文化芸術への助成に係る新たな仕組みの在り方に関する
ワーキンググループ(第3回)議事録

平成23年12月14日

1.出席者

(委員,オブザーバー)

衛紀生委員,太下義之委員,岡本真佐子委員,片山泰輔委員,片山正夫委員,高萩宏委員,武濤京子委員,宮田亮平委員(座長),湯浅真奈美委員,吉本光宏委員関裕行オブザーバー,根木昭オブザーバー,福原義春文部科学省参与

(事務局)

近藤文化庁長官,吉田文化庁次長,小松文化部長,石野文化財部長,大木政策課長,山﨑芸術文化課長,清水芸術文化課支援推進室長,大川芸術文化課課長補佐

2.議事内容

【大川芸術文化課課長補佐】  皆さんこんにちは。お忙しいところ,今日もお集まりいただきましてありがとうございます。早速ですが,会議に先立ちまして資料の確認をさせていただきたいと思います。

<配付資料の確認>

 では座長,よろしくお願いいたします。

【宮田座長】 それでは,ただいまより第3回の文化芸術の助成に係る新たな仕組みの在り方に関するワーキンググループを開催したいと思います。委員の皆さんにおかれましては,ご多忙のところご出席いただいて,まことにありがとうございました。非常に少ない,しかし中身の濃いという状況で,一歩前へ進みたいという信念のもとに先生方の英知をいただきまして,今,在り方についてのまとめの案が資料1としてご提示されております。約7ページにわたりますけれども,ぜひともこれを進めていくということでご検討いただきたいと思っております。
 冒頭で恐縮なんですが,16:30より文化政策部会がございます。当然,そこにはこの議題が乗るわけでございますので,先生方のご協力をいただきまして,その時間までにはきちっとひとつ形をつくり上げたいと思いますので,ご協力のほどお願い申し上げます。
 本当に活発なご意見をいただいたことに改めて感謝申し上げます。
 では,意見をまとめていただいたものですから,この資料1に基づきまして,これは大川さんのほうからご説明をいただきたいと思いますので,先生方,マーキングするところはマーキングするという形で動いていっていただきたいと思います。少し長くなるかもしれませんが,丁寧にきちっとお伝えいただければと思います。では,よろしくお願いします。

【大川芸術文化課課長補佐】 <配付資料の説明> 

【宮田座長】  ありがとうございました。意見が一致しなかったため並列的に記載した意見については,先生方のご意見の中で非常に重要な部分でありますが,やはり,本ワーキンググループで明らかになった論点をより重要視して行きたいと思います。このワーキングの冒頭で,長官からも私からもお話しさせていただきましたが,まず進めることによって当然出てくる弊害があります。しかしそれは,プラスの方向に進むためであるということを考慮し,まず柔軟に前へ進めていけたらいいなと私は思っております。
 どっちにしても信頼性が非常に重要だなということ,それから調査員ということが単なる官憲のような環境になってはいけないし,利益団体になってもいけないということ。それから,やはり文化庁と振興会とのパイプ,この辺を非常に友好な環境の中になっていただければ,より大きな文化助成ができ,文化国家ができ上がるのではないかというような気がいたしております。
 さて,この件に関しまして先生方でご意見がございましたら,お時間を少しとらせていただきたいと思います。いかがでしょうか。
 この会議が終わりましたら,このことを文化政策部会において報告をさせていただくという手順で今日持っていきたいと思っております。いかがでしょうか。
 この短期間の中に,非常に有意義なことを,先生方のおかげで推し進めていただいておりますが,1つの形をつくると必ずそれに対して,見方が違うとプラスな方向に行きませんので,どちらにしてもこのPD・POというのは非常に優秀な人材を求められると思います。スタートですので,人材の的確な確保と同時にPD・POも教育していくという関係ができ上がってきたら,とてもよいスタートになっていくのではないかなという気もちょっとしております。先生方,いかがでしょうか。太下先生,どうぞ。

【太下委員】  太下です。これからの発言は,別に文言の修正を求めるものでなく,ニュアンスの確認をさせて頂きたく思います,資料1の3ページ目の一番上の丸の項目で,「また,一定期間の契約をして,PD及びPOの職に就くことが,キャリアパスとなるようにする必要がある」という表現がございます。これはあくまでも現状の試行を踏まえての表現であって,現状,非常勤で,特に若くて優秀な方がここに来るだろうという想定のもとにこういう表現になっていると思うんです。しかし,これから日本に定着してほしいこのPDなりPOが,芸術文化の振興において大事な職業であるということを考えると,さらっと読むと何となくこのPD・POというのは何か腰かけのようなイメージがなきにしもあらずの部分があるので,むしろ今回,文化庁と芸術文化振興基金において試行されるこの新しい体制を通じて,日本にこういうPDとかPOという芸術文化団体の活動に寄り添って,パートナーとしてそれをより育てていくということが,1つの専門的な職業として確立されるような方向に行くと非常にいいんじゃないかなと思っています。
 ご案内のとおりアメリカではここ10年ぐらいベンチャーフィランソロフィーという形で,NPOの活動を育てていくというときに,単に資金を提供するのではなくて,非資金的な支援で組織のキャパシティービルドアップというんでしょうか,能力開発を一緒にやっていくということが非常にメジャーな動きになっておりますので,おそらく日本においても,これから芸術文化振興において一定以上の額のバジェットを出す場合には,単にお金を出すということではなく,PD・POがその活動を行う団体に寄り添って,よりよい方向に一緒に歩んでいくという専門的な職能になることが,日本に定着するようになればいいなと思っております。
 あくまでこれ,表現の修正じゃなくてニュアンスの確認という意味でご意見させていただきました。

【宮田座長】  ありがとうございます。大変ありがたい言葉です。
 片山先生,どうぞ。

【片山(正)委員】  太下先生,大変いいご指摘をしていただいたと思うんですけれども,POは,実は非常にクリエイティブな仕事なんですよね。その点がなかなか今までの報告書では読み取れないのが残念な気がします。例えば英語で言うときにチャリティーとフィランソロピーを対置して言うことがあります。これらは同じ公益活動に対する寄附,助成でありますが,チャリティーのほうは,とにかく今ここに危機や困難があって,困っている人がいるから助けるんだという支援の在り方をいいます。それに対してフィランソロピーというのは,危機や困難が起こる原因にさかのぼって考え,その要因を変えていくという取組です。そういうフィランソロピー的な助成をしていけることにこそ,POを置いている意味というのはあるわけなんですよね。
 それから,ここにもちょっとは触れられていましたけれども,コーディネーター的な部分が重要です。つまりお金を出すだけでなく,人と人をつないでいくとか人と情報を結び合わせていくような仕事,これを資金的な助成と組み合わせてやっていくことで,倍にも3倍にも効果をあげていけるという,そういったところが非常に重要なのです。やはりプログラムオフィサーには考える時間が必要なので雇用,あるいは仕事の形態,環境,こういったものはぜひご留意していただきたいなと思います。
 それから,ここに出てきた問題について,両論併記で出ていたような部分について述べさせて頂きます。これは,まず一義的にはプログラムオフィサーが考えていくべき要素というのはかなりあって,例えば評価の問題。個々の助成の評価,あるいはプログラム自体の評価というのは,それも含めてプログラムのデザインなんですよね。ですからこれはPOの仕事なんですよ。ですから,POにどうやって良い仕事をしていただくかということが非常に大事です。あるいは,助成団体に法人格を求めるか求めないかという問題も,まずPOからボードに諮ってもらうべき問題だと思うんですね。
 ですから,POの仕事の環境というものがやはり重要だと思いますので,今後ぜひご配慮いただきたいと思います。

【宮田座長】 いや,いいお話ですね。私どもの教育現場でもマネジメントとか,いわゆる作家とか表現者だけではなくて,その媒体になってくれる人というのを育てるのは大変難しいですね。私ども苦労しておりますが。今回のまとめが成立しますと,人材育成ができて,文化芸術が多くの方に伝わっていく方向になるのかなという,何か夜明けのような気がしております。ありがとうございます。
 ほかにございますか。

【片山(秦)委員】 失礼します。静岡文化芸術大学の片山です。私も修正ではなくて,記述されていることについてのニュアンスの確認というような意味で発言させていただきたいと思いますが,資料1の3ページの上から3つ目の丸で,「PD及びPOが文化芸術の各分野の利益代表となってはならない」という記述がありますね。これは非常に大事なところかと思います。一番最初のワーキングのときに私自身が申し上げたんですけれども,お金の流れだけを見ると,国のお金が芸術団体や芸術家に流れるという形をとっていますけれども,決してこの助成金の受益者はその芸術家や芸術団体ではなくて,トップレベルにしてもすそ野を広げることにしても,それを通じて国民全体の公益を実現するためのものであるということです。先ほどお二人の委員の方がおっしゃられたPD・POのミッションということともつながるんですけれども,あくまでも芸術界の特殊利益に貢献するのではなくて,その芸術の発展を通じた公益に寄与するものだということ,ここが非常に重要です。特に90年代などアメリカでは連邦政府の助成金が議会で非常に強く批判にさらされたときも,一時は予算ゼロという,上院で決まったりもしましたけれども,そのときもやはり特殊利益に貢献するような税金の使い方というのが強い批判にさらされたということもありますので,やはり芸術の助成金の意義ということを強調する上では,この部分を重視していくことが大事だなと思った次第です。

【宮田座長】  ありがとうございます。国民のお金で来たものを還元するということですから,それが無駄金にならないということですね。ありがとうございます。
 衛先生,どうぞ。

【衛委員】  私は調査員のことについて発言させて頂きます。別にこのまとめの文言で十分だと思うんですが,現行の芸術文化振興基金の審査を私もやっておりましたが,現場に評価のために行くということが努力目標なんですよね。義務になっていないんです。すると,このワーキングのキーワードの1つである信頼ということがやっぱり不十分になると思います。なので,私は調査員を本当に多数配して,とにかく現場に行くことが重要だと思います。とりわけ,例えば地域の場合は,もう来てくれただけでウエルカムなんですよね。専門委員会の審査をなさる先生方は,ほとんど東京ないしは東京近郊に住んでいらっしゃる方ですから,東京のものは大体見られるんですよね。ところが地域のものは,旅費や日当も出るんですが,基本的には行かないというパターンなんですね。
 これは,文化庁の優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業についても同じ状況なんですね。やっぱり審査している方が私どもの劇場に来ないんです。来ないで何でその審査ができるのかということは,非常に不信感を持つんです。事業にはものすごい数の申請がありますから,各分野,このPD・POだけで何とかするというわけには到底いかないので,やっぱり調査員の増員というかかなり大きな数の調査員に期待したいとは思っております。

【宮田座長】  ありがとうございます。調査員というのはミシュランの調査員みたいに隠れてやったほうがいいんですか。そんなことはないんですよね。

【衛委員】  名乗ってもいいんじゃないですかね。

【宮田座長】  いやいや,でも本当,私は生まれが佐渡なんですけれども,やはり若いころ,国の人が来てくれたというだけで,島全体の何かどきどき感があったのを今,衛先生のお話でふと思い出しましたね。ありがとうございます。いかがでしょうか。岡本先生。

【岡本委員】  私も何ら修正を求めるものではなく,意見ということで発言させていただきたいと思います。先ほど片山委員から,やはりプログラムオフィサーというものの重要性ということがご指摘になられて,本当にそのとおりだと思います。できる限り,その職についた人が自由に動ける環境をつくってあげるというのは,最終的には文化芸術というものを新しい方向に推し進めていく上で非常に重要なことだと思っています。
 その意味で,もちろん評価というのは,文化芸術の新しい動きというのは,分野をまたぐような新しいものが出てきたときにクリエイティブなものになると思います。その意味で,どういった評価ができるのかというのは非常に重要なことだと思います。どんなに事業が新しくても,それを受け取る評価の枠組みがそれに合っていないと従前に評価ができないという問題があります。
 ですから,POの方が,どういうところをどう評価してもらうのかということを考えていただくと同時に,それを受けとめられる評価の体制をどうつくるのかということは重要なことかなと思っております。
 そして,資料1の4ページについて発言させていただきたいと思います。「新しい仕組みにおける事後評価については,文化庁において実施する事業評価と相互に関連するものであることに留意する必要がある」と記載があります。このとおりなんですけれども,今,各活動でそれにふさわしい評価をしたときに,既存のいわゆる上部団体の評価の形とずれてしまうということがあって,その場合に評価が二重構造になる,2倍の労力がかかってしまうということが起こっております。
 ですから,このあたり,できる限り緩やかに,現場に従っていい評価の仕組みができてきたときには,それを受け取れるような連動の仕組みができていくといいなと思っております。以上です。

【宮田座長】  ありがとうございます。そのとおりだと思います。
 どうですか先生方,ごらんになっていただいて,大体こういう新しいことをしようとすると,文章を読んでいるうちに何を言っているかわかんないという傾向があると思いますが,今回は非常に具体性があると思います。この会議に出ている人しかわからないんじゃなくて,このまとめが日本中の皆さんが読んで,なるほど,この方向で行こうということができるような文章になってくれると,生きているような感じがするんです。
 もう少しお時間がございますが,いかがでしょうか。

【宮田座長】 そうでございますか。ここには大きく文化庁並びに振興会ということになっておりますので,よろしくどうぞお願いします。ありがとうございました。
 今後,まとめの内容について何かご意見ございましたら,またお集まりになるということも非常に難しくなりますので,大変恐縮ですが,それほどの座長の力はございませんけれども,一任ということで乗せていただいてよろしゅうございますでしょうか。
吉本先生どうぞ。

【吉本委員】  一任に反対するというわけではなく,ぜひ宮田座長によろしくお願いしたいと思います。あえて両論併記になる箇所について,現時点ではこういうまとめでしっかりとここでの議論が残っていくということが重要だと思うんですが,両論併記になっているということは,そこがこれから検討すべき重要なポイントになってくるということだと思うんです。例えば,先ほど衛さんがご指摘いただいた資料1の6ページの(7)の地域の問題について,全部両論併記になっているというのが象徴的ですけれども,そのあたりは今後どういうふうに検討されて議論されていくのか。
 それから,来年度概算要求に,既に演劇,伝統芸能・大衆芸能のPO・PDを増やす方向で要求されているということですけれども,例えばその対象分野で「トップレベルの舞台芸術の振興創造事業」以外の事業も検討したほうがいいんじゃないかとかいう意見も出ました。資料1の1ページの「はじめに」の5段落目に,「今後,文化庁における検討に委ねる」というふうになっているわけなので,このまとめで,ある程度具体的な方向が出た事柄についてはそれを具体的に進めるべく動いていかれると思うんですけれども,ここで両論併記になったことについては今後どういうふうに検討されるのかということをちょっと教えていただきたいなと思います。

【宮田座長】  そうですね。大川補佐,どうぞ。

【大川芸術文化課課長補佐】 貴重なご指摘ありがとうございます。今回あえて両論併記させていただいたのは,やっぱりいろいろなご意見があったということを残すということとともに検討すべきことは検討すべきということで,地域については,今後,実際に動かしていくときに,まさに行政改革の流れの中で実現可能となるのはどういうことかということを踏まえるとともに,今,まず試行で動いておりますPD・POの方々がどういうふうな体制でやっていくとうまく機能するのかというご意見も聞いていかなければいけないと思っております。
 様々な状況と情報を集めながら,今後検討していくということになると考えております。

【吉本委員】  今,試行中ですから,試行の結果を見きわめないと次に行けないというのはまさしくそうだと思うんですが,同時にスピード感というのがやっぱり重要だと思うんです。新しい仕組みとか入れていくときは,思い切って決断をして次のステップに行くスピード感も必要かなと思います。
 地方の話で言うと,たしか大阪も橋下さんがアーツカウンシルを検討するというようなことをおっしゃっているようですし,東京都でも既に検討が進んでいます。手順を踏むことは重要ですけれども,文化庁が率先して検討して,地方公共団体においても同じような動きが起こって,日本の芸術文化の振興や助成の仕組み全体が勢いを持ってぐいぐい変わっていけるように,スピード感も持ってやってほしいなということをちょっと申し上げたいと思います。

【宮田座長】  ありがとうございます。

【小松文化部長】  今のご指摘,ごもっともだと思いまして,理論的にこうあるべきだという姿と,それから現実にできる部分とのずれというのもあると思いますので,試行するということと,あと芸術文化振興基金の体制がどのぐらい整っているかということも考えないといけないと思います。今の体制を強化しながら,なるべくスピード感を持ってやっていきたいと思っております。

【宮田座長】  ありがとうございます。どうぞ,高萩先生。

【高萩委員】  全体的にもうこれでまとまっていると思うんですけれども,ワーキンググループの在り方について,発言させて頂きます。つまりワーキンググループは,かなり意見を集約できる場所だと思うんですが,ワーキンググループにおいて意見の並立をそのまま上げて,文化庁に検討してくださいというのはちょっとあまりにも今後よくないと思います。今回,時間の問題などがあったと思うんですけれども,今後やはり,ちゃんと議論を整理して,最初に挙げられた論点については,ワーキンググループとしてはこうだよという意見を出さないといけないと思います。意見を並立させたままで上部機関にご検討くださいというんだとすると,ワーキンググループは委員が意見をそれぞれ言っただけになっちゃうことになると思います。今後,ちょっと自分たちの在り方も含めて考えなければなりませんが,当ワーキンググループとしては,これとこれは意見としてまとめましたというので行きたいなとは思います。ちょっと今回時間が非常に制約されていたので,最終的にこういう格好になってしまったのは,文化審議会に対して申しわけないなという気がしています。時間が足りなかったらもうちょっと時間を取るなどして,意見の集約の仕方を考えるべきだったのかなというのをちょっと思いましたので,ぜひ今後もしワーキンググループをつくっていただいた場合にご検討頂ければと思います。やっぱり非常に議論のあるところだし,皆さんよりも広く国民の方のご理解を得ながら進めなきゃいけない分野だと思うので,ぜひ今後ご検討いただければと思います。

【宮田座長】  私はそれほど様々な意見が並列のままではあったとは思わないんですね。こうやって7ページにまとめたというだけでもものすごく大きな成果だと思うんです。今まで全部,先生方,ただばらばらにしゃべっていただけで。それが1つの形になったというだけでもこれ随分大きな進歩だと思います。
 同時に,両論併記の部分については,必ず防御のためにの意識ではなく攻めのための両論併記であると私は思っているんですね。その辺のことも意識しながらやっていって,日本芸術文化振興会さんのお力というのもぜひ見たいという気がしております。高萩先生ありがとうございます。
 それでは,この案をもって,本日開催した文化政策部会で報告させていただきたいと思っております。本当に短期間でいろいろなご意見をいただきましてありがとうございました。それをまたまとめてくれた大川補佐もご苦労様でした。それから本省の皆さん,どうもご苦労様でございました。これからが問題ですので。日本芸術文化振興会の関理事長ほか,よろしくどうぞまたお願い申し上げます。
 さて,それでは,最後に近藤文化庁長官から一言いただければ幸いでございます。よろしくお願いします。

【近藤長官】  ありがとうございます。ワーキンググループの先生方には,短期間でかなり煮詰めた議論をしていただきまして,誠にありがとうございます。
 第3次基本方針で,このアーツカウンシルの試行的導入が提案されたわけですけれども,最初は日本芸術文化振興会の中で,ワーキンググループで9回にわたってしっかりした議論ができ,それを踏まえてPD・POの任命をさせていただいて,秋から既に試行的導入をスタートしたわけです。
 そして,それとほぼ時を同じくして,将来のあるべきビジョンを早く作ろうということで,この政策部会の下にワーキンググループを設置して,ご議論をいただいたわけです。
 私もせんだって,今のPD・POの方々と懇談の機会を持ちました。皆さん大変モチベーションが高くて,非常に真剣に仕事をしていただいている姿に非常に心を打たれました。文化芸術の日本における在り方,政府,公的資金による助成の在り方,あるいは文化芸術団体のそれぞれの分野の今後の進むべき方向について非常に真剣に考えていただいているということが分かって非常にうれしく思いました。そういう意味ではとりあえずいいスタートを切ったと思いますし,また,ここで将来のビジョンについてかなり明確な方向性が出たように思います。
 ちょうど文化芸術振興基本法ができて10周年の機に,このアーツカウンシルの在り方が打ち出されたということは非常にいいタイミングだったと思います。国民の皆さんに文化芸術の重要性に対して,文化庁としても色々な有識者の方々のご意見を伺いながら,文化芸術の力を生かしていく具体的な方法を検討しているということが目に見えてくる,そういうプラスがあったかと思います。
 特にこれからますます財政情勢が厳しくなると思いますけれども,その中で,その納税者のお金が適切に使われて,そしてそれが社会のために貢献するんだというその姿がよりはっきり見えてくるということは,文化芸術の重要性を理解していただくと同時に,それに対する我々文化庁の役割,芸術文化振興会の役割についての理解も深まると思っております。
 それから先ほど出た信頼関係という言葉についてですが,分野によってばらばらな習慣,伝統がある芸術団体と,助成をする側との関係を構築するというのは非常に難しいんですが,そこでPD・POの方に入っていただいて橋渡しをしていただくことが大切だと思います。我々の考え方をよくわかっていただくと同時に,我々も現場の様子をPD・POを通して学ぶことができます。そういう意味で,それによって信頼関係が増していくことは,先ほど申し上げましたように公的資金がより有効に文化芸術振興に使われるという観点から非常にプラスになると思います。
 それからキャリアパスの話もたくさん出ましたが,国全体で,人材はたくさんおられるし,ホールも劇場もたくさんあるけれども,それらを十分に生かし切っていないような気が前からしております。そういう中で,それぞれのホールあるいは美術館で働いておられる方々,芸術団体で実際に活動しておられる方々,助成機関で助成をしておられる方々,そういった広い分野で活躍する人材がお互いに色々な経験をすることでそれぞれが学び合ってさらに成長していくという,そういう循環を進めるその1つのステップに,このPD・POがなる可能性はあるし,そうならなければならないと思っています。
 来年度,もし要求どおりになれば,合わせて24人のPD・POが生まれるということになります。そうなれば,それなりに日本の文化芸術界の中で存在感は出てくると思いますので,先ほど申し上げた人材の循環とそれによる人材育成,養成の一翼を担えると思います。そういう意味でも優秀な方々を担っていただいて,かつモチベーションが維持できるような環境を整えていくことが大変重要だと思います。
 それから,これからの課題はいろいろございます。地方に何らかの地域組織をつくるべき,分野横断的なPDがいるかとか,助成の将来の範囲,あるいは助成すべき団体の性格,大きな懸案は若干残っていますが,これはまさに,お話に出ましたようにPD・POの方々が緊密に連絡をして彼らのご意見を伺いつつ,どういう形でこれらの分野に結論を出したらいいのか,これを早急に意見をまとめて,それで,このワーキンググループ自体は今日で終わるのかもしれませんが,また将来,来年度に新しく任命されるであろうPD・POの方々のワンサイクルのご意見を伺った上で,ここからどこへ進むか,今の課題をどういう整理していくかを議論していくべきだと思います。
 今後とも,前向きに取り組んでいきたいと思います。
 本日感じた点は以上でございますが,3回の会合ではご発言の中に何1つとして無駄な言葉はなかったと思います。短時間でしたがこれほど中身の濃いご意見をいただけた審議会ないし分科会ワーキンググループというのはそれほどないような気がいたします。そういう意味で本当に先生方に心から感謝をしております。ありがとうございました。

【宮田座長】  どうもありがとうございました。長官のお言葉にもありましたけれども,やはりスタートしたことによって出てくる弊害と,より重要にしなきゃいけないところというのがあると思いますので,高萩先生の懸念されるような意見の羅列にはしないということも肝に銘じて持っていきたいと思っております。
 本当に英知を結集していただきました。ありがとうございました。つたない座長で恐縮でした。これにてワーキンググループ解散ということにさせていただきたいと思います。
 本当にありがとうございました。これにて失礼いたします。福原先生,何か最後にございますか。

【福原参与】  いや,何もありません。

【宮田座長】  そうですか。これにてワーキンググループ解散ということにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

── 了 ──

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