に貧しいと言われますが,とんでもなく貧しい状況の中にあるということを,今回,確認させていただきました。
 以上です。

【宮田部会長】  何て言っていいか分かりませんが……。にもかかわらず,冒頭に近藤長官が,0.0何%でも積み上げていきたいと。石垣を積むという言葉が世の中にあるのですが,砂利を積んでもどうにもならないという感じもややありますが。ありがとうございました,御発言を。佐々木委員,お願いいたします。

【佐々木委員】  私も青柳委員と,それから茂木理事長と同席をさせていただきまして,今,青柳委員からお話がありましたことに,特に私としてはつけ加えることはないのですが,全体の雰囲気としては,これは決して気持ちの良い雰囲気ではなかったということは事実でありましてですね。
 やはり文化庁の事務局からいろいろ提出し,検討が必要だというふうに出していただいて,提出しておいていただいておりました改革の方向性,非常に重要な改革の方向性という内容が全く議論されずに,今,青柳委員がおっしゃったように組織論,つまり,せめて統合はできないのかということですので,結局はこれは独立行政法人の数を減らすということが大前提なんだなという,そういう雰囲気を強く感じたわけであります。
 我々ヒアリングを受けている側も,それからバックアップしていただいております文化庁の事務局も,我々の方のスタンスとしましては,こういう行政改革というのは本来,一番大きな目的は効率化がきちんとできるか,それによって成長とか活性化というものがきちんと望めるのかということが,本来の目的であるはずなのですね。我々はそこで常に議論をし,意見を申し上げたのですが,そういう効率化ですとか,あるいは成長というものに,本当はこういう今のやり方というのは反するんだということを,常に我々はスタンスとして持って話の受け答えをしたつもりであります。
 それともう一つは,現在の独立行政法人のそういう制度が続く限り,これはとにかくやっていけない,もう疲弊する一方だということも一つの我々のスタンスとして持って,それに臨んだというところでありますが,結局は話は,現在もそうでしょうが,例えば美術館と博物館というのは同じように展示をやってお客さんを呼んでいるじゃないか,だから,こんなの統合できるんじゃないかというふうなところにいってしまうわけですよね。しかし,それは美術館も博物館もそれぞれの目的が違う,方向性が違う,扱うものが違う,あらゆるものが違う。だから,内容は全く違うんだということは,恐らく委員の方々は,そこぐらいまでは理解をしていただけただろうと思うのです。でも,事務はみんな同じことをやっているんじゃないか,だから,事務部門はせめて統合したらどうなのかという,そこに行っちゃうわけですよね。だから,それは統合しても結局はかえって人員増であって,本来の行政改革である効率化なんていうことにはとてもとても及ばないという話をいろいろしていただいたわけであります。雰囲気としてはそういう雰囲気でございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。貧すれば鈍するという言葉があって,せめて清貧に生きるといっても,そんな場合じゃないんだよということを言いたいですね。先ほど配られましたが,経済新聞の「アートで心の復興を」という,こういうのを見てると,頑張って人々の心をいやして,復興したいというふうな大きな文化庁の,そして私ども委員の先生方の気持ちと,今の議論というのがいかにかけ離れているかということをつくづく感じるのですが,めげずに頑張っていきたいと思います。
 ここで,座長を務めておられます福原参与にも,ちょっと一言いかがでしょうか。突然でございますが。

【福原参与】  今のくだりですか。少し関わってきた者としては,ちょっとこれ,こういうことを申し上げていいかどうか分からないのですが,東京都は文化施設を歴史文化財団という財団にくくって,みんなそこにぶら下がっていまして,7館1施設がそれにぶら下がっているわけですね。ところが,歴史文化財団に財務関係もいるし,各館にも財務関係はいるのですね。これはね,まとめてみたって現場はみんな事情が違っておりまして,難しいのですよね。だから,現場を持たないところにまとめるということは難しいので,これは組織論からいっても余りなじんだ話ではないと思うのですがね。
 大体,改革というと改革する人たちが出てきて,その人たちは,改革をしないと仕事にならないというところがあるということも事実なのですね。理屈で言うことは難しいのですが。それはもちろん,できるだけ努力をするということは,現場ではもちろんしなきゃならないことですし,要請されることなのですが,だからといってという感じもありますですね。

【宮田部会長】  苦しいお立場の気持ち,よく分かりました。同じようなことが,たまたま私も国立大学法人の中に位置しているわけでございますが,教育にまで似たような環境が押し寄せてきておりますので,本当の意味での,以前どこかの首相が言いっぱなしで終わっちゃった米百俵の話じゃないですけれど,こういうときほど,文化,芸術,教育というふうなものに,ほかはさておいても力を注いでもらえたらという気持ちでいっぱいでございます。ありがとうございました。
 まだいっぱいお話ししたい人がいるんじゃないかと思いますが,御発言のなかった方から,どなたか一ついかがでしょうか。宮川委員,どうぞ。

【宮川委員】  この流れじゃなくてもいいですか。

【宮田部会長】  どうぞ。

【宮川委員】  ちょっとお尋ねしたいのですけれど,最初にお話があった重点戦略の3番ですね。「児童生徒のコミュニケーション能力の育成に……」,これは具体的にだれがどんなことをやろうとなさっているのか,あるいはどうしてこういうことがのぼったのか,僕はちょっと不勉強で,新参者なので分からないのですけれど,多分,ここに生かせるであろうアイデアなどは私はとてもたくさん持っているだろうなと自分では思って,そしてここにいるわけなのですが,ここで具体的なお話をしていってもいいのですけど,それはまたちょっと場違いだと思いますので,できれば係の方と,こんなアイデアがあるとかこういう話をこういう人たちとしているんだとかということを,具体的にお話をしたいと常に思っているのですけれど,ちょっと詳しくどなたか説明して,それで,担当の方を紹介していただきたいと思います。

【宮田部会長】  どうぞ。

【山﨑課長】  この事業は,一番下に書いてある「児童生徒のコミュニケーション能力の育成に資する芸術表現体験」ですが,備考のところに書いてありますように,この欄の四つの上の「次代を担う子供の文化芸術体験事業」,この事業の一部で執行しておりまして,実は担当の役所は文部科学省の初等中等教育局の教育課程課というところでやっております。いろいろ予算上の経費もありまして,文化庁の予算の一部を使って初中局がこの事業をやっているという仕組みになっております。具体的には,例えば演劇関係とかそういった芸術家,芸術団体に学校に行っていただいて,学校と連携をしながら子供たちにコミュニケーション能力の育成に資するような,いろんなワークショップとか授業をやるという事業でございます。具体的には,教育課程課の方で担当しています。

【宮川委員】  じゃあ,結局,何かやっぱり見せるというようなことですよね,やられることは。要するに,演劇を見せたり。

【山﨑課長】  単に鑑賞するだけでなくて,一緒に演技をしてもらうとか体験をしてもらうとか,そういったこともいろいろ工夫しながらやっています。

【宮川委員】  分かりました。どこのだれがそういうことに一番興味がおありになるのか,今の話だとよく分からないですけど。
 僕は,教育に演劇をどうして取り込まないんだろうなというのは,ずっと長い間の経験からすごく疑問に思っていて,そういうことで何かお感じになることがある所轄の方とか,それだったら是非話に乗ってくれとかということがあれば,すごく話したいことが山のようにあります。
 また,大きな問題としては,例えば芸術大学に音楽科と美術科とあるのに――芸大の話ですけどね――何で演劇科というのがないんだろうというのは,僕もそこの出身なのですけど,いながらにして疑問だったし,いまだにやっぱりずっと疑問で,教育の目指すべき点が,演劇というものにすべての要素――国語,算数,理科,社会,音楽,美術,体育と,全部がそこに目指すべきものが含まれている。それを小学校からいろんな形で教育に取り入れていくということが,すごく重要というか,それをずっと何十年も思い続けていますので,もし何かあったら,是非僕のコンサートにも来て勉強してほしいなと思いますし,個人的にいろいろな相談やシンポジウムその他いろいろ興味がありますので,御連絡をください。

【宮田部会長】  宮川委員,大変重要なお話,ありがとうございました。ここにいらっしゃる委員の先生方というのは,ここで御発言なさることだけではなくて,こうやってお集まり頂いたことによって,私どもはそれを背負って,優秀な事務方との連携も作っていきながらやっていくということでございますので,そういう意味では,窓口がだれになるかは別としても,山﨑さんとか滝波さんとかいろいろいらっしゃいますので,どんどん言っていって振っていってもらえれば,的の外れない会話ができるというふうに思っておりますので。芸大に演劇という話は,また別に……。よろしくお願いいたします。
 それでは,時間が来てしまいました。まだ御発言なさってない先生が一,二名いらっしゃるので,申し訳ないのですが,次にということにさせていただきたいと思います。
 今後の日程等について,事務局からお願いします。

【滝波調整官】  失礼します。それでは今後の予定ということで,資料の4番に「文化政策部会:当面の日程(案)」というものをお示ししております。本日,第4回の文化政策部会ですが,次回の第5回の文化政策部会は12月14日の16:30からという予定にしてございます。それまでの間に,先ほど議題2のところで審議がございましたが,新しいワーキンググループの方の議論を,その間積み重ねまして,特に次回,第3回のワーキンググループにつきましては12月14日の15:00から16:00ということで,次回の文化政策部会の直前の時間帯ということで,両方兼ねておられる委員の先生方にはダブルヘッダーになりますが,よろしくお願いしたいと存じます。
 以上でございます。よろしくお願いします。

【宮田部会長】  ありがとうございました。冒頭の部分で,もっともっとお話をという気持ちも私の中にもございましたが,先生方からも是非この辺のところをというのがございましたら,まず滝波さんに,いろんな意味で,メールでも何でも結構ですから,頑張ってやっていってください。
 それから,たしかワーキングの中で大川補佐さんも窓口をやってくれていますよね。よろしくお願いします。それから,いろんな若い優秀な事務方がいっぱいいますので,是非是非,山﨑さん,頼みますよ。使ってください。 では,これをもちまして,会議を終了させていただきます。御協力ありがとうございました。

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