文化審議会第9期文化政策部会(第6回)議事録

1.出 席 者

(委員)

青柳委員,秋元委員,伊藤委員,太下委員,加藤委員,高萩委員,坪能委員,浜野委員,宮川委員,宮田委員,吉本委員,渡辺委員

(事務局)

福原参与,近藤文化庁長官,河村文化庁次長,芝田長官官房審議官,大木文化部長,大和文化財監査官,山崎政策課長

2.議事内容

【青柳部会長代理】  それでは,部会長が遅れていらっしゃいますので代行させていただきたいと思います。ただいまより,文化審議会第9期文化政策部会(第6回)を開催いたします。年度末御多忙のところ,御出席頂いて大変ありがとうございます。
 本日は,岡本委員,奥山委員,後藤委員,佐々木委員,里中委員,富山委員,中村委員,西村委員,鷲田委員が御欠席です。さて,今般,文化庁幹部の異動がございましたので,事務局の方から御紹介願います。

【滝波調整官】  この1月6日付で文化庁の幹部に異動がございましたので,その御紹介をさせていただきたいと存じます。 文化庁次長に就任いたしました河村次長でございます。

【河村次長】  河村でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【滝波調整官】  同じく文化部長に就任しました大木部長でございます。

【大木部長】  引き続きよろしくお願いいたします。

【滝波調整官】  政策課長に就任しました山﨑課長でございます。

【山﨑課長】  引き続きよろしくお願いいたします。

【滝波調整官】  芸術文化課長に就任しました舟橋でございます。

【舟橋課長】  舟橋でございます。よろしくお願いいたします。

【滝波調整官】  以上でございます。

【青柳部会長代理】  ありがとうございます。
それでは,議事次第にございますとおりに第1議題としては「第3次基本方針の平成24年度予算案等への反映状況について」,それから第2議題としましては「劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関するまとめについて」,それから議題3といたしましては「第3次基本方針に基づく主要施策の評価手法について」,議題4として「独立行政法人の制度・組織の見直しについて」,それぞれ報告と御意見の交換を行う予定にしております。
 なお,本日は今期最後の部会となりますので,委員の皆様にはどうぞ忌たんのない御意見をお寄せ頂きたいと思います。
 それでは,まず議題1でございますが,平成24年度予算等に関してでございますが,これに関しましては平成24年度政府予算案が閣議決定され,今国会で現在審議中です。平成24年度は第3次基本方針の2年次目に当たりますところから,第3次基本方針の平成24年度予算案等への反映状況について,事務局の方から御説明頂きたいと思います。

【滝波調整官】  それでは,お手元の資料の1と,それから資料番号を振っていませんが,平成24年度文化庁関係予算案の概要という閉じたものと,それぞれ御参照頂きながら説明をしたいと存じます。
 まず,平成24年度の文化庁関係の予算ということで,この冊子の方を御覧頂けたらと思うのですが,表のところに書いてございますように,平成24年度の予算につきましては「文化芸術立国」の実現を目指しまして「豊かな文化芸術の創造と人材育成」,あるいは「かけがえのない文化財の保存,活用及び継承等」といったような文化芸術の振興施策を進めるための予算を計上してございます。
 総額といたしましては,ここに記載のように平成24年度予定額といたしまして1,074億円というふうになってございます。この額につきましては復興特別会計分を含んだ額ということになってございまして,それを除いた額としては1,056億円ということで,過去最高額というふうな額を計上しているところでございます。
 資料1の方で,平成24年度の予算の反映状況ということで御紹介をしていきたいと存じますが,まず資料1の1ページ目の重点戦略に対応したそれぞれの施策ということになりますが,重点戦略1の1つ目のひし形印,「文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入」ということについては平成23年度から実施してきておりますが,平成24年度につきましても引き続き実施していくということで,これは「舞台芸術創造力向上・発信プラン」の一部として計上しているところでございます。こちらの冊子の方につきましては,後ろの方にいろいろな施策のポンチ絵がついております。これについてはこの冊子の29ページのところにその関連の事項が紹介されておりますので,御参照頂けたらと思います。
 それから,2つ目のひし形は「諸外国のアーツカウンシルに相当する新たな仕組みの導入」ということでございますが,これについても平成23年度から試行を始めておりますが,平成24年度につきましても対象分野を平成23年度の2分野,音楽,舞踊から4分野,音楽,舞踊,演劇,伝統芸能・大衆芸能に拡大をいたしますとともに,PO(プログラム・オフィサー)と調査員の人数を拡充しようということの内容になってございます。
 これについても29ページに下のところに「日本版アーツカウンシル」の試行的導入として内容が記載されてございます。
 それから3つ目のひし形,「地域の核となる文化芸術拠点への支援充実」ということについても,引き続き平成23年度に引き続きまして継続することとしてございます。これについても29ページのところに関連事項が記載されてございます。
 それから,その次のひし形,「劇場,音楽堂等の公的基盤の整備について」でございます。これについては後ほど議題2のところで意見交換を頂けたらと存じますが,「劇場・音楽堂等の制度的な在り方に関するまとめ」が有識者会議の方で先月にまとめが出ております。ここの中で劇場,音楽堂等に係る現状,課題,基本的考え方,法的基盤の内容として考えられる事項,劇場,音楽堂等の運営に関する留意事項などが記載されてございます。後ほど御審議頂ければというふうに思っております。
 それから,幾つか飛ばしまして,このページの一番下のひし形,「国立文化施設の機能充実及び運営見直し」ということですが,これにつきましてもまた後ほど議題4のところで御審議を頂ければというふうに思いますが,先月に閣議決定がございまして,独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針というものが閣議決定されまして,国の負担を増やさない形で事業を充実するための制度改革,及び文化関係の3つの独立行政法人の統合を図るということが閣議決定されているところでございます。
 ページをめくっていただきまして,重点戦略2でございます。これもたくさんの事柄が平成24年度予算の中に盛り込んでございますが,少し飛ばしまして3つ目のひし形,「文化財を支える技術・技能の伝承者への支援充実」ということに関しましては,上から4つ目の○印で「文化遺産を活(い)かした観光振興・地域活性化事業」ということが計上されております。これについては,一部ですが,「日本再生重点化措置」というふうなことで位置付けをしたものでございます。地域の文化遺産を生かした観光振興・地域活性化を,この事業を通じて図っていくこととしてございます。
 それから重点戦略3でございます。これについては1つ目のひし形,「芸術鑑賞機会,伝統文化等に親しむ機会の充実」として,1つ目の○印「次代を担う子供の文化芸術体験事業」,これについても継続して実施をしてまいります。それから2つ目のひし形で,「コミュニケーション教育をはじめ学校における芸術教育の充実」ということでこれについても先ほどの「次代を担う子供の文化芸術体験事業」の中で引き続き実施をしてまいります。それから,次のページですが,重点戦略4は「文化芸術の次世代への確実な継承」でございますが,1つ目のひし形,「計画的な修復,防災対策等による文化財の適切な保存・継承」でございます。これらにつきましても文化財の保存修理,文化財の防災施設の整備,あるいは美術工芸品の防災・防犯対策といったような事柄につきまして,引き続き東日本大震災を踏まえまして充実を図ってまいります。
 それから,次のひし形「積極的な公開・活用による国民が文化財に親しむ機会の充実」の中で,下から2つ目の「世界遺産登録推薦等」というふうな事業がございます。この中では,「世界遺産戦略強化事業」ということで新規に事業化を図ってまいります。
 それから,ページをめくりまして,重点戦略5としまして「文化芸術の地域振興,観光・産業振興等への活用」でございますが,ここの中で2つ目のひし形「新たな創造拠点の形成支援及び地域文化の振興奨励」というところの1つ目の○印では「地域発・文化芸術創造発信イニシアチブ」ということで,これも新規に「日本再生重点化措置」を活用した事業として新たにスタートすることとしております。これについては先ほどの冊子30ページのところに少し事例が紹介されておりますが,地域文化の再生,あるいはコミュニティの再構築,ひいては地域の活性化を促進するために,地方公共団体が企画をいたします文化・芸術関連事業を様々な形で支援をしていこうというふうなことで,新たに32億円を計上しているものでございます。
 それから重点戦略6は「文化発信・国際文化交流の充実」でございます。これらについても引き続き実施をしてまいります。ここの中では最後のひし形,「東アジア地域における国際文化交流の推進」ということで,東アジア文化交流推進プロジェクト事業といったことで,新規に事業化をしてまいります。「東アジア共生会議」,あるいは日中韓3か国で「東アジア共生文化都市」を定めて様々な文化芸術活動を開催するための準備を行っていくというような事業でございます。
 平成24年度の予算等につきましても,第3次基本方針の第2年次目ということで,更に充実を図っていくよう努力してまいりたいと存じます。

 説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【青柳部会長代理】  どうもありがとうございます。それでは,今の御説明に関しまして何か質問がございましたら,是非お願いいたします。それから,せっかくの機会ですので,ただいまの予算案を受けた今後の文化政策への期待等についても御自由に発言頂ければと思います。

【高萩委員】  重点支援のところで,つまり平成23年度予算額から平成24年度予算額で,多くのところで予算が下がっているわけです。重点戦略1の「文化芸術団体への新たな支援の仕組みの導入」,35億8,400万円から31億5,300万円とかいう形で,その下がったところはどの辺の指摘があったのかということを説明をしていただくことはできるのですか。
 重点支援で,多分それなりに要求は多く出したのかと思うのですが,何かが認められなかったということですね。

【山﨑課長】  下がったところが幾つかございますが,例えば一番上の文化芸術団体への支援事業等がございますが,まず平成24年度予算の概算要求の段階で,震災復興等の観点から財源を出す必要性があるということから,既存の既定経費については10%減で要求しなさいということがございました。ですので,出発の時点で既存の経費については全体でですが,10%減らさざるを得なかったという事情がございます。
 それから,特にこのトップレベルの文化芸術団体への支援事業については,不正受給の案件もあったり,大変財政当局との折衝においても厳しい指摘があったということは事実でございます。既定経費の部分については減ったところがございますが,そのほか,先ほど滝波から説明がありましたように新たに新規の事業もございますので,全体としてそういった新しい事業も活用しながら工夫していっていただければ,引き続き文化芸術の充実に努めていきたいというふうに考えております。

【宮田部会長】  どうぞ。

【渡辺委員】  例えばなのですが,重点戦略6「文化発信・国際文化交流の充実」ということで,これは非常にすばらしいと思うのですが,仕分けのときにも少し議論が出てきたと思うのですが,やはり国際的なこと,そして特に対外発信とか,対外交流とやっているアクターというのは結構日本の中でももちろん文化庁以外にも外務省とか,いろいろなところがやっていて,やはり何となくすみ分けというか,交通整理みたいなものというのはどうなっているのかなということが,仕分けのときにも出てきたし,あとはやはり素朴に疑問に思うこともあるのですが,現状というのは,どのような形で各省庁間,あるいはいわゆるアクター間のすみ分けというのはなされているわけなのですか。

【宮田部会長】  いかがですか。

【芝田審議官】  御指摘ありがとうございます。
 今,現にどういうアクターがいるかと申しますと,直接関わっているのは文化庁のほかにも外務省というのが大きなアクターとしてございまして,外務省のもとには国際交流基金という大変重要なアクターがいるということでございます。
 大きな役割分担といたしましては,芸術に限らず,広く日本の文化を海外に発信して,その海外での日本のプレゼンスというか,日本の文化に対する親しみを増してもらうという観点からは外務省の方が中心になってやっていただいていると。
 それから文化庁の方では,より芸術的な交流という意味で,芸術のもともとの性質からして国際交流によってクオリティーが高まっていくという面がございますので,そういう面で国際交流をやっていくという,大きなプリンシプルとしてはそういう仕分けになるかと思います。
 ただ,昔のようにどんどん予算が右肩上がりで伸びていった時代だと,いろいろなコンフリクトが生じていた面もあるかと思いますが,最近ではむしろお互いにシュリンクしつつあるというような状況のもとでは,より補完し合うというような部分が増えてきておりますので,我々は定期的に外務省とも,国際交流基金とも会合を持って,お互いにどういう分野で補完し合うかという話合いをしながら一緒に協力するという形で,非常に今はそういう意味では協力関係がうまくいっているという状況になっております。

【宮田部会長】  よろしいですか。ほかにございますか。はい,伊藤委員どうぞ。

【伊藤委員】  今の渡辺委員の話とも実は関連するのですが,最後のページの重点戦略6の2番目のひし形のところに「国際芸術フェスティバル支援事業」,これだけが1割ではなくて大幅に減ったというのは何かあるのか,ちょっとお聞きしたいと思いまして。

【宮田部会長】  いかがでしょうか。

【芝田審議官】  これはある意味特殊な事情と言いますか,我々は大変大きな国際フェスティバルを支援していこうということで,今年度,この平成23年度においては特に横浜のトリエンナーレを支援いたしました。それでたまたま予算がどんとついて,それが来年はないということで,その部分が非常に大きく減らしております。
 もう1つ,東京国際フィルムフェスティバルの方の支援も同時に始めまして,こちらの方は来年度もここに書いてございますが,8,000万円ですか。一応,予算案として計上されているというような状況でございます。

【宮田部会長】  よろしゅうございますか。はい。トリエンナーレが結構大きかったのですね。そのトリエンナーレは評判が結構よかったように思いましたがね。

【芝田審議官】  はい。

【宮田部会長】  よく頑張ってくれたと思います。いかがでしょうか。ほかには。はい,宮川委員,どうぞ。

【宮川委員】  関係ないことなのですが,よろしいですか。

【宮田部会長】  どうぞ。

【宮川委員】  重点戦略3の芸術鑑賞機会というところで,僕はよく仕事の現場で携わる局面がこういうところなのだなと思って見ていたのですが,予算のことは僕は全然わからないのですが,こういう大きな事業というか,たくさんの子供たちに無償で音楽を聴かせる機会というのがたくさんあるということを改めて知りました。
 その中で現場はどうかというと,うまくいっている音楽会ももちろんあると思うのですが,例えばオーケストラのある人はこういう芸術鑑賞会のことを「あしたはジャリコンや」と,「ジャリコン」という呼び方をなさるのです。これは悪気があるわけではないのですが,要するにどういうことが音楽会で繰り広げられているかというと,ベートーベンやモーツァルトの曲を全く場違いな雰囲気で演奏しなくてはならないと,ほとんどの生徒が興味がなくて,先生も寝ていると。すべてとは言いません。僕の音楽会は違うのですが,オーケストラもあの名だたる何とか交響楽団が優秀な交響楽団が名指揮者によって振られているにもかかわらず,半分くらいの音量で,何となく「ああ,これがこう変わってしまうんだな」という,要するに無残な,僕はあんなにこけにされたベートーベンを聞くのは非常に音楽家としては許せないのですが,そういうことも実は当たり前のようにあるのです。
 これはすごく温度差があって,何の温度差かというと,やはり先生の志というか,先生がどれだけ芸術を好きか,あるいは深く理解しているかというところに本当に100%かかっていまして,そこに音楽会に居合わせた何千人という人の中で,芸術の今やっている音楽のことを本当に理解している人が指揮者と,あと本当に数名の音楽の先生と,それしかいないという状況のもとでやるわけです。これで音楽を好きになるきっかけのための鑑賞会であるにもかかわらず,時々音楽を嫌いになるためのきっかけになっているというような声も,楽団の中からは聞こえてきてしまうのです。
 だからそういうことをどういうふうにお考えかなということも興味がありますし,それから先生たちの温度差という意味ではやはり,これも教育だが,その先生たちの文化に対する,芸術に対する認識を深めるということも,やはり同じくらい労力を注がなくてはいけないのではないかなと現場ではいつも思っております。

【宮田部会長】  ありがとうございます。音楽家の方も歩み寄るという部分はないのですか。

【宮川委員】  もちろんです。少しでも面白い音楽会をやろうと,とても考えてやっている楽団も多々ありますし。

【宮田部会長】  是非。

【宮川委員】  私もそのうちの1人だと自負しておりますが,それにしても,同じ面白いことをやっても,やはりいろいろな温度差があるのです。私立の学校でやるとき,公立でやるとき,小学生でやるとき,中学生の前でやるとき,かなり違います。それで先生のリアクションが本当に違って,目をきらきら輝かせている多くの先生に取り囲まれることもあれば,社交辞令を言われて,そのまますぐさよならという場合もあるのです。

【近藤長官】  宮川委員の御指摘の点は私どももよく承知をしております。これはまさにこれまで東京一極集中で,特にクラシック的なものは東京にはいいものが来るが,なかなかそれ以外のところには行かない。幾つかの悪循環があって,したがって地方においてもそういったものを鑑賞する潜在能力がありながら,十分にそれが開拓できていない,したがって需要が少ない,需要が少なければ一流の人が行かない,何かそういう悪循環がこれまであった,それをどうやって戻していくかということが大きな課題でございまして,ほかにもたくさん課題はありますが,その今申し上げた点の,御指摘のあった点の改善の1つのきっかけになり得るのが劇場・音楽堂等の制度的な在り方,必要があれば法的基盤を作って,地方にそういう拠点を作っていく,そこを中心に地方でいろいろなバラエティーのある文化芸術をより深く,よりいいものを,よりよく理解するような環境を作っていく,そういうことが大事だろうということで始めようとしているわけでございます。
 地方が多様であることはおっしゃるとおりで,その結果として,ある瞬間で切ってみれば全く反応が違う,同じベートーベンの5番をやっても反応が違うかもしれません。それはまさに現実であり,これから是正していくべき点だと思います。
 そういう問題意識のもとに,いわゆる劇場法的なものもありますし,それ以外にもこれからはなるべく,今回多く予算がつきましたら,地方での文化芸術活動,あるいは文化財の活用ということを進めていこうと。これはこれまで言われてきた地方主権というものにもいずれは結び付くものでございまして,文化芸術の分野で少なくとも地方がそれぞれ自立して,いいものを,世界に通じるものを作り,そして鑑賞していくような方向に持っていくきっかけにしたいと思っております。
 恐らく相当時間は掛かると思います。今の60数年かかって東京一極集中的なものになってしまったわけで,それを一朝一夕に変えられることはないと思いますが,いろいろな分野で同時並行的に進めていけば,必ず日本人は潜在的には優秀ですし,芸術鑑賞能力もありますし,地方には地方の特色がありますから,私は非常に中長期的には楽観的ですが,短期的には今しばらく御辛抱頂きたいし,特に今御指摘頂いたようなばらつきがあるからといって間違っても仕分けられないようにしていきたいと思っておりますので,是非応援の方をよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  はい。期待をしております。よろしゅうございますか。はい,吉本委員,どうぞ。

【吉本委員】  先ほど伊藤委員が御質問された,この重点戦略6の芸術祭のことで私もちょっと質問があります。これは特殊事情で横浜トリエンナーレのことでぐっと減っているということなのですが,横浜トリエンナーレは冒頭渡辺委員から質問があった仕分けの関係で交流基金がお金を出せなくなって,文化庁が対応するようになったかと思います。そういう経緯で今年度はできたわけですが,トリエンナーレ1つ取っても横浜だけではなくて,愛知もあれば,神戸もあれば,札幌もたしかあるはずですし,瀬戸内もあります。
 それから,舞台芸術系のことについては高萩さんの方がお詳しいかもしれませんが,舞台芸術の国際芸術祭もある。仮にまた3年後の横浜トリエンナーレのときに,またこの部分だけ予算が付いて横浜だけに出るというふうになると,それはほかのトリエンナーレを開催しているところから見た場合に非常に不公平感というか,なぜ横浜だけだということになりかねないと思います。来年度はこれで行くしかないと思うのですが,是非その国際芸術フェスティバル,これは舞台芸術系も,音楽も,それから美術もそうなのですが,こういうものに対してどういうふうに国として支援していくのかということを別途考えて何か戦略を練らないと,場当たり的に予算が増えたり減ったりというのでは都合が悪いと思うのですが,その辺はいかがでしょうか。

【宮田部会長】  はい,大木部長,どうぞ。

【大木部長】  これは年々予算を作っていく際にいろいろな枠をはめられたりしながら査定も受けながらやっているわけでございまして,なるべく単品でもってトリエンナーレだからこの年度にこれという形よりも,少し袋のようなものがあって,そこで出せる方が融通がいろいろ効くわけです。きちんとしたものを選んでいって質の低いものにまで出さないようにするということは,役所の責任できちんとやっていかなければいけないかなと思いながら。
 その話に関しましては,そこの国際フェスティバル支援事業のところだけ見ますと非常に横浜トリエンナーレの影響が大きくてこういうふうに減っているわけですが,そのかわりと言っては何ですが,重点戦略5の2番目のひし形のところで「新たな創造拠点の形成支援及び地域文化の振興奨励」という中で,「地域発文化芸術創造・発信イニシアチブ」というのが32億円付いているという部分がございます。これはかなり雑多な地域振興,地域の活性化のためのいろいろな事業を当然自治体が核になってやるようなものですが,そこの部分につきまして事業費のマックス半分まで見られるというような仕組みがここででき上がっているのです。だから,そこの使い方の工夫によってかなりそのフェスティバルものはきちんと国の予算の手当ができるようになっていくのではないかというふうに思っています。
 逆に横浜トリエンナーレは切られましたが,より包括的な袋ができ上がっておりますので,うまく自治体の方で工夫していただければ,いろいろやり方はあるのではないかというふうに思っています。

【宮田部会長】  ありがとうございました。要するに,この地域発文化芸術創造,その部分においての利活用の仕方でカバーできるということでございます。ありがとうございました。浜野委員,どうぞ。

【浜野委員】  重点戦略6の海外出展ですが,以前からパリのジャパンエキスポで韓国ブースが広いというのはよく知られています。ジャパンエキスポはネームライツで各地でフランチャイズが始まっており,最近ブラッセルのジャパンエキスポでは韓国の出展が一番目立っていたそうです。日本に関するイベントで,韓国のものが同じように並んでいるということは,誤解を招きかねないこともあると思います。こういった実態把握をして,何かやはり対応を考える必要があると思います。

【宮田部会長】  はい。高萩委員,いかがですか。ちょっと今回,高萩委員で1回切ります。延々とこれだけで終わってしまうと困りますので。

【高萩委員】  地域の,地域発の文化芸術創造発信事業の件なのですが,多分いろいろ工夫して予算を取っていただいたと思いますので,是非執行の際も工夫をしていただければと思います。実際,文化芸術活動に関しますと急に何かを作ったりするのはすごく難しいと思うのです。ただ,新規事業で付いているので,できるだけ新規と思われるかもしれませんが,是非次へつながっていくものへお金を出してください。昔,都道府県に1億円ずつついた事業などもすぐにその年だけで終わってしまったようなものもあったと思いますので,既成のものとどう融合させるか,少し新しいものを出していくとかして,是非工夫をした形で執行していただかないと,多分その場限りに終わってしまう。
 先ほどから韓国の話が出ていますが,フェスティバルとか,国際芸術祭的なものを見ても,やはりほかの国と比べるとまだまだ予算が少ないし,規模も小さいので,更に小さいものをまた幾つか作っていくとなると,ほとんど世界規模にはならないし,国際的にもならないと思うのです。
 是非使い方の工夫もよろしくお願いいたします。

【宮田部会長】  はい。その辺もよく鑑みて割り振りをしていっていただきたいというふうに思っております。
 これはまた戻っても結構ですが,1歩進めさせてください。先ほど長官が少しお話をなさいましたし,新聞などにも少々掲載されておりますが,劇場検討会ということでございます。この辺をちょっと進めさせていただきたいというふうに思いますが,よろしゅうございますでしょうか。
 第3次基本方針の重点戦略において劇場・音楽堂等の法的基盤の整備について早急に具体的な検討を進めるということを受けて,22年末よりも,より文化庁において劇場・音楽堂と制度的な在り方に関する検討会が開催されたということでございます。それでその検討会で意見取りまとめがあったので,今後に向けて意見交換をするということでございます。
 検討会の概要について,事務局からちょっと御説明ください。

【舟橋課長】  お手元の緑色の冊子で御説明をさせていただきたいと思います。
 1月13日にこの検討会のまとめが行われたわけでございますが,まず検討の経緯でございますが,恐縮ですがお手元の資料の17ページをお開き頂きますと,この検討会の検討の経緯を記しております。一昨年,平成22年の12月に検討会を設置いたしまして,取りまとめまで11回の会合を開いておりますが,ここに御覧頂けますように第2回,第3回においては関係団体,あるいは有識者からのヒアリングを行っております。また,1枚めくっていただきまして18ページでございますが,第8回では地方公共団体から,これは事務局がヒアリングを行いまして,その結果を御報告して御議論を頂いております。第10回のところでは意見募集の結果についてということで,中間まとめに対して国民の皆様からパブリックコメントということで御意見を頂きまして,その結果も踏まえて報告書の見直しを行い,最終的に1月13日付でまとめていただいたというものでございます。
 審議を頂きました先生方は20ページ,最後のページですが,田村委員を座長といたしまして5人の先生方に御審議を頂いたということになっております。
 それでまとめの概要のポイントを御説明させていただきたいと思います。恐縮ですが,表紙に戻って1枚おめくり頂きますと,目次ということになっております。このまとめは大きく4つの柱になっておりまして,1つは劇場,音楽堂等に係る現状と課題を整理しております。2番目として,この制度的な在り方を考える上での基本的な考え方を整理し,3番目に法的基盤の内容として考えられる事項を整理いたしまして,最後に運営に係る留意事項をまとめているという構成になっております。
 それで,恐縮ですが,2ページをお願いいたしたいと思いますが,2ページ,3ページにおきまして我が国の劇場,音楽堂等の現状と課題をまとめております。まず現状のところですが,この報告書において劇場,音楽堂の位置付けですが,本来,この劇場,音楽堂というのは専ら音楽,舞踊,演劇,伝統芸能・大衆芸能等の文化芸術活動を行い,観客が観賞すること等を目的とした施設ということで,必要な設備,それから専門的職員を配置しているものを想定しているということでございますが,2つ目の○で,我が国の劇場,音楽堂等の現状を見ますと,こうした機能を有している施設の多くは文化会館などの文化施設であるということで,それらの施設においてはスポーツとか,各種行事など多目的に利用される施設として設置されている場合が多いという現状を指摘しております。また,3番目でございますが,これらの文化施設における文化活動については,その設置者等が自主制作をする場合もございますが,多くの場合は貸し館公演が中心になっているというような現状を指摘しております。
 次に,3ページで課題をまとめておりますが,1つ目の黒ポツですが,地方公共団体の文化予算が減少していると,また地方公共団体において,これら施設の文化政策上の役割が不明確であることからその機能が十分に発揮されていないという問題点。また2つ目のポツでございますが,文化芸術団体の活動拠点が東京をはじめとする大都市圏に集中しているということで,地方において多彩な文化芸術に触れる機会が相対的に少ない状況が固定化しているというような問題点を指摘してございます。
 次に,4ページ,5ページで基本的な考え方を整理しております。まず(1)におきましては,文化芸術の役割ということで,これはもう御案内のとおりですが,人々に感動を与えるとか,あるいは心のつながりを形成するものであるというようなことでございますとか,あるいは国民共通のよりどころとして国民共有の財産になるのではというようなこと,また「ソフトパワー」として持続的な経済発展などの基盤となるというようなこと,また,我が国の魅力を高めるということで,ひいては我が国の国力を高めることにつながるというような整理をしております。
 次に2番目で劇場,音楽堂の機能を整理しておりますが,2つ目の○でございますが,文化芸術を企画制作する創造発信拠点としての機能,また鑑賞機会を提供する拠点,また住民が文化活動を行う拠点,また情報を発信する拠点としての機能を有するということで,事業について3番目の○で6つの項目で整理をしております。
 次の5ページの(3)でございますが,今後の劇場,音楽堂等の在り方ということで,1つ目の○でございますが,今後の劇場,音楽堂等の在り方に関しましては,数多く存在する文化施設が有する劇場,音楽堂の機能を生かしながら,国や地方公共団体,民間事業者,公演等を行う文化団体等が連携して,社会全体で文化芸術を提供する環境を整えることが重要であると,そういう認識を示しております。
 次に6ページから法的基盤の内容として考える事項を整理しておりまして,ここで将来,法律を制定する際にどういったことを定めるべきかということを記しているところでございます。一番上の○でございますが,この制度的な在り方を検討するに当たっては,文化芸術振興基本法に定められた基本理念を踏まえるとともに,独立行政法人や地方公共団体,民間事業者などの自主性を尊重して,設置者等の判断のもと,多様な文化芸術活動が実施される枠組みにする必要があるということ。また,2つ目の○では,文化芸術の特質を踏まえまして,短期的な経済的効率性を一律に求めるのではなく,長期的かつ継続的な視点に立って施策を講ずる必要があるというようなことをまとめております。
 (1)が総論でございますが,[1]といたしまして,国・地方公共団体の責務をまとめております。一番上の○が国が果たすべき責務でございますが,国においては我が国の文化芸術の水準を高め,国際的に比肩し得る水準の文化芸術を振興するという観点から,伝統芸能の継承・発展,また国際的に高い水準の現代舞台芸術の創造発信活動等を行う,あるいは国内外への発信を行うことが必要であるとしております。2つ目の○で,地方公共団体の責務といたしましては,地域の特性を生かしながら地域に必要な文化振興に係る施策を自主的に策定することが必要であるといったことをまとめております。
 7ページでございますが,[2]として民間事業者の役割についても触れておりまして,2つ目の○でございますが,これは原則自主的かつ自由に行われるものではありますが,文化芸術の効用に鑑みまして,民間事業者においても必要に応じ国や地方公共団体と連携を図りながら,文化芸術活動に対する取組を実施する役割があるというふうにしております。[3]といたしまして,劇場,音楽堂等と文化芸術団体との連携について触れておりますが,2つ目の○を御覧頂きますと,劇場,音楽堂と文化芸術団体,あるいは大学等との連携,また劇場,音楽堂等相互の連携につきまして,今後更に多様かつ柔軟な連携が図られることが求められることを指摘してございます。
 8ページでございますが,[4]といたしまして,国及び地方公共団体による措置のところでございますが,国・地方公共団体はこの施策を着実に実施するために必要な情報の提供,助言,財政上の措置,その他の措置を講じるよう努めるものとするとしているところでございます。
 (2)が基本的施策でございますが,[1]はトップレベルの活動の支援ということで,これは国において国際的に比肩し得る水準の文化芸術を振興するという観点から,国立劇場や新国立劇場等を十分活用する必要があるということ,また,2つ目の○におきまして,トップレベルの創造活動等を行う劇場,音楽堂等を支援する必要があるということを示しております。
 [2]が地域における文化芸術活動の活性化というところでございますが,国及び地方公共団体におきまして地域において特色ある優れた文化芸術を提供し,地域における文化芸術を振興することができる劇場,音楽堂等に対して必要な支援を行うことが求められるとしております。[3]でございますが,劇場,音楽堂等のよりよい運営に向けた指針の作成ということで,国におきましてはこの劇場,音楽堂等をより一層生かすという観点から,専門的な人材の配置,あるいは運営に関して留意すべき事項や参考となる事項等について指針を作成することが求められるということを記しております。
 4番目は人材養成について述べておりまして,[2]でございますが,国・地方公共団体において人材を養成するために研修や講座等をはじめ様々な機会を提供する必要があるということを述べております。また,9ページの一番上の○でございますが,大学等の役割といたしまして,専門的な知識・技能の習得,あるいは実践的な資質・能力の養成する機会の確保などを行うことが重要であるということを述べております。そのほか鑑賞者拡大のための取組,また子供が文化芸術を鑑賞する機会の提供,それから良好事例に対する情報の収集・提供などは必要であるということを指摘しております。
 次に10ページでございますが,10ページ以降に留意事項ということで,これは法的基盤の内容として考えられる事項以外に劇場,音楽堂等の運営上留意すべき事項,あるいは参考となる事項ということで何点か示しております。まず1は,人材の確保ということでございまして,劇場,音楽堂等の事業を十分行うことができる専門的な能力を有する人材の確保が重要であるとしておりまして,具体的に求められる専門的な能力について2つ目の○で3つの能力に分けまして説明をしているものでございます。
 それから11ページでございますが,(2)ということで,人材の資格について述べておりますが,3つ目の○のところを御覧頂きますと,事業の企画制作に係る能力,あるいは劇場,音楽堂等の運営に係る能力をいったアートマネジメントに係る能力,これについては実際の活動を通じて培った経験や実績が重視される傾向にあるということで,次の○でございますが,このためその資格を有している者のみが一定の業務に従事できる類の資格を設けるということについては,更に検討する必要があるというまとめになってございます。また,次の5番目の○ですが,舞台技術に係る資格に関しましては,現在も照明ですとか,あるいは音響など,能力検定とか技能認定があるということを踏まえまして,適宜こうした制度の活用をすることが期待されるというふうに述べております。
 (3)は,劇場,音楽堂等における事業の評価について述べているところでございますが,1つ目の○にございますように,文化芸術の特性を踏まえまして定量的な評価指標のみによる評価に偏ることなく,定性的な評価指標も設定しまして,バランスのとれた評価を実施することが重要であるということを指摘しております。
 (4)が指定管理者制度の運用についての留意事項を述べているところでございまして,12ページを御覧頂きたいと思いますが,1つは指定管理者の選定についての留意点を述べておりまして,1),2)とございますが,質の高い事業内容が展開できる管理者を選定する意識を更に高めるということ,また指定管理料の多寡がその選定に大きく影響を及ぼさないような選定基準を作成すること,また企画提案型の募集に重点を置くなどの工夫をすることが重要であるということが述べられております。
 次に,指定管理の機関についてでございますが,2つ目の○にございますが,この文化芸術に関する施策を継続的に実現するために必要となる期間を適切に設定することが重要であるとしております。
 それから指定管理者が自主事業をしやすい環境の整備ということで,地方公共団体によっては指定管理料とは別に自主事業の実施などに対する助成を行っているところもあるということで,こうした指定管理者にとって自主事業をしやすい環境を整備していくことが重要であるというようなことが述べられております。
 以上がこのまとめの内容でございまして,このまとめを頂きましたので,これを踏まえまして文化庁としては,先ほど予算の御説明もいたしましたが,必要な施策を引き続き取組を進めてまいりたいということでございます。また,法律の整備につきましては,現在国会の方でも民主党その他議連等でこの報告書についての勉強会などを開催していただいておりますが,そういった先生方の御指導等も頂きながら,この法整備についてどうするかということについて,今後検討してまいりたいというふうに考えております。
 御説明は以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございます。舟橋課長,どうも御苦労さま。
 福原参与,ちょっと突然なのですが,先生は17:00で御退出ということなので,ちょっと何か感想でも結構でございますが,申し訳ございません。

【福原参与】  今の劇場等の検討会にはオブザーバーとして出ていたのですが,まず,今の報告書を御覧になっても,余りに多様な方々のヒアリングをしたので非常にまとめが難しくて,そのことが分かったのと,それから東京と地方の格差,あるいは東京と地方の間のコーディネーションを誰がするか,それから地方に行った場合の専門家というのは全然ないじゃないかというようなことが,また,あるいは配置されていないところもあるわけです。そういう問題点をとりあえず認識したところなので,これから,では法制化するとしたらどういうことがあるかという前提のところで終わっているわけです。
 今まで全く手をつけられていない分野で,多様な施設が多様な運営方針で各地で開かれておりますので,これはもう第一歩のところで仕方がないと言うか,そこまでは来たということだろうと思います。

【宮田部会長】  先生,ありがとうございました。でも,1つの大きな第一歩ではないかなという気がいたしますが,さあ,この件に関しまして同じように検討会に参画しておりました太下委員,お願いしていいでしょうか。

【太下委員】  検討会の一員として,成果と言ってしまうとちょっと口はばったいのですが,こんな議論ができたのではないかという点を3点お伝えしたいと思います。
1つは劇場,音楽堂という言葉からイメージされるようなハードのことではなくて,その機能,ソフトに集中した議論ができたのではないかと思っております。その成果として,先ほど御説明も頂きましたが,人材育成の部分をかなり議論ができたと考えております。
 2点目は,今,福原参与からも御指摘がありましたが,文化庁の事務局の方々に大変御尽力頂いて地方の文化施設のヒアリングを相当していただいたのです。恐らくこれだけ集中的に地方の文化施設のヒアリングをしたことは,文化庁さんとしても初めてではないかと思うのです。その結果,地方の文化をどうすればいいのかというところに確かに着目はできたのですが,さてこれをどうするかと言いますと,確かに御指摘どおり,今後の検討課題と感じております。
 3つ目といたしましては,明確な文言にはなっていないかもしれませんが,劇場,音楽堂の議論を通じまして,狭い意味での舞台芸術の振興ということだけではなくて,社会の公共財としての劇場,音楽堂の在り方というところまで議論できたと考えております。
 一方で,心残りの点と言いますと,関わった委員として若干今後の課題かなというふうに考えている点が2つあります。1つはささやかなことかもしれませんが,こういった劇場,音楽堂で行われているパフォーミングアーツというのは,フローとしてどんどん流れて消えていってしまうものなのですが,これをストックしていく,すなわちアーカイブしていき,二次利用していくことより,公共財として公演をタイムシフトするような形で使っていくということも,今後は検討していくべきではないかと考えています。検討会において,アーカイブ機能のことを御提案はしたのですが,残念ながらこれは文言としては盛り込まれておりません。青柳委員も文化情報の整備と活用「100人委員会」を立ち上げられましたが,私もその一員になっておりますので,是非,劇場,音楽堂という施設機能においても,今後はこのアーカイブという観点もどこかで考えていければと思います。もちろんそのためには予算が伴わないといけませんので,これは継続的にどこかで御議論頂ければと思っております。
 もう1点,関わった者として感じた点は,この検討会は入り口のお題として「劇場,音楽堂に関わる法律が必要ではないか」ということで議論を始めたわけですが,そういう大きなしつらえであった割には国民的な議論の盛り上がりがなかったなということです。これは私自身も含めて,文化政策に関わる人間としてもう少し深く反省した方がいいのかということを感じております。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。先生方,どうでしょうか。ちょっと伊藤委員が早かったかな。

【伊藤委員】  私も仕事柄劇場法にはずっと関心を持っていた人間です。先ほど福原参与がおっしゃったように,今回,劇場,音楽堂に関する状況というものは全国様々な状況であるために,取りまとめが非常に大変であっただろうということは十分推測いたしますし,また考え方として述べていることは非常に妥当ではないかなと思っています。
 ただ,その上で,やはりちょっと歯切れが悪いというのが気になっておりまして,まず制度的な在り方ということを考えるときに,1つは法律を作るような法基盤というものがあると思いますが,そのほかにも文化庁がこれまで様々な形で全国,あるいは地域の文化を発展させるための諸施策をとってきているわけです。ちょっと変な言い方をしてしまうと,一種のインセンティブ政策として,様々な努力に対して支援をしていくというやり方をとっています。
 したがって,今回の制度的在り方もそういったものの組合せ,プラス,今回大きな成果としてそれを支えていく人材をきちんと育成していくということが出てきたと思いますが,人材に関して言うと,私はもう1つ,人材交流を図るような仕組みまで踏み込んでほしかったという気持ちがあるのですが,それはさて置いて,そういったところまではかなり踏み込んでいるのですが,これを受けて次年度の予算の方では法基盤という言葉に一挙に行くわけですね。そうすると,もう法基盤と言いますと,やはりいわゆる劇場法を作るという動きとの兼ね合いがありまして,劇場法に関して言えば,去年は震災があったためにちょっとおとなしくなりましたが,実は一昨年,かなり様々な形で関係者の間でシンポジウム,議論を行ってまいりました。その中では,やはりきな臭さも含めていろいろな声が出ていたのではないかと思うわけです。
 私自身は,最初は劇場法に対して反対という立場を持っていた人間なのですが,しかし,地方自治体の状況等々なども考えてまいりますと,特に指定管理者制度,あるいは地方の文化予算の削減というものを考えていく中で,せっかくたくさん作られた文化施設というものがきちんと機能できるような最低限のガイドラインというものをこの法律に期待する形で途中から転向して,法律は作った方がいいのではないかという立場になっていたわけです。
 しかし,今回これを見てまいりますと,法基盤を整備しなければいけないということは出されているのですが,例えば劇場,音楽堂に関して,例えば登録制度みたいなもので行くのかどうか。いわゆる博物館法ですと,そういう登録という形で,これは劇場である程度のことが決められていくわけです。それを狭くするか,広くするかというのは非常に議論の余地があるところなのですが,そういったことについては一切触れられていない。どちらかというと設置者である国であったり,独立行政法人であったり,あるいは地方自治体に対して責務を課して,こういった形で支えていくようにすべきであるという精神論が書かれているなという感じで読んでしまうのです。
 したがって,この後,議員さんたちがこれをもとに勉強会を始めて,また勝手な独走をしてしまうとまずいのではないかという気持ちも含めて,もう少しこの辺の議論の,特に法律に関する議論がどうだったかということを知りたいなというのが質問であり,意見なのです。

【宮田部会長】  わかりました。ありがとうございます。では,加藤委員もお話しなさって,それでお答えできるようなことが,この双方向をちょっとやってみましょう。

【加藤委員】  大変よくおまとめになられたと思うのです。特に,指定管理者制度についての細かい配慮,こういう点を今後きちんとやっていくべきという御提案が大変建設的で,私も指定管理者制度で随分苦しめられた時代がありましたので,そういう立場から言っても大変共感するところであります。
 その上で,ちょっと懸念点が1点,あと,お願いが2点あるのですが,1つは国と地方自治体と言いますか,国の劇場,音楽堂と地方の劇場,音楽堂の役割分担をあまり明確にするのはいかがなものかなという懸念です。つまり現状が国に相当集中してしまっていて,地方自治体のこうした劇場に余り重要な機能が備わっていないではないかという現状認識としては全くそのとおりだろうと思うのですが,これを固定してしまっていいのかなと。
 例えばドイツの様々な劇場,またそうした創作団体との関係を考えると,ドイツはもちろん地方分権が強いからということもあるかもしれませんが,もちろん演劇,オペラ,音楽,ベルリンが相当程度中心になっているのは事実ですが,近年のことで言うとダンス,バレエの世界で言うと,例えばフランクフルトであるとかブッパタールというような小さな都市も非常に先端的な,国際的に通用するどころではない,国際的なリードをしたような都市も幾つもあったわけですし,それからコンテンポラリーの音楽で言うとダルムシュタットのような都市が非常に機能したし,また一方古典的な音楽で言うとライプチヒとか,ミュンヘンとかいう都市が機能したわけですから,そうした意味で様々なジャンルの様々な多様な国際的に通用する部分を,今現に無いからといってそこの機能を地方の文化施設には余り期待しないで,もう少しそれぞれの地域的特色だけに期待するという考え方は,やや懸念が残るなという点です。
 だから,そのあたりは国のやるべき役割は当然大きくあるわけですが,それ以外の部分についてももっと最先端というか,最もトップクラスというか,そういう考え方もあっていいのではないか。そういう意味では,新潟がアーティストを雇用してやっておられるような例とかいうのは,非常に評価すべき点ではないかなと思います。
 そういう意味で,期待というか,お願いが2点あるのですが,1つはこの中でも何度も強調はされていますが,何と言っても日本の劇場なり音楽堂の最大の欠点は創造性が極めて弱いという点なわけです。そういう意味で,音楽堂や劇場に創造者がいないという場合でも,そう呼んでいるケースが多々あるわけです。そういうことは,いろいろな諸外国の例を引かないまでも,もう全く考えられないできごとなので,もっと創造者が現実に,フランチャイズの例とかを書いてありますが,もっと踏み込んで雇用していく。あるいは劇団が存在するところを劇場と呼ぶんだとか,そうしたくらいの理解をもっと進めていっていただきたいなと。したがって,創造者を何としてもこうした創造機関においては持つべきだという点をもっと強調していただきたいという点が1点です。
 もう1つは,法律化をしていく場合なのですが,10年近く前にできた文化芸術振興基本法のときがそうだったのですが,法律はできたものの,その書かれた精神は生きているとしても,具体的な施策においてこれらが十分政策に反映されてきたかどうかという点を考えると,いささか拙速にこうしたものを作らない方がいいのではないかと。
 少し時間を掛けて,まさに太下委員がおっしゃっておられましたが,国民的盛り上がりに現状,欠けていると思うのです。そういう意味では,国民的コンセンサス,それから国民的な議論をもう少し巻き起こして,いろいろなもっともっと福原参与には申し訳ないですが,まとめるのをもっとややこしくしてしまうような話になるかもしれないのですが,もっといろいろな御意見を伺って,本当に必要だということを皆さんがやはり共通の認識になったところで法律化されることの方がはるかに,今後効果を持ってくるのではないかなというふうに思いますので,そのあたりは法律には少し時間が,ここで決められないことかもしれませんが,そうした働きかけをしていただくといいのではないかと思います。
 以上です。

【宮田部会長】  ありがとうございました。ちょっと視点が違うのですが,いきなり振りますが,秋元委員,劇場でもなく,音楽堂でもないのですが,21世紀美術館は地方ですよね。にもかかわらず,あの発信というのは。

【秋元委員】  いきなり難しい質問で。ちょっと今の加藤さんのお話にどうつなげていいのか……。

【宮田部会長】  全くつなげなくて結構ですから。

【秋元委員】  いいのですか。

【宮田部会長】  はい。

【秋元委員】  今の加藤さんの御発言にどこかで間接的につながるかなと思いつつ,話してみます。どこかで発言したいなと思っていたのが,今回の重点戦略5の中の「文化芸術の地域振興,観光・産業振興」というところで,地域発の文化芸術創造発信イニシアチブが新しくできて,いろいろな先生の御意見があったと思うのですが,その中で,今地方都市の中で文化をやっていくときに,やはり幾つか重要なキーワードがあると思うのですが,その中で,1つはやはり継続的に,プロフェッショナルなあるレベルのものをやっていける体制が,その地元の中にあるかどうかというのは,やはり大きいと思うのです。
 今,地方都市の文化,地域再生というふうに考えても,国際的なセンスなり,国際的な発信力というのを抜きにしてはなかなかいいものにならない……。たとえ小さな地域であってもそうですね。直島の例を見ても,3,500人の島ですがあれだけの国際的な評価も得られるわけで,やはり今,地方の再生を考えていくときには,人口規模とか,産業規模といった,都市の大小など,今までの都市評価軸とは異なる視点から土地なり地域なりを見ていく必要があると思います。歴史性や地域性に独自性があり,それを磨けば国際的なレベルで発信していけるようなところであれば,それを高いレベルで磨いていけるようなプロフェッショナリズムが地元にきちんとあるということが大切だと思います。
 今,美術や音楽などの文化事業をやっていないところはないくらい,文化は日本中に広がったのだと思います。ただそれが個性的か?あるいは国際的か?というと必ずしもそうなっていない。先ほど近藤長官のお話にもありましたが,それぞれで個性を持ち,あるものはこの音楽では国際的な評価を得ているとか,現代美術では非常に注目されているとかといった個性化が必要になってきていると思います。日本を見渡したときにそれぞれ個性を持ち,多様な特色を持った奥戸になっているということが大事だろうと思います。文化庁としては,地域の特色を生かしながら国際的な活動をしているところをフォローしつつ,国際的にみて文化発信力のある都市をどう作っていくかということが次の時代の課題だろうと思います。
 せっかくなのでいろいろなことを話してしまいますが,先ほど国際展の話が出てきましたが,今回の横浜トリエンナーレがうまくいった理由の一つに,横浜美術館が中心になってトリエンナーレを動かしたからです。横浜美術館は,まさに継続的に,そして,プロフェッショナルに美術を扱ってきた専門文化施設です。だから実は当たり前といえば当たり前なのですが,なぜか最近は,街作りと美術は,美術館以外で行うといったような風潮になっていますが,本来は美術館がその中心にあるべきなのです。横浜で継続的に美術を発信している横浜市の美術館がメーン施設になり,組織としては美術館のディレクター,キュレーターなど専門家と横浜市の文化や都市計画の関係部署や文化施策をつかさどっている財団等と横断的に連携して全体を考えてひとつの目標に向かったということが大切なことだと思います。地域経済や産業振興,観光施策,社会教育,文化振興と組織的には縦割りになりますがそこが,通常は出先機関と考えられがちな美術館とつながり,行ったということが重要だと思います。文化施設がきちんとその役割を演じていけるかどうかがポイントだと思います。だから単に専門的に優れているというだけではなくて,そういうふうな,一方で他の縦割りになりがちな横の部署とどう結びついていけて,まとめていけるかというマネジメント力も必要になると思います。
 特に地方都市の場合は,専門的なだけでは駄目で,ほかの問題も同時に考えていけるような関係が組織的に構築できないとうまく進みません。文化を街全体の問題にしていけるような視点,それがない限りはやはり再生しないと思うのです。単に文化的に優れたイベントをやっているだけでは,やはり難しい。やはり教育だ,地場産業だ,商店街とかも含めた観光だとかいったところとどうリアリティをシェアできるかというところがないと,継続できないし,難しいと思うのです。ちょっとまとまりがない発言ですね・・・。

【宮田部会長】  いえ,そういうことをお聞きしたかったのですが,やはり包括的な連携がとれていることが1つの成功事例になるのではないかと思います。ありがとうございました。すべてはやはりつながっていくと思うのです。それが劇場であろうと,音楽堂であろうと,美術館であろうと,町の公会堂であろうと,そういうふうなことが言えるのではないかというふうに思います。
 これらも法制上の取扱いなど,いろいろなことがありますので,勘案しつつ,政府の中で適宜うまく取り計らってもらって,形を作っていってもらいたいというふうに思っております。ありがとうございました。
 ちょっと押してきております。先生方,久しぶりなので,みんなたまっているなというのがよく分かるのですが,かといって2年前みたいにやり過ぎるのもいかがなものかという気がするのですが。
 それでは次に,申し訳ないのですが,議題3の主要施策の評価手法について,事務局よりさくっと御説明頂けますか。

【滝波調整官】  それでは,まずは事務局の方からごく簡単におさらいだけさせていただいて,その後はこの調査研究の受託者であるニッセイ基礎研究所の吉本委員の方から御説明頂くということにしたいと思います。
 おさらいということで,参考資料3を改めて御覧頂けたらと思います。参考資料3ですが,これは前回,12月14日にもお配りした資料でございます。「平成23年度文化政策の評価手法に関する調査研究」の事業計画の概要でございます。この調査研究ですが,後ろの方をめくっていただきますと,7ページにこの調査研究の仕様書というのが書いています。この7ページのところを少し御覧頂きますと,事業の趣旨として少し書いていますが,PDCAサイクルを確立しようということでやっていることでございます。第3次基本方針の中でPDCAサイクルの確立が言われて,この方針を踏まえて文化政策の評価に必要な指標の開発などに関する調査研究を行うということにしているものでございます。
 2番の事業の内容として幾つか書いていますが,この(2)で様式例の考案をしようというのが,この調査研究であります。様式例は2種類あって,1つは実用的な様式例のローマ数字1で,アンケート調査票など個別の取組事例に関する基礎的なデータや効果の測定の様式。それから様式例の2として,施策全体の評価ができる様式,そういうものを考案していこうということになっているわけでございます。この文化政策として対象とする主要な施策としましては,ここに記載のA・B・C・D・E,8ページまでの間ですが,こういう5つの事業について取り上げてみようということにしたわけでございます。これについて,昨年末から調査研究を着手して,今,第1回の調査研究会を開いたところですが,そこらあたりのことについては吉本委員の方から御説明頂けたらと思っています。

【宮田部会長】  では,吉本委員,お願い申し上げます。

【吉本委員】  それでは,時間が押しているということですので,なるべく手短に説明したいと思います。

【宮田部会長】  よろしくお願いします。

【吉本委員】  資料3を御覧ください。この資料3に全体の概要がありまして,もう1つ,机上に配付しております資料3補足資料という部会終了後回収と書いてある資料があると思いますので,そちらも参照頂きながら,御説明したいと思います。
 まず,資料3の1ページを御覧ください。これは,これまでどういう作業をしてきたかということを簡単に整理したものですが,先ほど滝波さんから御説明がありましたように5つの事業が対象になっておりまして,そのうちのトップレベルの舞台芸術創造事業につきましては,芸術文化振興会の方で今,検討が進んでいるということで,この表のBからEまでの4つのことについて評価指標の開発の作業を進めております。
 具体的にはBからEに共通でございますが,まず各事業の政策の中での位置付けを確認いたしました。これは基本方針もそうですし,文科省と言いますか,文化庁の施策の中での位置付けも含まれています。それから前回のこの部会で御報告しましたが,各事業の目標というのが必ずしも明確ではないということがございましたので,評価指標を作るための戦略目標というのを4つの事業について設定をいたしました。次に,事業の枠組みに基づいたロジックモデルというのを作成し,そのロジックモデルに基づいて各事業の評価指標,データの収集方法,調査項目の検討等を行いました。その上で,先月の16日に1回目の調査研究会を行い,そこの議論を経て,今は先ほどの説明にありました様式1の中の採択団体向けのアンケート調査票の案というものを作成するところまで進んできております。
 今申し上げました作業を並行して,各事業の文化庁の御担当の方とも意見交換をこれまでに3回ほど行っております。それで,資料,特に補足資料の方が大変複雑なのですが,そちらを御覧頂かないと具体的なイメージが湧かないと思いますので,補足資料の方のB-1というページ,最初の表紙をめくったところを開けていただけますでしょうか。A3の分厚い方の資料です。この1ページ目の資料に作業の全体像が書かれているわけですが,左上の方に事業の位置付けとしまして文科省の施策の体系の中での位置付け,それから第3次基本方針の中での位置付けを整理し,その下にあります事業目的のところで,もともとあった応募要領の中にある目的をここに記述し,そのほかの資料,それから実際の応募のあった団体のやっていらっしゃる事業の内容などを踏まえて,この劇場・音楽堂の場合は,ここに書いてあります5つの戦略目標というものを設定しております。その下にあるのは事業の内容が分かるよう簡単に説明したものと,実際どういうところが採択されているかということを例示したものです。それに基づいて,ちょっと飛んで申し訳ないのですが,B-7まで何ページかめくっていただけますでしょうか。これがロジックモデルというものでございまして,左側からインプット,リソースですね。資金なり,人材なり,そういうものを投入して,具体的にどういうアクティビティ,活動を行うか。そこから発生すると思われるアウトプット,ここでは公演回数などが相当するわけですが,アウトプットがあり,その右側に短期的なアウトカム,長期的なアウトカム,さらにそこから生まれるであろう波及効果としてのインパクトというものを,なるべく細かく整理をしようということでやったものがB-7からB-8,9というふうにございます。
 こういう作業をした上で,これはとても説明し切れませんので,申し訳ありませんが,もう1度B-1というものに戻っていただきますと,右側の表にアウトプット,アウトカム,インパクトとございますが,この3つの階層に分けて考えられる評価指標の洗い出しをし,それに基づいて様式の1と2でどういうことを調べるべきなのか,把握するべきなのかというのを整理してございます。
 これを全部説明すると大変時間がかかりますが,この作業を基本的に4つの事業についてそれぞれやっておりまして,今全体がどういう状況になっているかというのが,先ほど御説明しました資料3の1ページに書いてあります。
 これも説明すると時間がかかってしまいますので,ちょっと飛ばしまして,同じ資料3の3ページに調査研究会の目的と,それからメンバーが出ております。この部会からも太下委員に調査研究会委員をお願いしていろいろと御協力を頂いております。1回目の議事概要は,その次の4ページをめくっていただきますと,ここに概要を整理しておりまして,いろいろと建設的な御意見を大所高所から,あるいはディテールにわたって頂戴をしております。全体的にはこんな形で進んでおります。
 それで,1つだけ具体例を御説明しないと,作業イメージが全然伝わらないと思いますので,この補足資料,A3の厚い方の資料のEについて御説明をしたいと思います。後ろの方から5,6枚目のところにE-1というのがございます。左側の事業目的のところを御覧頂きますと,募集要領の中では,日本各地に文化創造と国際発信の拠点作りを推進することというふうに目的が大きく書かれているわけですが,具体的に行われている事業をいろいろと見まして,その真ん中あたりにあります評価指標作りに向けた戦略目標ということで5つ設定をしております。ちょっとこれを読みますと,1番が,日本の文化芸術に対する理解を促進し,日本に対する親近感を醸成すること。2,国際的な視点から芸術家の創造活動,作品創造に対して貢献すること。3,日本の文化芸術の水準向上と海外発信,芸術家等の国際交流を促進すること。4,創造的人材の交流・滞在によって,地域や住民に新たな活力を創出すること。5,文化芸術を通じた国際的な相互理解を促進すること。割と長期的な目標やゴールが分かるような形でこの5つの目標を設定して,細部の設計に入っているということでございます。
 このE-1の右側の中で,様式1のアンケート票には3種類あり,それから様式1のグループインタビュー等には2種類あるわけですが,一番急ぐのが様式1の中のアンケート調査票の2だろうということで,これは採択団体向けに行うアンケートなのですが,それについて,今案ができております。それがE-2以降になります。これもざっと流れだけ御説明しますと,E-2を見ていただくと,左側が実際のアンケートの設問です。それで右側にこの設問がそもそも何を目的とした設問であるのか,それをどういうふうに分析するのか,なおかつ,この評価指標の開発はPDCAサイクルを確立することが第1の目標ではあるのですが,この事業の成果を広くアピールするためのデータを集めるということも重要だろうということで,そういった視点からそれぞれどういう考え方でこのアンケートの設問があるかということも整理をしております。それからその右側の下にあるちょっと太枠の部分は,実はこのアンケート票が効果的かどうかということについて採択団体の皆さんから御意見を聞くような形を想定していますので,その記入欄を設けてありまして,今,全部で20団体くらいの方に,このEに関してはたしか4団体くらいだったと思いますが,御協力頂くことになっています。
 E-2の左側のところは,これはアウトプットを把握する項目です。人数,期間等,そういったものを把握するということで,例えば分野のところを何年か集計したときに,仮に美術,音楽がすごく多いというようなことになれば分野を見直すということを検証できるというような設問の設定になっています。
 それから,駆け足で申し訳ないのですが,その次のページに行っていただきまして,E-3を御覧頂きますと,クエスチョンの2,クエスチョンの3もアウトプットに相当するところでございます。年齢,性別,それからどこの国から来ているのかといったことを把握して,例えば来ている国や地域に偏りがあれば,仮にヨーロッパ,北米が中心だということであれば,そのプログラムを見直してアジアに重点的にやるようなプログラムを作るとか,そういったことをできるのではないかというふうに考えております。
 それからクエスチョンの5というのが,アウトプットからアウトカムに架けてのことで,具体的にどういう効果があったかと。これは今も事業報告書の中にどういう効果がありましたかということを自由記述する方式になっているのですが,それでは分析のしようがありませんので,ある程度効果を想定して,何に一番効果があったとかいうことを統計的にというか,把握しやすくするような設問になっております。
 それから,その次のE-4に行きまして,クエスチョンの6です。これが戦略目標に対してどれくらい効果があったか。つまりこの補助事業が先ほど御説明しました5つの目標にどういうふうに効果があった採択団体は思っているのかということを把握する設問でございまして,先ほど御説明しました5つの戦略目標ごとにどの程度効果があったかということを採択団体の方に答えていただく。さらに具体的な効果,エピソードを拾うために自由記述で書いていただくということになっています。
 さらに,同じ設問の形式で「ではこれを長期的に続けると,どういう効果があると思いますか」ということで,これは将来のインパクトに対する見込みをここで何とか把握したいということでございます。
 それから,クエスチョンの8は,この制度について具体的に改善を要望するものが恐らくあるだろうということで,とりわけこのEについては,今年度に始まったばかりの事業ですので,募集の方法に始まり,様々なことについて,もし改善を希望するものがあれば書いてくださいという形です。
 さらに次のページ,E-5に行っていただきますと,今までのパートが補助事業そのものの効果を把握するパートでして,E-5以降は,それをやっていらっしゃる団体さん,例えば美術館であったりとか,それからNPOであったりとか,いろいろとアーティスト・イン・レジデンスだけではない事業も様々やっていますので,その団体の事業,活動全体にどういう効果があったのかということを把握しようというような設問になっております。
 クエスチョンの11は,文化庁の補助金がどういう効果があったかということで,これはその団体にとってのアウトカムです。例えば事業や活動全体の質を高めることができたとか,運営体制を強化することができたとか,それから補助があって将来の展望を描けるようになったとか,そういったことを把握したいということです。
 それから,その一番下の方にありますクエスチョンの13なのですが,これはその団体として改善したいと思うことを聞いていると。これは「改善をしたいと思うことはありますか」と聞きながら,実は問題点や課題を把握したいと考えています。つまりどういう問題点を抱えていますかと尋ねて,スタッフ数が足りないというのはなかなか答えにくいので,改善の希望を聞くことによって,その問題点を把握し,問題点を把握することによってどういう助成の枠組みが必要なのかということを検討できるのではないかというようなことを考えております。最後のページは団体の概要に相当する組織なり,予算の規模ということですね。
 それで,今はこういう状態になっていまして,これはEのアーティスト・イン・レジデンスの採択団体向けのアンケート調査票なのですが,この後,Eのアーティスト・イン・レジデンス事業については,実際に招へいをしたアーティストであり,学芸員であり,そういった方々へのアンケート票を作り,それからグループインタビューの設問の項目のようなものを併せて作り,それができた段階で,今年度この調査に御協力頂くアーティスト・イン・レジデンス事業をしている実施団体さんに実際にこれを書いてもらい,その上でコメントをもらって,そのブラッシュアップの作業をすると。その上で2回目の委員会を行ってというような段取りで,どれくらい時間が掛かるのだろうと思いながら今作業をやっているという最中でございます。
 ちょっと複雑で申し訳ないのですが,とりあえず現状報告ということで,是非御意見があれば頂戴したいと思います。よろしくお願いします。

【宮田部会長】  はい。
 吉本委員しかできないわ。本当によく書きやすく,その後の始末のしやすさというのを常に考えながら動いている感じがいたしました。大体アンケートというのは,するときはするのだが,その後がパンクするというのがいつも現状でございますので,非常に後半のこともお考えの上でのクエスチョン意識が非常にしっかりしているような気がいたします。
 この1個1個をまたここで議論しておりますと,ちょっともうほとんどパンク状態になってしまいますので,この辺のアンケートの調査票だとか,政策全体の評価,これを検討していただいて,その結果が有効に反映するようにということで,第3次基本方針の重要テーマでございますので,それが期待される効果を得られるように皆さんで知恵を絞っていきたいと。そして,それを吉本委員がうまくまとめていただいたところで,事務局との連携をとるという段取りでいきたいと思います。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 はい,どうぞ。

【太下委員】  吉本さん,御説明ありがとうございました。実は私も委員で入っていながら,なかなかキャッチアップするのに難しさを感じました。これからすごく膨大な調査をされて大変だなと思うのですが,1点だけ,細かいことかもしれないのですが,全体に関わることで確認させていただきたいと思います。
 先ほどE-1ページで,評価指標作りに向けた戦略目標という部分を御説明頂きましたが,これは前回のこの場の議論を踏まえて,要は仮説的に目標を設定されている部分ですね。これは仮説ですので,実際に採択団体側等々に投げかけたときに,例えば「いや,もっとこういう大きな目標が実はあるんではないか」といったフィードバックもあるような気がするのです。ですから,それを拾い上げるような質問というか,アンケート票になっていた方がいいかなと思います。恐らく現状では採択団体の様式検証の記入欄という中でフォローされるようになっているとは思うのですが,もっと明示的にそれを設けた方がよりよいサイクルになるのではないかと思います。
 以上です。

【吉本委員】  ありがとうございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。その辺も含めてよろしくお願いいたします。
 それでは,議題4に移らせていただきます。文化関係の独立行政法人の機能充実については第3次基本方針の重点戦略に盛り込まれております。昨年9月以降の行政刷新会議において独立行政法人の制度・組織の見直しが進められてきたと。前々回の10月19日の部会において見直し状況について報告を受けたわけでございますが,その後の行政刷新会議の検討結果が取りまとめられ,政府として閣議決定がなされたということでございます。
 まずは今回の政府において決定した独立行政法人の制度・組織の見直しの概要について,事務局から報告をしていただきたいと思います。

【滝波調整官】  それでは,手短に御説明したいと存じますが,資料は参考資料4の方を御覧頂けたらと思います。
 参考資料4,「独立行政法人の制度・組織の見直しについて(概要)」というものでございます。これは今,部会長からもお話がございましたように,昨年の9月以来,行政刷新会議の中に独立行政法人改革の分科会が設けられて,ヒアリング等を交えながら議論を進めてまいりまして,今年の1月19日にその分科会報告というものが取りまとめがあり,翌日1月20日に政府として閣議決定がなされたというふうな流れになっております。
 その内容ですが,参考資料4のローマ数字1のところで,独立行政法人の制度・組織の見直しの背景と基本的考え方が書かれています。3つ目の○のところでアンダーラインが引いていますが,「政策実施機能を最大限発揮させ,経済成長や国民生活の向上につなげていく」ことが不可欠だというような考え方のもとで,今回の見直しがなされている。その下の●印で「このような認識の下,制度・組織の在り方を抜本的かつ一体的に見直し」をするのだということで,[1]として「国の政策実施機能の強化等の観点から」組織をゼロベースで見直す。そして廃止や,自律的な経営が可能な法人の民営化などを実施しようということ。それから2つ目に「事務・事業の特性に着目して類型化」をする。そして類型ごとに最適なガバナンスを構築する。それから3つ目に政策実施機能の強化,効率性の向上の観点から法人を再編していくのだといったようなことが基本的な考え方として示されているということです。
 それからローマ数字2として,制度の見直しでございます。「1.法人の事務・事業の特性に着目した類型化とガバナンスの構築」ということですが,新たな法人制度に位置付けられる法人について,特性を踏まえて大きく2つに分類しようということになっております。1つが,[1]としてある「成果目標達成法人」という種類の類型でございます。これは一定の自主的・自律的裁量を有しながら,計画的な枠組みのもとで事務・事業を行うことにより,主務大臣が設定した成果目標を達成することが求められる法人だということです。この法人は,多種多様な事務・事業を実施していて,その特性に着目をして,一定の類型化を行った上で当該類型に即したガバナンスを構築しようということになっております。
 点線囲みの中に幾つか類型の例が書かれていますが,また後ほど御紹介しますが,研究開発型,金融業務型,文化振興型といったような幾つかの類型を作っていこうということになってございます。
 それから次のページに,[2]として「行政執行法人」というものも別途作ることになっているということでございます。
 そして2番として,「新たな法人制度に共通するルール」ということで,これまた幾つか書かれておりますが,[1]としては法人の内外から業務運営を適正化するための仕組みを作っていこうということ。それから[2]としては,財政規律の抜本的な強化を図るのだということになっていまして,この点は少し御紹介しますと,交付金について事業別の予算の積算(見積り)・執行実績を公表して予算と実績のかい離を把握する。それから,不適切な支出と法人内部の不要資産の留保を防止する仕組みを作っていく。それから自己収入に関する目標を設定させ,国の財源に依存しない経営を促進していこうということ。それから経営努力で自己収入を増加させた場合などにおけるインセンティブを強化しようと,こういう考え方が示されています。
 [3]としては,一貫性・実効性のある目標・評価の仕組みの構築をしようということになっていまして,主務大臣が法人の中期目標の設定から評価までを一貫して実施するように改めるということ。それから1つ飛ばして,中期目標期間の終了時などにおける法人の改廃などの判断の仕組みを導入する,いわゆるサンセットというものですが,こういったものを導入していこうということになっています。
 少し飛ばしまして,ローマ数字3として,独立行政法人の組織の見直しということに関しましては,各独立行政法人の組織の見直しの結果,新聞報道等もなされましたが,現在102の法人があるところ,65の法人に大幅に数を減らすということになっているということでございます。
 概要についてはこのようなことになっておりまして,それで資料4-1と4-2があるのですが,4-1が刷新会議の分科会の報告書の抜粋でございまして,4-2が閣議決定がなされたものでございます。内容は基本的に同じような内容のことが書かれているのですが,4-1の方が詳しくて,4-2がそれを少し縮めて書いたような感じになっています。
 4-2の方で少し御紹介したいと思いますが,今,ざっくりと御説明した概要がずらっと書かれておりまして,そこの中で,この資料4-2の2ページの下のところでございますが,先ほど申し上げた類型化をして類型化ごとにガバナンスを構築しようということがなされることになるわけですが,そのうちで成果目標達成法人も幾つかの類型に分けるということが書かれておりましたが,その中で[2]として「文化振興型」というのが新しく類型化されるということになっています。そこの中で「美術品・文化財の保存・活用や芸能の振興等文化・芸術等の分野の振興に関する事務・事業を行う法人類型」として新しく文化振興型というものを作っていくと。構築すべきガバナンスとしては,「有識者による審議機関を設置し,重要事項を審議する」,それから「民間等の資金の活用を図り,国の負担を増やさない形で事業を充実し,必要な収蔵品を機動的・効果的に購入等するための仕組み(基金)の整備を検討する」ということになっております。
 幾つか飛ばしまして,この資料の最後のページでございますが,点線の下に別紙というふうに書かれていまして,これは見直す組織の再編について別紙形式になっておりまして,その中の抜粋をここに記載しておりますが,文部科学省関係として,1つには国立科学博物館に関しては「文化振興型の成果目標達成法人とする」,それから国立美術館,国立文化財機構,日本芸術文化振興会,この「3法人は統合し,文化振興型の成果目標達成法人とする」ということになっております。「統合に際しては」ということで幾つか書かれておりますが,「『国の負担を増やさない形での事業の充実に向けて,制度の在り方を検討する』とされた趣旨を踏まえ,必要な職員数・予算を確保するとともに,真に自己収入の増加に向けたインセンティブが確保されることが不可欠」だということで,こういった統合するに当たりましては,[1]として「一定の自己収入を美術品等の管理等を行う専門職員の確保に使用できるように」しようということ,それから[2]として「目的積立金が運用上,弾力的に認定されるように」しようということ,それから[3]として「我が国の美術品や文化財等の海外への流出等を防ぐとともに魅力ある収蔵品を機動的・効果的に購入できるように」,「民間資金等を活用した『基金』を設置」しよう,それから4つ目として「シナジー効果を十全に発揮するため法人本部機能を拡充するといった制度設計・運用を行う」という,こういったことが今回閣議決定がなされたということになります。
 なお,この事柄については,そのページの点線のすぐ上の○印,「この改革の実施に必要な措置については,平成26年4月に新たな法人制度及び組織に移行することを目指して講じるものとする」というふうになっておりまして,これに向けて現在政府部内で新たな仕組み作りに向けての法制化の作業等が順次進められつつある状況になってございます。
 文化庁といたしましても,関係法人と御相談しながら,この閣議決定を踏まえた対応ができますように相談・協議を進めていきたいというふうに思っていますことと,それから折を見ましてこの部会の方にも御報告をして御指導も頂きたいと思っているところでございます。簡単ですが,説明は以上でございます。

【宮田部会長】  ありがとうございました。ちょうど,きょうは国立美術館の理事長でもございまして,こちらの会長代理でございます青柳委員においでいただいているので,この決定について御所見や今後に向けた取組などをちょっとお話頂けたら幸いですが,よろしくお願いいたします。

【青柳部会長代理】  私ども仏教国に住んでいるので,諦めについては慣れていまして,改めて私は自分自身が仏教徒であるのかということを思わざるを得ませんでした。それで,ともかくこういう決定がなされたわけですが,ただ,やはり国立美術館,国立文化財,それからファウンディングエージェンシーである日本芸術文化振興会というのがどうして1本になり得るのかなという,芸文振から国立美術館,国立文化財にお金を流してくれるのだったら,大変すばらしい組織ではないかと思っております。
 その講ずべき措置の中に,かなり1,2,3,4と具体的に書かれていますが,しかしよく見ると,具体的なのは3番目の基金を設置するということだけであって,あとは例によって財務省等の裁量の中に入ってしまうのであれば,更に我々は厳しい状況にただただ行くだけであるという感じがします。
 ともかく,しかしこういうものが決定されたわけですから,それから国民の皆様の期待はきちんと把握しておりますので,これからも皆様の御支援を得ながら,より充実した活動ができるように努力していきたいと思っております。

【宮田部会長】  仏教徒ではない人もいるかもしれないので,頑張りましょう。ありがとうございます。
 この件に関して,御質問等々ございませんか。よろしゅうございますか。まあ,頑張ってやっていきましょう。1つの形ができたわけでございます。
 それでは,本日は今期の最後の回となりますので,近藤長官から一言御挨拶頂けますでしょうか。

【近藤長官】  第9期の文化政策部会の今期最後の部会の閉会に当たりまして,一言御礼とお願いの御挨拶を申し上げます。
 まずはこの,ほぼ1年間,大変熱意ある,本当にすばらしい議論を展開していただき,またアドバイスを頂きまして,誠にありがとうございました。
 今,恐らく我々を取り巻く情勢は非常に急変を遂げておりまして,大きな転換期にあるような気がいたします。それは金融危機もそうですし,アラブの春のような民主主義の行方もそうですし,エネルギー問題,高齢化問題,いろいろなものすごく大きな問題が複雑に絡んで世界を席巻している,そういう中で我々,我が日本も同じようにそのあおりをくらい,また我々自身の問題もあって,かなり苦しい状況が続いておりますが,いろいろな政治・経済・福祉といった改革を進めていく中で忘れてはならないのが一人一人の人間の持つ能力であり,やる気であり,力であると思います。そしてそれを養う重要な役割を担っている分野の1つが文化芸術であるというふうに確信をしております。
 したがって,大きく日本自身の制度も変えていこうとする中で,どうやってこの文化芸術が持つ潜在力をフルに発揮させるかということが我々文化庁の大きな課題であり,また文化政策部会の先生方にお願いをする点であると思います。
 特に今,金融危機もあってマーケット,市場と国家の役割ということが大きな議論になっていると思いますが,文化の振興,あるいは文化芸術の力を国民一人一人に浸透させるのも役割はマーケットが担うのか,国家がやるのか,パブリックセクターがやるのか,そういう大きな課題があると思います。今すぐ答えが出る問題ではありませんが,現状を見る限り,また日本人の国民性とか,今の経済状況等を見れば,やはり国家がある程度の支えをし,方向を示す,それをしっかりやらないと,目の前の経済情勢,あるいは高齢化等にまつわる社会問題に流されてしまいがちだと思います。我々がここで頑張って,文化芸術の役割がこういうときにこそ発揮されなければいけないという信念のもとに,限られたリソースの中で政策をとっていかなければいけないと思っています。
 そういう時期に,昨年は第3次基本方針が閣議決定されるとともに,ちょうど文化芸術振興基本法が成立してから10周年という年でした。文化財保護法というのは戦後すぐにできて,それなりに成果を上げてきましたが,この基本法はまだそれに比べれば具体的な成果がないと,先ほどたしか加藤委員からも御批判があったと思います。基本法成立から10年がたち,文化政策部会では3つ目の基本方針を取りまとめていただいて,そして恐らく3・11というものもあって,文化芸術の分野でも何とかしなければという気運がかなり高まっていると思います。その具体例がアーツカウンシルであったり,地方の活性化,あるいは拠点作りという意味で,先ほどの話題になりましたいわゆる劇場法であったり,そういった動きが具体化してきたと思います。10年たって,それまでどちらかというと精神規定だったと思われてきた基本法が,文化政策部会のお力もあってやっとアーツカウンシルの設置,あるいは劇場法的なものを作る,そういった具体的な施策にトランスレートされてきているような気がいたします。大変有り難く思っております。
 アーツカウンシルにつきましては,御案内のように,既に試行が始まり,PDやPOが決まり,そしてまた来年度は予定どおり予算案が組まれています。この予算案が通れば,更に4つの分野に拡大をしていくということで,一応前に進んでいきます。具体的にどう進めるかということで,最初は芸文振の中でたしか9回の会合で当面どうするかという議論をしていただき,その後,昨年の秋にこの部会のもとにワーキンググループを作っていただいて,その次にどうするかということを議論していただきましたが,まだ踏み込みが足りないというおしかりも受けたことをはっきりと記憶しております。
 私としては,是非ホップ・ステップ・ジャンプで,次の大きなジャンプが来るべきだと思っております。それがジャンプである以上,これまでの枠組みにとらわれず,法律であれ,慣習であれ,制度であれ,日本にとって文化芸術の力が最も国の隅々まで,人間の心の隅々にまで届くにはどうしたらいいか,そのためにはどういう公的資金の配分の在り方,評価の在り方,そして改善の在り方がいいのか,真っ白なところから議論をし,あるべき姿を提示するのが,この第3段階のジャンプの主要な目的になるのだろうと思います。
 結果として,今の文化庁の職務とか,人数とかを見直してアーツカウンシルを盛り立てるんだという御提案が出るかもしれません。もしそういう方向へ進むのであれば,それはそれで1つの方向であると思いますし,霞が関で自分の身を切るということはこれまではなかなか考えにくいことでしたが,国民の,国のためになることであれば,それも潔く受けるという組織こそが最も進んだ国民から称賛される組織であろうと思います。そういう可能性を含めて,是非大きなジャンプを御検討頂きたいと思います。
 また,劇場の在り方についてもまだまだ踏み込みが足りない面もございますが,先ほど加藤委員から,国民的議論が十分でないという御指摘があり,全く同感ですが,それを待っていたのではなかなか進まないのかなと。日本人の国民性の体質として,ある程度国が行き先を示す,その後具体的にどうするか,どこまで行くかは国民に考えていただく,そういうことも必要かなと思います。特に今のように経済・社会面で一人一人が自分自身の問題を抱えているときに,なかなか国全体の文化芸術の在り方を考えて,それを投票行動に表すゆとりはないような気もいたします。そういう中で,我々がある程度先生方の御意見を踏まえて指針を示していく,そういうときではないかと思います。
 それから,限られた資源を使っていかに日本の国のイメージを文化芸術の面で上げていくかという点では,先ほど御質問がございましたが,なかなか外務省,交流基金,観光庁,それから内閣府,いろいろプレイヤーはいますが,協力を深めていって1+1=3になるようにするということも,一層真剣に考えなければいけないと思います。これも省庁の壁を取り払うという霞が関の住人は余り得意ではない分野に入りますが,これもやらなければいけないと思います。
 きょうお手元に配ってあります世界文明フォーラムというのは,今週の月・火と行ったものですが,これもかなり大きな思い切った仕掛けではございましたが,これをやるに当たっては,大使館という日本政府が持っている非常に貴重な財産をフルに使わせてもらいました。外務省とそういう意味で連携をして,それぞれが持っているものを持ち合って成果を上げたと言えるのではないかと思います。
 ここまで盛り上がってきたアーツカウンシルであれ,劇場法であれ,いろいろな取組,これは是非このモメンタムを続けていかなければいけないと思います。どうしても役所は人がかわってしまいます。2年,3年でかわって,またゼロからやり直しだと,なかなかこういう盛り上がりを継続するのがうまくいきませんが,そこは是非文化政策部会の方で御指導を頂き,我々もよくフォローして,途中でまた,法律は作ったが中身がないとか,制度は作ったが実施されていないとか,アーツカウンシルは作ったが機能していないとか,そういうことにならないように,しっかりと完全に育てて自らを評価し,自らを改善していけるくらいにこういった,例えばアーツカウンシルが育つまでは是非目を離さずに叱咤激励(しったげきれい)を頂ければと思いますし,私どもも交代があってもそういう基本的なスピリットは続けていくと,それを引継ぎの第1にするということで,是非,せっかく頂いたこの1年間のすばらしいアドバイスが結果として生きるように,最大限の努力をしていきたいと思いますし,そのための引き続きの叱咤激励をお願いしたいと思います。
 ちょっと長くなりましたが,この閉会に当たりまして私の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

【宮田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,事務局より,今後の日程等々も含めましてお願い申し上げます。

【滝波調整官】  本日の御審議ありがとうございました。定刻になりましたので,ここでこの部会はお開きにしたいと思います。
 なお,今期,この部会の後に今度は総会というのが開かれることになりますので,そこの総会の方には部会長の方から今期部会における審議の状況の御報告を頂ければというふうに思っております。2月中を目途に開催していくこととなっておりますので,よろしくお願いします。
 それから,きょうの資料の中で資料3の補足資料があったと思いますが,これは調査研究を今している最中の過程のものということになりますので,会議後に回収をさせていただきますので,机の上にそのまま置いていっていただければというふうに思います。
 今期,本当にお世話になりました。ありがとうございました。

【宮田部会長】  すみません。きょうはちょっと遅刻をしまして,申し訳ございません。この時期,一番「師走」なのです。いろいろな意味で。師が走るというときでございます。少し遅れましたことをおわび申し上げます。
 本当に先生方におかれましては,ありがとうございました。この中身の濃い厳しい御批判,いろいろなものを含めて,それは明日の日本のためだというふうに思っております。忌たんのないお話をたくさん頂きました。ありがとうございました。
 さあ,それをどうやって具現化するかが,ここからの問題になってきます。特に私などは現場を預かっている人間ですので,それが即若者へ反映し,そうすると次世代にそれがしっかりと色濃く出てくるのかなという感じがします。是非とも皆様,よろしく御指導お願い申し上げます。ありがとうございました。

── 了 ──

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